JP6252827B2 - アルミニウム製熱交換器、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、及び、アルミニウム製熱交換器の製造方法 - Google Patents
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例えば、風力発電や電気自動車や電気車両などを制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子を搭載した半導体装置においては、AlN(窒化アルミ)などからなるセラミックス基板(絶縁層)の一方の面及び他方の面に回路層及び金属層を形成したパワーモジュール用基板とこのパワーモジュール用基板に接合されたヒートシンクとを備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板が用いられており、ヒートシンクとして、前述のアルミニウム製熱交換器が用いられている。
このように構成されたパワーモジュールにおいては、パワー半導体素子で発生した熱は、パワーモジュール用基板を介してアルミニウム製熱交換器へと伝達され、例えば、液冷式のアルミニウム製熱交換器であれば冷却水によって熱が上記熱交換器から除去されることとなる。
例えば、特許文献2には、基材表面に形成した無電解めっき膜を黒色化処理することによって放熱特性を向上させた黒色膜付基材が提案されている。
また、特許文献3には、マグネシウム又はマグネシウム合金材料の表面に陽極酸化膜を形成することによって放熱特性を向上させた放熱材料が提案されている。
さらに、特許文献4,5には、赤外線ヒータ等に用いられる遠赤外線放射体であって、アルミニウム又はアルミニウム合金材料の表面に陽極酸化膜を形成したものが提案されている。このような遠赤外線放射体においては、放熱特性にも優れることになる。
このように、特許文献2−5に記載された発明においては、放熱特性を向上させるために、めっき処理や陽極酸化処理等の特殊な工程を行う必要があり、効率良く熱交換器を製造することができなかった。
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明のアルミニウム製熱交換器は、外気と接する外面から熱を放散するアルミニウム製熱交換器であって、前記外面の少なくとも一部は、基材層と、Siを1.50mass%以上10.65mass%以下の範囲で含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる合金層とが積層されたクラッド材の前記合金層で構成されており、前記合金層の表層が部分溶融して固化しており、前記外面の赤外線領域(波長:1.35μm以上4.0μm以下)の温度25℃における放射率が0.22以上とされていることを特徴としている。
Siが10.65mass%を超えると、クラッド材を用いる場合、クラッド材の製造が困難となる。
また、めっき工程や陽極酸化工程等の複雑な工程を行うことなく、熱処理によって外面の放射率を高くすることができ、放熱特性に優れたアルミニウム製熱交換器を、簡単に、かつ、低コストで製造することが可能となる。
このパワーモジュール1は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30と、このヒートシンク付パワーモジュール用基板30の一方側(図1において上側)の面にはんだ層2を介して接合された半導体素子(電子部品)3と、を備えている。
ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。
パワーモジュール用基板10は、絶縁基板11と、この絶縁基板11の一方の面(図1において上面)に配設された回路層12と、絶縁基板11の他方の面(図1において下面)に配設された金属層13とを備えている。
本実施形態であるアルミニウム製熱交換器40は、パワーモジュール用基板10と接合される天板部41と、この天板部41に対向するように配置された底板部45と、天板部41と底板部45との間に介装されたコルゲートフィン46と、を備えており、天板部41と底板部45とコルゲートフィン46とによって、冷却媒体が流通する流路42が画成されている。
本実施形態では、図2に示すように、天板部41及び底板部45のうち流路42とは反対側を向く外表面に、Si:2.0mass%以上2.5mass%以下を含有するアルミニウム合金からなる合金層41C、45Cがそれぞれ形成されている。
なお、放射率は、例えば、次の手順で算出することができる。まず、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて反射率を測定し、透過率は0とみなし、吸収率を求める。そして、キルヒホフの法則から、求めた吸収率を放射率とする。
本実施形態では、図4に示すように、天板部41及び底板部45は、基材層41A、45Aと、基材層41A、45Aよりも融点の低い材料からなる接合層41B、45Bと、接合層41B、45Bとは反対側の面に形成された合金層41C、45Cと、が積層された3層構造のクラッド材で構成されている。
まず、クラッド材の各層に用いるアルミニウム合金を、半連続鋳造により造塊し、必要に応じてそれぞれ380〜580℃で1〜12時間の範囲で行う均質化処理を実施した後、それぞれ所定の厚さまで熱間圧延を行う。その後、各アルミニウム合金材を組み合わせ、熱間圧延により貼り合せを行い、必要な厚さまで冷間圧延を行うことで製造することができる。
本実施形態では、基材層41A、45AがA3003合金(Al−1.1mass%Mn−0.15mass%Cu)で構成され、接合層41B、45BがA4045合金(Al―10.0mass%Si)で構成され、合金層41C、45CがA4343合金(Al―7.5mass%Si)で構成されている。
まず、本実施形態であるアルミニウム製熱交換器40の製造方法について図3及び図4を参照して説明する。
このとき、天板部41の合金層41C及び底板部45の合金層45Cが熱処理され、合金層41C、45Cの表面が部分溶融して固化することになる(熱処理工程S03)。
以上のようにして、本実施形態であるアルミニウム製熱交換器40が製造される。
まず、回路層12となる銅板と、絶縁基板11とを接合し、回路層12を形成する(回路層形成工程S11)。絶縁基板11の一方の面に、活性ろう材を介して銅板を積層し、いわゆる活性金属ろう付け法によって、銅板と絶縁基板11とを接合する。本実施形態では、Ag−27.4mass%Cu−2.0mass%Tiからなる活性ろう材を用いて、10−3Paの真空中にて、積層方向に加圧(圧力1〜3kgf/cm2)し、850℃で10分加熱することによって、絶縁基板11と銅板とを接合している。
絶縁基板11の他方の面側に、Al−Si系のろう材箔(本実施形態では、Al−7.5mass%Si)を介してアルミニウム板を積層し、10−3Paの真空中にて、積層方向に加圧(圧力1〜3kgf/cm2)し、650℃で90分加熱することによって、アルミニウム板と絶縁基板11とを接合する。これにより、パワーモジュール用基板10が製出される。
そして、パワーモジュール用基板10とアルミニウム製熱交換器40とを積層方向に加圧(圧力0.01〜3kgf/cm2)した状態で、雰囲気加熱炉52内に装入してろう付けする(ろう付け工程S14)。本実施形態では、雰囲気加熱炉52内は酸素濃度200ppm以下の窒素ガス雰囲気とされており、加熱温度は580℃以上620℃以下の範囲内に設定している。
このようにして、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板30が製出される。
そして、雰囲気炉内に装入され、280℃で2分加熱することによって、はんだ付けが実施される(はんだ付け工程S16)。このとき、雰囲気炉の加熱は、赤外線ヒータが用いられる。
このようにして、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板30と半導体素子3とが接合され、パワーモジュール1が製出される。
これにより、本実施形態であるアルミニウム製熱交換器40の放熱特性を大幅に向上させることができる。
さらに、本実施形態では、合金層41C、45Cの表層が部分溶融して固化することにより、外気と接する天板部41及び底板部45の外表面の赤外線領域(波長:1.35μm以上4.0μm以下)の温度25℃における放射率が0.22以上となり、本実施形態であるアルミニウム製熱交換器40の放熱特性が確実に向上することになる。
特に、本実施形態においては、天板部41とコルゲートフィン46と底板部45をろう付けするろう付け工程S02と同時に熱処理工程S03を実施しているので、特別な工程を追加することなく、放熱特性に優れたアルミニウム製熱交換器40を製造することが可能となる。
例えば、本実施形態においては、コルゲートフィンを有するアルミニウム製熱交換器を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、他の構造のアルミニウム製熱交換器であってもよい。
さらに、アルミニウム製熱交換器の天板部41及び底板部45の外表面にそれぞれ合金層41C、45Cを設けて、その表層を部分溶融して固化させるものとして説明したが、これに限定されることはなく、外気と接する外面の少なくとも一部に合金層が設けられ、この合金層を部分溶融して固化させる構成であればよい。
また、パワーモジュールに用いられた例に挙げて説明したが、本発明のアルミニウム製熱交換器は、パワーモジュール以外の用途に使用されるものであってもよい。
まず、回路層が接合されたセラミックス基板とアルミニウム板とをAl−Si系ろう材を介して積層体を形成する。次に、天板部41とコルゲートフィン46と底板部45を、フラックスを介して積層し、前記積層体のアルミニウム板と前記天板部41をAl−Si系ろう材を介して積層したのちに、加圧し、加熱することでヒートシンク付パワーモジュール用基板30を製出することができる。
また、銅又は銅合金からなる回路層と絶縁基板とを、活性金属ろう付け法によって接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、DBC法等の他の方法で接合したものであってもよい。
さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層と絶縁基板とを、ろう付け法によって接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、拡散接合等の他の方法で接合したものであってもよい。
さらに、絶縁層としてAlNからなるセラミックス板を用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、Al2O3、Si3N4等からなるセラミックス板を用いても良い。
まず、A3003合金の片面に表1に記載の組成を有するアルミニウム合金をクラッドしたクラッド板を圧延によって製出した。次に、製出することができたクラッド板に対して、表1に示す条件で熱処理を実施した。
得られた試料について、アルミニウム合金表面の赤外線領域(波長1.35μm以上4.0μm以下)の温度25℃における放射率について測定した。なお、放射率は、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて反射率を測定し、透過率は0とみなして吸収率を求め、この吸収率を放射率とした。結果を表1に示す。
また、比較例1の熱処理後のアルミニウム合金表面を観察した結果を図6に、本発明例1の熱処理後のアルミニウム合金表面を観察した結果を図7に示す。
熱処理温度が、0.995を超えた比較例2においては、上述のアルミニウム合金が完全に溶融してしまい、接合治具に固着した。
Siの含有量が1.50mass%未満とされた比較例3においては、熱処理後においても、放射率が十分に向上していなかった。
Siの含有量が10.65mass%を超えた比較例4においては、圧延時にクラックが発生し、クラッド板を製造することができなかった。
以上のことから、本発明によれば、放射率が高く、放熱特性に優れたアルミニウム製熱交換器を提供できることが確認された。
11 絶縁基板(絶縁層)
12 回路層
30 ヒートシンク付パワーモジュール用基板
40 アルミニウム製熱交換器(ヒートシンク)
Claims (3)
- 外気と接する外面から熱を放散するアルミニウム製熱交換器であって、
前記外面の少なくとも一部は、基材層と、Siを1.50mass%以上10.65mass%以下の範囲で含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる合金層とが積層されたクラッド材の前記合金層で構成されており、
前記合金層の表層が部分溶融して固化しており、前記外面の赤外線領域(波長:1.35μm以上4.0μm以下)の温度25℃における放射率が0.22以上とされていることを特徴とするアルミニウム製熱交換器。 - 絶縁層と前記絶縁層の一方の面に形成された回路層とを有するパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板に接合されたヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板であって、
前記ヒートシンクが、請求項1に記載されたアルミニウム製熱交換器であることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板。 - 請求項1に記載されたアルミニウム製熱交換器の製造方法であって、
前記外面の少なくとも一部を、基材層と、Siを1.50mass%以上10.65mass%以下の範囲で含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる合金層とが積層されたクラッド材の前記合金層で構成し、
前記アルミニウム合金の固相線温度TS(K)及び液相線温度TL(K)に対して、1.01×TS以上0.995×TL以下の範囲内の温度条件で熱処理し、前記合金層の表層を部分溶融して固化させ、前記外面の赤外線領域(波長:1.35μm以上4.0μm以下)の温度25℃における放射率を0.22以上とする熱処理工程を有することを特徴とするアルミニウム製熱交換器の製造方法。
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