本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、応力集中による強度部材の耐久性の低下を防ぎながら、発電効率の向上も図られる、新規な構造の磁歪式振動発電装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、強磁性材料で形成されて振動部材に一端を固定される長手状の強度部材には磁歪材料で形成された発電素子が並列的に取り付けられて、該発電素子にバイアス磁界を印加する磁石が設けられていると共に、該発電素子を含んで構成される閉磁路上にコイルが巻回されて配設されており、該発電素子の歪みに対する透磁率の変化に基づいて該コイルに電圧が生じるようにされた磁歪式振動発電装置において、
前記発電素子と並列に配された前記強度部材の変形部における曲げ剛性が該強度部材の長さ方向で変化せしめられており、該変形部における曲げ剛性を最小とされた部分が該変形部の長さ方向中央よりも該強度部材の自由端側に偏倚していることを、特徴とする。
このような第一の態様に従う構造とされた磁歪式振動発電装置によれば、振動荷重が入力されると、片持ち梁構造で振動部材に取り付けられる強度部材には、曲げモーメントが固定端側に行くに従って大きくなるように作用することから、固定端側に大きな応力が作用し易い。ここにおいて、変形部における曲げ剛性を最小とされた部分が、強度部材の自由端側に偏倚していることによって、変形部には長さ方向の広い範囲に分散して応力が及ぼされる。これにより、強度部材の耐久性の向上が図られると共に、変形部と並列に配された発電素子にも長さ方向で分散して応力が及ぼされることから、発電素子の耐久性と発電効率の向上が実現される。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された磁歪式振動発電装置において、前記強度部材の前記変形部における曲げ剛性を最小とされた部分が該強度部材の幅方向で直線的に延びているものである。
第二の態様によれば、前記変形部における曲げ剛性を最小とされた部分が該強度部材の幅方向で直線的に延びていることで、変形部の曲げ変形が曲げ剛性の最小部分で効率的に生じることから、発電素子に長さ方向の歪みが効率的に生じて、発電効率の向上が実現される。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された磁歪式振動発電装置において、前記強度部材における前記変形部よりも自由端側が固定端側より長尺とされているものである。
第三の態様によれば、振動入力時にマスとして機能する強度部材の変形部よりも自由端側が、固定端側に比して長尺とされていることから、振動入力時に変形部の弾性変形量が大きくされて、発電素子の歪みが大きくなる。それ故、発電素子の逆磁歪効果による透磁率の変化が大きく生じて、優れた発電効率が実現される。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された磁歪式振動発電装置において、前記発電素子の曲げ剛性が前記変形部の最小曲げ剛性よりも小さくされているものである。
第四の態様によれば、並列に配された強度部材の変形部と発電素子の曲げ変形についての中立軸が、変形部側に偏倚して設定される。それ故、変形部の曲げ変形に対して、発電素子の長さ方向の歪みが効率的に生ぜしめられて、逆磁歪効果による発電の効率向上が図られる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの記載された磁歪式振動発電装置において、前記強度部材には長さ方向の中間部分を幅方向全長に亘って延びる凹溝が形成されており、前記発電素子が該凹溝を跨いで配設されて該強度部材における該凹溝の形成部分が前記変形部とされているものである。
第五の態様によれば、強度部材が凹溝の形成によって曲げ剛性を変化せしめられて、曲げ剛性が小さくされていることにより、振動入力による強度部材の変形が凹溝の形成部分である変形部に集中的に生じて、凹溝を跨いで配設される発電素子に長さ方向の歪みを有利に生じさせることができる。しかも、略一定の断面形状で延びる強度部材に凹溝を形成すれば、凹溝の形成部分において曲げ剛性の小さい変形部を簡単に設定することができる。なお、主たる振動の入力方向を凹溝の深さ方向とすることにより、強度部材の曲げ剛性を小さく設定し易くなって、発電素子の歪みを大きく得ることで発電効率の向上が有利に図られる。
本発明の第六の態様は、第五の態様に記載された磁歪式振動発電装置において、前記強度部材の長さ方向における前記凹溝の中間部分には深さが最大となる最深部を有しており、該最深部において該強度部材の曲げ剛性が最小とされていると共に、該凹溝の底壁内面には該最深部から該強度部材の長さ方向外方に行くに従って該凹溝の開口側に傾斜する傾斜底面が設けられているものである。
第六の態様によれば、凹溝の深さが最大とされて曲げ剛性を小さく設定し易い最深部において、変形部の曲げ剛性を容易に最小とすることができる。しかも、凹溝の底壁内面が最深部の両側において傾斜底面で構成されていることにより、変形部の断面形状を最深部に向かって徐々に変化させて、断面形状の急激な変化による応力集中も緩和される。
本発明の第七の態様は、第五又は第六の態様に記載された磁歪式振動発電装置において、前記凹溝の底壁内面が前記強度部材の長さ方向で湾曲する開口側に凹の湾曲面とされているものである。
第七の態様によれば、凹溝の深さ方向に振動が入力されて、強度部材が変形部で曲げ変形する際に、凹溝の底壁内面が湾曲面とされていることで応力集中が防止されて、強度部材の耐久性の向上が図られる。
本発明の第八の態様は、第五〜第七の何れか一つの態様に記載された磁歪式振動発電装置において、前記凹溝の開口縁部内面が凸形のR面とされているものである。
第八の態様によれば、凹溝の開口縁部内面が開口側に向かって拡開する形状とされることで、発電素子が曲げ変形する際に、発電素子が凹溝の開口縁部内面に押し当てられるのを防いで、発電素子の損傷が防止される。しかも、凹溝の開口縁部内面が凸形のR面とされていることにより、凹溝の開口縁部内面が、強度部材における凹溝の開口する面に対して、段差や折れ線を形成することなく滑らかに連続して設けられて、振動入力時に発電素子と強度部材の当接部分において応力集中が防止されて、耐久性の向上が実現される。
本発明によれば、強度部材が発電素子を並列配置された変形部を備えており、変形部の曲げ剛性が長さ方向で変化していると共に、変形部における曲げ剛性を最小とされた部分が、変形部の長さ方向中央よりも強度部材の自由端側にずれて配置されている。これにより、振動入力による変形部の変形中心が自由端側にずれて設定されて、変形部に作用する曲げモーメントが長さ方向でより平均化される。その結果、強度部材の変形部における応力分散によって耐久性の向上が図られると共に、変形部と並列に配される発電素子にも応力が長さ方向に分散して及ぼされて、耐久性と発電効率の向上が実現される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜3には、本発明の第一の実施形態としての磁歪式振動発電装置(以下、振動発電装置)10が示されている。振動発電装置10は、長手状の強度部材12に発電素子14を取り付けた構造を有している。以下の説明において、原則として、長さ方向とは左右方向である図2中の左右方向を、幅方向とは前後方向である図2中の上下方向を、厚さ方向とは上下方向である図3中の上下方向を、それぞれ言う。
より詳細には、強度部材12は、図4に示すように、ステンレス鋼(マルテンサイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼など)や鉄などの強磁性材料で形成された略矩形ロッド形状の部材であって、長さ方向一方の端部(図2中の左端部)には厚さ方向に貫通する取付孔16が形成されている。そして、図3に2点鎖線で示すように、強度部材12の取付孔16に挿通される取付用ボルト18が振動部材20に螺着されることにより、強度部材12の長さ方向一方の端部が振動部材20に固定されるようになっている。なお、振動部材20への装着状態において、強度部材12は、一端(図2中、左端)が振動部材20に固定された固定端とされると共に、他端(図2中、右端)が自由端とされる。
また、強度部材12の長さ方向中間部分には、図3,5に示すように、厚さ方向一方(図3中の上方)に向かって開口する凹溝22が形成されている。凹溝22は、強度部材12の長さ方向で中央よりも固定端側(図3中、左側)にずれた位置に形成されており、強度部材12の幅方向全長に亘って、略一定の断面形状で連続して延びている。このような凹溝22が形成されていることにより、強度部材12は、凹溝22よりも固定端側に位置する取付部24と、凹溝22よりも自由端側に位置するマス部26と、凹溝22の底壁部であって取付部24とマス部26を相互に連結する変形部28とを、一体的に備えた構造とされている。なお、凹溝22が強度部材12の長さ方向中央よりも固定端側に位置していることから、マス部26が取付部24よりも長尺とされている。また、強度部材12の凹溝22に対する長さ方向両側には、厚さ方向上下に貫通するねじ孔30がそれぞれ形成されている。
さらに、強度部材12の長さ方向における凹溝22の中間部分には、強度部材12の幅方向に直線状に延びる最深部32が設定されており、底壁内面が最深部32から強度部材12の長さ方向で外方に行くに従って次第に開口側へ上傾する傾斜底面34a,34bを備えている。換言すれば、凹溝22の底壁内面には、傾斜底面34a,34bが滑らかに連続して設けられており、それら傾斜底面34a,34bの境界において、凹溝22の深さが最大となる最深部32が設定されている。本実施形態では、傾斜底面34a,34bがそれぞれ上方に凹の湾曲面とされており、凹溝22の底壁内面の全体が上方に凹の連続的な湾曲面で構成されて、凹溝22の深さ寸法が強度部材12の長さ方向で徐々に変化している。なお、本実施形態の強度部材12は、変形部28を含む全長に亘って、前後幅寸法が略一定とされていると共に、下面(図3中の下面)が平面とされており、変形部28において最も薄肉となる最深部32において厚さ方向の曲げ剛性が最小となっている。
更にまた、凹溝22の一対の側壁内面は、それぞれ強度部材12の長さ方向に略直交して広がる平坦面とされていると共に、上端部が開口側(図3中、上側)に向かって次第に強度部材12の長さ方向外方に傾斜しており、本実施形態では、凹溝22の開口縁部内面が、開口側および溝内方に向かって凸となる円弧状断面のR面36とされている。なお、凹溝22の一対の側壁内面は、凹溝22の傾斜底面34a,34bの各一方と滑らかに連続しており、凹溝22の内面全体が強度部材12の長さ方向で折れ点や段差などを持たない連続的な面で構成されている。
発電素子14は、磁歪材料で形成されて略一定の矩形断面で延びる長手板形状の部材であって、両端部分が強度部材12の上面に重ね合わされて、ねじ孔30に螺着される取付ねじ38によって強度部材12に固定されている。これにより、発電素子14は、凹溝22の開口を強度部材12の長さ方向に跨いで延びており、強度部材12の変形部28と上下に離隔して並列的に配設されている。
なお、発電素子14の形成材料となる磁歪材料は、特に限定されるものではないが、鉄−ガリウム合金や鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金などが好適に採用され、それらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、上述の発電素子14を形成する磁歪材料に、イットリウム(Y)やプラセオジム(Pr)などの希土類元素の少なくとも一種を含ませることにより、後述する発電素子14の透磁率の変化を大きく得ることもできる。更に、好適には、発電素子14の曲げ剛性が、強度部材12の変形部28における最小曲げ剛性よりも小さくされており、発電素子14が強度部材12よりも曲げ変形を生じ易くなっている。
また、発電素子14には、コイル40が取り付けられている。コイル40は、発電素子14に巻回される導電性の金属線材によって形成されており、発電素子14の磁束の変化に応じてコイル40に電磁誘導による誘導起電力が生じるようになっている。更に、コイル40は、発電素子14の強度部材12への取付け状態において、強度部材12の凹溝22に入り込んでおり、コイル40と強度部材12の干渉が回避されている。なお、図中では明らかではないが、コイル40を構成する金属線材の両端は、蓄電池や電気機器(LEDや電子回路など)に電気的に接続されている。
また、強度部材12の幅方向前後両側には、それぞれ磁石42a,42bが配設されている。磁石42としては、フェライト磁石やアルニコ磁石、ネオジム磁石などの各種公知の永久磁石が採用されており、強度部材12の前後方向に着磁されている。そして、磁石42aが強度部材12における取付部24の側面に固着されていると共に、磁石42bが強度部材12におけるマス部26の側面に固着されている。更に、磁石42aと磁石42bは、互いに逆向きに着磁されており、例えば、磁石42aの強度部材12側がN極とされる場合には、磁石42bの強度部材12側がS極とされる。更にまた、一対の磁石42a,42aが、強度部材12に対して、長さ方向の略同じ位置で、前後各一方の側から固着されていると共に、一対の磁石42b,42bが、強度部材12に対して、長さ方向の略同じ位置で、前後各一方の側から固着されている。なお、磁石42の強度部材12への固着手段は、特に限定されないが、例えば、磁石42の磁気的な引力や接着剤、機械的な係止などによって実現され得る。
さらに、強度部材12の前後両側には、ヨーク部材44が並列的に配設されている。ヨーク部材44は、強度部材12と略平行に延びるロッド形状乃至は長手板形状とされており、強度部材12と同様にステンレス鋼や鉄などの強磁性材料で形成されている。そして、ヨーク部材44は、磁石42aと磁石42bに跨って延びており、一方の端部が磁石42aの前後外面に重ね合わされて固着されていると共に、他方の端部が磁石42bの前後外面に重ね合わされて固着されている。なお、ヨーク部材44の磁石42への固着手段も、特に限定されないが、例えば、磁石42の磁気的な引力や接着剤、機械的な係止などによって実現され得る。
このように、磁石42a,42bの前後一組と、ヨーク部材44の前後一組とが、強度部材12の両側面に取り付けられることにより、強度部材12と発電素子14と磁石42a,42bとヨーク部材44とによって、閉磁路46が形成されている。そして、閉磁路46を構成する発電素子14には、磁石42a,42bによるバイアス磁界が印加されている。なお、コイル40は、発電素子14に巻回されることにより、閉磁路46上に配されている。
かくの如き構造とされた振動発電装置10は、図3に示す振動部材20への装着状態において、強度部材12に上下方向の振動が入力されると、上下方向で薄肉とされた凹溝22の形成部分(変形部28)において強度部材12が弾性変形せしめられる。これにより、発電素子14に対して圧縮/引張方向の応力が効率的に生ぜしめられることとなり、磁歪材料で形成された発電素子14の透磁率が逆磁歪効果(歪みによって透磁率が変化する効果)によって変化する。その結果、コイル40を貫通する磁束が変化することから、コイル40に電磁誘導による電圧(誘導起電力)が発生して、コイル40に接続された蓄電池の充電或いは電気機器の作動などに用いられる。
ここにおいて、本実施形態では、強度部材12の前後幅寸法が略一定とされていると共に、凹溝22の底壁内面が湾曲面とされて変形部28の厚さ寸法が強度部材12の長さ方向で変化していることから、変形部28の曲げ剛性が強度部材12の長さ方向で変化している。更に、凹溝22の最深部32が、強度部材12の長さ方向における凹溝22の中央(図5中のA)に対して、強度部材12の自由端側にずれて設けられて(図5中のB)おり、変形部28において最も薄肉で曲げ剛性が最小となる最深部32が、凹溝22の中央に対して強度部材12の自由端側に偏倚して配置されている。その結果、変形部28に作用する曲げモーメントが長さ方向でより平均化されて、発電素子14と並列に延びる変形部28において、長さ方向で応力の分散化が図られて、変形部28の耐久性の向上が図られる。
さらに、変形部28において応力の分散化が図られることにより、発電素子14に及ぼされる応力も長さ方向のより広い範囲に分散することから、発電素子14の広い範囲に歪みが平均的に生ぜしめられて、局所的に大きな歪みが生ぜしめられる場合に比して、発電素子14の耐久性の向上や発電効率の向上などが実現される。蓋し、発電素子14の発電量は、発電素子14の歪み量に対して非線形に対応しており、発電素子14の歪み量が大きくなるに従って、歪みの変化に対する発電量の変化率は低下するからである。
なお、最深部32を凹溝22の中央から強度部材12の長さ方向でどれだけ偏倚させるかは、強度部材12における取付部24とマス部26の長さの違いや、強度部材12の変形部28と発電素子14との曲げ剛性の違いなどに応じて設定される。
このような本実施形態の構造において、強度部材12と発電素子14に作用する応力が、従来構造よりも分散することは、シミュレーションによって確認されている。即ち、図6に示すように、本実施形態の構造(実施例)では、強度部材12における凹溝22の底壁部に対して、比較的に小さな応力が広い範囲に亘って及ぼされており、耐久性が十分に確保されると共に、発電素子14の全体に応力が有効に及ぼされていることから、優れた発電効率が実現されると予測される。一方、図7に示すように、矩形溝形状の凹溝を強度部材に設けた従来構造(比較例)では、強度部材100における凹溝102の底壁部に対して、長さ方向両端の角部に応力が集中しており、強度部材100の耐久性に対する悪影響が問題になると共に、強度部材100の自由端側に固定された発電素子104の端部に及ぼされる応力が著しく小さくなっており、発電効率の低下が予測される。
また、本実施形態の強度部材12における凹溝22の底壁内面には、強度部材12の長さ方向外方に行くに従って次第に上傾する傾斜底面34a,34bが設定されていると共に、傾斜底面34a,34bがそれぞれ凹状の湾曲面とされて、それら傾斜底面34a,34bが共通接線をもって相互に滑らかに連続している。これにより、凹溝22の底壁部である変形部28が振動入力によって厚さ方向に変形する際に、断面形状の急激な変化による応力集中が防止されて、強度部材12の耐久性の向上が図られる。
さらに、本実施形態の強度部材12は、傾斜底面34a,34bの境界に設定される凹溝22の最深部32が、強度部材12の幅方向に直線状に延びている。これにより、振動入力時に強度部材12が最薄部分で効率的に曲げ変形せしめられて、発電素子14の歪みが有効に生ぜしめられることから、発電素子14における透磁率の変化が有利に惹起されて、発電効率の向上が図られる。
また、凹溝22が強度部材12の長さ方向中央よりも固定端側にずれた位置に形成されており、強度部材12のマス部26が取付部24よりも長尺とされている。これにより、強度部材12におけるマス部26の質量が大きく設定されて、強度部材12の変形が効率的に生ぜしめられることから、発電効率の向上が図られる。
また、凹溝22の開口縁部内面が、開口側に向かって次第に拡開していることから、強度部材12および発電素子14の変形時に、発電素子14が凹溝22の開口縁部に干渉するのを防いで、発電素子14の変形を効率的に生ぜしめることができる。更に、凹溝22の開口縁部内面が凸形のR面36とされていることから、凹溝22の開口縁部内面を強度部材12の上面と滑らかに連続して設けることができて、凹溝22の開口縁部内面と強度部材12の上面との境界部分に発電素子14が押し付けられても、発電素子14に集中的な応力が作用するのを回避することができる。
また、発電素子14の曲げ剛性が、強度部材12における変形部28の最小曲げ剛性よりも小さくされて、発電素子14が変形部28よりも変形し易くされていることから、強度部材12の変形に対して発電素子14の歪みが十分に生ぜしめられて、発電素子14の発電効率を高めることができる。即ち、曲げ変形における中立軸が発電素子14よりも強度部材12側に偏倚して設定されていることにより、曲げ変形特性に関して強度部材12の影響が支配的となり、発電素子14に対する圧縮/引張応力が一層効率的に生ぜしめられることとなる。
図8には、本発明の第二の実施形態としての磁歪式振動発電装置を構成する強度部材50が示されている。なお、図8において省略されている発電素子14、磁石42a,42bの一組、ヨーク部材44の一組は、何れも第一の実施形態と同一のものが採用され得る。更に、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
すなわち、強度部材50は、図8,9に示すように、中間部分に凹溝52を備えている。凹溝52は、強度部材50の長さ方向で固定端側に偏倚した位置に設けられており、厚さ方向一方(図9中、上方)に開口して、強度部材50の幅方向に全長に亘って連続して延びている。更に、凹溝52の底壁内面は、傾斜底面54a,54bを備えている。傾斜底面54a,54bは、それぞれ凹溝52の最深部32から強度部材50の長さ方向で外方に行くに従って次第に上傾する傾斜平面とされており、略谷形折れ線状をなして相互に連続している。なお、傾斜底面54a,54bの境界部分によって、強度部材50の幅方向で直線的に延びる最深部32が形成されている。
また、第一の実施形態と同様に、凹溝52の最深部32は、凹溝52の中央(図9中の一点鎖線A)に対して、強度部材50の長さ方向で自由端側にずれて位置せしめられている。これにより、強度部材50の変形部28に及ぼされる応力の分散化が図られて、強度部材50および発電素子14の耐久性の向上や、発電素子14の歪みの分散化による発電効率の向上などが図られる。なお、図9中の一点鎖線Bは、最深部32の位置を示す。
図10には、本発明の第三の実施形態としての磁歪式振動発電装置を構成する強度部材60の要部が拡大されて示されている。本実施形態の強度部材60には、上面に開口して幅方向の全長に延びる凹溝62が形成されている。なお、図中では必ずしも明らかではないが、第一, 第二の実施形態と同様に、凹溝62は、強度部材60の固定端側にずれた位置に形成されている。
凹溝62は、傾斜底面34a,34bの間に、強度部材60の厚さ方向(図10の上下方向)に対して略直交して広がる接続底面64が形成されており、最深部32が強度部材60の長さ方向に所定の幅で広がって設けられている。なお、接続底面64が傾斜底面34a,34bの共通接線方向に広がっており、それら接続底面64と傾斜底面34a,34bが折れ点なく滑らかに連続している。そして、最深部32の中央(図10中の一点鎖線B)が、凹溝62の中央(図10中の一点鎖線A)に対して、強度部材60の自由端側に位置している。
なお、本実施形態では、変形部28の固定端側の端部の厚さ寸法(t1 )が、変形部28の自由端側の端部の厚さ寸法(t2 )よりも大きく設定されている。これにより、振動入力時に作用する曲げモーメントが大きくなり易い変形部28の固定端側の端部において、変形部28の耐久性が有利に確保される。
このような本実施形態に従う構造とされた強度部材60を採用する場合にも、第一, 第二の実施形態と同様に、応力の分散化による耐久性および発電効率の向上が実現される。特に、接続底面64と傾斜底面34a,34bが滑らかに連続して設けられることにより、それら接続底面64と傾斜底面34a,34bとの接続部分において応力集中が生じるのも防止できる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、磁石42a,42bとヨーク部材44が強度部材12の前後両側に設けられた構造が例示されているが、磁石42a,42bとヨーク部材44は、前後何れか一方だけでも良い。更に、磁石42aと磁石42bは何れか一方だけでも良い。更にまた、例えば、磁石を強度部材と発電素子の間に配設することも可能であり、その場合には、ヨーク部材が不要となり得る。
また、コイル40は、閉磁路46上にあれば良く、例えば、並列に配された発電素子14と変形部28との両方に一つのコイル40が巻回されて、それら発電素子14と変形部28の両方がコイル40に挿通されていても良い。
また、前記実施形態では、強度部材12の長さ方向において凹溝22の深さ寸法を変化させることで、変形部28の曲げ剛性を長さ方向に変化させているが、変形部の幅寸法を変化させることで、変形部の曲げ剛性を変化させることもできる。
強度部材12の変形部28は、振動入力時の変形によって発電素子14に応力を生ぜしめるものであれば良く、例えば、発電素子14に対して傾斜していても良いし、発電素子14とは長さ方向の寸法が異なっていても良い。
また、発電素子14の強度部材12への固定方法は、ねじ止めに限定されるものではなく、接着剤を用いた接着や、他部材と強度部材12の間で発電素子14を挟持するなどの方法も採用され得る。
また、振動部材20に対する強度部材12の取付構造は、前記実施形態で例示したボルト固定に特に限定されるものではない。