以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態におけるガス発生器の概略図であり、図2は、図1に示すガス発生器の要部拡大断面図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Aの構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aは、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に設けられた収容空間に、内部構成部品としての保持部30、点火器40、カップ状部材50、伝火薬56、ガス発生剤61、支持部材70、押さえ部材80Aおよびフィルタ90等が収容されることで構成されている。また、ハウジングの内部に設けられた収容空間には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
短尺略円筒状のハウジングは、下部側シェル10と上部側シェル20とを含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20のそれぞれは、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440MPa以上780MPa以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とを有している。これにより、ハウジングの軸方向の端部は、天板部21と底板部11とによって閉塞されている。なお、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザー溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられており、これにより下部側シェル10の底板部11の中央部には、窪み部14が形成されている。突状筒部13は、上述した保持部30を介して点火器40が固定される部位であり、窪み部14は、保持部30に雌型コネクタ部34を設けるためのスペースとなる部位である。
突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視した状態において非点対称形状(たとえばD字状、樽型形状、長円形状等)の開口部15が設けられている。当該開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。
点火器40は、火炎を発生させるためのものであり、点火部41と、上述した一対の端子ピン42とを備えている。点火部41は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体とを含んでいる。一対の端子ピン42は、点火薬を着火させるために点火部41に接続されている。
より詳細には、点火部41は、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン42が挿通されてこれを保持する基部とを備えており、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン42の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび基部は、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
点火器40は、突状筒部13に設けられた開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態で底板部11に取付けられている。具体的には、底板部11に設けられた突状筒部13の周囲には、樹脂成形部からなる保持部30が設けられており、点火器40は、当該保持部30によって保持されることにより、底板部11に固定されている。
保持部30は、型を用いた射出成形(より特定的にはインサート成形)によって形成されるものであり、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15を経由して底板部11の内面の一部から外面の一部にまで達するように絶縁性の流動性樹脂材料を底板部11に付着させてこれを固化させることによって形成されている。
点火器40は、保持部30の成形の際に、開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態とされ、この状態において点火器40と下部側シェル10との間の空間を充填するように上述した流動性樹脂材料が流し込まれることにより、保持部30を介して底板部11に固定される。
射出成形によって形成される保持部30の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において保持部30の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
保持部30は、下部側シェル10の底板部11の内面の一部を覆う内側被覆部31と、下部側シェル10の底板部11の外面の一部を覆う外側被覆部32と、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15内に位置し、上記内側被覆部31および外側被覆部32にそれぞれ連続する連結被覆部33とを有している。
保持部30は、内側被覆部31、外側被覆部32および連結被覆部33のそれぞれの底板部11側の表面において底板部11に固着している。また、保持部30は、点火器40の点火部41の下方端寄りの部分の側面および下面と、点火器40の端子ピン42の上方端寄りの部分の表面とにそれぞれ固着している。これにより、開口部15は、端子ピン42と保持部30とによって完全に埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。なお、開口部15は、上述したように平面視非点対称形状に形成されているため、当該開口部15を連結被覆部33で埋め込むことにより、これら開口部15および連結被覆部33は、保持部30が底板部11に対して回転してしまうことを防止する回り止め機構としても機能する。
保持部30の外側被覆部32の外部に面する部分には、雌型コネクタ部34が形成されている。この雌型コネクタ部34は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位であり、下部側シェル10の底板部11に設けられた窪み部14内に位置している。この雌型コネクタ部34内には、点火器40の端子ピン42の下方端寄りの部分が露出して配置されている。雌型コネクタ部34には、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
また、保持部30によって覆われることとなる部分の底板部11の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェル10を用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部11の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させておくことにより、その形成が可能である。
このようにすれば、底板部11と保持部30との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形部からなる保持部30をより強固に底板部11に固着させることが可能になる。したがって、底板部11に設けられた開口部15を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することが可能になる。
ここで、底板部11に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
なお、ここでは、樹脂成形部からなる保持部30を射出成形することで下部側シェル10に対する点火器40の固定を可能にした場合の構成例を例示したが、下部側シェル10に対する点火器40の固定に他の代替手段を用いることも可能である。
底板部11には、突状筒部13、保持部30および点火器40を覆うようにカップ状部材50が組付けられている。カップ状部材50は、底板部11側の端部が開口した有底略円筒形状を有しており、内部に伝火薬56が収容された伝火室55を含んでいる。カップ状部材50は、その内部に設けられた伝火室55が点火器40の点火部41に面することとなるように、ガス発生剤61が収容された燃焼室60内に向けて突出して位置するように配置されている。
カップ状部材50は、上述した伝火室55を規定する頂壁部51および側壁部52と、側壁部52の開口端側の部分から径方向外側に向けて延設された延設部53とを有している。延設部53は、下部側シェル10の底板部11の内面に沿って延びるように形成されている。具体的には、延設部53は、突状筒部13が設けられた部分およびその近傍における底板部11の内底面の形状に沿うように曲成された形状を有しており、その径方向外側の部分にフランジ状に延出する先端部54を含んでいる。
延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と支持部材70との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と支持部材70とによって挟み込まれている。ここで、支持部材70は、その上方に配置されたガス発生剤61、押さえ部材80Aおよび天板部21によって底板部11側に向けて押し付けられた状態にあるため、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が支持部材70によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。これにより、カップ状部材50の固定にかしめ固定や圧入固定を利用せずとも、カップ状部材50が底板部11から脱落することが防止される。
カップ状部材50は、頂壁部51および側壁部52のいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室55を取り囲んでいる。このカップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬56が着火された場合に伝火室55内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
そのため、カップ状部材50としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
なお、カップ状部材50としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部52に開口を有し、当該開口を閉塞するようにシールテープが貼着されたもの等を利用することも可能である。また、カップ状部材50の固定方法も、上述した支持部材70を用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
伝火室55に充填された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬56としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬56は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬56の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
ハウジングの内部の空間のうち、上述したカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間には、複数の粒状成形体からなるガス発生剤61が収容された燃焼室60が位置している。具体的には、上述したように、カップ状部材50は、ハウジングの内部に形成された燃焼室60内に突出して配置されており、このカップ状部材50の外面に面する部分に設けられた空間が燃焼室60として構成されている。なお、当該燃焼室60は、上述したカップ状部材50の外面の他に、フィルタ90の内周面と、天板部21の内面および底板部11の内面とによって規定されている。
また、燃焼室60のうち、ガス発生剤61が収容された空間をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ90が配置されている。フィルタ90は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されている。これにより、フィルタ90の外周面は、ハウジングの周壁部12,22の内周面に対向して位置することになる。
ガス発生剤61は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
複数の粒状成形体からなるガス発生剤61の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤61の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤61の形状の他にもガス発生剤61の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
フィルタ90は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ金網等の金属線材の集合体が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
フィルタ90は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ90中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却しかつスラグが外部に放出されないようにするためには、燃焼室90内にて発生したガスが確実にフィルタ90中を通過するようにすることが必要である。なお、フィルタ90は、ハウジングの周壁部を構成する上部側シェル20の周壁部22および下部側シェル10の周壁部12との間で所定の大きさの間隙部Sが構成されることとなるように、当該周壁部12,22から離間して配置されている。
フィルタ90に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、ガス噴出口23が複数設けられている。このガス噴出口23は、フィルタ90を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。上部側シェル20の周壁部22の内周面には、上記ガス噴出口23を閉塞するように金属製のシールテープ24が貼り付けられている。このシールテープ24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用でき、当該シールテープ24によって燃焼室60の気密性が確保されている。
燃焼室60のうち、底板部11側に位置する端部近傍には、支持部材70が配置されている。支持部材70は、環状の形状を有しており、フィルタ90と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と底板部11とに実質的に宛がわれて配置されている。これにより、支持部材70は、燃焼室60の上記端部近傍において、底板部11とガス発生剤61との間に位置している。
支持部材70は、フィルタ90の底板部11側に位置する軸方向端部の内周面に当接するように立設された立壁部72と、当該立壁部72から径方向内側に向けて延設された底部71とを有している。底部71は、下部側シェル10の底板部11の内底面に沿って延びるように形成されている。具体的には、底部71は、突状筒部13が設けられた部分を含む底板部11の内底面の形状に沿うように折り曲げられた形状を有しており、その径方向内側の部分に立ち上がるように延設された延設部73を含んでいる。
当該支持部材70は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の下端と底板部11との間の隙間からフィルタ90の内部を経由することなく流出してしまうことを防止するための遮蔽部材として機能する。支持部材70は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
ここで、上述したカップ状部材50の延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と支持部材70の底部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と底部71とによって挟み込まれて保持されている。これにより、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が支持部材70の底部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
図1および図2に示すように、燃焼室60のうち、天板部21側に位置する端部近傍には、押さえ部材80Aが配置されている。押さえ部材80Aは、主として、粒状の成形体からなるガス発生剤61を底板部11側に向けて弾性付勢しつつこれを保持することにより、ガス発生剤61が破砕することを防止するための部材である。具体的には、押さえ部材80Aは、フィルタ90の天板部21側の部分に内挿されており、これにより、押さえ部材80Aは、燃焼室60の上記端部近傍において、天板部21とガス発生剤61との間に位置している。
押さえ部材80Aは、金属製の網材に曲げ加工を施すことで所定の形状に成形された成形品からなる。ここで、押さえ部材80Aを構成する金属製の網材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を平織りすること等によって織り込んだ金網や、当該金属線材にクリンプ加工を施したものを平織りすること等によって織り込んだクリンプ金網、あるいは当該金属線材をメリヤス編みすること等によって編み込んだ金網等を用いることができる。なお、押さえ部材80Aは、一層の金網によって構成されていてもよいし、多層の金網が積層された集合体によって構成されていてもよい。
金属製の網材に上述した曲げ加工が施されることにより、押さえ部材80Aは、フィルタ90の内周面に当接する第1当接部81と、ガス発生剤61に面するとともに当該ガス発生剤61に当接する第2当接部82と、これら第1当接部81および第2当接部82を接続する接続部83とを含んでいる。
第1当接部81は、筒板状の形状を有しており、その外周面がフィルタ90の内周面に当接している。第2当接部82は、板状の形状を有しており、天板部21から距離をもって位置しているとともに、その底板部11側の表面がガス発生剤61に当接している。接続部83は、第1当接部81の底板部11側の軸方向端部と第2当接部82の周縁部とを接続する環状形状を有しており、第1当接部81と第2当接部82との間に概ね位置している。
接続部83は、第1当接部81の上述した軸方向端部および第2当接部82の上述した周縁部よりも天板部21側に向けて膨出する板バネ形状を有している。より詳細には、接続部83は、膨出した板バネ形状を有する当該接続部83の先端に位置するとともに天板部21に当接した先端当接部84と、第1当接部81に連続する部分である外側バネ部85と、第2当接部82に連続する部分である内側バネ部86とを有している。なお、先端当接部84は、外側バネ部85と内側バネ部86とを連結する部位でもある。
ここで、上述したように先端当接部84が天板部21に当接することにより、当該先端当接部84、外側バネ部85および内側バネ部86を含む接続部83は、その全体が底板部11側であってかつ内側(すなわち、ハウジングの径方向における中心側)に向けて押し曲げられた状態とされている。より詳細には、外側バネ部85および内側バネ部86は、先端当接部84が天板部21に当接することで当該先端当接部84が移動することにより、いずれも外力が加えられていない場合に比べて上記内側に向けて傾斜した姿勢をとっている。
これにより、図2に示すように、天板部21によって接続部83に加えられた力Aの一部は、傾斜した姿勢にある外側バネ部85を介して第1当接部81に加わることになり、当該第1当接部81に加わった力は、当該第1当接部81をフィルタ90の内周面に向けて弾性付勢する付勢力B1となる。一方、天板部21によって接続部83に加えられた力Aの残る一部は、傾斜した姿勢にある内側バネ部86を介して第2当接部82に加わることになり、当該第2当接部82に加わった力は、当該第2当接部82をガス発生剤61に向けて弾性付勢する付勢力B2となる。
以上により、押さえ部材80Aは、その第1当接部81がフィルタ90の内周面に所定の付勢力B1をもって弾性付勢された状態で接触配置されることになるとともに、その第2当接部82がガス発生剤61に所定の付勢力B2をもって弾性付勢された状態で接触配置されることになる。したがって、燃焼室60に収容された複数の粒状成形体からなるガス発生剤61は、押さえ部材80Aによって底板部11側に向けて弾性付勢された状態で保持されることになり、非作動時におけるガス発生剤61の破砕が未然に防止できることになる。
図3は、図1に示すガス発生器に具備された押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図である。次に、この図3を参照して、非組付状態における押さえ部材80Aの構造について説明する。
上述したように、本実施の形態においては、押さえ部材80Aとして金属製の網材の成形品を用いている。これにより、押さえ部材80Aは、適度な弾性を有することになり、上述した付勢力B1,B2の大きさは、主として押さえ部材80Aの接続部83の非組付状態における構造によって決まることになる。また、当該付勢力B1,B2を十分に発現させるためには、押さえ部材80Aの接続部83が天板部21によって底板部11側であってかつ内側に向けて押し曲げられた状態とされていることが重要であり、接続部83が当該状態に押し曲げられるか否かについても、基本的には押さえ部材80Aの接続部83の非組付状態における構造によって決まることになる。
図3に示すように、本実施の形態においては、押さえ部材80Aの第1当接部81に連続する部分である接続部83の外側バネ部85が、非組付状態において、接続部83と第1当接部81の境界部から遠ざかるにつれて内側に向けて傾斜する傾斜形状を有している。このように構成することにより、接続部83の先端当接部84に軸方向に沿って外力が加えられた場合(すなわち、図3において上方から下方に向けて外力が加えられた場合)に、接続部83が、その内側に向けて倒れ込むように変形するようになる。したがって、上述した付勢力B1,B2を十分に大きなものとすることができる。
また、この場合において、押さえ部材80Aの第2当接部82に連続する部分である接続部83の内側バネ部86が、非組付状態において、軸方向に略平行となるようにより起立した直立形状を有していることにより、第2当接部82をガス発生剤61に向けて弾性付勢する付勢力B2をより大きく確保することも可能になる。
したがって、図3に示す如くの非組付状態における構造を有する押さえ部材80Aを用いることにより、図1および図2において示した押さえ部材80Aの組付構造を実現することができる。
図4は、図1に示すガス発生器の組立て態様を示す分解斜視図である。次に、この図4を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Aの組立て態様について説明する。
ガス発生器1Aの組立に際しては、プレス成形することで製造された下部側シェル10と予め製造された点火器40とを射出成形用の型にセットし、この状態において射出成形を行なうことで下部側シェル10の底板部11に樹脂成形部としての保持部30を形成し、これにより点火器40を下部側シェル10の突状筒部13に固定する。
次に、予めプレス成形することで製造されたカップ状部材50の内部に所定量の伝火薬56を充填した状態とし、点火器40が固定された状態にある下部側シェル10の突状筒部13近傍の部分を、カップ状部材50の開口端側から当該カップ状部材50の内部に向けて挿入する。ここで、当該挿入作業は、伝火薬56が零れ落ちることを防止するために、カップ状部材50および下部側シェル10のいずれもがその天地が逆とされた状態で行なう。その際、カップ状部材50の側壁部52の開口端側の部分が、保持部30の内側被覆部31に圧入されるようにする。これにより、カップ状部材50は、保持部30によって軽保持されることで下部側シェル10に対して仮固定された状態となる。
次に、カップ状部材50が軽保持された状態にある下部側シェル10の天地が逆にされ、この状態において下部側シェル10上にフィルタ90を載置し、さらにその後に、当該下部側シェル10とフィルタ90とによって規定される空間に支持部材70を挿入する。これにより、カップ状部材50の延設部53の先端部54上に支持部材70の底部71が配置されることになり、当該先端部54が、ハウジングの軸方向に沿って底部71と底板部11とによって挟まれた状態となる。
次に、下部側シェル10とフィルタ90とによって規定される空間であってかつ支持部材70上に位置する空間に複数の粒状成形体かなるガス発生剤61を所定量充填する。
次に、図4に示すように、フィルタ90の上端側に位置する開口部に上方から押さえ部材80Aを内挿する。これにより、フィルタ90の内部に位置する空間であってガス発生剤61が収容された空間は、押さえ部材80Aによって塞がれることになる。このとき、押さえ部材80Aは、フィルタ90の内部に完全に収まるまで内挿される必要はなく、その一部がフィルタ90の内部に収まっていればよい。また、このとき、押さえ部材80Aの第1当接部81は、フィルタ90に圧入されて嵌合していてもよいし、単にフィルタ90に挿入されて遊嵌されていてもよい。
次に、図4に示すように、押さえ部材80Aを覆うように上部側シェル20を下部側シェル10に組付ける。その際、押さえ部材80Aの接続部83は、上部側シェル20の天板部21に当接することになり、これに伴って当該接続部83は、その全体が底板部11側であってかつ内側に向けて押し曲げられた状態となり、図中に示す矢印C方向に向けて倒れ込むように変形する。
さらに、その後、上部側シェル20を下部側シェル10に接合することにより、ガス発生器1Aの製造が完了する。
このように、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、押さえ部材80Aをフィルタの90の天板部21側の部分に内挿してその後に上部側シェル20を下部側シェル10に組付けるという簡便な作業にて、上述した如くの押さえ部材80Aの組付構造を実現できるものであり、特別な組付手順を経ずとも非常に容易に製造が可能なものである。
図5は、図1に示すガス発生器の作動時におけるガスの流れを示す要部拡大断面図である。次に、この図5と前述の図1とを参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。
図1を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。伝火室55に収容された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬56の燃焼によってカップ状部材50は破裂または溶融し、上述の熱粒子が燃焼室60へと流れ込む。
流れ込んだ熱粒子により、燃焼室60に収容されたガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。燃焼室60にて発生したガスの大部分は、図5に示すように、フィルタ90の内部を通過し、その際、フィルタ90によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ90によって除去されてハウジングの外周縁部に位置する間隙部Sに流れ込む。
このとき、多量のガスが発生して燃焼室60の内圧が上昇することに伴い、比較的脆弱な部材である押さえ部材80Aは、図5に示すように、ガスの推力を受けて天板部21側に向けて移動するように変形し、天板部21の内周面およびフィルタ90の内周面に密着することになる。また、その際、燃焼室60の内圧が上昇することに伴い、上部側シェル20の天板部21も僅かに膨らむように変形することになるが、その変形後においても、押さえ部材80Aは、天板部21の内周面およびフィルタ90の内周面に密着した状態が維持されることになる。
ここで、より詳細には、押さえ部材80Aの第1当接部81には、殆ど変形は生じず、当該第1当接部81は、天板部21側に接触するように移動するに留まる。一方、第2当接部82および接続部83には、大きな変形と移動が生じ、特に接続部83は押し潰されるように変形し、フィルタ90の内周面と天板部21の内面とによって構成される燃焼室60の隅部に押し遣られる。
このとき、上部側シェル20の天板部21も僅かに膨らむように変形することでフィルタ90の天板部21側の軸方向端部と天板部21との間には、図5に示す如くの隙間Gが生じることになるが、当該隙間Gと燃焼室60との間には、上述した移動および変形後の第1当接部81および接続部83が位置することになる。ここで、本実施の形態においては、押さえ部材80Aが金属製の網材にて構成されているため、当該押さえ部材80Aの第1当接部81および接続部83が、フィルタ90と同様に、ガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグを除去する除去手段として機能し、燃焼室60にて発生したガスの一部分は、当該押さえ部材80Aを通過し、さらに上述した隙間Gを通過してハウジングの外周縁部に位置する間隙部Sに流れ込む。
その後、ハウジングの内部の圧力の上昇に伴い、上部側シェル20のガス噴出口23を閉塞していたシールテープ24による封止が破られ、ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
以上において説明したように、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、上述した如くの単一の部品からなる押さえ部材80Aを用いることにより、作動時におけるガスの漏れ出しと非作動時におけるガス発生剤61の破砕とが同時に防止できることになる。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、押さえ部材80Aが、上述したように、フィルタ90に当接する第1当接部81とガス発生剤61に当接する第2当接部82との間に天板部21側に向けて膨出する板バネ形状の接続部83を有する構成のものであるため、当該接続部83が天板部21に当接することによって押さえ部材80Aに加えられた力Aが、確実に第1当接部81および第2当接部82に上述した付勢力B1,B2として付与されることになり、組付け後の状態において、押さえ部材80Aがフィルタ90の内周面およびガス発生剤61に十分な弾性付勢力をもって接触配置されることになる。したがって、当該構成を採用することにより、フィルタ90および当該押さえ部材80Aを通常の公差をもって製造することが可能になり、非常に厳格な寸法精度の管理を要せずにガス発生器1Aを比較的容易にかつ安価に製造することができる。
また、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、上述したように、押さえ部材80Aにスリット等を設ける必要もないため、複雑な形状加工を要しない。したがって、当該構成を採用することにより、この点においてもガス発生器1Aを比較的容易にかつ安価に製造することができる。さらには、押さえ部材80Aが角張った形状を有していないため、押さえ部材80Aにガス発生剤61が接触することによっても当該ガス発生剤61に破砕が生じることもない。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Aとすることにより、作動時におけるガスの漏れ出しと非作動時におけるガス発生剤61の破砕とが確実に防止でき、さらには従来に比してより安価にかつ容易に製造することができるガス発生器とすることができる。
なお、図2を参照して、非作動時におけるガス発生剤61の破砕を確実に防止しつつ、押さえ部材80Aによるガス発生剤61の安定的な保持を実現するためには、組付け後の状態において、第1当接部81の底板部11側に位置する軸方向端部が、ハウジングの周壁部12,22の軸方向に沿って、第2当接部82のうちの最も底板部11側に位置する部分と同じ位置かそれよりもさらに底板部11側に位置していることが好ましい。ここで、図2においては、第1当接部81の底板部11側に位置する軸方向端部が、図中に示す距離Dだけ第2当接部82のうちの最も底板部11側に位置する部分よりもさらに底板部11側に位置している場合を図示している。
このように構成することにより、燃焼室60に充填されたガス発生剤61の上面をほぼ全面にわたって均等に底板部11側に向けて押し付けることができるとともに、組付け時における押さえ部材80Aのがたつき等が防止できることになる。
また、図5を参照して、作動時におけるガスの漏れ出しを確実に防止するためには、第1当接部81の軸方向に沿った長さが、作動時において天板部21が膨らむように変形することで生じ得る隙間Gの想定される軸方向長さよりも十分に大きく設定されていることが好ましい。
このように構成することにより、作動時において、上記隙間Gと燃焼室60との間に移動および変形後の第1当接部81および接続部83が確実に位置することになるため、結果としてガスがフィルタ90または押さえ部材80Aの少なくともいずれかを必ず通過するようになり、ガスの漏れ出しおよびこれに伴ったスラグの流出を確実に防止することができる。
また、図5に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aとすることにより、作動時において燃焼室60に面する部分の天板部21の内面がすべて押さえ部材80Aによって覆われることになるため、当該天板部21を覆う部分の押さえ部材80Aにガスが吹き付けられることになり、従来のガス発生器に比べてより効率的にスラグを捕集することも可能になる。
また、図1ないし図4に示すように、本実施の形態においては、押さえ部材80Aの第1当接部81と接続部83との境界部が曲げ返されることにより、当該境界部の先端面が先鋭な形状を有することなく湾曲面にて構成されるようにしている。このように構成することにより、組付け時において凹凸形状を有するフィルタ90の内周面に押さえ部材80Aが引っ掛かることが抑制でき、スムーズな組付けが実現可能になる。
さらには、本実施の形態においては、押さえ部材80Aが金属製の網材にて構成されているため、当該金属製の網材の網目の大きさや、当該網材を構成する金属線材の太さや材料、さらには当該金属線材の織り方や編み方等を変更することにより、当該押さえ部材80Aの弾性変形のし易さ等を種々調整することも可能であり、仕様に応じて最適な押さえ部材を実現できる点においても有利となる。
(第1変形例)
図6は、上述した本発明の実施の形態1に基づいた第1変形例に係る押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図である。次に、この図6を参照して、本第1変形例に係る押さえ部材80Bについて説明する。
図6に示すように、第1変形例に係る押さえ部材80Bは、第1当接部81および接続部83の構成において上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと同様の構成を有しており、第2当接部82の全体が、接続部83が膨出する側とは反対側に向けて膨出した湾曲部を有している点においてのみ上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと異なる構成を有している。
このような構造の押さえ部材80Bを上述した実施の形態1における押さえ部材80Aに代えてガス発生器1Aに組付けた場合には、第2当接部82の湾曲部が複数の粒状成形体からなるガス発生剤61に当接することでより平坦な形状に変形することになり、当該湾曲部自体がガス発生剤61を保持するための弾性付勢力を発現する部位として機能することになる。
したがって、本第1変形例に係る押さえ部材80Bを備えたガス発生器とすることにより、上述した実施の形態1において説明した効果に加え、燃焼室60に充填されたガス発生剤61の上面をほぼ全面にわたってより均等に底板部11側に向けて押し付けることが可能になり、非作動時におけるガス発生剤61の破砕を確実に防止しつつ、押さえ部材80Bによるガス発生剤61の安定的な保持が実現可能になる効果が得られる。
(第2変形例)
図7は、上述した本発明の実施の形態1に基づいた第2変形例に係る押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図である。次に、この図7を参照して、本第2変形例に係る押さえ部材80Cについて説明する。
図7に示すように、第2変形例に係る押さえ部材80Cは、第1当接部81および接続部83の構成において上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと同様の構成を有しており、第2当接部82の中央部の一部が、接続部83が膨出する側とは反対側に向けて膨出した湾曲部を有している点においてのみ上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと異なる構成を有している。
このような構造の押さえ部材80Cを上述した実施の形態1における押さえ部材80Aに代えてガス発生器1Aに組付けた場合には、第2当接部82の中央部に位置する湾曲部が複数の粒状成形体からなるガス発生剤61に当接することでより平坦な形状に変形することになり、当該湾曲部自体がガス発生剤61を弾性付勢する弾性付勢力を発現する部位として機能することになる。
したがって、本第2変形例に係る押さえ部材80Cを備えたガス発生器とすることにより、上述した実施の形態1において説明した効果に加え、燃焼室60に充填されたガス発生剤61の上面をほぼ全面にわたってより均等に底板部11側に向けて押し付けることが可能になり、非作動時におけるガス発生剤61の破砕を確実に防止しつつ、押さえ部材80Cによるガス発生剤61の安定的な保持が実現可能になる効果が得られる。
ここで、第2当接部82の全体を湾曲部にて構成した上記第1変形例においては、場合によっては、第2当接部82のうちの内側バネ部86に連続する部分(すなわち、第2当接部82の周縁部近傍)において中央部よりも比較的強い弾性付勢力が局所的に発現することが想定され、本第2変形例は、このような場合に第1変形例よりもより均等に燃焼室60に充填されたガス発生剤61の上面を底板部11側に向けて押し付けることが可能になる点で有利となるものである。
(第3変形例)
図8は、上述した本発明の実施の形態1に基づいた第3変形例に係る押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図である。次に、この図8を参照して、本第3変形例に係る押さえ部材80Dについて説明する。
図8に示すように、第3変形例に係る押さえ部材80Dは、第1当接部81および接続部83の構成において上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと同様の構成を有しており、第2当接部82が、滑らかに連続して湾曲する凹凸部を含んでいる点においてのみ上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと異なる構成を有している。
このような構造の押さえ部材80Dを上述した実施の形態1における押さえ部材80Aに代えてガス発生器1Aに組付けた場合には、第2当接部82に設けられた凹凸部が組付け時において複数の粒状成形体からなるガス発生剤61に個別に当接することになり、燃焼室60て充填されたガス発生剤61の上面をより均すことが可能になる。
したがって、本第3変形例に係る押さえ部材80Dを備えたガス発生器とすることにより、上述した実施の形態1において説明した効果に加え、より高い密度でガス発生剤61を燃焼室60に充填させることが可能になる効果が得られる。
(第4変形例)
図9は、上述した本発明の実施の形態1に基づいた第4変形例に係る押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図である。次に、この図9を参照して、本第4変形例に係る押さえ部材80Eについて説明する。
図9に示すように、第4変形例に係る押さえ部材80Eは、第2当接部82および接続部83の構成において上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと同様の構成を有しており、第1当接部81の組付け後において天板部21側に位置することとなる軸方向端部に、当該軸方向端部から径方向外側に向けて延設されることでフィルタ90の天板部21側の端部に引っ掛けられることとなる引っ掛け部87が設けられている点においてのみ上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと異なる構成を有している。
このような構造の押さえ部材80Eを上述した実施の形態1における押さえ部材80Aに代えてガス発生器1Aに組付けた場合には、組付け時において当該引っ掛け部87がフィルタ90の天板部21側の軸方向端部に係止されることになるため、上述した実施の形態1において説明した効果に加え、組付作業がより容易化する効果が得られる。
(第5変形例)
図10は、上述した本発明の実施の形態1に基づいた第5変形例に係る押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図である。次に、この図10を参照して、本第5変形例に係る押さえ部材80Fについて説明する。
図10に示すように、第5変形例に係る押さえ部材80Fは、第1当接部81および第2当接部82の構成において上述した実施の形態1における押さえ部材80Aとほぼ同様の構成を有しており、接続部83のうちの第2当接部82に連続する部分である内側バネ部86が、非組付状態において、接続部83と第2当接部82との境界部から遠ざかるにつれて外側に向けて傾斜する傾斜形状を有している点において上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと異なる構成を有している。
このような構造の押さえ部材80Fを上述した実施の形態1における押さえ部材80Aに代えてガス発生器1Aに組付けた場合にも、組付けに際して接続部83が内側に向けて倒れ込むように変形する限りにおいては、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
(第6変形例)
図11は、上述した本発明の実施の形態1に基づいた第6変形例に係る押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図である。次に、この図11を参照して、本第6変形例に係る押さえ部材80Gについて説明する。
図11に示すように、第6変形例に係る押さえ部材80Gは、上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと異なり、微細孔88が多数形成された金属製の板状部材に曲げ加工を施すことで成形された成形品にて構成されている。ここで、微細孔88が多数形成された金属製の板状部材としては、たとえば普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)等からなるパンチングメタルやフックメタル、エキスパンドメタル等が利用できる。
ここで、押さえ部材80Gは、筒板状の第1当接部81と、板状の第2当接部82と、組付け後において天板部21側に向けて膨出する板バネ形状の接続部83とを含んでおり、その外形は、おおよそ上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと同じである。
このような構造の押さえ部材80Gを上述した実施の形態1における押さえ部材80Aに代えてガス発生器1Aに組付けた場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
(第7変形例)
図12は、上述した本発明の実施の形態1に基づいた第7変形例に係る押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図であり、図13は、当該第7変形例に係る押さえ部材を具備したガス発生器の作動時におけるガスの流れを示す要部拡大断面図である。次に、これら図12および図13を参照して、本第7変形例に係る押さえ部材80Gおよびこれを備えたガス発生器1A1について説明する。
図12に示すように、第7変形例に係る押さえ部材80Hは、上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと異なり、孔が形成されていない金属製の板状部材に曲げ加工を施すことで成形された成形品にて構成されている。ここで、孔が形成されていない金属製の板状部材の材質としては、たとえば普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)等が利用できる。
ここで、押さえ部材80Hは、筒板状の第1当接部81と、板状の第2当接部82と、組付け後において天板部21側に向けて膨出する板バネ形状の接続部83とを含んでおり、その外形は、おおよそ上述した実施の形態1における押さえ部材80Aと同じである。
図13に示すように、このような構造の押さえ部材80Hが組付けられたガス発生器1A1においては、作動時において、比較的脆弱な部材である押さえ部材80Hが、ガスの推力を受けて天板部21側に向けて移動するように変形し、天板部21の内周面およびフィルタ90の内周面に密着することになる。また、その際、燃焼室60の内圧が上昇することに伴い、上部側シェル20の天板部21も僅かに膨らむように変形することになるが、その変形後においても、押さえ部材80Hは、天板部21の内周面およびフィルタ90の内周面に密着した状態が維持されることになる。
ここで、より詳細には、押さえ部材80Hの第1当接部81には、殆ど変形は生じず、当該第1当接部81は、天板部21側に接触するように移動するに留まる。一方、第2当接部82および接続部83には、大きな変形と移動が生じ、特に接続部83は押し潰されるように変形し、フィルタ90の内周面と天板部21の内面とによって構成される燃焼室60の隅部に押し遣られる。
このとき、上部側シェル20の天板部21も僅かに膨らむように変形することでフィルタ90の天板部21側の軸方向端部と天板部21との間には、図13に示す如くの隙間Gが生じることになるが、当該隙間Gと燃焼室60との間には、上述した移動および変形後の第1当接部81および接続部83が位置することになる。ここで、本実施の形態においては、押さえ部材80Hが金属製の孔が設けられていない部材にて構成されているため、当該押さえ部材80Aの第1当接部81および接続部83が、当該隙間Gからガスが漏れ出すことを防止する遮蔽部材として機能することになり、燃焼室60にて発生したガスは、すべてフィルタ90の内部を通過してハウジングの外周縁部に位置する間隙部Sに流れ込むことになる。
したがって、本第7変形例に係る押さえ部材80Hを備えたガス発生器1A1とすることにより、上述した実施の形態1の場合と比較して作動時におけるガスの流れに差は生じるものの、上述した如くの単一の部品からなる押さえ部材80Hを用いることによって、作動時におけるガスの漏れ出しと非作動時におけるガス発生剤61の破砕とが同時に防止できることになる。そのため、当該構成を採用することにより、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果を得ることができる。
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2におけるガス発生器の概略図であり、図15は、図14に示すガス発生器の要部拡大断面図である。まず、これら図14および図15を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Bの構成について説明する。
図14に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Bは、押さえ部材80Iの構造が上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと相違している点を除き、その他の構成は上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと同様である。
図14および図15に示すように、燃焼室60のうち、天板部21側に位置する端部近傍には、押さえ部材80Iが配置されている。押さえ部材80Iは、主として、粒状の成形体からなるガス発生剤61を底板部11側に向けて弾性付勢しつつこれを保持することにより、ガス発生剤61が破砕することを防止するための部材である。具体的には、押さえ部材80Iは、フィルタ90の天板部21側の部分に内挿されており、これにより、押さえ部材80Iは、燃焼室60の上記端部近傍において、天板部21とガス発生剤61との間に位置している。
押さえ部材80Iは、金属製の網材に曲げ加工を施すことで所定の形状に成形された成形品からなる。ここで、押さえ部材80Iを構成する金属製の網材としては、上述した実施の形態1において例示したものと同様のものを用いることができる。
金属製の網材に上述した曲げ加工が施されることにより、押さえ部材80Iは、フィルタ90の内周面に当接する第1当接部81と、ガス発生剤61に面するとともに当該ガス発生剤61に当接する第2当接部82と、これら第1当接部81および第2当接部82を接続する接続部83とを含んでいる。
第1当接部81は、筒板状の形状を有しており、その外周面がフィルタ90の内周面に当接している。第2当接部82は、板状の形状を有しており、天板部21から距離をもって位置しているとともに、その底板部11側の表面がガス発生剤61に当接している。接続部83は、第1当接部81の天板部21側の軸方向端部と第2当接部82の周縁部とを接続する環状形状を有しており、第1当接部81と第2当接部82との間に概ね位置している。
接続部83は、第1当接部81の上述した軸方向端部および第2当接部82の上述した周縁部よりも天板部21側に向けて膨出する板バネ形状を有している。より詳細には、接続部83は、膨出した板バネ形状を有する当該接続部83の先端に位置するとともに天板部21に当接した先端当接部84と、第1当接部81に連続する部分である外側バネ部85と、第2当接部82に連続する部分である内側バネ部86とを有している。なお、先端当接部84は、外側バネ部85と内側バネ部86とを連結する部位でもある。
ここで、上述したように先端当接部84が天板部21に当接することにより、当該先端当接部84、外側バネ部85および内側バネ部86を含む接続部83は、その全体が底板部11側であってかつ内側(すなわち、ハウジングの径方向における中心側)に向けて押し曲げられた状態とされている。より詳細には、外側バネ部85および内側バネ部86は、先端当接部84が天板部21に当接することで当該先端当接部84が移動することにより、いずれも外力が加えられていない場合に比べて上記内側に向けて傾斜した姿勢をとっている。
これにより、図15に示すように、天板部21によって接続部83に加えられた力Aの一部は、傾斜した姿勢にある外側バネ部85を介して第1当接部81に加わることになり、当該第1当接部81に加わった力は、当該第1当接部81をフィルタ90の内周面に向けて弾性付勢する付勢力B1となる。一方、天板部21によって接続部83に加えられた力Aの残る一部は、傾斜した姿勢にある内側バネ部86を介して第2当接部82に加わることになり、当該第2当接部82に加わった力は、当該第2当接部82をガス発生剤61に向けて弾性付勢する付勢力B2となる。
以上により、押さえ部材80Iは、その第1当接部81がフィルタ90の内周面に所定の付勢力をもって弾性付勢された状態で接触配置されることになるとともに、その第2当接部82がガス発生剤61に所定の付勢力をもって弾性付勢された状態で接触配置されることになる。したがって、燃焼室60に収容された複数の粒状成形体からなるガス発生剤61は、押さえ部材80Iによって底板部11側に向けて弾性付勢された状態で保持されることになり、非作動時におけるガス発生剤61の破砕が未然に防止できることになる。
図16は、図14に示すガス発生器に具備された押さえ部材の非組付状態における一部破断側面図である。次に、この図16を参照して、非組付状態における押さえ部材80Iの構造について説明する。
上述したように、本実施の形態においては、押さえ部材80Iとして金属製の網材の成形品を用いている。これにより、押さえ部材80Iは、適度な弾性を有することになり、上述した付勢力B1,B2の大きさは、主として押さえ部材80Iの接続部83の非組付状態における構造によって決まることになる。また、当該付勢力B1,B2を十分に発現させるためには、押さえ部材80Iの接続部83が天板部21によって底板部11側であってかつ内側に向けて押し曲げられた状態とされていることが重要であり、接続部83が当該状態に押し曲げられるか否かについても、基本的には押さえ部材80Iの接続部83の非組付状態における構造によって決まることになる。
図16に示すように、本実施の形態においては、押さえ部材80Iの第1当接部81に連続する部分である接続部83の外側バネ部85が、非組付状態において、接続部83と第1当接部81の境界部から遠ざかるにつれて内側に向けて傾斜する傾斜形状を有している。このように構成することにより、接続部83の先端当接部84に軸方向に沿って外力が加えられた場合(すなわち、図16において上方から下方に向けて外力が加えられた場合)に、接続部83が、その内側に向けて倒れ込むように変形するようになる。したがって、上述した付勢力B1,B2を十分に大きなものとすることができる。
また、この場合において、押さえ部材80Iの第2当接部82に連続する部分である接続部83の内側バネ部86が、非組付状態において、軸方向に略平行となるようにより起立した直立形状を有していることにより、第2当接部82をガス発生剤61に向けて弾性付勢する付勢力B2をより大きく確保することも可能になる。
したがって、図16に示す如くの非組付状態における構造を有する押さえ部材80Iを用いることにより、図14および図15において示した押さえ部材80Iの組付構造を実現することができる。
なお、ここでは、その説明は省略するが、本実施の形態におけるガス発生器における組立態様および作動時における動作は、基本的に上述した実施の形態1におけるそれらと同様のものとなる。
以上において説明した本実施の形態におけるガス発生器1Bにあっても、上述した如くの単一の部品からなる押さえ部材80Iを用いることによって、作動時におけるガスの漏れ出しと非作動時におけるガス発生剤61の破砕とが同時に防止できることになる。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Bにあっても、フィルタ90および当該押さえ部材80Iを通常の公差をもって製造することが可能になり、非常に厳格な寸法精度の管理を要せずにガス発生器1Bを比較的容易にかつ安価に製造することができる。
また、本実施の形態におけるガス発生器1Bにあっても、複雑な形状加工を要しないため、この点においてもガス発生器1Bを比較的容易にかつ安価に製造することができる。さらには、押さえ部材80Iが角張った形状を有していないため、押さえ部材80Iにガス発生剤61が接触することによっても当該ガス発生剤61に破砕が生じることもない。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Bとすることにより、作動時におけるガスの漏れ出しと非作動時におけるガス発生剤61の破砕とが確実に防止でき、さらには従来に比してより安価にかつ容易に製造することができるガス発生器とすることができる。
また、本実施の形態におけるガス発生器1Bとすることにより、作動時において燃焼室60に面する部分の天板部21の内面がすべて押さえ部材80Iによって覆われることになるため、当該天板部21を覆う部分の押さえ部材80Iにガスが吹き付けられることになり、従来のガス発生器に比べてより効率的にスラグを捕集することも可能になる。
また、図14ないし図16に示すように、本実施の形態においては、押さえ部材80Iの第1当接部81の底板部11側に位置する軸方向端部が、ハウジングの周壁部12,22の軸方向に沿って径方向内側に向けて曲げ返された曲げ返し部89を有している。これにより、当該第1当接部81の上記軸方向端部の先端面が先鋭な形状を有することなく湾曲面にて構成されることになる。したがって、このように構成することにより、組付け時において凹凸形状を有するフィルタ90の内周面に押さえ部材80Iが引っ掛かることが抑制でき、スムーズな組付けが実現可能になる。
また、図15を参照して、非作動時におけるガス発生剤61の破砕を確実に防止しつつ、押さえ部材80Iによるガス発生剤61の安定的な保持を実現するためには、組付け後の状態において、第1当接部81の底板部11側に位置する軸方向端部が、ハウジングの周壁部12,22の軸方向に沿って第2当接部82のうちの最も底板部11側に位置する部分と同じ位置かそれよりもさらに底板部11側に位置していることが好ましい。ここで、図15においては、第1当接部81の底板部11側に位置する軸方向端部が、図中に示す距離Dだけ第2当接部82のうちの最も底板部11側に位置する部分よりもさらに底板部11側に位置している場合を図示している。
このように構成することにより、燃焼室60に充填されたガス発生剤61の上面をほぼ全面にわたって均等に底板部11側に向けて押し付けることができるとともに、組付け時における押さえ部材80Iのがたつき等が防止できることになる。
さらには、本実施の形態においては、押さえ部材80Iが金属製の網材にて構成されているため、当該金属製の網材の網目の大きさや、当該網材を構成する金属線材の太さや材料、さらには当該金属線材の織り方や編み方等を変更することにより、当該押さえ部材80Iの弾性変形のし易さ等を種々調整することも可能であり、仕様に応じて最適な押さえ部材を実現できる点においても有利となる。
なお、上述した本発明の実施の形態1および2およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨に照らして許容される範囲で当然に相互に組み合わせることが可能である。
加えて、上述した本発明の実施の形態1および2およびその変形例においては、本発明をいわゆるディスク型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。