JP6225600B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents
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シミには、肉眼で肌表面に見えるシミと、肉眼では見えない、肌内部に潜在している隠れシミとがある。隠れシミは、時間が経過すればいずれ肌表面にシミとして出てくることから、肉眼で見える通常のシミに対するケアだけでは、美白効果が実感できない場合があった。
特許文献2には、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)によるヒアルロン酸産生増強作用を利用した皮膚外用組成物が皮膚の萎縮を改善するのに有用であることが記載されている。
特許文献3には、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)をリポソームの構成成分として配合したものを含有する化粧料が、肌をなめらかにする効果、肌にハリを与える効果を有しており、かつ、べたつき感がなく、しっとり感を付与できることが記載されている。
しかしながら、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)は、水への溶解性が低く、沈殿などを生じることがあり、皮膚外用剤に配合した場合に、保湿効果の持続性やシワ改善効果が十分とは言えないことがあった。
すなわち、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)を含有する皮膚外用剤において、肌へのなじみ性といった肌への感触が良好であり、かつ保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果、シミ改善効果、かぶれ改善効果といった肌の改善効果に優れる皮膚外用剤は未だ開発されていなかった。
本発明の皮膚外用剤に用いられる(a)成分は、式[I]で示される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩である。以下、「1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩」を「置換環状ホスファチジン酸(塩)」とも表記する。
式[I]中、Rは炭素数10〜22のアシル基であり、好ましくは、炭素数12〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪酸由来のアシル基である。
脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれら脂肪酸の混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、大豆リン脂質由来脂肪酸、卵黄リン脂質由来脂肪酸が挙げられる。中でも好ましくは、大豆リン脂質由来脂肪酸、卵黄リン脂質由来脂肪酸であり、更に好ましくは、大豆リン脂質由来脂肪酸である。
また、本発明の皮膚外用剤に用いられる置換環状ホスファチジン酸(塩)の純度や形態は特に限定されない。例えば、純品のもの、賦形剤を含有するもの、液体のもの、粉体のものを用いることが可能である。具体的には、賦形剤としてシクロデキストリンを用いて凍結乾燥により得られた、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を含有する粉体が挙げられる。この凍結乾燥方法によれば、賦形剤によりさらさらとした取り扱いやすい脂質とすることが可能である。
なお、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸は、商業的には、日油株式会社製「CyPA−ET」、「CyPA−PW」として入手することができる。「CyPA−ET」および「CyPA−PW」は、いずれも大豆リン脂質由来脂肪酸のアシル基である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を含有し、大豆リン脂質由来脂肪酸の脂肪酸組成は、パルミチン酸20.4質量%、ステアリン酸3.2質量%、オレイン酸11.3質量%、リノール酸57.6質量%、リノレン酸6.1質量%、その他1.4質量%である。
本発明の皮膚外用剤に用いられる(b)成分は、炭素数5〜8のアルカンジオールであり、直鎖あるいは分岐炭化水素に2個の水酸基が付加した構造を有する。アルカンジオールの炭素数が5未満の場合は、皮膚に刺激を与えることがあり、炭素数が8を超える場合は、シワ改善効果、シミ改善効果が低下することがある。
本発明の皮膚外用剤に用いられる(c)成分は、α−ヒドロキシ酸またはその塩であり、自然界に広く存在する有機酸の一種であり、カルボン酸のα位に水酸基を有する化合物である。以下、「α−ヒドロキシ酸またはその塩」を「AHA」とも表記する。AHAは、特に果物に多く含まれているので、フルーツ酸とも呼ばれている。またAHAは、生体内にも存在し、例えば、クエン酸回路にてATP(アデノシン三リン酸)などのエネルギーの生産、アミノ酸などの生合成に係る物質の生産に関わっていることが知られている。
本発明の皮膚外用剤には、提供される剤形や形態に応じて、外用剤や医薬品に常用されている様々な添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、配合することができる。
〔実施例1〜6、比較例1〜5〕
表1(実施例1〜6)および表2(比較例1〜5)に示す配合比率で、常法に従って、化粧水の皮膚外用剤を調製した。
得られた皮膚外用剤を用いて、6項目について下記の方法により評価を行った。結果を表1および表2に示す。
20名の女性(30〜48歳)をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を全顔に使用した際の感触について下記のように判定した。
2点:肌へのなじみが明らかに良いと感じた場合。
1点:肌へのなじみがやや良いと感じた場合。
0点:肌へのなじみが悪いと感じた場合。
◎:合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定した人が0人:肌へのなじみ性が非常に良い皮膚外用剤である。
○:合計点が25点以上35点未満、または合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定した人が1人以上2人以下:肌へのなじみ性が良い皮膚外用剤である。
△:合計点が15点以上25点未満:肌へのなじみ性がやや良い皮膚外用剤である。
×:合計点が15点未満:肌へのなじみ性が悪い皮膚外用剤である。
20名の女性(30〜48歳)をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を冬(2月)の朝、全顔に使用した後、その日の夕方の肌の状態について下記のように判定した。
2点:保湿感があると感じた場合。
1点:保湿感がややあると感じた場合。
0点:保湿感がないと感じた場合。
◎:合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定した人が0人:非常に保湿効果の高い皮膚外用剤である。
○:合計点が25点以上35点未満、または合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定した人が1人以上2人以下:保湿効果の高い皮膚外用剤である。
△:合計点が15点以上25点未満:やや保湿効果の高い皮膚外用剤である。
×:合計点が15点未満:保湿効果の低い皮膚外用剤である。
目尻にシワがある22名の女性(30〜65歳)をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を1日2回ずつ連続3ヶ月間、目尻に使用し、3ヶ月後の目尻のシワの状態について下記のように評価した。
皮膚外用剤の使用開始前と3ヶ月間の連用塗布後の目尻のシワ(同一部位)について、軽く目を閉じた状態での目の際から約5mm離れた部位から10×10mm以上の範囲でシワレプリカ(有限会社アサヒバイオメッド製「シリコンASB−01−W」)を採取した。採取したシワレプリカについて三次元解析(GFM社製「PRIMOS(付属のソフトウェアを含む)」)を実施し、最大シワ平均深さ(μm、解析範囲に存在する最大体積をもつシワに対する平均深さ)を算出した。
使用開始前のシワレプリカと3ヶ月間の連用塗布後のシワレプリカは、自動位置合わせ機能により形状のマッチングを実施した。得られた最大シワ平均深さから、下記の式よりシワ改善率を算出した。なお、表1および表2中のシワ改善率はパネラー22名の平均値である。
◎:シワ改善率35%以上:非常に優れたシワ改善効果を有する皮膚外用剤である。
○:シワ改善率25%以上35%未満:優れたシワ改善効果を有する皮膚外用剤である。
△:シワ改善率15%以上25%未満:わずかにシワ改善効果を有する皮膚外用剤である。
×:シワ改善率15%未満:シワ改善効果を有しない皮膚外用剤である。
20名の女性(30〜48歳)をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を1日2回ずつ連続1ヶ月間、全顔に使用し、1ヶ月後の肌の状態について下記のように判定した。
2点:肌のキメが明らかに整ったと感じた場合。
1点:肌のキメがやや整ったと感じた場合。
0点:肌のキメを整える効果が見られないと感じた場合。
◎:合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定した人が0人:非常に優れた肌のキメを整える効果を有する皮膚外用剤である。
○:合計点が25点以上35点未満、または合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定した人が1人以上2人以下:優れた肌のキメを整える効果を有する皮膚外用剤である。
△:合計点が15点以上25点未満:わずかに肌のキメを整える効果を有する皮膚外用剤である。
×:合計点が15点未満:肌のキメを整える効果を有しない皮膚外用剤である。
20名の女性(30〜48歳)をパネラーとし、各パネラーが洗顔した後に皮膚外用剤を1日2回ずつ連続4週間、全顔に使用した。試験開始前および試験終了後に、コスメティック用全顔撮影装置(Facial Stage DM−3、ショットモリテックス(株)製)で、全顔をブラックライト撮影し、肉眼では見えない肌内部に潜在しているシミの状態について評価した。画像解析法にて隠れたシミの平均面積を計測し、隠れシミ改善率を下記の式より算出した。なお、表1および表2中の隠れシミ改善率はパネラー20名の平均値である。
◎:隠れシミ改善率10%以上:非常に優れた隠れシミ改善効果を有する皮膚外用剤である。
○:隠れシミ改善率5%以上10%未満:優れた隠れシミ改善効果を有する皮膚外用剤である。
△:隠れシミ改善率2%以上5%未満:わずかに隠れシミ改善効果を有する皮膚外用剤である。
×:隠れシミ改善率2%未満:隠れシミ改善効果を有しない皮膚外用剤である。
オムツかぶれで悩む高齢者20名をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を1日2回ずつ連続1週間、お尻まわりに塗布した。1週後の肌の状態について下記のように判定した。
2点:かぶれが明らかに改善したと感じた場合。
1点:かぶれがやや改善したと感じた場合。
0点:かぶれ改善効果が見られないと感じた場合。
◎:合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定した人が0人:非常に優れたかぶれ改善効果を有する皮膚外用剤である。
○:合計点が25点以上35点未満、または合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定した人が1人以上2人以下:優れたかぶれ改善効果を有する皮膚外用剤である。
△:合計点が15点以上25点未満:わずかにかぶれ改善効果を有する皮膚外用剤である。
×:合計点が15点未満:かぶれ改善効果を有しない皮膚外用剤である。
2)日油株式会社製「CyPA−PW」:大豆リン脂質由来脂肪酸のアシル基である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を10質量%、シクロデキストリンを50質量%含有する粉末。なお、表中の(製品)の数値は製品である「CyPA−PW」濃度を表す。
具体的には、比較例1では、(b)および(c)成分が含まれていないので、保湿効果の持続性、シワ改善効果、シミ改善効果、かぶれ改善効果は若干しか得られておらず、肌へのなじみ性は無く、肌のキメを整える効果が得られていない。
比較例2では、(a)成分が含まれていないので、肌へのなじみ性、肌のキメを整える効果は認められるものの、シミ改善効果は若干しか得られておらず、保湿効果の持続性、シワ改善効果、かぶれ改善効果は得られていない。
比較例3では、(b)成分が含まれていないので、肌のキメを整える効果は認められるものの、肌へのなじみ性、保湿効果の持続性、シワ改善効果、シミ改善効果、かぶれ改善効果は若干しか得られていない。
比較例4では、(c)成分が含まれていないので、肌へのなじみ性、保湿効果の持続性、シワ改善効果、シミ改善効果は認められるものの、肌のキメを整える効果、かぶれ改善効果は若干しか得られていない。
比較例5では、(b)成分の代わりに1 ,3−ブタンジオールとジプロピレングリコールを配合しているので、肌へのなじみ性は認められるものの、保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果、シミ改善効果は若干しか得られておらず、かぶれ改善効果は得られていない。
表3に示す配合比率で、常法に従って、水中油型乳液の皮膚外用剤を調製した。
得られた皮膚外用剤を用いて、上記実施例と同様の方法により6項目について評価を行った。結果を表3に示す。
2)大日本製薬株式会社製「エコガーム」
3)BF−Goodrich社製「カーボポール940」
表4に示す配合比率で、常法に従って、水中油型クリームの皮膚外用剤を調製した。
得られた皮膚外用剤を用いて、上記実施例と同様の方法により6項目について評価を行った。結果を表4に示す。
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