JP6222264B2 - 蛍光体粒子及びその製造方法並びに発光装置 - Google Patents
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Description
上記に関連して有機材料、無機材料及びガラス材料から選ばれるコーティングを有する蛍光体を用いた発光素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。また金属酸化物粉末が含有された二酸化ケイ素膜で硫化物蛍光体を被覆した被覆蛍光体が知られている(例えば、特許文献2参照)。
本開示の第一の態様は、チオガレート蛍光体を含む粒子と、前記粒子の表面に配置される酸化ホウ素を含む付着物と、を備える蛍光体粒子である。
本実施形態の蛍光体粒子は、チオガレート蛍光体を含む粒子(以下、「コア粒子」ともいう)と、前記粒子の表面に配置される酸化ホウ素を含む第一の付着物と、を備える硫化物系の蛍光体粒子である。
(M1 1−xM2 x)Ga2−yS4−z (Ia)
式(Ia)中、M1は、Sr、Be、Mg、Ca、Ba及びZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Eu及びCeからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、x、y及びzは、0.03≦x≦0.25、−0.2≦y≦0.2、及び−0.2≦z≦0.2を満たす。
(Sr1−v−wM1 wEuv)Ga2S4 (Ib)
式(Ib)中、M1は、Be、Mg、Ca、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、v及びwは、0.03≦v≦0.25、0≦w<0.97及びv+w<1を満たす。
wは0以上0.97未満であり、0以上0.9以下が好ましく、0以上0.8以下がより好ましい。
一般式(Ib)で表される組成を有するチオガレート蛍光体は、緑色から黄緑色の範囲の蛍光を発するものであれば、Gaの一部がAl及びInからなる群より選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよく、Sの一部がSe及びTeからなる群より選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。
第一の付着物における酸化ホウ素の存在は、蛍光体粒子の表面について赤外線吸収スペクトルを測定することで確認することができる。具体的には、FT−IR測定装置を用いる全反射測定法(ATR法)によって、蛍光体粒子の表面について赤外線吸収スペクトルを測定し、酸化ホウ素に特徴的なピーク(例えば、1260cm−1付近)の存在を確認することで、蛍光体粒子の表面に酸化ホウ素が存在することを確認することができる。また、酸化ホウ素の前駆体となる化合物に特徴的なピーク(例えば、ホウ酸に由来する2800cm−1から3400cm−1付近)の消失で確認してもよい。
また酸化ホウ素の含有量は、例えば、蛍光体粒子全体におけるホウ素元素の含有率として0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が更に好ましく、1.6質量%以上が特に好ましい。酸化ホウ素の含有量の上限は特に制限されず、蛍光体粒子全体におけるホウ素元素の含有率として、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7.6質量%以下が更に好ましく、5.0質量%以下が更に好ましく、3.3質量以下が特に好ましい。酸化ホウ素の含有量がホウ素元素の含有率として0.1質量%以上であると耐湿性がより向上する傾向があり、10質量%以下であるとより優れた発光効率を達成できる傾向がある。
蛍光体粒子に含まれるホウ素元素の含有率は、例えばICP分析(誘電結合プラズマ発光分析)装置を用いて測定できる。第一の付着物が酸化ホウ素以外のホウ素化合物を含む場合、それらに由来するホウ素元素は、蛍光体粒子に含まれるホウ素元素の含有率に含まれる。
第一の付着物のコア粒子への付着は、物理的な付着力(例えば、分子間力)によるものであっても、化学結合によるものであってもよい。
測定対象とする蛍光体粒子は、長径が3μm以上10μm以下であるものから無作為に選択する。複数の蛍光体粒子が凝集体を形成している場合には、凝集体を構成するそれぞれの蛍光体粒子を測定対象とする。またSEM画像観察は、蛍光体粒子の断面観察をコア粒子と付着物とのコントラスト差を利用して、1万倍から2万倍で行う。なお、蛍光体粒子の長径は、蛍光体粒子の断面の最外周部から選ばれる2点うち、距離が最大となる2点を結ぶ線分である。
蛍光体粒子に含まれるアルミニウム元素の含有率は、既述のホウ素元素の含有率と同様にして測定できる。
第二の付着物の第一の付着物への付着は、物理的な付着力(例えば、分子間力)によるものであっても、化学結合によるものであってもよい。
本実施形態の蛍光体粒子の製造方法は、チオガレート蛍光体を含む粒子(コア粒子)と、ホウ素化合物とを含む混合物に、温度50℃以上150℃以下、相対湿度80%以上100%以下の条件で第一の処理をすることと、第一の処理後の混合物に、温度200℃以上1000℃以下の条件で第二の処理をすることと、を含む。
なお、メタホウ酸塩等におけるMは、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。
またコア粒子とホウ素化合物の混合方法は特に制限されず、通常用いられる混合方法から適宜選択すればよい。具体的には、ダブルコーン型混合機等を用いて混合物を得ることができる。
更にコア粒子とホウ素化合物の混合は、乾式混合処理、湿式混合処理、スプレイドライ処理等のいずれで行ってもよく、乾式混合処理で行うことが好ましい。
より均一な付着物を得る観点から、第一の処理における温度は、85℃以上140℃以下が好ましく、100℃以上140℃以下がより好ましい。第一の処理における相対湿度は85%以上100%以下が好ましく、90%以上100%以下がより好ましい。また、第一の処理における圧力条件は特に制限されない。圧力条件は0.1MPa以上0.6MPa以下が好ましく、0.1MPa以上0.3MPa以下がより好ましく、0.2MPa以上0.3MPa以下が更に好ましい。
第一の処理の処理時間は、処理条件に応じて適宜選択することができる。処理時間は0.5時間以上50時間以下が好ましく、1時間以上10時間以下がより好ましい。
第一の処理は、例えば、プレッシャークッカーテスト装置(PCT装置)で行うことができる。
第二の処理における温度は、耐湿性及び耐熱性の観点から、300℃以上800℃以下が好ましく、400℃以上700℃以下がより好ましい。
第二の処理における圧力条件は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。
第二の処理の処理時間は、処理条件に応じて適宜選択することができる。処理時間は1時間以上100時間以下が好ましく、3時間以上20時間以下がより好ましい。
第二の処理は、例えば、焼成炉を用いて行うことができる。
また、第一の処理及び第二の処理は必要に応じて複数回繰り返してもよい。例えば、第一の処理を複数回繰り返した後、第二の処理を少なくとも1回行ってもよく、第一の処理及び第二の処理を行った後に更に第一の処理及び第二の処理を繰り返し行ってもよい。
(2Al(CH3)3+12O2→Al2O3+6CO2+9H2O)
このような酸化処理によりトリアルキルアルミニウムから酸化アルミニウムが生成する。また、有機アルミニウム化合物がトリアルコキシアルミニウムの場合、例えば酸化処理、又は加水分解と脱水処理との組合せで酸化アルミニウムを生成することができる。
本実施形態の発光装置は、前記蛍光体粒子及び樹脂を含む蛍光部材と、380nm以上485nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する光源と、を備える。
蛍光部材が前記蛍光体粒子を含むことで、耐湿性に優れ、長期信頼性の高い発光装置を構成することができる。
発光素子の発光スペクトルの半値幅は特に制限されない。半値幅は例えば、30nm以下とすることができる。
半導体発光素子としては、例えば、窒化物系半導体(InXAlYGa1−X−YN、ここでX及びYは、0≦X、0≦Y、X+Y≦1を満たす)を用いた青色、緑色等に発光する半導体発光素子を用いることができる。
蛍光体が他の蛍光体を更に含む場合、他の蛍光体は1種単独でも2種以上の組合せであってもよい。
式(II)中、p及びqは、0≦p≦1.0、0<q<1.0及びp+q<1.0を満たす。
(Ca1−r−s−tSrrBasEut)2Si5N8 (III)
式(III)中、r、s及びtは、0≦r≦1.0、0≦s≦1.0、0<t<1.0及びr+s+t≦1.0を満たす。
A2[M4 1−uMn4+ uF6] (IV)
式(IV)中、Aは、アルカリ金属及びNH4からなる群から選択される少なくとも1種であり、M4は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは0<u<0.2を満たす。
蛍光部材における蛍光体の構成及び樹脂に対する含有比は、目的等に応じて適宜選択することができる。
発光装置100は、可視光の短波長側の光を発し、発光ピーク波長が380nm以上485nm以下である窒化ガリウム系化合物半導体の発光素子10と、発光素子10を載置する成形体40と、を有する。成形体40は第1のリード20及び第2のリード30と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42とが一体成形されてなるものである。成形体40は底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極はそれぞれ第1のリード20及び第2のリード30とワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は蛍光部材50により被覆されている。蛍光部材50はエポキシ樹脂やシリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。蛍光部材50は発光素子10からの光を波長変換する緑色蛍光体(第一蛍光体71)及び赤色蛍光体(第二蛍光体72)を含む蛍光体70と樹脂とを含有してなる。第一蛍光体71は、本実施形態に係る酸化ホウ素を含む第一の付着物をコア粒子の表面に有する蛍光体粒子である。第一蛍光体71は、コア粒子上に酸化ホウ素を含む第一の付着物と酸化アルミニウムを含む第二の付着物とが配置された蛍光体粒子であってもよい。第二蛍光体は、式(II)若しくは(III)で表される組成を有する窒化物蛍光体又は式(IV)で表される組成を有するフッ化物蛍光体である。
出発原料としての(Sr,Eu)SO3及びGa(SO4)OHを目的の組成となるように秤量して乾式混合し、硫化水素雰囲気中、900℃で2時間焼成した。次に、焼成物に分散処理を施した後、分離、乾燥、フルイ処理をおこない、(Sr1−xEux)Ga2S4(x=0.03)で表される組成を有する蛍光体粉末(以下、「SGS蛍光体」ともいう)を得た。
得られたSGS蛍光体の発光ピーク波長は533nmであった。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)0.57gとを混合して混合物を得た。得られた混合物について、PCT装置を用いて、温度130℃、相対湿度100%、圧力0.27MPa、処理時間1時間の条件で第一の処理を行った。次いで、温度600℃、処理時間1時間の条件で第二の処理を行って、蛍光体粒子を得た。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)1.14gとを混合して混合物を得たこと以外は実施例1と同様に行って、蛍光体粒子を得た。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)2.29gとを混合して混合物を得たこと以外は実施例1と同様に行って、蛍光体粒子を得た。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)3.43gとを混合して混合物を得たこと以外は実施例1と同様に行って、蛍光体粒子を得た。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)5.72gとを混合して混合物を得たこと以外は実施例1と同様に行って、蛍光体粒子を得た。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)11.44gとを混合して混合物を得たこと以外は実施例1と同様に行って、蛍光体粒子を得た。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)17.16gとを混合して混合物を得たこと以外は実施例1と同様に行って、蛍光体粒子を得た。
参考例で得られたSGS蛍光体をそのまま蛍光体粒子として用いた。
参考例で得られたSGS蛍光体に対して、第一の処理を行わず、温度600℃、処理時間1時間の条件で第二の処理のみを行って蛍光体粒子を得た。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)3.43gとを混合して混合物を得た。得られた混合物について、PCT装置を用いて、温度130℃、相対湿度100%、圧力0.27MPa、処理時間1時間の条件で第一の処理を行い、第二の処理は行わずに、蛍光体粒子を得た。
SGS蛍光体に対して第一、第二の処理を行わず、ゾルゲル法による被覆処理を行った。具体的には、SGS蛍光体20gをエタノールに加えて懸濁させて、これに純水4.6g、Si(OEt)416.6gを加えて、さらに触媒としてアンモニア水を4.6g添加して60℃で加水分解させた。ゾルゲル法で形成された二酸化ケイ素で被覆されてなる蛍光体粒子を得た。
粉体用流動層CVD装置の反応管内に、SGS蛍光体15gを投入した。反応管下部よりテトラメトキシシランと窒素ガスの混合物(TMOS/N2)を0.04L/min、反応管下部よりO2を0.06L/min(いずれも25℃における流量)で送り込み、反応管温度300℃にて25hr反応を続けることにより、TMOS(組成Si(OCH3)4)の酸化処理をおこなった。次式で表わされる燃焼反応により、気相中で蛍光体表面に二酸化ケイ素被膜が堆積させて、二酸化ケイ素が付着した蛍光体粒子を得た。
(Si(OCH3)4+6O2→SiO2+4CO2+6H2O)
二酸化ケイ素で被覆された蛍光体粒子について、後述の評価方法により二酸化ケイ素の含有率を測定したところ、蛍光体粒子中に1.7質量%であった。
98hr反応を続けたこと以外は比較例5と同様に行って、二酸化ケイ素が付着した蛍光体粒子を得た。二酸化ケイ素の付着量は15.1質量%であった。
SGS蛍光体20gと、ホウ酸(H3BO3)3.43gとを混合して混合物を得たこと以外は実施例1と同様に行って、酸化ホウ素が付着した蛍光体粒子を得た。ホウ素の付着量は2.7質量%であった。
次に、粉体用流動層CVD装置の反応管内に、前記の酸化ホウ素が付着したSGS蛍光体20gを投入した。反応管下部よりトリメチルアルミニウムと窒素ガスの混合物(TMA/N2)を0.02L/min、反応管上部より酸素ガス(O2)を0.06L/min(いずれも25℃における流量)で送り込み、反応管温度300℃にて16hr反応を続けることにより、TMA(組成Al(CH3)3)の酸化処理(第三の処理)をおこない、酸化ホウ素を含む付着物上に酸化アルミニウムが付着した蛍光体粒子を得た。
粉体用流動層CVD装置の反応管内に、SGS蛍光体20gを投入した。反応管下部よりTMA/N2を0.02L/min、反応管上部よりO2を0.06L/min(いずれも25℃の流量)で送り込み、反応管温度300℃にて29hr反応を続けることにより、TMAの酸化処理をおこない、酸化アルミニウムが付着した蛍光体粒子を得た。アルミニウム元素の含有率を測定したところ、蛍光体粒子中に3.8質量%であった。
次に前記酸化アルミニウムが付着したSGS蛍光体20gとホウ酸(H3BO3)3.43gとを混合して混合物を得たこと以外は実施例1と同様に第一の処理及び第二の処理を行って、さらに酸化ホウ素が付着した蛍光体粒子を得た。ホウ素の付着量は2.5質量%であった。
上記で得られた蛍光体粒子について、以下の評価を行った。
(硫化度評価)
オートクレーブに、純水2mlと蛍光体粒子0.5gを入れ、更に銀片を蛍光体粒子と直接接触しないように入れた。85℃、2時間でオートクレーブ処理した後の銀片の外観変化を目視で観察し、銀片表面が硫化された程度(硫化度)を評価した。
目視評価で、銀片の硫化度が少なかったものをA、多いものをC、中間のものをBと評価した。評価結果を表1及び表2に示した。
上記で得られた蛍光体粒子について、フィッシャー・サブ・シーブ・サイザー(フィッシャー社製)を用いて、フィッシャー・サブ・シーブ・サイザーズ・ナンバー(F.S.S.S.N.)として平均粒径を測定した。
上記で得られた蛍光体粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面観察を行い、蛍光体粒子の長径に対する付着物の厚みの比率を以下の式で算出した。
粒径に対する付着物の厚みの比率(%)
=付着物の厚みの和÷(コア粒子の長径+付着物の厚みの和)×100
粒径に対する付着物の厚みの比率を3個の蛍光体粒子について求め、その算術平均として付着物の厚みの平均比率を算出した。なお、第一の付着物及び第二の付着物は、SEM画像におけるコントラスト差から区別可能であった。結果を表1及び表2に示した。なお、表2ではコア粒子に近い下層付着物と、下層付着物上に配置された上層付着物のそれぞれの厚みの平均比率として示した。
上記で得られた蛍光体粒子について、蛍光体粒子に含まれるホウ素元素の含有率を、ICP分析装置を用いて、以下のようにして算出した。
蛍光体粒子に含まれるホウ素元素の含有率(質量%)
=ホウ素元素の質量÷蛍光体粒子の総質量×100
評価結果を表1に示した。
上記で得られた蛍光体粒子について、蛍光体粒子に含まれるアルミニウム元素の含有率を、ICP分析装置を用いて、以下のようにして算出した。
蛍光体粒子に含まれるアルミニウム元素の含有率(質量%)
=アルミニウム元素の質量÷蛍光体粒子の総質量×100
評価結果を表1に示した。
上記で得られた蛍光体粒子について、蛍光体粒子に含まれるケイ素元素の含有率を、ICP分析装置を用いて、以下のようにして算出した。
蛍光体粒子に含まれるケイ素元素の含有率(質量%)
=ケイ素元素の質量÷蛍光体粒子の総質量×100
評価結果を表1に示した。
発光ピーク波長が455nmであるLEDチップ(発光素子)を用いて、蛍光体と組み合わせて表面実装型の発光装置を試作した。発光装置が発する混色光の色度座標がx=0.272、y=0.247付近となるように、上記で得られた蛍光体粒子と650nmに発光ピーク波長を持つ蛍光体であるCaAlSiN3:Euとを配合してシリコーン樹脂に添加し、混合分散して蛍光体含有樹脂組成物を得た。次に蛍光体含有樹脂組成物を発光素子の上に注入、充填した後、樹脂を硬化させて発光装置を作製した。
得られた発光装置を60℃、相対湿度90%の高温高湿の環境試験機内にて電流150mAで連続点灯させ、500時間経過後の色度座標におけるy値の初期値からの差分をLED信頼性Δyとして評価した。また、同様にして、光束の初期値を100とした相対値として、500時間経過後の相対光束(Po)を併せて評価した。評価結果を表1に示した。
上記で得られた蛍光体粒子について、FT−IR(フーリエ変換赤外分光装置、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。なお、分析手法はATR法でおこなった。
実施例4、比較例1及び3の赤外吸収スペクトルを、酸化ホウ素及びホウ酸の赤外吸収スペクトルとともに図3に示した。
比較例2及び比較例3では、Δyが大きく、その改善が見られなかった。同様に、比較例4の二酸化ケイ素で表面処理した蛍光体粒子においても、改善は見られなかった。更に流動層CVDを用いて二酸化ケイ素で被覆した蛍光体粒子においても、充分な改善は見られなかった。
これについては、例えば、以下のように考えることができる。硫化度評価に優れる蛍光体粒子は、粒子表面に配置される付着物の影響が大きく働いて、大気中の水分による蛍光体粒子の加水分解反応が低減される。そのため、銀片を硫化させてしまう硫化水素の発生が抑えられていると考えられる。そのような耐湿性に優れた蛍光体粒子であるため、発光素子と組み合わせて発光装置を構成した場合であっても、蛍光体粒子の発光特性の低下が少なくなり、LED信頼性評価において改善がみられたと考えることができる。
図2に実施例8で得られた蛍光体粒子の表面近傍における断面SEM画像の一例を示す。図2では、コア粒子4の表面上に酸化ホウ素を含む第一の付着物6が膜状にほぼ均一に形成され、更に第一の付着物6の上に、酸化アルミニウムを含む第二の付着物8が膜状にほぼ均一に形成されて、蛍光体粒子2を構成している。図2において、p2−6と付された領域をSEM−EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法、日立製作所製)を用いて分析したところ、コア粒子の組成が検出された。またp2−4と付された領域からは酸化ホウ素が、p2−5と付された領域からは酸化アルミニウムがそれぞれ検出された。
Claims (23)
- チオガレート蛍光体を含む粒子と、
前記粒子の表面に配置される酸化ホウ素を含む第一の付着物と、
を備える蛍光体粒子であり、
第一の付着物中の酸化ホウ素以外の成分の含有量が10質量%以下であり、
前記第一の付着物に含まれるホウ素元素の含有率が、蛍光体粒子中に0.3質量%以上8質量%以下である蛍光体粒子。 - 前記第一の付着物に含まれるホウ素元素の含有率が、蛍光体粒子中に0.3質量%以上3.5質量%以下である請求項1に記載の蛍光体粒子。
- 前記第一の付着物に含まれるホウ素元素の含有率が、蛍光体粒子中に1.5質量%以上3.5質量%以下である請求項1又は2に記載の蛍光体粒子。
- 前記蛍光体粒子の粒径に対する前記第一の付着物の厚みの平均比率が、2%以上15%以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の蛍光体粒子。
- 前記蛍光体粒子の粒径に対する前記第一の付着物の厚みの平均比率が、5%以上13%以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光体粒子。
- 前記蛍光体粒子の平均粒径が、1μm以上30μm以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の蛍光体粒子。
- 前記第一の付着物の表面に酸化アルミニウムを含む第二の付着物を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の蛍光体粒子。
- 前記第二の付着物に含まれるアルミニウム元素の含有率が、蛍光体粒子中に1質量%以上4質量%以下である請求項7に記載の蛍光体粒子。
- 前記蛍光体粒子の粒径に対する前記第二の付着物の厚みの平均比率が、1.5%以上20%以下である請求項7又は8に記載の蛍光体粒子。
- 前記第二の付着物は、化学気相蒸着物である請求項7から9のいずれか1項に記載の蛍光体粒子。
- 前記チオガレート蛍光体が下記式(Ia)で表される組成を有する請求項1から10のいずれか1項に記載の蛍光体粒子。
(M1 1−xM2 x)Ga2−yS4−z (Ia)
(式(Ia)中、M1は、Sr、Be、Mg、Ca、Ba及びZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表し、M2は、Eu及びCeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表し、x、y及びzは、0.03≦x≦0.25、−0.2≦y≦0.2、及び−0.2≦z≦0.2を満たす。) - 前記チオガレート蛍光体が下記式(Ib)で表される組成を有する請求項1から11のいずれか1項に記載の蛍光体粒子。
(Sr1−v−wM3 wEuv)Ga2S4 (Ib)
(式中、M3は、Be、Mg、Ca、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、v及びwは、0.03≦v≦0.25、0≦w<0.97及びv+w<1を満たす。) - 請求項1から12のいずれか1項に記載の蛍光体粒子及び樹脂を含む蛍光部材と、
380nm以上485nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する光源と、を備える発光装置。 - 前記蛍光部材が、下記式(II)又は(III)で表される組成を有する窒化物蛍光体の少なくとも1種を更に含む請求項13に記載の発光装置。
(Ca1−p−qSrpEuq)AlSiN3 (II)
(式(II)中、p及びqは、0≦p≦1.0、0<q<1.0及びp+q<1.0を満たす。)
(Ca1−r−s−tSrrBasEut)2Si5N8(III)
(式(III)中、r、s及びtは、0≦r≦1.0、0≦s≦1.0、0<t<1.0及びr+s+t≦1.0を満たす。) - 前記蛍光部材が、下記式(IV)で表される組成を有するフッ化物蛍光体の少なくとも1種を更に含む請求項13又は14に記載の発光装置。
A2[M4 1−uMn4+ uF6] (IV)
(式(IV)中、Aは、アルカリ金属及びNH4からなる群から選択される少なくとも1種であり、M4は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは0<u<0.2を満たす。) - チオガレート蛍光体を含む粒子と、ホウ素化合物とを含む混合物に、温度50℃以上150℃以下、相対湿度80%以上100%以下の条件で第一の処理をすることと、
第一の処理後の混合物に、温度200℃以上1000℃以下の条件で第二の処理をすることと、
を含む請求項1から12のいずれか1項に記載の蛍光体粒子の製造方法。 - 前記ホウ素化合物が、ホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸(HBO2)、四ホウ酸(H2B4O7)、ホウ酸塩(M3(BO3)2)、メタホウ酸塩(M(BO2)2)、四ホウ酸塩(MB4O7)(式中、Mは、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す)及び酸化ホウ素(B2O3)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項16に記載の製造方法。
- 前記第一の処理を、0.1MPa以上0.6MPa以下の圧力下で行う請求項16又は17に記載の製造方法。
- 前記第一の処理の処理時間が、0.5時間以上50時間以下である請求項16から18のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記第二の処理の処理時間が、1時間以上100時間以下である請求項16から19のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記混合物に含まれるホウ素化合物の含有率が、0.5質量%以上15質量%以下である請求項16から20のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記第二の処理後の混合物の存在下で、有機アルミニウム化合物から酸化アルミニウムを生成する第三の処理をすることを含む請求項16から21のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記第三の処理を、不活性ガスを含む流動層中で行う請求項22に記載の製造方法。
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