JP6220090B2 - 研磨用組成物及びその製造方法並びに磁気研磨方法 - Google Patents

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Description

本発明は、研磨用組成物及びその製造方法並びに磁気研磨方法に関する。
材料の表面を高精度に仕上げる研磨方法(例えば鏡面仕上げ)として、磁気研磨方法が知られている。磁気研磨方法は、磁性流体、磁気粘性流体、磁気混合流体等の磁場に反応する機能性流体に非磁性の研磨粒子を混合したスラリーを研磨用組成物として用いる研磨方法であり、研磨用組成物に磁場を印加して磁気クラスターを形成し、磁気クラスターを研磨工具として研磨対象物に接触させることにより研磨を行う。
例えば特許文献1には、磁性粒子、研磨粒子、コロイドサイズの粒子を安定させる安定剤、粘性を調節する添加剤、及びキャリア流体を含有する研磨用組成物を使用する磁気研磨方法が開示されている。また、特許文献2には、粒子分散型混合機能性流体を研磨用組成物として使用する磁気研磨方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1、2に開示の研磨用組成物では、磁性粒子である鉄粉が水との接触等により研磨用組成物中で酸化するため、研磨用組成物の研磨性能が経時的に低下するという問題があった。また、鉄粉の酸化により水素が発生するため、安全性にも問題があった。
特許文献3、4には、磁性粒子の酸化を抑制するために、磁性粒子の表面をポリマー材料等の保護層で被覆する技術が開示されているが、その効果は十分とは言えなかった。また、磁性粒子を保護層で被覆するため、コストや手間を要するという問題もあった。
特表2002−544318号公報 特開2010−214505号公報 特開2005−40944号公報 特開2007−326183号公報
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、磁性粒子の酸化が生じにくい研磨用組成物及びその製造方法並びに磁気研磨方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る研磨用組成物は、磁性粒子と、磁性粒子の酸化を抑制する酸化防止剤と、水と、を含有することを要旨とする。
また、本発明の他の態様に係る磁気研磨方法は、上記一態様に係る研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する磁気研磨方法であって、研磨用組成物に磁場を印加して磁性粒子を含有する磁気クラスターを形成し、磁気クラスターを研磨対象物に接触させて研磨対象物を研磨する工程を含むことを要旨とする。
さらに、本発明の他の態様に係る研磨用組成物の製造方法は、上記一態様に係る研磨用組成物を製造する方法であって、磁性粒子を含有する第1成分と、水を含有する第2成分とを混合する工程を含むことを要旨とする。
本発明に係る研磨用組成物は、磁性粒子の酸化が生じにくい。また、本発明に係る研磨用組成物の製造方法は、磁性粒子の酸化が生じにくい研磨用組成物を得ることができる。さらに、本発明に係る磁気研磨方法は、磁性粒子の酸化が生じにくいので、研磨対象物を高精度に仕上げる研磨を行うことができる。
本発明に係る磁気研磨方法の一実施形態を説明する図である。
本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
本実施形態の研磨用組成物は、磁性粒子と、磁性粒子の酸化を抑制する酸化防止剤と、水と、を含有する。本実施形態の研磨用組成物に磁場を印加すると、砥粒として機能する磁性粒子が磁力線に沿って鎖状に並んで磁気クラスターを形成する。磁気クラスターは研磨工具として機能するので、本実施形態の研磨用組成物は磁気研磨方法に使用することができる。すなわち、本実施形態の研磨用組成物に磁場を印加しつつ磁気クラスターと研磨対象物を接触させ相対移動させると、研磨対象物を高精度に仕上げる研磨(例えば鏡面仕上げ)を行うことが可能である。
例えば、研磨バイトを用いた磁気研磨方法に本実施形態の研磨用組成物を使用することができる。研磨バイトは、例えば棒状をなしており、磁場を発生させる磁場発生部(例えば永久磁石、電磁石)を先端に備えるとともに、磁場発生部を回転させる回転駆動部を備えている。研磨バイトの先端に本実施形態の研磨用組成物を付着させ、磁場発生部で磁場を発生させて研磨用組成物内に磁気クラスターを形成させた後に、研磨バイトの先端に付着した研磨用組成物を研磨対象物に接触させる。そして、回転駆動部で磁場発生部を回転させながら、研磨バイトの先端と研磨対象物とを相対移動させると、磁気クラスターと研磨対象物との摺接により研磨対象物を研磨することができる。
さらに、本実施形態の研磨用組成物は、磁性粒子の酸化を抑制する酸化防止剤を含有しているので、水、酸素、酸化剤等による磁性粒子の酸化が生じにくい。そのため、磁性粒子の飽和磁化が高く維持されるため、磁気研磨における研磨用組成物の研磨性能の経時的な低下が生じにくい。なお、このメカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
また、本実施形態の研磨用組成物は、磁性粒子の酸化が生じにくいので、長期間にわたる保存も可能である。さらに、磁性粒子の酸化による水素の発生も生じにくいので、本実施形態の研磨用組成物は安全性が高い。
さらに、酸化防止剤の作用により、磁場の非印加時の磁性粒子の凝集が抑制されるため、本実施形態の研磨用組成物は、磁性粒子の凝集が生じにくく、凝集したとしても再分散性が優れている。
以下に、本実施形態の研磨用組成物、磁気研磨方法等について、さらに詳細に説明する。
1.研磨対象物について
研磨対象物の材質は特に限定されるものではないが、例えば、金属、合金、酸化物、樹脂等があげられる。金属の具体例としては、鉄、銅、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ルテニウム、タングステン等が挙げられる。合金の具体例としては、アルミニウム合金、鉄合金(ステンレスなど)、マグネシウム合金、チタン合金、銅合金、クロム合金、コバルト合金等が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム等が挙げられる。金属酸化物の形態に限定はなく、セラミックス材料、結晶性材料(サファイア、水晶など)、ガラスの他、前記金属や前記合金が酸化して生成したものでもよい。樹脂の具体例としては、スーパーエンジニアリングプラスチック、例えばポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)が挙げられる。これらの中でも特に合金、金属酸化物が好ましい。また、これらの材料を複数含む研磨対象物でもよく、例えば、金属又は合金の一部分(例えば表面)が酸化して金属酸化物が形成されている研磨対象物でもよい。
2.磁性粒子について
磁性粒子としては、例えば、硬質磁性材料や軟磁性材料で構成される粒子があげられる。軟質磁性材料で構成される粒子としては、強磁性粒子、常磁性粒子があげられる。磁性粒子の材質は特に限定されるものではないが、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、及びこれらの酸化物(例えばマグネタイト等の酸化鉄)、これらの窒化物、これらの合金があげられる。また、サマリウム、ネオジム、セリウム等の希土類金属を含む磁性粒子も使用することができる。これらの中では、磁性が比較的大きく、取り扱いが容易という観点から、鉄、ニッケル、コバルト及びこれらの酸化物、これらの合金が好ましい。
なお、磁性粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、本発明において磁性とは、磁界に感応することを意味しており、例えば磁石に引きつけられる性質を意味する。
磁性粒子の平均1次粒子径は200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。平均1次粒子径が200μm以下であれば、研磨用組成物中での磁性粒子の分散性が優れている。また、磁性粒子の平均1次粒子径は0.01μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。平均1次粒子径が0.01μm以上であれば、十分な磁性を有し得る。
また、磁性粒子の平均1次粒子径は、特に表面品質を重視した仕上げ研磨の場合は、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。磁性粒子の平均1次粒子径がこのような範囲であれば、研磨対象物のスクラッチを抑制しながら平滑な表面を得ることが可能になる。また、加工効率を重視した粗仕上げ研磨、又は、粗仕上げ/中仕上げ研磨の場合は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。磁性粒子の平均1次粒子径がこのような範囲であれば、非常に高い効率で研磨することができる。なお、磁性粒子の平均1次粒子径は、例えば、BET法で測定される磁性粒子の比表面積に基づいて計算することができる。また、動的光散乱法で測定することもできる。
加工効率を重視した中仕上げ研磨を先に実施した後に、表面品質を重視した仕上げ研磨を行うなど、研磨を複数の段階に分けて行う場合は、各段階ごとに平均1次粒子径が異なる磁性粒子を使用してもよい。
本実施形態の研磨用組成物中の磁性粒子の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。磁性粒子の含有量が80質量%以下であれば、研磨用組成物の安定性、流動性の確保とそれによる研磨精度の維持という効果が奏される。また、本実施形態の研磨用組成物中の磁性粒子の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。磁性粒子の含有量が10質量%以上であれば、研磨速度、表面品質の改善という効果が奏される。
3.酸化防止剤について
一般的な研磨用組成物にも酸化防止剤が添加されているが、一般的な研磨用組成物の場合は、研磨対象物の酸化を抑制することを目的として酸化防止剤が添加されている。これに対して、本発明においては、磁性粒子の酸化を抑制することを目的として酸化防止剤が添加されている。そのため、酸化の抑制に有効な酸化防止剤の種類は、本発明に係る研磨用組成物と一般的な研磨用組成物とでは異なり、金属製の研磨対象物の酸化を抑制するための酸化防止剤は、本発明に係る研磨用組成物には好適ではない場合がある。
磁性粒子は、酸化によって、溶解が生じたりガスなどを発生させたりする場合がある。そのため、研磨用組成物に添加された酸化防止剤の効果の程度は、磁性粒子の酸化、溶解、又はガスの発生等によって知ることが可能である。本発明においては、酸化防止剤は、磁性粒子の表面に吸着又は反応して、磁性粒子の酸化、溶解、ガスの発生等を抑制することができる。
酸化防止剤の種類は、磁性粒子の酸化を抑制することができるならば特に限定されるものではないが、例えば、アルケニルコハク酸誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、及び、分子中に炭素−炭素多重結合を有しないアミンがあげられる。
アルケニルコハク酸誘導体は、下記式(1)、(2)、又は(3)で表される化合物を含んでもよい。
Figure 0006220090
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上記式(1)で表される化合物のR及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数20以下のアルケニル基を示す。ただし、R及びRは同時に水素原子にならない。アルケニル基の炭素数が20を超える場合は、酸化防止剤の水に対する溶解性が低下する傾向がある。炭素数が4未満である場合は、酸化防止剤の製造プロセスのコストが上昇し、経済的な生産が難しくなるので、R及びRの炭素数の下限は4が好ましい。具体的に好ましいアルケニル基としては、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、tert−ヘキセニル基、2−エチルヘキセニル基、2,4,6−トリメチルヘプテニル基、2,4,6,8−テトラメチルノネニル基などがあげられる。
上記式(1)で表される化合物のXは、それぞれ独立して、水素原子又はカチオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン等の金属イオン、又は、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン等のアミンのカチオン)を示す。Xがイオン(カチオン)である場合は、Xが結合するCOO基もイオン(アニオン)となる。
上記式(2)で表される化合物のR11及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数20以下のアルケニル基を示す。ただし、R11及びR14は同時に水素原子にならない。アルケニル基の炭素数が20を超える場合は、酸化防止剤の水に対する溶解性が低下する傾向がある。炭素数が4未満である場合は、酸化防止剤の製造プロセスのコストが上昇し、経済的な生産が難しくなるので、R11及びR14の炭素数の下限は4が好ましい。具体的に好ましいアルケニル基は、上記式(1)で表される化合物のR及びRの場合と同様である。
12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ポリオキシエチレン基(−(CHCHO)−CHCHOH)、又はポリオキシプロピレン基(−(CHCHCHO)−CHCHCHOH)を示す。上記のポリオキシエチレン基のnは、オキシエチレン基の平均付加モル数を示し、1以上19以下である。上記のポリオキシプロピレン基のmは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を示し、1以上19以下である。
ただし、上記式(2)で表される化合物に対して水への溶解性や分散性を付与するためには、R12及びR13のうち少なくとも一方は、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ポリオキシエチレン基(−(CHCHO)−CHCHOH)、又はポリオキシプロピレン基(−(CHCHCHO)−CHCHCHOH)であることが好ましい。
12及びR13のいずれかがヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルケニル基であることがより好ましく、炭素数5以下のヒドロキシアルキル基であることがさらに好ましい。原材料の入手の容易性から、炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基が最適である。ヒドロキシアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基が有するヒドロキシル基の個数は、1つでもよいし2つ以上でもよい。
上記式(2)で表される化合物のX11は、水素原子又はカチオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン等の金属イオン、又は、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン等のアミンのカチオン)を示す。X11がイオン(カチオン)である場合は、X11が結合するCOO基もイオン(アニオン)となる。
上記式(3)で表される化合物のR31及びR36は、それぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数20以下のアルケニル基を示す。ただし、R31及びR36は同時に水素原子にならない。アルケニル基の炭素数が20を超える場合は、酸化防止剤の水に対する溶解性が低下する傾向がある。炭素数が4未満である場合は、酸化防止剤の製造プロセスのコストが上昇し、経済的な生産が難しくなるので、R31及びR36の炭素数の下限は4が好ましい。具体的に好ましいアルケニル基は、上記式(1)で表される化合物のR及びRの場合と同様である。
32、R33、R34、及びR35は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ポリオキシエチレン基(−(CHCHO)−CHCHOH)、又はポリオキシプロピレン基(−(CHCHCHO)−CHCHCHOH)を示す。上記のポリオキシエチレン基のrは、オキシエチレン基の平均付加モル数を示し、1以上19以下である。上記のポリオキシプロピレン基のsは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を示し、1以上19以下である。
ただし、上記式(3)で表される化合物に対して水への溶解性や分散性を付与するためには、R32、R33、R34、及びR35のうち少なくとも1つは、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ポリオキシエチレン基(−(CHCHO)−CHCHOH)、又はポリオキシプロピレン基(−(CHCHCHO)−CHCHCHOH)であることが好ましい。
32、R33、R34、及びR35のいずれかがヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルケニル基であることがより好ましく、炭素数5以下のヒドロキシアルキル基であることがさらに好ましい。原材料の入手の容易性から、炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基が最適である。ヒドロキシアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基が有するヒドロキシル基の個数は、1つでもよいし2つ以上でもよい。
上記式(1)で表されるアルケニルコハク酸誘導体の具体例としては、ペンテニルコハク酸、ヘキセニルコハク酸、ヘプテニルコハク酸、オクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ウンデセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、トリデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘプタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、ノナデセニルコハク酸、イコセニルコハク酸、tert−ヘキセニルコハク酸、2−エチルヘキセニルコハク酸、2,4,6−トリメチルヘプテニルコハク酸、2,4,6,8−テトラメチルノネニルコハク酸、又はこれらの塩があげられる。
上記式(2)で表されるアルケニルコハク酸誘導体の具体例としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペンテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘプテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ノネニルシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)デセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ウンデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)トリデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)テトラデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペンタデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘプタデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ノナデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イコセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ペンテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ドデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ペンタデセニルスクシンアミド酸)、N−(2−ヒドロキシエチル)ペンテニルスクシンアミド酸、N−(2−ヒドロキシエチル)オクテニルスクシンアミド酸、N−(2−ヒドロキシエチル)ドデセニルスクシンアミド酸、N−(2−ヒドロキシエチル)ペンタデセニルスクシンアミド酸、N−(3−ヒドロキシプロピル)ペンテニルスクシンアミド酸、N−(2−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド酸、N−(3−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド酸、N−(3−ヒドロキシプロピル)ドデセニルスクシンアミド酸、N−(3−ヒドロキシプロピル)ペンタデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(ポリオキシエチレン)オクテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(ポリオキシプロピレン)オクテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(ポリオキシエチレン)ドデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(ポリオキシプロピレン)ドデセニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(メチル)オクテニルスクシンアミド酸、N,N−ビス(エチル)オクテニルスクシンアミド酸、N−(エチル)オクテニルスクシンアミド酸があげられる。
上記式(3)で表されるアルケニルコハク酸誘導体の具体例としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペンテニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘプテニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクテニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ノネニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)デセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ウンデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)トリデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)テトラデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペンタデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘプタデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタデセニルシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ノナデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イコセニルスクシンアミド、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ペンテニルスクシンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ドデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ペンタデセニルスクシンアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)ペンテニルスクシンアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)オクテニルスクシンアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)ドデセニルスクシンアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)ペンタデセニルスクシンアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)ペンテニルスクシンアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)ドデセニルスクシンアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)ペンタデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(ポリオキシエチレン)オクテニルスクシンアミド、N,N−ビス(ポリオキシプロピレン)オクテニルスクシンアミド、N,N−ビス(ポリオキシエチレン)ドデセニルスクシンアミド、N,N−ビス(ポリオキシプロピレン)ドデセニルスクシンアミド、N,N,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)オクテニルスクシンアミド、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)オクテニルスクシンアミド、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミド、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ヒドロキシプロピル)オクテニルスクシンアミドがあげられる。
水に対するアルケニルコハク酸誘導体の溶解性や分散性を向上させるために、上記式(1)、(2)で表される化合物のX、X11、X21をカチオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン等の金属イオン、又は、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン等のアミンのカチオン)としてもよい。その場合は、X、X11、X21が水素原子である化合物を研磨用組成物に配合し、そこにカルボキシル基と中和反応する塩基性物質を加えて反応させることにより、X、X11、X21を金属イオン又はカチオンに変換してもよい。
塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物があげられる。また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、n−ジブチルアミン、n−トリブチルアミン、tert−ブチルアミン、 エチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノプロパン、水酸化テトラメチルアンモニウム、シクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピラジン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、モルホリン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノエタノールジイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミンなどのアミンがあげられる。
ビピリジン誘導体は、下記式(4)で表される化合物を含んでもよい。
Figure 0006220090
なお、上記式(4)で表される化合物のR41、42、43、44、45、46、R47、及びR48は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、カルボキシルアルキル基、カルボキシルアルケニル基、アルキルスルホ基、アルケニルスルホ基、アルキルニトロ基、アルケニルニトロ基、アルコキシ基、アセチル基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルハロゲン基、アルケニルハロゲン基を示す。
ビピリジン誘導体の具体例としては、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメタノール−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジカルボン酸−2,2’−ビピリジン、3−ヒドロキシ−4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、6−メトキシ−2,2’−ビピリジン、3,3’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン、3−カルボキシ−2,2’−ビピリジン、4−カルボキシ−2,2’−ビピリジン、6−カルボキシ−2,2’−ビピリジン、6−ブロモ−2,2’−ビピリジン、6−クロロ−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジアミノ−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジスルホン−2,2’−ビピリジン等の2,2’−ビピリジン誘導体及びその塩があげられる。
フェナントロリン誘導体は、下記式(5)で表される化合物を含んでもよい。
Figure 0006220090
なお、上記式(5)で表される化合物のR51、52、53、54、55、56、R57、及びR58は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、カルボキシルアルキル基、カルボキシルアルケニル基、アルキルスルホ基、アルケニルスルホ基、アルキルニトロ基、アルケニルニトロ基、アルコキシ基、アセチル基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルハロゲン基、アルケニルハロゲン基を示す。
フェナントロリン誘導体の具体例としては、1,10−フェナントロリン、2−クロロ−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン、2−ブロモ−1,10−フェナントロリン、3−ブロモ−1,10−フェナントロリン、5−ブロモ−1,10−フェナントロリン、3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7ジフェニル−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、5−アミノ−1,10−フェナントロリン、4,7−ジヒドロキシ−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラヒドロキシ−1,10−フェナントロリン、1,10−フェナントロリン−2,9−ジカルボン酸、5−ニトロ−1,10−フェナントロリン−2,9−ジカルボン酸、1,10−フェナントロリン−2,9−ジスルホン酸、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン−2,9−ジスルホン酸、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオン、及びその塩、並びにその水和物があげられる。
トリアゾール誘導体としては、トリアゾール構造を有する化合物及びその塩があげられる。具体的な例としては、例えば、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェノール、メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシレート、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸メチル、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ベンジル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−チオール、3,5−ジアミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、3−ブロモ−5−ニトロ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジプロピル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジペプチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1,2,4−トリアゾール−3,4−ジアミンがあげられる。
ベンゾトリアゾール誘導体としては、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物及びその塩があげられる。具体的な例としては、例えば、ベンゾトリアゾール、2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、5−クロロベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、5−カルボキシベンゾトリアゾール、5−アミノベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−(1’’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−5−メチルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾールがあげられる。
分子中に炭素−炭素多重結合を有しないアミンとしては、例えば、下記式(6)、(7)、(8)、(9)で表される化合物を含んでもよい。
Figure 0006220090
なお、上記式(6)で表される化合物のR61、R62、R63は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基であるか、又は、それぞれ独立して、カルボキシアルキル基、ホスホアルキル基、若しくはスルホアルキル基である。R61、R62、R63は、互いに炭素が結合して環状構造(環状アルカン)を形成してもよい。ただし、R61、R62、R63の3つは、同時に水素原子にならない。R61、R62、R63が有する炭素鎖は、直鎖状でもよいし分岐状でもよい。R61、R62、R63の少なくとも一つがヒドロキシアルキル基であると、磁性粒子の酸化防止効果が高くなるので好ましい。ヒドロキシアルキル基が有するヒドロキシル基の個数は、1つでもよいし2つ以上でもよい。
上記式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、ジイソプロパノールアミン、ニトリロトリメチレンホスホン酸、ニトリロ三酢酸、3,3’,3’’−ニトリロトリプロピオン酸、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、2−エチルピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルピロリジン、ピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン、2−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、1−ピペリジンエタノール、1−エタノール−4−プロパノールピペリジン、3−キヌクリジノール、シクロヘキシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンがあげられる。
Figure 0006220090
上記式(7)で表される化合物のR71、R72、R73、R74は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。R71、R72、R73、R74は、互いに炭素が結合して環状構造(環状アルカン)を形成してもよい。上記式(7)で表される化合物のR75は、炭素数2以上10以下のアルキレン基を示す。R71、R72、R73、R74、R75が有する炭素鎖は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。R71、R72、R73、R74の少なくとも一つがヒドロキシアルキル基であると、磁性粒子の酸化防止効果が高くなるので好ましい。ヒドロキシアルキル基が有するヒドロキシル基の個数は、1つでもよいし2つ以上でもよい。
上記式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、エチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,2−プロパンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジアミノプロパン、ピペラジン、1−メチルピペラジン、1−エチルピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、4−メチルピペラジン−1−エタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミンがあげられる。
Figure 0006220090
上記式(8)で表される化合物のR81、R82、R83、R84、R85は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。R81、R82、R83、R84、R85は、互いに炭素が結合して環状構造(環状アルカン)を形成してもよい。上記式(8)で表される化合物のR86、R87は、炭素数2以上10以下のアルキレン基を示す。R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87が有する炭素鎖は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。R81、R82、R83、R84、R85の少なくとも一つがヒドロキシアルキル基であると、磁性粒子の酸化防止効果が高くなるので好ましい。ヒドロキシアルキル基が有するヒドロキシル基の個数は、1つでもよいし2つ以上でもよい。
上記式(8)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N−(3−アミノプロピル)−N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N’−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,6,10−トリメチル−2,6,10−トリアザウンデカン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4,7−トリアザシクロノナン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミンがあげられる。
Figure 0006220090
上記式(9)で表される化合物のR91、R92、R93、R94、R95、R96は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。R91、R92、R93、R94、R95、R96は、互いに炭素が結合して環状構造(環状アルカン)を形成してもよい。上記式(9)で表される化合物のR97、R98、R99は、炭素数2以上10以下のアルキレン基を示す。R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98、R99が有する炭素鎖は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。R91、R92、R93、R94、R95、R96の少なくとも一つがヒドロキシアルキル基であると、磁性粒子の酸化防止効果が高くなるので好ましい。ヒドロキシアルキル基が有するヒドロキシル基の個数は、1つでもよいし2つ以上でもよい。
上記式(9)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリエチレンテトラミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンがあげられる。
アルケニルコハク酸誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体には、アルケニルコハク酸、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、トリアゾール、ベンゾトリアゾールも包含される。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の研磨用組成物中の酸化防止剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。酸化防止剤の含有量が5質量%以下であれば、研磨対象物の表面が保護されつつ研磨速度が維持されるという効果が奏される。また、本実施形態の研磨用組成物中の酸化防止剤の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。酸化防止剤の含有量が0.01質量%以上であれば、磁性粒子の酸化防止という効果が優れている。
4.水について
本実施形態の研磨用組成物は、磁性粒子、酸化防止剤等の各成分を分散又は溶解するための分散媒又は溶媒として液状媒体を含有する。液状媒体の種類は特に限定されるものではなく、水、有機溶剤等があげられるが、防爆対策、環境負荷の低減という観点から、水を含有することが好ましい。他の各成分の作用を阻害することを抑制するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後にフィルタを通して異物を除去した純水、超純水、又は蒸留水が好ましい。
5.非磁性の研磨粒子について
本実施形態の研磨用組成物は、非磁性の研磨粒子をさらに含有してもよい。研磨用組成物が非磁性の研磨粒子を含有していると、研磨用組成物に磁場を印加して磁気クラスターを形成する際に、研磨粒子が磁性粒子とともに磁気クラスターを形成することとなるため、本実施形態の研磨用組成物の研磨性能、研磨速度が向上するとともに、研磨対象物の被研磨面の表面品質がより良好となる。
研磨粒子の種類は特に限定されるものではないが、例えば、無機粒子、有機粒子、有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子や、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。研磨粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。上記の研磨粒子の中では、シリカ、アルミナがより好ましい。
さらに、研磨粒子は、表面修飾を施されたものでもよい。表面修飾を施された研磨粒子は、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の金属又はそれらの酸化物を砥粒と混合して、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の金属又はそれらの酸化物を砥粒の表面にドープすることや、有機酸を砥粒の表面に固定化することにより得ることができる。表面修飾を施された研磨粒子の中で特に好ましいのは、有機酸を固定化したコロイダルシリカである。
コロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、例えばコロイダルシリカの表面に有機酸の官能基を化学的に結合させることにより行うことができる。コロイダルシリカと有機酸を単に共存させただけでは、コロイダルシリカへの有機酸の固定化は果たされない。有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
あるいは、カルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2−ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
また、特開平4−214022号公報に開示されるような、塩基性アルミニウム塩又は塩基性ジルコニウム塩を添加して製造したカチオン性シリカを用いることもできる。
研磨粒子の平均1次粒子径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。平均1次粒子径が100μm以下であれば、スラリー状の研磨用組成物の保管中に磁性粒子が沈降しても再分散しやすい。また、研磨粒子の平均1次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。研磨粒子の平均1次粒子径がこのような範囲であれば、研磨対象物を効率的に研磨することができる。
研磨粒子の平均1次粒子径は、表面品質を重視した仕上げ研磨の場合は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。研磨粒子の平均1次粒子径がこのような範囲であれば、効率的な研磨に加えて、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面にスクラッチが生じることをより抑えることができる。
また、研磨粒子の平均1次粒子径は、加工効率を重視した中仕上げ研磨の場合は、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。研磨粒子の平均1次粒子径がこのような範囲であれば、非常に高い効率で研磨することができる。
研磨粒子の平均1次粒子径は、例えば、BET法で測定される研磨粒子の比表面積に基づいて算出される。また、動的光散乱法で測定することもできる。
加工効率を重視した中仕上げ研磨を先に実施した後に、表面品質を重視した仕上げ研磨するなど、研磨を複数の段階に分けて行う場合は、各段階ごとに平均1次粒子径が異なる研磨粒子を使用してもよい。
本実施形態の研磨用組成物中の研磨粒子の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。研磨粒子の含有量が40質量%以下であれば、研磨用組成物の安定性、流動性の確保とそれによる研磨精度の維持という効果が奏される。また、本実施形態の研磨用組成物中の研磨粒子の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。研磨粒子の含有量が1質量%以上であれば、研磨速度、表面品質の改善という効果が奏される。
6.研磨用組成物のpHについて
本実施形態の研磨用組成物のpHは、特に限定されるものではない。ただし、酸化防止剤の種類によっては、5以上とすることができるし、7以上とすることもできる。また、本実施形態の研磨用組成物のpHは、酸化防止剤の種類によっては、14未満とすることができるし、12以下とすることもできる。pHがこの範囲の研磨用組成物は、磁性粒子の凝集が生じにくく、研磨対象物を効率的に研磨することができる。なお、磁性粒子として鉄粉を用いた場合には、研磨用組成物のpHは5以上12以下であることがより好ましく、7以上12以下であることがさらに好ましい。
研磨用組成物のpHは、pH調整剤を添加することによって調整することができる。研磨用組成物のpHを所望の値に調整するために必要に応じて使用されるpH調整剤は、酸及び塩基のいずれであってもよく、また、無機化合物及び有機化合物のいずれであってもよい。
pH調整剤としての塩基の具体例としては、アルカリ金属の水酸化物又はその塩、アルカリ土類金属の水酸化物又はその塩、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、アミン等があげられる。
アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等があげられる。また、アルカリ土類金属の具体例としては、カルシウム、ストロンチウム等があげられる。さらに、塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等があげられる。さらに、第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等があげられる。
水酸化第四級アンモニウム化合物としては、水酸化第四級アンモニウム又はその塩を含み、具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等があげられる。
さらに、アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン等があげられる。
pH調整剤としての酸としては、無機酸や有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸等が挙げられる。また、有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、酸等のカルボン酸や、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸等の有機硫酸等が挙げられる。これらpH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
7.研磨用組成物の電気伝導度について
本実施形態の研磨用組成物の電気伝導度は特に限定されるものではないが、20mS/cm以下が好ましく、10mS/cm以下がより好ましく、5mS/cm以下がさらに好ましい。電気伝導度がこのような範囲であれば、磁性粒子の酸化がより生じにくいため、研磨用組成物の寿命をさらに延長することができる。電気伝導度は、研磨用組成物に添加する塩化合物の種類、添加量等により制御することができる。
8.その他の添加剤について
本実施形態の研磨用組成物には、必要に応じて、酸化剤(例えば、ハロゲン原子を含有する酸化剤)、錯化剤、金属防食剤、界面活性剤、水溶性高分子、防腐剤、防カビ剤等のその他の添加剤をさらに添加してもよい。以下、その他の添加剤について説明する。
(1)酸化剤について
本実施形態の研磨用組成物中には酸化剤が含まれていてもよい。酸化剤の種類は特に限定されるものではないが、例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸塩、過硫酸塩等があげられる。ただし、磁性粒子の酸化を抑制するためには、本実施形態の研磨用組成物中の酸化剤の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。そして、磁性粒子として鉄粉を用いた場合には、研磨用組成物は酸化剤を実質的に含有しないことがさらに好ましい。
なお、酸化剤を実質的に含有しないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことを意味する。したがって、原料や製法等に由来して微量(例えば、研磨用組成物中における酸化剤のモル濃度が0.0005モル/L以下、好ましくは0.0001モル以下、より好ましくは0.00001モル/L以下、特に好ましくは0.000001モル/L以下)の酸化剤が不可避的に含まれている研磨用組成物は、ここでいう酸化剤を実質的に含有しない研磨用組成物の概念に包含され得る。
(2)金属防食剤について
本実施形態の研磨用組成物中には金属防食剤が含まれていてもよい。研磨対象物の腐食を抑制するために、金属防食剤を添加することにより、金属の溶解を防ぐことができる。金属防食剤を使用することで、研磨対象物の表面の面荒れ等の悪化を抑制することができる。
使用可能な金属防食剤は、特に限定されるものではないが、複素環式化合物が好ましい。複素環式化合物中の複素環の員環数は特に限定されない。また、複素環式化合物は、単環化合物であってもよいし、縮合環を有する多環化合物であってもよい。金属防食剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、金属防食剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。さらに、磁性粒子の酸化防止剤効果を有する防食剤を使用してもよい。
金属防食剤として使用可能な複素環化合物の具体例としては、ピロール化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、ピリジン化合物、ピラジン化合物、ピリダジン化合物、ピリンジン化合物、インドリジン化合物、インドール化合物、イソインドール化合物、インダゾール化合物、プリン化合物、キノリジン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、ナフチリジン化合物、フタラジン化合物、キノキサリン化合物、キナゾリン化合物、シンノリン化合物、ブテリジン化合物、チアゾール化合物、イソチアゾール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、フラザン化合物等の含窒素複素環化合物が挙げられる。
さらに具体的な例を挙げると、ピラゾール化合物の例としては、1H−ピラゾール、4−ニトロ−3−ピラゾールカルボン酸、3,5−ピラゾールカルボン酸、3−アミノ−5−フェニルピラゾール、5−アミノ−3−フェニルピラゾール、3,4,5−トリブロモピラゾール、3−アミノピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチル−1−ヒドロキシメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、1−メチルピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、4−アミノ−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、アロプリノール、4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−D]ピリミジン、3,4−ジヒドロキシ−6−メチルピラゾロ(3,4−B)−ピリジン、6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−アミン等が挙げられる。
イミダゾール化合物の例としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルピラゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−アミノベンゾイミダゾール、2−クロロベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、2−(1−ヒドロキシエチル)ベンズイミダゾール、2−ヒドロキシベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2,5−ジメチルベンズイミダゾール、5−メチルベンゾイミダゾール、5−ニトロベンズイミダゾール、1H−プリン等が挙げられる。
トリアゾール化合物の例としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシレート、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸メチル、1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、3,5−ジアミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−チオール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ベンジル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール、3−ブロモ−5−ニトロ−1,2,4−トリアゾール、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェノール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジプロピル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジペプチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1,2,4−トリアゾール−3,4−ジアミン、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、1−カルボキシベンゾトリアゾール、5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール、5−ニトロ−1H−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−(1’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−5−メチルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
テトラゾール化合物の例としては、1H−テトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−アミノテトラゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
インダゾール化合物の例としては、1H−インダゾール、5−アミノ−1H−インダゾール、5−ニトロ−1H−インダゾール、5−ヒドロキシ−1H−インダゾール、6−アミノ−1H−インダゾール、6−ニトロ−1H−インダゾール、6−ヒドロキシ−1H−インダゾール、3−カルボキシ−5−メチル−1H−インダゾール等が挙げられる。
インドール化合物の例としては、1H−インドール、1−メチル−1H−インドール、2−メチル−1H−インドール、3−メチル−1H−インドール、4−メチル−1H−インドール、5−メチル−1H−インドール、6−メチル−1H−インドール、7−メチル−1H−インドール、4−アミノ−1H−インドール、5−アミノ−1H−インドール、6−アミノ−1H−インドール、7−アミノ−1H−インドール、4−ヒドロキシ−1H−インドール、5−ヒドロキシ−1H−インドール、6−ヒドロキシ−1H−インドール、7−ヒドロキシ−1H−インドール、4−メトキシ−1H−インドール、5−メトキシ−1H−インドール、6−メトキシ−1H−インドール、7−メトキシ−1H−インドール、4−クロロ−1H−インドール、5−クロロ−1H−インドール、6−クロロ−1H−インドール、7−クロロ−1H−インドール、4−カルボキシ−1H−インドール、5−カルボキシ−1H−インドール、6−カルボキシ−1H−インドール、7−カルボキシ−1H−インドール、4−ニトロ−1H−インドール、5−ニトロ−1H−インドール、6−ニトロ−1H−インドール、7−ニトロ−1H−インドール、4−ニトリル−1H−インドール、5−ニトリル−1H−インドール、6−ニトリル−1H−インドール、7−ニトリル−1H−インドール、2,5−ジメチル−1H−インドール、1,2−ジメチル−1H−インドール、1,3−ジメチル−1H−インドール、2,3−ジメチル−1H−インドール、5−アミノ−2,3−ジメチル−1H−インドール、7−エチル−1H−インドール、5−(アミノメチル)インドール、2−メチル−5−アミノ−1H−インドール、3−ヒドロキシメチル−1H−インドール、6−イソプロピル−1H−インドール、5−クロロ−2−メチル−1H−インドール等が挙げられる。
これらの中でも好ましい複素環化合物はトリアゾール化合物であり、特に、1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−5−メチルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾールが好ましい。
これらの複素環化合物は、研磨対象物の表面への化学的又は物理的吸着力が高いため、より強固な保護膜を研磨対象物の表面に形成することができる。このことは、本実施形態の研磨用組成物を用いて研磨した後の、研磨対象物の表面の平坦性を向上させる上で有利である。
研磨用組成物中の金属防食剤の含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.0005質量%以上であることがより好ましい。金属防食剤の含有量が多くなるにつれて、金属の溶解を防ぎ、段差解消性を向上させることができる。また、研磨用組成物中の金属防食剤の含有量は、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。金属防食剤の含有量が少なくなるにつれて、研磨速度が向上する。
(3)界面活性剤について
本実施形態の研磨用組成物中には界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤は、研磨後の被研磨面に親水性を付与することにより研磨後の被研磨面の洗浄効率を良くするため、被研磨面への汚れの付着等を防ぐことができる。界面活性剤の種類は特に限定されるものではないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。これら界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
陰イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、アルキルエーテル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
研磨用組成物中の界面活性剤の含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が多くなるにつれて、研磨後の被研磨面の洗浄効率がより向上する。また、研磨用組成物中の界面活性剤の含有量は、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が少なくなるにつれて、被研磨面のへの界面活性剤の残存量が低減され、洗浄効率がより向上する。
(4)水溶性高分子について
本実施形態の研磨用組成物中には水溶性高分子が含まれてもよい。研磨用組成物中に水溶性高分子を添加すると、磁性粒子及び研磨粒子の再分散性がより良好となる。水溶性高分子の種類は特に限定されるものではないが、具体例としては、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリイソプレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、イソプレンスルホン酸とアクリル酸の共重合体、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、α−セルロース、β−セルロース、γ−セルロース、プルラン、キトサン、キトサン塩類が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることが好ましい。水溶性高分子の含有量が多くなるにつれて、磁性粒子及び研磨粒子の再分散性がより良好となる。また、研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量は、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が少なくなるにつれて、被研磨面への高分子の残存量が低減され、洗浄効率がより向上する。
(5)防腐剤、防カビ剤について
本実施形態の研磨用組成物中には防腐剤、防カビ剤が含まれてもよい。防腐剤及び防カビ剤の種類は特に限定されるものではないが、具体例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系防腐剤や、パラオキシ安息香酸エステル類や、フェノキシエタノール等が挙げられる。これら防腐剤及び防カビ剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
9.研磨用組成物の製造方法について
本実施形態の研磨用組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、磁性粒子、酸化防止剤等の各成分を水中で攪拌混合することにより製造することができる。各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に限定されない。
あるいは、磁性粒子を含有する第1成分と、水を含有する第2成分とを、それぞれ別途調製して、これら両成分を混合することにより研磨用組成物を製造してもよい。このとき、酸化防止剤は、第1成分に含有されていてもよいし、第2成分に含有されていてもよいし、両成分に含有されていてもよい。またあるいは、第1成分と第2成分との混合物に酸化防止剤を添加してもよいし、第1成分と第2成分と酸化防止剤とを同時に混合してもよい。
磁性粒子と水が接触すると磁性粒子の酸化が進行するので、第1成分と第2成分との混合は、研磨対象物の研磨以前に行うことが好ましく、可能な限り研磨開始時期に近いタイミングで行うことがより好ましい。具体的には、第1成分と第2成分との混合は、研磨開始時の1週間前以降に行うことが好ましく、研磨開始時の2日前以降に行うことがより好ましく、研磨開始時の24時間前以降に行うことがさらに好ましく、研磨開始時の直前(例えば、1時間前以降、30分前以降)に行うことが特に好ましい。
第1成分と第2成分とを混合する工程を研磨開始時期の直前に行えば、磁性粒子の酸化はほとんど進行していないので、研磨用組成物の研磨性能の経時的な低下はほとんど生じていない。よって、このようにして製造した研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨すれば、研磨対象物を高精度に仕上げる研磨を行うことが可能である。また、水素の発生量も少量に抑えることができる。さらに、調製した第1成分と第2成分とを分けて保管しておき、研磨開始時期の直前に混合すればよいので、保存安定性が非常に優れており、長期間にわたる保存も可能である。
10.磁気研磨方法について
本実施形態の研磨用組成物を用いた研磨対象物の研磨方法は特に限定されるものではないが、本実施形態の研磨用組成物は、磁場の印加により磁力線に沿ってブラシ状の磁気クラスターを形成することができることから、磁気研磨方法に用いることができる。
磁場の印加により磁性粒子を含有する磁気クラスターが研磨用組成物内に形成したら、磁気クラスターを研磨対象物の被研磨面に接触させた上、研磨対象物及び磁気クラスターの一方又は両方を移動させて、磁気クラスターと研磨対象物の被研磨面とを摺接させる。すると、磁気クラスターと研磨対象物の被研磨面との接触箇所のせん断応力により、研磨対象物の被研磨面が研磨される。磁気クラスターは、複雑な形状や凹凸形状にも追従するように変形可能であるため、平面の研磨のみならず三次元的な形状の面の研磨も可能である。
ここで、図1を参照しながら、磁気研磨方法の一例を説明する。図1に示す磁気研磨装置は、研磨用組成物1を収容する容器10と、容器10に収容された研磨用組成物1に磁場を印加する磁場印加部12と、研磨対象物5を保持する保持部14と、保持部14に連結する自転軸16を回転させる第一駆動部18と、自転軸16が回転可能に接続された円板20と、円板20を回転させて保持部14を公転させる第二駆動部22と、を備えている。
磁場印加部12は、容器10の底部に設置された円板状の研磨定盤24に設けられており、容器10に収容された研磨用組成物1に磁場を印加することができるようになっている。研磨定盤24は、容器10に収容された研磨用組成物1に磁場を印加することができるならば、容器10内に設置されていてもよいし、容器10外に設置されていてもよい。磁場印加部12の構成は特に限定されるものではなく、例えば永久磁石や電磁石で構成することができる。図1の例では、磁場印加部12は永久磁石で構成されており、研磨定盤24に複数の永久磁石が取り付けられている。印加する磁場の強さは特に限定されるものではないが、磁場印加部12のうち磁気クラスター3に接する面の表面磁束密度が100mT以上3000mT以下(つまり1000ガウス以上300000ガウス以下)となるように調整してもよい。
また、磁力線が研磨定盤24の板面に対して垂直をなす方向(以下「垂直方向」と記すこともある)を向くように、全ての永久磁石は、同種の磁極を垂直方向の同一方向側に向けて研磨定盤24に取り付けられている。そのため、研磨用組成物1内に形成される磁気クラスター3は、研磨定盤24の板面に対して垂直をなす方向に延びる。ただし、磁力線が研磨定盤24の板面に対して水平をなす方向を向くように、永久磁石を研磨定盤24に取り付けてもよい。例えば、S極(N極でもよい)を垂直方向の一方向側(例えば上方側)に向けて取り付けられる永久磁石と、S極(N極でもよい)を垂直方向の他方向側(例えば下方側)に向けて取り付けられる永久磁石とに分けて、隣接する永久磁石については相互にS極が垂直方向の反対方向を向くようにすれば、磁力線が研磨定盤24の板面に対して水平をなす方向を向くこととなる。
保持部14に保持させた研磨対象物5を、研磨定盤24との間に垂直方向の間隔をあけて配置する。このとき、研磨対象物5と研磨定盤24との間の垂直方向の間隔は、研磨対象物5と磁気クラスター3とが接触する大きさとする。次に、垂直方向に延びる自転軸16を第一駆動部18により回転させるとともに、研磨定盤24と平行をなす円板20を第二駆動部22により回転させる。自転軸16は円板20の中心よりも外径側に取り付けられているので、自転軸16を回転させつつ円板20を回転させることにより、研磨対象物5(保持部14)を研磨定盤24の板面に対して平行を保ちながら自転させつつ公転させることができる。第一駆動部18と第二駆動部22は、例えばモータにより構成することができる。
このような研磨対象物5の自転運動と公転運動により、研磨対象物5と磁気クラスター3とが接触しつつ相対移動するので、磁気クラスター3と研磨対象物5の被研磨面とが摺接して、研磨対象物5の被研磨面が高精度に仕上げられる(例えば鏡面仕上げされる)。
なお、磁気研磨装置としてCNC研削装置を利用することができる。また、図1の磁気研磨装置は、研磨対象物5を移動させ磁場印加部12は移動させない構成となっていたが、これとは逆に磁場印加部12を移動させ研磨対象物5を移動させない構成の磁気研磨装置でもよい。あるいは、研磨対象物5と磁場印加部12の両方を移動させる構成の磁気研磨装置でもよい。
加工効率を重視した粗仕上げ/中仕上げ研磨を先に実施した後に、表面品質を重視した仕上げ研磨を実施するなど、研磨を複数の段階に分けて行ってもよい。
〔実施例〕
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。まず、表1〜6に示す種々の酸化防止剤について、磁性粒子である鉄粒子の酸化を抑制する性能と磁性粒子である鉄粒子の凝集を抑制する性能を調査した。評価方法について以下に説明する。
酸化防止剤0.25質量部、水59.75質量部の混合物に、水酸化カリウム又は硝酸を適量加えてpHを9.5に調整し、さらに平均1次粒子径3μmの鉄粒子40質量部を加えてスラリーを用意した。
このスラリー400gを容量500mLの容器に収容し、23℃、35℃、43℃の各温度で72時間保管した後に容器内の気体中の水素の濃度をガス検知器(理研計器株式会社製のGP−1000)で測定した。結果を表1〜6に示す。なお、温度35℃で72時間保管した後の容器内の気体中の水素の濃度が0.01体積%未満であった場合を合格とする。
次に、スラリー400gを容量500mLの容器に収容し、23℃、35℃、43℃の各温度で72時間保管する。すると、鉄粒子の凝集沈降物が生成するので、容量を振盪することにより鉄粒子の凝集沈降物が解砕して再分散するか否かを評価した。結果を表1〜6に示す。なお、表1〜6においては、鉄粒子の凝集沈降物が解砕して再分散した場合は「○」印で示し、再分散しなかった場合は「×」印で示した。温度35℃で72時間保管して生成した凝集沈降物が再分散した場合を合格とする。
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表1〜6から、アルケニルコハク酸誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、及び、分子中に炭素−炭素多重結合を有しないアミンは、水素ガスの発生が少なく、磁性粒子の酸化が抑制されていることが分かる。また、鉄粒子の凝集沈降物が再分散可能であることが分かる。
これに対して、鉄の防食剤として一般的なリン酸系化合物や、ベンゾチアゾール誘導体や、金属研磨で酸化防止剤として使用される含窒素化合物(テトラゾール誘導体、ピラゾール誘導体、イミダゾール誘導体、インドール誘導体、ヒドラジド誘導体)や、従来の磁気研磨用の研磨用組成物に使用される界面活性剤、水溶性高分子などは、磁性粒子の酸化を抑制する性能と磁性粒子の凝集を抑制する性能が低かった。
次に、酸化防止剤の濃度と上記効果(酸化抑制効果と凝集抑制効果)との相関性を評価した。評価方法は、酸化防止剤の濃度が異なる点を除いては、上記と同様である。結果を表7に示す。
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表7から、アルケニルコハク酸誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、及び、分子中に炭素−炭素多重結合を有しないアミンは、濃度が高いほど上記効果が向上することが分かる。これに対して、従来の磁気研磨用の研磨用組成物に使用される酸化防止剤は、濃度を高くしても、実用に使用できるレベルの効果は得られなかった。
次に、複数種の酸化防止剤を併用した場合の効果を評価した。評価方法は、複数種の酸化防止剤を用いる点を除いては、上記と同様である。結果を表8に示す。
Figure 0006220090
次に、種々の研磨用組成物を用いて種々の研磨対象物に磁気研磨を行い、研磨速度(単位はμm/min)を測定した。また、研磨時に水素ガスが発生するか否か、研磨後に凝集した磁性粒子が再分散するか否かについて調査した。さらに、研磨対象物の被研磨面の光沢と傷について評価した。
再分散性の評価は、研磨に使用した研磨用組成物を集めて、表1〜6の場合と同様の前記方法(保管条件は35℃、72時間)により行った。そして、発生した水素ガスの量が0.01体積%未満であった場合は、水素ガスは「発生せず」と評価した。また、研磨後の研磨用組成物中の磁性粒子が振盪により容易に再分散した場合は、再分散性が「良好」、振盪による再分散は十分ではないが、問題無い程度の分散が可能であった場合は、再分散性が「可」、振盪により容易に再分散しない凝集が生じていた場合は、再分散性が「不良」と評価した。
研磨速度は、研磨前後の研磨対象物の質量を電子天秤で計測し、その差分から求めた。研磨対象物の被研磨面の光沢は、鏡面が得られた場合を「良好」、鏡面は得られたが部分的に曇りが認められた場合を「可」、鏡面が得られなかった場合を「不良」と評価した。研磨対象物の被研磨面のスクラッチは、目視で確認できる傷がなかった場合を「発生せず」、目視で確認できる傷の数が5本以内であった場合を「可」、目視で確認できる傷の数が6本以上であった場合を「不良」と評価した。
研磨用組成物は、磁性粒子50質量部、研磨粒子11.9質量部、酸化防止剤0.157質量部、α−セルロース1.25質量部、水36.693質量部の混合物に、水酸化カリウム又は硝酸を適量加えて、pHを表9〜23に記載のように調整したスラリーである。ただし、酸化剤の欄に数値が記載されている実施例については、酸化剤として過酸化水素を表9〜23に示す量だけ含有している。また、水溶性高分子の欄が空欄となっている実施例については、α−セルロースを含有していない。
磁性粒子は、カルボニル鉄又はアトマイズ鉄であり、その平均1次粒子径は表9〜23に記載の通りである。研磨粒子は、シリカ又はアルミナであり、その平均2次粒子径は表9〜23に記載の通りである。酸化防止剤は、表9〜23に示す通りである。
なお、表9〜23のTAは1,2,4−トリアゾール、BTAはベンゾトリアゾール、OSAAはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクテニルスクシンアミド酸(オクテニルコハク酸ジエタノールアミド)、BTYEは2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、PTは1,10−フェナントロリンである。
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これらの研磨用組成物を用いて磁気研磨を行った。使用した研磨装置は、株式会社エグロ製のCNC研削機を改造した装置であり、その構造は図1に示したものと同様である。また、研磨対象物は、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム製の試験片、真鍮C2600製の試験片、真鍮C2801製の試験片、SUS304製の試験片、SUS316製の試験片、アルミニウム6063製の試験片、又はポリフェニレンスルホン(PPSU)製の試験片である。これらの試験片は、一辺60mm、厚さ8mmの正方形状の板である。研磨条件は以下の通りである。
研磨対象物が陽極酸化皮膜を有するアルミニウム製の試験片である場合の試験結果を表9〜13に、真鍮C2600製の試験片である場合の試験結果を表14に、真鍮C2801製の試験片である場合の試験結果を表15に、SUS304製の試験片である場合の試験結果を表16に、SUS316製の試験片である場合の試験結果を表17に、アルミニウム6063製の試験片である場合の試験結果を表18〜21に、ポリフェニレンスルホン(PPSU)製の試験片である場合の試験結果を表22、23にそれぞれ示す。
<研磨条件>
研磨対象物と研磨定盤の表面との距離:2mm
公転速度:10rpm
自転速度:250rpm
研磨用組成物の使用量:600g
研磨時間:30min
永久磁石の表面磁束密度:350mT
表7〜23に示すように、各実施例の研磨用組成物を用いた場合は、研磨速度が高く、且つ、水素ガスの発生が防止でき、さらに、凝集した磁性粒子の再分散性が良好であった。さらに、磁性粒子である鉄粉の平均1次粒子径が10μm以下の場合は、特に研磨対象物の被研磨面の光沢が良好で、傷の発生がない好適な被研磨面が得られた。これに対して、比較例の研磨用組成物を用いた場合は、水素ガスが発生し、磁性粒子の酸化が防止できていないことが分かる。また、凝集した磁性粒子の再分散性が乏しかった。
1 研磨用組成物
3 磁気クラスター
5 研磨対象物

Claims (15)

  1. 鉄、鉄の酸化物、及び鉄の合金の少なくとも1種を含有する磁性粒子と、前記磁性粒子の酸化を抑制する酸化防止剤と、水と、を含有し、前記酸化防止剤が、アルケニルコハク酸誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、及び、分子中に炭素−炭素多重結合を有しないアミンの少なくとも1種であり、
    前記分子中に炭素−炭素多重結合を有しないアミンが、下記式(6)、(7)、(8)、又は(9)で表される化合物を含む研磨用組成物。
    Figure 0006220090
    Figure 0006220090
    Figure 0006220090
    Figure 0006220090
    上記式(6)で表される化合物のR61、R62、R63は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基であるか、又は、それぞれ独立して、カルボキシアルキル基、ホスホアルキル基、若しくはスルホアルキル基である。R61、R62、R63は、互いに炭素が結合して環状アルカンを形成してもよい。ただし、R61、R62、R63の3つは、同時に水素原子にならない。
    上記式(7)で表される化合物のR71、R72、R73、R74は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。R71、R72、R73、R74は、互いに炭素が結合して環状アルカンを形成してもよい。上記式(7)で表される化合物のR75は、炭素数2以上10以下のアルキレン基を示す。
    上記式(8)で表される化合物のR81、R82、R83、R84、R85は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。R81、R82、R83、R84、R85は、互いに炭素が結合して環状アルカンを形成してもよい。上記式(8)で表される化合物のR86、R87は、炭素数2以上10以下のアルキレン基を示す。
    上記式(9)で表される化合物のR91、R92、R93、R94、R95、R96は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。R91、R92、R93、R94、R95、R96は、互いに炭素が結合して環状アルカンを形成してもよい。上記式(9)で表される化合物のR97、R98、R99は、炭素数2以上10以下のアルキレン基を示す。
  2. 非磁性の研磨粒子をさらに含有する請求項1に記載の研磨用組成物。
  3. 前記アルケニルコハク酸誘導体が、下記式(1)、(2)、又は(3)で表される化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の研磨用組成物。
    Figure 0006220090
    Figure 0006220090
    Figure 0006220090
    上記式(1)で表される化合物のR1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数20以下のアルケニル基を示し、X1は、それぞれ独立して、水素原子又はカチオンを示す。R1及びR2は同時に水素原子にならない。
    上記式(2)で表される化合物のR11及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数20以下のアルケニル基を示し、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ポリオキシエチレン基(−(CH2CH2O)n−CH2CH2OH)、又はポリオキシプロピレン基(−(CH2CHCH3O)m−CH2CHCH3OH)を示す。R11及びR14は同時に水素原子にならない。上記のポリオキシエチレン基のnは、オキシエチレン基の平均付加モル数を示し、1以上19以下である。上記のポリオキシプロピレン基のmは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を示し、1以上19以下である。また、上記式(2)で表される化合物のX11は、水素原子又はカチオンを示す。
    さらに、上記式(3)で表される化合物のR31及びR36は、それぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数20以下のアルケニル基を示し、R32、R33、R34、及びR35は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ポリオキシエチレン基(−(CH2CH2O)r−CH2CH2OH)、又はポリオキシプロピレン基(−(CH2CHCH3O)s−CH2CHCH3OH)を示す。R31及びR36は同時に水素原子にならない。上記のポリオキシエチレン基のrは、オキシエチレン基の平均付加モル数を示し、1以上19以下である。上記のポリオキシプロピレン基のsは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を示し、1以上19以下である。
  4. 前記ビピリジン誘導体が、下記式(4)で表される化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の研磨用組成物。
    Figure 0006220090
    なお、上記式(4)で表される化合物のR41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、及びR48は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、カルボキシルアルキル基、カルボキシルアルケニル基、アルキルスルホ基、アルケニルスルホ基、アルキルニトロ基、アルケニルニトロ基、アルコキシ基、アセチル基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルハロゲン基、アルケニルハロゲン基を示す。
  5. 前記フェナントロリン誘導体が、下記式(5)で表される化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の研磨用組成物。
    Figure 0006220090
    なお、上記式(5)で表される化合物のR51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、及びR58は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、カルボキシルアルキル基、カルボキシルアルケニル基、アルキルスルホ基、アルケニルスルホ基、アルキルニトロ基、アルケニルニトロ基、アルコキシ基、アセチル基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルハロゲン基、アルケニルハロゲン基を示す。
  6. pHが5以上12以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  7. pHが7以上12以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  8. 酸化剤を実質的に含有しない請求項1〜7のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する磁気研磨方法であって、前記研磨用組成物に磁場を印加して前記磁性粒子を含有する磁気クラスターを形成し、前記磁気クラスターを前記研磨対象物に接触させて前記研磨対象物を研磨する工程を含む磁気研磨方法。
  10. 前記研磨対象物が合金及び金属酸化物の少なくとも一方を含有する請求項9に記載の磁気研磨方法。
  11. 前記研磨対象物がアルミニウム合金、鉄合金、マグネシウム合金、及びチタン合金の少なくとも1種を含有する請求項9に記載の磁気研磨方法。
  12. 前記研磨対象物が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化ケイ素の少なくとも1種を含有する請求項9に記載の磁気研磨方法。
  13. 前記研磨対象物は、その表面を含む一部分が金属酸化物からなり、その他の部分が合金からなる請求項9に記載の磁気研磨方法。
  14. 前記磁性粒子を含有する第1成分と、前記水を含有する第2成分とを、前記研磨対象物の研磨以前に混合することにより、前記研磨用組成物を製造し、製造した前記研磨用組成物を用いて前記研磨対象物を研磨する請求項9〜13のいずれか一項に記載の磁気研磨方法。
  15. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の研磨用組成物を製造する方法であって、前記磁性粒子を含有する第1成分と、前記水を含有する第2成分とを混合する工程を含む研磨用組成物の製造方法。
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