JP7007973B2 - 研磨用組成物及びその製造方法並びに磁気研磨方法 - Google Patents
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Description
本発明の他の態様に係る磁気研磨方法は、上記一態様に係る研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する磁気研磨方法であって、研磨用組成物に磁場を印加して磁性粒子を含有する磁気クラスターを形成し、磁気クラスターを研磨対象物に接触させて研磨対象物を研磨する工程を含むことを要旨とする。
本発明の他の態様に係る研磨用組成物の製造方法は、上記一態様に係る研磨用組成物を製造する方法であって、磁性粒子を含有する第1成分と、水を含有する第2成分とを混合する工程を含むことを要旨とする。
本実施形態の研磨用組成物は、飽和磁化が20emu/g以上150emu/g以下の磁性粒子と、水と、を含有する。本実施形態の研磨用組成物に磁場を印加すると、磁性粒子が磁力線に沿って鎖状に並んで磁気クラスターを形成する。磁気クラスターは研磨工具として機能するので、本実施形態の研磨用組成物は磁気研磨方法に使用することができる。すなわち、本実施形態の研磨用組成物に磁場を印加しつつ磁気クラスターと研磨対象物を接触させ相対移動させると、研磨対象物を高精度に仕上げる研磨(例えば鏡面仕上げ)を行うことが可能である。なお、emuとは、エレクトロ・マグネティック・ユニットである。
1.研磨対象物について
研磨対象物の材質は特に限定されるものではないが、例えば、金属、合金、酸化物、樹脂等があげられる。
金属の具体例としては、鉄、銅、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ルテニウム、タングステン等が挙げられる。合金の具体例としては、アルミニウム合金、鉄合金(ステンレスなど)、マグネシウム合金、チタン合金、銅合金、クロム合金、コバルト合金等が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム等が挙げられる。金属酸化物の形態に限定はなく、セラミックス材料、結晶性材料(サファイア、水晶など)、ガラスの他、前記金属や前記合金が酸化して生成したものでもよい。樹脂の具体例としては、スーパーエンジニアリングプラスチック、例えばポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)が挙げられる。
磁性粒子としては、例えば、硬質磁性材料や軟質磁性材料で構成される粒子があげられる。軟質磁性材料で構成される粒子としては、強磁性粒子、常磁性粒子があげられる。磁性粒子の材質は特に限定されるものではないが、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、及びこれらの酸化物(例えばマグネタイト等の酸化鉄)、これらの窒化物、これらの合金があげられる。また、サマリウム、ネオジム、セリウム等の希土類金属を含む磁性粒子も使用することができる。
フェライトとしては、例えば、Mn-Mg-Sr系フェライト、Mn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Ni-Znフェライト、Ni-Zn-Cu系フェライト、Sr系フェライト、Mg-Ti系フェライト等があげられる。
磁性粒子の表面は、樹脂等により表面処理が施されていてもよいし、表面処理が施されてなくてもよい。
なお、磁性粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、本発明において磁性とは、磁界に感応することを意味しており、例えば磁石に引きつけられる性質を意味する。
磁性粒子の平均1次粒子径は、例えば、BET法で測定される磁性粒子の比表面積に基づいて計算することができる。また、動的光散乱法で測定することもできる。
加工効率を重視した中仕上げ研磨を先に実施した後に、表面品質を重視した仕上げ研磨を行うなど、研磨を複数の段階に分けて行う場合は、各段階ごとに平均1次粒子径が異なる磁性粒子を使用してもよい。
本実施形態の研磨用組成物中の磁性粒子の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。磁性粒子の含有量が10質量%以上であれば、研磨速度、表面品質の改善という効果が奏される。
なお、磁性粒子は2種以上を併用してもよいが、2種類以上の磁性粒子を併用する場合は、研磨用組成物中の磁性粒子の含有量とは、それら2種類以上の磁性粒子の合計の含有量を意味する。
本実施形態の研磨用組成物は、磁性粒子、添加剤等の各成分を分散又は溶解するための分散媒又は溶媒として液状媒体を含有する。液状媒体としては水、有機溶剤等を使用することができるが、防爆対策、環境負荷の低減という観点から、水を含有することが好ましい。液状媒体として有機溶剤及び油脂を含有せず、水のみを含有していれば、研磨後の研磨対象物の洗浄性が優れており、洗浄プロセスの負荷が小さい。他の各成分の作用を阻害することを抑制するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後にフィルタを通して異物を除去した純水、超純水、又は蒸留水が好ましい。
本実施形態の研磨用組成物は、非磁性の研磨粒子をさらに含有してもよい。研磨用組成物が非磁性の研磨粒子を含有していると、研磨用組成物に磁場を印加して磁気クラスターを形成する際に、研磨粒子が磁性粒子とともに磁気クラスターを形成することとなるため、本実施形態の研磨用組成物の研磨性能、研磨速度が向上するとともに、研磨対象物の被研磨面の表面品質がより良好となる。一方、研磨用組成物が非磁性の研磨粒子を含有していない場合は、研磨用組成物の製造コストを抑制できる。また、研磨された研磨対象物の被研磨面の輝度、グロスを向上させることができる場合がある。
研磨粒子の大きさは、特に限定されない。例えば、研磨粒子の平均1次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。研磨粒子の平均1次粒子径が大きくなるにつれて、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する。また、研磨粒子の平均1次粒子径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。研磨粒子の1次粒子径が小さくなるつれて、スラリー状の研磨用組成物の保管中に磁性粒子が沈降しても再分散しやすくなる。研磨粒子の平均1次粒子径は、例えば、BET法から算出した研磨粒子の比表面積をもとに、研磨粒子の形状が真球であると仮定して算出することができる。
本実施形態の研磨用組成物中の研磨粒子の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。研磨粒子の含有量が20質量%以下であれば、研磨用組成物の安定性、流動性の確保とそれによる研磨精度の維持という効果が奏される。また、本実施形態の研磨用組成物中の研磨粒子の含有量は、研磨効率の点からは、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。研磨粒子の含有量が1質量%以上であれば、研磨速度の改善という効果が奏される。
本実施形態の研磨用組成物のpHは、特に限定されるものではない。ただし、研磨対象物の種類によっては、6以上とすることができるし、8以上とすることもできる。また、本実施形態の研磨用組成物のpHは、研磨対象物の種類によっては、14未満とすることができるし、12以下とすることもできるし、10.5以下とすることができる。pHがこの範囲の研磨用組成物は、表面光沢(グロス)が高く、研磨対象物を効率的に研磨することができる。
pH調整剤としての塩基の具体例としては、アルカリ金属の水酸化物又はその塩、アルカリ土類金属の水酸化物又はその塩、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、アミン等があげられる。
さらに、アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン等があげられる。
本実施形態の研磨用組成物の電気伝導度は特に限定されるものではないが、20mS/cm以下が好ましく、10mS/cm以下がより好ましく、5mS/cm以下がさらに好ましい。電気伝導度がこのような範囲であれば、磁性粒子や研磨粒子の凝集がより生じにくいため、研磨用組成物の寿命をさらに延長することができる。電気伝導度は、研磨用組成物に添加する塩化合物の種類、添加量等により制御することができる。
本実施形態の研磨用組成物には、必要に応じて、酸化剤(例えば、ハロゲン原子を含有する酸化剤)、錯化剤、防食剤、界面活性剤、水溶性高分子、防腐剤、防カビ剤等のその他の添加剤をさらに添加してもよい。以下、その他の添加剤について説明する。
(1)酸化剤について
本実施形態の研磨用組成物中には酸化剤が含まれていてもよい。酸化剤の種類は特に限定されるものではないが、例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸塩、過硫酸塩等があげられる。
本実施形態の研磨用組成物中には防食剤が含まれていてもよい。研磨対象物の腐食を抑制するために、防食剤を添加することにより、研磨対象物の溶解を防ぐことができる。防食剤を使用することで、研磨対象物の表面の面荒れ等の悪化を抑制して、高いグロスを得ることができる。
使用可能な防食剤は、特に限定されるものではないが、含窒素化合物が挙げられる。含窒素化合物としては、例えば、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、及び、分子中に炭素-炭素多重結合を有しないアミンが挙げられる。防食剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、防食剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
ビピリジン誘導体は、下記式(1)で表される化合物を含んでもよい。
フェナントロリン誘導体は、下記式(2)で表される化合物を含んでもよい。
分子中に炭素-炭素多重結合を有しないアミンとしては、例えば、下記式(3)、(4)、(5)、(6)で表される化合物を含んでもよい。
ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体には、2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、トリアゾール、ベンゾトリアゾールも包含される。防食剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
インダゾール化合物の例としては、1H-インダゾール、5-アミノ-1H-インダゾール、5-ニトロ-1H-インダゾール、5-ヒドロキシ-1H-インダゾール、6-アミノ-1H-インダゾール、6-ニトロ-1H-インダゾール、6-ヒドロキシ-1H-インダゾール、3-カルボキシ-5-メチル-1H-インダゾール等が挙げられる。
本実施形態の研磨用組成物中には界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤は、研磨後の被研磨面に親水性を付与することにより研磨後の被研磨面の洗浄効率を良くするため、被研磨面への汚れの付着等を防ぐことができる。界面活性剤の種類は特に限定されるものではないが、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。これら界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
両性界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
本実施形態の研磨用組成物中には水溶性高分子が含まれてもよい。研磨用組成物中に水溶性高分子を添加すると、磁性粒子及び研磨粒子の再分散性がより良好となる。水溶性高分子の種類は特に限定されるものではないが、具体例としては、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリイソプレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、イソプレンスルホン酸とアクリル酸の共重合体、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、α-セルロース、β-セルロース、γ-セルロース、プルラン、キトサン、キトサン塩類が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の研磨用組成物中には防腐剤、防カビ剤が含まれてもよい。防腐剤及び防カビ剤の種類は特に限定されるものではないが、具体例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤や、パラオキシ安息香酸エステル類や、フェノキシエタノール、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。これら防腐剤及び防カビ剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の研磨用組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、磁性粒子、防食剤等の各成分を水中で攪拌混合することにより製造することができる。各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に限定されない。
あるいは、磁性粒子を含有する第1成分と、水を含有する第2成分とを、それぞれ別途調製して、これら両成分を混合することにより研磨用組成物を製造してもよい。このとき、防食剤は、第1成分に含有されていてもよいし、第2成分に含有されていてもよいし、両成分に含有されていてもよい。またあるいは、第1成分と第2成分との混合物に防食剤を添加してもよいし、第1成分と第2成分と防食剤とを同時に混合してもよい。
本実施形態の研磨用組成物を用いた研磨対象物の研磨方法は特に限定されるものではないが、本実施形態の研磨用組成物は、磁場の印加により磁力線に沿ってブラシ状の磁気クラスターを形成することができることから、磁気研磨方法に用いることができる。
磁場の印加により磁性粒子を含有する磁気クラスターが研磨用組成物内に形成したら、磁気クラスターを研磨対象物の被研磨面に接触させた上、研磨対象物及び磁気クラスターの一方又は両方を移動させて、磁気クラスターと研磨対象物の被研磨面とを摺接させる。すると、磁気クラスターと研磨対象物の被研磨面との接触箇所のせん断応力により、研磨対象物の被研磨面が研磨される。磁気クラスターは、複雑な形状や凹凸形状にも追従するように変形可能であるため、平面の研磨のみならず三次元的な形状の面の研磨も可能である。
なお、磁気研磨装置としてCNC研削装置を利用することができる。また、図1の磁気研磨装置は、研磨対象物5を移動させ磁場印加部12は移動させない構成となっていたが、これとは逆に磁場印加部12を移動させ研磨対象物5を移動させない構成の磁気研磨装置でもよい。あるいは、研磨対象物5と磁場印加部12の両方を移動させる構成の磁気研磨装置でもよい。
加工効率を重視した粗仕上げ/中仕上げ研磨を先に実施した後に、表面品質を重視した仕上げ研磨を実施するなど、研磨を複数の段階に分けて行ってもよい。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。種々の研磨用組成物を調製し、それらの研磨用組成物を使用してアルミニウム合金A6063からなる研磨対象物に磁気研磨を行った。研磨対象物の形状は、一辺60mm、厚さ8mmの正方形状の板である。そして、研磨速度を算出するとともに、研磨対象物の被研磨面の傷(スクラッチ)、表面光沢(グロス)、及びヘイズを評価した。
磁性粒子、非磁性の研磨粒子(以下「砥粒」と記す)、防食剤、添加剤、水を混合した後に、硝酸又は水酸化カリウムを適量添加してpHを所定の値に調整して、実施例1の研磨用組成物を得た。表1に示すように、磁性粒子の種類は、飽和磁化が78.5emu/gのFe3O4(マグネタイト)であり、磁性粒子の形状は8面体状であり、平均1次粒子径(体積基準の積算粒子径分布における50%粒子径D50)は0.17μmである。また、研磨用組成物中の磁性粒子の含有量は50.0質量%である。
防食剤の種類はベンゾトリアゾール(各表においてはBTAと記してある)であり、研磨用組成物中の防食剤の含有量は0.15質量%である。
研磨用組成物のpHは硝酸又は水酸化カリウムで調整し、調整後のpHは、9.5である。
・最大磁場:±10000Oe
・磁場の掃引速度:±10000Oeの1Loopを5分間
・試料の質量:内径5.8mm、厚さ2.5mmのアクリル樹脂製の容器に磁性粒子を充填し、充填前後の質量を精密天秤で測定して算出した。
また、研磨条件は以下の通りである。
研磨定盤の直径:380mm
研磨対象物と研磨定盤の表面との距離:5mm
公転速度:80rpm
自転速度:5rpm
研磨用組成物の使用量:2000g
研磨時間:30min
磁性粒子の種類、飽和磁化、形状、及び50%粒子径D50のうち少なくとも一つが異なる点以外は(表1、2を参照)、実施例1と同様にして、研磨用組成物の調製と磁気研磨を行った。
なお、比較例7~11の研磨用組成物に用いた磁性粒子はマグネタイトであるが、マグネタイトを含有する磁性流体の市販品を混合することにより研磨用組成物を調製した。比較例7の研磨用組成物に用いた磁性流体は、タイホー工業株式会社製の磁性流体フェリコロイド1003Sである。以下同様に、比較例8はタイホー工業株式会社製の磁性流体HC-50、比較例9はタイホー工業株式会社製の磁性流体W40、比較例10は株式会社フェローテック製の磁性流体MSGW08、比較例11は株式会社フェローテック製の磁性流体MSGS60である。
研磨対象物の被研磨面のスクラッチは、目視で確認できる傷の数により評価した。結果を表1、2に示す。目視で確認できる傷がなかった場合は、各表には「なし」と記し、目視で確認できる傷の数が5本以下であった場合は、各表には「微少」と記し、目視で確認できる傷の数が6本以上10本以下であった場合は、各表には「少ない」と記し、目視で確認できる傷の数が11本以上であった場合は、各表には「多い」と記した。
研磨対象物の被研磨面のヘイズは、蛍光灯の下で白い曇りが目視で確認できるか否かで評価した。結果を表1、2に示す。白い曇りが目視で確認できない場合は、各表には「なし」と記し、研磨対象物の被研磨面の0%超過50%以下の面積が白く曇っている場合は、各表には「微白曇」と記し、研磨対象物の被研磨面の50%超過の面積が白く曇っている場合は、各表には「白曇」と記した。
防食剤の種類及び含有量が種々異なる点以外は(表3を参照)、実施例5と同様にして、研磨用組成物の調製と磁気研磨を行った。
なお、表3中のBPは2,2’-ビピリジルであり、PTは1,10-フェナントロリンであり、TAは1,2,4-トリアゾールであり、MBTABEは2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノールであり、NBTAは5-ニトロ-1H-ベンゾトリアゾールであり、TEAはトリエタノールアミンであり、PHDETAはN,N,N’,N’’,N’’-ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミンである。
表3に示す結果から分かるように、防食剤の種類が異なっても、研磨速度、スクラッチ、グロス、及びヘイズはいずれも良好であった。
磁性粒子の含有量が種々異なる点以外は(表4を参照)、実施例5と同様にして、研磨用組成物の調製と磁気研磨を行った。
表4に示す結果から分かるように、磁性粒子の含有量が多いほど研磨速度が大きいという傾向が見られた。また、磁性粒子の含有量が異なっても、スクラッチ、グロス、及びヘイズはいずれも良好であった。
研磨用組成物のpHが種々異なる点以外は(表5を参照)、実施例5と同様にして、研磨用組成物の調製と磁気研磨を行った。
表5に示す結果から分かるように、研磨用組成物のpHが大きいほど研磨速度が大きいという傾向が見られた。また、研磨用組成物のpHが10.5超過であると、グロスの数値が低下する傾向が見られた。研磨用組成物のpHが異なっても、スクラッチ及びヘイズはいずれも良好であった。
3 磁気クラスター
5 研磨対象物
Claims (14)
- 飽和磁化が20emu/g以上150emu/g以下の磁性粒子と、水と、を含有する研磨用組成物。
- 前記磁性粒子が鉄合金及び鉄酸化物の少なくとも一方を含有する請求項1に記載の研磨用組成物。
- 前記磁性粒子の平均1次粒子径が10μm以下である請求項1又は請求項2に記載の研磨用組成物。
- 前記磁性粒子の平均1次粒子径が0.10μm以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- pHが10.5以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- pHが6.0以上である請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- 前記磁性粒子の形状が球状又は多面体状である請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する磁気研磨方法であって、前記研磨用組成物に磁場を印加して前記磁性粒子を含有する磁気クラスターを形成し、前記磁気クラスターを前記研磨対象物に接触させて前記研磨対象物を研磨する工程を含む磁気研磨方法。
- 前記研磨対象物が軟質金属材料を含有する請求項8に記載の磁気研磨方法。
- 前記研磨対象物がアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、及び銅合金の少なくとも1種を含有する請求項8に記載の磁気研磨方法。
- 前記研磨対象物が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、鉄合金、チタン合金、及び樹脂の少なくとも1種を含有する請求項8に記載の磁気研磨方法。
- 前記研磨対象物は、その表面を含む一部分が金属酸化物からなり、その他の部分が合金からなる請求項8に記載の磁気研磨方法。
- 前記磁性粒子を含有する第1成分と、前記水を含有する第2成分とを、前記研磨対象物の研磨以前に混合することにより、前記研磨用組成物を製造し、製造した前記研磨用組成物を用いて前記研磨対象物を研磨する請求項8~12のいずれか一項に記載の磁気研磨方法。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨用組成物を製造する方法であって、前記磁性粒子を含有する第1成分と、前記水を含有する第2成分とを混合する工程を含む研磨用組成物の製造方法。
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