以下、絶縁検査装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、絶縁検査装置1の構成について説明する。
図1に示す絶縁検査装置1は、基板保持部2、プローブユニット3、電源部4、電圧検出部5、電流検出部6、スイッチ部7、スパーク検出部8、処理部9および出力部10を備え、基板保持部2によって保持されている回路基板100に形成されている複数の導体パターン(本例では一例として、図2に示すように10個の導体パターンP1〜P10。特に区別しないときには導体パターンPともいう)の一部でそれぞれ構成される一対の導体パターン群PGを検査対象として、導体パターン群PG間の絶縁状態を検査する。
基板保持部2は、不図示のフィクスチャを備え、表面に配設された回路基板100を所定の位置に保持する。プローブユニット3は、複数のプローブピン11を備えて治具型に構成されている。この場合、各プローブピン11は、回路基板100の各導体パターンP1〜P10上に規定された検査ポイントTP1〜TP10(特に区別しないときには、検査ポイントTPともいう)の数および位置に対応して、プローブユニット3における基板保持部2との対向面に立設されている。また、プローブユニット3は、処理部9の制御に従って作動する不図示の移動機構により、基板保持部2に対して接離動させられることで、複数のプローブピン11を回路基板100の対応する検査ポイントTPに接触させるプロービングを実行する。
電源部4は、処理部9の制御に従い、直流電圧V1を基準電位(本例ではグランド電位)Gを基準として生成して、出力端子4aから出力する。この際に、電源部4は、処理部9によって設定された上昇率α(=dV/dt)で、かつ処理部9によって設定された目標電圧値Vt(一例として50V〜1000Vの範囲内の直流電圧値から選択された所望の直流電圧値)に達するまで直流電圧V1を上昇させる。また、電源部4は、処理部9の制御に従い、直流電圧V1を目標電圧値Vtから基準電位まで、一例として上記の上昇率αと絶対値が同じ降下率で降下させる。
電圧検出部5は、一対の入力端子5a,5b間に入力される直流電圧を検出すると共に所定の周波数でサンプリングすることにより、検出した直流電圧の電圧波形を示す波形データDvを生成して、処理部9に出力する。具体的には、電圧検出部5は、後述するように、スイッチ部7を介して、一対の導体パターン群PGのうちの一方の導体パターン群PGが入力端子5aに接続されると共に、他方の導体パターン群PGが入力端子5bに接続される。これにより、電圧検出部5は、電源部4が直流電圧V1を出力しているときに、スイッチ部7を介して一対の導体パターン群PG間に供給されている検査用電圧V2を検出して、その波形データDvを処理部9に出力する。
なお、導体パターン群PGとは、複数の導体パターンPのうちから検査対象として選択された1または2以上の導体パターンPで構成される導体パターンPの組であり、一対の導体パターン群PGとは、このようにして選択された互いに異なる導体パターンPで構成される2つの導体パターン群の組である。本例では、図3に示すように、導体パターン群PGが導体パターン群PG1〜PG6の6つ規定されている。また、図4に示すように、一対の導体パターン群PGとする2つの導体パターン群の組が5組規定されていると共に、一対の導体パターン群PGを構成する2つの導体パターン群PGについての静電容量の容量値Cが例えば実験などで予め求められて、一対の導体パターン群PG毎に規定されている。
この2つの導体パターン群PGについての静電容量の容量値Cとは、この2つの導体パターン群PGが検査対象として選択されて電源部4の出力端子4aと後述する電流検出部6の入力端子6aとの間に接続されたときに、電源部4の出力端子4aに接続される静電容量の容量値であって、回路基板100において2つの導体パターン群PG間に形成される静電容量の容量値と、プローブユニット3の各プローブピン11とスイッチ部7とを接続する後述のケーブル間に形成される浮遊容量の容量値との合計容量値である。
電流検出部6は、一対の入力端子6a,6b間に入力される直流電流を検出すると共に所定の周波数(例えば電圧検出部5のサンプリング周波数と同じ周波数)でサンプリングすることにより、検出した直流電流の電流波形を示す波形データDiを生成して、スパーク検出部8および処理部9に出力する。具体的には、検査対象として選択された1つの一対の導体パターン群PGのうちの一方の導体パターン群PGはスイッチ部7を介して電源部4の出力端子4aに接続され、他方の導体パターン群PGはスイッチ部7を介して電流検出部6の入力端子6aに接続される。また、電流検出部6の入力端子6bは、基準電位Gに接続される。
これにより、電流検出部6は、電源部4による直流電圧V1の出力時(一対の導体パターン群PG間への検査用電圧V2の供給時)に検査対象としての一対の導体パターン群PGに流れる直流電流I1の電流経路(電源部4の出力端子4aから、スイッチ部7、プローブユニット3、一対の導体パターン群PGのうちの一方の導体パターン群PG、他方の導体パターン群PG、プローブユニット3およびスイッチ部7を経由して基準電位Gに至る図1において破線で示す電流経路)内に接続されて、直流電流I1を検出し、その波形データDiをスパーク検出部8および処理部9に出力する。
なお、電流検出部6を含む通常の電流計では、一対の入力端子6a,6b間のインピーダンスは低い値に維持されている。このため、スイッチ部7を介して電流検出部6の入力端子6aに接続された他方の導体パターン群PGは、低電位側の導体パターン群PGとして、ほぼ基準電位Gに規定される(つまり、他方の導体パターン群PGを構成する導体パターンPは同じ低電位に規定される)。一方、スイッチ部7を介して電源部4の出力端子4aに接続された一方の導体パターン群PGは、高電位側の導体パターン群PGとして、ほぼ直流電圧V1に規定される(つまり、一方の導体パターン群PGを構成する導体パターンPは同じ高電位に規定される)。
スイッチ部7は、複数のスイッチ(図示せず)を備えてスキャナとして構成されている。また、スイッチ部7は、複数のプローブピン11と不図示のケーブルを介して接続されると共に、電源部4の出力端子4a、電圧検出部5の一対の入力端子5a,5bおよび電流検出部6の入力端子6aとも不図示のケーブルを介して接続されている。また、スイッチ部7は、処理部9の制御に従い、各スイッチをオン状態またはオフ状態に移行させることにより、検査対象とする一対の導体パターン群PGを、その一対の導体パターン群PG間に直流電圧V1を供給可能に電源部4に接続すると共に、電源部4から出力される直流電流I1の電流経路内に電流検出部6を接続する。
具体的には、スイッチ部7は、処理部9の制御に従い、図4に示す複数(本例では5つ)の一対の導体パターン群PGのうちから選択された検査対象とする1つの一対の導体パターン群PGを構成する一方の導体パターン群PGをプローブピン11およびケーブルを介して電源部4の出力端子4aに接続すると共に、他方の導体パターン群PGをプローブピン11およびケーブルを介して電流検出部6の入力端子6aに接続する。また、スイッチ部7は、処理部9の制御に従い、この一方の導体パターン群PGをプローブピン11およびケーブルを介して電圧検出部5の入力端子5aに接続すると共に、この他方の導体パターン群PGをプローブピン11およびケーブルを介して電圧検出部5の入力端子5bに接続する。
スパーク検出部8は、検査対象として選択された一対の導体パターン群PG間への検査用電圧V2の供給時に、この一対の導体パターン群PG間にスパーク(放電)が発生したか否かを検出すると共に、スパークの発生を検出したときには、検出信号S1を処理部9に出力する。本例では一例として、スパーク検出部8は、電流検出部6から出力される波形データDiで表される直流電流I1の電流値と、予め規定された電流しきい値Ithとを比較して、直流電流I1の電流値が電流しきい値Ith以上になったときにスパークが発生したと判別して、検出信号S1を所定の時間だけ出力する。
なお、一対の導体パターン群PG間への検査用電圧V2の供給時に、この一対の導体パターン群PG間にスパーク(放電)が発生したときには、上記のように電流しきい値Vthi以上の電流値の直流電流I1が短時間に流れるため、これに起因して電源部4から出力されている直流電圧V1の電圧波形が一時的に立ち下がり、これに伴い、検査用電圧V2の電圧波形にも一時的な立ち下がりが発生する。したがって、スパーク検出部8が、波形データDiに代えて波形データDvを入力し、最新の波形データDvとその直前の波形データDvとを比較しながら、最新の波形データDvが直前の波形データDvよりも大きく低下したことを検出したときに、スパークが発生したとして検出信号S1を出力する構成を採用することもできる。
処理部9は、一例としてCPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、上記した不図示の移動機構、電源部4およびスイッチ部7に対する制御を実行する。また、処理部9は、電圧検出部5から出力される波形データDv、電流検出部6から出力される波形データDi、およびスパーク検出部8からの検出信号S1の出力の有無に基づいて、この一対の導体パターン群PG間の絶縁状態を検査する絶縁検査処理を実行する。また、処理部9は、絶縁検査処理の結果を出力部10に出力する出力処理を実行する。
また、処理部9のメモリには、上記した図3に示す導体パターン群PGについての情報と、図4に示す一対の導体パターン群PGについての情報と、電流しきい値Ithと、抵抗しきい値Rthとが予め記憶されている。
出力部10は、一例としてLCDなどの表示装置で構成されて、処理部9によって実行された絶縁検査処理の結果を表示する。
次に、絶縁検査装置1の動作について図面を参照して説明する。なお、基板保持部2には、回路基板100がフィクスチャで保持された状態で予め載置されているものとする。
まず、処理部9は、移動機構を制御してプローブユニット3を回路基板100方向へ移動させることで、プローブユニット3の各プローブピン11の先端部を各導体パターンP1〜P10上の対応する検査ポイントTPに接触(プロービング)させる。
次いで、処理部9は、図4に示す複数の一対の導体パターン群PGについての絶縁検査処理を実行する。この絶縁検査処理では、処理部9は、同図に示すようにメモリに記憶されている複数の一対の導体パターン群PGのうちから最初の検査対象として選択した1つの一対の導体パターン群PGについての情報(一対の導体パターン群PGを構成する2つの導体パターン群PGの情報、およびこの一対の導体パターン群PGについての容量値C)を読み出す。本例では一例として、図4に示す番号順に一対の導体パターン群PGを検査対象とする。これにより、処理部9は、まず、一対の導体パターン群PGを構成する2つの導体パターン群PGの情報(導体パターン群PG1,PG2を特定する情報)、およびこの一対の導体パターン群PG1,PG2についての容量値C1とを読み出す。
続いて、処理部9は、検査対象とする一対の導体パターン群PGを構成する2つの導体パターン群PGをそれぞれ構成する導体パターン(構成導体パターン)Pを、図3に示す導体パターン群PGについての情報を参照して特定する。この場合、2つの導体パターン群PGは、導体パターン群PG1,PG2であるため、処理部9は、図3を参照することにより、一方の導体パターン群PG1は、導体パターンP1で構成され、他方の導体パターン群PG2は、導体パターンP2で構成されていることを特定する。
次いで、処理部9は、スイッチ部7に対する制御を実行することにより、検査対象とする一対の導体パターン群PGのうちの一方の導体パターン群PG(一方の導体パターン群PGを構成する各導体パターンP)を電源部4の出力端子4aに接続すると共に、電圧検出部5の入力端子5aに接続する。また、処理部9は、スイッチ部7に対する制御を実行することにより、この一対の導体パターン群PGのうちの他方の導体パターン群PG(他方の導体パターン群PGを構成する各導体パターンP)を電流検出部6の入力端子6aに接続すると共に、電圧検出部5の入力端子5bに接続する。本例では、2つの導体パターン群PGは、導体パターン群PG1,PG2であるため、一方の導体パターン群PG(例えば、導体パターン群PG1)を構成する導体パターンP1を、電源部4の出力端子4aと電圧検出部5の入力端子5aとに接続し、他方の導体パターン群PG(例えば、導体パターン群PG2)を構成する導体パターンP2を、電流検出部6の入力端子6aと電圧検出部5の入力端子5bとに接続する。
続いて、処理部9は、メモリから読み出した検査対象とする一対の導体パターン群PG1,PG2についての容量値C1と、メモリに記憶されている電流しきい値Ithとに基づいて、電源部4から出力させる直流電圧V1の上昇率αを算出する。
具体的には、電源部4が直流電圧V1の出力を開始した場合、直流電圧V1の電圧値は、電源部4の出力端子4aに接続されている導体パターン群PG1,PG2についての静電容量への充電に伴って上昇するが、この充電時に流れる直流電流I1はパルス状の電流になり、この直流電流I1のピーク電流値I1pは、検査対象としての一対の導体パターン群PG1,PG2についての静電容量の容量値をCとしたときに、式I1p=C×αで表される。処理部9は、このピーク電流値I1pに基づいて、この充電時における直流電流I1のピーク電流値I1pが電流しきい値Ith未満になる上昇率αを算出する。この場合、最初の検査対象としての一対の導体パターン群PG1,PG2についての静電容量の容量値はC1であるため、処理部9は、この容量値C1に基づいて上昇率αを算出する。
なお、上昇率αが小さいときには、直流電圧V1が目標電圧値Vtに達するまでの時間が長くなり、絶縁検査に要する時間が長くなる。このため、充電時における直流電流I1のピーク電流値I1pが電流しきい値Ithを超えない範囲内で、上昇率αをできる限り大きくするのが好ましい。
次いで、処理部9は、電源部4に対して、算出した上昇率αでの直流電圧V1の出力を開始させて、直流電圧V1を目標電圧値Vtまで上昇させる(検査用電圧V2を規定の直流電圧値まで上昇させる)。これにより、電源部4の出力端子4aから、スイッチ部7、プローブユニット3、プローブピン11、一対の導体パターン群PGのうちの一方の導体パターン群PG1、他方の導体パターン群PG2、プローブピン11、プローブユニット3、スイッチ部7および電流検出部6を経由して基準電位Gに至る上記の電流経路内に直流電流I1が流れる。電流検出部6は、この直流電流I1を検出し、その波形データDiをスパーク検出部8および処理部9に出力する。
直流電圧V1が目標電圧値Vtに達した状態(直流電流I1の電流値は通常極めて小さいため、検査用電圧V2が目標電圧値Vtと略等しい規定の直流電圧値に達した状態)において、処理部9は、電圧検出部5から出力されている波形データDvと、電流検出部6から出力されている波形データDiとを取得して、波形データDvに基づいて一対の導体パターン群PG1,PG2間に供給されている検査用電圧V2の電圧値を算出すると共に、波形データDiに基づいて一対の導体パターン群PG1,PG2間に流れている直流電流I1の電流値を算出する。また、処理部9は、算出した検査用電圧V2の規定の直流電圧値(直流電圧V1が目標電圧値Vtのときの電圧値)と直流電流I1の電流値とに基づいて、一対の導体パターン群PG1,PG2間の抵抗値(この場合、絶縁抵抗値)Rmを算出すると共に、メモリに記憶されている抵抗しきい値Rthと比較して、算出した抵抗値Rmが抵抗しきい値Rth以上のときには、一対の導体パターン群PG1,PG2間の絶縁状態は良好である可能性が高いと判別し、算出した抵抗値Rmが抵抗しきい値Rth未満のときには、一対の導体パターン群PG1,PG2間の絶縁状態は不良であると判別する。また、処理部9は、抵抗値Rmの算出が完了した時点で、電源部4に対する制御を実行して、直流電圧V1の電圧値を目標電圧値Vtからゼロボルトに低下させる。
また、処理部9は、電源部4による直流電圧V1の出力の開始直後から、抵抗値Rmに基づく絶縁状態の判別が完了するまでの間において、スパーク検出部8から検出信号S1が出力されるか否かを検出することにより、検出信号S1の出力を検出したときには、一対の導体パターン群PG1,PG2間にスパークが発生したことを検出し、検出信号S1の出力を検出しないときには、一対の導体パターン群PG1,PG2間にスパークが発生していなかったことを検出する。
この場合、一対の導体パターン群PG1,PG2間への検査用電圧V2の印加に起因して、この検査用電圧V2の上昇途中および規定の直流電圧値に達した状態において、一対の導体パターン群PG1,PG2間の絶縁状態が一時的に変化するという不具合が発生することがある。例えば、一対の導体パターン群PG1,PG2の一方から他方に延びるひげ状のパターンが回路基板100に存在しているときには、検査用電圧V2の上昇途中および規定の直流電圧値に達した状態において、一対の導体パターン群PG1,PG2間の電圧が一定の電圧に達した時点で、このひげ状のパターンを介して一対の導体パターン群PG1,PG2間にスパークが発生する。このスパークの発生により、ひげ状のパターンが焼き切れるため、その後の一対の導体パターン群PG1,PG2間の抵抗値Rmが抵抗しきい値Rth以上になることがあるが、スパークの発生によって回路基板100は損傷を受ける。したがって、処理部9は、検出信号S1の出力を検出したとき(つまり、スパークが発生したとき)には、一対の導体パターン群PG1,PG2間の絶縁状態は不良であると判別する。
なお、スパーク検出部8は、波形データDiで表される直流電流I1の電流値と電流しきい値Ithとを比較することでスパークの発生の有無を検出しているが、一対の導体パターン群PG1,PG2間の静電容量(容量値C1)の充電時に流れる直流電流I1のピーク電流値I1pは、直流電圧V1の上昇率αが上記のようにして算出された上昇率であるため、電流しきい値Ith未満に抑えられている。これにより、この充電時(直流電圧V1が目標電圧値Vtに達するまでの間)において、スパーク検出部8がパルス状に流れる直流電流I1の波形データDiに基づいて一対の導体パターン群PG1,PG2間にスパークが発生したと誤って検出するという事態の発生が回避されている。したがって、処理部9は、スパーク検出部8からの検出信号S1の有無に基づいて、一対の導体パターン群PG1,PG2間にスパークが発生したか否かを正確に検出することが可能になっている。
続いて、処理部9は、一対の導体パターン群PG1,PG2間の絶縁状態についての、抵抗値Rmに基づく上記の判別結果と、スパークの発生の有無に基づく上記の判別結果とに基づいて、算出した抵抗値Rmが抵抗しきい値Rth以上のときであって、かつ一対の導体パターン群PG1,PG2間にスパークは発生していないと判別したときに、一対の導体パターン群PG1,PG2間の絶縁状態は良好であると判別する。一方、処理部9は、算出した抵抗値Rmが抵抗しきい値Rth未満であったり、また一対の導体パターン群PG1,PG2間にスパークが発生したことを検出したときには、一対の導体パターン群PG1,PG2間の絶縁状態は不良であると判別する。処理部9は、この判別結果を一対の導体パターン群PG1,PG2に関連付けてメモリに記憶する。これにより、1つの一対の導体パターン群PG1,PG2間についての絶縁検査処理が完了する。
その後、処理部9は、図4に示す一対の導体パターン群PGのうちの残りの一対の導体パターン群PGを、一対の導体パターン群PG2,PG3、一対の導体パターン群PG2,PG4、・・・というように検査対象として順次選択しつつ、図3を参照して、選択した一対の導体パターン群PGの各導体パターンPを特定すると共に、この一対の導体パターン群PGうちの一方の導体パターン群PGを構成する各導体パターンPを電源部4の出力端子4aと電圧検出部5の入力端子5aとに接続し、かつ他方の導体パターン群PGを構成する各導体パターンPを電流検出部6の入力端子6aと電圧検出部5の入力端子5bとに接続して、上記した一対の導体パターン群PG1,PG2を検査対象としたときと同様にして、検査対象とした一対の導体パターン群PGに対する絶縁検査処理を実行する。
この場合、処理部9は、検査対象とする一対の導体パターン群PGを新たに選択する都度、検査対象とした一対の導体パターン群PGについての容量値C2(C3,C4,C5)に基づいて、一対の導体パターン群PG間の静電容量を充電する(直流電圧V1をゼロボルトから目標電圧値Vtに上昇させる)際の直流電圧V1の上昇率αを上記のようにして算出すると共に、電源部4に対してこの上昇率αで直流電圧V1を上昇させる。これにより、この直流電圧V1の上昇率αは、一対の導体パターン群PGについての静電容量の容量値Cが大きくなるに従い低下するように処理部9によって制御される。
以上のようにして、図4に示すすべての一対の導体パターン群PGに対する絶縁検査処理が完了したときに、処理部9は、出力処理を実行して、各一対の導体パターン群PGについての絶縁状態の検査結果(絶縁検査処理の結果)を出力部10に出力させる。これにより、回路基板100の検査が完了する。
この絶縁検査装置1では、上記したように、処理部9が、検査対象として選択されて電源部4の出力端子4aに接続される一対の導体パターン群PGについての静電容量の容量値Cに基づき、この容量値Cが大きくなるに従い直流電圧V1の上昇率αを低下させる制御を電源部4に対して実行する。
したがって、この絶縁検査装置1によれば、直流電圧V1をゼロボルトから目標電圧値Vtに達するまで上昇させて、検査用電圧V2を規定の直流電圧値まで上昇させる(一対の導体パターン群PG間の静電容量を充電させる)際に、一対の導体パターン群PG間の静電容量にパルス状に流れる直流電流I1の電流値が電流しきい値Ith以上になることを確実に防止することができる。これにより、直流電流I1の電流値とこの電流しきい値Ithとに基づいて一対の導体パターン群PG間でのスパークの有無を検出するスパーク検出部8が、このパルス状に流れる直流電流I1に基づいて一対の導体パターン群PG間でスパークが発生したと誤って検出する事態を回避しつつ、一対の導体パターン群PG間でのスパークの有無を正確に検出して検出信号S1を出力することができる。したがって、この絶縁検査装置1によれば、処理部9が、算出した一対の導体パターン群PG間の抵抗値Rmと検出信号S1の有無とに基づいて、検査対象としている一対の導体パターン群PG間の絶縁状態を正確に検査することができる。
なお、絶縁検査装置1では、検査対象とする一対の導体パターン群PG間の静電容量の容量値Cを実験などで予め求めて、図4に示すように、各一対の導体パターン群PGに対応させてメモリに記憶させる構成を採用しているが、図1において破線で示すように、電源部4の出力端子4aと基準電位Gとの間の静電容量を測定する容量測定部21を配設して、電源部4の出力端子4aに接続する一対の導体パターン群PGを新たに選択する(検査対象とする一対の導体パターン群PGを変更する)都度、この出力端子4aに新たに接続された一対の導体パターン群PG間の静電容量の容量値Cを測定して処理部9に出力する構成を採用することもできる。
この構成を採用した絶縁検査装置では、処理部9が、電源部4の出力端子4aに実際に接続されている一対の導体パターン群PGの静電容量の容量値Cに基づいて、直流電圧V1の適切な上昇率α、すなわち、出力端子4aに接続されている静電容量を充電する際に流れるパルス状の直流電流I1の電流値を電流しきい値Ith未満に確実に抑制できる範囲内で、できる限り高い上昇率αを算出することができる。したがって、この絶縁検査装置によれば、一対の導体パターン群PG間でスパークが発生したとスパーク検出部8が誤って検出する事態の発生をより確実に回避しつつ、直流電圧V1を目標電圧値Vt(結果として、検査用電圧V2を規定の直流電圧値)に一層短時間で上昇させることができるため、一対の導体パターン群PG間の絶縁状態をより正確に検査しつつ、絶縁検査に要する時間を短縮することができる。
また、一対の導体パターン群PGについての静電容量の容量値Cは、上記したように、回路基板100において2つの導体パターン群PG間に形成される静電容量の容量値と、プローブユニット3の各プローブピン11とスイッチ部7とを接続するケーブル間に形成される浮遊容量の容量値との合計容量値である。また、検査対象として選択する一対の導体パターン群PGを変えた場合に、浮遊容量の容量値はそれ程変化しないのに対して、一対の導体パターン群PGの静電容量の容量値Cは、一対の導体パターン群PGを構成する導体パターンPの数が増加するのに伴って増加する傾向がある。このため、一対の導体パターン群PGについての静電容量の容量値Cは、一対の導体パターン群PGを構成する導体パターンPの数が増加するのに伴って増加する。また、一対の導体パターン群PGを構成する導体パターンPの数が増加した場合には、この導体パターンPの数の増加に伴い、この導体パターンPに接触させるプローブピン11の本数も増加する。
これにより、上記した一対の導体パターン群PGについての静電容量の容量値Cに基づいて直流電圧V1の上昇率αを制御する構成に代えて、一対の導体パターン群PGを構成する導体パターンPの数(すなわち、一対の導体パターン群PGを構成する導体パターンPに接触させるプローブピン11の本数)に基づいて、この数(本数)が多くなるに従い上昇率αを低下させる制御を電源部4に対して実行する構成を採用することもできる。
この構成を採用した絶縁検査装置によれば、上記の2つの実施の形態と比較して、処理部9が一対の導体パターン群PGの静電容量の正確な容量値Cを取得できない分だけ、余裕を見て上昇率αを低めに設定することから、直流電圧V1を目標電圧値Vtにまで上昇させるに要する時間が若干長くなり、この結果として絶縁検査に要する時間も若干は長くなる。しかしながら、この絶縁検査装置においても、上記の2つの実施の形態と同様にして、スパーク検出部8において一対の導体パターン群PG間でのスパークの発生を正確に検出することができるため、処理部9が、算出した一対の導体パターン群PG間の抵抗値Rmと検出信号S1の有無とに基づいて、検査対象としている一対の導体パターン群PG間の絶縁状態を正確に検査することができる。また、この絶縁検査装置によれば、一対の導体パターン群PGについての静電容量の容量値Cを予め測定したり、容量測定部21を設けて容量値Cを測定したりする必要がないため、実験等による容量値Cの測定の手間を省いたり、装置構成の複雑化を回避したりすることができる。
また、上記の例では、スパーク検出部8を処理部9と別体に配設する構成を採用しているが、処理部9がスパーク検出部8としても機能する構成を採用することもできる。また、上記の例では、電圧検出部5を用いて検査対象としての一対の導体パターン群PG間に実際に供給される検査用電圧V2を検出し、この検査用電圧V2を使用して抵抗値Rmを算出する好ましい構成を採用しているが、検査用電圧V2は電源部4が出力する直流電圧V1とほぼ等しいため、直流電圧V1を使用して抵抗値Rmを算出する簡易な構成を採用することもできる。また、上記の例では、回路基板100に形成された導体パターンPを検査対象としているが、検査対象はこれに限定されるものではなく、電気機器の導体部を検査対象とすることができるのは勿論である。