本発明のある態様にかかる実施形態の作用効果を説明する。なお、本実施形態の作用効果を具体的に説明するに際しては、具体的な例を示して説明することになる。しかし、それらの例示される態様はあくまでも本発明に含まれる態様のうちの一部に過ぎず、その態様には数多くのバリエーションが存在する。したがって、本発明は例示される態様に限定されるものではない。
実施形態の標本観察方法及び標本観察装置について説明する。以下の各実施形態の標本観察方法及び標本観察装置は、明視野観察の状態で用いられるものである。本実施形態における明視野観察では、蛍光観察のように、励起フィルタ、ダイクロイックミラー、吸収フィルタからなる蛍光ミラーユニットは用いられない。よって、明視野観察の状態では、標本が無色透明の場合、標本の像を形成する光(以下、適宜、「結像光」という)の波長帯域と標本を照明する光(以下、適宜、「照明光」という)の波長帯域とは、合焦時、一致している。
また、本実施形態における明視野観察では、位相差観察における位相膜や、微分干渉観察における微分干渉プリズムは用いられない。よって、標本の一点から出た光についてみると、明視野観察の状態では、照明光学系における光の波面の変化と結像光学系における波面の変化はいずれもレンズのみで生じる。
また、本実施形態における明視野観察では、標本から来る光束の一部を減光するような減光フィルタは用いられない。よって、明視野観察の状態では、標本から標本の像までの間で、結像光に強度変化は生じない(ただし、レンズに起因する強度変化は除く)。
第1実施形態の標本観察方法は、標本の電子画像を取得する取得ステップと、電子画像の信号から直流成分を減算する減算ステップと、を有し、取得ステップは明視野観察の状態で行われ、減算ステップにおける電子画像は、所定の状態で取得された画像であって、所定の状態になる前に、第1の波長帯域の光で標本の位置と結像光学系の合焦位置を一致させ、所定の状態では、少なくとも、第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成されており、第2の波長帯域は第1の波長帯域のうちの一部と一致しているか、又は第1の波長帯域とは異なることを特徴とする。
第1実施形態の標本観察方法について、図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態の標本観察方法のフローチャートである。
第1実施形態の標本観察方法は、取得ステップS10と、減算ステップS20とを有する。これにより、第1実施形態の標本観察方法では、明瞭な電子画像が得られる。
第1実施形態の標本観察方法では、まず、取得ステップS10が実行される。取得ステップS10では、標本の電子画像(以下、適宜、「電子画像」という)の取得が行われる。標本の像(光学像)は、結像光学系によって形成される。電子画像の取得では、この像をCCDやCMOSのような撮像素子で撮像する。撮像によって、標本の像は電子画像(デジタルデータ)に変換される。なお、標本の像は明視野観察の状態で形成されているので、電子画像の取得も明視野観察の状態で行われる。
取得ステップS10が終わると、減算ステップS20が実行される。減算ステップS20では、電子画像の信号に対して直流成分(バイアス成分)の減算が行われる。ここで、減算ステップS20における電子画像は、所定の状態で取得された画像である。
減算ステップS20における電子画像は、所定の状態、すなわち、第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成されているときの画像である。また、所定の状態になる前では、第1の波長帯域の光で標本の位置と結像光学系の合焦位置(以下、適宜、「合焦位置」という)を一致させている。そして、第2の波長帯域は第1の波長帯域のうちの一部と一致しているか、又は第1の波長帯域とは異なっている。このように、第1実施形態の標本観察方法では、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時(瞬間)とでは、光の波長帯域が異なっている。
ここで、標本が格子状の位相物体の場合、標本を照明すると、標本から0次回折光と回折光が出てくる。結像光学系がある程度の軸上色収差を持っている状態で、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時とで、光の波長帯域を異ならせる。すると、電子画像を取得する前の光と電子画像を取得する時の光との間に、波面収差の差(光路長差)が発生する。この点ついて、図2〜図7を使って説明する。なお、回折光として1次回折光を用いて説明する。また、結像光学系は軸上色収差をある程度有しているものとする。
図2は、第1の波長帯域(中心波長λ1=550nm)での合焦位置と第2の波長帯域(中心波長λ2=450nm)での合焦位置との関係、及び波面収差量を示す図であって、(a)は第1の波長帯域の光で標本の位置と合焦位置を一致させたときの図、(b)は第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成されているときの図である。図3は、第1の波長帯域(中心波長λ1=550nm)での標本の電子画像である。図4は、第2の波長帯域(中心波長λ2=450nm)での標本の電子画像である。図5は、第1の波長帯域(中心波長λ1=550nm)での合焦位置と第2の波長帯域(中心波長λ2=650nm)での合焦位置との関係、及び波面収差量を示す図であって、(a)は第1の波長帯域の光で標本の位置と合焦位置を一致させたときの図、(b)は第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成されているときの図である。図6は、第1の波長帯域(中心波長λ1=550nm)での標本の電子画像である。図7は、第2の波長帯域(中心波長λ2=650nm)での標本の電子画像である。なお、図3、4、6及び7は、いずれも減算ステップS20が実行された後の電子画像である。また、図3、4、6及び7における標本は細胞である。
また、グラフは瞳位置での波面収差の量を表している。グラフの縦軸は波面収差量(単位は波長)、横軸は瞳面(瞳面上)の中心からの距離を表している。瞳面の中心からの距離は規格化されているので、無名数となっている。横軸の数値0は瞳面の中心位置、数値1は瞳面の最も外側の位置を表している。
図2(a)に示すように、光軸上の一点から出た光には、光線LCと光線LPとが含まれている。光線LCは光軸上を進む光線である。ここで、光線LCと瞳面の交点は、瞳面の中心位置に一致している。一方、光線LPは、光軸AXに対して所定の角度で結像光学系31に入射する光線である。ここで、光線LPと瞳面の交点は、瞳面の中心から所定の距離だけ離れた位置になっている。
標本Sを照明光(平行光束)で照明すると、標本Sから0次回折光と1次回折光が出てくる。ここで、標本Sと光軸が交わる点(光軸上の一点)に着目すると、0次回折光は回折されないので、この点から出た0次回折光は光軸上を進んで瞳の中心に到達する。よって、0次回折光は光線LCとみなすことができる。一方、1次回折光は所定の方向に回折されるので、この点から出た1次回折光は光軸に対して所定の角度で結像光学系31に入射する。結像光学系31に入射した1次回折光は、瞳面の中心から離れた位置に到達する。よって、1次回折光は光線LPとみなすことができる。
まず、第1の波長帯域の中心波長λ1が550nm、第2の波長帯域の中心波長λ2が450nmの場合について説明する。第1の波長帯域の光で標本の位置と合焦位置を一致させた状態では、第1の波長帯域の合焦位置P550は標本Sの位置PSと一致している。この状態では、図2(a)のグラフに示すように、瞳面のどの位置においても波面収差量はほぼ0になっている。これは、0次回折光における波面収差量と1次回折光における波面収差量が、共にほぼ0であることを示している。波面収差量に(2π/λ)を乗じた値は位相量に相当するので、合焦時は、0次回折光と1次回折光のいずれにおいても、位相に変化は生じない。1次回折光の位相は、0次回折光の位相に対してπ/2遅れたままなので、ψ=0−(−π/2)=π/2となる。この場合、2A1A2cosψ=0となるので、位相情報をコントラスト情報として得られない。その結果、電子画像はコントラストが無い画像になる。
一方、第2の波長帯域で標本の光学像が形成されている状態では、第2の波長帯域の合焦位置は標本の位置からずれている。図2(b)では、第2の波長帯域の合焦位置P450は標本Sの位置PS(合焦位置P550)よりも下方向(結像光学系31から離れる方向)にずれている。この状態では、図2(b)のグラフに示すように、瞳面の中心では波面収差量は0であるが、瞳面の中心から離れた位置では波面収差が発生する。ここで、波面収差は参照波面に対する実際の波面のずれで、このずれは位相のずれになる。そのため、波面収差が発生している範囲内に、1次回折光の位置があると、1次回折光の位相は、本来持っている位相に波面収差量が加わったものになる。このように、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時とで、光の波長帯域を異ならせることで、1次回折光の位相を変化させられる。図2(b)のグラフに示すように、瞳の中心からの距離が0.4の位置を位置PWとすると、位置PWにおける波面収差量は−λ/4になる。
このようにすることで、0次回折光における波面収差量を0にしたままで、1次回折光における波面収差量を−λ/4にできる。上述のように、波面収差量に(2π/λ)を乗じた値は位相量であるので、非合焦時は、0次回折光については位相に変化は生じないが、1次回折光については位相に変化が生じる。具体的には、1次回折光では、もともとの位相の遅れπ/2に加えて、更に位相がπ/2遅れる。1次回折光の位相は、0次回折光の位相に対してπ遅れた状態になるので、ψ=0−(−π)=πとなる。この場合、2A1A2cosψ≠0となるので、位相情報がコントラスト情報として得られる。その結果、図4に示すように、電子画像は、コントラストを明らかに持った画像になる。よって、この電子画像を、例えば、表示装置に表示すれば、観察者は標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
次に、第1の波長帯域の中心波長λ1が550nm、第2の波長帯域の中心波長λ2が650nmの場合について説明する。第1の波長帯域の光で標本Sの位置と合焦位置を一致させた状態では、第1の波長帯域の合焦位置P550は標本Sの位置PSと一致している。これは、図2(a)と同じである。そのため、電子画像はコントラストが無い画像になる。
一方、第2の波長帯域λ2で標本の光学像が形成されている状態では、第2の波長帯域の合焦位置P650は標本Sの位置PS(合焦位置P550)よりも下方向(結像光学系31から離れる方向)にずれている。この状態では、図5(b)のグラフに示すように、瞳面の中心では波面収差量は0であるが、瞳面の中心から離れた位置では波面収差が発生する。ここで、合焦位置P650は合焦位置P450と異なっている。
この場合、瞳面における1次回折光の位置における波面収差量は、図5(b)と図2(b)とで異なる。図5(b)のグラフに示すように、瞳の中心からの距離が0.4の位置PWでは、波面収差量は約−1λ/10になっている。
このように、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時とで、光の波長帯域を異ならせることで、0次回折光における波面収差量を0にしたままで、1次回折光における波面収差量を−λ/10にできる。波面収差量は異なるが、これは図2(b)と同じような状態である。そのため、図7に示すように、電子画像は、コントラストを明らかに持った画像になる。よって、観察者は標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
図2(b)では、1次回折光における波面収差量が−λ/4になっている。この場合、0次回折光の位相と1次回折光の位相は逆位相の関係になる。逆位相の関係では、0次回折光と1次回折光は弱めあうことになる。よって、電子画像では、背景に比べて標本Sが暗くなる。これは、位相差観察におけるダークコントラストに相当する。
また、1次回折光における波面収差量がλ/4になる場合、0次回折光の位相と1次回折光の位相は同位相の関係になる。同位相の関係では、0次回折光と1次回折光は強めあうことになる。よって、電子画像では、背景に比べて標本Sが明るくなる。これは、位相差観察におけるブライトコントラストに相当する。
また、回折光の回折角は、標本Sが持っている空間周波数によって異なる。例えば、標本Sを格子状の位相物体とした場合、格子の間隔が広いということは、標本Sが持っている空間周波数が低いということになる。一方、格子の間隔が狭いということは、標本Sが持っている空間周波数が高いということになる。ここで、格子の間隔が広いほど回折角は小さく、格子の間隔が狭いほど回折角は大きくなる。よって、標本Sが低い空間周波数を持つ場合回折角は小さく、標本Sが高い空間周波数を持つ場合回折角は大きくなる。
細胞には、様々な空間周波数を持つ構造が含まれている。そのため、標本Sが細胞の場合、波面収差量が−λ/4となる位置を、どの空間周波数における1次回折光の位置と一致させるかで、標本の像の見え方が変わってくる。
高い空間周波数における1次回折光の位置で波面収差量が−λ/4となるように、第2の波長帯域を設定すると、電子画像では、空間周波数の高い部分が明瞭になる。一方、低い空間周波数における1次回折光の位置で波面収差量が−λ/4となるように、第2の波長帯域を設定すると、電子画像では、空間周波数の低い部分が明瞭になる。
例えば、図5(b)に示すように、瞳の中心からの距離が0.64の位置を位置PW’とすると、位置PW’における波面収差量は−λ/4になる。よって、1次回折光が位置PW’を通過するような空間周波数を標本Sが持っていれば、その空間周波数に相当する部分を明瞭に観察できる。
また、第2の波長帯域の合焦位置が標本Sの位置(第1の波長帯域の合焦位置)よりも上方向にずれるようにしても良い。例えば、第1の波長帯域の中心波長λ1を650nm、第2の波長帯域の中心波長λ2を550nmにしても良い。
なお、本実施形態の観察方法では、第1の波長帯域と第2の波長帯域とでは、中心波長の差はそれほど大きくない。この場合、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時とで光の波長帯域を異ならせても、結像光学系31に対する1次回折光の入射位置はほとんど変化しない。そのため、瞳面での1次回折光の位置も、ほとんど変化しないものとみなせる。よって、波長帯域を変えるだけで、1次回折光に追加される波面収差量を変化させられる。
上述のように、取得ステップS10では、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時とで、光の波長帯域が異なっている。そのため、2A1A2cosψ≠0になる。この場合、像面における光の強度Iは以下のようになる。
I=A1 2+A2 2+2A1A2cosψ
ここで、A1 2+A2 2は標本の像における直流成分(バイアス成分)、すなわち、電子画像の信号うちの直流成分(バイアス成分)を表している。このうち、0次回折光の振幅A1 2は、非常に大きな値を持つ。そこで、減算ステップS20で、A1 2の値を小さくする。このようにすることで、A1 2+A2 2の値に対して2A1A2cosψの値を相対的に大きくできる。その結果、標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
以上のように、第1実施形態の標本観察方法によれば、明視野観察の状態でありながら、無色透明な標本を明瞭に観察できる。
第2実施形態の標本観察方法は、減算ステップよりも後に増幅ステップを有し、増幅ステップでは、減算ステップ後の電子画像の信号を増幅するものである。
第2実施形態の標本観察方法について、図8(a)を用いて説明する。図8(a)は、第2実施形態の標本観察方法のフローチャートである。
第2実施形態の標本観察方法は、図8(a)に示すように、取得ステップS10と減算ステップS20に加え、更に、増幅ステップS30−2を有する。これにより、第2実施形態の標本観察方法では、より明瞭な電子画像が得られる。
上述のように、A1 2+A2 2は標本の像の直流成分、すなわち、電子画像の信号うちの直流成分を表している。減算ステップS20では、A1 2の値を小さくすることで、2A1A2cosψの値をA1 2+A2 2の値に対して相対的に大きくしている。
これに対して、第2実施形態の標本観察方法では、取得ステップS10と減算ステップS20の終了後に、増幅ステップS30−2が実行される。増幅ステップS30−2では、2A1A2cosψの値を大きくしている(増幅している)。このようにすることで、A1 2+A2 2の値に対して2A1A2cosψの値を相対的により大きくできる。その結果、標本S(標本Sの像)をより明瞭に観察できる。
なお、増幅ステップS30−2を、第1実施形態の標本観察方法に用いても良い。この場合、増幅ステップS30−2は、比較ステップS30−1よりも前に実行される。
以上のように、第2実施形態の標本観察方法によれば、明視野観察の状態でありながら、より明瞭に無色透明な標本を観察できる。
第3実施形態の標本観察方法は、電子画像の信号をフーリエ変換する変換ステップと、逆フーリエ変換を行う逆変換ステップと、を有し、変換ステップは、減算ステップよりも前に行われ、逆変換ステップは、少なくとも減算ステップよりも後に行われるものである。
第3実施形態の標本観察方法について、図8(b)と図9を用いて説明する。図8(b)は、第3実施形態の標本観察方法のフローチャートである。図9は、各空間周波数における大きさを示す図であって、(a)は減算ステップ実行前の状態、(b)は減算ステップ実行後の状態を示す図である。
第3実施形態の標本観察方法は、図8(b)に示すように、取得ステップS10と減算ステップS20に加え、更に、変換ステップS15−1と逆変換ステップS30−3とを有する。これにより、第3実施形態の標本観察方法では、より明瞭な電子画像が簡単に得られる。
上述のように、減算ステップS20では、A1 2の値を小さくすることで、A1 2+A2 2の値に対して2A1A2cosψの値を相対的に大きくしている。ここで、周波数空間で減算ステップS20が実行されると、減算を効率的に行える。
減算ステップS20における減算について、図9を用いて説明する。上述のように、細胞のような標本には、様々な空間周波数を持つ構造が含まれている。そこで、標本Sの像の明るさを空間周波数ごとに分離できれば、空間周波数ごとに減算が行える。
そこで、第3実施形態の標本観察方法では、取得ステップS10の終了後に、変換ステップS15−1が実行される。変換ステップS15−1では、電子画像の信号をフーリエ変換する。その結果、図9(a)に示すように、空間周波数ごとに、その大きさ(縦軸、明るさに相当)が分離される。図9(a)では、横軸の数値は空間周波数を示しており、空間周波数が0では、その大きさは100で、空間周波数が1では、その大きさは30になっている。
ここで、空間周波数の値(横軸の数値)は、回折光の次数と対応している。そのため、空間周波数0では、その大きさ(縦軸の数値)は0次回折光の明るさに対応する。同様に、空間周波数1では、その大きさは1次回折光の明るさに対応する。そこで、変換ステップS15−1の終了後に、減算ステップS20が実行される。この減算ステップS20では、空間周波数0での大きさを小さくしている。例えば、図9(b)に示すように、空間周波数0での大きさを、100から50に半減させている。これは、A1 2の値を小さくすることに相当する。このようにすることで、0次光の明るさを小さくできる。
続いて、逆変換ステップS30−3が実行される。逆変換ステップS30−3では、逆フーリエ変換を行う。これにより、電子画像の信号を得ることができる。なお、減算ステップS20によって、0次光の明るさ、すなわち、A1 2の値が小さくなっている。そのため、A1 2+A2 2の値に対して2A1A2cosψの値を相対的により大きくできる。その結果、標本S(標本Sの像)をより明瞭に観察できる。
なお、変換ステップS15−1と逆変換ステップS30−3を、第2実施形態の標本観察方法に用いても良い。この場合、変換ステップS15−1は、減算ステップS20よりも前に実行される。また、逆変換ステップS30−3は、減算ステップS20よりも後に実行される。
以上のように、第3実施形態の標本観察方法によれば、明視野観察の状態でありながら、より明瞭に無色透明な標本を観察できる。
第4実施形態の標本観察方法は、事前取得ステップと、規格化ステップと、を有し、事前取得ステップでは、標本が無い状態で電子画像を取得し、規格化ステップでは、電子画像で標本の電子画像を規格化し、減算ステップの前に、規格化ステップを行うものである。
第4実施形態の標本観察方法について、図10を用いて説明する。図10は第4実施形態の標本観察方法のフローチャートである。
第4実施形態の標本観察方法は、図10に示すように、取得ステップS10と減算ステップS20に加え、更に、事前取得ステップS00と規格化ステップS15−2とを有する。これにより、第4実施形態の標本観察方法では、より明瞭な電子画像が得られる。
なお、図10では、減算ステップS20の後に、増幅ステップS30−2が備わっているが、この増幅ステップS30−2は必須ではない。
標本Sの像の明るさは、照明光学系による影響や結像光学系による影響を受けることがある。例えば、照明光学系や結像光学系を光が通過することで、通過後の光の明るさにむらが生じる。この場合、照明光学系や結像光学系による明るさのむらのために、標本Sの像にも明るさにむらが生じる。この明るさのむらは電子画像の画質を低下させるので、除去することが好ましい。
そこで、第4実施形態の標本観察方法では、取得ステップS10の実行に先立って、事前取得ステップS00が実行される。事前取得ステップS00では、標本Sが無い状態で電子画像Aの取得が行われる。このとき、電子画像Aは、明るさのむらのみの画像になる。
続いて、取得ステップS10が実行され、標本Sの電子画像Bの取得が行われる。この電子画像Bは、標本Sの像に、照明光学系や結像光学系による明るさのむらが加わった画像になる。そこで、規格化ステップS15−2が実行される。規格化ステップS15−2では、電子画像Aで電子画像Bを規格化する。すなわち、以下の演算、
電子画像B/電子画像A
を規格化ステップS15−2において行う。これにより、電子画像Bにおける明るさのむらが、電子画像Aにおける明るさのむらでキャンセルされる。そのため、規格化後の電子画像は、照明光学系や結像光学系による明るさのむらが低減された画像になる。
規格化ステップS15−2の終了後、減算ステップS20が実行される。減算ステップS20では、規格化後の電子画像においてA1 2の値を小さくし、これにより、A1 2+A2 2の値に対して2A1A2cosψの値を相対的に大きくする。その結果、標本S(標本Sの像)をより明瞭に観察できる。
なお、事前取得ステップS00と規格化ステップS15−2を、第2実施形態の標本観察方法や第3実施形態の標本観察方法に用いても良い。この場合、事前取得ステップS00は、取得ステップS10よりも前に実行される。また、規格化ステップS15−2は、減算ステップS20よりも前に実行される。
以上のように、第4実施形態の標本観察方法によれば、明視野観察の状態でありながら、より明瞭に無色透明な標本を観察できる。
第5実施形態の標本観察方法は、第1の波長帯域に対して第2の波長帯域を複数回変化させ、変化させた第2の波長帯域で、取得ステップと減算ステップが実行され、これにより、減算ステップを実行した後の電子画像を複数生成し、生成した複数の電子画像を加算するものである。
第5実施形態の標本観察方法によれば、電子画像の生成の際に、低い空間周波数から高い空間周波数までの各々の空間周波数でコントラストが高くなっている画像が使われる。よって、生成された電子画像では、どの空間周波数においてもコントラストが高くなっている。その結果、標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
以上のように、第5実施形態の標本観察方法によれば、明視野観察の状態でありながら、明瞭に無色透明な標本を観察できる。
第6実施形態の標本観察方法は、加算の前に、複数の電子画像の各々について、電子画像のうちでコントラストが最も高い部分を抽出し、抽出した部分を使って加算を行うものである。
第6実施形態の標本観察方法によれば、加算によって電子画像を生成する時に、各空間周波数でコントラストが最も高くなっている部分のみが使われている。よって、生成された電子画像では、どの空間周波数においてもコントラストが非常に高くなっている。その結果、標本S(標本Sの像)をより明瞭に観察できる。
以上のように、第6実施形態の標本観察方法によれば、明視野観察の状態でありながら、より明瞭に無色透明な標本を観察できる。
第7実施形態の標本観察方法では、第2の波長帯域の変化は、所定の状態における波面収差量の符号が同じ状態で行われるものである。
上述のように、1次回折光における波面収差量が−λ/4になると、電子画像はダークコントラストの画像になる。すなわち、電子画像では、背景に比べて標本Sが暗くなる。一方、1次回折光における波面収差量が+λ/4になると、電子画像はブライトコントラストの画像になる。すなわち、電子画像では、背景に比べて標本Sが明るくなる。
そこで、加算によって電子画像を生成する時は、波面収差量の符号が同じ状態の画像を用いるのが良い。このようにすることで、生成した電子画像を、ダークコントラストのみに基づく画像、あるいは、ブライトコントラストのみに基づく画像にできる。その結果、標本S(標本Sの像)をより明瞭に観察できる。
以上のように、第7実施形態の標本観察方法によれば、明視野観察の状態でありながら、より明瞭に無色透明な標本を観察できる。
本実施形態の標本観察装置について説明する。本実施形態の標本観察装置は、光源と、照明光学系と、結像光学系と、撮像装置と、画像処理装置と、を有し、照明光学系は、光源からの照明光を標本に照射するように配置され、結像光学系は、標本からの光が入射するように配置されると共に、標本の光学像を形成し、撮像装置は光学像の位置に配置され、画像処理装置は、上述の実施形態の標本観察方法を行うことを特徴とする。
第1実施形態の標本観察装置の構成を図11に示す。標本観察装置1は、正立型顕微鏡を用いた観察システムである。標本観察装置1は、本体部10と、照明部20と、観察部30と、画像処理装置40と、を備える。ここで、照明部20と観察部30とは、本体部10に取り付けられている。また、本体部10と画像処理装置40とは、有線または無線で接続されている。
なお、標本観察装置1は、表示装置50を備えていても良い。表示装置50は、有線または無線で画像処理装置40に接続されている。
本体部10はステージ11を有する。ステージ11は保持部材である。このステージ11には、標本Sが載置される。標本Sの移動はステージに取り付けられた操作ノブ(不図示)や焦準ノブ(不図示)で行われる。操作ノブの操作により、光軸と垂直な面内で、標本Sが移動する。焦準ノブの操作により、光軸に沿って標本Sが移動する。
照明部20は、光源21と照明光学系22とを有する。照明光学系22は、コンデンサレンズ23と、開口絞り24と、光学フィルタFLとを有する。なお、図11に示すように、照明光学系22は、レンズ25と、ミラー26と、レンズ27とを備えていても良い。図11では、コンデンサレンズ23と開口絞り24はステージ11に保持されている。照明光学系22は、光源21からステージ11までの間の光路中に配置されている。
観察部30は、結像光学系31と撮像装置32とを有する。なお、観察部30は、レボルバ33と観察鏡筒34とを備えていても良い。結像光学系31は、顕微鏡対物レンズ35と撮像レンズ36とを有する。なお、図11に示すように、結像光学系31は、結像レンズ37とプリズム38とを備えていても良い。結像光学系31は、ステージ11から撮像装置32までの間の光路中に配置されている。撮像装置32は撮像素子39を有する。
標本観察装置1では、照明部20は、ステージ11を挟んで観察部30と対向する側に配置されている。よって、標本観察装置1では、標本Sは透過照明で照明される。
光源21から照明光が出射する。照明光は照明光学系22を通過して、ステージ11に到達する。この照明光によって、標本Sが照明される。標本Sからの光は結像光学系31によって集光され、これにより、集光位置に標本Sの像(光学像)が形成される。結像光学系31の光路中にプリズム38がない場合、撮像装置32の撮像素子39によって標本Sの像が撮像される。
撮像によって、標本Sの像は電子画像(デジタルデータ)に変換される。電子画像は画像処理装置40に送られる。画像処理装置40では各種の処理が行われる。ここで、標本観察装置1が表示装置50を備えている場合、電子画像は表示装置50に表示される。観察者は表示装置50に表示された電子画像を見ることで、標本S(標本Sの像)を観察できる。
撮像装置32は、自動利得制御を行う回路を備えていても良い。このようにすると、撮像した電子画像の明るさ(コントラスト)を一定にできる。なお、自動利得制御を行う回路は、画像処理装置40が備えていても良い。
なお、結像光学系31の光路中に、プリズム38を挿入することもできる。このようにすることで、標本Sからの光は、観察鏡筒34の接眼レンズに導かれる。観察者は、接眼レンズを介して、標本Sの光学像を観察できる。
標本観察装置1を用いて、実施形態の標本観察方法を実施する手順について説明する。ここでは、第1実施形態の標本観察方法を例に説明する。なお、光源21として、白色光源を用いる。
まず、観察者は、照明光学系22と結像光学系31を、明視野観察の状態となるようにする。続いて、観察者は、ステージ11に標本Sを載置する。そして、観察者は、合焦位置からずれていると思われる位置まで、目測で標本を移動させる。これにより、明視野観察の状態で、なお且つ標本Sの位置と合焦位置とが異なった状態になる。続いて、画像処理装置40を作動させる。なお、これらの作業は、順不同で行って良い。
画像処理装置40が作動することで、標本Sの像が撮像可能になるので、取得ステップS10が実行される。取得ステップS10が実行されることで、電子画像の取得が行われる。取得ステップS10で取得された電子画像は、画像処理装置40内の一時記憶部(不図示)に保存される。
続いて、減算ステップS20が実行される。減算ステップS20では、A1 2の値を小さくすることで、2A1A2cosψの値がA1 2+A2 2の値に対して相対的に大きくなる。減算ステップS20の実行結果は、例えば、表示装置50に表示される。
上述のように、標本Sの位置の設定は目測で行われている。この場合、標本Sの位置と合焦位置とが大きく異なっている可能性が高いので、標本Sの像は大きくぼけている。そのため、標本Sの像が撮像されても、観察者は表示装置50で電子画像を観察できない。
そこで、観察者は焦準ノブを操作して、標本Sを合焦位置に向けて移動させる。標本Sの位置が顕微鏡対物レンズ35から大きく離れている場合、観察者は、標本Sが顕微鏡対物レンズ35に近づく方向にステージ11を移動させれば良い。一方、標本Sの位置が顕微鏡対物レンズ35に非常に近い場合、観察者は、標本Sが顕微鏡対物レンズ35から離れる方向にステージ11を移動させれば良い。
標本Sを移動させている間、撮像は常に行われている。よって、取得ステップS10と減算ステップS20も、常に実行されている。そこで、観察者は、表示装置50で電子画像を観察しながら標本Sを光軸に沿って移動させ、標本Sの位置を合焦位置に一致させる。このとき、照明光学系22の光路中には光学フィルタは配置されていないので、標本Sは白色光(第1の波長帯域の光)で照明されている。このときの合焦位置は、緑色の光(波長が500nm〜560nmの光)で合焦した時の位置とみなせる。
続いて、照明光学系22の光路中に光学フィルタFLを挿入する。ここで、光学フィルタFLの波長帯域(透過率特性)を、中心波長が450nm、波長幅が±20nmとする。この場合、光学フィルタFLの波長帯域は、白色光の波長帯域のうちの一部と一致している。
光学フィルタFLを光路中に挿入すると、第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成された状態になる。そこで、第2の波長帯域の光で、電子画像の取得が行われる。これにより、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時(瞬間)とで、光の波長帯域が異なる状態になる。その結果、標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
なお、本体部10は、モータ12を備えていても良い。図11では、モータ12はステージ11に接続されている。モータ12によって、ステージ11を光軸に沿って移動させることで、標本Sの移動ができる。
以上のように、第1実施形態の標本観察装置によれば、明視野観察の状態でありながら、無色透明な標本を観察できる。
第2実施形態の標本観察装置の構成を図12に示す。標本観察装置1’は、倒立型顕微鏡を用いた観察システムである。標本観察装置1と同じ部材については同じ番号を付け、説明は省略する。
標本観察装置1’では、標本観察装置1と同じように、照明部20は、ステージ11が挟んで観察部30と対向する側に配置されている。よって、標本観察装置1’においても、標本Sを透過照明で照明できる。ただし、標本観察装置1’は、照明部20とは別に、照明部20’も備えている。照明部20’は、観察部30と同じ側に配置されている。よって、標本観察装置1’では、照明部20’を用いて標本Sを落射照明で照明できる。
照明部20’は、光源21’と照明光学系22’とを有する。照明光学系22’は、コンデンサレンズと開口絞りとを有する。ここで、照明光学系22’では、顕微鏡対物レンズ35を介して照明が行われる。よって、顕微鏡対物レンズ35がコンデンサレンズに相当する。なお、開口絞りは図示を省略している。また、図12に示すように、照明光学系22’は、レンズ25’と、ハーフミラーHMと、レンズ27’とを備えていても良い。照明光学系22’は、光源21’からステージ11までの間の光路中に配置されている。また、ハーフミラーHMと顕微鏡対物レンズ33は、照明光学系22を構成すると共に、結像光学系31を構成している。
結像光学系31は、光学フィルタFL、FL’を有する。光学フィルタFLは結像光学系31の光路中に配置されている。光学フィルタFL’は結像光学系31の光路外に配置されている。光学フィルタFLと光学フィルタFL’は、交換可能になっている。
結像光学系31の光路中にプリズム38がある場合、撮像装置32の撮像素子39によって標本Sの像が撮像される。また、結像光学系31の光路外にプリズム38を移動させることで、標本Sの光を観察鏡筒34の接眼レンズに導くことができる。この場合、標本Sの光は、ミラーMによって観察鏡筒34に向けて反射される。
また、標本観察装置1’では、モータ12がレボルバ33に接続されている。よって、標本観察装置1’では、モータ12によって、レボルバ33が光軸に沿って移動する。レボルバ33が光軸に沿って移動することで、顕微鏡対物レンズ35(結像光学系31)が光軸に沿って移動する。これにより、標本Sの位置と合焦位置とを異なる状態にできる。
標本観察装置1’では、標本Sは透過照明か落射照明で照明できる。落射照明について説明する。落射照明では、光源21’から照明光が出射する。照明光は照明光学系22’を通過して、ステージ11に到達する。この照明光によって標本Sが照明される。標本Sからの光は結像光学系31によって集光され、これにより、集光位置に標本Sの像(光学像)が形成される。結像光学系31の光路中にプリズム38がある場合、撮像装置32の撮像素子39によって標本Sの像が撮像される。
撮像によって、標本Sの像は電子画像(デジタルデータ)に変換される。電子画像は画像処理装置40に送られる。画像処理装置40では各種の処理が行われる。ここで、標本観察装置1’が表示装置50を備えている場合、電子画像は表示装置50に表示される。観察者は表示装置50に表示された電子画像を見ることで、標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
標本観察装置1’を用いて、実施形態の標本観察方法を実施する手順について説明する。ここでは、第1実施形態の標本観察方法を例に説明する。なお、光源21’として、白色光源を用いる。
まず、観察者は、照明光学系22’と結像光学系31を、明視野観察の状態となるようにする。そして、観察者は、ステージ11に標本Sを載置する。次に、光学フィルタFLを結像光学系31の光路に挿入する。ここで、光学フィルタFLの波長帯域(透過率特性)を、中心波長が550nm、波長幅が±20nmとする。続いて、画像処理装置40を作動させる。なお、これらの作業は、順不同で行って良い。
観察者は、観察開始の情報を画像処理装置40に入力する。ここで、画像処理装置40に、合焦位置の情報が予め記憶されているとする。画像処理装置40はレボルバ33(顕微鏡対物レンズ35)の現在の位置と合焦位置との情報に基づいて、移動量を算出する。算出した結果に基づいて、画像処理装置40はモータ12に駆動信号を送信する。送信された信号に基づいて、モータ12はレボルバ33を移動させ、標本Sの位置が合焦位置と一致した状態にする。このときの合焦位置は、波長帯域が550nm±20nmの光(第1の波長帯域の光)で合焦した時の位置とみなせる。
続いて、結像光学系31の光路中から光学フィルタFLを取り出し、代わりに光学フィルタFL’を挿入する。ここで、光学フィルタFL’の波長帯域(透過率特性)を、中心波長が650nm、波長幅が±20nmとする。この場合、光学フィルタFL’の波長帯域は、光学フィルタFLの波長帯域と異なっている。
光学フィルタFL’を光路中に挿入すると、第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成された状態になる。そこで、第2の波長帯域の光で、電子画像の取得が行われる。これにより、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時(瞬間)とで、光の波長帯域が異なる状態になる。その結果、標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
光学フィルタFLとして、波長可変干渉フィルタを用いても良い。波長可変干渉フィルタは、波長帯域(透過率特性)を変えられる光学フィルタである。波長可変干渉フィルタを用いれば、光学フィルタFLと光学フィルタFL’との交換が不要になる。
なお、次のようにしても良い。白色光(第1の波長帯域の光)で標本を照明して、標本Sの位置と合焦位置とが一致した状態にする。そして、結像光学系31の光路中に光学フィルタFLを挿入する。光学フィルタFLを光路中に挿入すると、第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成された状態になる。この場合、光学フィルタFLの波長帯域は、光学フィルタFL’の波長帯域と異なっている。よって、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時(瞬間)とで、光の波長帯域が異なる状態になる。その結果、標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
また、次のようにしても良い。照明光学系22の光路中に光学フィルタFLを挿入して、標本Sの位置と合焦位置とが一致した状態にする。そして、照明光学系22の光路中から光学フィルタFLを取り出し、代わりに結像光学系31の光路中に光学フィルタFL’を挿入する。光学フィルタFL’を光路中に挿入すると、第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成された状態になる。この場合、光学フィルタFLの波長帯域は、光学フィルタFL’の波長帯域と異なっている。よって、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時(瞬間)とで、光の波長帯域が異なる状態になる。その結果、標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
以上のように、第2実施形態の標本観察装置によれば、明視野観察の状態でありながら、より明瞭に無色透明な標本を観察できる。
第3実施形態の標本観察装置の構成を図13に示す。図13(a)は、観察装置の概略構成を示す図、図13(b)は、光学系の構成を示す図である。
標本観察装置300は、電子内視鏡を用いた観察システムである。標本観察装置300は、電子内視鏡100と画像処理装置200とから構成されている。電子内視鏡100は、スコープ部100aと接続コード部100bとを備えている。また、画像処理装置200には、表示ユニット204が接続されている。
スコープ部100aは、操作部140と挿入部141に大別される。挿入部141は、細長で患者の体腔内へ挿入可能になっている。また、挿入部141は、可撓性を有する部材で構成されている。観察者は、操作部140に設けられているアングルノブ等により、諸操作を行うことができる。
また、操作部140からは、接続コード部100bが延設されている。接続コード部100bは、ユニバーサルコード150を備えている。ユニバーサルコード150は、コネクタ250を介して画像処理装置200に接続されている。
ユニバーサルコード150は、各種の信号等の送受信に用いられる。各種の信号としては、電源電圧信号及びCCD駆動信号等がある。これらの信号は、電源装置やビデオプロセッサからスコープ部100aに送信される。また、各種の信号として映像信号がある。この信号は、スコープ部100aからビデオプロセッサに送信される。なお、画像処理装置200内のビデオプロセッサには、図示しないVTRデッキ、ビデオプリンタ等の周辺機器が接続可能である。ビデオプロセッサは、スコープ部100aからの映像信号に対して信号処理を施す。映像信号に基づいて、表示ユニット204の表示画面上に内視鏡画像が表示される。
挿入部141の先端部142には、光学系が配置されている。ここで、電子内視鏡100は拡大内視鏡である。そのため、光学系は、標本Sの拡大像を形成するようになっている。内視鏡における観察対象としては、体内の組織がある。以下の説明では、体内の組織も標本Sに含まれるものとする。
照明部は、光源と照明光学系とを有する。光源からの光は光ファイバ401から出射する。照明光学系は、レンズ402と、ミラー403と、レンズ404と、ハーフプリズム405と、対物レンズ406とを備える。観察部は、結像光学系と撮像装置とを有する。結像光学系は、対物レンズ406と、ハーフプリズム405と、結像レンズ407と、光学フィルタ409とを有する。撮像装置は撮像素子408を有する。この光学系では、標本Sは落射照明で照明される。
標本観察装置300を用いて、実施形態の標本観察方法を実施する手順について説明する。ここでは、第3実施形態の標本観察方法を例に説明する。なお、光源として、白色光源を用いる。
まず、観察者は、照明光学系と結像光学系を、明視野観察の状態となるようにする。続いて、観察者は、合焦位置と思われる位置まで、目測で挿入部141を移動させる。そして、画像処理装置200を作動させる。なお、これらの作業は、順不同で行って良い。
画像処理装置200が作動することで、標本Sの像が撮像可能になるので、取得ステップS10が実行される。取得ステップS10が実行されることで、電子画像の取得が行われる。取得ステップS10で取得された電子画像は、画像処理装置200内の一時記憶部(不図示)に保存される。
続いて、減算ステップS20が実行される。減算ステップS20では、A1 2の値を小さくすることで、2A1A2cosψの値がA1 2+A2 2の値に対して相対的に大きくなる。
減算ステップS20の終了後、増幅ステップS30−2が実行される。増幅ステップS30−2では、2A1A2cosψの値を大きくする(増幅する)。これにより、A1 2+A2 2の値に対して2A1A2cosψの値が相対的により大きくなる。増幅ステップS30−2の実行結果は、例えば、表示ユニット204に表示される。
挿入部141を移動させている間、撮像は常に行われている。よって、取得ステップS10、減算ステップS20及び増幅ステップS30−2も、常に実行されている。そこで、観察者は、表示ユニット204で電子画像を観察しながら挿入部141を移動させ、標本Sの位置を合焦位置に一致させる。このとき、照明光学系22の光路中には光学フィルタは配置されていないので、標本Sは白色光(第1の波長帯域の光)で照明されている。このときの合焦位置は、緑色の光(波長が500nm〜560nmの光)で合焦した時の位置とみなせる。
続いて、照明光学系22の光路中に光学フィルタFLを挿入する。ここで、光学フィルタFLの波長帯域(透過率特性)を、中心波長が650nm、波長幅が±20nmとする。この場合、光学フィルタFLの波長帯域は、白色光の波長帯域のうちの一部と一致している。
光学フィルタFLを光路中に挿入すると、第2の波長帯域の光で標本の光学像が形成された状態になる。そこで、第2の波長帯域の光で、電子画像の取得が行われる。これにより、電子画像を取得する前と電子画像を取得する時(瞬間)とで、光の波長帯域が異なる状態になる。その結果、標本S(標本Sの像)を明瞭に観察できる。
なお、対物レンズ406、結像レンズ407及び撮像素子408の少なくとも1つを、光軸に沿って移動させても良い。これらの移動には、例えば、マイクロアクチュエータ(不図示)やボイスコイルモータ(不図示)を用いれば良い。このようにすれば、合焦状態の調整を細かにできる。よって、挿入部141の移動は、ある程度のコントラストを持つ電子画像が取得できたところまでで済む。
以上のように、第3実施形態の標本観察装置によれば、明視野観察の状態でありながら、より明瞭に無色透明な標本を観察できる。
また、上述の各実施形態の標本観察装置では、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
10μm<d/NAob 2<1000μm (1)
ここで、
dは、第1の波長帯域に対する第2の波長帯域における軸上色収差の量、
NAobは、結像光学系の標本側の開口数、
である。
条件式(1)を満足することで、明視野観察の状態でありながら、より明瞭に無色透明な標本を観察できる。
条件式(1)の下限値を下回ると、第1の波長帯域における波面収差量と第2の波長帯域における波面収差量との差が小さくなりすぎる。この場合、回折光に加わる波面収差量が小さくなる。特に、1次回折光に加わる波面収差量がλ/4よりも小さくなる。そのため、コントラストの良い電子画像を得るのが難しくなる。
条件式(1)の上限値を上回ると、第1の波長帯域における波面収差量と第2の波長帯域における波面収差量との差が大きくなりすぎる。この場合、回折光に加わる波面収差量が大きくなる。特に、1次回折光に加わる波面収差量がλ/4よりも大きくなる。また、収差量が大きくなりすぎるので、光学像が大きくぼやけてしまう。その結果、解像度の高い電子画像を得るのが難しくなる。
また、上述の各実施形態の標本観察装置では、結像光学系は対物レンズを有し、対物レンズにおける軸上色収差は、波長変化に対して単調に変化することが好ましい。
このようにすることで、コントラストの良い電子画像が得られる。対物レンズにおける軸上色収差が波長変化に対して単調に変化すると、波長による波面収差のカーブの変化が分かりやすい。そのため、第2の波長帯域の選択において、コントラストと解像度が高くなる波長帯域を容易に選択できる。
また、上述の各実施形態の標本観察装置では、撮像装置は撮像素子を有し、撮像素子では、波長帯域が異なる微小な光学フィルタが画素ごとに配置されていることが好ましい。
このようにすることで、コントラストの良い電子画像が容易に得られる。撮像素子には、光学フィルタが配置されている。この光学フィルタは、微小な光学フィルタを複数備えている。微小な光学フィルタには、例えば、赤色フィルタ、緑色フィルタ、青フィルタがある。そして、色フィルタの各々は、複数個配置されている。
そこで、色フィルタごとに画像信号を取り出せば、容易に、第2の波長帯域の光で形成された光学像を撮像できる。すなわち、照明光学系の光路中や結像光学系の光路中に、光学フィルタを配置させる必要が無い。なお、撮像素子はモノクロの撮像素子であっても良い。
なお、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形例をとることができる。