JP6217978B2 - 負極および蓄電装置 - Google Patents

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Description

本発明は、各種蓄電装置に用いられる負極、および当該負極を含む蓄電装置に関する。
リチウムイオン二次電池、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電装置に用いられる負極活物質として、ケイ素元素を含有するものが知られている。以下、ケイ素元素を含有する負極活物質をケイ素系負極活物質と呼ぶ。
例えば、リチウムイオン二次電池用の負極活物質としてケイ素系負極活物質を用いる場合には、炭素を負極活物質として用いる場合に比べて、電池を高容量化できる。
ケイ素系負極活物質としてケイ素単体(Si)を用いる技術が知られている。Siは、充放電時において電荷担体(リチウムイオン二次電池であればLi)を吸蔵および放出する際に、大きな体積変化を伴う。このため、負極活物質としてのSiを含む負極活物質層は、充放電の際に微粉化して集電体から脱落または剥離する恐れがあった。集電体から負極活物質層が脱落すると、蓄電装置の充放電サイクル寿命が短くなるため、Siを負極活物質に用いた蓄電装置は比較的サイクル特性に劣る問題がある。
SiにかえてSiOを負極活物質として用いることで、蓄電装置のサイクル特性を向上させ得る。充放電時におけるSiOの体積変化は、Siの体積変化に比べて小さいためである。しかしその一方で、SiOの理論容量はSiの理論容量に比べて小さい問題がある。このため近年では、負極活物質として、ケイ素酸化物(SiO:xは0.5≦x≦1.5程度)を使用することが検討されている。SiOは、熱処理されるとSiとSiOとに分解することが知られている。これは不均化反応といい、固体の内部反応によりSiOはSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細であるが、体積変化の少ないSiO相により覆われているため、負極活物質層中に比較的安定して保持される。また、Si相を覆うSiO相は電解液の分解を抑制する働きも持つ。したがって、SiとSiOとに分解したSiOを負極活物質に用いた蓄電装置は、サイクル特性に優れる。
ところで、上記したSiOのSi相を構成するシリコン粒子が微細であるほど、それを負極活物質として用いた蓄電装置のサイクル特性は向上する。例えばシリコン粒子の平均粒子径が1μm未満のナノサイズである場合には、シリコン粒子が充分に微細であるため、SiO相によって体積変化を吸収し易い。したがって充放電時における負極活物質層の微粉化は生じ難い。このため、このように微細なシリコン粒子で負極活物質を構成することで、蓄電装置のサイクル特性をさらに向上させ得ると考えられる。
そこで特許第3865033号(特許文献1)には、金属シリコンとSiOを加熱して昇華させて酸化珪素ガスとし、それを冷却してSiOを製造する方法が記載されている。この方法によれば、Si相を構成するシリコン粒子を平均粒径1〜5nm程度のナノサイズにできると考えられる。
しかし、このような負極活物質においてもまだ、蓄電装置に充分なサイクル特性を付与できるとは言い難かった。このため、ケイ素系負極活物質を用いつつ蓄電装置のサイクル特性をさらに向上させる技術が望まれていた。
特許第3865033号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ケイ素系負極活物質を含み、かつ、蓄電装置のサイクル特性を向上させ得る負極、および当該負極を含む蓄電装置を提供することを目的とする。
本発明の発明者等は、鋭意研究の結果、ナノサイズのシリコン粒子からなるナノシリコン凝集粒子をケイ素系負極活物質として用いるとともに当該ナノシリコン凝集粒子に炭素層を設け、かつ、負極用のバインダとして水系バインダを用いることで、蓄電装置のサイクル特性を向上させることができる負極が得られることを見出した。すなわち、上記課題を解決する本発明の負極は、
集電体と、前記集電体上に設けられている負極活物質層とを持ち、
ナノサイズのシリコン粒子が層状に配列した構造を持つ板状シリコン体がその厚さ方向に複数層配列してなるナノシリコン凝集粒子と、前記ナノシリコン凝集粒子の少なくとも一部を覆って複合化された炭素層と、からなる負極活物質複合体と、
水系バインダと、を前記負極活物質層に含み、
前記水系バインダの配合量は、前記負極活物質層全体を100質量%としたときに10質量%を超え40質量%以下である。
さらに、上記課題を解決する本発明の蓄電装置は、負極として、上記した本発明の負極を含むものである。
本発明の負極は、ケイ素系負極活物質としてナノシリコン凝集粒子を用い、当該ナノシリコン凝集粒子に炭素層を設け、さらに、負極用のバインダとして水系バインダを用いたことで、蓄電装置に優れたサイクル特性を付与し得る。
層状ポリシランのラマンスペクトルである。 単結晶シリコンのラマンスペクトルである。 実施例1で用いた層状ポリシランのラマンスペクトルである。 実施例1で用いたナノシリコン凝集粒子のSEM像である。 実施例1で用いたナノシリコン凝集粒子の拡大されたSEM像である。 実施例1で用いたナノシリコン凝集粒子のTEM像である。 板状シリコン体の要部を拡大して示す模式的な断面図である。 第1のSi/C複合体のTEM像である。 図8のPoint1部分のTEM−EDXスペクトルである。 図8のPoint2部分のTEM−EDXスペクトルである。 図8のPoint3部分のTEM−EDXスペクトルである。 図8のPoint4部分のTEM−EDXスペクトルである。 図8のPoint5部分のTEM−EDXスペクトルである。 第1のSi/C複合体およびアセチレンブラックのXRDスペクトルである。 第2のSi/C複合体のSEM像である。 第2のSi/C複合体のSEM像である。図15とは倍率が異なる。
近年、半導体、電気・電子等の各分野への利用が期待されるナノシリコン材料が開発されている。例えばPhysical Review B(1993),vol48,8172−8189(以下、必要に応じて非特許文献1と呼ぶ)には、塩化水素(HCl)と二ケイ化カルシウム(CaSi)とを反応させることで層状ポリシランを合成する方法が記載され、こうして得られる層状ポリシランを発光素子などに利用することが提案されている。また、特開2011−090806号公報には、層状ポリシランをリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いることが提案されている。
ところで、上記した層状ポリシランは、比表面積が大きく、SiO成分が多く含まれているために、蓄電装置の負極活物質材料としては適しているとは言い難い。例えばリチウムイオン二次電池の負極においては、比表面積が大きいと負極表面における電解液の分解反応が生じ易いために、負極で不可逆的に消費される電荷担体量が多くなる。つまり、このような負極は不可逆容量が大きく、高容量化が困難である。
そこで本願発明者らは、鋭意研究の結果、この層状ポリシランを熱処理することで、層状ポリシランに比べて負極活物質に適しているナノシリコン凝集体が得られることを見出した。このナノシリコン凝集体を負極活物質として用いることで、層状ポリシランを負極活物質として用いる場合に比べて、蓄電装置のサイクル特性、初期充放電効率および初期容量を向上させ得る。本発明の負極は、ケイ素系負極活物質として、このナノシリコン凝集粒子を用いたものである。
非特許文献1に記載された層状ポリシランは、組成式(SiH)で示され、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造を基本骨格としている。この層状ポリシランのラマンスペクトルを図1に、単結晶シリコンのラマンスペクトルを図2に示す。一般的に、ラマンシフトは高周波側へシフトすると結合が強くなり、低周波側へシフトすると結合が切れ易くなることが知られている。単結晶シリコン(図2)において520cm−1に観測されるSi−Si結合のピークは、層状ポリシラン(図1)では単結晶シリコンに比べて低周波側の320cm−1付近にシフトしている。すなわち層状ポリシラン構造とすることで、Si−Siの結合が弱くなり、穏和な条件でのナノシリコン化が可能となったと考えられる。つまり、層状ポリシランを熱処理することにより、後述するナノシリコン凝集粒子を得ることが可能である。
しかしながら、得られたナノシリコン凝集粒子を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の電池特性を精査したところ、サイクル試験による容量低下が認められた。つまりこの種の負極活物質においても、サイクル特性の更なる向上を図る余地があった。そこで更なる鋭意研究の結果、ナノシリコン凝集粒子と特定のバインダとを組み合わせることで、充放電サイクルに伴う耐久劣化が少なく、蓄電装置のサイクル特性を向上させ得る負極を得ることができることを見出した。つまり、本発明の負極に用いている水系バインダは、溶媒系バインダに比べて柔軟性が高く、弾性変形し易い。このため、充放電時の負極活物質の膨張および収縮にバインダが追従して変形し、負極活物質たるナノシリコン凝集粒子は負極活物質層に安定して保持されると考えられる。つまり、本発明の負極は蓄電装置の充放電を繰り返しても劣化し難く、本発明の負極は蓄電装置のサイクル特性を向上させ得る。
また、本発明の負極では、ナノシリコン凝集粒子と水系バインダとを併用しただけでなく、ナノシリコン凝集粒子の表面に炭素層を設けている。炭素層が存在することで、ナノシリコン凝集粒子と炭素層との複合体(つまり負極活物質複合体)と水系バインダとのなじみ性が向上し、両者が密着すると考えられる。このため、水系バインダによって負極活物質をより安定して保持でき、その結果、充放電サイクルに伴う負極の耐久性(サイクル特性と呼ぶ)がさらに向上すると考えられる。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。以下、必要に応じて、正極と負極とを総称して電極と呼ぶ。
〔負極〕
本発明の負極は、通常の蓄電装置における負極と同様に、集電体および負極活物質層を含む。
集電体は、蓄電装置の放電または充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体である。集電体は特に限定されず、通常の蓄電装置における負極用の集電体を用いることができる。具体的には、集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、またはその合金が例示される。例えば、ステンレス鋼などを選択することもできる。
集電体は、箔状、シート状、フィルム状、線状、棒状、メッシュ状などの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。さらに、集電体の表面に集電体コート層を形成しても良い。集電体コート層の材料は、導電性に優れるものを選択するのが良い。後述する正極に関しても同様である。
負極活物質層は、集電体上に設けられ、負極活物質およびバインダを含む。また、その他、導電助剤等の添加剤を含み得る。添加剤に関しては、後述する正極に関しても同様である。
本発明の負極における負極活物質はケイ素系負極活物質であり、具体的には、上述した層状ポリシランを加熱して得ることができるナノシリコン凝集粒子である。
〔ナノシリコン凝集粒子〕
ナノシリコン凝集粒子は、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造をなし組成式(SiH)で示される層状ポリシランを熱処理することにより製造することができ、例えば非特許文献1に記載された層状ポリシランを非酸化性雰囲気で熱処理して得られるものである。
このナノシリコン凝集粒子は、扁平状のナノシリコン粒子(粒径がナノメートルオーダー)が層状に配列してなる板状シリコン体が厚み方向に複数枚積層された構造を有している。この構造は、図4、5に示すように、SEM観察により確認される。なお、図4に示す長方形部分を拡大したものが図5に示されている。板状シリコン体は厚みが約10nm〜約100nmであるように観察される。強度や、リチウムイオン等の電荷担体の挿入・離脱の容易性などを考慮すると、板状シリコン体の厚みの平均値は、20nm〜90nmの範囲であることが好ましい。また板状シリコン体の長軸方向の長さ(平均値)は、0.1μm〜50μmであった。板状シリコン体のアスペクト比(長軸方向の長さ/厚み)は、2〜1000であるのが好ましいと考えられる。
ナノシリコン凝集粒子をTEM(Transmission Electron Microscopy)で観察した結果によれば、図6に示すように、板状シリコン体には濃淡のある縞状構造が認められる。なお、図6は、図5に示す正方形部分を拡大したものであり、図7は、板状シリコン体の要部を拡大した様子を模式的に表す断面図である。図6の薄い灰色の部分は、図7に示すように、板状シリコン体は、複数の扁平状ナノシリコン粒子1がその長辺方向に配列した層状構造で構成されている。そして、当該薄い灰色の部分は、当該板状シリコン体がその短辺方向(つまり扁平状ナノシリコン体の長辺に対して垂直な方向)にさらに配列した層状構造であると考えられる。そして、扁平状ナノシリコン粒子1の層間に存在する濃い灰色の部分は、空隙および/またはシリコン酸化物2と考えられる。扁平状ナノシリコン粒子1の長軸方向長さ(a)は5nm〜20nmであり、短軸方向長さ(b)は2nm〜5nmであり、長軸と短軸の比(a/b)は2.5〜10である。また空隙および/またはシリコン酸化物2の厚みの平均値は2nm〜10nmであり、扁平状ナノシリコン粒子1の厚みに対する空隙および/またはシリコン酸化物2の厚みの比は0.5〜2である。
上述したように、ナノシリコン凝集粒子は、非特許文献1に記載された層状ポリシランを熱処理することで製造することができる。具体的には、熱処理は非酸化性雰囲気下で行うのが好ましく、熱処理の温度は100℃を超える温度であるのが好ましい。熱処理に供する層状ポリシランは、二ケイ化カルシウム(CaSi)と酸とを反応させることにより得ることができる。例えば、非特許文献1に記載されたように、塩化水素(HCl)とCaSiと、を反応させることで製造することができる。CaSiは、ダイヤモンド型のSiの(111)面の間にCa原子層が挿入された層状結晶をなす。このCaSiと酸との反応で、CaSiからCaが引き抜かれることによって層状ポリシランが得られる。
しかし上記製法によって得られた層状ポリシランには多くの酸素が含まれ、当該層状ポリシランから得られるナノシリコン凝集粒子にもまた多くの酸素が含まれてしまう。そのようなナノシリコン凝集粒子を負極活物質に用いる場合、初期容量の高い蓄電装置を得難い問題がある。そこでフッ化水素(HF)とHClとの混合物と、CaSiと、を反応させて層状ポリシランを製造するのが好ましい。
HFを用いることで、合成中あるいは精製中に生成するSiO成分がエッチングされ、これにより酸素量が低減される。HFのみを用いた場合にも層状ポリシランを得ることはできるものの、このようにして得られた層状ポリシランは微量の空気によって酸化され易く、逆に酸素量が増大するため好ましくない。
HFとHClとの組成比は、モル比でHF/HCl=1/1〜1/100の範囲が望ましい。HFの量がこの比より多くなると、CaF、CaSiO系化合物などの不純物が生成し、この不純物と層状ポリシランとを分離するのが困難であるため好ましくない。またHFの量がこの比より少なくなると、HFによるエッチング作用が弱く、層状ポリシランに酸素が多く残存する場合がある。
HFとHClとの混合物とCaSiとの配合比は、当量より酸を過剰にすることが望ましい。また反応雰囲気は、真空下または不活性ガス雰囲気下であることが望ましい。なおこの製造方法によれば、非特許文献1の製造方法に比べて反応時間が短くなることも明らかとなった。反応時間が長すぎるとSiとHFがさらに反応してSiFが生じてしまうため、反応時間は0.25〜24時間程度で充分である。反応温度は、室温でも容易に反応する。
製造された層状ポリシランを、非酸化性雰囲気下にて100℃以上の温度で熱処理することで、酸素量が少ないナノシリコンの凝集粒子が得られる。非酸化性雰囲気としては、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気が例示される。不活性ガスは窒素、アルゴン、ヘリウムなど酸素を含まなければ特に規定されない。
また熱処理温度は、100℃〜1000℃の範囲が好ましく、400℃〜600℃の範囲が特に好ましい。100℃未満ではナノシリコンが生成し難い。特に400℃以上で熱処理されて形成されたナノシリコン凝集粒子を負極活物質とするリチウムイオン二次電池は初期効率が向上する。
ナノシリコン凝集粒子におけるナノシリコンのSi結晶子サイズは、蓄電装置の電極活物質として用いるには、0.5nm〜300nmが好ましく、1nm〜100nm、1nm〜50nm、更には1nm〜10nmの範囲が特に好ましい。この結晶子サイズは、X線回折により得られた(111)面の回折ピークの半値幅からシェラーの式より算出される。
非特許文献1に記載の製造方法で製造された層状ポリシランを熱処理することで得られたナノシリコン凝集粒子の酸素量は約33質量%と大きいが、上記の製造方法で製造された層状ポリシランを熱処理することで得られたナノシリコン凝集粒子の酸素量は30質量%以下と小さい。
ナノシリコン凝集粒子の少なくとも一部は、炭素層で覆われている。以下、必要に応じて、ナノシリコン凝集粒子と炭素層との複合体、すなわち負極活物質複合体をSi/C複合体と呼ぶ。このうちナノシリコン凝集粒子は負極活物質に相当する。本発明の負極は、Si/C複合体以外のナノシリコン凝集粒子、つまり炭素層を設けなかったナノシリコン凝集粒子を含んでも良いが、ナノシリコン凝集粒子全体を100質量%としたときに、50質量%以上のナノシリコン凝集粒子がSi/C複合体を構成しているのが好ましい。換言すると、50質量%以上のナノシリコン凝集粒子には、その少なくとも一部に炭素層が設けられているのが好ましい。より好ましくは、80質量%以上のナノシリコン凝集粒子がSi/C複合体を構成しているのが良く、90質量%以上のナノシリコン凝集粒子がSi/C複合体を構成しているのがさらに好ましい。勿論、全てのナノシリコン凝集粒子が、炭素層を持つSi/C複合体であるのが特に好ましい。本発明の負極において、負極活物質層は水系バインダを含む。シリコンの表面は水との親和性が低いために水系バインダとなじみ難い。しかし、表面を炭素層で覆われたSi/C複合体をナノシリコン凝集粒子として用いることで、ナノシリコン凝集粒子と水系バインダとのなじみ性を向上させることができ、ナノシリコン凝集粒子と水系バインダとを密着させ得る。ナノシリコン凝集粒子と水系バインダとが充分に密着すれば、水系バインダのクッション効果を充分に発揮でき、負極活物質層のクラック発生およびナノシリコン凝集粒子の微粉化を抑制でき、ひいては蓄電装置のサイクル特性を向上させ得る。また、Si/C複合体における炭素層は、負極活物質層の導電性を向上させるための導電助剤としても機能し、さらに、ナノシリコン凝集粒子を補強する機能も持つ。以下、この複合体について説明する。なお炭素層を構成する炭素は、非晶質または結晶質の炭素のみであっても良いし、非晶質の炭素と結晶質の炭素とが混在していても良い。
<Si/C複合体>
ナノシリコン凝集粒子を覆って複合化された炭素層の厚さは、平均値で、1〜100nmの範囲であることが好ましく、5〜50nmの範囲であることがさらに望ましい。炭素層の厚さが薄すぎると上述したなじみ性が小さくなる場合があり、炭素層が厚すぎると電池抵抗が上昇する場合がある。炭素層の厚さは、例えばSEM像等、顕微鏡下で測定可能である。
Si/C複合体におけるSi元素とC元素との組成は、Si/C複合体全体を100質量%としたときにC元素が1〜40質量%の範囲であることが好ましく、3〜7質量%の範囲が特に望ましい。C元素が40質量%より多くなると蓄電装置の負極に用いた場合に初期容量が低くなって実用的でない。またC元素が1質量%より少ないと、炭素層を複合化した効果つまり水系バインダとのなじみ性が低くなる。
このSi/C複合体についてTEM(Transmission Electron Microscopy)観察を行った結果を図8に示す。図6と同様に、濃い灰色の粒子(長径の粒径約10nm)がその長辺方向に層状に配列した部分と、薄い灰色の部分とが層状に積層された構造となっていることがわかる。
そこで図8のPoint1〜5の各点についてその組成を確認すべく、TEM−EDX分析を行った。結果を図9〜13にそれぞれ示す。Point1〜3はSiが91.5atm%以上の組成であり、Point1〜3が指す濃い灰色の粒子はナノシリコン粒子であることが確認された。またPoint4、5からはSi以外に多量のCと微量のOが検出され、Point4、5が指す薄い灰色の部分はCが多い炭素層であることがわかった。
炭素層には、遷移金属から選ばれる少なくとも一種の金属原子を含むことも好ましい。この金属原子によって炭素層内における導電性が向上するため、負極における電荷担体の伝導性が改善される。例えばリチウムイオン二次電池であれば、充放電時におけるLiの吸蔵・放出特性が向上し、Liの移動抵抗を低減できるので、初期効率および初期容量が向上する。
遷移金属から選ばれる金属原子としては、Cu、Fe、Ni等が好ましく、Cuが特に好ましい。また炭素層における金属原子の含有量は、0.1〜10質量%の範囲が好ましい。金属原子の含有量が0.1質量%未満では添加した効果の発現が困難となり、10質量%を超えると炭素層の強度が低下し蓄電装置のサイクル特性を向上させ難い。
炭素層には、導電性粉末を含むことも好ましい。導電性粉末によって炭素層内における導電性が向上するため、ナノシリコン凝集粒子への電子の移動抵抗を低減することができ、負極における電荷担体の伝導性が改善される。したがって充放電時における電荷担体の吸蔵・放出特性が向上し、蓄電装置における初期効率および初期容量が向上する。また導電性粉末の導入によって、詳細な理由は不明であるが、蓄電装置のサイクル特性も向上する。
導電性粉末としては、蓄電装置用の導電助剤として用いられるものと同様のものを用いれば良い。具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、あるいはWO2011/155486号公報に記載された微細化黒鉛粒子などの炭素系導電性粉末、あるいは導電性金属の粉末などを用いることができる。炭素層における導電性粉末の含有量は、炭素層全体を100質量%としたときに、1〜50質量%の範囲であるのが好ましい。導電性粉末の含有量が1質量%未満では添加した効果の発現が困難となり、50質量%を超えると炭素層の強度が低下し蓄電装置のサイクル特性が低下してしまう。なお、Si/C複合体の製造時におけるナノシリコン凝集粒子と導電性粉末との合計量を100質量%としたときの、導電性粉末の好ましい配合量(質量%)は、上記した炭素層における導電性粉末の含有量と略同じである。
<Si/C複合体の製造方法(第1の製造方法)>
炭素層を形成する場合において、何らかの方法で別に製造された炭素材料をナノシリコン凝集粒子と混合するだけでは、Si/C複合体が不均質となるとともに、炭素層を形成することも困難である。そこで、Si原子で構成された六員環が複数連なった構造をなし組成式(SiH)で示される層状ポリシランを熱処理してナノシリコン凝集粒子を得る凝集粒子形成工程と、ナノシリコン凝集粒子と芳香性複素環化合物とを混合した状態で芳香性複素環化合物を重合する重合工程と、芳香性複素環化合物の重合体を炭素化する炭素化工程と、をこの順で行う。この製造方法によれば、非晶質の炭素層が凝集粒子の少なくとも一部を確実に覆い、均質なSi/C複合体を製造することができる。
ナノシリコン凝集粒子を形成する凝集粒子形成工程は、前述したとおりである。
重合工程では、ナノシリコン凝集粒子と芳香性複素環化合物とを混合した状態で、芳香性複素環化合物が重合される。これによりナノシリコン凝集粒子に付着した状態の芳香性複素環化合物の重合体が得られる。ここで芳香性複素環化合物には、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾールなどの五員環芳香性複素環化合物、インドール、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、プリンなどの多環芳香性複素環化合物など、重合可能なものを用いることができる。
これらの化合物を重合するには、各種重合方法を採用することができるが、芳香性複素環化合物がピロール等である場合には、濃塩酸あるいは三塩化鉄などのポリマー化触媒の存在下で加熱する方法が簡便である。特に三塩化鉄を用いれば、非水雰囲気で重合することができSiの酸化を抑制できるので、蓄電装置としたときに初期容量が増大する効果がある。
炭素化工程では、ナノシリコン凝集粒子と混合された状態で芳香性複素環化合物の重合体が炭素化される。この工程は、ナノシリコンの製造時と同様に、不活性雰囲気下にて100℃以上の温度で熱処理すれば良く、400℃以上で熱処理するのが好ましい。芳香性複素環化合物は重合体となっているため、加熱しても蒸散することなくナノシリコン凝集粒子表面において炭素化が進行し、ナノシリコン凝集粒子の表面に炭素層が結合した複合体が得られる。この複合体における炭素層の少なくとも一部は非晶質である。なお、重合工程を行わずに、ナノシリコン凝集粒子と芳香性複素環化合物とを混合しただけの状態で熱処理を行うと、芳香性複素環化合物が蒸散してしまい炭素層を形成し難い。
<Si/C複合体の製造方法(第2の製造方法)>
ところが上記した製造方法では、重合、精製などの工程が必要となり、生産性が低い。また炭素層を均一に形成したSi/C複合体を形成することも難しいという問題があった。そこで、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造をなし組成式(SiH)で示される層状ポリシランを熱処理してナノシリコン凝集粒子を得る凝集粒子形成工程と、炭素源たる樹脂溶液(または樹脂分散液)とナノシリコン凝集粒子を混合し溶媒または分散媒を除去した後に樹脂を炭素化する炭素化工程と、をこの順で行うことが好ましい。この製造方法によれば、樹脂を最適に選択することで、少なくとも一部が非晶質である炭素層を容易に形成することができる。特に、予め高分子化された樹脂を用いることで重合工程の短縮、重合時の不均一化を少なくすることができる。
ナノシリコン凝集粒子を形成する凝集粒子形成工程は、前述したとおりである。
樹脂溶液(または樹脂分散液)とナノシリコン凝集粒子を混合し、溶媒または分散媒を除去した後に樹脂を炭素化する。この樹脂は炭素層の炭素源として用いられる。炭素源としての樹脂は、易黒鉛化材料または難黒鉛化材料を用いるのが好ましく、炭素化率が高い樹脂であることがより好ましい。炭素化率が高い樹脂としては、ビスフェノールAを原料とするポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノールを原料とするフェノール樹脂などが例示され、炭素化率が特に高いフェノール樹脂が特に望ましい。樹脂溶液の溶媒としては、樹脂を溶解することができる任意の溶媒を用いることができる。分散媒もまた樹脂を均一または略均一に分散させることができる任意の分散媒を用いることができる。欠陥の少ないSi/C複合体粒子を得るためには、樹脂溶液中または樹脂分散液中でナノシリコン凝集粒子を十分均一に混合分散することが望ましい。
炭素化工程は、ナノシリコン凝集粒子の製造時と同様に、不活性雰囲気下にて100℃以上の温度で熱処理すれば良く、400℃以上で熱処理するのが好ましい。樹脂に熱硬化性樹脂を用いた場合には、加熱硬化させた後に炭素化することができる。また予め低温で熱硬化させた後に、高温に加熱して炭素化しても良いし、炭素化工程における昇温の途中に熱硬化させても良い。
炭素化工程で形成された炭素層をラマン分光法で分析すると、そのラマンスペクトルにおいて、G−band(1590cm−1付近)とD−band(1350cm−1付近)にそれぞれピークが現れる。G−bandはグラファイトに由来し、D−bandは欠陥に由来する。したがってG−bandとD−bandの比であるG/D比が高いほど結晶性が高いことを意味する。
本発明者らの実験によれば、炭素化工程における焼成温度によって、得られた炭素層のG/D比が異なること、焼成温度が高いほどG/D比が高くなることが明らかとなった。またG/D比が低いと、蓄電装置とした場合の初期効率が低下することが明らかとなった。すなわちSi/C複合体における炭素層の炭素は、ラマンスペクトルにおいてG−bandとD−bandの比であるG/D比が0.2以上であることが好ましい。このようなSi/C複合体を負極活物質に用いることで、非水系二次電池における不可逆容量が低減され初期効率が向上する。G/D比を0.2以上とするには、炭素化工程における焼成温度を500℃以上とするのが好ましい。しかし焼成温度が高すぎると、SiCが生成する副反応が生じて蓄電装置とした場合に初期効率および初期容量が低下するので、焼成温度は1100℃未満とすることが望ましい。
また炭素化工程で形成される炭素層を電子線または放射光を用いた軟X線発光分光法(SXES)で詳細に解析したところ、炭素源の種類によって得られるX線発光スペクトルが異なることがわかった。X線発光は、内殻軌道に生じた空孔に、外殻の占有軌道の電子が遷移する際に発生する。X線発光のエネルギー(hν)は、内殻と外殻のエネルギ差に依存する。炭素の場合、価電子帯のL殻から内殻のK殻への遷移によりhν=276〜282eV付近にピークが現れる。このピークは一般的にCKαスペクトルと呼ばれる。
アセチレンブラックのCKαスペクトルを解析したところ、hν=277.5〜279.5eV(h:プランク定数、ν:振動数)付近にピークトップ(ピーク(A)のトップ)が現れることが分かり、ピーク(A)は炭素のsp軌道に対応すると考えられる。そしてフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネートなどを炭素源として得られた炭素層を解析すると、ピーク(A)の他にhν=279.5〜281.0eV付近に特徴的なピークトップ(ピーク(B)のトップ)が現れ、樹脂種の違いによってこのピーク(B)の高さが相違する。フランを炭素源とする炭素層を解析すると、これらのピーク(A)、(B)はともに顕れず、hν=279〜279.5eV付近に別の特徴的なピークが顕れる。このことから、SXESによるX線発光スペクトルにより、炭素層の構造を特徴づけることができると考えた。なお(h)はプランク定数[6.62606957×10−34kg/s]、(ν)はX線発光の振動数[Hz]である。
そこでSi/C複合体における炭素層のCは、SXESによるX線発光スペクトルCKαにおいて、hν=277.5〜279.5eV(h:プランク定数、ν:振動数)付近にピーク(A)を有するとともに、hν=279.5〜281.0eV付近にピーク(B)を有することが好ましい。そしてピーク(A)の高さに対するピーク(B)の高さの比{ピーク(B)/ピーク(A)}が0.92以上であれば、フェノール樹脂由来のCであり、蓄電装置とした場合に初期効率と初期容量に特に優れるものといえる。
<Si/C複合体の製造方法(第3の製造方法)>
前述したように、炭素層には遷移金属から選ばれる金属原子および/または導電性粉末を含むことが望ましい。以下、金属原子および/または導電性粉末を含む炭素層を形成する方法を説明する。
金属原子を含む炭素層を形成するには、ナノシリコン凝集粒子と炭素源たる樹脂溶液(または樹脂分散液)とを混合する際に金属原子源を混合しておき、溶媒または分散媒を除去した後に炭素化工程を行う。金属原子源としては、炭素源たる樹脂との親和性が高い、あるいは樹脂溶液または分散液に溶解または分散するものを用いることが好ましく、フタロシアニン銅など有機金属錯体を用いることが望ましい。炭素化工程における加熱時に有機物は炭素化されるため、金属原子が炭素層中に均一に分散して存在する。
また導電性粉末を含む炭素層を形成するには、ナノシリコン凝集粒子と炭素源たる樹脂溶液または分散液とを混合する際に導電性粉末を混合しておき、溶媒または分散媒を除去した後に炭素化工程を行う。炭素化工程で樹脂が炭素化されると、導電性粉末は炭素層中に均一に分散して存在する。
<Si/C複合体の製造方法(第4の製造方法)>
上述したように、ナノシリコン凝集粒子は、ナノサイズのシリコン粒子が層状に配列した構造を持つ板状シリコン体が、その厚さ方向に複数枚積層されてなる。炭素層は、ナノシリコン凝集粒子の表面だけでなく、板状シリコン体同士の層間にも形成されることが望ましく、この場合、炭素層の形成時には板状シリコン体同士の層間にも炭素源が浸入することが望ましい。このため、炭素源として気体を用いることも好ましい。すなわち、ナノシリコン凝集粒子を非酸化性雰囲気下にて有機物ガスと接触させ加熱して有機物ガスを炭素化することで、少なくとも板状シリコン体の表面に炭素層を形成することが好ましい。
この炭素化工程では、ナノシリコン凝集粒子を非酸化性雰囲気下にて有機物ガスと接触させ加熱して有機物ガスを炭素化することで少なくとも板状シリコン体の表面に炭素層を形成する。この方法は、熱CVD法と称され、例えば特開2004−047404号公報に記載された方法を用いることができる。炭素源として有機物ガスを用いることで、板状シリコン体の層間のみならずナノサイズのシリコン粒子どうしの間にも炭素源を供給することができ、炭素層を全体に確実にかつ均一な層厚に形成することができる。
第4の製造方法で形成される炭素層は、少なくとも板状シリコン体の表面に形成される。つまりこの場合には、炭素層は、板状シリコン体同士の間、および、ナノサイズのシリコン粒子の間には形成されなくても良い。勿論、第4の製造方法で形成される炭素層は、板状シリコン体同士の間に形成されても良いし、図6に示した層状に配列したナノサイズのシリコン粒子(つまり図6における扁平状ナノシリコン粒子1)の表面および/または当該扁平状ナノシリコン粒子1の層同士の間に形成されていても良い。炭素層は、板状シリコン体の全表面を覆っていることが好ましい。
有機物ガスとしては、有機物が気化したガス、有機物が昇華したガスあるいは有機物の蒸気を用いることができる。また有機物ガスを発生する有機物としては、非酸化性雰囲気下での加熱によって熱分解して炭化し得るものが用いられ、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、アセチレンなどの不飽和脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、安息香酸、サリチル酸、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類、脂肪酸類などから選択される一種または混合物が挙げられる。
炭素化工程における処理温度は、有機物の種類によって異なるが、有機物ガスが熱分解する温度より50℃以上高い温度とすることが望ましい。しかし温度が高すぎたり有機物ガス濃度が高すぎたりする場合、遊離炭素(煤)が発生するので、当該遊離炭素が発生しない条件を選択する必要がある。形成される炭素層の厚さは、処理時間によって制御することができる。
炭素化工程は、ナノシリコン凝集粒子を流動状態にして行うことが望ましい。このようにすることで、ナノシリコン凝集粒子の全表面を有機物ガスと接触させることができ、均一な炭素層を形成することができる。ナノシリコン凝集粒子を流動状態にするには、流動床を用いるなど各種方法があるが、ナノシリコン凝集粒子を撹拌しながら有機物ガスと接触させるのが好ましい。例えば内部に邪魔板を持つ回転炉を用いれば、邪魔板に留まったナノシリコン凝集粒子が回転炉の回転に伴って所定高さから落下することで撹拌され、その際に有機物ガスと接触して炭素層が形成されるので、全体に均一または略均一な炭素層を形成することができる。
第4の製造方法によれば、炭素層の厚さを容易に1nm〜100nmの範囲とすることができ、かつ、炭素層の平均厚さ(R)および厚さの標準偏差(σ)が、関係式(I):R/3σ>1を満たすよう、薄く均一に形成することができる。炭素層の厚さは、5nm〜50nmの範囲であることが望ましい。炭素層の厚さが薄すぎるとBET比表面積が大きくなりすぎ、SEIの生成によってサイクル特性が低下する。また電池抵抗が上昇し、初期効率が低下する。炭素層が厚くなりすぎると初期容量が低下するとともに、電荷担体の挿入および離脱が困難となる場合がある。
炭素層の厚さを1nm〜100nmの範囲にし、かつ炭素層の平均厚さ(R)および厚さの標準偏差(σ)が、関係式(I):R/3σ>1を満たすよう薄く均一に形成することで、非水系二次電池の負極において抵抗上昇を抑制しつつ導電性を向上させ得る。また負極の比表面積を小さくできることにより、SEIの生成抑制なども可能となる。
なお炭素層の厚さが1nm〜100nmの範囲であれば、Si/C複合体に含まれる炭素は1〜30質量%となり、Si/C複合体のBET比表面積は1m/g〜10m/gの範囲となる。またこのようなSi/C複合体の導電率は100Ω・cm以下となる。
第4の製造方法で製造されるSi/C複合体における炭素層をラマン分光分析すると、そのラマンスペクトルにおいて、G−bandとD−bandの比であるG/D比が0.5以上であることが望ましい。このラマンスペクトルにおいては、G−band(1590cm−1付近)とD−band(1350cm−1付近)にそれぞれピークが現れ、G−bandはグラファイトに由来し、D−bandは欠陥に由来する。したがってG/D比が高いほど結晶性が高いことを意味する。
本発明者らの実験によれば、第4の製造方法で製造されるSi/C複合体において、G/D比が低い場合には蓄電装置としたときの初期効率が低下することが明らかとなった。すなわち複合体における炭素層は、ラマンスペクトルにおいてG−bandとD−bandの比であるG/D比が0.5以上であることが好ましい。このようなSi/C複合体を負極活物質に用いることで、蓄電装置における不可逆容量が低減され初期効率が向上する。
本発明の負極における負極活物質は、上述したナノシリコン凝集粒子を主成分として含めば良い。ここでいう主成分とは、負極活物質全体を100質量%としたときに50質量%以上をナノシリコン凝集粒子が占めることを指す。好ましくは、ナノシリコン凝集粒子は負極活物質全体の70質量%以上を占めるのが良く、より好ましくは80質量%以上を占めるのが良い。勿論、負極活物質はナノシリコン凝集粒子のみからなっても良い。何れの場合にも、負極に含まれる多数のナノシリコン凝集粒子のなかで、少なくとも一部は、炭素層で覆われたSi/C複合体を構成する。上述したように、本発明の負極は、負極活物質として、炭素層で覆われていないナノシリコン凝集粒子を含んでも良い。しかし負極活物質の主成分は、炭素層で覆われたナノシリコン凝集粒子つまりSi/C複合体に含まれるナノシリコン凝集粒子である。
ナノシリコン凝集粒子以外の負極活物質としては、電荷担体を吸蔵および放出し得る一般的なものを使用可能である。例えば、蓄電装置がリチウムイオン二次電池である場合には、ナノシリコン凝集粒子以外の負極活物質(以下、必要に応じて第2の負極活物質と呼ぶ)として、電荷担体としてのリチウムイオンを吸蔵および放出し得る材料を選択すれば良い。より詳しくは、リチウム等の電荷担体と合金化可能な元素(単体)、当該元素を含む合金、または当該元素を含む化合物であれば良い。具体的には、第2の負極活物質として、Liや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すれば良い。ケイ素等を第2の負極活物質に採用すると、ケイ素1原子が複数のリチウムと反応するため、高容量の活物質となる。しかしこの場合には上述したように、リチウムの吸蔵および放出に伴って負極活物質の体積の膨張および収縮が顕著となる等の問題が生じるおそれがある。したがって、当該恐れの軽減のために、ケイ素などの単体に遷移金属等の他の元素を組み合わせた合金または化合物を第2の負極活物質として採用するのも好適である。合金または化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、第2の負極活物質して、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、または、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。第2の負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
なお、第2の負極活物質および後述する正極活物質がともに電荷担体を含まない場合、またはこれらに含まれる電荷担体の量が必要とされる量よりも少ない場合には、負極および/または正極に電荷担体を予め添加しておくのが良い。例えば、本発明の蓄電装置をリチウムイオン二次電池として用いる場合、主たる負極活物質であるナノシリコン凝集粒子がリチウムを含まない。このため、リチウムを含まない第2の負極活物質を併用する場合には、負極および/または正極に、公知の方法によって、予め電荷担体としてのリチウムイオンを添加しておく必要がある。リチウムは、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、リチウム箔を正極および/または負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。他の電荷担体を用いる場合に関しても同様である。
バインダは、負極活物質を集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。本発明の負極においては、バインダとして水系バインダを用いる。水系バインダとは、各種のポリマーやゴム材料からなるバインダ成分を、分散媒および/または溶媒たる水に分散および/または溶解させてなるものである。水系バインダを構成するバインダ成分は、一般に、水に溶解しているか、コロイド状で水に分散されているか、あるいは、エマルジョン化されて水に分散されている。バインダ成分の親水基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基などリン酸系の基などが例示される。
水系バインダとして、具体的には、スチレンブタジエンゴム(SBR:styrene−butadiene rubber)、カルボキシメチルセルロース(CMC:Carboxymetylcellulose)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)から選ばれる少なくとも一種を用いるのが良い。これらの水系バインダは、比較的柔軟性に優れ、充放電時にケイ素系負極活物質が大きく膨張および収縮しても、それに追従して変形し得る。したがって、ケイ素系負極活物質と水系バインダとを組み合わせて用いることで、充放電時におけるケイ素系負極活物質の体積変化を水系バインダで吸収することができ、ケイ素系負極活物質の集電体からの脱落等を抑制できる。そしてその結果、本発明の負極はサイクル劣化し難く、蓄電装置に優れたサイクル特性を付与できる。
なお、水系バインダとしてSBRのみを用いる場合には、負極を製造し難い場合がある。つまり、負極を製造する際には、負極活物質とバインダと溶剤とを含むスラリー状の負極合材を調製し、当該負極合材を集電体に塗布するのが一般的であるが、バインダがSBRのみからなる場合には、スラリーの粘度を高め難く、負極活物質をスラリー中に均一に分散させ難い場合がある。このため水系バインダとしてSBRを選択する場合には、スラリーの粘度を高め得る材料を併用するのが好ましい。例えば水系バインダの一種であるCMCをSBRと併用することで、負極合材スラリーの粘度を高めて負極を略均質にできるとともに、水系バインダに由来する柔軟性によって負極のサイクル劣化抑制を図り得る。水系バインダとしては、SBRを単独で用いるよりも、CMC、PAA、PAANa等を併用するのが好ましい。さらに、CMCは単独で用いても良いが、SBRはCMCに比べて柔軟性が高い。このためCMCにSBRを併用することで、負極活物質に対する水系バインダの追従性を向上させることができ、負極のサイクル劣化をさらに抑制し得る。
負極活物質層中の水系バインダの配合割合は、負極活物質層全体を100質量%としたときに10質量%を超え40質量%以下である。後述するように、水系バインダの配合量がこの範囲内であれば、蓄電装置のサイクル特性をより向上させることが可能である。水系バインダの配合量が過小であると負極活物質層の成形性が低下するとともに、水系バインダによるナノシリコン凝集粒子の体積変化吸収効果が小さくなる。また、水系バインダの配合量が過大であると、負極のエネルギ密度が低くなり、蓄電装置の初期容量が小さくなる。なお、上記した「負極活物質層中の水系バインダの配合割合」は、「負極合材の固形分中の水系バインダの配合割合」と読み替えることもできる。負極合材の固形分とは、負極合材を構成する成分から溶剤を除いたものを指す。
導電助剤は、負極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、負極の導電性が不足する場合に任意に加えれば良く、負極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤は化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、および各種金属粒子などを例示できる。これらの導電助剤を単独でまたは2種以上組み合わせて負極活物質層に添加することができる。負極活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると負極活物質層の成形性が悪くなるとともに負極のエネルギ密度が低くなるためである。
負極は、負極活物質を含む負極合材を集電体の表面に配置し、乾燥することで形成できる。或いは、乾燥後に電極密度を高めるべく圧縮しても良い。これは後述する正極に関しても同様である。
負極合材は、負極活物質、水系バインダ、溶剤、その他の添加剤、および、必要に応じて導電助剤を含み、ペースト状をなす。
溶剤は、主として、負極合材の粘度調整のために配合される。一般的には、固形分を予め混合し、次いで溶剤を加えることで、負極合材を集電体に塗布等するのに適した粘度にする。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
負極合材を集電体の表面に配置する方法としては、塗布、積層、載置、スプレー等の一般的な方法を用いることができる。例えばロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を選択し得る。負極は、集電体上に負極合材を塗布した後、乾燥することで形成される。また場合によっては乾燥後さらに圧縮して形成される。
〔蓄電装置〕
本発明の蓄電装置は、上記した本発明の負極を含むものである。本発明の蓄電装置は、例えば、非水電解質二次電池やリチウムイオンキャパシタ等として具現化できる。
本発明の蓄電装置は、負極、正極および電解質を有し、必要に応じてセパレータを有する。
正極は、電荷担体を吸蔵および放出し得る正極活物質を有する。正極は、集電体と、集電体の表面に設けた正極活物質層を有する。正極活物質層は正極活物質、ならびに必要に応じてバインダおよび/または導電助剤を含む。正極の集電体は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はなく、上記した負極と同様のものを使用すれば良い。導電助剤に関しても、負極で説明したものと同様である。なお、正極のバインダに関しては特に限定されず、上記した水系バインダを用いても良いし溶媒系バインダを用いても良い。
正極活物質としては、例えば、層状化合物のLiNiCoMn(0.2≦a≦1.2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn、LiMn等のスピネル、およびスピネルと層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVOまたはLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることもできる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることもできる。正極活物質として用いられる何れの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすれば良く、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、リチウム等の電荷担体を含まないもの、例えば、硫黄単体(S)、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリンおよびアントラキノンならびにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。上記したように電荷担体を含まない正極活物質を用いる場合には、正極および/または負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておくのが良い。
電解質は、蓄電装置の種類に応じたものを用いれば良く、特に限定されない。例えば、本発明の蓄電装置が非水電解質二次電池であれば、電解質として、有機溶媒に支持塩(支持電解質とも言う)を溶解させたものを用いれば良い。例えば蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合には、有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒、例えばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる少なくとも一種を好ましく選択できる。また、この場合の支持塩としては、有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いるのが良く、例えば、LiPF、LiBF、LIASF、LiI、LiClO、LiCFSOからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いるのが好適である。支持塩は、有機溶媒に0.5mol/l〜1.7mol/l程度の濃度で溶解させるのが好ましい。
蓄電装置には必要に応じてセパレータが用いられる。セパレータは、負極と正極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、電解液および電荷担体の通過を許容するものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種または複数種用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としても良い。
上述した負極および正極に、必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、負極、セパレータおよび正極を重ねた積層型、または、負極、セパレータおよび正極を捲いた捲回型の何れの型にしても良い。負極の集電体および正極の集電体から外部に通ずる負極端子および正極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解質を加えることで蓄電装置を得ることが可能である。
本発明の蓄電装置の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明の蓄電装置の用途は特に限定されず、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電力で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器、車両等が挙げられる。
以下に、実施例および比較例を基に、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
以下、実施例および比較例により本発明の実施態様を具体的に説明する。
(Si/C複合体の製造1)
濃度46質量%のHF水溶液7mlと、濃度36質量%のHCl水溶液56mlとの混合溶液を氷浴中で0℃とし、アルゴンガス気流中にてそこへ3.3gの二ケイ化カルシウム(CaSi)を加えて撹拌した。発泡が完了したのを確認した後に室温まで昇温し、室温でさらに2時間撹拌した後、蒸留水20mlを加えてさらに10分間撹拌した。このとき黄色粉末が浮遊した。
得られた混合溶液を濾過し、残渣を10mlの蒸留水で洗浄した後、10mlのエタノールで洗浄し、真空乾燥して2.5gの層状ポリシランを得た。そのラマンスペクトルを図3に示す。ラマンシフトの341±10cm−1、360±10cm−1、498±10cm−1、638±10cm−1、734±10cm−1にピークが存在した。
この層状ポリシランを1g秤量し、O量が1体積%以下のアルゴンガス中にて500℃で1時間保持する熱処理を行い、ナノシリコン凝集粒子を得た。このナノシリコン凝集粒子に対してCuKα線を用いたX線回折測定(XRD測定)を行った。XRD測定によれば、Si微粒子由来と考えられるハローを観測した。Si微粒子をX線回折測定した結果、(111)面の回折ピークの半値幅からシェラーの式より算出される結晶子サイズは約7nmであった。
得られたナノシリコン凝集粒子のSEM画像を図4、5に示す。ナノシリコン凝集粒子は、複数枚の板状シリコン体が厚み方向に積層されてなる構造を有している。なお、図4に示す長方形部分を拡大したものが図5に示されている。板状シリコン体は厚みが約10nm〜約100nmであるように観察されるが、強度や電荷担体の挿入および離脱の容易性などの観点から、板状シリコン体の厚みは20nm〜50nmの範囲であることが好ましい。また長軸方向の長さは、0.1μm〜50μmであった。板状シリコン体は、アスペクト比(長軸方向の長さ/厚み)が2〜1000であるのが好ましいと考えられる。
板状シリコン体を、さらにTEM(Transmission Electron Microscopy)観察した。図6に示すように、板状シリコン体には濃淡のある縞状構造が認められる。なお、図5に示す正方形部分を拡大したものが図6に相当し、図7には板状シリコン体の要部を拡大して示す模式的な断面図を示している。
図6の薄い灰色の部分は、複数の扁平状ナノシリコン粒子1がその長辺方向に層状に配列した構造であり、扁平状ナノシリコン粒子1の層同士の間に存在する濃い灰色の部分は空隙および/またはシリコン酸化物2であると考えられる。扁平状ナノシリコン粒子1は長軸方向長さ(a)が5nm〜20nm、短軸方向長さ(b)が2〜5nm、であり、長軸と短軸の長さの比(a/b)が2.5〜10である。また空隙および/またはシリコン酸化物2の厚みは2nm〜10nmであり、扁平状ナノシリコン粒子1の厚みに対する空隙および/またはシリコン酸化物2の厚みの比は0.5〜2である。
得られたナノシリコン凝集粒子1gに対して、アセトンとメタノールからなる混合溶媒に溶解したレゾール型フェノール樹脂溶液(固形分58質量%)0.86gを添加し、良く攪拌した。このときのSiとCとの質量比(仕込み質量比)は、Si/C=2/1であった。これから溶媒を除去した後、減圧下で120℃にて1時間加熱してフェノール樹脂を硬化させ、次いでアルゴンガス中にて900℃で20分間焼成して炭素化した。回収粉末の重量と層状ポリシランの仕込み量とから算出されたSi/C質量比は、80/20であった。この工程で、粉末状のSi/C複合体(第1のSi/C複合体と呼ぶ)を得た。第1のSi/C複合体は黒色の粉末状をなす。
上記の工程で得られた第1のSi/C複合体をイオンミリング法によって薄片化し、その粒子についてTEM観察を行った結果を図8に示す。図6と同様に、濃い灰色の粒子(長径の粒径約10nm)が長辺に対して垂直に配向して層状に配列した部分と、薄い灰色の部分とが層状に積層された構造となっていることがわかる。
そこで図8のPoint1〜5の各点についてその組成を確認すべく、TEM−EDX(エネルギ分散型X線分光法)分析を行った。結果を図9〜13にそれぞれ示す。Point1〜3はシリコン(Si)が91.5atm%以上の組成であり、濃い灰色の粒子はナノシリコン粒子であることが確認された。またPoint4および5からはSi以外に多量のCと微量のOが検出され、薄い灰色の部分はCが多い炭素層であることがわかった。すなわち、図7に示した空隙および/またはシリコン酸化物2に相当する部位にフェノール樹脂が含浸して炭素化され、炭素層が形成されたと考えられる。
黒色粉末を平均粒子径が10μmとなるようにボールミルで粉砕し、第1のSi/C複合体を粉末化した。粉砕は、黒色粉末1gに対して100gのジルコニアボール(4mmφ)を加え、70rpmで2時間行った。
粉末状の第1のSi/C複合体に対して、CuKα線を用いたX線回折測定(XRD測定)を行った。そのXRDスペクトルを図14に示す。図14には、アセチレンブラックのXRDスペクトルも示している。第1のSi/C複合体には、アセチレンブラックに存在する2θ=26°のピーク(結晶性炭素ピーク)が認められず、第1のSi/C複合体に含まれる炭素は非晶質であることがわかる。また半値幅から、粉末状の第1のSi/C複合体中のSiの結晶子サイズは10nm以下であることもわかる。
(Si/C複合体の製造2)
上記したSi/C複合体の製造1と同様の方法でナノシリコン凝集粒子を得た。このナノシリコン凝集粒子をロータリーキルン型の反応器に入れ、ブタンガス通気下にて800℃、滞留時間5分間の条件で熱CVDを行った。反応器の炉芯管は水平方向に配設され、回転速度は1rpmである。炉心管の内周壁には邪魔板が配設され、回転に伴って邪魔板上に堆積した内容物が所定の高さで邪魔板から落下するように構成され、それによって内容物が撹拌される。この炭素化工程で得られたSi/C複合体を第2のSi/C複合体と呼ぶ。
この炭素化工程で得られた第2のSi/C複合体粉末のSEM画像を図15、16に示す。板状シリコン体の表面に、灰色の炭素層が形成されていることがわかる。断面SEM観察により、複合体粉末を任意に7粒子選び、炭素層厚みを5点ずつ、合計35点測定した。炭素層の平均厚さ(R)は23nm、炭素層厚さの標準偏差(σ)は5.7であり、関係式(1)は、R/3σ=1.37となり、炭素層が均一な厚さに形成されていることがわかる。
第2のSi/C複合体における炭素の含有量を、酸素気流中燃焼(高周波加熱炉方式)−赤外線吸収法(堀場製作所社製「炭素・硫黄分析装置 EMIA」)により測定したところ、6.8質量%であった。また第2のSi/C複合体の比表面積をBET法により測定したところ、4.9m/gであった。第2のSi/C複合体における炭素層のラマンスペクトルを測定し、そのスペクトルからG−bandとD−bandの比であるG/D比をそれぞれ算出した。なおG/D比は、ラマンスペクトルを波形分離し、そのピーク面積から算出した。G/D比は0.81であった。さらに、第2のSi/C複合体を直径10mmの底面を持つ円柱状の圧粉体に成形し、その高さ方向の抵抗値と円柱状の圧粉体の高さを計測した。測定した抵抗値に直径10mmの円形の底面積を乗じ、圧粉体の高さを除することにより導電率を算出したところ、3.0Ω・cmであった。
(実施例1)
第1のSi/C複合体55質量部、CMC(CALBIO CHEM社製、Carboxymethylcellulose, sodium salt, low viscosity)15質量部、SBR(日本ゼオン社製、BM−400B)15質量部、AB15質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。各材料の配合割合を表1に示す。
このスラリーを、厚さ約20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、集電体上に負極合材層を形成した。その後、ロールプレス機によって集電体と負極合材層を強固に密着接合させた。これを100℃で2時間真空乾燥して、集電体上に厚さ20μmの負極活物質層が設けられた負極を作製した。
上記の手順で作製した負極を評価極として用い、リチウム二次電池(ハーフセル)を作製した。対極は金属リチウム箔(厚さ500μm)とした。
対極をφ13mm、評価極をφ11mmに裁断し、セパレータ(ヘキストセラニーズ社製ガラスフィルターおよびCelgard社製「Celgard2400」)を両者の間に介装して電極体電池とした。この電極体電池を電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉株式会社製)に収容した。電池ケースには、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1(体積比)で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解した非水電解液を注入し、電池ケースを密閉してリチウム二次電池を得た。
(実施例2)
実施例2の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合およびABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、実施例2においては、Si/C複合体60質量部、CMC15質量部、SBR15質量部、AB10質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、実施例2の負極を作製し、さらに実施例2のリチウム二次電池を作製した。
(実施例3)
実施例3の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合、CMCおよびSBRの配合割合、およびABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、実施例3においては、Si/C複合体70質量部、CMC10質量部、SBR10質量部、AB10質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、実施例3の負極を作製し、さらに実施例3のリチウム二次電池を作製した。
(実施例4)
実施例4の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合、CMCおよびSBRの配合割合、およびABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、実施例4においては、Si/C複合体77.5質量部、CMC7.5質量部、SBR7.5質量部、AB7.5質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、実施例4の負極を作製し、さらに実施例4のリチウム二次電池を作製した。
(実施例5)
実施例5の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合、SBRを配合しなかったこと、およびABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、実施例5においては、Si/C複合体70質量部、CMC15質量部、AB15質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、実施例5の負極を作製し、さらに実施例5のリチウム二次電池を作製した。
(実施例6)
実施例6の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合およびABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、実施例6においては、Si/C複合体62.5質量部、CMC15質量部、SBR15質量部、AB7.5質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、実施例6の負極を作製し、さらに実施例6のリチウム二次電池を作製した。
(実施例7)
実施例7の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合およびABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、実施例7においては、Si/C複合体40質量部、CMC15質量部、SBR15質量部、AB30質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、実施例7の負極を作製し、さらに実施例7のリチウム二次電池を作製した。
(実施例8)
実施例8の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合およびABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、実施例7においては、Si/C複合体65質量部、CMC15質量部、SBR15質量部、AB5質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、実施例8の負極を作製し、さらに実施例8のリチウム二次電池を作製した。
(実施例9)
実施例9の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合、CMCおよびSBRの配合割合、ABにかえてKBを用いたこと、および導電助剤の配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、実施例9においては、Si/C複合体70質量部、CMC10質量部、SBR10質量部、KB10質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、実施例9の負極を作製し、さらに実施例9のリチウム二次電池を作製した。
(比較例1)
比較例1の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合、CMCおよびSBRの配合割合、ABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、比較例1においては、Si/C複合体97質量部、CMC1質量部、SBR1質量部、AB1質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、比較例1の負極を作製し、さらに比較例1のリチウム二次電池を作製した。
(比較例2)
比較例2の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合、CMCおよびSBRの配合割合、ABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、比較例2においては、Si/C複合体91質量部、CMC3質量部、SBR3質量部、AB3質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、比較例2の負極を作製し、さらに比較例2のリチウム二次電池を作製した。
(比較例3)
比較例3の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合、水系バインダでなく溶剤系バインダであるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を用いたこと、バインダ用の溶媒に水ではなく溶剤であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いたこと、バインダおよび溶媒の配合割合、ABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、比較例3においては、Si/C複合体85質量部、PVdF10質量部、AB5質量部、および、NMP63質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、比較例3の負極を作製し、さらに比較例3のリチウム二次電池を作製した。
(比較例4)
比較例4の負極は、Si/C複合体にかえて実施例1で用いたものと同じナノシリコン凝集粒子を用いたものであり、それ以外は実施例1と同じものである。詳しくは、比較例4においては、ナノシリコン凝集粒子55質量部、CMC15質量部、SBR15質量部、AB15質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、比較例4の負極を作製し、さらに比較例4のリチウム二次電池を作製した。
(比較例5)
比較例5の負極は、実施例1と同じSi/C複合体を用いたものであり、Si/C複合体の配合割合、CMCおよびSBRの配合割合、ABの配合割合以外は実施例1と同じものである。詳しくは、比較例5においては、Si/C複合体85質量部、CMC5質量部、SBR5質量部、AB5質量部、および、水85質量部を混合して、スラリー状の負極合材を調製した。そして、この負極合材を用いて実施例1と同じ手順で、比較例5の負極を作製し、さらに比較例5のリチウム二次電池を作製した。
(評価試験)
実施例1〜9および比較例1〜5のリチウム二次電池について、温度25℃、電流0.2mAの条件で充電した際の初期の充電容量を測定した。その結果を初期容量として表1に示す。また、初期充電後に0.2mAの定電流で放電させた際の放電容量を測定して、初期効率(%)を算出した。具体的には、初期効率は充電容量を放電容量で除して100を乗じた値である。その結果を表1に示す。
また実施例1〜9および比較例1〜5のリチウム二次電池を用い、温度25℃、電流0.2mAの条件下において1Vまで充電し、10分間休止した後、電流0.2mAの条件で0.01Vまで放電し、10分間休止するサイクルを20サイクル繰り返すサイクル試験を行った。そして1サイクル目の充電容量に対する20サイクル目の充電容量の割合である容量維持率をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。なお、容量維持率はサイクル特性の指標であり、容量維持率の大きな蓄電装置はサイクル特性に優れる。
実施例1〜9のリチウム二次電池の容量維持率は、比較例1〜5のリチウム二次電池に比べて高い。これは、実施例1〜9のリチウム二次電池が本発明の負極を含む本発明の蓄電装置であるためだと考えられる。つまり、実施例1〜9の負極において、Si/C複合体と水系バインダとを組み合わせて用い、かつ、負極活物質層における水系バインダの配合量を、10質量%を超え40質量%以下の範囲にしたことで、リチウム二次電池の容量維持率が向上したものと考えられる。
つまり、Si/C複合体と水系バインダとを併用した実施例1〜9のリチウム二次電池の容量維持率(90〜30%)は、Si/C複合体と溶剤系バインダとを併用した比較例3のリチウム二次電池の容量維持率(10%)に比べて遙かに大きい。この結果から、Si/C複合体と水系バインダとを併用することで容量維持率を向上させ得ることがわかる。
また、水系バインダの配合量が上記の範囲内にある実施例1〜9のリチウム二次電池の容量維持率(90〜30%以上)は、水系バインダの配合量が上記の範囲外である比較例1、2、5のリチウム二次電池の容量維持率(24〜2%)に比べて充分に大きい。この結果から、負極活物質層における水系バインダの配合量を、10質量%を超え40質量%以下の範囲にすることによっても、容量維持率を向上させ得ることがわかる。さらに、水系バインダの配合量が異なる実施例2および実施例3を比較すると、水系バインダを30質量%含む実施例2のリチウム二次電池の容量維持率は70%であるのに対して、水系バインダを20質量%含む実施例3のリチウム二次電池の容量維持率は55%であった。同様に、水系バインダの配合量が異なる実施例4および実施例6を比較すると、水系バインダを30質量%含む実施例6のリチウム二次電池の容量維持率は59%であるのに対して、水系バインダを15質量%含む実施例4のリチウム二次電池の容量維持率は47%であった。これらの結果から、水系バインダの配合量は、10質量%を超え40質量%以下の範囲内であれば多い方が好ましいことがわかる。なお、一般的な非水電解質二次電池用負極におけるバインダの配合量は、2〜6質量%程度である。つまり、比較例1、2のリチウム二次電池は、バインダの配合量の点において、一般的なリチウム二次電池に相当する。このような一般的なリチウム二次電池に比べて、本発明のリチウム二次電池(実施例1〜9)の容量維持率は遙かに高い。このことは、Si/C複合体と水系バインダとを併用し、かつ、バインダの配合量を従来の5〜15倍程度にまで多くすることで、蓄電装置のサイクル特性を大きく向上させ得ることを意味する。
また、水系バインダとしてCMCのみを用いた実施例5のリチウム二次電池の容量維持率は、CMCとSBRとを併用している実施例3、4、6〜8のリチウム二次電池の容量維持率と遜色ないことから、水系バインダの種類および組み合わせは特に限定されないこと、および、水系バインダとしてCMCのみを用いても良いことがわかる。
また、比較例4のリチウム二次電池は、Si/C複合体にかえて炭素層のないナノシリコン凝集粒子を用いたこと以外、実施例1のリチウム二次電池と同じものであるが、その容量維持率は28%であり、実施例1のリチウム二次電池の容量維持率(88%)に比べて遙かに低い。この結果から、負極活物質として、単なるナノシリコン凝集粒子を用いるのではなく、ナノシリコン凝集粒子に炭素層を設けたSi/C複合体を用いることで、蓄電装置のサイクル特性を大きく向上させ得ることがわかる。なお、各実施例においては、負極活物質複合体として、第2のSi/C複合体を用いているが、第1のSi/C複合体を用いた場合にも、各実施例と同様に蓄電装置のサイクル特性を向上させることができ、後述する初期容量および初期効率に関しても充分に高い性能を発揮できる。
さらに、実施例1、2、6〜8は導電助剤の配合割合だけをかえたものであるが、このうち導電助剤の配合量が特に多い実施例7のリチウム二次電池の初期効率は、他のリチウム二次電池の初期効率に比べて小さい。つまり、導電助剤の配合量が過大であると、初期不可逆容量が大きくなる。これは、導電助剤の量が過大であるために、多くの電荷担体(Liイオン)が導電助剤に不可逆的に結合或いはトラップされたためだと考えられる。このため、初期効率の向上を図るためには、導電助剤の配合量を所定量以下にするのが良いと考えられる。導電助剤の配合量は、負極活物質層中における水系バインダの質量を導電助剤の質量で除した値で表すことができる。以下、負極活物質層中における水系バインダの質量を導電助剤の質量で除した値を、水系バインダ/導電助剤割合と呼ぶ。
具体的には、水系バインダ/導電助剤割合が1を超えれば、初期効率の向上を図り得ると考えられる。また、水系バインダ/導電助剤割合が1である実施例7のリチウム二次電池の初期効率は63%であるのに対し、水系バインダ/導電助剤割合が2である実施例1のリチウム二次電池の初期効率は78%と充分に高いことから、水系バインダ/導電助剤割合の下限値を、1を超え2未満の値、具体的には1.5とすれば、初期効率をさらに向上させ得ると考えられる。参考までに、実施例1、2、6〜8においては導電助剤の配合量が多い程、負極活物質の配合量は少ない。このため各実施例のリチウム二次電池においては、水系バインダ/導電助剤割合が小さければ初期容量が大きくなる傾向にある。
また、実施例1、2、6〜8のリチウム二次電池においては、導電助剤の量が過小であれば、負極活物質に対する導電助剤の量が不足する。このため、充放電の繰り返しにより負極活物質の膨張および収縮が繰り返されると、導電助剤による導電パスが分断されて、充分な量の導電パスを維持できなくなると考えられる。そしてその結果、リチウム二次電池の容量維持率が低下すると考えられる。つまり、サイクル特性を考慮すると、水系バインダ/導電助剤割合は所定の値よりも小さい方が良いと考えられる。
より具体的には、水系バインダ/導電助剤割合が6である実施例8のリチウム二次電池の容量維持率は30%であるのに対し、水系バインダ/導電助剤割合が4である実施例6のリチウム二次電池の容量維持率は59%と高いことから、水系バインダ/導電助剤割合は6未満であるのが好ましく、4以下であるのがより好ましいといえる。さらに、上記した初期効率の向上とサイクル特性とを両立させる観点からは、水系バインダ/導電助剤割合は1を超え6未満であるのが好ましく、1.5以上4以下であるのがより好ましいといえる。さらに好ましくは、水系バインダ/導電助剤割合は2以上4以下であるのが良い。
さらに、サイクル特性を向上させるためには、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)を用いるよりもケッチェンブラック(KB)を用いるのが好ましいといえる。実施例3および実施例9は導電助剤の種類のみが異なり、実施例3においてはABを用い実施例9においてはKBを用いている。表1に示すように、導電助剤としてABを用いた実施例3のリチウム二次電池の容量維持率は55%であるが、これに対して、導電助剤としてKBを用いた実施例9のリチウム二次電池の容量維持率は90%と大きく向上している。これは、KBの構造に由来すると考えられる。つまり、ABは中実状であるのに対してKBは中空のシェル状をなす。具体的には、一般的なABの空隙率はほぼ0%であるのに対し、一般的なKBの空隙率は60〜80%と非常に大きい。したがって、同じ粒子径のABとKBとをそれぞれ同じ質量だけ負極活物質層に配合したとすると、負極活物質層中に存在する導電助剤の個数は、ABに比べてKBの方が多い。つまり、KBはABに比べて負極に多数配合可能であり、多くの導電パスを形成し得る。このため、導電助剤としてABにかえてKBを選択することで、リチウム二次電池の容量維持率が向上したと考えられる。
なお、初期効率の面からいうと、KBを導電助剤に用いた実施例9のリチウム二次電池に比べてABを導電助剤に用いた実施例3のリチウム二次電池の方が優れている。しかし実施例3および9の初期効率の差は、容量維持率の差に比べると小さいため、KBを選択することによる初期効率の低下は許容できる程度である。

Claims (9)

  1. 集電体と、前記集電体上に設けられている負極活物質層とを持ち、
    ナノサイズのシリコン粒子が層状に配列した構造を持つ板状シリコン体がその厚さ方向に複数層配列してなるナノシリコン凝集粒子と、前記ナノシリコン凝集粒子の少なくとも一部を覆って複合化された炭素層と、からなる負極活物質複合体と、
    水系バインダと、
    導電助剤と、を前記負極活物質層に含み、
    前記水系バインダの配合量は、前記負極活物質層全体を100質量%としたときに10質量%を超え40質量%以下であり、
    前記負極活物質複合体の配合量は、前記負極活物質複合体、前記水系バインダ、及び前記導電助剤の合計を100質量%としたときに40質量%以上77.5質量%以下であり、
    前記負極活物質層中の前記水系バインダの質量を前記導電助剤の質量で除した値は6未満である負極。
  2. 前記炭素層の厚さは1nm以上100nm以下の範囲にあり、かつ、平均厚さ(R)および厚さの標準偏差(σ)が以下の関係式(I)を満たす請求項1に記載の負極。
    R/3σ>1…関係式(I)
  3. 前記板状シリコン体は厚さ20nm以上50nm以下であり、長軸方向の長さが0.1μm以上50μm以下である請求項1または請求項2に記載の負極。
  4. 前記板状シリコン体は、扁平状ナノシリコン粒子が層状に配列した構造を持つ請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の負極。
  5. 前記水系バインダは、スチレン−ブタジエンゴムおよび/またはカルボキシメチルセルロースからなる請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の負極。
  6. 前記水系バインダは、少なくともカルボキシメチルセルロースを含む請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の負極。
  7. 前記負極活物質層中の前記水系バインダの質量を前記導電助剤の質量で除した値は、1.5以上4以下である請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の負極。
  8. 前記負極活物質層は、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)を含む請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の負極。
  9. 請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の負極を含む蓄電装置。
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