(A)主たる実施形態
以下、本発明の受信機、シンボルタイミング同期装置及びシンボルタイミング同期方法の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施形態では、OFDM変調方式を採用した通信方式に対応するものであり、空間ダイバーシチ機能を備えて受信機に本発明を適用する場合を例示する。
(A−1)実施形態の構成
(A−1−1)受信機の構成
図1は、実施形態に係る受信機1の構成を示す構成図である。図1において、この実施形態に係る受信機1は、アンテナ部10、復調部11、シンボルタイミング同期部15、ガードインターバル(GI)除去部14、直列−並列(S/P)変換部12、離散フーリエ変換(DFT)部13、アンテナ部20、復調部21、シンボルタイミング同期部25、ガードインターバル(GI)除去部24、直列−並列(S/P)変換部22、離散フーリエ変換(DFT)部23、ダイバーシチ合成部30−1〜30−L、並列−直列(P/S)変換部33、判定部34を有する。
この実施形態に係る受信機1は、空間ダイバーシチ機能を備えたOFDM受信機であり、ダイバーシチブランチ(以下、単にブランチともいう。)の数は2個とする場合を例示している。また、この実施形態において、ダイバーシチブランチに関して、必要に応じて、ダイバーシチブランチ(ブランチ)51、ダイバーシチブランチ(ブランチ)52と表現する。
また、OFDM変調方式で用いる搬送波を分散する搬送波数(サブキャリア数)を「L」としている。
図示しない送信機は、情報ビット列をベースバンド(基底帯域)で符号化し、搬送波周波数(高周波)帯域に変換する。その変調された信号は、送信機のアンテナ部による空間に放射され、受信機1のアンテナ部10及びアンテナ部20に捕捉(受波)される。
アンテナ部10は、捕捉(受波)した電波を電気信号に変換して復調部11に与えるものである。
復調部11は、アンテナ部10からの信号から搬送波周波数帯域の信号成分を抽出し、その搬送波周波数帯域の信号を復調して、ベースバンドのデジタル信号を再生するものであり、再生したベースバンドのデジタル信号をGI除去部14及びシンボルタイミング同期部15に与えるものである。
シンボルタイミング同期部15は、復調部11からベースバンドのデジタル信号を取得し、ベースバンドのデジタル信号における各々のOFDMシンボルの境界(すなわち、ガードインターバル部を取り除くタイミング)を特定するものである。つまり、シンボルタイミング同期部15は、ベースバンドのデジタル信号と既知の特定パターンとを用いて複素相関演算を行ない、その相関値と閾値とを比較し、相関値が閾値を超えた場合に相関ピークを検出する。そして、相関ピークの検出が連続して検出され、所定時間が経過したタイミングでショートシンボルが検出されない場合、その時点でショートプリアンブルからロングプリアンブルに移ったと判断する。シンボルタイミング同期部15は、特定した各OFDMシンボルの境界をGI除去部14に通知する。
また、シンボルタイミング同期部15は、ショートシンボルの終端からの経過時間をカウントし、そのカウント値(すなわち、ショートシンボル終端からの経過時間)を他のブランチのシンボルタイミング同期部25に通知するものである。
GI除去部14は、シンボル間干渉を低減させるため、シンボルタイミング同期部15からの各OFDMシンボルの境界を示す情報(ガードインターバルを取り除くタイミング)に基づいて、復調部11からのベースバンドのデジタル信号からガードインターバル部を除去するものである。GI除去部14は、ガードインターバル除去後のデジタル信号をOFDMシンボル単位でS/P変換部12に与えるものである。
S/P変換部12は、GI除去部14からガードインターバル除去後のOFDMシンボル単位のベースバンドのデジタル信号を取得し、そのOFDMシンボル単位のベースバンドのデジタル信号を直並列変換して、時間方向でL個分(Lは搬送波の数を示す。)の標本値を蓄積し、一括してDFT部13に与えるものである。つまり、S/P変換部12は、時系列的に伝送されてきた直列のデジタル信号をL個の並列回路に分散し、L個のベースバンドのデジタル信号の標本値をDFT部13に与える。
DFT部13は、S/P変換部12からL個のベースバンドのデジタル信号を離散フーリエ変換により、時間軸上の信号波形から周波数軸上の信号成分に変換して、L個の各搬送波(サブキャリア)により変調されていたベースバンド信号を分離するものである。DFT部13は、離散フーリエ変換により得られたL個のベースバンド信号をそれぞれ、ダイバーシチ合成部30−1〜3−Lに与えるものである。
アンテナ部20は、捕捉(受波)した電波を電気信号に変換して復調部21に与えるものである。
復調部21は、アンテナ部20からの信号から搬送波周波数帯域の信号成分を抽出し、その搬送波周波数帯域の信号を復調して、ベースバンドのデジタル信号を再生するものであり、再生したベースバンドのデジタル信号をGI除去部24及びシンボルタイミング同期部25に与えるものである。
シンボルタイミング同期部25は、復調部21からベースバンドのデジタル信号を取得し、ベースバンドのデジタル信号における各々のOFDMシンボルの境界を特定するものである。つまり、シンボルタイミング同期部25は、ベースバンドのデジタル信号と既知の特定パターンとを用いて複素相関演算を行ない、その相関値と閾値とを比較し、相関値が閾値を超えた場合に相関ピークを検出する。そして、相関ピークの検出が連続して検出され、所定時間が経過したタイミングでショートシンボルが検出されない場合、その時点でショートプリアンブルからロングプリアンブルに移ったと判断する。シンボルタイミング同期部25は、特定した各OFDMシンボルの境界をGI除去部24に通知する。
また、シンボルタイミング同期部25は、ショートシンボルの終端からの経過時間をカウントし、そのカウント値(すなわち、ショートシンボル終端からの経過時間)を他のブランチのシンボルタイミング同期部15に通知するものである。
GI除去部24は、シンボル間干渉を低減させるため、シンボルタイミング同期部25からの各OFDMシンボルの境界を示す情報に基づいて、復調部21からのベースバンドのデジタル信号からガードインターバル部を除去するものである。GI除去部24は、ガードインターバル除去後のデジタル信号をOFDMシンボル単位でS/P変換部22に与えるものである。
S/P変換部22は、GI除去部14からガードインターバル除去後のOFDMシンボル単位のベースバンドのデジタル信号を取得し、そのOFDMシンボル単位のベースバンドのデジタル信号を直並列変換して、時間方向でL個分の標本値を蓄積し、一括してDFT部23に与えるものである。つまり、S/P変換部22は、時系列的に伝送されてきた直列のデジタル信号をL個の並列回路に分散し、L個のベースバンドのデジタル信号の標本値をDFT部23に与える。
DFT部23は、S/P変換部22からL個のベースバンドのデジタル信号を離散フーリエ変換により、時間軸上の信号波形から周波数軸上の信号成分に変換して、L個の各搬送波(サブキャリア)により変調されていたベースバンド信号を分離するものである。DFT部23は、離散フーリエ変換により得られたL個のベースバンド信号をそれぞれ、ダイバーシチ合成部30−1〜3−Lに与えるものである。
ダイバーシチ合成部30−1〜30−Lは、2個のブランチのDFT部13及びDFT部23から、離散フーリエ変換されたL個のベースバンド信号を取得し、同じ搬送波周波数(すなわち、同じサブキャリア番号)を所定の方法により合成して、1個の受信信号としてP/S変換部33に与えるものである。ここで、ダイバーシチ合成部30−1〜30−Lによる合成手法は、例えば、選択合成法または最大比合成法などのように種々の既存技術を広く適用することができる。ダイバーシチ合成部30−1〜30−Lにおける処理の詳細な説明は省略する。
P/S変換部33は、ダイバーシチ合成部30−1〜30−LからL個の各搬送波に関するベースバンド信号を並直列変換し、時間方向でL個分の標本値として判定部34に与えるものである。
判定部34は、P/S変換部33からのベースバンド信号に対して復号処理等を行い、元の情報ビット列を再生するものである。
なお、この実施形態では、受信機1のブランチ数が2個の場合を例示しているが、ブランチ数は3個以上であっても良い。その場合でも、各ブランチの構成は、図1に例示する構成と同一又は対応する構成とすることができる。すなわち、各ブランチは、アンテナ部、復調部、シンボルタイミング同期部、GI除去部、S/P変換部12、DFT変換部13を有する。また、ダイバーシチ合成部30−1〜30−Lは、全てのブランチのDFT部からの受信信号を入力するようにする。
また、ブランチ数が3個以上の場合、それぞれのブランチのシンボルタイミング同期部からショートシンボル終端からの経過時間を、他の全てのブランチのシンボルタイミング同期部に通知する。
(A−1−2)復調部の詳細な構成
図2は、実施形態に係る受信機1の復調部11及び21の内部構成を示す内部構成図である。復調部11及び21は、それぞれ同一の構成を備えるものである。
図2において、実施形態に係る復調部11及び21は、バンドパスフィルタ(BPF)101、AGCアンプ102、ダウンコンバータ103、局部発振器104、ローパスフィルタ(LPF)107、アナログ−デジタル(A/D)変換部108、ローパスフィルタ(LPF)105、AGC制御部106を有する。
バンドパスフィルタ(BPF)101は、搬送波周波数の変調周波数を取り出すために、アンテナ部10又はアンテナ部20からの信号を、所望の搬送波周波数を中心とした所定の帯域の信号成分を通過させることにより、搬送波周波数帯域の変調信号を抽出し、その搬送波周波数帯域の変調信号をAGCアンプ102に与えるものである。
AGCアンプ102は、入力レベルに合わせた受信利得を調整するため、バンドパスフィルタ101からの搬送波周波数帯域の変調信号に対して所定の利得を付与し、利得を付与した後の信号をダウンコンバータ103に与えるものである。AGCアンプ102は、AGC制御部106の制御を受けて、搬送波周波数帯域の変調信号に付与する利得を決定している。
なお、この実施形態では、BFP101の出力とダウンコンバータ103への入力との間に、AGCアンプ102を1個だけ設ける場合を例示している。しかし、受信利得を調整することができるのであれば、AGCアンプ102は、別の位置若しくは複数個が配置されるようにしても良い。例えば、図2に例示するAGCアンプ102に加えて、ダウンコンバータ103の出力とLPF107への入力との間、または、LPF107の出力とA/D変換部108への入力との間に、別のAGCアンプを追加して複数個のAGCアンプが配置されるようにしても良い。いずれの場合でも、本発明の一般性を損なうことはない。そのため、この実施形態では、AGCアンプ102をBFP101の出力とダウンコンバータ103への入力との間の1個だけとした場合のみを例示している。
ダウンコンバータ103は、AGCアンプ102からの搬送波周波数帯域の変調信号と局部発振器104からの基準信号とを乗算してベースバンド信号を再生し、ベースバンド信号をLPF105に与えるものである。
なお、この実施形態では、ダウンコンバータ103がダイレクトコンバージョンを想定し、基準信号の周波数を搬送波周波数と同一とすることで、直接ベースバンド信号を再生する場合を例示する。しかし、ダウンコンバータ103は、一旦、搬送波周波数帯域とベースバンドの中間となる周波数帯域の信号に変換後、ベースバンド信号に変換する方法等を適用するようにしても良い。いずれの方法でも、ダウンコンバータは本発明の一般性を損なうことはないため、ここではダウンコンバータ103がダイレクトコンバージョンを行うことを想定して説明する。
ローパスフィルタ(LPF)107は、ダウンコンバータ103からのベースバンド信号を、所定の周波数以下の帯域の信号成分のみを通過させることにより、不要な信号成分を取り除いた信号をA/D変換部108に与えるものである。つまり、LPF107は、受信信号から付加雑音成分を除いた希望信号を抽出するための周波数帯域以下の信号成分を通過させる。LPF107は、アナログフィルタを適用することができるため、その実装の容易さから、希望信号の帯域幅と同一かつ急峻な特性を実現することが困難な場合もあるため、通常は希望信号の帯域よりも少し広い通過帯域幅とすることが望ましい。
A/D変換部108は、LPF107からのアナログ信号を所定の周波数で標本化し、量子化したデジタル信号に変換し、LPF105に出力するものである。
ローパスフィルタ(LPF)105は、A/D変換部108からのデジタル信号を、所定の周波数以下の帯域のみを通過させることにより、不要な成分を取り除いた信号を、GI除去部(図1のGI除去部14又は24)及びシンボルタイミング同期部(図1のシンボルタイミング同期部15又は25)と、AGC制御部106とに与える。LPF105は、例えば、FIR(有限インパルス応答)等によるデジタルフィルタを用いることができ、LPF107を通過した希望信号よりも広い帯域幅を持つ信号を、希望信号の帯域幅に制限することができる。
AGC制御部106は、受信機1内の各構成部の入出力信号のレベル値(電力値)が所定の範囲に維持されるように、AGCアンプ102の利得を決定し、その利得をAGCアンプ102に与えるものである。つまり、AGC制御部106は、各構成部(各回路素子)が出力可能な電圧値の上限値及び下限値を保持しており、信号レベル値が上限値よりも大きくなったり又は下限値よりも小さくなったりすると、信号の振幅が各構成部(各回路素子)の電圧値と比例しなくなり、信号波形を正しく再現できなくなる。従って、AGC制御部106は、信号レベル値が上限値と下限値の間の適切な値に維持するためにAGCアンプ102の利得を決定する。具体的には、AGC制御部106は、A/D変換部108からのベースバンド信号のレベル値(電力値)を観測し、ベースバンド信号のレベルを平滑化するため、所定時間内の積分値を計算する。そして、この積分値が所定の目標値に収束するように、AGC制御部106はAGCアンプ102の利得を決定する。
なお、この実施形態では、AGC制御部106がLPF105からの出力信号を入力して、その信号の電力値の積分値を計算する場合を例示する。しかし、AGC制御部106は、BPF101の出力信号、AGCアンプ102の出力信号、ダウンコンバータ103の出力信号、LPF107の出力信号、又は、A/D変換部108の出力信号のいずれかを入力し、その信号の電力値の積分値を計算するようにしても良い。上記のように、いずれの出力信号がAGC制御部106に入力される場合でも、AGC制御部106は本発明の一般性を損なうことはないため、ここでは電力の積分値が計算される受信信号(AGC制御部106への入力信号)をLPF105の出力信号とした場合を例示する。
(A−1−3)シンボルタイミング同期部の詳細な構成
図3は、実施形態に係る受信機1のシンボルタイミング同期部15又は25の内部構成を示す構成図である。シンボルタイミング同期部15又は25は、それぞれ同一の構成を備えるものである。
図3において、実施形態に係るシンボルタイミング同期部15又は25は、相関部201、ピーク検出部202、カウンタ部203、タイミング制御部204を有する。
相関部201は、復調部11又は21からの受信信号と、相関部201に備えられたショートプリアンブル信号(特定パターン信号)との相関値を演算し、その相関値をピーク検出部202に与える。相関部201によるシンボルタイミングの同期方法は、自己相関型や相互相関型などを適用することができるが、いずれの方法でも本発明の一般性を損なうことはないため、ここでは相互相関型を想定した場合を例示する。
ピーク検出部202は、相関部201により演算された相関値と所定の閾値とを比較し、前記相関値が前記閾値よりも大きい場合、ピーク(相関ピークともいう。)を検出したと判定するものである。
カウンタ部203は、ピーク検出位置(ショートシンボル終端)からの経過時間を観測するものである。カウンタ部203は、ピーク検出位置からの経過時間(すなわちカウント値)を、タイミング制御部204と他のブランチのシンボルタイミング同期部に与えるものである。なお、カウンタ部203の詳細な処理動作については動作説明の項で詳細に説明する。
タイミング制御部204は、カウンタ部203により観測されたピーク検出位置からの経過時間(すなわち、自身のブランチのカウンタ部203のカウント値)と、他のブランチのシンボルタイミング同期部において観測されたピーク検出位置からの経過時間(すなわち、他のブランチのシンボルタイミング同期部のカウンタ部203のカウント値)とを取得し、これらカウント値に基づいて、受信信号のプリアンブルにおけるショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界を判定し、それぞれのOFDMシンボルの境界をGI除去部14に通知するものである。なお、タイミング制御部204の詳細な処理動作については動作説明の項で詳細に説明する。
(A−2)実施形態の動作
(A−2−1)全体動作
まず、この実施形態に係る受信機1に対向する送信機において、情報ビット列がベースバンド(基底帯域)で符号化され、搬送波周波数(高周波)帯域に変調される。その変調信号は、送信機のアンテナ部から空間に放射され、受信機1のアンテナ部10及びアンテナ部20に捕捉される。
受信機1において、各ブランチのアンテナ部10及びアンテナ部20により捕捉された電波は電気信号に変換されて復調部11及び復調部21に与えられる。各ブランチの復調部11及び復調部21では、搬送波周波数帯域の変調信号が抽出されて、ベースバンドのデジタル信号が再生され、ベースバンド信号が、GI除去部14及び24と、シンボルタイミング同期部15及び25とに与えられる。
各ブランチのシンボルタイミング同期部15及び25では、復調部11及び21からのベースバンドのデジタル信号における、個々のOFDMシンボルの境界が特定されてGI除去部14及び24に通知される。
一方、各ブランチのGI除去部14及び25では、各ブランチのシンボルタイミング同期部15及び25からOFDMシンボルの境界を示す情報に基づいて、ガードインターバル部が除去され、ガードインターバルが除去されたベースバンド信号がOFDMシンボル単位でS/P変換部12及び22に与えられる。
各ブランチのS/P変換部12及び22において、ガードインターバル部が除去されたOFDMシンボル単位でのベースバンドのデジタル信号は、直並列変換により、時間方向でL個分の標本値を蓄積し、一括してDFT部13及び23に入力される。
DFT部13及び23に入力されたL個のベースバンド信号は、離散フーリエ変換によってL個の各搬送波(サブキャリア)周波数により変調されていたベースバンド信号に分離され、それぞれ別のダイバーシチ合成部30−1〜30−Lに入力される。
ダイバーシチ合成部30−1〜30−Lでは、同じ搬送波周波数(同じサブキャリア番号)の2個のブランチからの受信信号を所定の方法により合成し、1つの受信信号としてP/S変換部33に出力する。
並直列変換部33に入力されたL個の各搬送波に関するベースバンド信号は、並直列変換され、時間方向でL個分の標本値として、判定部34に入力される。
判定部34に入力されたベースバンド信号は、復号等の処理を行うことにより、元の情報ビット列として再生される。
(A−2−2)ブランチ間の時間差がない場合のシンボルタイミング同期部15又は25の動作
次に、タイミング制御部204が自ブランチの受信信号において、ショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界を検出するが、各ブランチがショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界を検出した時間のうち、最も遅い時間を、全てのブランチのショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界と判断する処理を説明する。
まず、ここでは、各ダイバーシチブランチのアンテナ部10及びアンテナ部20に入力される信号の時間差はないと仮定する場合を説明する。
図4は、この実施形態に係る受信機1におけるシンボルタイミング同期部15又は25の処理動作を示すフローチャートである。
以降の説明では、時間は標本化周期で正規化されたものとする。すなわち、実時間をtとすると、正規化された時間は、t/(標本化周期)となる。また、ショートシンボル長、ロングプリアンブルのGI長をそれぞれ、Tp,TGI2とする。このとき、ショートシンボル長TpとロングプリアンブルのGI長TGI2とは、TGI2>Tpの関係であり、例えばIEEE802.11a/g規格の場合、TGI2=2Tpの関係とする。
相関部201において、復調部11からのベースバンドのデジタル信号が入力されると(S1)、相関部201は、ベースバンドのデジタル信号と、相関部201に備えられているショートプリアンブル信号の特定パターン(例えば、ショートシンボルの繰り返しパターン)との相関値を求める(S2)。
ピーク検出部202は、相関部201により演算された相関値が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(S3)。そして、前記相関値が前記閾値よりも大きいと判定した場合、ピーク検出部202はピークを検出したと判定し、ピーク検出信号をカウンタ部203に出力する(S4)。また、前記相関値が前記閾値以下と判定した場合、前記受信信号の相関値演算範囲の開始位置及び終了位置をそれぞれ1クロック(1標本化周期)進め、再び、前記受信信号と、相関部201に備えられたショートプリアンブル信号との相関値を演算する(S2)。
カウンタ部203は、ピーク検出部202からピーク検出信号が入力されると(S4)、カウンタ値を初期化し、その値を「1」に設定する(S5)。
続いて、カウンタ部203は、ショートシンボル長Tp経過するまで、カウンタ値をカウントする。すなわち、1クロック(=標本化周期)毎に「1」ずつ増加することで、ショートシンボル長Tp経過後にカウンタ203のカウンタ値はTpとなる(S6)。この時点で、カウンタ部203は、ピーク検出部202からのピーク検出信号が再び入力されたか否かを判定する(S7)。
図7は、カウンタ部203における動作を説明する説明図である。図7に示すように、ピーク検出信号がピーク検出回路部203に通知されると(S301)、カウンタ部203はカウンタ値を「1」に初期化する(S302)。
S7において、ピーク検出部202からのピーク検出信号がカウンタ部203に再び入力された場合、過去の「2Tp」の間に2回連続でショートシンボルを受信したと判断する。
すなわち、図7のように、ピーク検出信号がカウンタ部203に入力すると(S304)、現在の時間を「0」とした場合に「−2Tp〜Tp」の受信信号はショートシンボルであると判断し(S304)、また、「−Tp〜0」の受信信号もショートシンボルであると判断する(S305)。この場合、引き続きショートシンボルを受信するか否かを判定するため(すなわち、続くTpの間(例えば、現在の時間を「0」とすると、「0〜Tp」の期間)の受信信号がショートシンボルであるか否かを判定するため)、カウンタ部203は、カウンタを初期化し、カウンタ値を「1」に設定する(S5)。
一方、S7において、ピーク検出部202からピーク検出信号がカウンタ部203に入力されない場合には、次のような動作が行なわれる。
図8及び図9は、カウンタ部203における動作を説明する説明図である。S7以降のカウンタ部203の動作を、図8及び図9の説明図も用いて説明する。
S7において、ピーク検出部202からのピーク検出信号がカウンタ部203に入力されない場合(S401)、過去「Tp」の間(現在の時間を「0」とすると、「−Tp〜0」の期間)の受信信号はショートシンボルではないと判断し(S402)、これよりも前のTpの間(現在の時間を「0」とすると、「−2Tp〜−Tp」の期間)の受信信号が連続したショートシンボルのうち最後のショートシンボルであると判断する(S403)。すなわち、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は、現在からTp遡った時間(現在の時間を「0」とすると、「−Tp」の時点)であると判断する(S404)。
この場合、カウンタ部203は、カウンタ値のカウントを継続し、カウンタ値を初期化したタイミングを基点とした場合、ロングプリアンブルのGI長TGI2が経過するまでカウンタ値をカウントする(S405)。すなわち、カウンタ部203は、現在を基点とした場合、「TGI2−Tp」が経過するまでカウンタ値をカウントする。具体的には、1クロック毎に「1」増加することで、TGI2経過後にカウンタ部203のカウンタ値は「TGI2」となる(S8)。
ここで、上述したように、タイミング制御部204には、他ブランチのシンボルタイミング同期部内のカウンタ部203のカウンタ値が与えられる。
タイミング制御部204は、他のブランチのシンボルタイミング同期部のカウンタ部203のカウンタ値が「TGI2」であるか否かを判定する(S100)。
例えば、自身がシンボルタイミング同期部15の場合、他ブランチのシンボルタイミング同期部25内のカウンタ部203のカウンタ値が「TGI2」であるかを判定する。また例えば、自身がシンボルタイミング同期部25の場合、他ブランチのシンボルタイミング同期部15内のカウンタ部203のカウンタ値が「TGI2」であるかを判定する。これは、自ブランチよりも遅くショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界を検出することになる他ブランチが存在するか否かを判定するためである。
S100において、他ブランチのシンボルタイミング同期部内のカウント値が「TGI2」であると判定した場合(図8のS406)、他ブランチではロングプリアンブルとショートプリアンブルの境界を検出後、ロングプリアンブルのGI長「TGI2」以上経過しているということであり、具体的には、以下の[1]または[2]であると判断する。
[1]他ブランチも自ブランチと同様、過去TGI2の間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2〜0」の期間)の受信信号はショートシンボルではなく、これよりも前のTpの間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2−Tp」〜「−TGI2」の期間)の受信信号が連続したショートシンボルのうち最後のショートシンボルであると判断する。すなわち、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は現在からTGI2遡った時間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2」の時点)である(図8のS407)。
[2]他ブランチでは1つ前のフレームの受信完了後、一度もピークが検出されていないと判断する。この場合、S2とS3の間を繰り返し移行するため、S5でのカウンタ値の初期化はされず、前回フレーム受信時にS8で最後に設定されたカウンタ値「TGI2」を維持していると判断する。なお、受信機起動時(すなわち最初のフレームを受信する前)に、カウンタ部203のカウンタ値は「TGI2」に設定しておくものとする。したがって、自ブランチが検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は正しいとみなし、S9に移行する。
一方、S100において、他ブランチのシンボルタイミング同期部内のカウント値が「TGI2」でないと判定した場合(図9のS407)、他ブランチでは、ロングプリアンブルとショートプリアンブルの境界を検出後の経過時間は、TGI2未満であるということである。つまり、過去「2Tp」だけ遡った時間からTpの間(現在の時間を「0」とすると、「−2Tp〜−Tp」の期間)の受信信号はショートシンボルであると判断する(図9のS408)。このとき、他ブランチのシンボルタイミング同期部内のカウンタ部203のカウンタ値は「Tp(≠TGI2)」である。すなわち、ショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界は、過去Tp遡った時間(現在の時間を「0」とすると、「−Tp」)以降であると判断する。
これは、自ブランチがショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界であると判断した時間(現在の時間を「0」とすると、「−2Tp」)よりも少なくともTpだけ後となるため、他ブランチが検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界の方が正しい(すなわち、自ブランチは外部環境およびAGC動作による受信電波信号の変動により、ショートシンボルを検出できなかった)とみなし、自ブランチより少なくともTpだけ遅い他ブランチが検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界を自ブランチのショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界とする。そのため、自ブランチのカウンタ部203のカウンタ値をTpだけ減少、カウンタ値を「TGI2−Tp」に設定する(S101)。
続いて、S8に移行する。S8において、カウンタ部203は、カウンタ値「TGI2−Tp」からカウンタ値「TGI2」までの期間「Tp」の間、再びカウントすることで、自ブランチのショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界をTpだけ遅らせる。
S9において、タイミング制御部204は、現在の受信信号の位置が、ロングプリアンブル内のGIとロングシンボルとの境界であることをGI除去部14及び24に通知し、GI除去部14は、現在からロングシンボル長経過するまでの復調部11からの受信信号の標本化値を、1個目のロングシンボルの標本化値として取得し、S/P変換部12に出力する(S9)。
以降は、2個目のロングシンボル、1個目のデータ部(IEEE802.11a/g規格の場合、1個目のデータ部はSIGNAL部)、2個目のデータ部、…、最後のデータ部の順に、ガードインターバルを除いたOFDMシンボル単位で、S/P変換部12に出力する。フレームの受信完了後(最後のデータ部の受信後)は、S1に移行し、再び処理を繰り返す。
(A−2−3)ブランチ間の時間差を有する場合のシンボルタイミング同期部15又は25の動作
図5は、実施形態に係る受信機1におけるシンボルタイミング同期部15又は25の処理動作を示すフローチャートである。
ここでは、受信機1のダイバーシチブランチの各アンテナ部10及び20の位置が異なることにより、電波到来時刻に差が生じるため、アンテナ部10及びアンテナ部20に入力される信号の時間差Tdiffが生じる場合を考える。
すなわち、|Tdiff|≦Tdiff,max(0≦Tdiff,max<(TGI2−Tp)/2)とし、Tdiff>0の場合、アンテナ部10に入力される信号の方がアンテナ部20に入力される信号よりも遅いものとする。一方、Tdiff<0の場合、アンテナ部10に入力される信号の方がアンテナ部20に入力される信号よりも早いものとする。
なお、Tdiff=0の場合、アンテナ部10及びアンテナ部20に入力される信号の時間差はないことを意味しており、結果的には図4に示すフローと同様の処理となる。
図5において、処理S1〜S8までの動作は、図4の処理S1〜S8までの動作と同一又は対応するものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
S102において、タイミング制御部204は、他ブランチのシンボルタイミング同期部内のカウンタ部203のカウンタ値が「TGI2−Tdiff,max」以上であるか否かを判定する(S102)。
例えば、自身がシンボルタイミング同期部15の場合、他のブランチのシンボルタイミング同期部25内のカウンタ203のカウンタ値が「TGI2−Tdiff,max」以上であるか否かを判定する。また、自身がシンボルタイミング同期部25の場合、他のブランチのシンボルタイミング同期部15内のカウンタ203のカウンタ値が「TGI2−Tdiff,max」以上であるか否かを判定する。
これは、自ブランチの信号と他ブランチとの信号との間に発生し得る時間差Tdiffを考慮した上で、自ブランチよりも遅くショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界を検出することになる他ブランチが存在するか否かを判定する。
S102において、他ブランチのシンボルタイミング同期部内のカウンタ値が「TGI2−Tdiff,max」以上であると判定した場合、他ブランチではロングプリアンブルとショートプリアンブルの境界を検出後、「TGI2−Tdiff,max」以上経過しているということであり、具体的には、以下の[1]または[2]であると判断する。
[1]例えば、自ブランチがブランチ51とし、他ブランチがブランチ52とする。この場合、他ブランチ52は、過去「TGI2+Tdiff」の間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2−Tdiff〜0」の期間)の受信信号はショートシンボルではなく、これよりも前の「Tp」の間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2−Tdiff−Tp〜−TGI2−Tdiff」の期間)の受信信号が連続したショートシンボルのうち最後のショートシンボルである。すなわち、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は、現在から「TGI2+Tdiff(≧TGI2−Tdiff,max)」遡った時間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2−Tdiff」)である。
また例えば、自ブランチがブランチ52とし、他ブランチがブランチ51とする。この場合、他ブランチ51は、過去「TGI2−Tdiff」の間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2+Tdiff〜0」の期間)の受信信号はショートシンボルではなく、これよりも前の「Tp」の間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2+Tdiff−Tp〜−TGI2+Tdiff」の期間)の受信信号が連続したショートシンボルのうち最後のショートシンボルである。すなわち、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は、現在から「TGI2−Tdiff(≧TGI2−Tdiff,max)」遡った時間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2+Tdiff」)である。
いずれの場合でも、アンテナ部10及びアンテナ部20に入力される信号の時間差Tdiffがない(すなわち、Tdiff=0とすると)、他ブランチも自ブランチと同様、過去TGI2の間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2〜0」の期間)の受信信号はショートシンボルではなく、これよりも前のTpの間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2−Tp〜−TGI2」の期間)の受信信号が連続したショートシンボルのうち最後のショートシンボルとなる。すなわち、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は、現在から「TGI2」遡った時間(現在の時間を「0」とすると、「−TGI2」)である。
[2]他ブランチでは1つ前のフレームの受信完了後、一度もピークが検出されていないと判断する。この場合、S2とS3の間を繰り返し移行するため、S5でのカウンタの初期化はされず、前回フレーム受信時にS8で最後に設定された値TGI2を維持している。なお、受信機起動時(最初のフレームを受信する前)に、カウンタ203の値はTGI2に設定しておくものとする。
したがって、自ブランチが検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は正しいとみなし、S9に移行する。
S102において、他ブランチのシンボルタイミング同期部内のカウンタ値がTGI2−Tdiff,max以上ではないと判定した場合、他ブランチでは、ロングプリアンブルとショートプリアンブルの境界を検出後の経過時間は、「TGI2−Tdiff,max未満」であるということであり、具体的には、以下のようになる。
例えば、自ブランチがブランチ51とし、他ブランチがブランチ52とする。この場合、他ブランチ52は、過去「2Tp+Tdiff」遡った時間から「Tp」の間(現在の時間を「0」とすると、「−2Tp−Tdiff〜−Tp−Tdiff」の期間)の受信信号はショートシンボルである。このとき、他ブランチのシンボルタイミング同期部内のカウンタ部203のカウンタ値は、「Tp+Tdiff(<TGI2−Tdiff,max)」である。すなわち、ショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界は、過去「Tp+Tdiff」遡った時間(現在の時間を「0」とすると、「−Tp−Tdiff」)以降であると判断する。
これは、自ブランチ51がショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界であると判断した時間(現在の時間を「0」とすると、「−2Tp」)よりも、少なくとも「Tp−Tdiff」だけ後となる。そのため、他ブランチ52が検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界の方が正しいとみなすことでき、自ブランチ51は例えば外部環境およびAGC動作による受信電波信号の変動により、ショートシンボルを検出できなかったと考えられる。そのため、自ブランチ51より少なくとも「Tp−Tdiff」だけ遅い他ブランチ52が検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界に、自ブランチの信号と他ブランチの信号との時間差τ=Tdiffを加算した位置自ブランチ51のショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界することできる。
このとき、時間差τ>0の場合、自ブランチ51の信号の方が他ブランチ52の信号よりも遅いものとし、又時間差τ<0の場合、自ブランチ51の信号の方が他ブランチ52の信号よりも早いものとする。また、τ=0の場合、両ブランチの信号の時間差はないものとする。従って、自ブランチ51のショートカウンタ203のカウンタ値を「Tp」減少し、カウンタ値を「TGI2−Tp」に設定する(S101)。
続いて、S8に移行し、カウンタ部203は、カウンタ値「TGI2−Tp」から「TGI2」までの期間「Tp」の間、再びカウントすることで、自ブランチ51のショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界をTpだけ遅らせることができる。
また例えば、自ブランチがブランチ52とし、他ブランチがブランチ51とする。この場合、他ブランチ51は、過去「2Tp−Tdiff」遡った時間から「Tp」の間(現在の時間を「0」とすると、「−2Tp+Tdiff〜−Tp+Tdiffの期間)の受信信号はショートシンボルである。このとき、他ブランチ51のシンボルタイミング同期部内のカウンタ部203のカウンタ値は、「Tp−Tdiff(<TGI2−Tdiff,max)」である。すなわち、ショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界は、過去「Tp−Tdiff」遡った時間(現在の時間を「0」とすると、「−Tp+Tdiff」)以降であると判断する。これは、自ブランチ52がショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界であると判断した時間(現在の時間を「0」とすると、「−2Tp」)よりも、少なくとも「Tp+Tdiff」だけ後となるため、他ブランチ51が検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界の方が正しいとみなす。自ブランチ52は例えば外部環境およびAGC動作による受信電波信号の変動により、ショートシンボルを検出できなかったと考えられる。自ブランチ52より少なくとも「Tp+Tdiff」だけ遅い他ブランチが検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界に、自ブランチ52の信号と他ブランチの信号との時間差τ=−Tdiffを加算した位置とする。時間差τの符号の定義は、先に述べた通りであるため、先の例とは自ブランチ52と他ブランチ51が入れ替わることにより、符号は逆となる。すなわち、自ブランチ52が検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界よりもTp(=(Tp+Tdiff)+τ)だけ遅らせた位置を、自ブランチ52のショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界とする。そのため、自ブランチ52のカウンタ部203のカウンタ値を「Tp」だけ減少し、カウンタ値を「TGI2−Tp」に設定する(S101)。
続いて、S8に移行し、カウンタ部203は、カウンタ値「TGI2−Tp」から「TGI2」までの期間「Tp」の間、再びカウントすることで、自ブランチ51のショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界をTpだけ遅らせることができる。
したがって、いずれのブランチの場合でも、アンテナ部10及びアンテナ部20に入力される信号の時間差にかかわりなく(すなわち、時間差Tdiffの値にかかわりなく)、自ブランチが検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界よりもTpだけ遅らせた位置を、自ブランチのショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界とすることができる。
以上のようにして、自ブランチよりも遅いショートシンボル周期で、他ブランチが検出したショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界の位置に、自ブランチの受信信号と他ブランチの受信信号との時間差を加えることで、自ブランチのショートプリアンブルとロングプリアンブルの境界の位置とすることが可能である。
また、自ブランチの受信信号と他ブランチの受信信号との時間差は、カウンタ203のカウンタ値により推定されるため、ショートシンボルの終端時間より、自ブランチの受信信号と他ブランチの受信信号との時間差を推定しているといえる。
(A−2−4)受信機1が3個以上のブランチを有する場合のシンボルタイミング同期部15又は25の動作
以上、ブランチ数が2個の場合のシンボルタイミング同期部の動作について説明したが、ブランチ数が3個以上の場合も、同様の動作となる。
図6は、実施形態に係る受信機1が、3個以上のブランチ数を備える場合のシンボルタイミング同期部の処理動作を示すフローチャートである。
図6において、処理S1〜S8までの動作は、図4及び図5の処理S1〜S8までの動作と同一又は対応するものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
S102において、タイミング制御部204は、他の全てのブランチのシンボルタイミング同期部内のカウンタ部203のカウンタ値が「TGI2−Tdiff,max」以上であるか否かを判定する(S103)。このように、自ブランチが他の全てのブランチのシンボルタイミング同期部のカウンタ部203のカウンタ値を判定し、それ以降の動作は図5と同様の処理を行うことにより、ブランチ数が3個以上の場合でも適用可能となる。
(A−2−5)シンボルタイミング同期の動作例
図10は、この実施形態に係るシンボルタイミング同期部15及び25によるシンボルタイミング同期の動作例を説明する説明図である。
図10(A)は、受信機1のブランチ51における受信信号と相関値との対応関係を示しており、図10(B)は、受信機1のブランチ52における受信信号と相関値との対応関係を示している。
図10(A−1)は、ブランチ51において受信された受信信号の構成を示したものである。受信信号は、ショートプリアンブル、ロングプリアンブル、OFDMシンボルを有している。ショートプリアンブルは、「p1」から「p10」のショートシンボルからなり、各ショートシンボルのシンボル長は「Tp」とする。ロングプリアンブルは、ロングプリアンブルのガードインターバルである「GI2」と、ロングシンボルである「P1」及び「P2」を有している。ロングプリアンブルのガードインターバル「GI2」の時間長は「TGI2」とする。OFDMシンボルは、ガードインターバルである「GI」、データ部「D」を有する。例えばIEEE802.11a/g規格の場合、最初の「D」はSIGNAL部である。OFDMシンボルは、それ以降、同じ長さのOFDMシンボルが続く。なお、図10(B−1)に示す構成も、図10(A−1)の構成と同様である。
図10(A−2)は、図10(A−1)のブランチ51の受信信号に対応する相関値を示す。図10(A−2)は、横軸が時間を示し、縦軸が相関値を示す。また、図10(A−2)に記載の点線は、ピークを検出するための閾値Cthである。なお、図10(B−2)は、図10(B−1)のブランチ52の受信信号に対応する相関値を示す。
図10では、受信機1の各ブランチのアンテナ部10及びアンテナ部20に入力される信号に時間差はない場合を例示している。
まず、ブランチ51における動作を説明する。図10(A)において、ブランチ51におけるショートシンボル「p1」の入力開始位置の時間を「0」としている。ショートシンボル「p1」の信号が入力されてから、カウンタ部203がカウントを開始し、時間「Tp」経過後に、ショートシンボル「p1」の相関値が閾値Cthを超え、ピークが検出されている。その後、ショートシンボル「p2」、「p3」、…、「p7」に関しても、ショートシンボル「p1」と同様にしてピークが検出されている。すなわち、p1の開始位置の時間を「0」とした場合に時間「2Tp」、「3Tp」,…,「7Tp(=tend,1)」でピークが検出されている。
ブランチ51において、ショートシンボル「p1」の入力開始位置の時間を「0」とした場合の時間「8Tp(=tend,1+Tp)」の時点で、ピークが検出されない。そのため、ブランチ51のカウンタ部203はカウンタ値「TGI2」までカウントする。すなわち、カウンタ部203は、時間「9Tp(=tend,1+TGI2)」までカウントする。
このとき、ブランチ51のタイミング制御部204は、ブランチ52のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2」であるか否かを判定すると、ブランチ52では、ショートシンボル「p9」の相関値のピークを検出している。そのため、ブランチ52のカウンタ部203のカウンタ値は「Tp」であり「TGI2」ではない。従って、ブランチ51では、時間「8Tp」の区間の信号がショートシンボル「p8」であると判断する。
次に、ブランチ51では、時間「10Tp(=tend,1+Tp+TGI2)」の時点でも、タイミング制御部204が、ブランチ52のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2」であるか否かを判定する。この場合も、ブランチ52では、ショートシンボル「p10」の相関値のピークを検出している。そのため、ブランチ52のカウンタ部203のカウンタ値は「Tp」であり、「TGI2」ではない。従って、ブランチ51では、時間「9Tp」の区間の信号がショートシンボル「p9」であると判断する。
その後、ブランチ51では、時間「11Tp(=tend,1+2Tp+TGI2)」の時点でも、タイミング制御部204が、ブランチ52のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2」であるか否かを判定する。この場合、ブランチ52では、相関値のピークは検出されていないが、ブランチ52のカウンタ部203のカウンタ値は「Tp」であり、「TGI2」ではない。
更に、ブランチ51において、時間「12Tp(=tend,1+3Tp+TGI2)」の時点で、タイミング制御部204が、ブランチ52のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2」であるか否かを判定する。このとき、他ブランチ52のカウント値は「TGI2」である。そのため、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は、時間「10Tp」の時点であると判断する。そして、その後、ロングプリアンブルを用いた同期が行なわれ、GI除去部14がガードインターバルを除去し、OFDMシンボルがOFDMシンボル単位でS/P変換部12に与えられる。
次に、ブランチ52における動作を説明する。ここでも、説明を容易にするため、便宜的にブランチ51におけるショートシンボル「p1」の入力開始位置の時間を「0」として説明する。
ブランチ52では、時間「5Tp」の時点で、ショートシンボル「p5」の信号が入力されてから、カウンタ部203がカウントを開始し、時間「Tp」経過後に、ショートシンボル「p5」の相関値が閾値Cthを超え、ピークが検出されている。その後、ショートシンボル「p6」、「p7」、…、「p10」に関しても、ショートシンボル「p5」と同様にしてピークが検出されている。すなわち、ブランチ51の「p1」の入力開始位置の時間を「0」とした場合に時間「5Tp」、「6Tp」,…,「10Tp(=tend,2)」でピークが検出されている。
ブランチ52において、ショートシンボル「p1」の入力開始位置の時間を「0」とした場合の時間「11Tp(=tend,2+Tp)」の時点で、ピークが検出されない。そのため、ブランチ51のカウンタ部203はカウンタ値「TGI2」までカウントする。すなわち、カウンタ部203は、時間「12Tp(=tend,2+TGI2)」までカウントする。
更に、ブランチ52において、時間「12Tp(=tend,2+TGI2)」の時点で、タイミング制御部204が、ブランチ51のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2」であるか否かを判定する。このとき、他ブランチ51のカウント値は「TGI2」である。そのため、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は、時間「10Tp(=tend,1+Tp+TGI2)」の時点であると判断する。そして、その後、ロングプリアンブルを用いた同期が行なわれ、GI除去部14がガードインターバルを除去し、OFDMシンボルがOFDMシンボル単位でS/P変換部12に与えられる。
図11は、この実施形態に係るシンボルタイミング同期部15及び25によるシンボルタイミング同期の動作例を説明する説明図である。図11では、アンテナ部10及びアンテナ部20に入力される信号の時間差があり、その値はTdelay(0<Tdelay<Tdiff,max)と仮定する。
図11(A)は、受信機1のブランチ51における受信信号と相関値との対応関係を示しており、図11(B)は、受信機1のブランチ52における受信信号と相関値との対応関係を示している。
まず、ブランチ51における動作を説明する。図10(A)において、ブランチ52におけるショートシンボル「p1」の入力開始位置の時間を「0」としている。ショートシンボル「p1」の信号が入力されてから、カウンタ部203がカウントを開始し、時間「Tp」経過後に、ショートシンボル「p1」の相関値が閾値Cthを超え、ピークが検出されている。その後、ショートシンボル「p2」、「p3」、…、「p7」に関しても、ショートシンボル「p1」と同様にしてピークが検出されている。すなわち、p1の開始位置の時間を「Tdelay」とした場合に時間「Tdelay+2Tp」、「Tdelay+3Tp」,…,「Tdelay+7Tp(=tend,1)」でピークが検出されている。
ブランチ51において、ショートシンボル「p1」の入力開始位置の時間を「Tdelay」とした場合の時間「Tdelay+8Tp(=tend,1+Tp)」の時点で、ピークが検出されない。そのため、ブランチ51のカウンタ部203はカウンタ値「TGI2」までカウントする。すなわち、カウンタ部203は、時間「Tdelay+9Tp(=tend,1+TGI2)」までカウントする。
このとき、ブランチ51のタイミング制御部204は、ブランチ52のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2−Tdiff.max」以上であるか否かを判定すると、ブランチ52では、ショートシンボル「p9」の相関値のピークを検出している。そのため、ブランチ52のカウンタ部203のカウンタ値は「Tdelay」であり「TGI2−Tdiff.max」以上ではない。従って、ブランチ51では、時間「Tdelay+8Tp」の区間の信号がショートシンボル「p8」であると判断する。
次に、ブランチ51では、時間「Tdelay+10Tp(=tend,1+Tp+TGI2)」の時点でも、タイミング制御部204が、ブランチ52のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2−Tdiff.max」以上であるか否かを判定する。この場合も、ブランチ52では、ショートシンボル「p10」の相関値のピークを検出している。そのため、ブランチ52のカウンタ部203のカウンタ値は「Tdelay」であり、「TGI2−Tdiff.max」以上ではない。従って、ブランチ51では、時間「Tdelay+9Tp」の区間の信号がショートシンボル「p9」であると判断する。
その後、ブランチ51では、時間「Tdelay+11Tp(=tend,1+2Tp+TGI2)」の時点でも、タイミング制御部204が、ブランチ52のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2−Tdiff.max」以上であるか否かを判定する。この場合、ブランチ52では、相関値のピークは検出されていないが、ブランチ52のカウンタ部203のカウンタ値は「Tp+Tdelay」であり、「TGI2−Tdiff.max」以上ではない。従って、ブランチ51では、時間「Tdelay+10Tp」の区間の信号がショートシンボル「p10」であると判断する。
更に、ブランチ51において、時間「Tdelay+12Tp(=tend,1+3Tp+TGI2)」の時点で、タイミング制御部204が、ブランチ52のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2−Tdiff.max」以上であるか否かを判定する。このとき、他ブランチ52のカウント値は「TGI2」であり、「TGI2−Tdiff.max」以上となる。そのため、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は、時間「Tdelay+10Tp(=tend,1+Tp+TGI2)」の時点であると判断する。そして、その後、ロングプリアンブルを用いた同期が行なわれ、GI除去部14がガードインターバルを除去し、OFDMシンボルがOFDMシンボル単位でS/P変換部12に与えられる。
次に、ブランチ52における動作を説明する。ここでも、説明を容易にするため、便宜的にブランチ52におけるショートシンボル「p1」の入力開始位置の時間を「0」として説明する。
ブランチ52では、時間「5Tp」の時点で、ショートシンボル「p5」の信号が入力されてから、カウンタ部203がカウントを開始し、時間「Tp」経過後に、ショートシンボル「p5」の相関値が閾値Cthを超え、ピークが検出されている。その後、ショートシンボル「p6」、「p7」、…、「p10」に関しても、ショートシンボル「p5」と同様にしてピークが検出されている。すなわち、ブランチ51の「p1」の入力開始位置の時間を「0」とした場合に時間「5Tp」、「6Tp」,…,「10Tp(=tend,2)」でピークが検出されている。
ブランチ52において、ショートシンボル「p1」の入力開始位置の時間を「0」とした場合の時間「11Tp(=tend,2+Tp)」の時点で、ピークが検出されない。そのため、ブランチ51のカウンタ部203はカウンタ値「TGI2」までカウントする。すなわち、カウンタ部203は、時間「12Tp(=tend,2+TGI2)」までカウントする。
更に、ブランチ52において、時間「12Tp(=tend,2+TGI2)」の時点で、タイミング制御部204が、ブランチ51のカウンタ部203からのカウンタ値が「TGI2−Tdiff.max」以上であるか否かを判定する。このとき、他ブランチ51のカウント値は「TGI2」である。そのため、ショートプリアンブルとロングプリアンブルとの境界は、時間「10Tp」の時点であると判断する。そして、その後、ロングプリアンブルを用いた同期が行なわれ、GI除去部14がガードインターバルを除去し、OFDMシンボルがOFDMシンボル単位でS/P変換部12に与えられる。
(A−3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、電波状況の悪い場合でも、シンボルタイミング同期の誤り(誤同期、同期不検出)を低減可能であるという効果が得られる。
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用することができる。
(B−1)上述した実施形態において、図4及び図5のフローチャートは、本発明の特徴的な動作を明確にするために、シンボルタイミングの同期条件に関して、以下の3個の制約を設けて説明した。
[a]1回でもピークを検出すれば、シンボルタイミング同期が確立したとみなす。
[b]ピーク検出からTp経過後、ピークを検出できない場合(ショートシンボルが連続して検出されない場合)、ロングシンボルに移行したとみなす。
[c]ピーク検出の判定タイミングは、前回のピーク検出からTp経過時のみである(これ以外のタイミングでピークが検出されても、無視される)。
しかしながら、本発明は、シンボルタイミング同期に関して、詳細な条件を設定するようにしても良い。
[a]において、例えば、シンボルタイミング同期が確立したとみなすピーク検出回数を連続でn回(n≧2の整数)とするには、S7とS8の間に、「ピーク検出回数はn回以上?」の判定条件を入れ、Yesの場合、S8に移行し、Noの場合、S2に移行すればよい。
また、[b]において、例えば、ショートシンボルの検出が1回抜けても構わないとするには、S7とS8の間に、「2Tpまでカウント」のステップを入れ、その後、「ピーク検出信号を入力?」の判定条件をいれ、Yesの場合、S5に移行し、Noの場合、S8に移行すればよい。
また、[c]において、例えば、ピーク検出の判定タイミングは、前回のピーク検出からTp経過時の前後δtまでを含む(幅2δtのウィンドウを設ける)とした場合、ピーク検出信号が発生した時間を記録しておき、S6を「Tpまでカウント」から「Tp+δtまでカウント」に変更し、S7を「ピーク検出信号を入力?」から「ピーク検出時間は、Tp−δt以上Tp+δt以下?」に変更し、S100を「他ブランチのカウント値はTGI2?」から「他ブランチのカウント値はTGI2−δt以上?」に変更(S100を「他ブランチのカウント値はTGI2−Tdiff,max以上?」としていた場合、「他ブランチのカウント値はTGI2−Tdiff,max−δt以上?」に変更)すればよい。