実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1に係る倒立型移動体(倒立振り子型乗り物)の構成例を示した外観図である。倒立型移動体10は、搭乗台11、乗車検出センサ12(乗車検出部)、駆動モジュール13、地面接地モジュール14及び地面接地モジュール15(接地部)を備える。倒立型移動体10には搭乗者100が搭乗しており、倒立型移動体10は静止した状態(静安定の状態)で、地面200に接地している。ここでは、地面200は平らな地面である。
搭乗台11は、搭乗者100が倒立型移動体10において搭乗する部分である。なお、図1では、搭乗者100は直立した状態で両足を搭乗台11に乗せている。
乗車検出センサ12は、搭乗者100が倒立型移動体10に搭乗したことを検出するセンサであり、搭乗台11の上部に設けられている。乗車検出センサ12は、搭乗者100が倒立型移動体10に搭乗したことを検出した場合に乗車検出スイッチ(SW)をオンに、倒立型移動体10に搭乗していないことを検出した場合に乗車検出SWをオフにする。
乗車検出センサ12は、搭乗者100の片足だけが搭乗台11に乗った場合(即ち搭乗者100の体重の一部だけが乗車検出センサ12にかかった場合)に、搭乗者100が倒立型移動体10に搭乗したとは検出しないようにする。乗車検出センサ12は、例えば、所定の閾値(搭乗者100の体重程度)以上の荷重を検出することにより乗車検出SWをオンにするようなスイッチから構成されてもよい。他の例では、乗車検出センサ12は、荷重が測定可能であり、搭乗者100の体重と同程度の荷重が垂直にかかったことを検出した場合に、乗車検出SWをオンにするような重量計から構成されてもよい。ここで搭乗者100の体重の情報は予め乗車検出センサ12に記憶されている。
乗車検出センサ12は、以上に説明した例に限られず、ソフト、ハード、又はその両方から構成することができる。
なお、乗車検出センサ12は、搭乗者100が搭乗したときに搭乗者100の両足の下にあるのであれば、搭乗台11の下部に設けられていてもよいし、搭乗台11内部に内蔵されていてもよい。乗車検出センサ12は、搭乗者100の右足及び左足が搭乗台11に乗る領域(左右の領域)にそれぞれ1つずつ設けられることにより、2つのセンサにかかる荷重を合計して測定してもよい。あるいは、搭乗者100の右足及び左足からかかる荷重を、1つの乗車検出センサ12で計測してもよい。
駆動モジュール13は、倒立型移動体10を駆動するために必要な機構が搭載されたモジュールであり、搭乗台11の上部に設けられている。ただし、駆動モジュール13が設けられる場所は搭乗台11の上部に限られず、搭乗台11の下部であってもよいし、搭乗台11内部であってもよい。
図2は、駆動モジュール13の構成例を示したブロック図である。駆動モジュール13は、制御装置16(制御部)、姿勢角度センサ17及びモータ駆動装置18を備える。
制御装置16は、モータ駆動装置18を動作させて、倒立型移動体10の倒立制御を実行するほか、倒立型移動体10の走行を制御する。制御装置16は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成される。
制御装置16は、倒立型移動体10において倒立制御がなされている場合に、倒立型移動体10(搭乗台11)の傾きに応じて、倒立型移動体10が動く向きを変更する。倒立型移動体10の前方が地面に向かって傾いている場合には、制御装置16は倒立型移動体10を前方に進ませるように制御する。倒立型移動体10の後方が地面に向かって傾いている場合には、制御装置16は倒立型移動体10を後方に進ませるように制御する。倒立型移動体10の姿勢がフラット(地面200に対して平行)な場合には、制御装置16は倒立型移動体10を停止させる。
姿勢角度センサ17は、倒立型移動体10の姿勢角度を検出する。具体的には、姿勢角度センサ17は、倒立型移動体10(搭乗台11)の前後方向の角度(地面に対する角度)を検出する。換言すれば、姿勢角度センサ17は、倒立型移動体10のピッチ軸方向の角度を検出する。
また姿勢角度センサ17は、予め設定された閾値(目標姿勢角度)と現在の姿勢角度を比較し、現在の姿勢角度が倒立を開始する角度であるか否かを判定する判定装置を備える。
図3は、倒立型移動体10の倒立中立点及び判定に用いる閾値を示した外観図である。倒立中立点は、倒立型移動体10が動的に安定な状態における倒立型移動体10の垂直軸の方向を示すものであり、地面200からの垂直軸の方向に位置する。この場合、倒立型移動体10は地面に対して平行の姿勢をとっている。
閾値は、垂直軸から所定の角度だけ前後にずれた範囲の値をとることができる。例えば、地面200からの垂直軸が、ピッチ軸方向において地面200に対して90°の角度にあると定義すると、閾値は(90+α)°〜(90−α)°の角度をとることができる(ここでは右回りの方向を正の角度としている)。αは所定の角度であり、倒立型移動体10の垂直軸が地面に対して(90±α)°の角度である場合において、倒立型移動体10は地面に対して平行の姿勢をとっているとみなせる。さらにいえば、倒立型移動体10の垂直軸が地面に対して(90+α)°の角度にある場合には、倒立型移動体10が倒立制御を行っても、倒立型移動体10は後方にほとんど動かない。このように、閾値は地面200に対して90°に近い値であればよく、必ずしも90°(倒立中立点の角度)である必要はない。以降、倒立型移動体10の垂直軸が地面に対して(90+α)°〜(90−α)°の角度である場合において、倒立型移動体10は地面に対して略平行の姿勢をとっていると記載する。
なお、地面接地モジュール14及び15が平坦な地面200に接地している場合に、倒立型移動体10は、後部が地面200に向かうように傾く。図1においては、倒立型移動体10(搭乗台11)のピッチ軸は、中立軸(地面200に平行な軸)に対してずれている。このときの倒立型移動体10の姿勢角度は閾値よりも大きい。
モータ駆動装置18は、制御装置16の制御に基づいて、倒立型移動体10を前進又は後退させるモータを駆動させる装置である。なお、モータは、少なくとも地面接地モジュール14に備えられている。
図1に戻り、説明を続ける。地面接地モジュール14は、地面200に接地され、倒立型移動体10を支持するモジュールである。地面接地モジュール14は、倒立型移動体10の前部であって、搭乗台11の下部に設けられている。地面接地モジュール14は、倒立型移動体10の前部かつ搭乗台11の下部に1つだけ設けられてもよいし、複数設けられていてもよい。
地面接地モジュール15は、地面200に接地され、倒立型移動体10を支持するモジュールである。地面接地モジュール15は、倒立型移動体10の後部であって、搭乗台11の下部に設けられている。地面接地モジュール15は、倒立型移動体10の後部かつ搭乗台11の下部に1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。
図1の状態では、地面接地モジュール14及び15がともに地面に接地している。地面接地モジュール14及び15は、倒立型移動体10が地面200に沿って円滑に前進又は後退するための車輪を、少なくとも1つ有している。ここで地面接地モジュール15に備えられた車輪は、地面接地モジュール14に備えられた車輪よりも小径である。
なお、地面接地モジュール14はアクチュエータ(駆動モータ)を備える。駆動モータは、モータ駆動装置18により駆動される。換言すれば、地面接地モジュール14は駆動輪を備えており、従って、倒立型移動体10は1つ以上の駆動輪を有している。地面接地モジュール15は、アクチュエータを備えていない。換言すれば、地面接地モジュール15は駆動輪を備えていない。
例えば、倒立型移動体10は、前部に2輪の駆動輪を、後部に2輪の駆動輪でない車輪を有していてもよい。ここで前部の2輪の駆動輪は、1つの地面接地モジュール14が備えていてもよいし、2つの地面接地モジュール14が1輪ずつ駆動輪を備えていてもよい。後部の2輪の車輪についても同様である。
以下、搭乗者100が倒立型移動体10に搭乗の際に、倒立型移動体10の各部が実行する処理について説明する。制御装置16は、以下の条件を満たした場合に、倒立型移動体10の倒立制御を開始する。
・乗車検出センサ12が、搭乗者が乗車したことを検出する
・姿勢角度センサ17が、倒立型移動体10の姿勢角度が閾値以下であることを検出する
図4は、倒立型移動体10が倒立した状態を示した図である。この動的に安定な状態において、地面接地モジュール14は接地しているが、地面接地モジュール15は接地していない(即ち、倒立型移動体10は、前方の駆動輪が接地した状態で安定している。)。図4において、倒立型移動体10(搭乗台11)のピッチ軸は、中立軸に対してずれていない。この状態から、倒立型移動体10は、搭乗者100の重心の制御に応じて、前進又は後退することができる。なお、走行中は、倒立型移動体10は前後方向に対して動的に不安定な状態になる。
なお、搭乗者100は、図1の状態から前方に体を預ける(図1の矢印で示しており、搭乗者100の体重を倒立型移動体10の前方にかける)ことにより、倒立型移動体10を図4に示したように倒立制御させることができる。この詳細については後述する。
図5は、倒立型移動体10の制御の一例を示したフローチャートである。以下、倒立型移動体10の制御処理について説明する。
最初に、乗車検出センサ12は、搭乗者100が倒立型移動体10に搭乗したか否かを検出し、乗車検出SWを設定する。制御装置16は、この乗車検出SWを取得する(ステップS11)。制御装置16は、この乗車検出SWに基づいて、搭乗者が存在しているか否かを判定する(ステップS12)。
乗車検出SWがオフである(即ち乗車検出センサ12の検出結果が搭乗者の存在を示すものではない)場合(ステップS12のNo)、乗車検出センサ12は再度検出処理を行い、制御装置16は乗車検出SWを取得する(ステップS11)。そして制御装置16はステップS12の判定を再度実行する。
乗車検出SWがオンである(即ち乗車検出センサ12の検出結果が搭乗者の存在を示すものである)場合(ステップS12のYes)、制御装置16は、姿勢角度センサ17が検出した姿勢角度の情報を取得する(ステップS13)。
姿勢角度センサ17の判定装置は、姿勢角度センサ17が検出した姿勢角度が閾値より大きいか否かを判定する(ステップS14)。閾値については上述の説明の通りである。
姿勢角度センサ17が検出した姿勢角度が閾値以下である場合には、搭乗者100が体重を倒立型移動体10の前方にかけることにより、倒立型移動体10は後部を地面方向に傾けた姿勢ではなく、地面に対して略平行の姿勢をとっていると想定される(このとき、地面接地モジュール15は地面200から離れている。)。そのため、搭乗者100の倒立型移動体10への搭乗準備が完了したと考えられる。
姿勢角度が閾値より大きい場合(即ち倒立型移動体10の後部が地面200に向かって傾いている場合)には(ステップS14のYes)、乗車検出センサ12は再度検出処理を行い、制御装置16は乗車検出SWを取得する(ステップS11)。そして制御装置16はステップS12の判定を再度実行する。
姿勢角度が閾値以下の場合には(ステップS14のNo)、制御装置16は、搭乗者100の準備が完了したと判定し、倒立型移動体10の倒立制御を開始する(ステップS15)。これにより、倒立型移動体10は、図4に示す状態に移行する。
なお、倒立制御開始時に倒立開始ゲインを急激に上げると、倒立型移動体10は急に動くことが想定される。従って、制御装置16は、倒立開始ゲインを徐々に上げる方が好ましい。
また、制御装置16は、モータ駆動装置18を制御することにより、地面接地モジュール15のアクチュエータモータを駆動させる(即ち駆動輪を駆動させる)。
以上の制御処理により、搭乗者100は、倒立型移動体10に安定して搭乗することができる。
上述の通り、関連技術においては、姿勢のバランスを保つ能力が低い人が台車に乗車する場合、台車の後方の車輪側に搭乗者の体重がかかることで、台車が後方に動いてしまうという問題点があった。
実施の形態1にかかる倒立型移動体10においては、倒立型移動体10の姿勢角度が閾値より大きい場合には倒立制御がなされず、姿勢角度が閾値以下である場合(即ち倒立型移動体10が地面に対して略平行の姿勢をとっている場合)に倒立制御がなされる。ここで、倒立型移動体10が倒立を開始する条件である閾値を倒立中立点付近としている。そのため、倒立制御がなされたときに、倒立型移動体10は略停止した状態にあり、後方に急発進することがない。従って、搭乗者100は安心して倒立型移動体10に乗車できる。
さらに、倒立型移動体10は、搭乗者100が搭乗前にはその後方が地面200側に傾斜した状態である。そのため、搭乗者100が体重を倒立型移動体10の前方にかけて、倒立型移動体10を地面に対して略平行の姿勢にしない限り、倒立型移動体10の倒立は開始されない。搭乗時に搭乗者100がバランスを崩して地面接地モジュール14が地面200から浮いたとしても(即ち倒立型移動体10の後方がさらに地面200側に傾斜しても)、倒立は開始されない。従って、搭乗者100が意図しないタイミングでは倒立が開始されない。
なお、実施の形態1においては、閾値は(90+α)°〜(90−α)°の範囲にあるとしたが、閾値は(90−α)°より小さくてもよい。倒立型移動体10の姿勢角度が(90−α)°より小さい場合、倒立型移動体10は前方が地面200側に傾く姿勢になるため、倒立型移動体10が倒立を開始すると、倒立型移動体10は前方へと移動する。ここで、搭乗者100の前方の視界は確保されているため、倒立型移動体10が後方に動くことに比較すると、動作に伴う危険が少ないと考えられる。従って、この場合でも、搭乗者100は倒立型移動体10に安定して搭乗することができる。
実施の形態2
以下、図面を参照して本発明の実施の形態2について説明する。図6は、実施の形態2に係る倒立型移動体の構成例を示した外観図である。倒立型移動体20は、搭乗台21、乗車検出センサ22、駆動モジュール23、地面接地モジュール24及び25を備える。倒立型移動体20には、搭乗者100が搭乗しており、倒立型移動体20は静止した状態(静安定の状態)で、地面200に接地している。
搭乗台21、乗車検出センサ22については、実施の形態1にかかる搭乗台11、乗車検出センサ12と同様であるため、説明を省略する。
駆動モジュール23は、制御装置26、姿勢角度センサ27(接地状態検出部)及びモータ駆動装置28を備える。駆動モジュール23は、倒立型移動体20を駆動するために必要な機構が搭載されたモジュールであり、搭乗台21の上部に設けられている。ただし、駆動モジュール23が設けられる場所は搭乗台21の上部に限られず、搭乗台21の下部であってもよいし、搭乗台21内部であってもよい。
制御装置26は、モータ駆動装置28を動作させて、倒立型移動体20の倒立制御を実行するほか、倒立型移動体20の走行を制御する。制御装置26は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成される。
制御装置26は、倒立型移動体20において倒立制御がなされている場合に、倒立型移動体20(搭乗台11)の傾きに応じて、倒立型移動体20が動く向きを変更する。倒立型移動体20の前方が地面に向かって傾いている場合には、制御装置26は倒立型移動体20を前方に進ませるように制御する。倒立型移動体20の後方が地面に向かって傾いている場合には、制御装置26は倒立型移動体20を後方に進ませるように制御する。倒立型移動体20の姿勢がフラット(地面200に対して平行)な場合には、制御装置26は倒立型移動体20を停止させる。
なお、制御装置26は、乗車検出センサ22及び姿勢角度センサ27の検出結果に基づいて、搭乗者100の乗車動作が完了したか否かを判定する。制御装置26は、搭乗者100の乗車動作が完了したと判定した場合には乗車検知フラグをオンに設定し、搭乗者100の乗車動作が完了していないと判定した場合には乗車検知フラグをオフに設定する。この詳細については後述する。
姿勢角度センサ27は、倒立型移動体20の姿勢角度を検出する。具体的には、姿勢角度センサ27は、倒立型移動体20(搭乗台21)の前後方向の角度(地面に対する角度)を検出する。換言すれば、姿勢角度センサ27は、倒立型移動体20のピッチ軸方向の角度を検出する。
また姿勢角度センサ27は、地面接地モジュール24が地面に接地しているときの倒立型移動体20の姿勢角度を記憶する記憶装置と、記憶された姿勢角度と現在の姿勢角度とを比較して地面接地モジュール24が地面接地状態であるか否かを判定する判定装置とを備える。姿勢角度センサ27は、地面接地モジュール24が地面に接地する姿勢角度を予め計測しておき、現在の姿勢角度をモニタリングすることによって、地面接地モジュール24が接地されているか否かを検出する。
姿勢角度センサ27は、地面接地モジュール24が地面に接地したことを検出した場合には接地フラグをオンにし、地面接地モジュール24が地面に接地していないことを検出した場合には接地フラグをオフにする。
モータ駆動装置28は、制御装置26の制御に基づいて、倒立型移動体20を前進又は後退させるモータを駆動させる装置である。なお、モータは、少なくとも地面接地モジュール25に備えられている。
図6に戻り、説明を続ける。地面接地モジュール24は、地面200に接地され、倒立型移動体20を支持するモジュールである。地面接地モジュール24は、倒立型移動体20の前部であって、搭乗台21の下部に設けられている。地面接地モジュール24は、倒立型移動体20の前部かつ搭乗台21の下部に1つだけ設けられてもよいし、複数設けられていてもよい。
ここで、地面接地モジュール24は直方体状のバーにより構成されている。地面接地モジュール24を車輪以外のもので構成することにより、地面接地モジュール24の接地時の静摩擦力を大きくすることができる。そのため、接地時に倒立型移動体20が不意に動作することを抑制することができる。
地面接地モジュール25は、地面200に接地され、倒立型移動体20を支持するモジュールである。地面接地モジュール25は、倒立型移動体20の後部であって、搭乗台21の下部に設けられている。地面接地モジュール25は、倒立型移動体20の後部かつ搭乗台21の下部に1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。
図6の状態では、地面接地モジュール24及び25がともに地面に接地している。地面接地モジュール25は、倒立型移動体20が地面200に沿って円滑に前進又は後退するための車輪を、少なくとも1つ有している。
また、地面接地モジュール25はアクチュエータ(駆動モータ)を備える。駆動モータは、モータ駆動装置28により駆動される。換言すれば、地面接地モジュール25は駆動輪を備えており、従って、倒立型移動体20は1つ以上の駆動輪を有している。
なお、地面接地モジュール24及び25が平坦な地面200に接地している場合に、倒立型移動体20は、いわゆる前のめりの状態になる。つまり、倒立型移動体20は、接地の際に前方が地面200側の方向に傾斜する。
以下、搭乗者100が倒立型移動体20に搭乗の際に、倒立型移動体20の各部が実行する処理について説明する。以下の条件を満たした場合に、制御装置26は倒立型移動体20の倒立制御を開始する。
・乗車検出センサ22が、搭乗者が乗車したことを検出する
・地面接地モジュール24が地面に接地した状態から離れたことを姿勢角度センサ27が検出する
図7は、倒立型移動体20が倒立した状態を示した図である。この動的に安定な状態において、地面接地モジュール25は接地しているが、地面接地モジュール24は接地していない。この状態から、倒立型移動体20は、搭乗者100の重心の制御に応じて、前進又は後退することができる。なお、走行中は、倒立型移動体20は前後方向に対して動的に不安定な状態になる。
図8A及び図8Bは、倒立型移動体20の制御の一例を示したフローチャートである。以下、倒立型移動体20の制御処理について説明する。
最初に、乗車検出センサ22は、搭乗者100が倒立型移動体20に搭乗したか否かを検出し、乗車検出SWを設定する。制御装置26は、この乗車検出SWを取得する(ステップS21)。制御装置26は、この乗車検出SWに基づいて、搭乗者が存在しているか否かを判定する(ステップS22)。
乗車検出SWがオフである(即ち乗車検出センサ22の検出結果が搭乗者の存在を示すものではない)場合(ステップS22のNo)、乗車検出センサ22は再度検出処理を行い、制御装置26は乗車検出SWを取得する(ステップS21)。そして制御装置26はステップS22の判定を再度実行する。
乗車検出SWがオンである(即ち乗車検出センサ22の検出結果が搭乗者の存在を示すものである)場合(ステップS22のYes)、制御装置26は、姿勢角度センサ27が検出した地面接地モジュール24の地面200への接地状態についての情報を取得する(ステップS23)。
制御装置26は、姿勢角度センサ27が設定した接地フラグがオンであるか否かを判定する(ステップS24)。
姿勢のバランスを保つ能力が低い人が搭乗者100として倒立型移動体20に乗車するような場合、乗車の際に倒立型移動体20が揺れることにより、接地フラグがオフになることが想定される。搭乗者100が倒立型移動体20上で姿勢のバランスを保つことができた場合(即ち搭乗者100の乗車動作が完了した場合)には、接地フラグはオンとなる。
接地フラグがオンでない場合(即ち搭乗者100の乗車動作が完了していない場合)には、乗車検出センサ22は再度検出処理を行い、制御装置26は乗車検出SWを取得する(ステップS21)。そして制御装置26はステップS22の判定を再度実行する。
接地フラグがオンである場合(即ち搭乗者100の乗車動作が完了した場合)には、制御装置26は、乗車検知フラグをオフからオンにする(ステップS25)。
次に、制御装置26は、搭乗者100が倒立型移動体20に搭乗したか否かを示す乗車検出SWを再度取得する(ステップS26)。制御装置16は、この乗車検出SWに基づいて、搭乗者が存在しているか否かを判定する(ステップS27)。
これらの処理がなされる理由は、搭乗者100の乗車動作が完了したと判定された場合でも、搭乗者100が既に存在していない可能性があるためである。搭乗者100が既に存在していない場合には、倒立型移動体20が倒立制御をする必要がなくなる(倒立制御の処理が無駄になってしまう)。
乗車検出SWがオフである(即ち乗車検出センサ22の検出結果が搭乗者の存在を示すものではない)場合(ステップS27のNo)、制御装置26は、乗車検知フラグをオンからオフに設定し直す(ステップS28)。そして、乗車検出センサ22は再度検出処理を行い、制御装置26は乗車検出SWを取得する(ステップS21)。
乗車検出SWがオンである(即ち乗車検出センサ22の検出結果が搭乗者の存在を示すものである)場合(ステップS27のYes)、制御装置26は、姿勢角度センサ27が検出した地面接地モジュール24の地面200への接地状態についての情報を取得する(ステップS29)。
制御装置26は、接地フラグがオンからオフに変化したか否かを判定する(ステップS30)。ここで、制御装置26は、搭乗者100が地面接地モジュール24を接地状態から地面200に接地していない状態に変化させたか否か(搭乗者100が倒立型移動体20を動かそうとして倒立型移動体20の前方を持ち上げるように体重のバランスをとっているか否か)を判定している。換言すれば、制御装置26は、搭乗者100の乗車準備動作が完了したか否かを判定している。
接地フラグがオンのままである場合には(ステップS30のNo)、制御装置26は、搭乗者100が倒立型移動体20に搭乗したか否かを示す乗車検出SWを再度取得する(ステップS26)。
接地フラグがオフに変化した場合には(ステップS30のYes)、制御装置26は、時間をおかずに倒立型移動体20の倒立制御を開始する(ステップS31)。これにより、倒立型移動体20は、図7に示す状態に移行する。なお、制御装置26は、モータ駆動装置28を制御することにより、地面接地モジュール25のアクチュエータモータを駆動させる(即ち駆動輪を駆動させる)。
以上の制御処理により、搭乗者100は、倒立型移動体20に安定して搭乗することができる。
実施の形態2にかかる倒立型移動体20は、地面接地モジュール24が地面200に接地している状態を検出した後、地面接地モジュール24が地面200から離れたときに、初めて倒立制御を開始する。換言すれば、利用者が倒立型移動体20を操縦する準備が確認された後に、倒立型移動体20の倒立制御が開始される。そのため、搭乗者100が乗り込む途中で倒立型移動体20の後方が地面200側に傾いても、倒立型移動体20が倒立制御を行うことはない。
さらに、倒立型移動体20は前方が地面200側に傾いたままの姿勢で倒立を開始するため、倒立型移動体20は前方へと移動する。ここで、搭乗者100の前方の視界は確保されているため、倒立型移動体10が後方に動くことに比較すると、動作に伴う危険が少ないと考えられる。そのため、利用者がバランスを崩すことを防ぐことができる。なお、制御装置26は、倒立型移動体20の後方が地面200側に傾く前に、倒立を開始する必要がある。
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、実施の形態1において、地面接地モジュール15は地面接地モジュール24と同様、直方体状のバーにより構成されていてもよい。逆に、実施の形態2における地面接地モジュール24は、バーで構成されていなくてもよく、車輪を少なくとも1つ有していてもよい。その場合、地面接地モジュール24に備えられた車輪は、地面接地モジュール25に備えられた車輪よりも大径である。
実施の形態1における処理のフロー(図5)において、ステップS12とステップS13との間に、「地面接地モジュール15が地面200に接地した状態が一定時間以上継続したか否か」を制御装置16が判定するフローがあってもよい。ここで姿勢角度センサ17は、検出した角度が、地面接地モジュール15が接地時の角度と略等しいか否かを判定することにより、地面接地モジュール15が地面200に接地しているか否かを判定する。地面接地モジュール15が接地時の角度は予め姿勢角度センサ17に記録されている。制御装置16は姿勢角度センサ17の検出結果に基づいて、地面200に接地している時間をカウントする。
姿勢のバランスを保つ能力が低い人が搭乗者100として倒立型移動体10に乗車するような場合、乗車の際に倒立型移動体10が揺れることにより、地面接地モジュール15が地面200に接地している状態と接地していない状態が短い時間に切り替わることが想定される。搭乗者100が倒立型移動体10上で姿勢のバランスを保つことができた場合(即ち搭乗者100の乗車動作が完了した場合)には、地面接地モジュール15が地面200に一定時間以上接地した状態となる。
地面接地モジュール15が地面200に接地している時間が一定時間未満である場合(即ち搭乗者100の乗車動作が完了していない場合)には、乗車検出センサ12は再度検出処理を行い、制御装置16は乗車検出SWを取得する(ステップS11)。そして制御装置16はステップS12の判定を再度実行する。地面接地モジュール15が地面200に接地している時間が一定時間以上である場合(即ち搭乗者100の乗車動作が完了した場合)には、ステップS13以降の処理が実行される。以上の処理を実行することにより、倒立型移動体10は搭乗者100の準備が完了したか否かをより確実に判定した上で倒立制御を行うため、搭乗者100はより安定して倒立型移動体10に搭乗することができる。
実施の形態2においても、処理のフロー(図8A)において、ステップS24で「一定時間以上接地フラグがオンの状態が継続したか否か」を判定してもよい。この場合に姿勢角度センサ27は、検出した角度が、地面接地モジュール24が接地時の角度と略等しいか否かを判定することにより、地面接地モジュール24が地面200に接地しているか否かを判定する。地面接地モジュール24が接地時の角度は予め姿勢角度センサ27に記録されている。制御装置26は姿勢角度センサ27の検出結果に基づいて、地面200に接地している時間をカウントする。他は上述の説明と同様なので説明を省略する。
実施の形態2の処理フロー(図8B)においては、ステップS29及びステップS30の代わりに、姿勢角度センサ27が検出した姿勢角度の情報を制御装置26が取得し、姿勢角度が閾値よりも大きいか否かを判定してもよい。姿勢角度が閾値以下である場合にはステップS30の処理が実行され、閾値よりも大きい場合にはステップS26の処理が実行される。なお、閾値の定義は実施の形態1にて説明した通りである。
実施の形態2において地面接地モジュール24の接地状態を検出するのは姿勢角度センサ27でなくてもよい。例えば、乗車検出センサ22が搭乗台21に搭乗した搭乗者100の重心位置を検出することにより、地面接地モジュール24に荷重がかかっているか(即ち地面接地モジュール24が地面に接地しているか)否かを判定してもよい。乗車検出センサ22は、倒立型移動体20の前方に搭乗者100の重心がある場合に接地フラグをオンとし、倒立型移動体20の後方に搭乗者100の重心がある場合に接地フラグをオフとする。
また、地面接地モジュール24の接地面に、地面接地モジュール24が地面に接地したか否かを検出可能な接地検出センサが設けられていてもよい。この接地検出センサにより所定の荷重が検出された場合には、接地検出センサは地面接地モジュール24が地面に接地したことを検出する。なお、接地検出センサは、地面接地モジュール24がどの箇所で地面に接地しても接地を検出できるよう、十分な数を地面接地モジュール24に設けてもよい。接地検出センサは、地面接地モジュール24が地面に接地したことを検出した場合には接地フラグをオンにし、地面接地モジュール24が地面に接地していないことを検出した場合には接地フラグをオフにする。以上のようにしても、実施の形態2において地面接地モジュール24の接地状態を検出することができる。
実施の形態2の処理フロー(図8A、図8B)においては、ステップS23〜ステップS28(又はステップS26〜ステップS28)の処理は必須ではなく、省略してもよい。