本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース7等によって構成されている。ケース7は、樹脂ベース(第1ケース)71と樹脂ベース71の上面に装着されるカバー部材(第2ケース)72とカバー片8等によって構成されている。熱応動素子5の周辺には、熱応動素子5の過度な変形を防止する過変形防止部材9(図2及び図3参照)が設けられている。
固定片2は、リン青銅等を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、樹脂ベース71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部回路と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24aの上に載置されて、突起24aに支持される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、樹脂ベース71の上方に形成されている開口73bの一部から露出されている。端子22は樹脂ベース71の一端から外側に突き出されている。
固定片2は、端子22、固定接点21及び支持部23において露出し、端子22と固定接点21との間及び固定接点21と支持部23との間において樹脂ベース71に埋設される。固定片2の支持部23の表面は、ケース7の内部の収容空間に露出し、突起24aを介してPTCサーミスター6と電気的に接触している。
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、固定片2と同等のリン青銅等を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。可動片4の長手方向の一端には外部回路と電気的に接続される端子41が形成されて樹脂ベース71から外側に露出される。可動片4の他端(アーム状の可動片4の先端に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。可動片4は、可動接点3と端子41の間に、当接部42(アーム状の可動片4の基端及びケース7に埋設される部分に相当)、及び弾性部43を有している。当接部42は、端子41と弾性部43との間で樹脂ベース71及びカバー部材72と当接し、可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部42aを有する。弾性部43は、当接部42から可動接点3の側に延出されている。当接部42において樹脂ベース71とカバー部材72によって裏表両面側から挟み込まれて可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
樹脂ベース71とカバー部材72には、可動片4の当接部42と当接し、当接部42を固定状態で保持する当接部74と当接部79がそれぞれ形成されている。本実施形態では、樹脂ベース71の収納部73の外縁から樹脂ベース71の外壁に亘る領域に当接部74が形成されている。当接部74は、図1中、ケース7の底壁(内底面)の一部を構成する。また、カバー部材72において、可動片4を挟んで当接部74と対向する領域に当接部79が形成されている。当接部79は、図1中、ケース7の天壁(内天面)の一部を構成する。当接部42は、その裏面において樹脂ベース71の当接部74と当接し、その表面においてカバー部材72の当接部79と当接する。可動片4は、当接部74及び当接部79によって当接部42の裏表両面から挟み込まれて、ケース7に対して固定される。本実施形態においては、当接部42が可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部42aを有するので、当接部42が幅広く大きな領域でケース7の当接部74及び当接部79によって挟み込まれ、可動片4がケース7に対して強固に固定される。
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して突起(接触部)44が形成されている。熱応動素子5の熱変形時に突起44と熱応動素子5とは接触して、突起44を介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(図3参照)。
また、可動片4には、可動片4の厚み方向に貫通し、樹脂ベース71の突起74aが挿通される貫通穴45と、クランク状に形成された段曲げ部46と、段曲げ部46に形成された斜面47と、樹脂ベース71の位置決め部75と係合される一対の係合部48と、可動片4の長手方向に対して垂直な短手方向に可動片4の一部が切除されたくびれ部49が形成されている。貫通穴45、段曲げ部46、斜面47、係合部48及びくびれ部49は、弾性部43を挟んで可動接点3とは反対側、すなわち弾性部43に対して端子41の側に設けられている。貫通穴45は、可動片4の長手方向の中心線上に設けられている。斜面47は、可動片4の短手方向に沿って連続して形成されている。係合部48は、可動片4の短手方向に沿って2箇所に設けられている。
貫通穴45は、可動片4の当接部42に形成されている。当接部42は、弾性部43に対して可動片4の短手方向に幅広に形成されている。これにより、当接部42における可動片4の長手方向に垂直な断面積が、弾性部43における該断面積に対して大きい箇所となる。また、貫通穴45は、平面視で(可動片4の厚み方向に視て)可動片4の短手方向に長い長円形状に形成されている。
係合部48は、くびれ部49の端子41の側の端縁にて形成される。くびれ部49は、当接部42を挟んで弾性部43とは反対側で、当接部42と端子41の間に配設されている。くびれ部49の幅寸法(可動片4の短手方向の長さ寸法、以下同様)は、弾性部43の幅寸法に対して同等以下に設定されているのが望ましいが、少なくとも当接部42及び端子41の幅寸法よりも小さく設定されていればよい。本実施形態におけるくびれ部49は、上記特許文献1における第2弾性部としての機能を有しており、端子41に加えられた外力や衝撃を吸収し、可動接点3の位置を適正に維持する。
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなる。過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
ケース7を構成する樹脂ベース71及びカバー部材72は、難燃性のポリアミド(PA)、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。樹脂ベース71には、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための収納部73及び可動片4を収納するための開口73a,73bなどが形成されている。なお、樹脂ベース71に組み込まれた可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6の端縁は、収納部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
また、樹脂ベース71は、可動片4の貫通穴45に挿通される突起74aと、可動片4を位置決めするための一対の位置決め部75と、可動片4の端子41を外部に露出させるための窓76を有する。突起74aは、貫通穴45に対応する形状に形成され、樹脂ベース71を補強する。突起74aの高さすなわち突出量は、可動片4の厚みより大きく設定され、カバー部材72の裏面には、突起74aの頂部に対応する凹部が必要に応じて設けられる。位置決め部75は、可動片4のくびれ部49に対応する形状に設けられている。すなわち、位置決め部75は、くびれ部49の近傍において切除された部分に介在し、樹脂ベース71を補強すると共に、カバー部材72の当接部79と溶着されて、ケース7の剛性・強度を高める。
カバー部材72には、カバー片8がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片8は、上述したリン青銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片8は、図2及び図3に示すように、可動片4の上面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、カバー部材72のひいては筐体としてのケース7の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。カバー片8には、可動片4の側に突出する突起81が形成されている。突起81によって弾性部43が熱応動素子5の方向に押圧され、通電時における固定接点21と可動接点3との接触圧力が適正化される。
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容した樹脂ベース71の開口73a等を塞ぐように、カバー部材72が、樹脂ベース71の上面に装着される。樹脂ベース71とカバー部材72とは、例えば超音波溶着によって接合される。
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22、41間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5、変形防止部材9及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図2に示す導通状態に復帰する。
図4及び図5は、熱応動素子5及び過変形防止部材9の構成を示している。これらの図において、右手前側が固定片2の端子22側(可動接点3が設けられる側)であり、左奥側が可動片4の端子41側(当接部42等が設けられる側)である。
なお、本願は特に断りのない限り、熱応動素子5における可動片4と対向している面(すなわち図1乃至図5等において上側の面)を表(おもて)面、その反対側の面を裏(うら)面として説明されている。他の部品における表面と裏面の記載についても、この関係が準用される。
過変形防止部材9は、熱応動素子5の裏面側に配設される第1部材91と、熱応動素子5の表面側に配設される第2部材92とを有している。第1部材91及び第2部材92は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料をプレス加工することにより、成形される。耐熱性に優れ、十分な強度と剛性が得られる材料であれば、特に限定されない。例えば、第1部材91が金属材料にて、第2部材が92がセラミック等にて構成されていてもよい。
第1部材91は、PTCサーミスター6と熱応動素子5との間に配設される。第1部材91には、熱応動素子5の4つの角部5aとの干渉を避けるための開口93が4箇所において形成されている。開口93によって、第1部材91は、中央部91aと、一対の第1延出部91b,91bと、一対の第2延出部91c,91dと、一対の第1接合部91e,91fとに区画されている。
中央部91aは、その裏面にてPTCサーミスター6と当接し、固定片2と共にPTCサーミスター6を上下方向から挟み込んで固定する。そのため、中央部91aは、平面視でPTCサーミスター6と相似形に形成されている。また、熱応動素子5の熱変形時にあっては、中央部91aは、その表面にて熱応動素子5の裏面と当接する。
第1延出部91bは、中央部91aから可動片4の短手方向に延出されている。第2延出部91cは、中央部91aから可動片4の長手方向であって、可動片4の端子41側に延出されている。第2延出部91dは、中央部91aから可動片4の長手方向であって、固定片2の端子22側に延出されている。第1延出部91b及び第2延出部91c,91dによって熱応動素子5が支持される。第2延出部91cの先端には、可動片4の短手方向に第1接合部91eが形成され、第2延出部91dの先端には、可動片4の短手方向に第1接合部91fが形成されている。第1接合部91eと第1接合部91fとは、中央部91aを挟んで対向して配設されている。
第2部材92は、熱応動素子5とカバー片8との間に配設される。第2部材92には、可動片4の弾性部43(図1等参照)との干渉を避けるための開口94が中央部から可動接点3の側に形成されている。開口94によって、第2部材92は、第1押え部92aと一対の第2押え部92bとに区画され、平面視でU字状に形成されている。第1押え部92aは、可動片4の短手方向と平行に形成されている。一対の第2押え部92bは、第1押え部92aの両端から可動片4の端子41側に延出されている。
第2部材92は、第1押え部92aの側に、突起92cと、段曲げ部92dと、第2接合部92eとを有している。突起92cは、第1押え部92aに形成されている。突起92cは、熱応動素子5において可動接点3(図1等参照)とは反対側に位置する端縁部5bの近傍で、裏面側すなわち熱応動素子5の側に突出する。突起92cと熱応動素子5の端縁部5bとは、平面視で重複し、熱応動素子5の熱変形時に突起92cと熱応動素子5の表面の端縁部5bとが当接する。段曲げ部92dは、第1押え部92aから可動片4の端子41側に延出され、第1押え部92aと第2接合部92eとを段違いに配置する。第2接合部92eは、段曲げ部92dから可動片4の端子41側に延出され、溶接又はかしめ等の手法により第1部材91の第1接合部91eと接合される。
第2部材92は、第2押え部92bの側に、段曲げ部92gと、第3接合部92hとを有している。第2押え部92bは、熱応動素子5の熱変形時に段曲げ部92gの近傍又は段曲げ部92gにおいて熱応動素子5の端縁部5cの表面と当接する。段曲げ部92gは、第2押え部92bから固定片2の端子22側に延出され、第2押え部92aと第3接合部92hとを段違いに配置する。第3接合部92hは、段曲げ部92gから固定片2の端子22側に延出され、溶接又はかしめ等の手法により第1部材91の第1接合部91fと接合される。
第1部材91の第1接合部91e及び第2部材92の第2接合部92eは、熱応動素子5に対して可動片4の端子41側に配設され、第1部材91の第1接合部91f及び第2部材92の第3接合部92hは、熱応動素子5に対して固定片2の端子22側に配設されている。従って、第1接合部91eと第2接合部92eとの接合及び第1接合部91fと第3接合部92eとの接合によって、第1部材91と第2部材92とは、熱応動素子5に対して可動片4の長手方向の外側で、互いに接合されることになる。これにより、可動片4の長手方向における熱応動素子5の位置が規制される。
第2部材92は、保持部92iと、段曲げ部92jとをさらに有している。保持部92iは、可動片4の短手方向における第2部材92の外端縁から延出され、第1部材91の第1延出部91bの先端に向かって、湾曲又は屈曲されている。保持部92iは、可動片4の短手方向における熱応動素子5の端縁部5dと当接し、熱応動素子5を保持する。すなわち、保持部92iによって可動片4の短手方向における熱応動素子5の位置が規制される。
段曲げ部92jは、第2押え部92bの基端部に設けられ、第1押え部92aと第2押え部92bの本体部とを段違いに配置する。第2部材92に段曲げ部92jが設けられていることにより、第2押え部92bの先端部の高さを第1押え部92aよりも高く設定できる。これにより、熱応動素子5の熱変形時における第1部材91からの熱応動素子5の端縁部5cの高さを確保して、電流遮断状態での固定接点21と可動接点3との距離を確保できる。なお、第2部材92の段曲げ部92d,92g,92jに追加して、又は段曲げ部92d,92g,92jに替えて、第1部材91に同等の機能を有する段曲げ部が設けられていてもよい。
図6は、通電状態におけるブレーカー1の各部の動作を示している。可動片4の弾性部43は、一対の第2押え部92bの間に形成されている開口94(図4参照)に位置されており、これにより、可動片4と過変形防止部材9との干渉が回避されている。本実施形態においては、第2部材92の第1押え部92aと弾性部43の基端部近傍とが当接し、弾性部43が第1押え部92aとカバー部材8の突起81とによって挟み込まれているが、第1押え部92aと弾性部43との間に適宜隙間が設けられていてもよい。この通電状態にあっては、熱応動素子5の端縁部5bと第2部材92の突起92cとは当接しておらず、熱応動素子5の端縁部5cと可動片4の突起44とも当接していないため、可動片4が熱応動素子5から外力を受けることはない。
図7は、電流遮断状態におけるブレーカー1の各部の動作を示している。既に述べたように、過充電等によりブレーカー1が、加熱されて、例えば、80゜C程度の高温状態となると、熱応動素子5は、動作温度に達し、逆反り変形する。これに伴い、熱応動素子5の端縁部5bは、第2部材92の突起92cと当接し、突起92cを力F1で押し上げると共に、熱応動素子5の端縁部5cは、可動片4の突起44と当接し、突起44を力fで押し上げる。これにより、可動片4の弾性部43の先端部が押し上げられて、弾性部43が弾性変形し、弾性部43には力fとつり合う内部応力が発生する。可動片4の弾性部43の先端部が押し上げられることにより、固定接点21と可動接点3とが離反し、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断される。一方、熱応動素子5の中央部5eは、第1部材91の中央部91aと当接し、第1部材91の中央部91aを力F1+fで押し下げる。
ここで、第1部材91と第2部材92とは互いに接合されているので、過変形防止部材9に着目すると、端縁部5bから受ける上向きの力F1は、中央部5eから受ける下向きの力F1と打ち消しあってつり合う。従って、過変形防止部材9から外部に働く力は、第1部材91がPTCサーミスター6を押し下げる力fのみとなる。
図8は、リフロー時等の超高温状態におけるブレーカー1の各部の動作を示している。リフロー時において、ブレーカー1は、例えば200゜C以上の超高温にさらされる。このとき、熱応動素子5の変形量は、図7に示される状態よりもさらに大きくなり、弾性部43の先端部の押し上げ量も増加する。そして、端縁部5cと突起44との当接状態が維持されながら、端縁部5cは、さらに第2部材92の第2押え部92bと当接する。第2押え部92bは、端縁部5cの上昇を規制するストッパーとして機能し、熱応動素子5の過度な変形を抑制する。
このような超高温状態にあっても、熱応動素子5の熱変形に伴い、熱応動素子5の端縁部5bは、第2部材92の突起92cと当接し、突起92cを力F1で押し上げる。また、熱応動素子5の端縁部5cは、可動片4の突起44と当接して突起44を力fで押し上げると共に、第2部材92の第2押え部92bと当接して第2押え部92bをF2で押し上げる。一方、熱応動素子5の中央部5eは、第1部材91の中央部91aと当接し、中央部91aを力F1+F2+fで押し下げる。
ここで、第1部材91と第2部材92とは互いに接合されているので、過変形防止部材9に着目すると、端縁部5bから受ける上向きの力F1は、中央部5eから受ける下向きの力F1と打ち消しあってつり合い、端縁部5cから受ける上向きの力F2は、中央部5eから受ける下向きの力F2と打ち消しあってつり合う。従って、過変形防止部材9から外部に働く力は、第1部材91がPTCサーミスター6を押し下げる力fのみとなる。
図8に示されるリフロー時の状態にあっては、熱応動素子5の端縁部5cが第2部材92の第2押え部92bと当接するまで、熱応動素子5が逆反り変形する。従って、このときの熱応動素子5の端縁部5cが可動片4の突起44を押し上げる力fは、図7に示される電流遮断状態における熱応動素子5の端縁部5cが可動片4の突起44を押し上げる力fよりも大きくなる。しかしながら、図8に示されるリフロー時の超高温状態にあっては、温度上昇に伴い熱応動素子5に生ずる内部応力の一部が力F2として端縁部5cから第2押え部92bに伝達される。従って、図8に示される本実施形態における熱応動素子5の端縁部5cが可動片4の突起44を押し上げる力fは、図14に示される従来のブレーカー200における熱応動素子5の端縁部5cが可動片4の突起44を押し上げる力fよりも小さくなる。
図9は、リフロー時等の過度な超高温状態における可動片4の先端部及び熱応動素子5の端縁部5cの近傍を拡大して示している。図中の一点鎖線は、図14に示される従来のブレーカー200におけるリフロー時等の可動片4の先端部及び熱応動素子5を示している。
従来のブレーカー200においては、過変形防止部材9が存在しないため、熱応動素子5の変形を防止することができず、熱応動素子5は大きく変形する。このような変形は過度な変形であり、ブレーカー1の電流遮断機能には不要である。可動片4の先端部は、1点鎖線で示されるように、過度な熱変形を生じた熱応動素子5によって大きく上方に持ち上げられ、カバー片8の裏面と当接する。このとき、熱応動素子5の端縁部5cが可動片4の突起44を押し上げる力fの一部は、カバー片8を介してカバー部材72に伝達され、ケース7を変形させるように作用する。
しかしながら、本実施形態にあっては、実線で示されるように、端縁部5cの上昇を規制するストッパー機能を有する過変形防止部材9によって熱応動素子5の変形が制限されるので、可動片4の先端部の上方への移動も抑制される。その結果、可動片4の先端部がカバー片8の裏面と当接しないため、ケース7を変形させるように作用する力は、可動片4からカバー部材72に伝達されない。なお、本実施形態のブレーカー1においても、可動片4の上方空間の高さ寸法を小さく設計した場合、可動片4の先端部がカバー片8の裏面と当接することも懸念されるが、そのような場合であっても、ブレーカー1においては、図8に示されるように、過変形防止部材9が設けられていることによって熱応動素子5の端縁部5cが可動片4の突起44を押し上げる力fが小さいので、ケース7の変形も抑制される。
(変形例)
図10は、過変形防止部材9の変形例である過変形防止部材9Aを示している。過変形防止部材9Aは、第2部材92において、一対の第2押え部92bが、可動片4の短手方向に連続する第3接合部92kを介して連結されている点で、図5等に示される過変形防止部材9とは異なる。第3接合部92kは、第1部材91の第1接合部91fと溶接又はかしめ等の手法により接合される。この変形例においては、一対の第2押え部92bが第3接合部92kを介して連結されているのに加えて、第1接合部91fと第3接合部92kとの接合面積を大きくできるので、過変形防止部材9の剛性が高められ、熱応動素子5の過度な変形をより一層防止しうる。
(変形例)
図11は、過変形防止部材9の別の変形例である過変形防止部材9Bを示している。過変形防止部材9Bは、板状の過変形防止部材9Bが一体成形されている点で、図5等に示される過変形防止部材9とは異なる。過変形防止部材9Bにおいては、過変形防止部材9Bの両端部がU字状に屈曲又は湾曲されることにより、第1押え部92m及び第2押え部92nが形成されている。また、第1押え部92mには、突起92cが形成されている。過変形防止部材9Bによれば、簡素な構成で安価に過変形防止部材9Bを成形し、ブレーカーのコストダウンを図ることができる。
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、過変形防止部材9によって熱応動素子5の過度な変形が防止されるので、熱応動素子5の過度な変形に起因するケース7の変形等が抑制される。例えば、リフロー時等の実装工程において、ブレーカー1が動作温度範囲を超える超高温にさらされた場合にあっても、熱応動素子5が発生する応力を過変形防止部材9が受けとめて、ケース7に該応力が伝達されることを阻止する。これにより、ケース7の変形が抑制され、固定接点21と可動接点3との接触抵抗を抑制しつつ、良好な温度特性を維持することができる。
ブレーカー1によれば、可動接点3が固定接点21から離反しているとき、過変形防止部材9が熱応動素子5と当接するので、熱応動素子5が発生する応力が、可動片4やPTCサーミスター6を介することなく、直接的に過変形防止部材9に伝達される。これにより、熱応動素子5に過度な変形が生じた場合であっても、可動片4に発生する応力を抑制し、可動片4が塑性変形することを防止しうる。また、PTCサーミスター6に発生する応力を抑制し、PTCサーミスター6が破損することを防止しうる。
ブレーカー1によれば、過変形防止部材9が、熱応動素子5の裏面及び表面において、熱応動素子5と当接するので、熱応動素子5の裏面が過変形防止部材9を押す力と、熱応動素子5の表面が過変形防止部材9を押す力とが、過変形防止部材9の内部で打ち消される。これにより、可動片4やケース7に外力として伝達される力が制限され、可動片4やケース7の塑性変形が効果的に抑制される。
ブレーカー1によれば、熱応動素子5の裏面側に配設される第1部材91と、熱応動素子5の表面側に配設される第2部材92とが、熱応動素子5に対して可動片4の長手方向の外側で、互いに接合されているので、過変形防止部材9の構造が強固になり、熱応動素子5の変形を効果的に防止すると共に、可動片4やケース7に外力として伝達される力を効果的に抑制しうる。
ブレーカー1によれば、過変形防止部材9が、金属材料によってなるので、過変形防止部材9の剛性が高められ、熱応動素子5の変形を効果的に防止すると共に、可動片4やケース7に外力として伝達される力を効果的に抑制しうる。また、過変形防止部材9が導電性を有するので、PTCサーミスター6を併用することにより、ブレーカー1内にいわゆる自己保持回路を容易に構成できるようになる。
ブレーカー1によれば、過変形防止部材9が、可動片4の短手方向の端縁に、熱応動素子5を保持する保持部92iを有するので、熱応動素子5の位置や姿勢が安定し、良好な温度特性を維持することができる。また、ブレーカー1の製造工程において、熱応動素子5が載置された過変形防止部材9が樹脂ベース71に組み込まれる際にも、熱応動素子5の落下を防止しうる。
ブレーカー1によれば、過変形防止部材9が、熱応動素子5における可動接点3とは反対側の端縁近傍に、熱応動素子5の側に突出する突起92cを有するので、熱応動素子5が熱変形時に突起92cと当接することにより、可動接点3側の端縁の移動量が大きくなる。これにより、電流遮断時における固定接点21と可動接点3との距離が十分に確保され、ブレーカー1の電流遮断動作を安定させることが可能となる。
ブレーカー1によれば、ケース7は、樹脂材料を含んでなるので、安価かつ容易にケース7を成形でき、ブレーカー1の製造コストの低減を図ることができる。なお、このような樹脂材料によってケース7の主要部が形成されているブレーカー1においても、過変形防止部材9によって熱応動素子5の過度な変形が防止されるので、熱応動素子5の過度な変形に起因するケース7の変形等が抑制される。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも固定接点21を有する固定片2と、可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形することにより可動接点3が固定接点21から離反するように可動片4を作動させる熱応動素子5と、固定片2、可動片4及び熱応動素子5を収容するケース7とを備えたブレーカー1において、熱応動素子5の過度な変形を防止する過変形防止部材9をさらに備えていればよい。
第1部材91と、第2部材92とが、熱応動素子5に対して可動片4の短手方向の外側で、互いに接合されていてもよい。このような構成であっても、熱応動素子5の外側で第1部材91と、第2部材92とが接合されている限り、過変形防止部材9の構造が強固になるからである。
また、図1等においては、可動片4は、貫通穴45、段曲げ部46及びくびれ部49の構成を有する形態であるが、これらの構成うちのいずれか又は全てが省略されていてもよい。例えば、貫通穴45を省略する場合は、樹脂ベース71の突起74aも省略される。また、段曲げ部46が省略される場合は、端子41が平坦な形状となる。この構成においては、段曲げ部46を省略することにより、可動片4及び樹脂ベース71の長手方向の寸法を小さくして、ブレーカー1のさらなる小型化を図ることができる。また、くびれ部49が省略される場合は、可動片4は、当接部42から端子41に亘って等幅に形成され、これに伴い樹脂ベース71の位置決め部75の形状も変更される。このように、可動片4の当接部42並びに樹脂ベース71の当接部74及びカバー部材72の当接部79等の形状は、図1等に示したものに限られず、適宜変更可能である。また、熱応動素子5及び収納部73等の形状も、図1等に示したものに限られず、適宜変更可能である。
また、支持部23に設けられる突起の数は、特に限定されない。例えば、突起24aのみが設けられる構成であってもよいし、固定接点21に隣接する箇所や支持部23の中央部等に、別の突起が追加されていてもよい。さらにまた、PTCサーミスター6と固定片2との間に別部品を配置する構成であってもよい。この場合、支持部23は、上記別部品を介してPTCサーミスター6を支持する。また、支持部23において、一部又は全ての突起が省略されていてもよい。
また、樹脂ベース71とカバー部材72との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合される手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。また、ケース7は、樹脂ベース71とカバー部材72等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって可動片4が挟まれて保持される形態であればよい。この場合、一方が第1ケース、他方が第2ケースとなる。また、樹脂ベース71とカバー部材72との接合においては、かしめ等の手法を用いることができる。かかる手法は、両者の接合部分に金属が配されている場合、特に有効である。
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
また、特開2005−203277号公報に示されるような、当接部42又はその近傍において、可動片4が端子41の側と可動接点3の側に構造的に分離されている形態に、本発明を適用してもよい。また、アームターミナルと可動アームとが溶接等によって固定されていてもよい。この場合において、当接部42及び端子41は、固定片2等と共に樹脂ベース71にインサート成形されていてもよい。
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図14は2次電池パック100を示す。2次電池パック100は、2次電池101と、2次電池101の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備える。図15は電気機器用の安全回路102を示す。安全回路102は2次電池101の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。