本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース7等によって構成されている。ケース7は、樹脂ベース(第1ケース)71と樹脂ベース71の上面に装着されるカバー部材(第2ケース)81等によって構成されている。
固定片2は、リン青銅等を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、樹脂ベース71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部回路と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24aの上に載置されて、突起24aに支持される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、樹脂ベース71の上方に形成されている開口部73bの一部から露出されている。端子22は樹脂ベース71の一端から外側に突き出されている。本実施形態においては、端子22の底面が、ケース7の底面と同一平面上に配設されるように、端子22は、樹脂ベース71から突出する基端部において、階段状に段曲げされている。
本出願においては、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち図1において上側の面)を表(おもて)面、その反対側の面を裏(うら)面として説明している。他の部品、例えば、可動片4についても同様である。
固定片2は、端子22、固定接点21及び支持部23において樹脂ベース71から露出し、端子22と固定接点21との間及び固定接点21と支持部23との間において樹脂ベース71に埋設される。固定片2の支持部23の表面は、ケース7の内部の収容空間に露出し、突起24aを介してPTCサーミスター6と電気的に接触している。
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、固定片2と同等のリン青銅等を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。可動片4の長手方向の一端には外部回路と電気的に接続される端子41が形成されて樹脂ベース71から外側に露出される。可動片4の他端(アーム状の可動片4の先端に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。可動片4は、可動接点3とは反対側に、端子41を有する。本実施形態においては、端子41の底面が、ケース7の底面と同一平面上に配設されるように、端子41は、樹脂ベース71から突出する基端部において、階段状に段曲げされている。可動片4は、可動接点3と端子41との間に、挟持部42、及び弾性部43を有している。挟持部42は、アーム状の可動片4の基端に相当し、ケース7に埋設されて挟持される。弾性部43は、挟持部42から可動接点3の側に延出されている。可動片4は、挟持部42において樹脂ベース71とカバー部材81によって裏表両面側から挟み込まれて固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
樹脂ベース71とカバー部材81には、可動片4の挟持部42と当接し、挟持部42を固定状態で保持する当接部74と当接部82がそれぞれ形成されている。本実施形態では、樹脂ベース71の収納部73の外縁から樹脂ベース71の外壁に亘る領域に当接部74が形成されている。当接部74は、図1中、ケース7の底壁(内底面)の一部を構成する。また、カバー部材81において、可動片4を挟んで当接部74と対向する領域に当接部82が形成されている。当接部82は、図1中、ケース7の天壁(内天面)の一部を構成する。挟持部42は、その裏面において樹脂ベース71の当接部74と当接し、その表面においてカバー部材81の当接部82と当接する。可動片4は、当接部74及び当接部82によって挟持部42の裏表両面から挟み込まれて、ケース7に対して固定される。本実施形態においては、挟持部42が可動片4の短手方向に翼状に突出する第1位置決め部48を有するので、挟持部42が幅広く大きな領域でケース7の当接部74及び当接部82によって挟み込まれ、可動片4がケース7に対して強固に固定される。
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して突出する突起44が形成されている。熱応動素子5の熱変形時に突起44と熱応動素子5とは接触して、突起44を介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(図3参照)。
また、可動片4には、可動片4の厚み方向に貫通する貫通穴45と、クランク状に形成された段曲げ部46と、段曲げ部46に形成された第1斜面47と、樹脂ベース71の係合部75と係合される一対の第1位置決め部48とが形成されている。貫通穴45、段曲げ部46、第1斜面47及び第1位置決め部48は、弾性部43を挟んで可動接点3とは反対側、すなわち弾性部43に対して端子41の側の挟持部42に設けられている。貫通穴45は、可動片4の長手方向の中心線上に設けられている。段曲げ部46は、弾性部43と第1位置決め部48とを段違いに配置する。第1斜面47は、可動片4の短手方向に沿って連続して形成されている。第1位置決め部48は、貫通穴45を挟んで可動片4の短手方向に沿って2箇所に設けられている。第1位置決め部48は、3箇所以上設けられていてもよい。この場合、第1位置決め部48に対応する係合部75も、3箇所以上設けられる。なお、本願においては、複数の第1位置決め部48によって挟まれた領域(貫通穴45の周辺領域)をも含めて、第1位置決め部48とすることもある。
貫通穴45は、可動片4の挟持部42に形成されている。挟持部42は、弾性部43に対して可動片4の短手方向に幅広な領域、すなわち、第1位置決め部48を有する。これにより、第1位置決め部48における可動片4の長手方向に垂直な断面積が、弾性部43における該断面積に対して大きくなり、可動片4は、第1位置決め部48において当接部74及び当接部82によって、ケース7に対して強固に挟持・固定される。
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなる。過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
ケース7を構成する樹脂ベース71及びカバー部材81は、難燃性のポリアミド(PA)、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。樹脂ベース71には、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための収納部73及び可動片4を収納するための開口部73a,73bなどが形成されている。なお、樹脂ベース71に組み込まれた可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6の端縁は、収納部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
また、樹脂ベース71は、可動片4の挟持部42の裏面が当接する当接部74と、可動片4を位置決めするための一対の係合部75と、カバー部材81の凸部84と嵌合される一対の凹部(第2位置決め部)76を有する。当接部74は、可動片4の段曲げ部46及び第1斜面47に対応する形状に形成されている。係合部75は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って2箇所に設けられている。本実施形態では、樹脂ベース71の内側壁の一部が係合部75を構成する。凹部76も、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って2箇所に設けられている。なお、凹部76は、3箇所以上設けられていてもよい。
カバー部材81は、その内壁面から可動片4の段曲げ部46に対応する形状に突出し、挟持部42と当接する当接部82と、当接部82に形成された第2斜面83と、樹脂ベース71の凹部76に対応する凸部84と、可動片4の貫通穴45に挿通される突起85を有する。第2斜面83は、可動片4の第1斜面47と対応し、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されている。凸部84は、樹脂ベース71の凹部76に対応する位置に2箇所設けられている。上述した凹部76が3箇所以上設けられている場合、凸部84も、3箇所以上設けられる。突起85は、当接部82から突出して形成されている。突起85が貫通穴45を貫通し、樹脂ベース71の当接部74と接合されることにより、ケース7の剛性及び強度が高められる。
カバー部材81には、カバー片80がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片80は、上述したリン青銅を主成分とする金属板又はステンレス等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片80は、可動片4の上面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、カバー部材81のひいては筐体としてのケース7の剛性・強度を高める。
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容した樹脂ベース71の開口部73a等を塞ぐように、カバー部材81が、樹脂ベース71の上面に装着される。樹脂ベース71とカバー部材81とは、例えば超音波溶着によって接合される。
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22、41間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図2に示す導通状態に復帰する。
図4は、PTCサーミスター6、熱応動素子5及び可動片4が、順次組み込まれた樹脂ベース71を示している。可動片4は、樹脂ベース71の開口部73a,73bに案内されて樹脂ベース71に組み込まれる。このとき、可動片4の第1位置決め部48の側壁が樹脂ベース71の係合部75の側壁によって案内されるので、樹脂ベース71に対する可動片4の仮の位置合わせがなされる。
この仮の位置合わせの段階では、樹脂ベース71に対する可動片4の位置合わせが正確になされている必要はない。また、可動片4は、後の工程で最終的な位置合わせができるように、樹脂ベース71の上に載置された状態であり、固定されてはいない。なお、樹脂ベース71の開口部73a,73bの位置、形状、寸法等は、仮の位置合わせがなされた位置から完全に位置決めされる定位置まで可動片4を案内し易くなるように、可動片4の対応する箇所と相似形に形成されている。
図5は、樹脂ベース71にカバー部材81が装着される様子を、図4におけるC−C断面で示す。凹部76に凸部84が挿入され、かつ開口部73aに当接部82が挿入されることにより、カバー部材81は、樹脂ベース71に装着される。このとき、可動片4の貫通穴45にカバー部材81の突起85が挿入され、ケース7に対する可動片4の位置合わせが開始される。
図6及び図7は、樹脂ベース71にカバー部材81が完全に装着される際に、カバー部材81によって可動片4が樹脂ベース71とカバー部材81に挟まれた状態で押される様子を示す。図7においては、ブレーカー1の内部構造を明確に示すため、カバー部材81を透視している。樹脂ベース71にカバー部材81が装着される最中に、カバー部材81が樹脂ベース71の方向に押圧される(図中白抜き矢印)と、可動片4の第1斜面47とカバー部材81の第2斜面83とが当接する。第1斜面47及び第2斜面83は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されているので、なおもカバー部材81が樹脂ベース71の方向に押圧されると、可動片4の第1斜面47はカバー部材81の第2斜面83によって可動片4の長手方向に押される(付勢される)。その結果、可動片4の全体が長手方向すなわち固定片2の存在する矢印A方向に押されて移動し、図7に示されるように、第1位置決め部48の可動接点3側の側面48aが係合部75の端子41側の側壁75aと隙間無く当接して係合する。これにより、図4において開口部73a,73b等によって、さらには、図5において突起85によって概略の位置合わせがなされていた可動片4は、樹脂ベース71に対して正確に位置決めされる。すなわち、樹脂ベース71に対して可動片4が組み込まれる際に生じている仮の位置合わせ時の誤差は軽減され、樹脂ベース71に対する可動片4の位置決め誤差を、実質的に樹脂ベース71の係合部75と可動片4の第1位置決め部48の製造時における寸法誤差程度に留めることができる。
なお、図7において、可動片4の第1位置決め部48の側面48aから可動接点3の接触箇所までの距離と、樹脂ベース71の係合部75の側壁75aから固定接点21の接触箇所(図2参照)までの距離は平面視で等しく設定さている。そのため、可動片4が正確に位置決めされると、可動接点3と固定接点21とが適正な接触箇所で接触する。これにより、通電時における両者間の接触抵抗が適正化される。
本実施形態においては、第1位置決め部48及び係合部75が可動片4の短手方向(図7中、紙面の上下方向)に沿って、それぞれ一対設けられる。さらに、一対の第1位置決め部48及び一対の係合部75は、可動片4の短手方向において第1斜面47、第2斜面83を挟んで外側の部分に位置しているので、可動片4の回転による樹脂ベース71とのずれを抑制できる。また、これにより、可動片4の先端部と樹脂ベース71の開口部73bとのクリアランスを小さく設定しても、可動片4の先端部と樹脂ベース71との干渉を防止できるので、樹脂ベース71のさらなる小型化を図ることができる。
図6に示されるように、可動片4の第1斜面47を押圧するカバー部材81の第2斜面83は、その反作用によって第1斜面47から押し返され、カバー部材81全体は矢印A方向とは逆の方向、すなわち可動片4の端子41が存在する矢印B方向に移動する。これに伴い、樹脂ベース71の凹部76の端子41側の側壁76aとカバー部材81の凸部84の端子41側の側壁84aとが隙間無く当接する。これにより、カバー部材81が樹脂ベース71に対して正確に位置決めされることになる。本実施形態においては、凹部76及び凸部84が可動片4の短手方向に沿って、それぞれ一対設けられる。さらに、一対の凹部76及び一対の凸部84は、可動片4の短手方向において第1斜面47、第2斜面83を挟んで外側の部分に位置しているので、可動片4の回転による樹脂ベース71とのずれを抑制できる。その結果、樹脂ベース71に対する第2斜面83の姿勢が安定し、可動片4を正確な方向に押圧することが可能となり、第1斜面47、第2斜面83、係合部75、第1位置決め部48による可動片4の位置決め作用と相まって、可動片4の姿勢をより一層安定させることができる。
図8に示されるように、樹脂ベース71にカバー部材81が完全に装着されると、樹脂ベース71又はカバー部材81のいずれか一方又は両方に超音波振動が付与され、樹脂ベース71とカバー部材81が溶着される。このとき、カバー部材81の突起85の先端が樹脂ベース71の当接部74と当接し、超音波溶着によって接合される。これに伴い、可動片4が、貫通穴45の周辺すなわち挟持部42において、樹脂ベース71及びカバー部材81によって上下方向から強固に接合される。これにより、可動片4が、樹脂ベース71に対して定位置(あるべき位置)で固定される。なお、カバー部材81が樹脂ベース71に溶着され、可動片4が固定された後も、第1斜面47と第2斜面83とは当接状態を維持し、可動片4は、矢印A方向に押され続ける。また、これに伴い、図7に示されるように、第1位置決め部48の側面48aと係合部75の側壁75aとは係合状態を維持し、樹脂ベース71に対する可動片4の位置及び姿勢は、正常に維持され続ける。
本実施形態にあっては、第1位置決め部48は、弾性部43が延出されている方向に対して垂直な幅方向、すなわち、可動片4の長手方向に対して垂直な方向において、弾性部43よりも幅広に形成されている。ここで、第1位置決め部48が弾性部43よりも幅広であるとは、第1位置決め部48の幅方向両端縁の距離が弾性部43の幅方向両端縁の距離よりも大きいことを意味している。このような幅広な第1位置決め部48によって、可動片4の位置決めがより一層正確になされ、ブレーカー1における安定した温度追従性と抵抗値が確保される。
図9は、カバー部材81を2点鎖線で透視したブレーカー1を示している。図4及び図9に示されるように、挟持部42は、第1位置決め部48と、第1挟持部42aと、第2挟持部42bとを有する。樹脂ベース71の内側壁は、収納部73から端子41にかけて、第1位置決め部48と、第1挟持部42aと、第2挟持部42bとに対応する形状に形成されている。すなわち、樹脂ベース71の側壁は、第1挟持部42a及び第2挟持部42bに対向する箇所において、ブレーカー1の幅方向の内方に突出する内突出部77a、77bを有する。
第1挟持部42aは、弾性部43と第1位置決め部48との間に設けられている。さらに、段曲げ部46及び第1斜面47は、第1挟持部42aに形成されている。第1挟持部42aは、弾性部43と等幅に形成されている。すなわち、第1挟持部42aは、上記幅方向において、第1位置決め部48よりも幅狭に形成されている。
このような第1挟持部42aによれば、第1位置決め部48から第1挟持部42aにかけて挟持部42の幅が変動する。これにより、可動片4と樹脂ベース71又はカバー部材81等との間で気密性の確保が困難とされる第1位置決め部48の側面48aに沿って第1位置決め部48から第1挟持部42aに至る距離が長くなり、図9において破線矢印にて示される、水蒸気等がブレーカー1の熱応動素子5等を収納する内部空間である収納部73に侵入する経路Pを長くすることができる。従って、水蒸気等の侵入が抑制され、ケース7の気密性が高められる。
さらに、本発明にあっては、カバー部材81の第2斜面83が可動片4の第1斜面47を押圧することによって、第1位置決め部48の側面48aが、樹脂ベース71の係合部75の側壁75aに付勢された状態で当接し、側壁75aを構成する樹脂が側面48aに溶着している。これにより、側面48aと側壁75aとの密着性が高められ、ケース7の気密性がより一層高められる。
第2挟持部42bは、第1位置決め部48と端子41との間に設けられている。第2挟持部42bの上記幅方向の寸法は、弾性部43の上記幅方向の寸法以下に設定されている。すなわち、第2挟持部42bは、上記幅方向において、第1位置決め部48よりも幅狭に形成されている。これにより、第2挟持部42bは、特許文献1に記載されている第2弾性部としても機能する。
このような第2挟持部42bによれば、第1位置決め部48から第2挟持部42bにかけて挟持部42の幅が変動する。これにより、第1位置決め部48の側面48aに沿って第1位置決め部48から第2挟持部42bに至る距離が長くなり、水蒸気等がブレーカー1の収納部73に侵入する経路Pを長くすることができる。従って、水蒸気等の侵入が抑制され、ケース7の気密性が高められる。さらに、上述した幅狭な第1挟持部42aとの組み合わせによって、水蒸気等がブレーカー1の収納部73に侵入する経路Pは、ジグザグ状に蛇行して形成されることとなり、より一層水蒸気等の侵入が抑制され、ケース7の気密性が高められる。
段曲げ部46及び第1斜面47は、第1挟持部42aに形成されている。上述したように、本実施形態においては、第1挟持部42aは、上記幅方向において、第1位置決め部48よりも幅狭に形成されているので、第1斜面47は、第1位置決め部48よりも幅狭に形成されていることになる。第2斜面83についても同様である。
第1斜面47が形成されている段曲げ部46においては、プレス加工によって形成された可動片4の形状と、射出成形によって形成されたケース7の形状に僅かながら不一致が生ずることがある。このような形状の不一致は、樹脂同士の溶着においては、互いの樹脂が流動することによりほとんど問題とならないが、金属と樹脂との接合にあっては、金属の流動は期待できないため、両者の間に極めて微小な隙間が生ずるおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、第1挟持部42a及び第2斜面83並びに段曲げ部46が第1位置決め部48よりも幅狭に形成されているので、第1斜面47の周辺における極めて微小な隙間がケース7の気密性に及ぼす影響を抑制できる。さらに、第1斜面47及び第2斜面83並びに段曲げ部46が、第1挟持部42a(すなわち、第1位置決め部48よりも収納部73に近くケース7の外壁面から離れた領域)に配設されているので、第1斜面47等の周辺における極微小な隙間がケース7の気密性に及ぼす影響を抑制できる。
樹脂ベース71に固定片2、PTCサーミスター6、熱応動素子5及び可動片4を順次収容する形態においては、可動片4の裏面側に固定接点21、PTCサーミスター6、熱応動素子5及び可動接点3等の枢要な部品が配置される。そのため、可動片4の裏面側の気密性を高めることが特に重要となる。本実施形態においては、可動片4の貫通穴45に挿入される突起85は、カバー部材81の側に設けられている。一方、樹脂ベース71の当接部74は、突起85との当接部位の領域において平坦に形成されている。このような平坦な形状の当接部74によって、樹脂ベース71の当接部74と可動片4の挟持部42との密着性が高められ、両者の間に極微小な隙間が形成されることが抑制される。
固定接点21及び可動接点3の近傍において、樹脂ベース71には、開口部73b及び一対の凹部76が近接して設けられている。本実施形態においては、ケース7の上記幅方向の寸法を低減しつつ、開口部73bと凹部76との間の樹脂ベース71の肉厚を確保するために、凹部76は、樹脂ベース71の外側壁に開放された形状とされている。これにより、樹脂ベース71の剛性・強度を十分に確保しつつ、ケース7の上記幅方向の寸法を低減できる。
さらに、本実施形態にあっては、可動片4の弾性部43は、その先端部43aが幅狭に形成されており、可動接点3も先端部43aと同様に幅狭に形成されている。これにより、可動片4の先端部43aと樹脂ベース71との干渉を回避すると共に、開口部73bの上記幅方向の寸法も小さく設定でき、樹脂ベース71の剛性・強度を十分に確保しつつ、ケース7の上記幅方向の寸法を低減できる。また、弾性部43の大部分は、幅広に形成されているので、弾性部43は大きな弾性力を発生でき、固定接点21と可動接点3との接触圧力を十分に確保することができる。
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、可動片4に形成されている第1斜面47がカバー部材81の第2斜面83と当接し、第1斜面47及び第2斜面83によって力の方向が変換されることにより、可動片4が長手方向である矢印A方向に押されて移動する。これに伴い、可動片4の第1位置決め部48が樹脂ベース71の係合部75と係合される。これにより、可動片4が係合部75によって正確に位置決めされ、樹脂ベース71に対する可動片4の姿勢が安定する。従って、可動片4の先端部43aに設けられている可動接点3と固定接点21との相対的な位置関係のばらつきが抑制され、安定した温度追従性と抵抗値を確保しつつ、ブレーカー1を小型化することができる。
第1位置決め部48が弾性部43よりも幅広に形成されているので、可動片4の位置決めがより一層正確になされ、安定した温度追従性と抵抗値を確保できる。
弾性部43と第1位置決め部48との間に、第1位置決め部48よりも幅狭な第1挟持部42aが設けられているので、第1位置決め部48から第1挟持部42aにかけて挟持部42の幅が変動する。これにより、可動片4と樹脂ベース71又はカバー部材81等との間で気密性の確保が困難とされる挟持部42の側面に沿って第1位置決め部48から第1挟持部42aに至る距離が長くなり、水蒸気等が侵入する経路Pを長くすることができる。従って、水蒸気等の侵入が抑制され、ケース7の気密性が高められる。
第1位置決め部48と端子41との間に、第1位置決め部48よりも幅狭な第2挟持部42bが設けられているので、第1位置決め部48から第2挟持部42bにかけて挟持部42の幅が変動する。これにより、挟持部42の側面に沿って第1位置決め部48から第2挟持部42bに至る距離が長くなるため、上記と同様に、水蒸気等の侵入が抑制され、ケース7の気密性が高められる。
第1斜面47、第2斜面83が、第1位置決め部48よりも幅狭に形成されているので、可動片4と樹脂ベース71又はカバー部材81等との間で気密性の確保が困難とされる第1斜面47又は第2斜面83が狭小となるため、水蒸気等の侵入が抑制され、ケース7の気密性が高められる。
また、可動片4が押される矢印A方向に対して垂直な方向に沿って複数箇所に第1位置決め部48が設けられているので、樹脂ベース71に対する可動片4の回転によるずれを抑制できる。これにより、可動接点3と固定接点21との相対的な位置関係をより一層安定させることができる。
また、樹脂ベース71の凹部76と、カバー部材81の凸部84とが係合することにより、カバー部材81が樹脂ベース71に対して正確に位置決めされるので、可動片4とカバー部材81の当接状態が安定し、可動片4の姿勢のばらつきを抑制できる。
また、可動片4が押される矢印A方向に対して垂直な方向に沿って複数箇所に凹部76が設けられているので、樹脂ベース71に対するカバー部材81の回転によるずれを抑制できる。これにより、可動片4とカバー部材81の当接状態をさらに安定させて、可動片4の姿勢のばらつきをより一層抑制できる。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも第1斜面47,第2斜面83によって押された可動片4の第1位置決め部48と樹脂ベース71の係合部75が係合し、可動片4を位置決めするように構成されていればよい。
また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、第1斜面47,第2斜面83は、可動片4又はカバー部材81のいずれか一方に設けられていればよい。可動片4のみに第1斜面47が設けられている場合は、第1斜面47は、カバー部材81の当接部82等の一部と当接し、可動片4が矢印A方向に押される。このとき、第1斜面47と当接するカバー部材81の一部は、第2斜面83を有する当接部82に限られず、例えば突起、穴、切欠き等のように、カバー部材81の装着時及びその後に第1斜面47との当接により可動片4を所定の方向に押すことのできる形態であれば、その位置や形状は限定されない。一方、カバー部材81のみに第2斜面83が設けられている場合は、可動片4の段曲げ部46等の一部が第2斜面83と当接し、可動片4が矢印A方向に押される。このとき、第2斜面83と当接する可動片4の一部も、第1斜面47を有する段曲げ部46に限られず、例えば突起、穴、切欠き等のように、カバー部材81の装着時及びその後に第2斜面83との当接により可動片4が所定の方向に押されることのできる形態であれば、その位置や形状は限定されない。
また、第1斜面47,第2斜面83等によって可動片4が押される方向は、可動片4の長手方向である矢印A方向に限られない。第1斜面47,第2斜面83の向きを変更することにより、任意の方向に設定できる。これに伴い、係合部75、第1位置決め部48、凹部76及び凸部84の位置等も適宜変更される。
また、第1斜面47,第2斜面83が設けられる位置は、段曲げ部46、当接部82に限られず、可動片4が所定の方向に押される限り、任意の場所に配置することができる。例えば、第1斜面47は、第1位置決め部48又は第2挟持部42bに設けられていてもよい。第1斜面47の移動により、ケース7の密閉性の低下が懸念される場合にあっては、樹脂ベース71とカバー部材81とを溶着した後、2次的なインサート成形により、ブレーカー1の外側に樹脂を充填等すればよい。
また、可動片4は、挟持部42の全体において、樹脂ベース71及びカバー部材81によって挟持されている必要はなく、挟持部42の一部において挟持されている形態であってもよい。この場合、第1斜面47及び第1位置決め部48は、樹脂ベース71及びカバー部材81によって挟持されていない箇所に設けられていてもよい。このような構成により、ケース7の密閉性の低下が懸念される場合にあっては、上記と同様に、2次的なインサート成形により、ブレーカー1の外側に樹脂を充填等すればよい。
また、より高いレベルの密閉性がケース7に要求される場合にあっては、樹脂ベース71とカバー部材81とを溶着した後、可動片4の端子41の基端部に形成されている段曲げ部の外側領域に、2次的なインサート成形により樹脂を充填等すればよい。固定片2の端子22の基端部についても同様である。
また、第1位置決め部48に当接して、可動片4を位置決めする部分(以下、当接部)は、第1位置決め部48と係合する係合部75に限られることなく、第1位置決め部48と当接して可動片4を位置決めする構成であれば、特に限定されない。例えば、第1位置決め部48と当接部が、凹部とそれに対応する凸部、切り欠きとそれに対応する凸部又は貫通穴とそれに対応する凸部で構成されていてもよい。これらの各構成は、第1位置決め部48に一方が形成され、当接部に他方が形成されていればよい。
また、凹部76は、樹脂ベース71の外側壁に開放された形状に限られず、樹脂ベース71の外側壁に開放されないように、内側に閉じた形態で設けられていてもよい。また、本実施形態において、凹部76の形状は、ブレーカー1の平面視で概略矩形状に形成されているが、これに限られることはない。すなわち、凹部76は、少なくともカバー部材81の一部と当接し、カバー部材81を位置決めできる形態であればよい。凹部76とカバー部材81との当接の形態は、係合・契合の他、嵌合等が適用できる。
また、本実施形態において、凹部76は、固定接点21を挟む樹脂ベース71の角部に形成されているが、別の位置に設けられていてもよい。例えば、凹部76は、当接部74の近傍の内突出部77a又は77bに設けられていてもよい。これらに伴い、カバー部材81の凸部84の形状や位置も変更される。また、樹脂ベース71に凸部が、カバー部材81に凹部がそれぞれ形成されてもよい。この場合、樹脂ベース71に形成された凸部が第2位置決め部となる。この場合においても、第1斜面47及び第2斜面83を挟んで可動片4が押される方向に対して垂直な方向に連続するように第2位置決め部を形成することにより、カバー部材81の回転をより一層抑制できる。さらにまた、樹脂ベース71に形成される凸部は、上下方向すなわちブレーカー1の厚み方向に突出する形態に限られず、幅方向すなわちブレーカー1の短手方向に突出する形態であってもよい。
また、本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても適用可能であり、安定した温度追従性と抵抗値を確保しつつ、ブレーカー1の小型化を図ることができる。また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカー1の構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
また、第1斜面47及び第2斜面83は、その傾斜角度が一定である形態に限られず、ブレーカー1のケース7の底面に対する傾斜角度が漸増又は漸減する形態であってもよい。
また、樹脂ベース71とカバー部材81との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合され十分な気密性が得られる手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。また、ケース7は、樹脂ベース71とカバー部材81等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって構成される形態であればよい。この場合、一方が第1ケース、他方が第2ケースとなる。
また、特開2005−203277号公報に示されるような、挟持部42又はその近傍において、端子41の側と可動接点3の側に分割されている構造に、本発明を適用してもよい。この場合、可動接点3側の可動アームに第1斜面47及び第1位置決め部48等が設けられる。また、端子41側のアームターミナルと可動接点3側の可動アームとが溶接等によって固定されていてもよい。さらにまた、本発明は、特開2006−331705号公報に示されるような、2つの可動接点(同文献中、第1の接点141、第2の接点142)を有する形態にも適用可能である。
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図10は2次電池パック100を示す。2次電池パック100は、2次電池101と、2次電池101の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備える。図11は電気機器用の安全回路102を示す。安全回路102は2次電池101の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。