JP6215927B2 - バニリンを作製するための方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の電解を含む、バニリンを調製するための方法に関する。
再生可能な原料の、とりわけ香料及び芳香物質として適した価値のある化学品への変換は、非常に興味深い。リグニン、及びアルカリリグニン、硫酸リグニン又はスルホン酸リグニンなどのリグニン含有物質は、パルプをもたらすための木材加工の廃棄物又は副産物として生じる。リグニン含有物質の総生成量は、年当たり約200億メートルトンと推定される。したがって、リグニンは、価値のある原材料である。このリグニンの一部は、暫定的にさらに使用されている。例えば、製紙において生じる黒液のアルカリ性処理によって作製され得るアルカリリグニンは、北米では、木材及びセルロースをベースとしたパーティクルボード用の結合剤として、糖溶液を清澄化するため、アスファルトエマルションを安定化するため、さらに泡の安定化のための分散剤として使用される。しかし、はるかに大量の廃リグニンが、例えばパルプ加工のために、エネルギー源として、燃焼を介して使用される。
バイオポリマーリグニンは、様々なフェノール系モノマー構成単位、例えば、p-クマリルアルコール、コニフェリルアルコール及びシナピルアルコールからなる植物の細胞壁に発生する三次元の巨大分子の群である。その組成のため、バイオポリマーリグニンは、自然界における芳香族の唯一の重要な供給源である。加えて、この再生可能な天然材料の使用は、食品としての使用には適さない。
バニリン、すなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドは、食品用の芳香物質として、デオドラント及び香水の香料として、さらに医薬品及びビタミン剤の香味強化剤用として、高価な天然のバニラの代わりに広く使用されている合成芳香物質である。バニリンは、例えばL-ドーパ、メチルドーパ及びパパベリンなどの様々な薬剤の合成における中間体でもある。
今まで、芳香族アルデヒドは、一般に、石油化学製品の前駆体から作製されてきた。バニリンが、リグニンの構成単位に構造的に類似しているために、リグニンは、バニリンを作製するための出発物質としても適しているはずである。したがって、リグニンの、バニリン及びその他の芳香族アルデヒドへの酸化開裂は、1940年から多数の研究の課題となっている。最も頻繁に使用されるリグニンの転換は、酸化銅(J. M.Pepper、B. W. Casselman、J. C. Karapally、Can. J. Chem. 1967、45、3009-3012を参照)又はニトロベンゼンとの化学酸化(B. Leopold、Acta. Chem. Scand. 1950、4、1523-1537; B. Leopold、Acta. Chem. Scand. 1952、6、38-39を参照、酸分解(J. M.Pepper、P. E. T. Baylis、E. Adler、Can. J. Chem. 1959、37、1241-1248を参照)、水素化分解(F.E. Brauns、Academic Press 1952、New York、511-535を参照)又はオゾン分解(C. Doree、M. Cunningham、J. Chem. Soc. 1913、103、677-686)である。主要な方法の1つは、銅又はコバルト触媒の存在下で、アルカリ性媒体中、150℃で、リグニンを酸素で処理することである。(H. R. Bjorsvik、Org. Proc. Res. Dev. 1999、3、330-340を参照)。
WO87/03014は、強アルカリ性水溶液中の、好ましくは170〜190℃の温度のリグニンの電気化学的酸化のための方法を記載している。アノードとして、主に銅又はニッケルから作られている電極が使用される。低分子量の生成物として、詳細にはバニリン酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸)、バニリン、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシアセトフェノン及びアセトバニロン(4-ヒドロキシ-3-メトキシアセトフェノン)、さらに任意でフェノール、シリング酸(syringaic acid)(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸)及びシリングアルデヒド(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒド)を含む複合混合物が得られる。一般に、4-ヒドロキシ安息香酸が、主な生成物である。バニリン形成に対する選択性は低く、高温でのみ、合理的に満足のいくものである。加えて、比較的急激な反応条件下で、電極材料の激しい腐食が起こる。この腐食は、バニリンへの重金属の混入に関する問題でもある。さらに、高温は、エネルギーの観点から、好ましくない。しかし、温度の低下は、選択性の有意な喪失につながる。
C. Z. Smithら、J. Appl. Electrochem. 2011、DOI 10.1007/s10800-010-0245-0は、同様に、170℃の温度で、ニッケル電極でのアルカリ性条件下での硫酸リグニンのバニリンへの電気化学的酸化に対する調査を記載している。電解セルとして、硫酸リグニン含有電解質が、カソードとして中心の円筒状ニッケルグリッド及びアノードとしてカソードを円筒状にとりかこむニッケルグリッドを有する円筒状の電極配置を通して連続的に循環する、循環を有するセルが使用される。選択性の問題及び腐食の問題は、これによって解決していない。
WO2009/138368は、水性のリグニン含有電解質がダイアモンド電極で酸化する、リグニンの電気的分解のための方法を記載している。この方法において、詳細には、バニリンと一緒に、アセトバニロン又はグアイアコールなどのその他のヒドロキシベンズアルデヒド誘導体を、おおよそ等しい留分で含む低分子量の生成物が、形成される。リグニン酸化のバニリンに対する選択性は低い。本発明者ら自身の調査が示すように、反応条件下では、ダイアモンド電極の腐食が起こる。
先の欧州特許出願11177320.6は、アノード材料として銀又は銀含有合金が使用される、バニリンの作製のためのリグニン含有溶液又は懸濁液の電解を記載している。
本発明の目的は、バニリン形成に対して、良好な収率で、高い選択性を有する、リグニン又はリグニン含有物質からバニリンの作製を可能にする方法の提供である。加えて、この方法は、先行技術の方法よりも穏やかな条件下での実行もできるべきである。腐食の問題を改善することも目的である。特に、バニリンは、芳香物質としてのその使用を除外しない形態で得られるべきである。
これらの及びさらなる目的は、アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液が電解され、アノード材料として、Co-ベース合金、Fe-ベース合金、Cu-ベース合金及びNi-ベース合金のなかから選択されるベース合金が使用される、以下に記載する方法によって達成される。
したがって、本発明は、アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の電解を含む、バニリンを調製するための方法であって、アノード材料として、Co-ベース合金、Fe-ベース合金、Cu-ベース合金及びNi-ベース合金のなかから選択されるベース合金が使用される方法に関する。
本発明による方法は、多くの利点に結びついている。したがって、使用される電極材料は、選択性の有意な増加につながる。この高い選択性は、驚くべきことに、100℃までの比較的低い温度でさえ達成することができる。加えて、本発明によって使用されるアノード材料は、腐食反応条件に対して極めて耐性があることがわかっており、先行技術の方法とは対照的に、腐食も有意な腐食も起こらない。
本発明による方法において、リグニン又はリグニン含有物質を含み、水性懸濁液又は水溶液の形態で存在する水性のリグニン含有電解質は、アルカリ性条件下で電解にかけられる。この場合、存在するリグニン又はリグニン誘導体の酸化が、アノードで起こる。カソードでは、典型的に、水性の電解質の還元が、例えば、水素の形成とともに進行する。
本発明による方法において、ベース合金から作られる1つ以上のアノードが、アノード材料として使用され、ここでベース合金は、Co-ベース合金、Fe-ベース合金、Cu-ベース合金及びNi-ベース合金のなかから選択される。
ベース合金は、少なくとも50重量%、特に少なくとも55重量%、具体的には少なくとも58重量%、例えば50〜99重量%、好ましくは50〜95重量%、特に55〜95重量%、とりわけ好ましくは55〜90重量%、具体的には58〜90重量%のそれぞれのベース金属(Co-ベース合金の場合はCo、Cu-ベース合金の場合はCu、Ni-ベース合金の場合はNi、及びFe-ベース合金の場合はFe)、及び少なくとも1つのさらなる合金成分を含み、ここで、ベース金属とは異なるすべてのさらなる合金成分の総量は、典型的に、少なくとも1重量%、特に少なくとも5重量%、具体的には少なくとも10重量%であり、例えば1〜50重量%の範囲、好ましくは5〜50重量%の範囲、特に5〜45重量%の範囲、とりわけ好ましくは10〜45重量%の範囲、具体的には10〜42重量%の範囲であり、重量パーセントでのすべての数字が、いずれの場合でも合金の総重量に基づいている、合金を意味すると解釈される。
典型的なさらなる合金成分は、具体的にはCu、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo、V、Nb、Ti、Ag、Pb及びZn、さらにSi、C、P及びSである。したがって、ベース金属とは異なる上述の合金成分のうち、少なくとも1つのさらなる合金成分を含むベース合金が優先される。
特に良好な選択性及び/又は良好な収率を同時に有するその安定性に関して、Ni-ベース合金、Fe-ベース合金及びCo-ベース合金、特にNi-ベース合金並びにCo-ベース合金が優先される。
特に満足のいく安定性を同時に有するその選択性に関して、Cu-ベース合金が優先される。
したがって、本発明の第1の態様は、アノード材料がNi-ベース合金である方法に関する。典型的なニッケルベース合金は、実質的に、即ち少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%、具体的には少なくとも99重量%の
a1) 50〜95重量%、特に55〜95重量%、とりわけ好ましくは55〜90重量%、具体的には58〜90重量%のNi、並びに
b1) 5〜50重量%、特に5〜45重量%、とりわけ好ましくは10〜45重量%、具体的には10〜42重量%のCu、Fe、Co、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ti、Si、Al、C及びSのなかから選択される少なくとも1つのさらなる合金成分、
を含む。
Ni-ベース合金において、Al、Si、C及びSの総量は、5重量%を超えないことが好ましい。合金に対して有意な量でNi-ベース合金中に存在し得るさらなる合金成分の典型的な分量は、以下の表1に提示される。
Figure 0006215927
第1の実施形態のNi-ベース合金のなかで、さらなる合金成分として5〜35重量%、特に10〜30重量%のCuを含むものが特に優先される。これらの合金は、以降グループ1.1と称する。Cuに加えて、グループ1.1のベース合金は、以下の合金成分:Fe、Co、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ti、Si、Al、C及びSの1つ以上を、最大45重量%で、特に最大40重量%の量で含むことができる。好ましくは、さらなる合金成分は、存在する場合、表1に提示された量で存在することになる。
グループ1.1のNi-ベース合金の例は、EN略称NiCu30Fe(Monel 400)及びNiCu30Alの合金、さらに以下の組成:Ni 63重量%、Cu 30重量%、Fe 2重量%、Mn 1.5重量%、Ti 0.5重量%のニッケル-Cu合金(Monel 500K)である。
第1の実施形態のNi-ベース合金のなかで、さらなる合金成分として5〜40重量%、特に15〜30重量%のCrを含むものも特に優先される。これらの合金は、以降グループ1.2と称する。Crに加えて、グループ1.2のベース合金は、以下の合金成分:Fe、Co、Mn、Cu、Mo、W、V、Nb、Ti、Si、Al、C及びSの1つ以上を、最大40重量%、特に最大35重量%の量で含むことができる。好ましくは、さらなる合金成分は、存在する場合、表1に提示された量で存在する。グループ1.2のNi-ベース合金のなかで、さらなる合金成分として、特に合計1〜30重量%の量でMo、Nb及び/又はFeを含むものが特に優先される。
グループ1.2のNi-ベース合金の例は、EN略称NiCr19NbMo(Inconel(登録商標)合金718)及びNiCr15Fe(Inconel(登録商標)合金600)、NiCr22Mo19Fe5(Inconel(登録商標)625)、NiMo17Cr16FeWMn(Hastelloy(登録商標)C276)の合金、ニッケル含有量が72〜76重量%、Cr含有量が18〜21重量%、C含有量が0.08〜0.13重量%及びFe含有量が5重量%のNi-Cr-Fe-合金、並びにニッケル含有量が48〜60重量%、Cr含有量が19重量%、Co含有量が13.5重量%、Mo含有量が4.3重量%のNi-Cr-Co-Mo-合金(Waspaloy(登録商標))である。
第1の実施形態のNi-ベース合金のなかで、さらなる合金成分として5〜35重量%、特に10〜30重量%のMoを含むものも特に優先される。これらの合金は、以降グループ1.3と称する。Moに加えて、グループ1.3のベース合金は、以下の合金成分:Fe、Co、Mn、Cu、Cr、W、V、Nb、Ti、Si、Al、C及びSの1つ以上を、最大40重量%、特に最大35重量%の量で含むことができる。好ましくは、さらなる合金成分は、存在する場合、表1に提示された量で存在する。グループ1.3のNi-ベース合金のなかで、さらなる合金成分として、特に合計1〜30重量%の量でCr、Nb及び/又はFeを含むものが特に優先される。
グループ1.3のNi-ベース合金の例は、EN略称NiMo28(Hastelloy(登録商標)B及びHastelloy(登録商標)B-2)及びNiMo29Cr(Hastelloy(登録商標)B-3)の合金である。
第1の実施形態のNi-ベース合金のなかで、好ましくは高い選択性を同時に有する高い安定性に関して、グループ1.2及び1.3のものが特に優先される。
本発明の第2の実施形態は、アノード材料がCoベース合金である方法に関する。典型的なコバルトベース合金は、実質的に、即ち少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%、具体的には少なくとも99重量%の:
a2) 50〜95重量%、特に55〜95重量%、とりわけ好ましくは55〜90重量%、具体的には58〜90重量%のCo、並びに
b2) 5〜50重量%、特に5〜45重量%、とりわけ好ましくは10〜45重量%、具体的には10〜42重量%の、Cu、Fe、Ni、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ti、Si、P及びCのなかから選択される少なくとも1つのさらなる合金成分
を含む。
Co-ベース合金において、Si、C及びPの総量は、5重量%を超えないことが好ましい。合金に対して有意な量でCo-ベース合金中に存在し得るさらなる合金成分の典型的な分量は、以下の表2に提示される:
Figure 0006215927
第2の実施形態のCo-ベース合金のなかで、さらなる合金成分として5〜40重量%、特に7〜30重量%のCrを含むものが特に優先される。これらの合金は、以降グループ2.1と称する。Crに加えて、グループ2.1のベース合金は、以下の合金成分:Fe、Ni、Mn、Cu、Mo、W、V、Nb、Ti、Si、C及びPの1つ以上を、最大40重量%、特に最大35重量%の量で含むことができる。好ましくは、さらなる合金成分は、存在する場合、表2に提示された量で存在する。グループ2.1のCo-ベース合金のなかで、さらなる合金成分として、特に合計1〜30重量%の量でMo、W及び/又はFeを含むものが特に優先される。
グループ2.1のCo-ベース合金の例は、以下の組成の合金である:
i. Co 53重量%、Cr 31重量%、Fe 14重量%、C 1.2重量%(Stellite(登録商標)4)、
ii. Co 65重量%、Cr 28重量%、W 4.5重量%、C 1.2重量%、Si 1.1重量%(Stellite(登録商標)6)、
iii. Co 66.5重量%、Cr 28重量%、Mo 5重量%、C 0.5重量%(Stellite(登録商標)21)、
iv. Co 58〜62重量%、Cr 25〜30重量%、Mo 5〜10重量%(バイタリウムタイプ、例えばHaynes合金21)、
v. Co 59重量%、Cr 8.5重量%、Mo 29.5重量%、Si 2.1重量%(T 400)。
本発明の第3の実施形態は、アノード材料がFe-ベース合金である方法に関する。典型的な鉄-ベース合金は、高合金ステンレス鋼である。これらは、一般に、実質的に、即ち少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%、具体的には少なくとも99重量%の:
a3) 50〜95重量%、特に55〜95重量%、とりわけ好ましくは55〜90重量%、具体的には58〜90重量%のFe、並びに
b3) 5〜50重量%、特に5〜45重量%、とりわけ好ましくは10〜45重量%、具体的には10〜42重量%のCu、Co、Ni、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ti、Si、P、S及びCから選択される少なくとも1つのさらなる合金成分
を含む。
Fe-ベース合金において、Si、C及びPの総量は、10重量%を超えないことが好ましい。合金に対して有意な量でFe-ベース合金中に存在し得るさらなる合金成分の典型的な分量は、以下の表3に提示される:
Figure 0006215927
第3の実施形態のFe-ベース合金のなかで、ベース金属に加えて、合金成分としてCrを含み、クロム含有量が、一般に、5〜30重量%、特に10〜25重量%の範囲であるクロム含有ステンレス鋼が、特に優先される。これらの合金は、以降グループ3.1と称する。Crに加えて、グループ3.1のベース合金は、以下の合金成分:Co、Ni、Mn、Cu、Mo、V、Nb、Ti、Si、C、S及びPの1つ以上を、最大40重量%、特に最大35重量%の量で含むことができる。好ましくは、さらなる合金成分は、存在する場合、表3に提示された量で存在する。グループ3.1のFe-ベース合金のなかで、さらなる合金成分として、特に合計1〜30重量%の量でNi、Mo、V、Ti、Si及び/又はNbを含むものが、特に優先される。
グループ3.1のFe-ベース合金の例は、クロム鋼、例えばX12Cr13、X6Cr17及びX20Cr13、クロム-ニッケル鋼、例えばX2CrNi12、X5CrNi18-10、X8CrNiS18-9、X2CrNi19-11、X2CrNi18-9、X10CrNi18-8、X1CrNi19-9、X2CrNiMo17-12-2、X2CrNiMo19-12、X2CrNiMo18-14-3、X2CrNiMoN18-14-3、X13CrNiMoN22-5-3、X6CrNiTi18-10、X6CrNiMoTi17-12-2、GX5CrNiMoNb19-11-2及びX15CrNiSi25-21 クロム-モリブデン鋼、例えばX12CrMoS17及び25CrMo4、さらにクロム-バナジウム鋼である。
本発明の第4の実施形態は、アノード材料がCu-ベース合金である方法に関する。典型的な銅-ベース合金は、一般に、実質的に、即ち少なくとも95重量%、特に、少なくとも98重量%、具体的には少なくとも99重量%の、
a4) 50〜95重量%、特に55〜95重量%、とりわけ好ましくは55〜90重量%、具体的には58〜90重量%のCu、並びに
b4) 5〜50重量%、特に5〜45重量%、とりわけ好ましくは10〜45重量%、具体的には10〜42重量%のAg、Pb、Ni及びZnのなかから選択される少なくとも1つのさらなる合金成分
を含む。
グループ3.1のCu-ベース合金の例は、ニッケルシルバー(Cu 62重量%、Ni 18重量%、Zn 20重量%の合金)並びに白銅(Cu 75重量%及びNi 25重量%の合金)である。
原則として、アノードとして、当業者に知られているいずれかの電極タイプが使用できる。これらは、完全にそれぞれのベース合金からなることができる、又はベース合金でコーティングされている支持体を有する支持電極とすることができる。それぞれのベース合金からなる電極が優先される。アノードとして使用される電極は、例えば、エキスパンドメタル、グリッド又は金属板の形態の電極とすることができる。
原則として、カソードとして、水性系の電解に適した、当業者に知られているいずれかの電極が、使用できる。還元プロセスがカソードで起こり、リグニンがアノードで酸化されるので、例えばニッケルカソードなどの重金属の電極が使用される場合、バニリンのこの重金属による汚染は低いので、得られるバニリンは、食品工業において問題なく使用することができる。好ましくは、電極材料は、低水素過電圧を呈する。ニッケル、Ni-ベース合金、Co-ベース合金、Fe-ベース合金、Cu-ベース合金、銀、Ag-ベース合金、即ち銀の含有量が少なくとも50重量%である銀含有量の多い合金、RuOxTiOx-混合酸化物、白金めっきチタン、白金、グラファイト又は炭素のなかから選択される電極材料を有する電極が、ここでは優先される。特に、カソードの電極材料は、Ni-ベース合金、Co-ベース合金、Fe-ベース合金、Cu-ベース合金のなかから、とりわけ好ましくはNi-ベース合金、Co-ベース合金及びFe-ベース合金のなかから、具体的にはグループ1.1、1.2、1.3、2.1及び3.1のベース合金のなかから選択される。
原則として、カソードとして、当業者に知られているいずれかの電極のタイプが使用できる。これは、完全にそれぞれの電極材料からなることができる、又は電極材料でコーティングされている導電性の支持体を有する支持電極とすることができる。それぞれの電極材料、特に上述のベース合金、具体的にはグループ1.1、1.2、1.3、2.1及び3.1のベース合金の1つを含む電極が優先される。カソードとして使用される電極は、例えば、エキスパンドメタル、グリッド又は金属板の形態の電極とすることができる。
アノード及びカソードの配置は、限定されず、例えば、交互の極性の複数の積層の形態で配置することもできる平面の格子及び/又はプレートの配置、並びに交互の極性の複数の円筒の形態で配置することもできる円筒形のグリッド、格子又はチューブの円筒形の配置を含む。
最適な空時収率を達成するため、様々な電極の幾何学形状が、当技術者に知られている。有利な電極幾何学形状は、複数の電極の二極性配置、棒状のアノードが円筒形のカソードによって包囲されている配置、又はカソード及びアノードがワイヤグリッドを含み、これらのワイヤグリッドが、重なって円筒状に巻かれて入っている配置である。
本発明の1つの実施形態において、アノード及びカソードは、セパレーターによって互いに分離され得る。原則として、セパレーターとして、電解セルで通常使用されるすべてのセパレーターが適している。セパレーターは、典型的に、電解条件下で不活性である非伝導性材料、例えばプラスチック材料、特にTeflon材料又はTeflonコーティングしたプラスチック材料から作られている、電極の間に配置される多孔質の平面状構造、例えば格子、グリッド、織布又は不織布である。
電解のために、分割又は非分割連続流セル、キャピラリーギャップセル又はプレート積層セル(plate stack cell)などの、当業者に知られているいずれかの電解セルが使用できる。非分割連続流セル、例えば、電解質が循環において連続的に電極で伝導する、循環を伴う連続流セルがとりわけ優先される。この方法は、不連続及び連続的の両方で、成功裏に実行することができる。
本発明による方法は、工業規模で同様に実行することができる。対応する電解セルは、当業者に知られている。この発明のすべての実施形態は、実験室規模だけでなく、工業規模にも関する。
本発明の好ましい実施形態において、電解セルの内容物は、混合される。セルの内容物のこの混合のために、当業者に知られているいずれかの機械撹拌器が使用できる。Ultraturrax、超音波、ジェットノズル若しくは循環又はこれらの測定器の組合せの使用などのその他の混合方法の使用が、同様に好ましい。
アノード及びカソードに電解電圧を印加することによって、電流は、電解質を通って伝導する。過酸化及び爆鳴気の形成などの副反応を避けるために、一般に、電流密度は、1000mA/cm2、特に100mA/cm2を超えない。方法が実行される電流密度は、一般に、1〜1000mA/cm2、好ましくは、1〜100mA/cm2である。とりわけ好ましいのは、本発明による方法は、1及び50mA/cm2の間の電流密度で実行される。
総電解時間は、明らかに、電解セル、使用される電極及び電流密度に基づく。最適な時間は、所定の実験によって、例えば電解中のサンプリングによって、当業者らによって決定され得る。
電極上の堆積を避けるために、極性は、短時間の間隔で変化し得る。極性の変化は、30秒〜10分の間隔で進行し得る。30秒〜2分の間隔が、優先される。この目的のために、アノード及びカソードは、同じ材料を含むことが好都合である。
先行技術から知られている方法は、高い頻度で、高圧及び100℃をはるかに超える温度で実行されなければならない。このことは、電解セルが、加圧に対して設計されなければならないので、電解セルに特定の要求が生じる。さらに、電解セル及び電極の両方は、高温で確立される腐食条件下で損害を受ける。本発明による方法において、高圧及び高温で操作することは必須ではない。
電解は、一般に、0〜100℃、好ましくは50〜95℃、特に70〜90℃の範囲の温度で、本発明による方法によって実行される。
本発明による方法において、電解は、一般に、2000kPaより低い、好ましくは1000kPaより低い、特に150kPaより低い圧力で、例えば50〜1000kPa、特に80〜150kPaの範囲の圧力で、実行される。とりわけ好ましくは、本発明による方法は、気圧(101±20kPa)の範囲の圧力で、実行されるべきである。
とりわけ好ましい実施形態において、本発明による方法は、50〜95℃、特に70〜90℃の範囲の温度で、気圧(101±20kPa)の範囲で、実行される。
リグニン含有水性懸濁液又は水溶液は、一般に、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の総重量に基づき、0.5〜30重量%、好ましくは1〜15重量%、特に1〜10重量%のリグニンを含む。
本発明によれば、バニリンの調製のために、アルカリ性水性懸濁液又は水溶液が電解される。アルカリ性リグニン含有水溶液又は水性懸濁液は、ここで及びこれ以降、リグニン又はリグニン誘導体、例えば硫酸リグニン、スルホン酸リグニン、クラフトリグニン、アルカリリグニン若しくはオルガノソルブリグニン、又はこれらの混合物をリグニン成分として含み、アルカリ性pH、好ましくは少なくとも10、特に少なくとも12、具体的には少なくとも13のpHを有する水溶液又は水性懸濁液を意味するものと解釈される。
アルカリ性水溶液又は水性懸濁液は、紙料、パルプ又はセルロースの調製などの工業プロセスにおける副産物、例えば黒液、さらには、亜硫酸法から、硫酸塩法から、オルガノセル法又はオルガノソルブ法から、ASAM法から、クラフト法から又は天然パルプ化プロセスからリグニン含有廃水流として生じる、水溶液又は水性懸濁液とすることができる。アルカリ性水溶液又は水性懸濁液は、リグニン又はリグニン誘導体、例えば硫酸リグニン、スルホン酸リグニン、クラフトリグニン、アルカリリグニン又はオルガノソルブリグニン、又は紙料、パルプ若しくはセルロースの調製などの工業プロセスにおいて生じるリグニン、例えば、黒液から、亜硫酸法から、硫酸塩法から、オルガノセル法又はオルガノソルブ法から、ASAM法から、クラフト法から又は天然パルプ化プロセスからのリグニンを、水性アルカリ中又は塩基を添加した水中に溶解することによって調製される、水溶液又は水性懸濁液とすることができる。
紙、パルプ又はセルロースの調製のすべての方法において、リグニン含有廃水流が生じる。これらは、任意選択でアルカリ性のpHを設定した後、本発明による方法において、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液として使用することができる。紙の調製のための亜硫酸法の廃水流は、リグニンスルホン酸としてリグニンを含むことが多い。リグニンスルホン酸は、本発明による方法において又はアルカリ性加水分解後に直接使用することができる。硫酸塩法又はクラフト法において、リグニン含有廃水流が、例えば黒液の形態で生じる。その環境適合性から将来より大きな重要性を達成すると考えられるオルガノセル法において、リグニンが、オルガノソルブリグニンとして生じる。リグニンスルホン酸含有廃水流又はオルガノソルブリグニン含有廃水流、さらに黒液は、本発明による方法のためのアルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液として、とりわけ適している。
別法として、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液は、水性アルカリ中、即ち、適した塩基の水溶液中又は塩基を添加した水中に、少なくとも1つのリグニン含有材料を溶解又は懸濁することによって、調製することもできる。リグニン含有材料は、リグニン含有材料の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、特に少なくとも15重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%のリグニンを含むことが好ましい。リグニン含有材料は、クラフトリグニン、スルホン酸リグニン、酸化リグニン、オルガノソルブリグニン、又は紙工業若しくは繊維製造からのその他のリグニン含有残渣のなかから、特にクラフトリグニン、スルホン酸リグニン及び非酸化リグニンの電気化学的酸化において生じる酸化リグニンのなかから選択されることが好ましい。
アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液のpHを設定するための塩基として、具体的には無機塩基、例えばNaOH又はKOHなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウムなどのアンモニウム塩、及び例えばソーダの形態の炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩が使用できる。アルカリ金属水酸化物、特にNaOH及びKOHが、優先される。リグニン含有水性懸濁液又は水溶液中の無機塩基の濃度は、5mol/l、特に4mol/lを超えるべきではなく、典型的に、0.01〜5mol/lの範囲、特に0.1〜4mol/lの範囲である。
好ましい実施形態において、先の電解サイクルから由来する酸化リグニンが、使用される。このことは、少なくとも1つのさらなる電解サイクルにおいて、好ましくは少なくとも2つのさらなる電解サイクルにおいて、特に少なくとも3つのさらなる電解サイクルにおいて、酸化リグニンを使用する場合に有利であることが証明されている。酸化リグニンのこの反復使用は、バニリンが繰り返し単離され得るという点で有利である。したがって、バニリンの収率は、初めに使用されたリグニンの量に基づいて、顕著に増加し、したがって、全プロセスの経済的な効率が増加する。さらに、酸化リグニンの反復使用によって、酸化感受性バニリンの濃度が、酸化操作ごとの電解質において非常に低く保持することができるので、過酸化などの不必要な副反応を効果的に抑制することができ、一方、バニリンの全収率は、全プロセス(複数の電解サイクル)にわたって増加する。
したがって、さらなる好ましい実施形態は、アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液が、
a) アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の酸化によって、特に電解によって得られた水性反応混合物から、バニリンを激減させることによって調製される、水性懸濁液又は水溶液、及び
b) アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の酸化によって、特に電解によって得られた酸化リグニンを、水性アルカリ中に溶解又は懸濁することによって調製される、水性懸濁液又は水溶液
のなかから選択される、本発明による方法に関する。
紙及びパルプの調製からの廃水流又は残渣、特に黒液又はクラフトリグニンを使用することが、とりわけ好ましい。したがって、さらに好ましい実施形態は、アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液が、紙及びパルプの調製からの廃水流、特に黒液又はクラフトリグニンの溶液のなかから選択される、本発明による方法に関する。
リグニン含有水性懸濁液又は水溶液中のリグニン濃度が高いと、溶液又は懸濁液の粘度は、大きく増加し得、リグニンの溶解性は、非常に低くなり得る。これらの場合、電気化学的酸化の前に、リグニンの前加水分解を実行し、それによってリグニンの溶解性を向上させ、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の粘度を減少させることが、有利であり得る。典型的に、リグニンの前加水分解のために、リグニンは、水性アルカリ金属水酸化物溶液中で100℃超に加熱される。アルカリ金属水酸化物の濃度は、0.5〜5mol/l、特に1.0〜3.5mol/lであることが好ましい。好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが、使用される。前加水分解法の好ましい実施形態において、リグニン含有アルカリ金属水酸化物溶液は、150〜250℃、特に170〜190℃の温度に加熱され、1〜10h、好ましくは2〜4h、激しく撹拌される。前加水分解されたリグニンは、電気化学的酸化の前に、アルカリ金属水酸化物溶液から分別することができる。別法として、リグニン含有アルカリ金属水酸化物溶液を用いて、直接電気化学的酸化を実行する可能性がある。
アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液は、伝導性を向上させるために、導電性塩含むことができる。このことは、一般に、Li、Na、Kの塩などのアルカリ金属塩、又はテトラ(C1-C6-アルキル)アンモニウム若しくはトリ(C1-C6-アルキル)メチルアンモニウム塩などの第四級アンモニウム塩が関与する。考慮される対イオンは、硫酸、硫酸水素、アルキルスルフェート、アリールスルフェート、ハロゲン化物、リン酸、炭酸、アルキルホスフェート、アルキルカーボネート、硝酸、アルコレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、過塩素酸、ビストリフレート又はビストリフルイミドである。
加えて、導電性塩として、イオン液体も適している。電気化学的に安定な、適したイオン液体は、「lonic Liquids in Synthesis」、Peter Wasserscheid、Tom Welton編、Wiley-VCH 2003、chapters 1〜3に記載されている。
リグニンの電気化学的酸化のために、金属含有又は金属を含まないメディエーターが、アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液に添加できる。メディエーターは、間接的な電気化学的酸化を可能にする酸化還元対を意味すると解釈される。メディエーターは、電気化学的に、より高い酸化状態に変換され、次いで、酸化剤として作用し、その後電気化学的酸化によって再生される。したがって、このことは、メディエーターが酸化剤であるので、有機化合物の間接的な電気化学的酸化である。有機化合物の、酸化型のメディエーターとの酸化は、この場合は、メディエーターが酸化型に変換された電解セル中で、又は1つ以上の別々の反応器中(「ex-cell法」)で実施することができる。後者の方法は、酸化される有機化合物のいかなる残留する痕跡も、メディエーターの調製又は再生において妨害しないという利点を有する。
適したメディエーターは、2つの酸化状態で存在することができ、より高い酸化状態で酸化剤として作用し、電気化学的に再生され得る化合物である。メディエーターとして、例えば以下の酸化還元対の塩又は複合体:Ce(III/IV)、Cr(Il/Ill)、Cr(Ill/Vl)、Ti(Il/Ill)、V(Il/Ill)、V(III/IV)、V(IV/V)、Ag(l/ll)、AgO+/AgO-、Cu(l/ll)、Sn(II/IV)、Co(Il/Ill)、Mn(Il/Ill)、Mn(II/IV)、Os(IV/VIll)、Os(III/IV)、Br2/Br-/BrO3、I-/I2、I3 +/I2IO3 +/IO4 -、フレミー塩(二カリウムニトロソジスルホネート)又は他の有機メディエーター、例えばABTS(2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)、TEMPO、ビオルル酸などのビオロゲン、NAD+/NADH、NADP+/NADPHが使用でき、ここで、提示した系は、例えば、H2O、NH3、CN-、OH-、SCN-、ハロゲン、O2、アセチルアセトネート、ジピリジル、フェナントロリン若しくは1,10-フェナントロリン5,6-ジオン等の多様なリガンド又は他の溶媒リガンドとの金属錯体とすることもできる。好ましくは、本発明による方法において、遷移金属を含まないメディエーター、例えば、フレミー塩(二カリウムニトロソジスルホネート)等のニトロソジスルホネートが使用される。メディエーターは、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の総重量に基づいて、0.1〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%の量で使用されることが好ましい。
とりわけ好ましい実施形態において、本発明による方法は、メディエーターの添加なしで実行される。
アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液は、追加的に、不活性溶媒を含むことができる。適した溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリル、スベロニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルプロピレン尿素(DMPU)などの、高い電気化学的安定性を有する極性非プロトン性溶媒である。さらに適した極性非プロトン性溶媒は、Kosuke Izutsu、「Electrochemistry in Nonaqueous Solutions」、Wiley-VCH 2002、chapter 1に記載されている。
本発明による方法において、一般に、不活性溶媒は、使用されるリグニン含有水性懸濁液又は水溶液の総量に基づいて、60重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に20重量%以下、例えば2.5〜30重量%、又は5〜20重量%の量で使用される。
本発明による方法によって得られるバニリンは、当業者に知られている方法によって、リグニン含有水溶液から単離することができる。例えば、電解において形成されるバニリンは、蒸留又は抽出によって、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液から回収又は激減させることができる。
適した蒸留方法は、当業者に知られている蒸留法、例えば真空蒸留、保護ガス雰囲気下での蒸留、又は蒸気蒸留などである。蒸留法を介したバニリン分離の利点は、バニリンが、潜在的に健康に有害な有機溶媒と接触しないことである。
バニリンは、同様に、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液から抽出によって取り出すことができる。このことは、感受性バニリンが、さらなる熱応力に暴露されないので、とりわけ有利である。当業者に知られている抽出方法が、このために適している。
リグニン含有水性懸濁液又は水溶液は、抽出のために、例えば有機溶媒と混ぜて、この方法で、形成されたバニリンを分別することができる(液体-液体抽出)。適した有機溶媒は、水不混和性の有機溶媒、例えばヘキサン若しくはオクタンなどの5〜12個の炭素原子を有する炭化水素、ジクロロメタン若しくはクロロホルムなどの1〜10個の炭素原子を有する塩化炭化水素、ジエチルエーテル若しくはジイソプロピルエーテルなどの2〜10個の炭素原子を有する脂肪族エーテル、環状エーテル、又はエタン酸エチルエステルなどの脂肪族エステルである。無ハロゲン有機溶媒が、優先される。加えて、超臨界流体を使用してバニリンを抽出することが可能である。特に、超臨界CO2が、このために適している。
形成されたリグニンは、同様に、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液から、固相抽出によって取り出すことができる。この目的のために、固相抽出媒体は、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液に添加される。次いで、抽出媒体に吸着されたバニリン(バニレート)は、例えば当業者に知られているメタノールなどの極性有機溶媒を用いて固相から溶出することができる。その上、固相抽出は、固相合成に類似した方法でも可能である。この場合は、バニリンは、バニレートとして固相に共有結合している。リグニン含有水性懸濁液又は水溶液からの固相の分別後、バニリンは、共有結合を破壊することによって、再度遊離される。両方の場合において、次いで、簡素な方法で、蒸留によって精製又は単離できる濃縮粗生成物が得られる。
本発明による方法の好ましい実施形態において、生成されるバニリンは、塩基性吸着剤、特にアニオン交換体を用いた処理によって、電解において得られるアルカリ性リグニン含有水溶液又は水性懸濁液(以降、アルカリ性電解物)から単離される。アルカリ性電解物において、バニリンがバニレートとしてアニオン型で存在するので、塩基性吸着剤、例えばアニオン交換体によってバニリンが吸着され、次いで、バニレートが負荷されたアニオン交換体を酸、好ましくは、有機溶媒又は水性有機溶媒混合物中の鉱酸又は有機酸の希釈溶液で処理することによって、遊離することができる。
例えば吸着剤、例えばアニオン交換体は、電解において得られるアルカリ性電解物に添加することができ、一定の滞留時間後、吸着剤、例えばアニオン交換体は、アルカリ性電解物から分別することができ、次いで、吸着剤によって吸着されたバニリンは、吸着剤の酸との処理によって遊離され得る。好ましくは、アルカリ性電解物は、まず、吸着剤の床、特に陰イオン交換体の床を通過し、例えば、吸着剤、例えばアニオン交換体を詰めた1つ以上のカラムを通過し、次いで、酸、特に鉱酸又は有機酸の希釈溶液を、吸着剤の床を通過させて、この過程でバニリンを溶出する。
適した吸着剤は、原則として、塩基性基を有する又は水酸化物イオンで処理されるすべての物質である。これらとして、アルカリ化活性炭、塩基性酸化アルミニウム、クレー、塩基性吸着剤樹脂、特にアニオン交換体又はアニオン交換樹脂が挙げられる。アニオン交換体又はアニオン交換体樹脂は、一般に、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基及び第四級ホスホニウム基から選択される官能基を有する。
この目的のために好ましく使用されるアニオン交換体は、一般に、第四級のアンモニウム基又はホスホニウム基を有する架橋有機ポリマー樹脂である。好ましくは、好ましく使用されるアニオン交換体は、架橋ポリスチレン樹脂の群からのものであり、ここで架橋ポリスチレンのフェニル環の一部は、四級アンモニウム基、例えば、アルキレン基を介して結合したトリアルキルアンモニウム基、具体的にはメチレン基を介して結合したトリメチルアンモニウム基を持つ。アニオン交換体としてこの目的のために適した有機ポリマー樹脂は、架橋ポリビニルピリジンでもあり、そこで、そのピリジン基のいくつかは、例えば1-アルキルピリジニウム基として、具体的には1-メチルピリジニウム基として四級化されており、さらにアルキレン基を介して結合した、トリアルキルアンモニウム基、具体的には1,2-エタンジイル又は1,3-プロパンジイルを介して結合したトリメチルアンモニウム基を持つ架橋アクリル樹脂である。典型的に、電荷密度、即ち本発明による適したアニオン交換体におけるイオン基の数は、0.5〜6mmol/g、特に1〜5mmol/gの範囲のイオン交換樹脂、又は0.1〜3eq/l(リットル当たりのモル当量、水分量)の範囲である。N-C1-C8-アルキルイミダゾリウム基であるポリマーも、適した吸着剤である。これらのポリマーにおいて、N-C1-C8-アルキルイミダゾリウム基は、ポリマー骨格に直接又はスペーサーを介して結合している。このようなポリマーは、N-C1-C8-アルキルイミダゾール化合物とのポリマー類似反応によって、例えばハロアルキル基を有するポリマー、特にクロロベンジル基を有するポリマー、例えばスチレン及びクロロメチルスチレンのコポリマーと、N-C1-C8-アルキルイミダゾールを反応させることによって、得ることができる。同様に、イミダゾリウム基を有するモノマー、例えば(N-C1-C8-アルキルイミダゾリウム)メチルスチレン、N-ビニル-N-C1-C8-アルキルイミダゾリウム、ω-(N-C1-C8-アルキルイミダゾリウム)-C2-C8-アルキルアクリレート又はω-(N-C1-C8-アルキルイミダゾリウム)-C2-C8-アルキルメタクリレートの、任意選択でC1-C8-アルキルアクリレート、C1-C8-アルキルメタクリレート、C2-C8-ヒドロキシルアルキルアクリレート、C2-C8-ヒドロキシアルキルメタクリレート又はスチレンなどのコモノマーとの単独重合又は共重合によって、例えばフリーラジカル重合又は制御ラジカル重合、例えばRAFT又はATRPによって、このようなポリマーを作製することができる。このようなポリマーは、知られており、例えば、J. Yuan、M. Antonietti、Polymer 2011、52, 1469-1482; J. Huang、C. Tao、Q. An, W. Zhang、Y. Wu、X. Li、D. Shen、G. Li、Chem.Comm. 2010、46、967; R. Marcilla、J. Alberto Blazquez、J. Rodriguez、J. A. Pomposo、D. Mecerreyes、J.Pol. Sci. A: Pol.Chem.2004、42、208-212; J. Tang、H. Tang、W. Sun、M. Radosz、Y. Shen、J.Pol. Sci. A: Pol. Chem. 2005、43、5477-5489; J. Tang、Y. Shen、M. Radosz、W. Sun、Ind.Eng. Chem. Res. 2009、48、9113-9118によって、記載されている。
塩基性吸着剤(例えばアニオン交換体)からのバニリンの溶出のために、具体的には有機溶媒中の塩酸、硫酸又はリン酸などの鉱酸の希釈溶液、さらに有機水性溶媒混合物中の鉱酸の希釈溶液が適している。塩基性吸着剤(例えばアニオン交換体)からのバニリンの溶出のために、具体的には有機溶媒中のトリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、ギ酸又はプロピオン酸などの有機酸の希釈溶液、さらに有機水性溶媒混合物中の有機酸の希釈溶液が適している。
適した有機溶媒は、具体的には22℃で水と制限無く混和性である、又は少なくとも22℃で少なくとも200g/lの量で水に溶解するものである。これらの有機溶媒として、具体的には、ジメチルスルホキシド、アセトン、C1-C4アルカノール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノール、アルカンジオール、例えばグリコール及び1,4-ブタンジオール、グリセロール、さらには環状エーテル、例えばジオキサン、メチルテトラヒドロフラン又はテトラヒドロフラン、窒素複素環、例えばピリジン又はN-メチルピロリジン並びに混合物が挙げられる。C1-C4アルカノール、具体的にはメタノールが優先される。
適した酸は、具体的には塩酸、リン酸、特に硫酸などの鉱酸、及びメタンスルホン酸、ギ酸、酢酸及びプロピオン酸などの有機酸である。好ましくは、酸の溶液は、0.01〜10mol kg-1、特に0.1〜5mol kg-1の範囲の酸の濃度を有する。
溶出中に生じる溶出液は、さらなる精製ステップ、例えば結晶化、濾過又はクロマトグラフィーにかけることができる。
加えて、バニリンを蒸留によって分別する前に、電解物の揮発性成分の留分を減少させることが可能である。次いで、バニリンは、上述の抽出媒体を使用して、残存している残渣から抽出することができる。
バニリンは、連続的に又は不連続的に分別することができる。電気化学的酸化中に連続的に又は間隔をおいて、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液から、バニリンを取り出すことが、とりわけ有利である。この目的のために、例えば電解物のサブストリームは、電解配置から排出することができ、そこに存在するリグニンは、例えば連続(固相)抽出によって又は蒸気蒸留によって、激減し得る。さらに、電解は、一度又は繰り返し中断され得るので、中断中、電解物は、上記の通り、バニリンを激減させることができ、次いで、電解が継続され得る。特別な実施形態において、バニリンは、アニオン交換体を使用して、電解物から連続的に又は間隔をおいて激減する。このことは、例えば、電解中に電解配置からサブストリームを排出し、サブストリームをイオン交換体で処理することによって、例えばサブストリームをアニオン交換体の床を通過させることによって、成功する。さらに、電解物は、電解の中断中にアニオン交換体で処理することができ、電解は、中断後に継続することができる。このように、バニリンは、間隔をおいて電解物から激減する。
本発明による方法で使用されるアノード材料は、反応条件下で、いずれの有意な腐食も呈さないので、このように調製されるバニリンは、重金属汚染を全く有さない又は有意な重金属汚染を有さず、したがって、食品工業で使用することができる。したがって、本発明は、本発明による方法によって得られたバニリンの食品工業における芳香物質としての使用に関する。
電解の終了後、形成されたバニリンに加えて、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液は、まだ酸化リグニンを含んでいる。バニリン及び任意選択でその他の低分子量の生成物を分別した後、酸化リグニンは、リグニン含有水溶液を乾燥させることによって得ることができる。このように調製されたリグニンは、例えば有利に建設工業における添加剤として、例えばセメント又はコンクリートの添加剤として、使用することができる。
以降の実施例は、本発明をさらに説明することが目的であり、制限するものとして理解されるべきではない。
分析
電解生成物のガスクロマトグラフィー分析のために、使用される固定相は、Agilent製の長さ30m、直径0.25mm、薄膜厚1μmのHP-5カラムであった。このカラムを、温度プログラムによって、10分の経過中に、50℃から290℃まで10℃/minで加熱する。この温度を、15分間維持する。使用したキャリアガスは、46.5ml/minの流量の水素であった。
Figure 0006215927
電解
[実施例1〜4]
リグニン溶液のNi-Cu電極での電解
525〜526mgのクラフトリグニンを、温度制御型の非分割セル中の85gのそれぞれの電解質中に、撹拌しながら溶解した。セルは、0.5cmの距離でセル中に配置された2つの電極を有していた。2つの電極は、いずれの場合も、寸法3.0×3.3cm2の、銅含有Ni-ベース合金(Monel 400)から作られているプレート(厚さ:3mm)であった。溶液を、電流密度1.9mA/cm2、温度80℃で、20.6時間電解した(Q=1411C)。反応中の最大端子電圧は、3.3Vであった。電荷量が流れた後、セルの内容物を室温に冷却し、既知量の標準(n-ヘキサデカン)と混ぜて、存在するいずれの固体からも濾過した。次いで、溶液を、濃塩酸を使用してpH=1〜2に調整し、20mlのジクロロメタンと混ぜた。析出したゼラチン状の固体を、珪藻土で濾過して、およそ25mlのジクロロメタンで洗浄した。有機相を、分別した。水相を、毎回80mlのジクロロメタンでさらに3回抽出した。合わせた有機相を、50mlの通常の飽和食塩水で洗浄して、次いで、Na2SO4で脱水した。溶媒を、減圧下で取り出し、残存した油状の主に金茶色の残渣を、その組成に対してガスクロマトグラフィーで分析した。有機粗生成物のガスクロマトグラフィー分析は、使用したリグニンに基づいて典型的な組成(重量%)を示し、それを表4にまとめる。
Figure 0006215927
[実施例5〜10]
Ni-又はCu-ベース合金から作られている電極でのリグニン溶液の電解
電解を、以下を変更して、実施例1と類似した方法で実行した:使用した電解質は、3Mの水酸化ナトリウム水溶液であった。電極として、様々なNi-及びCu-ベースの合金(表5を参照)から作られている、0.5cmの距離で互いに配置された、寸法3.0×4.0cm2のプレート(厚さ:3mm)を使用した。溶液を、17.2時間電解した(Q=1411C)。電解中の最大セル電圧は、2.9Vであった。結果を、表5にまとめる。
Figure 0006215927
[実施例11〜14]
Co-ベース合金から作られている電極でのリグニン溶液の電解
電解を、以下を変更して、実施例1と類似した方法で実行した:電解質として、3Mの水酸化ナトリウム水溶液を使用した。使用した電極は、様々なCo-ベース合金(表6を参照)から作られている、0.5cmの距離で互いに配置された、最大限に利用可能な電極表面積が9cm2のプレート(厚さ:3mm) (寸法3.0×4.0cm2)であった。溶液を、23h電解した(Q=1411C)。電解中の最大セル電圧は、2.9Vであった。結果を、表6にまとめる。
Figure 0006215927
比較例C1及びC2:Coから作られている電極でのリグニン溶液の電解
電解を、以下を変更して、実施例1と類似した方法で実行した:使用した電解質は、3Mの水酸化ナトリウム水溶液であった。使用した電極は、Coから作られている、0.5cmの距離で互いに配置された、最大限に利用可能な電極表面積が9cm2のプレート(厚さ:1mm) (寸法3.0×4.0cm2)であった。溶液を、17.2時間電解した(Q=1411C)。電解中の最大セル電圧は、3.1Vであった。
比較例1の電解の結果として、黒い層がアノード上に形成した。アノードを、別の同一の条件下で、第2の電解で使用した(比較例C2)。結果を、表7にまとめる。
Figure 0006215927
[実施例15]
2.011gのクラフトリグニンを、冷却ジャケットを使用せず、ワンポットセル(one-pot cell)(V=600ml)に入れて、撹拌しながら300gの3M NaOHに溶解した。Monel 400Kの11枚のプレート(4.9cm×2.1cm)を、セルが10の半区画(half-chamber)を含むような方法で、0.3cmのスペースをあけて双極方式で接続した。溶液を、およそ7.8時間電解した(Q=560C;電解質に基づく:Q=5600C)。確立されたセル電圧は、3.0〜3.1Vの範囲であった。電荷量が流れた後、セルの内容物を、室温にして、Amberlite IRA402(OH)(mAmberlite=40g、dcolumn=2cm、h=20cm)のカラム床に適用した。使用したイオン交換体は、数時間前もって水で膨張させてあった。反応溶液は、カラム材料を完全に通過した後(液滴速度:1drop/sec)、濾過物を、上記の条件下で再度電解した。全体で、溶液を5回電解し、濾過した。
イオン交換体によって吸着されたバニリンを単離するために、アニオン交換体を、MeOH中のHClの2%強度溶液を使用して、少しずつ洗浄した(Vtot=350ml、液滴速度:1drop/sec)。得られた濾過物を、100mlのH2Oと混ぜ、毎回150mlのジクロロメタンで、3回抽出した。合わせた有機相を、およそ100mlの通常の飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で脱水し、減圧下で溶媒を取り除いた。青銅色の泡が残存し、カラムクロマトグラフィー(d=2cm、h=20cmのシリカゲル60)(溶離液:容積比3:2のシクロヘキサン/酢酸エチル)によって精製した。使用したクラフトリグニンに基づいて、2.47重量%のバニリンを得て、8%のアセトバニロンが混入した(GC留分)。
濾過物の後処理のために、濾過物を、冷却しながら濃塩酸で酸性化し、酸性化された濾過物を、珪藻土の床を介して濾過し、凝結しておいたリグニンを取り出した。珪藻土床を、ジクロロメタンで完全にすすいだ。水相を、毎回150mlのジクロロメタンで、3回抽出した。合わせた有機相を、100mlの通常の飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で脱水し、減圧下で溶媒を取り除いた。粘性の固体(mRP=11.9mg、使用したクラフトリグニンに基づいて0.59重量%)が残存した。ガスクロマトグラフィー分析は、以下の典型的な組成を示した(GC留分):バニリン75.2%、アセトバニロン11.0%。
比較例3:ニッケル電極でのリグニン溶液の電解
525〜530mgのクラフトリグニンを、温度制御型の非分割セル中の85gの3MのNaOHに撹拌しながら溶解した。アノード及びカソードの両方は、Niメッシュであった((織目:上部綾織目555、メッシュ:124、メッシュ幅:0.125、ワイヤ直径:0.080、材料:ニッケル元素(2.4066-Ni)、製造者:GKD、品番:29230125、(3.0×4.0cm2)。電極を、互いにおよそ0.3cmの距離で平行に配置し、電解質溶液に浸漬した。電解質溶液を、様々な電流密度及び80℃の温度で、電解した。この場合は、1411Cの電荷量を印加した。反応中の最大端子電圧は、4.1Vであった。電荷量が流れた後、セルの内容物を、室温に冷却した。次いで、電解した溶液を、50%の強H2SO4でpH=1〜2に調整し、20mlのジクロロメタンと混ぜた。沈殿したゼラチン状の固体を、珪藻土で濾過し、およそ25mlのジクロロメタンで再洗浄した。有機相を、分別した。水相を、毎回80mlのジクロロメタンでさらに3回抽出した。合わせた有機相を、50mlの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、次いで、Na2SO4で脱水した。溶媒を減圧下で取り出した後、油状の主に金茶色の残渣が残存した。これを、およそ1mlの酢酸エチルで溶解して、2μlの内部標準の1-フェニルドデカンと混ぜた。溶液を、脱脂綿を通して濾過し、その組成をガスクロマトグラフィーで試験した。有機粗生成物の分析は、使用したリグニンに基づいて典型的な組成(重量%)を示し、それを表8にまとめる。
Figure 0006215927
[実施例16]
ステンレス鋼電極でのリグニン溶液の電解
電解を、以下を変更して、比較例1と類似した方法で実行した。電極として、ステンレス鋼メッシュを使用した(織目:逆綾織目555、メッシュ:200、Mw:0.077、ワイヤ直径:0.050、材料:1.4404、製造者:GKD、品番:29370850、3.0×4.0cm2)。
有機粗生成物の分析は、使用したリグニンに基づいて、典型的な組成(重量%)を示し、これを表9にまとめる。
Figure 0006215927
比較例4
手順を、以下の変更を加えて、実施例1と類似した方法で実行した:525〜526mgのクラフトリグニンを、非分割セル中の85gの電解質に撹拌しながら溶解した。電解質として、3Mの水酸化ナトリウム水溶液を使用した。セルは、白金からなり、最大限に利用可能な電極の表面積がおよそ12cm2のアノード及びカソードを備えた。電極を、0.5cmの距離で平行に搭載し、次いで、溶液を18h電解した(Q=1411C)。反応中の最大セル電圧は、3.1Vであった。反応の結果として、アノード又はカソードでの表面変化も質量の喪失も観測できなかった。バニリンの収率は、使用したクラフトリグニンに基づいて0.48重量%であり、アセトバニロンの収率は、0.06重量%であった。
比較例5
手順を、以下の変更を加えて、実施例1と類似した方法で実行した:525〜526mgのクラフトリグニンを、非分割セル中の85gの電解質(3MのNaOH水溶液)に撹拌しながら溶解した。セルは、白金からなり、最大限に利用可能な電極の表面積がおよそ12cm2のアノード及びカソードを備えた。電極を、0.5cmの距離で平行に搭載し、次いで、溶液を18h電解した(Q=1411C)。反応中の最大セル電圧は、2.7Vであった。
反応の結果として、艶のない黄色の層の形態でのアノード表面の変化が観測された。この脆い層は、少量の水での処理によって容易に取り出すことができ、銅の元の外観が再現した。535mgの質量の喪失が、腐食によってアノードで発生した。バニリンの収率は、使用したクラフトリグニンに基づいて1.99重量%であり、アセトバニロンの収率は、0.09重量%であった。

Claims (16)

  1. アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の電解を含み、アノード材料として、Co-ベース合金、Fe-ベース合金、Cu-ベース合金及びNi-ベース合金のなかから選択されるベース合金が使用される、バニリンを調製するための方法。
  2. アノード材料として、Co-ベース合金、Fe-ベース合金及びNi-ベース合金のなかから選択されるベース合金が使用され、
    (1) Ni-ベース合金が:
    a1) 50〜95重量%のNi、並びに
    b1) 5〜50重量%の、Cu、Fe、Co、Mn、Cr、Mo、V、Nb、Ti、Si、Al、C及びSのなかから選択される少なくとも1つのさらなる合金成分
    を含み、
    (2) Co-ベース合金が:
    a2) 50〜95重量%のCo、並びに
    b2) 5〜50重量%の、Cu、Fe、Ni、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ti、Si、P及びCのなかから選択される少なくとも1つのさらなる合金成分
    を含み、
    (3) Fe-ベース合金が:
    a3) 50〜95重量%のFe、並びに
    b3) 5〜50重量%の、Cu、Co、Ni、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ti、Si、P、S及びCのなかから選択される少なくとも1つのさらなる合金成分
    を含む、請求項1に記載の方法。
  3. ベース合金が、
    1.1 5〜35重量%のCuを含むNi-ベース合金、
    1.2 5〜40重量%のCrを含むNi-ベース合金、
    1.3 5〜35重量%のMoを含むNi-ベース合金、
    2.1 5〜40重量%のCrを含むCo-ベース合金、
    3.1 高合金クロム含有ステンレス鋼
    のなかから選択される、請求項2に記載の方法。
  4. アノード材料が、
    a4) 50〜95重量%のCu、並びに
    b4) 5〜50重量%の、Ag、Pb、Ni及びZnのなかから選択される少なくとも1つのさらなる合金成分
    を含むCu-ベース合金のなかから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  5. ベース合金が、ニッケルシルバー及び白銅のなかから選択される、請求項4に記載の方法。
  6. アノードが、グリッド、エキスパンドメタル又は金属板の形態を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 電解に、カソードとして電極が使用され、その電極材料が、ニッケル、Ni-ベース合金、Co-ベース合金、Fe-ベース合金、Cu-ベース合金、銀、Ag-ベース合金、RuOxTiOx-混合酸化物、白金めっきチタン、白金、グラファイト又は炭素のなかから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 電解が、1〜100mA/cm2の範囲の電流密度で実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 電解が、10〜100℃の範囲の温度で実行される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液のpHが少なくとも10である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. リグニン含有水性懸濁液又は水溶液として、紙料、パルプ又はセルロースの調製からのリグニン含有水流が使用される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液が、水性アルカリに少なくとも1つのリグニン含有材料を溶解又は懸濁することによって調製され、リグニン含有材料が、黒液、クラフトリグニン、スルホン酸リグニン、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、及び紙工業、パルプ又はセルロースの調製からの対応する残渣からのリグニンのなかから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  13. アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液が、
    (a) アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の酸化によって得られた酸化リグニンを、水性アルカリ中に溶解又は懸濁することによって調製される、水性懸濁液又は水溶液、及び
    (b) アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の酸化によって得られた水性反応混合物から、バニリンを激減させることによって調製される、水性懸濁液又は水溶液
    のなかから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  14. アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液が、
    (a) アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の電解によって得られた酸化リグニンを、水性アルカリ中に溶解又は懸濁することによって調製される、水性懸濁液又は水溶液、及び
    (b) アルカリ性リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の電解によって得られた水性反応混合物から、バニリンを激減させることによって調製される、水性懸濁液又は水溶液
    のなかから選択される、請求項13に記載の方法。
  15. リグニン含有水性懸濁液又は水溶液が、リグニン含有水性懸濁液又は水溶液の総重量に基づいて0.5〜30重量%のリグニンを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 電解において形成されるバニリンが、リグニン含有水溶液又は水性懸濁液から連続的に取り出される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
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