JP6215566B2 - 発泡体の製造方法、発泡体の製造装置、及び、発泡体 - Google Patents

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Description

本発明は、パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分とを発泡材とする発泡体の製造方法、発泡体の製造装置、及び、これによって製造された発泡体に関する。
従来より紙を発泡材の一部として利用した発泡体が提案されている(特許文献1、2参照)。この発泡体は、パルプ繊維成分として古紙を使用できるため、紙のリサイクルに好適である。
かかる発泡体を製造する従来の押出し成形機60を説明する。押出し成形機60は、図22(a)、(b)及び図23に示すように、発泡材を投入する投入口(図示せず)と、投入された発泡材を混練する混練手段(図示せず)と、混練した発泡材を高温に加熱する加熱手段(図示せず)と、発泡材を押圧室の先端側に押圧する押圧手段(図示せず)と、押圧室の先端側を塞ぐように配置された口金部材61と、この口金部材61の外側を囲むように配置された規制枠壁70とを備えている。口金部材61は、図22(b)に詳しく示すように、水平方向に等間隔に配置された複数の吐出口62を有する。吐出口62は、1段である。規制枠壁70は、この複数の吐出口62より吐出された発泡材の発泡領域を規制する。規制枠壁70は、偏平長方形状の枠である。規制枠壁70の上下面は、固定面(金型面)70a,70bである。
次に、上記押出し成形機60による発泡体50の製造を説明する。押出し成形機60内に紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材と補助剤としてのコーンスターチと水を供給する。この供給された紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材とコーンスターチと水は、加熱混練されることによって高温の発泡材となり、図23に示すように、高温の発泡材が複数の吐出口62より押圧によって吐出される。すると、高温の発泡材に混入された水が各吐出口62より吐出された瞬間に気化し、水の蒸気圧により紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材とコーンスターチから成る発泡材が発泡する。この発泡は、規制枠壁70によって規制されるため、規制枠壁70を断面積とする発泡体50が連続的に押し出される。
このようにして製造された発泡体50は、図24(a)、(b)に示すように、多数の発泡セルS2,S3より形成される。各発泡セルS2,S3は、紙粉末成分の柔軟性やコーンスターチの粘着性等によって適度な発泡により、内部の空間(空気層)がセル皮膜によって被われる。発泡体50は、その位置によって発泡セルS2,S3の発泡密度(発泡倍率)が異なり、発泡セル層53とこの両面側に配置された2つの表面皮膜層52とから成る3層構造に概略構成されている。各表面皮膜層52は、極薄厚みであり、発泡セル層53より発泡密度が高い発泡セルS2が密集配置されている。発泡セル層53は、各表面皮膜層52より発泡密度が低い発泡セルS3が密集配置されている。
このような構造を有する発泡体50は、図25に示すような吸音特性を有する。この吸音特性は、共振効果によるものと多孔質型によるものを合わせたものと考えられる。つまり、共振効果による吸音性能は、外部から入射する音の内で、表面皮膜層52で反射する表面反射波と発泡体50の内部に進入し反射波として戻って来る透過反射波との相殺によるものである(図25の共振効果による特性線参照)。共振効果による吸音性能は、1kHz〜2kHzの低周波数帯内でピーク性能を発揮する。多孔質型による吸音性能は、発泡体50の内部に進入した音が発泡セルS2,S3の内部空間や発泡セルS2,S3の皮膜で振動し、振動によるエネルギー吸収(熱エネルギー変換)によるものである(図25の多孔質効果による特性線参照)。多孔質型の吸音性能は、低周波数帯域では効果が低く、2kHz以上の高周波帯で高い吸音性能を発揮する。多孔質型の吸音性能は、高周波数帯域でも周波数が高くなればなるほど高くなる。
上記した発泡体50とシンサレート(登録商標)との吸音特性を比較すると、図25に示すようになる。シンサレートは、合繊の極細繊維を絡み合わせたもの(不織布)であり、ほぼ多孔質型による吸音性能を発揮する。図25に示すように、発泡体50は、低周波数帯域(ほぼ1kHz〜2kHZの帯域)では、共振効果による吸音ピークを有するため、シンサレートより優れた吸音特性を発揮する。
特許第3326156号公報 特開2000−273800号公報 特開平8−207170号公報
しかしながら、上記した従来の押し出し成形機60による製造された発泡体50は、吐出口62から押し出された後に限られたスペースの中で発泡し、自由な発泡を抑制されつつその上下面が金型面70a,70bを摺動する。そのため、両側の表面皮膜層52は、フラットで波を打ったような波紋ができ、厚みが厚く少し固め(密度が高い質感)となる。換言すれば、表面が平らで皮膜がしっかりしているため、表面反射し易く、共振による吸音効果が出やすい。その一方で、音波が発泡体50内に進入し難い構造となるため、多孔質型による吸音性能がシンサレートより多少劣る。以上より、従来の押出し成形機60より製造された発泡体50は、共振効果による吸音ピークの周波数帯域より高い周波数帯域、具体的にはほぼ2kHz以上の高周波数帯域で、シンサレートよりも吸音性能が多少低下する帯域が存在するものとなる。
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、低周波数帯域で吸音ピーク性能を有し、しかも、高周波数帯域での吸音性能の低下を抑制できる発泡体の製造方法、発泡体の製造装置、及び、これによって製造された発泡体を提供することを目的とする。
本発明は、パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分と水とを加熱混練した材料を吐出口より吐出する吐出工程と、前記吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制枠壁で規制し、前記規制枠壁で規制されつつ押し出された前記発泡体の上下面のいずれか一方側はローラが回転しつつ押圧され、前記発泡体の上下面の他方側は固定面上を摺動するローラ押圧工程とを備えたことを特徴とする発泡体の製造方法である。
前記吐出工程では、一定の方向に間隔を置いて設けられた複数の吐出口から前記発泡体を吐出するものであっても良い。
他の本発明は、パルプ繊維成分とポリプロピレン樹脂材のJ830HV(株式会社プライムポリマーの商品名プライムポリプロの一種)と補助剤としての澱粉成分と水とを加熱混練した材料を吐出口より吐出する吐出工程と、前記吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制枠壁で規制し、前記規制枠壁で規制されつつ押し出された前記発泡体の上下面のいずれか一方側はローラが回転しつつ押圧され、前記発泡体の上下面の他方側は固定面上を摺動するローラ押圧工程と、前記ローラ押圧工程を終えた前記発泡体を圧縮するプレス工程とを備えたことを特徴とする発泡体の製造方法である。
他の本発明は、パルプ繊維成分と合成樹脂成分と澱粉成分と水とを材料とする、第1表面皮膜層と発泡セル層と第2表面皮膜層との少なくとも3層構造に形成され、前記第1及び第2表面皮膜層は、前記発泡セル層より発泡密度が高い発泡セルが密集配置され、前記第1表面皮膜層は、前記第2表面皮膜層より厚みが薄く、フラットな表面に形成されていることを特徴とする発泡体である。
他の本発明は、パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分と水とを加熱混練した材料を押し出す吐出口を有する口金部材と、前記吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制する規制枠壁と、前記規制枠壁内より押し出された前記発泡体の上下面のいずれか一方を回転しつつ押圧するローラと、前記発泡体の上下面の他方側を摺動させる金型面とを有する押出し成形機を備えた発泡体の製造装置である。
前記吐出工程では、一定の方向に間隔を前記吐出口が複数設けられ、且つ、その上下同じ位置で複数段設けられた前記吐出口から前記発泡体を吐出するものであっても良い。
他の本発明は、パルプ繊維成分とポリプロピレン樹脂材のJ830HV(株式会社プライムポリマーの商品名プライムポリプロの一種)と補助剤としての澱粉成分と水とを加熱混練した材料を吐出口より押し出す口金部材と、前記吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制する規制枠壁と、前記規制枠壁内より押し出された前記発泡体の上下面のいずれか一方を回転しつつ押圧するローラと、前記発泡体の上下面の他方側を摺動させる金型面とを有する押出し成形機と、前記押出し成形機で作られた前記発泡体を圧縮するプレス装置とを備えた発泡体の製造装置である。
本発明によれば、吐出口から押し出された発泡体は、ローラが配置された面側では、ローラによって垂直方向からプレスされるため、固定面を摺動する場合に比較して厚みが薄く、フラットな表面で、しかも、薄膜状の発泡セルが密集配置された構造となると推測される。従って、音の入射側をローラが押圧した面とした場合には、多孔質型の吸音特性が顕著に現れると推測される。以上より、低周波数帯域で吸音ピーク性能を有し、しかも、高周波数帯域での吸音性能の低下を抑制できる発泡体を作製できる。
本発明の第1実施形態を示し、(a)は押出し成形機の要部斜視図、(b)は口金部材の正面図である。 本発明の第1実施形態を示し、押出し成形機の概略断面図である。 本発明の第1実施形態を示し、プレス機の側面図である。 本発明の第1実施形態を示し、発泡体の外観斜視図である。 本発明の第1実施形態を示し、(a)は図4のA−A線に沿う発泡体の構造模式図、(b)は(a)の要部拡大図である。 本発明の第1実施形態を示し、音の入射面を第1表面皮膜層側としたときの発泡体、音の入射面を第2表面皮膜層側としたときの発泡体、及び、シンサレートの各吸音特性線図である。 本発明の第2実施形態を示し、(a)は押出し成形機の要部斜視図、(b)は口金部材の正面図である。 本発明の第2実施形態を示し、押出し成形機の概略断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、プレス機の側面図である。 本発明の第2実施形態を示し、発泡体の外観斜視図である。 本発明の第2実施形態を示し、(a)は図10のB−B線に沿う発泡体の構造模式図、(b)は(a)の要部拡大図である。 本発明の第3実施形態を示し、(a)は押出し成形機の要部斜視図、(b)は口金部材の正面図である。 本発明の第3実施形態を示し、押出し成形機の概略断面図である。 本発明の第3実施形態を示し、プレス機の側面図である。 本発明の第3実施形態を示し、発泡体の外観斜視図である。 本発明の第3実施形態を示し、(a)は図15のC−C線に沿う発泡体の構造模式図、(b)は(a)の要部拡大図である。 本発明の第4実施形態を示し、(a)は押出し成形機の要部斜視図、(b)は口金部材の正面図である。 本発明の第4実施形態を示し、押出し成形機の概略断面図である。 本発明の第4実施形態を示し、プレス機の側面図である。 本発明の第4実施形態を示し、発泡体の外観斜視図である。 本発明の第4実施形態を示し、(a)は図20のD−D線に沿う発泡体の構造模式図、(b)は(a)の要部拡大図である。 従来例を示し、(a)は押出し成形機の要部斜視図、(b)は口金部材の正面図である。 従来例を示し、押出し成形機の概略断面図である。 従来例を示し、(a)は発泡体の外観斜視図、(b)は発泡体の構造模式図である。 従来例の発泡体及びシンサレートの吸音特性線図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図6は本発明の第1実施形態を示す。発泡体1の製造装置は、押出し成形機10とプレス装置30とを備えている。
押出し成形機10は、図1(a)、(b)及び図2に示すように、各発泡材を投入する投入口(図示せず)と、投入された発泡材を混練する混練手段(図示せず)と、混練された発泡材を高温に加熱する加熱手段(図示せず)と、発泡材を押圧室の先端側に押圧する押圧手段(図示せず)と、押圧室の先端側を塞ぐように配置された口金部材11と、この口金部材11の外側を囲むように配置された規制枠壁20とを備えている。口金部材11は、水平方向に等間隔P1に配置された複数の吐出口12,13を上下2段有する。上下2段の吐出口12,13は、水平方向に対し同じ位置に配置されている。規制枠壁20は、この2段の吐出口12,13より吐出された発泡材の発泡領域を規制する。規制枠壁20は、偏平長方形状の枠である。
また、規制枠壁20の押し出し方向の下流では、規制枠壁20の上面側が開放されている。この開放された位置には、複数のローラ21が押し出し方向に並んで設けられている。この各ローラ21は、押し出される発泡体1に追従して回転するよう回転自在に支持されている。又、各ローラ21は、発泡体1の押出し速度で回転するよう構成しても良い。各ローラ21は、押し出される発泡体1の上面を圧縮する。
規制枠壁20の下面及び両側面20c,20dは、上面側と異なり、発泡体1の押し出し方向に延設されている。規制枠壁20の下面は、発泡体1の下面が摺動する固定面である金型面20aとされている。金型面20aとローラ21の最下方位置との間隔は、10mmに設定されている。従って、発泡体1は、10mm厚のものが製造される。
プレス装置30は、図3に示すように、互いに対向配置された固定プレス体31と可動プレス体32とを有する。可動プレス体32は、固定プレス体31の近接・離間方向に移動できる。
次に、発泡体1の製造方法を説明する。押出し成形機10内に、紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材と補助剤としてのコーンスターチと水を供給する。紙粉末成分は、官製葉書等の古紙を紙粉末繊維状にしたものである。合成樹脂成分は、ポリプロピレン樹脂材のJ830HV(株式会社プライムポリマーの商品名プライムポリプロの一種)である。J830HVは、メルトフローレイト(試験条件:230℃)が30g/10min、密度が910Kg/m3、引っ張り降伏応力が28.0MPa、引っ張り破壊呼びひずみが30%、引っ張り弾性率が1450MPaの物性を有する。
押出し成形機10内に供給された紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材とコーンスターチと水は、加熱混練されて発泡材となり、この高温の発泡材が口金部材11の上下2段の吐出口12,13より押圧によって吐出する。
すると、高温の発泡材に混入された水が各吐出口12,13より吐出された瞬間に気化し、水の蒸気圧により紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材とコーンスターチから成る発泡材が発泡する。この発泡は、図2に示すように、規制枠壁20の金型面(下面)20a、両側面20c,20dと下位置のローラ21によって規制されるため、規制枠壁20、下位置のローラ21によって規制されたスペースを断面積とする発泡体1が連続的に押し出される。各発泡セルS1,S2,S3は、紙粉末成分の柔軟性やコーンスターチの粘着性等によって適度な発泡により、内部に空間(空気層)が形成されたものとなる。
また、各吐出口12,13から吐出された発泡材は、自由に発泡できず、上記したように規制枠壁20及び下位置のローラ21で発泡形成が抑制されると共に、発泡セル同士が互いに干渉することによって発泡形成が抑制される。具体的には、規制枠壁20の内周近傍に位置する発泡セルS2は、規制枠壁20、ローラ21で発泡形成が抑制される。これによって、第1及び第2表面皮膜層2A,2Bが形成される。上下の吐出口12,13の中間位置付近に位置する発泡セルS1は、互いの発泡セルS1同士が衝突(干渉)して発泡形成が抑制される。これによって仕切皮膜層4が形成される。水平方向の隣り合う吐出口12(又は13)の中間位置付近の位置する発泡セルS2は、互いの発泡セルS2同士が衝突(干渉)して発泡形成が抑制される。これによって縦仕切皮膜層5が形成される。これらより内側位置に位置する発泡セルS3は、上記発泡セルS1,S2に較べて弱い抑制力しか働かない。これによって発泡セル層3A,3Bが形成される。発泡体1は、ローラ21の下方を通過し圧縮力を受けることにより、厚みが10mmとなる。
押出し成形機10より製造された発泡体1は、所定寸法で裁断される。この裁断した発泡体1は、図3に示すように、三枚重ねてプレス装置30にセットされる。プレス装置30は、発泡体1を約10分の1程度にまで圧縮し、その後、圧縮を解除する。圧縮を解除すると、発泡体1は、ほぼ元の厚みに戻る。ポリプロピレン樹脂材のJ830HVを合成樹成分とする発泡体1は、押出し成形機10での押出し製造だけでは、発泡セルS1,S2,S3の皮膜に芯部分(硬い部分)を有し、音による振動がし難い発泡構造である。押出し成形機10より押出された発泡体(バージン材)1を一度圧縮変形させると、発泡セルS1,S2,S3の皮膜の芯部分(硬い部分)が破壊されることにより、柔軟な皮膜になる。これにより、音によって振動し易い柔軟な発泡体1に加工される。これで、発泡体1の製造が完了する。
このようにして製造された発泡体1は、図4に示すように、偏平長方形の板状である。発泡体1は、図5(a)、(b)に示すように、多数の密閉された発泡セルS1,S2,S3より形成されている。
各発泡セルS1,S2,S3は、内部の空隙がセル皮膜によって被われている。発泡セルS1,S2,S3は、その位置によって発泡密度(発泡倍率)が異なり、発泡体1は発泡セルS1,S2,S3の密度によって以下のような層構造に形成されている。
つまり、発泡体1は、厚み方向に沿って、第1表面皮膜層2Aと発泡セル層3Aと仕切皮膜層4と発泡セル層3Bと第2表面皮膜層2Bとから5層構造に形成されている。第1及び第2表面皮膜層2A,2Bは、極薄厚みであり、発泡セル層3A,3Bより発泡密度が高い発泡セルS2が密集配置されている。各発泡セル層3A,3Bは、仕切皮膜層4より発泡密度が低い発泡セルS3が密集配置されている。仕切皮膜層4は、発泡セル層3A,3B及び各表面皮膜層2A,2Bより発泡密度が高い発泡セルS1が密集配置されている。仕切皮膜層4は、2層の発泡セル層3A,3Bの間を連続して仕切って遮断している。仕切皮膜層4は、厚み方向の直交方向にほぼ一直線状で、且つ、ほぼ同じ厚みである。
各発泡セル層3A,3Bには、厚み方向の直交方向に沿って等間隔に複数の縦仕切皮膜層5が形成されている。各発泡セル層3A,3Bは、縦仕切皮膜層5によって分割されている。縦仕切皮膜層5は、発泡セル層3A,3Bより発泡密度が高い発泡セルS2が密集配置されている。
更に詳細には、第1表面皮膜層2Aは、押出し成形機10のローラ21側の面である。上段の吐出口12から押し出された発泡体は、吐出口12付近の上面が開口していることにより薄皮状まで発泡後、ローラ21によって真上(垂直方向)からプレスされる。そのため、第1表面皮膜層2Aは、第2表面皮膜層2Bより厚みが薄く、フラットな表面に形成される。又、第1表面皮膜層2Aは、金型面(固定面)20aを摺動しないために、破泡し難く薄膜状の発泡セルS2が密集配置された構造と推測される。これにより、多孔質型の吸音特性が顕著に現れると推測される。
第2表面皮膜層2Bは、押出し成形機10の金型面20a側である。下段の吐出口13から押し出された発泡材は、限られたスペースの中で発泡し、上面からプレスされながら金型面20a上を摺動する。そのため、第2表面皮膜層2Bは、フラットで波を打ったような波紋ができ、第1表面皮膜層2Aに較べると、厚みが厚く少し固め(密度が高い質感)となる。換言すれば、表面が平らで皮膜がしっかりしているため、表面反射し易く、共振による吸音効果が出やすい構造となっていることが推測される。
以上、押出し成形機10の吐出口12,13から押し出された発泡体1は、ローラ21が配置された面側では、ローラ21によって真上(垂直方向)からプレスされるため、金型面20aを摺動する場合に比較して厚みが薄く、フラットな表面となり、薄膜状の発泡セルが密集配置された構造となると推測される。従って、第1表面皮膜層2Aを音の進入面とした場合には、多孔質型の吸音特性が顕著に現れると推測される。以上より、低周波数帯域で吸音ピーク性能を有し、しかも、高周波数帯域での吸音性能の低下を抑制できる発泡体1を作製できる。
発泡体1は、発泡セル層3A,3Bに介在され、発泡セル層3A,3Bより密度の高い発泡セルS1が密集配置され、且つ、発泡セル層3A,3Bの間を連続してほぼ一直線状に仕切る仕切皮膜層4を有する。これにより、又、発泡体1の発泡セル層3A,3B内を伝搬する振動が仕切皮膜層4に達すると、仕切皮膜層4でランダムな振動が平面振動にリセットされ、その後、更に発泡セル層3A,3B内を伝搬することになるため、仕切皮膜層4で振動吸収が促進され、仕切皮膜層4がないものに較べて吸音特性が向上すると考えられる。又、外部から発泡体に入射する音は、仕切皮膜層4の表面で反射する表面反射波と仕切皮膜層4より内部を進入し反射して戻って来る透過反射波となるものがある。このような表面反射波と透過反射波の相殺、つまり、共振効果による吸音特性によっても低周波数帯域で吸音ピーク性能が得られるため、吸音ピーク性能が向上する。その上、仕切皮膜層4を有する発泡体1Aは、仕切皮膜層4のない発泡体(従来例)に較べて、仕切皮膜層4の箇所で発泡体1Aの内部を通過する際の音の位相速度を遅らせることができる。これにより、共振効果による吸音ピークが低周波数側にシフトする。従って、従来の発泡体では厚みを厚くすることでしか達成できなかった吸音ピークの低周波数側シフトを、第1実施形態の発泡体1では厚みを厚くすることなく達成できる。換言すれば、発泡体は、仕切皮膜層4の有無によっても吸音ピークの周波数を調整できる。
発泡体1は、ポリプロピレン樹脂材としてJ830HVを使用するため、第1及び第2表面皮膜層2A,2Bは、特定の周波数に対して振動し易いものとなる。これにより、特定の周波数について高い吸音ピーク値が得られる。
(残響室法による吸音率測定結果)
図6は、音の入射面を第1表面皮膜層2A側としたときの発泡体1と、音の入射面を第2表面皮膜層2B側としたときの発泡体1と、シンサレートとにおける残響室法による吸音率測定結果である。
図6に示すように、発泡体1は、音の入射側を第1表面皮膜層2A(ローラ21側の面)とした場合、音の入射側を第2表面皮膜層2B(金型面20a側の面)とした場合共に、低周波数帯域で吸音ピーク性能を有することが確認された。そして、発泡体1Aは、音の入射側を第1表面皮膜層2A(ローラ21側の面)とした場合に、音の入射側を第2表面皮膜層2B(金型面20a側の面)とした場合に較べて、高周波数帯域での吸音性能の低下を抑制できることが確認された。これは、上記したような第1表面皮膜層2Aと第2表面皮膜層2Bの構造の相違によると推測される。つまり、第1表面皮膜層2Aは、薄膜状の発泡セルS2が密集配置された構造で、多孔質型の吸音特性が顕著に現れる構造であるためと推測される。
発泡体1は、音の入射側を第2表面皮膜層2B(金型面20a側の面)とした場合が第1表面皮膜層2A(ローラ21側の面)の場合よりも低周波数帯域での吸音ピーク性能が低周波数側にシフトし、且つ、吸音帯域が広い。これは、上記したような第1表面皮膜層2Aと第2表面皮膜層2Bの構造の相違によると推測される。つまり、第2表面皮膜層2Bは、フラットで波を打ったような波紋ができ、第1表面皮膜層2Aに較べると、厚みが厚く少し固め(密度が高い質感)となる。換言すれば、表面が平らで皮膜がしっかりしているため、表面反射し易く、共振による吸音効果が出やすい構造であるためと推測される。
また、発泡体1は、上記したように、音の入射側を第1表面皮膜層2A(ローラ21側の面)とする場合と、音の入射側を第2表面皮膜層2B(金型面20a側の面)とする場合で異なる吸音特性を有する。従って、発泡体1の吸音材としての使い勝手が向上する。
(第2実施形態)
図7〜図11は本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態では、前記第1実施形態と比較して、押出し成形機10Aの構成が一部相違する。つまり、押出し成形機10Aは、規制枠壁20の押し出し方向の下流では、規制枠壁20の上面側及び下面側が共に開放されている。この開放された上下位置には、複数のローラ21が押し出し方向に並んでそれぞれ設けられている。この上下位置の各ローラ21は、押し出される発泡体1Aに追従して回転するよう回転自在に支持されている。又、上下位置の各ローラ21は、発泡体1Aの押出し速度で回転するよう構成しても良い。上下位置の各ローラ21は、押し出される発泡体1Aの上下面を圧縮する。上下位置のローラ21の間隔は、10mmに設定されている。従って、発泡体1Aは、10mm厚のものが製造される。
発泡体1Aは、前記第1実施形態のものと同様に、発泡セルS1,S2,S3の密度によって5層構造に形成される。ここで、第1表面皮膜層2Aと第2表面皮膜層2Bは、共に前記第1実施形態の第1表面皮膜層2Aのような構造となる。
他の構成は、前記第1実施形態と同様にあるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付して説明を省略する。
以上、押出し成形機10の吐出口12,13から押し出された発泡体1Aは、その両面側がローラ21によって真上及び真下(垂直方向)からプレスされるため、金型面20aを摺動する場合に比較して厚みが薄く、フラットな表面となり、薄膜状の発泡セルが密集配置された構造となると推測される。従って、音の進入側を第1表面皮膜層2A(ローラ21側)とした場合、音の進入側を第2表面皮膜層2B(ローラ21側)とした場合共に、多孔質型の吸音特性が顕著に現れると推測される。以上より、低周波数帯域で吸音ピーク性能を有し、しかも、高周波数帯域での吸音性能の低下を抑制できる発泡体1Aを作製できる。
第2実施形態の発泡体1Aでは、音の入射側をどの面に設置しても同じ吸音特性が得られるため、発泡体1Aの設置が容易である。
(第3実施形態)
図12〜図16は本発明の第3実施形態を示す。この第3実施形態では、前記第1実施形態と比較して、押出し成形機10Bの構成が一部相違する。つまり、押出し成形機10Bの口金部材11には、吐出口12が2段ではなく一段のみ設けられている点が相違する。
製造される発泡体1Bは、従来例のものと同様に仕切皮膜層がない構造であり、発泡セルS2,S3の密度によって3層構造に形成される。ここで、第1表面皮膜層2Aと第2表面皮膜層2Bは、共に前記第1実施形態の第1表面皮膜層2Aと第2表面皮膜層2Aのような構造となる。
他の構成は、前記第1実施形態と同様にあるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付して説明を省略する。
以上、押出し成形機10の吐出口12,13から押し出された発泡体1Bは、その上面側がローラ21によって真上(垂直方向)からプレスされるため、金型面20aを摺動する場合に比較して厚みが薄く、フラットな表面となり、薄膜状の発泡セルが密集配置された構造となると推測される。従って、音の進入側を第1表面皮膜層2A(ローラ21側)とした場合に、多孔質型の吸音特性が顕著に現れると推測される。以上より、低周波数帯域で吸音ピーク性能を有し、しかも、高周波数帯域での吸音性能の低下を抑制できる発泡体1Bを作製できる。
(第4実施形態)
図17〜図21は本発明の第4実施形態を示す。この第4実施形態では、前記第2実施形態と比較して、押出し成形機10Cの構成が一部相違する。つまり、押出し成形機10Cの口金部材11には、吐出口12が2段ではなく一段のみ設けられている点が相違する。
製造される発泡体1Cは、従来例のものと同様に仕切皮膜層がない構造であり、発泡セルS2,S3の密度によって3層構造に形成される。ここで、第1表面皮膜層2Aと第2表面皮膜層2Bは、共に前記第2実施形態の第1表面皮膜層2Aと最2表面皮膜層2Bのような構造となる。
他の構成は、前記第2実施形態と同様にあるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付して説明を省略する。
以上、押出し成形機10の吐出口12から押し出された発泡体1Cは、その両面側がローラ21によって真上及び真下(垂直方向)からプレスされるため、金型面20aを摺動する場合に比較して厚みが薄く、フラットな表面となり、薄膜状の発泡セルが密集配置された構造となると推測される。従って、音の進入側を第1表面皮膜層2A(ローラ21側)とした場合、音の進入側を第2表面皮膜層2B(ローラ21側)とした場合共に、多孔質型の吸音特性が顕著に現れると推測される。以上より、低周波数帯域で吸音ピーク性能を有し、しかも、高周波数帯域での吸音性能の低下を抑制できる発泡体1Cを作製できる。
(その他)
第1及び第2実施形態では、発泡体1、1Aは、内部に1層の仕切皮膜層4を有するが、複数層の仕切皮膜層4を有するものであっても良い。複数の仕切皮膜層4によって更なる吸音効果が期待できる。
各実施形態では、合成樹脂成分は、ポリプロピレン樹脂材のJ830HV(株式会社プライムポリマーの商品名プライムポリプロの一種)を使用しているが、これ以外のもの(ポリプロピレン樹脂のJ3000GP、J2000GP、J2003GP、J2041GA(いずれも株式会社プライムポリマーの商品名プライムポリプロの一種)等を使用しても、低周波数帯域(ほぼ1kHz〜2kHz)で吸音ピーク性能を有し、しかも、高周波数帯域(ほぼ2kHz以上)での吸音性能の低下を抑制できる。
1,1A〜1C 発泡体
10,10A〜10C 押出し成形機
11 口金部材
12,13 吐出口
20 規制枠壁
20a 金型面(固定面)
21 ローラ
30 プレス機

Claims (7)

  1. パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分と水とを加熱混練した材料を吐出口より吐出する吐出工程と、
    前記吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制枠壁で規制し、前記規制枠壁で規制されつつ押し出された前記発泡体の上下面のいずれか一方側はローラが回転しつつ押圧され、前記発泡体の上下面の他方側は固定面上を摺動するローラ押圧工程とを備えたことを特徴とする発泡体の製造方法。
  2. 請求項1記載の発泡体の製造方法であって、
    前記吐出工程では、一定の方向に間隔を置いて設けられた複数の吐出口から前記発泡体を吐出することを特徴とする発泡体の製造方法。
  3. 請求項1記載の発泡体の製造方法であって、
    前記吐出工程では、一定の方向に間隔を前記吐出口が複数設けられ、且つ、その上下同じ位置で複数段設けられた前記吐出口から前記発泡体を吐出することを特徴とする発泡体の製造方法。
  4. パルプ繊維成分とポリプロピレン樹脂材のJ830HV(株式会社プライムポリマーの商品名プライムポリプロの一種)と補助剤としての澱粉成分と水とを加熱混練した材料を吐出口より吐出する吐出工程と、
    前記吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制枠壁で規制し前記規制枠壁で規制されつつ押し出された前記発泡体の上下面のいずれか一方側はローラが回転しつつ押圧され、前記発泡体の上下面の他方側は固定面上を摺動するローラ押圧工程と、
    前記ローラ押圧工程を終えた前記発泡体を圧縮するプレス工程とを備えたことを特徴とする発泡体の製造方法。
  5. パルプ繊維成分と合成樹脂成分と澱粉成分と水とを材料とする、第1表面皮膜層と発泡セル層と第2表面皮膜層との少なくとも3層構造に形成され、前記第1及び第2表面皮膜層は、前記発泡セル層より発泡密度が高い発泡セルが密集配置され、前記第1表面皮膜層は、前記第2表面皮膜層より厚みが薄く、フラットな表面に形成されていることを特徴とする発泡体。
  6. パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分と水とを加熱混練した材料を押し出す吐出口を有する口金部材と、前記吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制する規制枠壁と、前記規制枠壁内より押し出された前記発泡体の上下面のいずれか一方側を回転しつつ押圧するローラと、前記発泡体の上下面の他方側を摺動させる金型面とを有する押出し成形機を備えたことを特徴とする発泡体の製造装置。
  7. パルプ繊維成分とポリプロピレン樹脂材のJ830HV(株式会社プライムポリマーの商品名プライムポリプロの一種)と補助剤としての澱粉成分と水とを加熱混練した材料を吐出口より押し出す口金部材と、前記吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制する規制枠壁と、前記規制枠壁内より押し出された前記発泡体の上下面のいずれか一方側を回転しつつ押圧するローラと、前記発泡体の上下面の他方側を摺動させる金型面とを有する押出し成形機と、
    前記押出し成形機で作られた前記発泡体を圧縮するプレス装置とを備えたことを特徴とする発泡体の製造装置。
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