JP6214583B2 - 高分子基材、その用途及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子基材、その用途及びその製造方法に関する。
タンパク質又は細胞と接触して用いられる材料として、各種の高分子基材が利用されている。このような高分子基材においては、タンパク質又は細胞に対する非粘着性並びに剥離性が求められることがある。
このような高分子基材において、タンパク質又は細胞に対する非粘着性並びに剥離性をより向上させる目的で、表面改質又は表面加工等が行われている。例えば、機能性材料を高分子基材に混合(練り込み)成形したり(特許文献1)、高分子基材表面に機能性材料を塗布加工することにより物理的に付着させたりする技術(特許文献2)が報告されている。
しかしながら、これらの技術には、付加された機能性材料が経時的に外部に溶出あるいは剥離するなど、耐久面で問題があり、人体への悪影響を含め安全面の懸念が残る。
そこで、機能性材料の高分子基材への密着性を向上する目的で、化学結合を利用して高分子基材表面に機能性材料を付加する研究も進められている(特許文献3)。この化学結合を利用した方法としては、置換基同士の化学反応を用いる方法(特許文献4)、及び光照射又は放射線照射といった高エネルギー付与により生成したラジカルを利用した方法が知られている。後者では、γ線、X線等の放射線や、電子線、紫外線等の光、放電により発生する電離した気体、すなわちプラズマ、を照射源とする方法を用いたグラフト重合付加が挙げられる。例えば、ダイヤモンド様薄膜表面へのプラズマ照射により生体適合性分子材料をグラフト重合付加させ、膜の超親水性化を狙った例(特許文献5)や、低温プラズマ処理を用いて、塩化ビニル樹脂表面に含フッ素分子材料をグラフト重合及び/又は共重合付加させることで表面改質し、可塑剤の溶出の低減を試みた例(特許文献6)が挙げられる。
また、高分子基材表面にグラフト重合が可能な重合体を予め存在させ、プラズマ照射前又は後にラジカル重合性化合物を付与することにより、表面を高潤滑化し、血液適合性の向上を狙った例も報告されている(特許文献7)。
国際公開第2007/114134号 特許第3992370号公報 特表2011−518907号公報 特開2001−500407号公報 特開2008−230880号公報 特開昭59−44322号公報 特開平4−159337号公報
本発明者らは、従来の方法では、タンパク質及び/又は細胞に対して十分な非粘着性並びに剥離性を示す表面を有する高分子基材は得られないことを見出した。
そこで、本発明は、タンパク質及び/又は細胞に対する非粘着性並びに剥離性が従来よりも優れた表面を有する高分子基材を提供することを課題とする。
本発明者らは、機能性材料で表面を覆うことによりタンパク質及び/又は細胞に対する非粘着性並びに剥離性を高分子基材に十分な程度付与するためには、機能性材料の選択が重要であることを見出した。本発明者らは、フッ素原子を含有する化合物に基づく構成単位を含有する機能性材料を用いることにより上記課題を解決できることを見出した。
また、本発明者らは、高分子基材表面における機能性材料の被覆率を十分に向上させることも上記課題解決のために重要であることを見出した。本発明者らは、フッ素含有化合物、及び/又はフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体を機能性材料として用い、これらを高分子基材表面に化学結合を介して結合させることにより、高分子基材表面における機能性材料の被覆率を十分に向上させることができ、これにより、タンパク質及び/又は細胞に対する非粘着性並びに剥離性を高分子基材に十分な程度付与できることを見出した。
すなわち、本発明は、かかる知見に基づいてさらなる試行錯誤を経て完成されたものであり、以下の実施形態を提供するものである。
項1.
(A)少なくとも1種のフッ素含有化合物、及び/又は
(B)少なくとも1種のフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体が、
少なくとも表面の一部に化学結合を介して結合している、高分子基材。
項2.
フッ素含有化合物が、常温で液状である、項1に記載の高分子基材。
項3.
フッ素含有化合物が、アクリル酸系化合物、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、ビニルピロリドン系化合物、ビニルエーテル系化合物及びピロール系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物において、少なくとも一つの水素原子がフッ素原子に置換されたものである、項1又は2に記載の高分子基材。
項4.
フッ素含有化合物が、カルボキシル基に対して直接又は2価の有機基を介してエステル結合したフルオロアルキル基を有し、α位に置換基を有することのあるアクリル酸エステルである、項1に記載の高分子基材。
項5.
フッ素含有化合物が、一般式:CH=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX基(但し、X及びXは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基又は置換若しくは非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−又は−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基若しくは環状脂肪族基、−CHCHN(R)SO−基(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CHCH(OZ)CH−基(但し、Zは水素原子又はアセチル基である。)、−(CH−SO−(CH−基、−(CH−S−(CH−基(但し、mは1〜10、nは0〜10である)又は−(CH−COO−基(mは1〜10である)であり;
Rfは、ヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。]で表される、項1に記載の高分子基材。
項6.
一般式(1)で表されるフッ素含有化合物において、Rfが、ヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である、項5に記載の高分子基材。
項7.
重合体(B)が、常温で気体状の化合物及び常温で液状の化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体である、項1〜4に記載の高分子基材。
項8.
常温で気体状の化合物が、エチレン系化合物である、項7に記載の高分子基材。
項9.
重合体(B)が、フッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を50重量%以上含有する、項1〜8に記載の高分子基材。
項10.
フッ素含有化合物が、常温でガス状である、項1に記載の高分子基材。
項11.
タンパク質及び/又は細胞と接触して用いられる、項1〜10に記載の高分子基材。
項12.
医療用又は実験用の、バッグ、チューブ、ディッシュ、プレート又はフラスコとして用いられる、項1〜11に記載の高分子基材。
項13.
項1〜12に記載の高分子基材を製造する方法であって、
放射線照射によるグラフト重合により、
フッ素含有化合物(A)及び/又はフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体(B)を、少なくとも表面の一部に化学結合を介して結合させる工程
を含む、方法。
本発明により、タンパク質及び/又は細胞に対する非粘着性並びに剥離性が従来よりも優れた表面を有する高分子基材を提供できる。
以下、本発明の高分子基材、その用途及びその製造方法について具体的に説明する。
1. 本発明の高分子基材
本発明の高分子基材は、
(A)少なくとも1種のフッ素含有化合物、及び/又は
(B)少なくとも1種のフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体が、
少なくとも表面の一部に化学結合を介して結合している、高分子基材である。
1.1 高分子基材
本発明の高分子基材は、タンパク質及び/又は細胞と接触して用いられるものであればよく、特に限定されない。
高分子基材としては、特に限定されず、公知のものの中から用途に応じて幅広く選択することができる。例えば、医療用又は実験用高分子基材として従来使用されているものの中から用途に応じて適宜選択することができる。
医療用又は実験用高分子基材としては、特に限定されず、公知のものの中から用途に応じて幅広く選択することができる。例えば、医療器具、人工臓器、整形材料、生体適合材料、膜材料、細胞培養器材、再生医療材料及び実験器具等に用いられるものが挙げられる。
より具体的には、以下のものがそれぞれ挙げられる。
医療器具として、輸液バッグ、血液回路、細胞培養バッグ、細胞保存バッグ、創傷被覆材、癒着防止材、タンパク質又は細胞の注入器具(シリンジ及びカテーテル等)、バイアル等が挙げられる。
人工臓器及び整形材料として、人工心臓、人工腎臓、人工肺、人工骨、人工皮膚及び人工関節等が挙げられる。
膜材料として、血漿分離膜、白血球除去膜、輸血用フィルター及びウイルス除去膜等が挙げられる。
細胞培養器材として、細胞培養ディッシュ、細胞培養プレート及び細胞培養フラスコ等が挙げられる。
再生医療材料として、再生医療用スキャフォールド等が挙げられる。
実験器具として、マイクロチューブ、試験管、プレート等の容器;スポイト、ピペット、ピペットチップ、シリンジ等の分注器具;各種チューブ;電気泳動器具、プロテインチップ(マイクロアレイ)等の解析用機器等が挙げられる。
高分子基材の材料としては、特に限定されず、汎用樹脂を使用することができる。汎用樹脂を使用することにより生産コストを下げることができるため好ましい。例えば、ガラス類、プラスチック類、セラミックス及び金属等が挙げられる。具体的には、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリウレタン、ウレタンアクリレート及びポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、並びにポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、共役結合を持つ天然ゴム、共役結合を持つ合成ゴム及びシリコーンゴム、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリアミノ酸、ポリリンゴ酸,ポリジオキサン、ポリ−ε−カプロラクトン及び乳酸−ε−カプロラクトン共重合体等の生分解性高分子材料等が挙げられる。材料はこれらを2種以上含むブレンドポリマー又はポリマーアロイであってもよい。
高分子基材は、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて、表面処理がされていてもよいし、表面にさらに他の層を有していてもよい。
また、高分子基材は、フィルム又はシート状であってもよく、この場合、上記の各樹脂それぞれからなる複数の層で構成される積層フィルム又はシートであってもよい。
1.2 フッ素含有化合物(A)
本発明において、用語「フッ素含有化合物」は、分子内にフッ素原子を含有する化合物を意味する。フッ素含有化合物(A)は、特に限定されない。本発明の高分子基材を製造する際に、常温で気体状の化合物をフッ素含有化合物(A)として用いた場合、オートクレーブ等の耐圧容器が必要となる場合があり、装置が比較的複雑となる。これに対して、常温で液状の化合物を用いた場合にはより簡便に製造できるので好ましい。
常温で液状のフッ素含有化合物(A)としては、特に限定されず、公知のものを広く使用できる。例えば、アクリル酸系化合物、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、アクリロニトリル系化合物、ビニルピロリドン系化合物、ビニルエーテル系化合物及びピロール系化合物等において、少なくとも一つの水素原子がフッ素原子に置換されたものが挙げられる。
アクリル酸系化合物としては、特に限定されず、公知のものを広く使用できる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
アクリレート系化合物としては、特に限定されず、公知のものを広く使用できる。例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;並びにジエチレングリコールメタクリレートのようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル等が挙げられる。
アクリルアミド系化合物としては、特に限定されず、公知のものを広く使用できる。例えば、アクリルアミド、メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
スチレン系化合物としては、特に限定されず、公知のものを広く使用できる。例えば、スチレン、アルキルスチレン等が挙げられる。
フッ素含有化合物(A)は、フッ素原子を含有するラジカル重合性化合物であってもよい。
好ましいフッ素含有化合物(A)として、例えば、カルボキシル基に対して直接又は2価の有機基を介してエステル結合又はアミド結合したフルオロアルキル基を有し、α位に置換基を有することのある、アクリル酸エステル(以下、「フルオロアルキル基含有アクリル酸エステル」と略記することがある。)及びアクリルアミド(以下、「フルオロアルキル基含有アクリルアミド」と略記することがある。)等が挙げられる。このようなフッ素含有化合物(A)を用いることにより、表面自由エネルギーがより低く、かつより不活性であるという好ましい特性を高分子基材に付与できる。
フルオロアルキル基含有アクリル酸エステル又はフルオロアルキル基含有アクリルアミドの好ましい具体例としては、一般式:CH=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX基(但し、X及びXは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基又は置換若しくは非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−又は−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基若しくは環状脂肪族基、
−CHCHN(R)SO−基(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CHCH(OZ)CH−基(但し、Zは水素原子又はアセチル基である。)、−(CH−SO−(CH−基、−(CH−S−(CH−基(但し、mは1〜10、nは0〜10である)又は−(CH−COO−基(mは1〜10である)であり;
Rfは、ヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。]で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドを例示できる。
上記一般式において、Rfで表されるフルオロアルキル基は、少なくとも一個の水素原子がフッ素原子で置換された、ヘテロ原子を有していてもよいアルキル基であり、全ての水素原子がフッ素原子で置換された、ヘテロ原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基も包含するものである。
上記一般式で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドでは、Rfが炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基であることが好ましく、特に、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。近年、EPA(米国環境保護庁)により、炭素数が8以上のフルオロアルキル基を有する化合物は、環境、生体中で分解して蓄積するおそれがある環境負荷が高い化合物であることが指摘されているが、上記一般式で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドにおいてRfが炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である場合には、この様な環境問題を生じることがないためである。
上記式(1)において、Rf基の例として、−CF、−CFCF、−CFCFCF、−CF(CF、−CFCFCFCF、−CFCF(CF、−C(CF、−(CFCF、−(CFCF(CF、−CFC(CF、−CF(CF)CFCFCF、−(CFCF及び−(CFCF(CF等が挙げられる。
さらに、フッ素含有化合物(A)は、非フッ素テロマーであることが好ましく、この点で、Rf基としては、炭素数1〜2のフルオロアルキル基、又はヘテロ原子によって介在された二以上の炭素数1〜3のフルオロアルキル基が好ましい。具体例としては、COCF(CF)CFOCF(CF)−及び(CFNCn2n−(n’=1〜6)等が挙げられる。
上記一般式で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドの具体例は、次の通りである。なお、下記の式中、Rfは、炭素数が、1〜6、好ましくは1〜3である、フルオロアルキル基である。
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−C−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CHN(−CH)SO−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CHN(−C)SO−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−CHCH(−OH)CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−CHCH(−OCOCH)CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−H)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−C−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHN(−CH)SO−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHN(−C)SO−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−CHCH(−OH)CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−CHCH(−OCOCH)CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CH)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−F)−C(=O)−NH−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CF)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CFH)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CN)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−S−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−S−(CH−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−SO−Rf
CH=C(−CFCF)−C(=O)−O−(CH−SO−(CH−Rf
上記一般式で表されるアクリル酸エステル又はアクリルアミドの具体例として、以下が挙げられる。
CH=C(−CH)−C(=O)−O−CH−CF(−CF)−O−CF−CF(−CF)−O−C
CH=C(−H)−C(=O)−O−CH−CF(−CF)−O−CF−CF(−CF)−O−C
CH=C(−CH)−C(=O)−O−CH−C
CH=C(−H)−C(=O)−O−CH−C
上記したフルオロアルキル基含有アクリル酸エステル又はアクリルアミドは、任意に選択のうえ、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
また、フッ素含有化合物(A)として、常温でガス状のものを用いることもできる。この場合、特に限定されないが、プラズマ処理によりガス状のフッ素含有化合物を高分子基材の表面の一部に結合させることができる。この場合、ガス状のフッ素含有化合物として重合性のものを使用し、プラズマ重合により高分子基材の表面を高分子薄膜で覆ってもよい。また、ガス状のフッ素含有化合物として非重合性のものを使用し、プラズマ処理によりこのフッ素含有化合物を高分子基材の表面に結合させることにより表面改質を行ってもよい。
特に限定されないが、例えば、ガス状かつ非重合性のフッ素含有化合物として、テトラフルオロメタン(CF)、ヘキサフルオロエタン(C)、パーフルオロエチレン(C)、ヘキサフルオロエポキシプロパン(COF)及びパーフルオロプロパン(C)等を用い、プラズマ処理することにより高分子基材の表面にフッ素基のインプランテーションを行うことができる。
プラズマ処理の条件としては、高分子基材やガス状のフッ素含有化合物の種類等に応じて適宜設定することができる。通常、ガス状のフッ素含有化合物の存在下でいわゆる低温プラズマ処理を行う。
1.3 重合体(B)
重合体(B)は、少なくとも1種のフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体である。
重合体(B)の繰り返し単位の基となるフッ素含有化合物(以下、フッ素含有化合物(b)という。)は特に限定されず、重合性の化合物でありさえすれば、上記1.2のフッ素含有化合物(A)についての説明が全て該当するほか、さらに別のフッ素含有化合物を用いることができる。
例えば、フッ素含有化合物(b)としては、常温で気体状の化合物及び常温で液状の化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を用いることができる。
上記において、常温で気体状の化合物は、特に限定されず、公知のものを広く使用できる。例えば、少なくとも一つの水素原子がフッ素原子に置換されたエチレン系化合物を挙げることができる。そのような含フッ素エチレン系化合物として、より具体的には、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及びフッ化ビニル等が挙げられる。
フッ素含有化合物(b)として、フッ素含有化合物(A)と同様、フルオロアルキル基含有アクリル酸エステルを用いてもよい。フルオロアルキル基含有アクリル酸エステルを用いることにより、表面自由エネルギーがより低く、かつより不活性であるという好ましい特性を高分子基材に付与できる。
重合体(B)は、フッ素含有化合物(A)と共に用いられる場合、フッ素含有化合物(A)の少なくとも一種と同一のフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を少なくとも一種含有する重合体であってもよい。また、重合体(B)は、フッ素含有化合物に基づく繰り返し単位として、フッ素含有化合物(A)とはいずれも異なるフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位のみを含有する重合体であってもよい。
重合体(B)は、特に限定されないが、タンパク質及び/又は細胞に対する非粘着性並びに剥離性の点で、フッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を、50重量%以上含有するものであれば好ましく、60重量%以上含有するものであればより好ましく、70重量%以上含有するものであればさらに好ましい。
重合体(B)は、分子内にフッ素原子を含有しない化合物に基づく繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。そのような繰り返し単位の基礎となる化合物としては、特に限定されないが、アクリル系化合物及びメタクリル系化合物等が挙げられる。これらの化合物は、生体適合性を有する化合物であってもよく、特に限定されず、公知のものを広く使用でき、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及び2−メトキシエチルアクリレート(MEA)等が挙げられる。
本発明においては、タンパク質及び/又は細胞の非粘着性並びに剥離性の点で、好ましくは、フッ素含有化合物(A)及び重合体(B)の両者が少なくとも表面の一部に化学結合を介して結合しているものである。この場合において、フッ素含有化合物(A)及び重合体(B)の比率は、重量比で、1:99〜20:80であれば好ましく、1:99〜10:90であればより好ましく、1:99〜5:95であればさらに好ましい。
本発明の高分子基材においては、フッ素含有化合物(A)、及び/又は重合体(B)が、少なくとも表面の一部に、直接又は他の構造を介して、化学結合を介して結合している。
上記において、「化学結合」には、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合及びファンデルワールス結合が含まれる。
2. 本発明の高分子基材の用途
本発明の高分子基材は、タンパク質及び/又は細胞と接触して用いられるものであり、その具体的用途は特に限定されず、幅広い用途に使用できる。
本発明の高分子基材は、例えば、医療用又は実験用の基材として使用できる。
本発明の高分子基材は、医療用基材として使用される場合、例えば、医療器具、人工臓器、整形材料、生体適合材料、膜材料、細胞培養器材及び再生医療材料等として、又はその材料若しくは部品等として使用できる。
本発明の高分子基材は、実験用基材として使用される場合、例えば、各種実験器具として、又はその材料若しくは部品等として使用できる。
医療用又は実験用基材の形状としては、特に限定されず用途に応じて適宜選択することができるが、例えば、シート、フィルター、バッグ、チューブ、バイアル、ディッシュ、プレート及びフラスコ等が挙げられる。
医療用又は実験用基材として、より具体的には、以下のものがそれぞれ挙げられる。
医療器具として、輸液バッグ、血液回路、細胞培養バッグ、細胞保存バッグ、創傷被覆材、癒着防止材、タンパク質又は細胞の注入器具(シリンジ及びカテーテル等)、バイアル等が挙げられる。
人工臓器及び整形材料として、人工心臓、人工腎臓、人工肺、人工骨、人工皮膚及び人工関節等が挙げられる。
膜材料として、血漿分離膜、白血球除去膜、輸血用フィルター及びウイルス除去膜等が挙げられる。
細胞培養器材として、細胞培養ディッシュ、細胞培養プレート及び細胞培養フラスコ等が挙げられる。
再生医療材料として、再生医療用スキャフォールド等が挙げられる。
実験器具として、マイクロチューブ、試験管、プレート等の容器;スポイト、ピペット、ピペットチップ、シリンジ等の分注器具;各種チューブ;電気泳動器具、プロテインチップ(マイクロアレイ)等の解析用機器等が挙げられる。
3. 本発明の高分子基材の製造方法
本発明の高分子基材は、
フッ素含有化合物(A)及び/又はフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体(B)を、少なくとも表面の一部に化学結合を介して結合させる工程
を含む方法によって、得ることができる。
本発明の上記製造方法においては、放射線照射グラフト重合により、ラジカル重合性のフッ素含有化合物(A)、及び/又はラジカル重合性のフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体(B)を、少なくとも表面の一部に化学結合を介して結合させることが好ましい。
上記工程において、フッ素含有化合物(A)及び重合体(B)を溶解させる溶媒は、任意の汎用溶剤を用いることができ、特に限定されないが、例えば、常温下において沸点120℃以下、特に60〜110℃のものが好ましい。特に限定されないが、具体例として、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤及びフッ素系溶剤等を挙げることができる。炭化水素系溶剤としては、特に限定されず、公知のものを広く使用できる。例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド及びヘキサン等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルイソブチルケトン及びアセトン等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n(又はi)−プロパノール及び2(又はn)−ブタノール等が挙げられる。フッ素系溶剤としては、分子中にフッ素原子を有し、フッ素含有重合体の溶解性が良好な溶媒であれば、炭化フッ素化合物、アルコール及びエーテル等のいずれであってもよく、また、脂肪族及び芳香族のいずれであってもよい。例えば、塩素化フッ素化炭化水素(特に、炭素数2〜5)、特にHCFC225(ジクロロペンタフルオロプロパン)、HCFC141b(ジクロロフルオロエタン)、CFC316(2,2,3,3−テトラクロロヘキサフルオロブタン,)、バートレルXF(化学式 C5H2F10)(デュポン社製)、AC−6000(化学名トリデカフルオロオクタン)(旭硝子製)、ヘキサフルオロ−m−キシレン、ペンタフルオロプロパノール、Novec7100、Novec7200及びNovec7300(Novecは住友スリーエム社製)等を用いることができる。フッ素含有化合物(A)及び重合体(B)を溶解させる溶媒として、一種の溶媒のみを用いてもよいし、二種以上の溶媒を混合して用いてもよい。溶媒には、さらに必要に応じて添加剤を添加して用いてもよい。
上記工程において、重合体(B)を高分子基材の少なくとも表面の一部に存在させた状態で放射線を照射し、その照射時又は照射後に、フッ素含有化合物(A)を同表面に供給することが好ましい。これにより、より均一な被覆層が該表面上に形成されることになる。高分子基材表面の被覆率が向上するため、タンパク質及び/又は細胞に対する非粘着性並びに剥離性がより向上する。
ラジカル重合の方法としては、特に限定されないが、例えば、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理及び有機重合反応等が挙げられる。
ラジカル重合の方法としては、放射線照射による方法が好ましい。
重合体(B)を高分子基材の少なくとも表面の一部に存在させた状態とする方法は、特に限定されず、塗布及び混練等の単なる物理的吸着により行ってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下において、%は、特記しない限り、重量%を表わす。
X線光電子分光分析法による表面分析及び接触角の測定は以下のようにして行った。
[X線光電子分光分析法 (X−ray PhotoelectronSpectroscopy:XPS)による表面分析]
ESCA3400(島津製作所製)を用いて、放出角90°の条件でF1s/C1sを測定することにより、基材表面にフッ素含有重合体が存在していることを確認した。
[接触角]
基材表面に存在するフッ素含有重合体について、撥水性を評価する接触角は以下の様にして測定した。全自動接触角計Dropmaster701(協和界面科学製)を用いて、水滴2μLを基材表面に滴下後、1秒後の接触角を測定した。測定環境はJISR3257に準じて、温度15〜20℃、相対湿度50〜70%とした。接触角の大きい方が、撥水性に優れている。
1.実施例
1.1 実施例1(重合体の調製)
500ml四つ口フラスコに、CH=C(CH)−COO−(CH−(CFF(以下、13−FMAと略す) 51.9g(120mmol)、HCFC225 207.5g及びt−ブチルパーオキシピバレート 0.5gを入れ、窒素置換により系内の酸素を除去した。次いで、徐々に反応混合物の温度を上げて、60℃で12時間保って重合反応を行った。室温に冷却した反応液を多量のアセトン中に投入して生成した重合体を沈殿させ、濾取、洗浄後、真空乾燥して、数平均分子量(Mn)14,900の含フッ素重合体を得た。
含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、HCFC225と1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ−2−プロパノールを90:10で混合した溶液を展開溶媒とし、カラムとしてTOSOH TSKguardcolumn HXL−L(6.0mmI.D.×4cm)、TOSOH TSKgel G4000HXL(7.8mmI.D.×30cm)、TOSOH TSKgel G3000HXL(7.8mmI.D.×30cm)、TOSOH TSKgel G2000HXL(7.8mmI.D.×30cm)を直列に接続したものを用いて、GPC分析により30℃で測定した。尚、クロマトグラムは、標準PMMA(ポリメチルメタアクリレート)を用いて校正した。
1.2 実施例2(処理液の調製)
実施例1で得られたフッ素含有重合体 0.018gをHFE7300(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−トリフルオロメチル−ペンタン) 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Aを調製した。また、実施例1で得られたフッ素含有重合体 0.018gを13−FMA 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Bとした。更に、13−FMA 6.0gをHFE7300 4.0gに溶解させ、13−FMAの濃度が60%となる処理液Cを調製した。
1.3 実施例3(電子線の同時照射と前照射、及び重合)
[同時照射]
実施例2で得られた処理液A又は処理液Bを用いて、スピンコート法(2000rpm)でポリスチレンフィルム(共栄樹脂株式会社製、3cm×3cm×0.2cm)に塗布後、乾燥して製膜した。得られたサンプルを窒素雰囲気下でナイロン袋(旭化成パックス 規格袋 マジックカット飛竜NP)にシール梱包してサンプルを調製した。100kGy、50kGy又は25kGyのいずれかの電子線量で照射後、恒温器内(60℃)で12時間グラフト重合した。重合後、HFE7300を用いて3回以上洗浄後、HFE7300を更新しつつ恒温振盪器内(60℃)で12時間振盪させて洗浄し、その後、室温にて30分間真空乾燥させた。得られたサンプルについて、X線光電子分光分析法による表面分析、及び接触角の測定を行った。
[前照射]
ポリスチレンフィルムを窒素雰囲気下で同時照射と同じナイロン袋にシール梱包してサンプルを調製した。100kGy、50kGy又は25kGyのいずれかの電子線量で照射後、ガラス容器内に実施例2で得られた処理液Cと共に封入し窒素置換後、密閉したガラス容器を恒温振盪器内(60℃)で12時間振盪させてグラフト重合した。重合後、HFE7300を用いて3回以上洗浄後、HFE7300を更新しつつ恒温振盪器内(60℃)で12時間振盪させて洗浄し、その後、室温にて30分間真空乾燥させた。得られたサンプルについて、X線光電子分光分析法(XPS)による表面分析、及び接触角の測定を行った。
1.4 実施例4〜8(電子線の同時照射と前照射、及び重合)
高分子基材であるポリスチレンフィルムを、ポリプロピレンフィルム(新神戸電機株式会社製、3cm×3cm×0.2cm)、ポリエチレンフィルム(新神戸電機株式会社製、3cm×3cm×0.2cm)、ナイロン66フィルム(宇部興産株式会社製、3cm×3cm×0.2cm)、ポリエチレンテレフタラートフィルム(タキロン株式会社製、3cm×3cm×0.1cm)又はMICRO SLIDE GLASS(松浪硝子工業株式会社製、2.5cm×2.5cm×0.1cm)に変更する以外は実施例3と同様の操作を行った。
1.5 実施例9(重合体の調製)
実施例1の13−FMAを、CH=C(CH)−COO−(CH)−(CFF(以下、5−FMAと略す)に変更する以外は、実施例1と同じ方法で数平均分子量(Mn)312,000の含フッ素重合体を得た。
1.6 実施例10(処理液の調製)
実施例9で得られたフッ素含有重合体 0.018gをHFE7300(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−トリフルオロメチル−ペンタン) 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Dを調製した。また、実施例9で得られたフッ素含有重合体 0.018gを5−FMA 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Eとした。
更に、5−FMA 6.0gをHFE7300 4.0gに溶解させ、5−FMAの濃度が60%となる処理液Fを調製した。
1.7 実施例11〜13(電子線の同時照射と前照射、及び重合)
実施例3の処理液A、B、Cを処理液D、E、Fに変更する以外は、実施例3〜5と同様の方法により、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムを電子線照射によりフッ素加工した。
1.8 実施例14(重合体の調製)
実施例1の13−FMAを、CH=C(CH)−COO−(CH)−CF(以下、3−FMAと略す)に変更する以外は、実施例1と同じ方法で数平均分子量(Mn)121,000の含フッ素重合体を得た。
1.9 実施例15(処理液の調製)
実施例14で得られたフッ素含有重合体 0.018gをHCFC225 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Gを調製した。また、実施例14で得られたフッ素含有重合体 0.018gを3−FMA 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Hとした。更に、3−FMA 6.0gをHCFC225 4.0gに溶解させ、3−FMAの濃度が60%となる処理液Iを調製した。
2. 実施例16〜18(電子線の同時照射と前照射、及び重合)
実施例3の処理液A、B、Cを処理液G、H、Iに変更する以外は、実施例3〜5と同様の方法により、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムを電子線照射によりフッ素加工した。
2.1 実施例19(重合体の調製)
実施例1の13−FMAを、CH=C(CH)−COO−(CH)−(CHF)−CF(以下、4−FMAと略す)に変更する以外は、実施例1と同じ方法で数平均分子量(Mn)187,000の含フッ素重合体を得た。
2.2 実施例20(処理液の調製)
実施例19で得られたフッ素含有重合体 0.018gをHCFC225 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Jを調製した。また、実施例19で得られたフッ素含有重合体 0.018gを4−FMA 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Kとした。更に、4−FMA 6.0gをHCFC225 4.0gに溶解させ、4−FMAの濃度が60%となる処理液Lを調製した。
2.3 実施例21〜23(電子線の同時照射と前照射、及び重合)
実施例3の処理液A、B、Cを処理液J、K、Lに変更する以外は、実施例3〜5と同様の方法により、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムを電子線照射によりフッ素加工した。
2.4 実施例24(重合体の調製)
実施例1の13−FMAを、CH=C(CH)−COO−(CH)−(CF)−(CHF)−CF(以下、6−FMAと略す)に変更する以外は、実施例1と同じ方法で数平均分子量(Mn)400,000の含フッ素重合体を得た。
2.5 実施例25(処理液の調製)
実施例24で得られたフッ素含有重合体 0.018gをHCFC225 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Mを調製した。また、実施例24で得られたフッ素含有重合体 0.018gを6−FMA 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Nとした。更に、6−FMA 6.0gをHCFC225 4.0gに溶解させ、6−FMAの濃度が60%となる処理液Oを調製した。
2.6 実施例26〜28(電子線の同時照射と前照射、及び重合)
実施例3の処理液A、B、Cを処理液M、N、Oに変更する以外は、実施例3〜5と同様の方法により、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムを電子線照射によりフッ素加工した。
2.7 実施例29(重合体の調製)
実施例1の13−FMAを、CH=C(CH)−COO−(CH)−(CF)−(CHF)−(CF)−CF(以下、8−FMAと略す)に変更する以外は、実施例1と同じ方法で数平均分子量(Mn)730,000の含フッ素重合体を得た。
2.8 実施例30(処理液の調製)
実施例29で得られたフッ素含有重合体 0.018gをHCFC225 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Pを調製した。また、実施例29で得られたフッ素含有重合体 0.018gを8−FMA 0.982gに溶解させ、フッ素含有重合体の濃度が1.8%となる処理液Qとした。更に、8−FMA 6.0gをHCFC225 4.0gに溶解させ、8−FMAの濃度が60%となる処理液Rを調製した。
2.9 実施例31〜33(電子線の同時照射と前照射、及び重合)
実施例3の処理液A、B、Cを処理液P、Q、Rに変更する以外は、実施例3〜5と同様の方法により、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムを電子線照射によりフッ素加工した。
2.10 実施例34(マイクロ波プラズマ法によるPS製ディッシュの疎水化)
低圧マイクロ波プラズマ装置中にPS製ディッシュ(直径3.5cm)を入れ、CFを放電させることにより、PS製ディッシュを疎水化した。XPSで表面元素を測定した結果F1s/C1s=1.92であった。また、対水接触角を測定した結果、未処理の場合、83°であるのに対し、プラズマ加工後は、109°まで接触角が増大し、良好な疎水性が発現していることを確認した。
実施例3〜8、11〜13、16〜18、21〜23、26〜28及び31〜34の結果を下表1〜3に示す。なお、実施例の操作を行っていない高分子基材を未処理と表記して、接触角およびXPSの結果を併記した。
Figure 0006214583
Figure 0006214583
Figure 0006214583
表1〜3における記号について以下に説明する。
PS: ポリスチレン
PP: ポリプロピレン
PE: ポリエチレン
PET: ポリエチレンテレフタラート
処理液A: フッ素含有重合体(実施例1)とHFE7300の溶液
処理液B: フッ素含有重合体(実施例1)と13−FMAの溶液
処理液C: 13−FMAとHFE7300の溶液
処理液D: フッ素含有重合体(実施例9)とHFE7300の溶液
処理液E: フッ素含有重合体(実施例9)と5−FMAの溶液
処理液F: 5−FMAとHFE7300の溶液
処理液G: フッ素含有重合体(実施例14)とHCFC225の溶液
処理液H: フッ素含有重合体(実施例14)と3−FMAの溶液
処理液I: 3−FMAとHCFC225の溶液
処理液J: フッ素含有重合体(実施例19)とHCFC225の溶液
処理液K: フッ素含有重合体(実施例19)と4−FMAの溶液
処理液L: 4−FMAとHCFC225の溶液
処理液M: フッ素含有重合体(実施例24)とHCFC225の溶液
処理液N: フッ素含有重合体(実施例24)と6−FMAの溶液
処理液O: 6−FMAとHCFC225の溶液
処理液P: フッ素含有重合体(実施例29)とHCFC225の溶液
処理液Q: フッ素含有重合体(実施例29)と8−FMAの溶液
処理液R: 8−FMAとHCFC225の溶液
2.試験例
2.1 基板の細胞接着試験
(1)細胞播種
Vero細胞を、10%FBS(Invitrogen)を含むMEM培地(Invitrogen)にて培養する。サブコンフルエントになったら、0.25% trypsin−EDTA(Invitrogen)で剥がし、培地を添加し遠心する。細胞を無血清培地で1回洗浄する。その後、細胞懸濁液を調製し、1×10cells/mlとなるようにする。この細胞を、基板を入れた96wellプレートに100μLずつ播種する。
(2)細胞接着性評価
37℃インキュベーターに1時間静置させる。その後培地を取り除き、37℃に加温したPBSにて2回洗浄する。これを細胞接着評価に用いる。
細胞接着数の評価はQuant−iT(商標) PicoGreenキット(Invitrogen)を用いて、キットの推奨実験方法に準じて行う。以下に実験法の例を示す。
細胞を播種したウェルに0.2%Triton−X溶液を100μLずつ添加する。
その後、凍結解凍操作(Freeze/thaw)で細胞を完全に溶解する。PicoGreen試薬をTEバッファーで希釈し、100μLずつウェルに添加し、シェーカーで攪拌する。その後、excitation:485nm、excitation:535nmで蛍光測定を行う。
(3)細胞接着性
細胞接着性試験の結果、表面にフッ素含有化合物及びその重合体を併用しグラフト重合付加させた重合層を有する基材が、フッ素含有化合物のみ、又はフッ素含有化合物の重合体のみを電子線グラフト重合付加させた重合層に比べ、細胞非粘着性が高い結果が期待される。
2.2 基板の毒性試験
基板の毒性試験は、試験片(当該高分子基材)の抽出液をL929細胞に加え培養し、細胞の破壊度を判定する方法である。以下に、具体的な実験方法を示す。
(1)基板からの抽出
当該基板を2×15mm程度の大きさに細切し、スクリューキャップ付きの滅菌ガラス容器又はプラスチック管に入れ、1g 又は厚みを考慮した実表面積60cm に対して培地を10mLの割合で加える。培地のpHが中性域(培地の色で判断)であることを確認後、37℃の炭酸ガス培養器内に入れ、24時間静置して抽出する。抽出容器から、試験液のみを取り出し、試験液をろ過、遠心分離を行う。この試験液を、更に培地で、3 倍の割合で段階希釈する。
(2)試験操作
継代したL929細胞からトリプシン処理等により単離細胞を調製し、培地に懸濁させ、直径60mmシャーレ内で100〜200 個(培地4〜6mL)の細胞を播種する。
細胞を播種した培養容器を37℃の炭酸ガス培養器内に入れ、24時間静置し、細胞を培養容器底面に接着させる。その後、培地を除き、各試験液を培養容器に加える。加える液量は、細胞播種時の培地量と同様である。陰性対照材料及び陽性対照材料の試験液についても同様に加え各濃度の試験液について、少なくとも3 つのシャーレを使用する。試験液を加えた培養容器は、直ちに炭酸ガス培養器に入れ、静置して培養する。培養期間は、使用する細胞株により異なるが、陰性対照群における染色した個々のコロニー (50 個以上の細胞集団)が明確に区別できるまで培養する。培養終了後、培地を捨て、平衡塩類溶液で洗浄後、メタノール又は10vol%ホルマリン溶液等を加えて固定する。固定後、ギムザ染色液を加え、コロニーを染色し、染色液を捨て、水洗して乾燥させる。
(3)観察
各シャーレ(又は各ウェル)内の染色されたコロニー数を、コロニーカウンターを用いて数える。新鮮培地のみで培養した培養容器をコントロール群とし、コントロール群に播種した細胞数と実際に形成されたコロニー数からコロニー形成能(形成したコロニー数/播種した細胞数)を求める。コントロール群でのコロニー数の平均値を100%として、試験液で形成されたコロニー数を百分率(%)で示す。コントロール群のコロニー数を50%阻害する試験液の濃度(%)を求めIC50値とし、この値を細胞毒性強度の指標とする。コントロール群に対する100%試験液処理群のコロニー形成率が30%を超えて低下した場合、細胞毒性作用ありと評価する。当該高分子基材に細胞毒性作用は認められない結果が期待される。

Claims (6)

  1. 少なくとも
    (B)少なくとも1種のフッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を含有する重合体が
    少なくとも表面の一部に共有結合を介して結合している、ガラス類又はプラスチック類を材料とする基材
    を製造する方法であって、
    該基材の少なくとも表面の一部に重合体(B)を溶解させた溶媒を塗布した状態で放射線を照射することにより、重合体(B)を該基材の表面の一部に共有結合を介して結合させる工程
    を含み、
    前記フッ素含有化合物が、一般式:CH =C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX 基(但し、X 及びX は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基又は置換若しくは非置換のフェニル基であり;
    Yは、−O−であり;
    Zは、炭素数1〜10の脂肪族基であり;
    Rfは、ヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。]で表される、方法。
  2. 前記一般式で表されるフッ素含有化合物において、Rfが、ヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である、請求項に記載の方法
  3. 重合体(B)が、フッ素含有化合物に基づく繰り返し単位を50重量%以上含有する、請求項1又は2に記載の方法
  4. さらに、
    (A)少なくとも一種のフッ素含有化合物(ただし、前記重合体(B)とは異なる化合物である)
    、少なくとも表面の一部に存在させた状態で前記放射線照射を行うことにより、前記フッ素含有化合物(A)を該基材の表面の一部に共有結合を介して結合させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法
  5. 前記基材が、タンパク質及び/又は細胞と接触して用いられる、医療用又は実験用基材である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記基材が、バッグ、チューブ、ディッシュ、プレート又はフラスコとして用いられる、請求項に記載の方法
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