JP6211964B2 - イオン源 - Google Patents
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Description
そして、生成したプラズマは、その状態のまま加速器の入口まで輸送された後、電位差によりイオンのみが加速器に引き込まれ、イオンビームが出力される。
また、レーザで生成したプラズマ中に、目的とするイオン以外の不純物イオンが混入していると、ビーム品質の低下が懸念される。
そこで、イオン源から取り出されるイオンビームの純度を計測し、純度低下が観測された場合に、加速器の運転を停止するインターロックが、検討されている(例えば、特許文献1)。
これら不純物元素のイオン、水分由来の水素イオンや酸素イオン、残留ガス成分のイオンは、イオンビームに不純物イオンとして混入して、そのまま下流に輸送されてしまう。
このため、イオンビームの出力運転中において、その純度をリアルタイムで監視し、純度低下が観測された場合は、ただちに運転を停止する必要がある。
そこで、この近接する検出ピークを分離するために、イオンの飛行距離を延長することが検討される。しかしこの場合、検出ピークがブロード化し、検出ピークの分解能の向上が、十分に達成されないことがある。
このため、不純物イオンの誤計測により、上述のインターロック機能が、イオンビームの出力運転の安定性を、低下させる課題があった。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態に係るイオン源10は、真空容器11に収容されプラズマ14を生じさせるターゲット12と、この真空容器11に設けられプラズマ14から引き出されるイオンビームが通過する通過孔15と、真空容器11に設けられイオンビームの主軸Xに対しターゲット12から角度をなす方向に放出されるイオンを通過させる分岐孔21と、この分岐孔21を通過したイオンの飛行軌道22上に配置される検出部23と、この検出部23よりも手前の飛行軌道22上に配置されイオンの通過断面を絞るスリット24と、を備えている。
このイオン源10の外部には、レーザ発振部(図示略)が配置され、透明窓を通過してその内部に入射したレーザ13は、ターゲット12の表面に照射する。
このプラズマ14は、蒸発したターゲット12の元素が陽イオンと電子に電離した状態となっており、全体として電気的に中性になっている。
ターゲット12として、炭素系の板状部材を用いた場合、このプラズマ14には、目的とする多価の炭素イオンの他に、不純物元素のイオン、水分由来の水素イオンや酸素イオン、真空容器11内の残留ガス成分のイオンが不純物イオンとして混入している。
イオンビームの主軸Xが交わる真空容器11の壁には、プラズマ14の通過孔15が設けられている。
このプラズマ輸送管19により、プラズマ14は、拡散することなく線形加速器17の内部に導かれる。
このようにして、イオン源10で発生したプラズマ14は、連通路16を通過して線形加速器17に導入される。
このようにイオン源10を出発して高エネルギー化されたイオンビームは、例えば、がん治療に利用される重粒子線照射装置に利用される。
この分岐孔21は、真空容器11の内部に拡散したプラズマ14をその外部に導く。そして、分岐孔21から真空容器11の外部に導かれたイオンは、イオン種の定性・定量分析を実施する分析部20に案内される。
このため、イオン種の定性・定量分析の精度を確保するには、通過孔15に近い位置に分岐孔21を設けるのが望ましい。
このため、通過孔15と分岐孔21の位置が近いと、分析部20と周辺機器(線形加速器17等)とが電気的に短絡するおそれがある。
このような様々な制約条件の下、分岐孔21の位置及び分析部20のレイアウトは、最適化して決定される。
また、誘導管26、遮断部28及びカートリッジ27の電位レベルは、真空容器11(及びポート25)と同じ電位レベルに設定される。
もしくは、誘導管26及び遮断部28の少なくとも一部を絶縁材料で構成し、それよりも下流をグランドレベルに設定する場合もある。
もしくは、検出部23としてマイクロチャンネルプレート、二次電子増倍管 、光電子増倍管等のように信号増幅機能を有するものを用いることもできる。
このような信号増幅機能を有する検出部23を用いることにより、到達したイオンの数が少ない場合であっても、検出感度を向上させることができる。
スリット24を開口29がイオンの飛行軌道22(図1)を貫通するように配置することにより、イオン集団を部分的に通過させ、検出部23(図1)に向かわせるイオン集団の総電荷量を減少させることで、空間電荷効果を抑制し、イオンの発散を抑えることができる。
これにより、この飛行軌道22を外れて飛行するイオンは、スリット24により抑制され、検出部23に到達する確率が小さくなる。
分析部20(図1)は、飛行軌道22に沿って飛行するイオンの飛行時間を計測することにより、プラズマ14を構成するイオン種の組成の定性・定量を行う。
具体的には、質量電荷比(q/m)が大きいイオン種ほど、飛行時間が短くなり、検出部23から信号が早いタイミングで出力されることになる。
このような場合、図3(B)の比較例2に示すように、飛行軌道22の距離を延長することで、検出ピークを時間的に離間させることができる。
飛行軌道22の中心を外れて飛行するイオンは、飛行時間がずれてしまう。飛行軌道22の距離が伸びると、そのようなイオンの飛行時間の分布が広がるために、検出ピークの形状がブロードになってしまう。
次に図4に基づいて本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態のイオン源10は、飛行軌道22上に、イオンが飛来する以前に到達する発光を開閉動作により遮断するシャッター30を備えている。
図4においてシャッター30は、スリット24に近接して設けられる態様を示しているが、シャッター30の設けられる位置は、特に限定されることはなく、飛行軌道22上であればポート25、誘導管26、カートリッジ27のうちいずれかに設けることができる。
なお、図4において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図5の上段に示すように、レーザ13は、一定の周期間隔で断続的に発振されるレーザパルス13a,13b,13cから構成される。
一つのレーザパルス13aがターゲット12に照射されると、次のレーザパルス13bが照射されるまでの期間に、ターゲット12から放出されたイオンが飛行軌道22に沿って飛行して、検出部23に検出される。
したがって、レーザ発振の発振周期Tと同じ時間間隔で、図3に示されるグラフが更新されることになる。
このアブレーション光が検出部23に入射すると、図3のグラフの波形にノイズを生じさせ、検出ピークのS/N比が低下してしまう。
これにより、ピークのS/N比を向上させることができ、イオン種を高感度で検出することが可能となる。
この回転軸32の回転速度及び位相を適宜調整することにより、レーザパルス13a,13b,13cの発振周期Tに同期させて、シャッター30を開閉動作させることができる。
この弁体34の回転速度及び位相を適宜調整することにより、レーザ13の発振周期Tに同期させて、シャッター30を開閉動作させることができる。
また、上述したアブレーション光の影響を排除するために、真空容器11、ポート25、誘導管26、カートリッジ27及び遮断部28のうち少なくとも一部の内表面に、アブレーション光を吸収する塗料を塗布してもよい。もしくは、これら部材の内表面の構成材料にアブレーション光の吸収特性を有する材料を用いてもよい。
これにより、ターゲット12で発生したアブレーション光のうち、反射を繰り返して検出部23に到達するアブレーション光の割合を低下させることができるので、信号波形に重畳するノイズを低減させることができる。
次に図7に基づいて本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態のイオン源10は、スリット24(24a,24b)が、飛行軌道22上に複数配置されている。
図7においてスリット24(24a,24b)の各々は、誘導管26の内部に設けられる態様を示しているが、特に限定されることはなく、飛行軌道22上であれば少なくとも一方を、遮断部28及びカートリッジ27のうちいずれかに設けることができる。
なお、図7において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
よって、ピーク形状をシャープにすることができ、検出ピークの分解能をさらに向上させることができる。
この実施例においては、二枚のスリット24a,24bの間に、イオンが入射するとシンチレーション光を発光するシンチレータ41とこのシンチレーション光を検出する光電子増倍管42とから構成される第1検出部23aが設けられ、さらに下流に第2検出部23bが設けられている。
シンチレータ41を通過したイオンは、発散して下流の第2検出部23bに向かうが、後段のスリット24bの存在により、イオンの通過が絞られて発散が抑制される。
これにより、第1検出部23a及び第2検出部23bともに、分解能に優れる検出ピークを出力することができる。
次に図9に基づいて本発明の第4実施形態を説明する。
第4実施形態のイオン源10は、分岐孔21を通過したイオンの飛行軌道22に曲率を付与する静電デフレクタ43をさらに備えている。
なお、図9において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
曲率を有する飛行軌道22に沿って飛行したイオンは、検出部23に入射する。
また、飛行軌道22に曲率を持たせることにより、イオン源10の設置面積を広げずに、飛行軌道22を長くとることができる。
次に図10に基づいて本発明の第5実施形態を説明する。
第5実施形態のイオン源10は、分岐孔21を通過したイオンの飛行軌道22を延長させる延長機構44をさらに備えている。
なお、図10において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
このように、イオンの飛行軌道22を延長することにより、イオンの空間電荷効果を抑制し、さらにイオンの飛行距離の延長により検出ピークを時間的に離間させることができる。
Claims (4)
- 真空容器に収容され、レーザパルスの照射によりプラズマを生じさせるターゲットと、
前記真空容器に設けられ前記プラズマから引き出されるイオンビームが通過する通過孔と、
前記真空容器に設けられ前記イオンビームの主軸に対し前記ターゲットから角度をなす方向に放出されるイオンを通過させる分岐孔と、
前記分岐孔を通過したイオンの飛行軌道上に配置される検出部と、
前記検出部よりも手前の前記飛行軌道上に配置され前記イオンの通過断面を絞るスリットと、を備え、
前記飛行軌道上には、前記レーザパルス発振周期に同期する開閉動作によるか、又は前記レーザパルスの前記ターゲットへの照射に伴う発光の検出値に対して設けた閾値に基づく開閉動作により、前記イオンが飛来する以前に到達する前記発光を遮断するシャッターを備えることを特徴とするイオン源。 - 前記スリットは、前記飛行軌道上に複数配置されることを特徴とする請求項1に記載のイオン源。
- 前記分岐孔を通過したイオンの飛行軌道に曲率を付与する静電デフレクタをさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン源。
- 前記分岐孔を通過したイオンの飛行軌道を延長させる機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のイオン源。
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