JP6309381B2 - 質量分析装置および質量分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、質量分析装置および質量分析方法に関する。
セシウムの安定同位体は133Csであり、土壌、植物などに含まれている。一方、セシウムの放射性同位体としては、134Cs、137Csがあり、これらの放射性同位体は半減期が比較的短いために、天然には存在しないが、日本では原発事故により、相当量の134Cs、137Csが環境中に放出されたとみられている。環境中に放出された134Cs、137Csの分析には通常、ガンマ線検出器などの放射線測定器が用いられる。しかしながら、放射線は等方的に放出されるため、放射性物質の分布を示す画像化はガンマ線カメラなどにより可能ではあるが、ミリメートル以下の対象には空間分解能が低いため適用できない。
一方、質量分析法を用いた場合、原子の重さを基準に識別するため、原理的には放射性Csを検出することが可能である。質量分析法においては種々のイオン化方法が存在するが、レーザ光を用いた共鳴イオン化法は特定の元素を選択的にイオン化できることが知られている。これを共鳴イオン化質量分析法(RIMS)という(例えば、非特許文献1を参照)。しかしながら、この方法は試料を加熱脱離させたガスの分析であり、微小視野(ミクロな視野)でのイメージングとは直結しない技術である。
また、質量分析法の一種であるイオンビームを用いた二次イオン質量分析法(SIMS)では、細く絞ったイオンビームを走査しながら、試料表面由来の二次イオン強度を記録することにより、微小視野での元素のイメージングが可能となっている(例えば、非特許文献2を参照)。
「Resonant laser ionization mass spectrometry: An alternative to AMS?」Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 172(2000) 162-169 「Resonance ionization mass spectrometry of ion beam sputtered neutrals for element- and isotope-selective analysis of plutonium in micro-particles」Anal Bioanal Chem(2009) 395:1911-1918
一般に放射性Csは存在濃度が極めて低いうえ、土壌や植物など天然試料中には様々な元素が共存するため、放射性Csの質量ピークが妨害され、放射性Csを同定・検出することが困難である。放射性Csの質量ピークを妨害する原因となるのは、例えば137Csに対して137Ba(天然同位体)である。137Cs、137Baの精密質量は、それぞれ136.907089、136.905827である。このように、137Cs、137Baの精密質量は非常に近い値であるため、137Csを分離検出する際には少なくとも11万程度の非常に高い質量分解能が求められる。さらに、両者の存在比としては、137Baの方が137Csよりも圧倒的に多いため、137Csの分離検出にはそれ以上の質量分解能が求められる。このことから、従来のSIMSでは、自然起源の試料から137Csを検出・イメージングすることは困難であり、自然起源の試料から137Csを検出・イメージングする質量分析法は知られていない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、質量分析時における放射性セシウムとバリウムなどの他の元素との干渉を抑制し、放射性セシウムの分離検出および分布可視化を実現することができる質量分析装置および質量分析方法を提供することを目的とする。
上記課題は以下の手段により解決される。
<1> 放射性セシウムを含む試料が配置される試料台と、前記試料台に配置された試料にイオンビームを照射し、試料から放射性セシウムを放出させるイオンビーム源と、放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長を有し、かつ、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を、放出された放射性セシウムに照射し、放射性セシウムをイオン化させるレーザ光源と、イオン化された放射性セシウムを質量分析する分析部と、を備える質量分析装置。
まず、放射性セシウムを含む試料を試料台に設置し、その試料にイオンビームを照射して放射性セシウムを放出させる。次に、所定の波長および所定のレーザ強度を有するパルス化されたレーザ光を放出された放射性セシウムに照射し、放射性セシウムを選択的にイオン化させる。そして、選択的にイオン化された放射性セシウムを質量分析することにより、試料中に含まれる他の元素(例えば、137Ba)に起因する質量分析時の干渉を抑制することができ、放射性セシウムの分離検出および分布可視化(イメージング)を実現することができる。
<2> 前記レーザ強度は、1mJ/pulse以下である<1>に記載の質量分析装置。
上記数値範囲を満たす値にレーザ強度を調整することにより、バリウムのイオン化を抑制しつつ、放射性セシウムを選択的にイオン化させることができる。
<3> 前記試料台と前記分析部との間に配置され、前記イオンビーム源からのイオンビームを試料に照射することにより放出された二次イオンを前記試料台側に押し戻すメッシュ電極を備える<1>又は<2>に記載の質量分析装置。
試料にイオンビームを照射した場合、放射性セシウムを含む粒子以外にも二次イオンが放出される。ここで、メッシュ電極に電圧を印加することで、放出された二次イオンを試料台側に押し戻すことにより、分析部での二次イオンの検出が抑制される。したがって、より感度の高い放射性セシウムの分離検出を実現することができる。
<4> 前記分析部は、イオン化された放射性セシウムを前記分析部に引き込むための引き込み電極を有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の質量分析装置。
例えば、イオン化された放射性セシウムの電荷とは反対の電位となるように引き込み電極に電圧が印加されることで、イオン化された放射性セシウムは分析部に引き込まれる。これにより、イオン化された放射性セシウムの検出効率を向上させることができる。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の質量分析装置を用いた質量分析方法であって、前記試料台に放射性セシウムを含む試料を配置する工程と、前記試料台に配置された試料にイオンビームを照射し、試料から放射性セシウムを放出させる工程と、放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長を有し、かつ、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を、放出された放射性セシウムに照射し、放射性セシウムをイオン化させる工程と、イオン化された放射性セシウムを質量分析する工程と、を含む質量分析方法。
<6> 前記質量分析装置は、前記イオンビーム源からのイオンビームを試料に照射することにより放出される二次イオンを試料台側に押し戻すメッシュ電極を備え、試料から放射性セシウムを放出させる工程の後、かつ、放射性セシウムをイオン化させる工程の前に、前記メッシュ電極に電圧を印加することにより、前記イオンビーム源からのイオンビームを試料に照射することにより放出された二次イオンを試料台側に押し戻す工程を含む<5>に記載の質量分析方法。
上記の質量分析方法についても、上述した質量分析装置と同様の効果を奏する。
本発明によれば、質量分析時における放射性セシウムとバリウムなどの他の元素との干渉を抑制し、放射性セシウムの分離検出および分布可視化を実現することができる質量分析装置および質量分析方法が提供される。
本実施形態に係る質量分析装置の構成を示す概略図である。 レーザ波長と133Csおよび138Baのイオン検出数との関係を示すグラフである。 本実施形態の質量分析装置を用いてCs、Ba含有試料をイメージングした結果である。 本実施形態の質量分析装置により得た質量スペクトルである。 比較例の質量分析装置を用いてCs、Ba含有試料をイメージングした結果である。 比較例の質量分析装置により得た質量スペクトルである。
<質量分析装置>
以下、本発明の一実施形態に係る質量分析装置100について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る質量分析装置100の構成を示す概略図である。
図1に示すとおり、質量分析装置100は、放射性セシウムを含む試料が配置される試料台10と、試料台10に配置された試料にイオンビームを照射し、試料から放射性セシウムを放出させるイオンビーム源20と、放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長を有し、かつ、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を、放出された放射性セシウムに照射し、放射性セシウムをイオン化させるレーザ光源40と、イオン化された放射性セシウムを質量分析する分析部60と、を備える。
質量分析装置100は、質量分析時における放射性セシウムとバリウムなどの他の元素との干渉を抑制し、放射性セシウムの分離検出および分布可視化を実現するための装置である。例えば、本実施形態に係る質量分析装置100を用いることにより、精密質量が非常に近い137Csおよび137Baが含まれる試料から137Csを選択的に分離検出し、イメージングすることができる。以下、質量分析装置100の各構成について説明する。
(試料台)
試料台10には分析対象となる試料が配置される。試料台10は、イオンビームの照射位置を調整するため、ターゲットとなる試料の位置を適宜調整可能なマニピュレータを有していることが好ましい。
また、試料中に含まれる放射性セシウムの分離検出を行なう際は、質量分析装置100の内部を真空状態にすることが好ましい。
分析対象となる試料としては、放射性セシウムを含む試料であれば特に限定されないが、例えば、137Csおよび137Baが含まれる試料が好ましい。精密質量が非常に近い137Csおよび137Baが含まれる試料は、通常、137Csを選択的に分離検出してイメージングすることは困難であるが、本実施形態の質量分析装置100を用いることにより、137Csを選択的に分離検出してイメージングすることが可能である。
(イオンビーム源)
イオンビーム源20は、試料台10に配置された試料にイオンビームを照射することにより、放射性セシウムを放出させるためのビーム源である。イオンビーム源20としては、イオンビームを試料に照射したときに試料から放射性セシウムを放出させることができれば特に限定されず、例えば、集束イオンビーム(FIB)装置など、一般に入手可能な装置を用いることができる。イオンビームを試料に照射する際は、例えば、液体金属のガリウムイオン源からイオンビームを取り出し、集束させた上で、ナノスケールの精度で試料にパルス状に照射させてもよい。イオンビーム源20により試料台10に配置される試料にイオンビームを照射すると、試料から放射性セシウムを含む粒子や二次イオンが放出される。
試料表面上を走査するようにイオンビームを試料に照射することが好ましい。これにより、照射領域における放射性セシウムの信号量を記録することでミクロなスケールでのイメージングが可能となる。なお、イオンビーム源20を固定し、試料を配置した試料台10を移動させて信号量を記録してもよい。
(メッシュ電極)
本実施形態に係る質量分析装置100は、試料台10と分析部60との間に配置されたメッシュ電極30を備える。メッシュ電極30は、イオンビーム源20からのイオンビームを試料に照射することにより放出された二次イオンを試料台側に押し戻すために用いられる電極である。二次イオンを静電的に押し戻すため、メッシュ電極30には二次イオンの電荷と同極の高電圧が印加される。また、メッシュ電極30の電位は、二次イオンを試料台10側に押し出し可能な電位、または後述するようなイオン化された放射性セシウムを分析部60に引き込み可能な電位に切り替えることが可能である。具体的には、高電圧源31がメッシュ電極30に接続されており、正負のパルス電圧を所定のタイミングで印加することが可能となっている。さらに、制御部50により、パルス電圧を印加するタイミングが制御されている。
ここで、メッシュ電極30は、網目状の電極であり、開口率(メッシュ電極の全面積
に対する開口部の割合)が高いことが好ましい。開口率が高いほど、イオン化された放射性セシウム(ポストイオン)が効率よくメッシュ電極30を通過できる。例えば、70%〜90%の開口率のメッシュ電極を用いることが好ましい。また、メッシュ電極30のメッシュを細かく、かつ細くして開口率を上げることが好ましい。これにより、メッシュが粗くなることに起因して生じる電界の歪みを抑制できる。
メッシュ電極30の材料は、導電性を有すれば特に限定されず、例えば銅、アルミニウム、タングステン等、加工が容易で薄膜状に形成可能なものが挙げられる。なお、メッシュ電極30は、放出された二次イオンに対して電界が均一に印加できるように、金属平板に円形、六角形等の細かい穴がパンチングにより形成されたものであってもよい。
また、メッシュ電極30はなるべく試料表面に近い位置に配置されることが好ましい。これにより、試料から放出された二次イオンが拡散する前に効率よく二次イオンを試料台10側に押し戻すことができ、さらに、試料から放出された放射性セシウムが拡散する前に効率よくレーザ光源40からレーザ光を照射できる。
また、メッシュ電極30は、レーザ光源40から照射されるレーザ光が、試料台10とメッシュ電極30との間を通ることができる位置に配置されることが好ましく、例えば、試料台10とメッシュ電極30との間の距離は、2mm〜5mmであることが好ましい。なお、この距離は、分析部60の位置、質量分析装置100の大きさに応じて適宜変更してもよい。
メッシュ電極30に電圧を印加することで、放出された二次イオンを試料台10側に押し戻すことにより、二次イオンが分析部60にて検出されることが抑制される。したがって、より感度の高い放射性セシウムの分離検出を実現することができる。
(レーザ光源)
レーザ光源40は、放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長を有し、かつ、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を、放出される放射性セシウムに照射することで、放射性セシウムをイオン化させるために用いられる光源である。図1に示すように、試料台10とメッシュ電極30との間をレーザ光源40から照射されるレーザ光が通ることができる位置に、レーザ光源40が配置されることが好ましい。また、レーザ光源40は、試料台10とメッシュ電極30との間で試料台10の表面に平行にレーザ光を照射可能なものであることが好ましい。
レーザ光源40は、所定の波長および所定のレーザ強度を有するレーザ光を放出された放射性セシウムに照射することにより、放射性セシウムを選択的にイオン化させる。つまり、放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長を有するレーザ光を、放射性セシウムを含む粒子に照射することにより、放射性セシウム以外の粒子をイオン化させずに放射性セシウムを選択的にイオン化させる。さらに、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を、放射性セシウムを含む粒子に照射することにより、当該粒子にバリウムが含まれる場合であってもバリウムのイオン化が抑制され、放射性セシウムを選択的にイオン化することができる。
レーザ光源40から照射されるレーザ光の波長としては、放射性セシウムの共鳴波長と同じ波長であってもよく、459.3nm又は455.5nmであることが好ましい。共鳴波長は元素に固有の値であり、放射性セシウムである137Csを選択的にイオン化させ、かつ、バリウム(特に、137Ba)などの他の元素のイオン化を抑制することができるため、イオン化された137Csを選択的に分析部60にて検出することが可能となる。この結果、質量分析時における37Csとバリウムなどの他の元素との干渉を抑制される。
上述したように、137Csを選択的にイオン化することができるため、精密質量が137Csと非常に近く、自然界に多く存在する137Baからの分離検出が可能となる。さらに、質量分析時における137Csと137Baとの干渉を抑制し、137Csの分離検出および分布可視化を実現することができる。
本明細書において、「バリウムのイオン化が生じないレーザ強度」とは、バリウムのイオン化がまったく発生しないレーザ強度だけでなく、ごく少量のバリウム、例えば、レーザ光が照射されたバリウムのうち、0.01%以下のバリウムがイオン化されるレーザ強度も含まれる。
レーザ光源40から照射されるレーザ光のレーザ強度としては、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度であり、かつ、放射性セシウムをイオン化させることができるレーザ強度であれば特に限定されない。そのようなレーザ強度としては、例えば、1mJ/pulse以下であることが好ましく、0.8mJ/pulse以下であることがより好ましい。また、放射性セシウムを効率よくイオン化させる観点から、レーザ強度は、0.1mJ/pulse以上であることが好ましく、0.5mJ/pulse以上であることがより好ましい。
イオンビーム源20からのイオンビームが照射されることにより放出される放射性セシウムは、等方的ではないが散逸して飛んでいき、概ね距離の2乗に比例して放射性セシウム原子の空間的密度が低下すると考えられる。そのため、レーザ光源40から照射されるレーザ光が、試料台10の表面近くに照射されるようにレーザ光源40を設置することが好ましい。これにより、放出された放射性セシウムを効率よくイオン化することができる。試料台10の表面に平行にレーザ光を照射する場合、例えば、レーザ光と試料台10の表面との間隔は、1mm程度であることが好ましい。
レーザ光源40としては、放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長であり、かつ、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を照射できるものであればよく、例えば、市販の紫外線レーザ発生装置等の波長可変レーザを用いることが可能である。
レーザ光源40としては、一台の波長可変レーザを使用してもよい。この場合、放射性セシウムの共鳴波長を有するレーザ光を照射することで、基底状態の放射性セシウムが1光子を吸収する際に共鳴準位に励起し、さらに2光子目を吸収することでイオン化(1色2光子共鳴イオン化)する。
また、レーザ光源40として、二台以上の波長可変レーザを使用してもよい。二台以上の波長可変レーザを用いることにより、より選択的な放射性セシウムの共鳴準位への励起および放射性セシウムの共鳴イオン化が可能となり、放射性セシウム以外の他の元素がイオン化することによる検出感度の低下を好適に抑制することができる。そのため、レーザ光源としては、三台の波長可変レーザを用いて、例えば、852.1nm、621.3nm、1024nmといった波長のレーザ光を照射してイオン化(3色3光子共鳴イオン化)してもよい。
(分析部)
分析部60は、イオン化された放射性セシウムを質量分析するためのものである。分析部60としては、例えばセクター磁場型質量分析装置、飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)、四重極型質量分析装置(QMS)等、種々の装置が適用可能である。分析部60には、例えば分析部60の先端、即ち、メッシュ電極30側に、イオン化された放射性セシウムを分析部60(ポストイオン)に引き込むための引き込み電極61が設けられる。そして、この引き込み電極61は、イオン化された放射性セシウムを分析部60に引き込み可能な電位に設定されればよい。
(制御部)
制御部50は、質量分析装置100が備える各構成の制御を行なうものであり、具体的には、イオンビーム源20から照射されるイオンビームの照射タイミング制御、メッシュ電極30および引き込み電極61の電圧印加制御、ならびにレーザ光源40から照射されるレーザ光の照射タイミング制御を行なうものである。次に、制御部50による各構成の制御方法について説明する。
まず、制御部50は、試料から放出される二次イオンを押し出し可能な電位(二次イオンの電荷と同極の電位)にメッシュ電極30を設定した状態でイオンビーム源20からイオンビームを試料に照射するように制御する。これにより、イオンビームが試料に照射されることにより放出された二次イオンは試料台10側に押し戻されるが、放出された放射性セシウムは試料台10側に押し戻されない。
なお、イオンビーム源20からイオンビームを試料に照射する前に、二次イオンを押し出し可能な電位にメッシュ電極30を設定してもよく、イオンビームの照射と同時、あるいは、イオンビームの照射の直後に、二次イオンを押し出し可能な電位にメッシュ電極30を設定してもよい。
次に、制御部50は、イオンビームを試料に照射してから所定の時間が経過した後に、メッシュ電極30の電位を反転させるとともに、放出された放射性セシウムにレーザ光を照射するようにレーザ光源40を制御する。レーザ光を放射性セシウムに照射することにより、放射性セシウムをイオン化され、イオン化された放射性セシウムは、メッシュ電極30側に引き込まれる。
次に、制御部50は、レーザ光を放射性セシウムに照射してから所定の時間が経過した後に、イオン化された放射性セシウムを引き込み可能な電位(イオン化された放射性セシウムの電荷と反対の電位)に引き込み電極61を設定するとともに、メッシュ電極30の電位を反転させるように制御する。これにより、イオン化された放射性セシウムは、分析部に効率よく引き込まれ、放射性セシウムの検出効率を向上させることができる。
<質量分析方法>
本実施形態に係る質量分析装置100を用いた質量分析方法についても、本発明の範囲に含まれる。以下、質量分析方法について説明する。
まず、試料台10に放射性セシウムを含む試料を配置する。
次に、試料台10に配置された試料にイオンビームを照射し、試料から放射性セシウムを放出させる。このとき、試料から放射性セシウムを含む粒子と二次イオンが放出される。
さらに、放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長を有し、かつ、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を、放出された放射性セシウムに照射する。これにより、放射性セシウムがイオン化されるが、放射性セシウム以外の粒子についてはイオン化されない。
そして、イオン化された放射性セシウムを分析部60に引き込み、質量分析を行なう。このとき、前述したレーザ光の照射により、放射性セシウムが選択的にイオン化されているため、質量分析時における放射性セシウムとバリウムなどの他の元素との干渉が抑制され、放射性セシウムの分離検出およびイメージングが可能である。
本実施形態に係る質量分析方法は、試料から放射性セシウムを放出させた後、かつ、放射性セシウムをイオン化させる前に、メッシュ電極30に電圧を印加することにより、二次イオンを試料台10側に押し戻してもよい。これにより、放出された二次イオンが試料台側に押し戻され、分析部60での二次イオンの検出が抑制される。したがって、より感度の高い放射性セシウムの分離検出を実現することができる。
本実施形態に係る質量分析装置および質量分析方法を用いれば、観察視野100μm〜1μmにおいて、放射性セシウムの分布状態を観察することができる。さらに、上記質量分析装置および質量分析方法は、放射能汚染の現状把握、除染技術などへの利用が期待できる。
<実験>
(共鳴イオン化の確認)
Csに対する共鳴イオン化の効果を示す実験結果について、図2を用いて説明する。図2は、レーザ波長と133Csおよび138Baのイオン検出数との関係を示すグラフである。本実験では、安定同位体である133Csおよび138Baを試料として用い、レーザ光の波長を掃引しながら各々のイオン検出数をプロットし、グラフ化した。133Csは459.3nmに共鳴準位が存在するため、この波長においてイオン検出数が大幅に増大している。これに対し、138Baでは、この波長においてイオン検出数の増大は見られない。よって、459.3nmのレーザ光にて粒子をイオン化した場合、133Csを選択的に検出できることがわかる。なお、459.3nm以外の波長域にて検出されている133Csは波長に依存しない非共鳴イオン化による信号であり、レーザ光の照射密度を適宜減らすことにより、この信号の量は減少させることができる。
以下、本実施形態の質量分析装置を用いたCs、Ba含有試料のイメージングについて、図3、4を用いて説明する。図3は、本実施形態の質量分析装置を用いてCs、Ba含有試料をイメージングした結果であり、図4は、本実施形態の質量分析装置により得た質量スペクトルである。
本実験では、安定同位体である133Cs、137Ba、138Baなどを混合した試薬を測定試料としてRIMS測定を行なった。まず、測定試料に対して加速電圧30kV、ビーム電流約10nAの照射条件でイオンビームを照射した。なお、観察視野は100μm×100μmとした。次に、メッシュ電極30に電圧を印加して二次イオンを試料台10側に押し戻した後、イオンビームを照射することにより放出された粒子に対して、波長が459.3nmであり、レーザ強度が1mJ/pulseであるパルス化されたレーザ光を照射し、133Csを選択的にイオン化させた。イオン化させた133Csを分析部60に引き込み、質量分析を行なった。結果は図3、4のとおりであり、図4中、横軸は質量電荷比(m/z)であり、縦軸は検出強度であり、図4は、図3中の四角で示す部分のスペクトルを表わしている。
図3、4に示すとおり、133Csと比較して137Ba、138Baはほとんど検出されず、所定の波長およびレーザ強度を有するレーザ光を照射することにより133Csが選択的に検出されていることがわかった。図4に示すとおり、137Baの質量ピークは発生していないため、測定試料に137Csが含まれており、かつ、137Csを選択的にイオン化させた場合には137Csのピークのみが発生すると考えられる。さらに、133Csと137Csとで共鳴波長は同じであるとみなしてよいため、本実験の質量分析方法により、137Csを分離検出可能であることが想定される。
以下、比較例の質量分析装置を用いたCs、Ba含有試料のイメージングについて、図5、6を用いて説明する。図5は、比較例の質量分析装置を用いてCs、Ba含有試料をイメージングした結果であり、図6は、比較例の質量分析装置により得た質量スペクトルである。
本実験では、上記と同じ測定試料を用いてSIMS測定を行なった。まず、測定試料に対して、加速電圧30kV、ビーム電流約10nAの照射条件でイオンビームを照射した。イオンビームを照射することにより放出された二次イオン(イオン化された133Cs、137Baなどを含む)を分析部60に引き込み、質量分析を行なった。
本実験では、二次イオン化に元素選択性がないため、図5、6に示すとおり、CsおよびBaが共に検出された。また、図6に示すとおり、137Baの質量ピークが発生しており、測定試料に137Csが含まれていた場合には137Csおよび137Baの質量ピークが同じ位置に発生すると考えられる。その結果、本実験の質量分析方法では、137Csを分離検出することができないことがわかった。
10 試料台
20 イオンビーム源
30 メッシュ電極
31 高電圧源
40 レーザ光源
50 制御部
60 分析部
61 引き込み電極
100 質量分析装置

Claims (6)

  1. 放射性セシウムを含む試料が配置される試料台と、
    前記試料台に配置された試料にイオンビームを照射し、試料から放射性セシウムを放出させるイオンビーム源と、
    放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長を有し、かつ、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を、放出された放射性セシウムに照射し、放射性セシウムをイオン化させるレーザ光源と、
    イオン化された放射性セシウムを質量分析する分析部と、
    を備える質量分析装置。
  2. 前記レーザ強度は、1mJ/pulse以下である請求項1に記載の質量分析装置。
  3. 前記試料台と前記分析部との間に配置され、前記イオンビーム源からのイオンビームを試料に照射することにより放出された二次イオンを前記試料台側に押し戻すメッシュ電極を備える請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
  4. 前記分析部は、イオン化された放射性セシウムを前記分析部に引き込むための引き込み電極を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の質量分析装置。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
    前記試料台に放射性セシウムを含む試料を配置する工程と、
    前記試料台に配置された試料にイオンビームを照射し、試料から放射性セシウムを放出させる工程と、
    放射性セシウムを共鳴イオン化させる波長を有し、かつ、バリウムのイオン化が生じないレーザ強度である、パルス化されたレーザ光を、放出された放射性セシウムに照射し、放射性セシウムをイオン化させる工程と、
    イオン化された放射性セシウムを質量分析する工程と、
    を含む質量分析方法。
  6. 前記質量分析装置は、前記イオンビーム源からのイオンビームを試料に照射することにより放出される二次イオンを試料台側に押し戻すメッシュ電極を備え、
    試料から放射性セシウムを放出させる工程の後、かつ、放射性セシウムをイオン化させる工程の前に、前記メッシュ電極に電圧を印加することにより、前記イオンビーム源からのイオンビームを試料に照射することにより放出された二次イオンを試料台側に押し戻す工程を含む請求項5に記載の質量分析方法。
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