以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
図1〜図3は、本発明に係る回転電機のステータSを概略図で示しており、図1は斜視図で、図2、図3は断面図で各々ステータSを示している。
同図に示すステータSは、ハイブリット車両に搭載される三相交流モータに用いられるステータである。具体的には、当該ステータSと、その内側に配置されるロータと、これらステータS及びロータを収容するケーシング等で三相交流モータ(本発明の回転電機に相当する)が構成される。
上記ステータSは、円環状をなすステータコア10と、このステータコア10に巻回される複数の巻線群をそれぞれ含む、第1コイル部材14Aおよび第2コイル部材14Bとを備えている。
前記ステータコア10は、図3に示すように、周方向に等間隔で並ぶ複数の位置で内向きに開き、それぞれ放射状に延びる複数のスロット12を備えている。当例では、上記三相交流モータは、8極のモータであり、ステータコア10は、1相1極あたり2つのスロットを備えている。つまり、ステータコア10は、合計48個のスロット12を備えている。そして、後に詳述する通り、これら48個のスロット12のうち、特定の複数のスロット12を通過するようにU相、V相、W相の各巻線群が当該ステータ10に巻回されている。換言すれば、ステータコア10には、U相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12と、V相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12と、W相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12とを1セットとして、合計8セットのスロット群がステータコア10の周方向に備えられている。
なお、図3には、U相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号U1・U2、U3・U4……U15・U16で示し、V相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号V1・V2、V3・V4……V15・V16で示し、W相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号W1・W2、W3・W4……W15・W16で示している。以下の説明では、必要に応じて、U相の巻線群が挿入されるスロットの符号として符号12の代わりに図3中に示す符号U1・U2、U3・U4……U15・U16を用い、同様に、V相の巻線群が各々挿入されるスロットの符号として同図中の符号V1・V2、V3・V4……V15・V16を用い、W相の巻線群が各々挿入されるスロットの符号としてW1・W2、W3・W4……W15・W16を用いるものとする。
ステータコア10は、例えば図3に示すような形状を有する磁性体(鋼板)製の複数枚のプレートが積層一体化されることにより構成されている。
第1コイル部材14A及び第2コイル部材14Bは、それぞれ、ステータコア10に巻回される複数の巻線群を含んでいる。第1コイル部材14Aと第2コイル部材14Bは、第2コイル部材14Bが第1コイル部材14Aの内側に設けられている以外、基本的な構成は共通である。よって、以下の説明では、第1コイル部材14Aについて詳述した上で、必要に応じて第2コイル部材14Bについて言及することにする。
第1コイル部材14Aは、スロットU1・U2、U3・U4……U15・U16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のU相巻線群20Ua、20Ub(第1U相巻線群20Ua、第2U相巻線群20Ubと称す)と、スロットV1・V2、V3・V4……V15・V16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のV相巻線群20Va、20Vb(第1V相巻線群20Va、第2V相巻線群20Vbと称す)と、スロットW1・W2、W3・W4……W15・W16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のW相巻線群20Wa、20Wb(第1W相巻線群20Wa、第2W相巻線群20Wbと称す)とを含む。
U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbは、互いに異なるスロット12を通過する以外、基本的な構成は共通である。よって、以下の説明では、U相巻線群20Ua、20Ubの構成について詳述した上で、必要に応じてV相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbの構成に言及することにする。また、以下の説明において上(上側)、下(下側)というときには、図1に示すステータSの状態を基準とし、内(内側)、外(外側)というときには、ステータコア10の径方向を基準とする。
なお、当例では、第1U相巻線群20Uaおよび第2U相巻線群20Ub、第1V相巻線群20Vaおよび第2V相巻線群20Vb、第1W相巻線群20Waおよび第2W相巻線群20Wbがそれぞれ、本発明の第1巻線群および第2巻線群に相当する。
第1U相巻線群20Uaは、二つの等辺を有する断面三角形の素線により形成された複数の巻線で構成されている。当例では、図4に示すように、断面正三角形の素線により形成された合計6つの巻線で構成されている。詳細には、同図に示すように、第1U相巻線群20Uaは、3つの巻線r1〜r3からなる正巻線群22aと、3つの巻線r1′〜r3′からなる逆巻線群22bとを含む。正巻線群22aと逆巻線群22bとは、コイルエンド部(巻線のうちスロットの外側、つまりステータコア10の軸方向端面上(上下両側の端面上)に配設される部分)においては、電流の流れる方向が周方向において互いに逆向きとなり、スロット内では、電流の流れる方向が同一となるように電流供給が行われるものであり、後に詳述する通り、スロット12に対する巻線の挿入方向および導出方向が逆の関係になっている。
第2U相巻線群20Ubも同様に、図4に示すように、断面正三角形の素線により形成された合計6つの巻線で構成されており、詳しくは、3つの巻線r4〜r6からなる正巻線群24aと、3つの巻線r4′〜r6′からなる逆巻線群24bとを含む。
各U相巻線群20Ua、20Ubは、図5〜図7に示すようにして、ステータコア10に波巻きで巻回されている。スロットU1、U2の位置を基準に具体的に説明すると、まず、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aは、図5(a)及び図6(a)に示すように、ステータコア10の下側からスロットU1に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU4に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU5に挿入されて上側に導出されるという具合にして、スロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16を通過するようにステータコア10に巻回されている。
第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bは、図5(a)及び図6(b)に示すように、ステータコア10の上側からスロットU1に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU4に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU5に挿入されて下側に導出されるという具合にして、ステータコア10に巻回されている。すなわち、逆巻線群22bは、スロット12に対する巻線の挿入方向及び導出方向が正巻線群22aとは逆になる状態で、正巻線群22aと同じスロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16を通過するようにステータコア10に巻回されている。
正巻線群22aの巻線r1〜r3と逆巻線群22bの巻線r1′〜r3′とは、図4に示すように、ステータコア10の径方向(図4では左右方向)に一列に並べられた状態で各スロットU1、U4〜U16に挿入されている。詳しくは、巻線r1〜r3、r1′〜r3′のうち、隣接するものの辺同士が互いに当接するように、前記径方向の片側に正巻線群22aの巻線r1〜r3が連続して一列に並び、この正巻線群22aに隣接するように逆巻線群22bの巻線r1′〜r3′が連続して一列に並んだ状態で各スロットU1、U4〜U16に挿入されている。すなわち、第1U相巻線群20Ua全体としての断面形状が平行四辺形となるように、当該第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aおよび逆巻線群22bが各スロットU1、U4〜U16に挿入されている。但し、図6(a)、(b)に示すように、正巻線群22a及び逆巻線群22bは、各スロットU1、U4〜U16について、ステータコア10の径方向における内外の位置関係が交互に入れ替わるように当該ステータコア10に巻回されている。
一方、第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aは、図5(b)及び図7(a)に示すように、ステータコア10の下側からスロットU2に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU3に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU6に挿入されて上側に導出されるという具合にして、スロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15を通過するようにステータコア10に波巻きで巻回されている。
第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bは、図5(b)及び図7(b)に示すように、ステータコア10の上側からスロットU2に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU3に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU6に挿入されて下側に導出されるという具合にして、ステータコア10に巻回されている。すなわち、逆巻線群24bは、スロット12に対する巻線の挿入方向及び導出方向が正巻線群24aとは逆になる状態で、正巻線群24aと同じスロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15を通過するようにステータコア10に波巻きで巻回されている。
正巻線群24aの巻線r4〜r6と逆巻線群24bの巻線r4′〜r6′は、上述した第1U相巻線群20Uaの各巻線群22a、22bと同様、図4に示すように、ステータコア10の径方向に一列に並べられた状態で各スロットU2、U3〜U15に挿入されている。そして、第2U相巻線群20Ubについても、図7(a)、(b)に示すように、正巻線群24a及び逆巻線群24bは、各スロットU2、U3〜U15について、ステータコア10の径方向における内外の位置関係が交互に入れ替わるように当該ステータコア10に巻回されている。
なお、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、図3及び図4に示すように、ステータコア10の径方向最外側に位置する巻線r1、r4の向きが同じになるように、当例では巻線r1、r4の角部が互いに周方向の同じ側(図4では下側)を向くように、各スロットU1・U2……U15・U16に挿入されている。
第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aとは、コイルエンド部において、正巻線群22a及び正巻線群24aの断面形状が全体として平行四辺形(台形)になるようにステータコア10の軸方向に沿って並べられている。
具体的には、スロットU1からステータコア10の上側に導出される正巻線群22a(第1U相巻線群20Ua)の各巻線r1〜r3は、図8(a)に示すように、正巻線群22aの断面形状が台形になるように並べられている。また、スロットU2からステータコア10の上側に導出される正巻線群24a(第2U相巻線群20Ub)の各逆巻r4〜r6は、断面形状が台形になるように並べられた上で、図8(b)に示すように、正巻線群22a及び正巻線群24aの断面形状が全体として平行四辺形になるように、正巻線群22aの下側に重ねられている。なお、図8(a)は、図6のVIIIa−VIIIa線に沿った巻線群の断面模式図であり、図8(b)は、図6のVIIIb−VIIIb線に沿った同断面模式図である。
このように重ねられた第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aは、図6(a)及び図7(a)に示すように、次のスロットU3、U4に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側に変位するようにステータコア10の上端面に沿って配されている。そしてまず、図7(a)に示すように、下側に位置する第2U相巻線群20Ubの正巻線群24a(巻線r4〜r6)がステータコア10の上側からスロットU3に挿入される。この場合、ステータコア10の径方向に巻線r4〜r6が一列に並ぶように、正巻線群24aがスロットU3に挿入される。
他方、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22a(巻線r1〜r3)は、図6(a)に示すように、ステータコア10の径方向に巻線r1〜r3が一列に並ぶように、ステータコア10の上側からスロットU4に挿入される。
なお、ここでは、ステータコア10の上側のコイルエンド部の正巻線群22a、24aの配列について具体的に説明したが、下側のコイルエンド部では、正巻線群22a、24aの上下関係が逆、すなわち図8(b)の配列と上下対称な配列となる。これ以外の正巻線群22a、24aの配列は、基本的にはステータコア10の上下両側で共通している。
また、ここでは、正巻線群22a、24aについて説明したが、ステータコア10の上下両コイルエンド部における逆巻線群22b、24bの配列も、基本的には正巻線群22a、24aと同様である。すなわち、図8(a)、(b)の巻線r1〜r3、巻線r4〜r6を巻線r1′〜r3′、巻線r4′〜r6′に置き換えた配列と同等である。
このようにして、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubがステータコア10に巻回されている。なお、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、互いに隣接する一対のスロットU1・U2、U3・U4……U15・U16に順次挿入されるが、上記の通り(図5〜図7に示す通り)、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、互いに隣接する一対のスロットU1・U2、U3・U4……U15・U16について、交互に周方向の異なる側のスロット12へ挿入されている。すなわち、奇数番のスロット12から導出された巻線群は、次の偶数番のスロット12に挿入され、他方、偶数番のスロット12から導出された巻線群は、次の奇数番のスロット12に挿入される。その結果、上述の通り、第1U相巻線群20Uaは、スロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16に挿入され、第2U相巻線群20Ubは、スロットスロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15に挿入されている。このようにして第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubがステータコア10に巻回されることで、正巻線群22aと正巻線群24aとが互いに交差することなく、また、逆巻線群22bと逆巻線群24bとが互いに交差することなく、ステータコア10に第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubが波巻きで巻回されている。
以上、U相巻線群20Ua、20Ubの構成について詳述したが、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbも通過するスロット12の位置が異なる以外、基本的にはU相巻線群20Ua、20Ubと同等の構成である。
ステータコア10の上下のコイルエンド部において、U相巻線群20Ua、20Ubと、V相巻線群20Va、20Vbと、W相巻線群20Wa、20Wbとは、ステータコア10の径方向に互いに隣接する状態で並んでおり、それぞれスロット12から導出されてその導出位置から次に挿入されるスロット12に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側、又は外側に変位して前記導出位置とはステータコア10の径方向の異なる位置で次のスロット12に挿入されている。
この点について図8(b)、図9(a)〜(d)を用いて具体的に説明する。図8(b)は上記の通り、図6のVIIIb−VIIIb線に沿った巻線群の断面模式図、つまり、スロットU2とスロットV1との間の位置の巻線群の断面模式図であり、図9(a)〜(d)は、図6のIXa−IXa線、IXb−IXb線、IXc−IXc線及びIXd−IXd線にそれぞれ沿った巻線群の断面模式図、つまり、スロットV1〜U3における各スロット間の巻線群の断面模式図である。
これらの図に示すように、スロットU2とスロットV1の間の位置では、図8(b)に示すように、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aとが上下に重ねられている。そして、これらU相巻線群20Ua、20Ubの内側に、第1W相巻線群20Waの逆巻線群22bと第2W相巻線群20Wbの逆巻線群24bとが同様に上下に重ねられ、さらにその内側に、第1V相巻線群20Vaの逆巻線群22bと第2U相巻線群20Vbの逆巻線群24bとが同様に上下に重ねられている。
そして、スロットV1の位置で、最も内側に位置する第2V相巻線群20Vaの逆巻線群22bがスロットV1に挿入される一方で、スロットV1から第2V相巻線群20Vaの正巻線群22aが導出されることにより、スロットV1とスロットV2の間の位置では、図9(a)に示すように、第1V相巻線群20Vaの正巻線群22aがU相巻線群2
0Ua、20Ubの外側に重ねられる。
そして次に、スロットV2の位置で、最も内側に位置する第2V相巻線群20Vbの逆巻線群24bがスロットV2に挿入される一方で、スロットV2から第2V相巻線群20Vbの正巻線群24aが導出されることにより、スロットV2とスロットW1の間の位置では、図9(b)に示すように、第2V相巻線群20Vbの正巻線群24aがU相巻線群20Ua、20Ubの外側において、第2V相巻線群20Vaの正巻線群22aの下側に重ねられる。
そして次に、スロットW1の位置で、最も内側に位置する第2W相巻線群20Waの逆巻線群22bがスロットW1に挿入される一方で、スロットW1から第2W相巻線群20Waの正巻線群22aが導出されることにより、スロットW1とスロットW2の間の位置では、図9(c)に示すように、第2W相巻線群20Waの正巻線群22aがV相巻線群20Va、20Vbの外側に重ねられる。
そして次に、スロットW2の位置で、最も内側に位置する第2W相巻線群20Wbの逆巻線群24bがスロットW2に挿入される一方で、スロットW2から第2W相巻線群20Wbの正巻線群24aが導出されることにより、スロットW2とスロットU3の間の位置では、図9(d)に示すように、第2W相巻線群20Wbの正巻線群24aがV相巻線群20Va、20Vbの外側において、第2W相巻線群20Waの正巻線群22aの下側に重ねられる。
このように、U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbが、ステータコア10の径方向に互いに隣接する状態で並び、それぞれスロット12から導出されてその導出位置から次のスロット12に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側に変位しながらスロット12に挿入されることで、これら巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbが相互に交差することなくコンパクトに配列された状態のままで次のスロット12に導かれるようになっている。
なお、上記ステータSのU相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbに各々含まれる正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bは、当例では次のように繋がっている。
図10は、U相巻線群20Ua、20Ubの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの構造を模式的に示している。なお、同図中の白丸は、巻線の巻き始め端を示し、黒丸は巻線の巻き終わり端を示している(図13〜図15についても同じ)。
U相巻線群20Ua、20Ubの巻線群22a、22b、24a、24bを各々構成する4つの巻線(r1〜r3、r1′〜r3′、r4〜r6、r4′〜r6′)は、各々1本の素線が上述した所定のスロット12を通過するようにステータコア10に波巻きで3回巻回されることにより形成されている。そして、各巻線群22a、22b、24a、24bが所定の順番で直列に繋げられている。具体的には、同図に示すように、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの巻き終わり端a2が第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの巻き始め端a1′に繋がり、当該正巻線群24aの巻き終わり端a2′が第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bの巻き始め端b1に繋がり、当該逆巻線群22bの巻き終わり端b2が、第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの巻き始め端b1′に繋がっている。そして、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの巻き始め端a1が電流の入力部30とされ、第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの巻き終わり端b2′が中性点32とされている。すなわち、電流が入力される側を入力端、出力される側を出力端としたときに、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの出力端の巻線r3が第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの入力端の巻線r4に繋がり、当該第2U相巻線群20Ubの正巻線群の出力端の巻線r6が第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bの入力端の巻線r1′に繋がり、当該第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bの出力端の巻線r3′が第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの入力端の巻線r4′に繋がることにより、同一相(U相)の全ての巻線群22a、22b、24a、24bが直列に繋がっている。
ここでは、U相巻線群20Ua、20Ubの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの接続構造について説明したが、V相巻線群20Va、20Vbの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bや、W相巻線群20Wa、20Wbの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bも同様の構造である。
以上、第1コイル部材14Aの構成について説明したが、第2コイル部材14Bの構成も第1コイル部材14Aと同等である。なお、図3及び図4に示すように、第2コイル部材14Bの第2U相巻線群20Uaは、第1コイル部材14Aの第1U相巻線群20Uaに対してステータコア10の径方向に一列に並ぶように当該第1U相巻線群20Uaと同じスロット12内に挿入され、第2コイル部材14Bの第2U相巻線群20Ubは、第1コイル部材14Aの第2U相巻線群20Ubに対して前記径方向に一列に並ぶように当該第2U相巻線群20Ubと同じスロット12に配列されている。第2コイル部材14BのV相巻線群20Va、20Vb及びW相巻線群20Wa、20Wbも同様である。
以上のように、上記ステータSは、U相の巻線群として、正巻線群22aおよび逆巻線群22bを有する第1U相巻線群20Uaと、正巻線群24aおよび逆巻線群24bをそれぞれ有する第2U相巻線群20Ubと含むものであるが、上記の通り、各巻線群22a、22b、24a、24bは各々一本の素線で構成されており、しかも巻線群22a、22b、24a、24bが全て直列に繋がった構造を有している。V相の各巻線群20Va、20VbおよびW相の各巻線群20Wa、20Wbについても同様である。そのため、同一相について多くの巻線を含むものでありながらも、巻線全体の構造が簡素であり、比較的無駄が少ない生産性の良いものとなる。
また、各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの巻線は断面正三角形の素線により形成され、巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)が、辺同士を当接させて一列に配列された状態でスロット12に挿入されている。つまり、隣接する巻線同士は、一列に並びながらもステータコア10の径方向に重なりあった状態(オーバーラップした状態)でスロット12に内に挿入されている。そのため、巻線(素線)の断面形状が円形や矩形(長方形)のものに比べるとスロット内における巻線群の占有スペースを効果的に縮小することができる。また、ステータコアの軸方向両端(コイルエンド部分)についても、全体として断面形状が平行四辺形(台形)になるように、ステータコア10の軸方向に沿って巻線群20Ua、20Ub(20Va、20Vb、20Wa、20Wb)の巻線r1〜r3、r4〜r6r1′〜r3′(巻線r1′〜r3′、r4′〜r6′)が集結して並べられ、これにより隣接する巻線同士がステータコア10の軸方向及び径方向に重なり合った状態(オーバラップした状態)で配列されている。そのため、ステータコア10の軸方向端面上についても、各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの占有スペースを小さく抑えることができる。従って、このステータSによれば、スロット12内やステータコア10の軸方向端面上(つまり、コイルエンド部分)における各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの占有スペースを効果的に抑制することが可能であり、これにより、ステータSの小型化および軽量化を図ることができるという利点もある。
なお、上述したステータSは、例えば図11に示すような方法に従って製造することができる。すなわち、ステータコア10に巻回された状態のコイル部材14A(巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wb)と同一形状の巻線群組立体34を予め単独で形成し(巻線形成工程)、この巻線群組立体34全体を径方向に圧縮変形させた状態で、同図(a)及び(b)に示すようにステータコア10の内側に挿入する(巻線挿入工程)。その後、ステータコア10の内側に挿入された巻線群組立体を拡径し、当該ステータコア10の内側から所定のスロット12に対して各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbを挿入することにより、巻線群組立体34をステータコア10に装着する(巻線装着工程)。そして、上記工程を繰り返すことにより、図2に示すような、2つのコイル部材14A、14Bを備えるステータSを製造する。
このような方法によれば、ステータコア10に対して素線を巻回しながら巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbを形成する場合に比べて、上記ステータSを効率良く製造することが可能となる。なお、この場合、上記巻線挿入工程では、図12(a)、(b)に示すように、巻線群組立体34のうち、その軸方向一端側のみを径方向に縮径させることにより、当該巻線群組立体34全体を略円錐台状に圧縮変形させておき、縮径された側からステータコア10の内側に巻線群組立体34を挿入するようにしてもよい。このような方法によれば、巻線装着工程における巻線群の拡径作業が容易になるため、より効率良くステータを製造することが可能となる。
なお、図11及び図12では、上記工程を繰り返すことにより、2つのコイル部材14A、14Bを備えたステータSを製造しているが、例えば巻線形成工程において、予め2つのコイル部材14A、14Bを含むような巻線群組立体34を形成し、これをステータコア10に挿入するようにしてもよい。
ところで、上述したステータSは、本発明に係る回転電機のステータの好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、次のような構成を採用することも可能である。
例えば、U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20VbおよびW相巻線群20Wa、20Wbに含まれる正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの連結構造としては、図10に示した構造以外に、図13〜図15に示すような構造を適用してもよい。以下、各図の連結構造について説明する。
図13は、U相巻線群20Ua、20Ubの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの連結構造を模式的に示している。同図の構造は、図10の構造と同様に巻線群22a、22b、24a、24bが直列に繋がるものであるが、その順序が図10のものと相違している。すなわち、図13の構造では、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの巻き終わり端a2が第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bの巻き始め端b1に繋がり、当該逆巻線群22bの巻き終わり端b2が第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの巻き始め端a1′に繋がり、当該正巻線群24aの巻き終わり端a2′が、第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの巻き始め端b1′に繋がっている。そして、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの巻き始め端a1が電流の入力部30とされ、第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの巻き終わり端b2′が中性点32とされている。すなわち、電流が入力される側を入力端、出力される側を出力端としたときに、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの出力端の巻線r3が第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bの入力端の巻線r1′に繋がり、当該逆巻線群22bの出力端の巻線r3′が第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの入力端の巻線r4に繋がり、当該正巻線群24aの出力端の巻線r6が第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの入力端のr4′に繋がることにより、同一相(U相)の全ての巻線群22a、22b、24a、24bが直列に繋がっている。
ここでは、U相巻線群20Ua、20Ubの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの構造について説明したが、V相巻線群20Va、20Vbの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bや、W相巻線群20Wa、20Wbの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bも同様の構造である。
このようなステータSの構造の場合も、同一相の全ての巻線群22a、22b、24a、24bが直列に繋がる構造であるため、図10の構造と同様に、巻線全体の構造が簡素で、比較的無駄が少ない生産性の良いステータSとなる。
図14は、U相巻線群20Ua、20Ubの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの構造を模式的に示している。この図14の構造では、U相巻線群20Ua、20Ubの各正巻線群22a、24aの巻き始め端a1、a1′が接続されてこの接続端が電流の入力部30とされ、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの巻き終わり端a2が第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bの巻き始め端b1に繋がり、第2U相巻線群20Ubの正巻線群22aの巻き終わり端a2′が第2U相巻線群20Ubの逆巻線群22bの巻き始め端b1′に繋がっている。そして、U相巻線群20Ua、20Ubの各逆巻線群22b、24bの巻き終わり端b2、b2′が接続されてこの接続端が中性点32とされている。すなわち、第1U相巻線群20Uaおよび第2U相巻線群20Ubの各正巻線群22a、24aの入力端の巻線r1,r4同士が並列に繋がり、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの出力端の巻線r3が当該第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bの入力端の巻線r′に繋がり、第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの出力端の巻線r6が当該第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの入力端の巻線r4′に繋がり、第1U相巻線群20Uaおよび第2U相巻線群20Ubの各逆巻線群22b、24bの出力端の巻線r3′r6′同士が並列に繋がっている。
ここでは、U相巻線群20Ua、20Ubの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの構造について説明したが、V相巻線群20Va、20Vbの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bや、W相巻線群20Wa、20Wbの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bも同様の構造である。
このようなステータSの構造によれば、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと逆巻線群22bとが直列に繋がり、第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aと逆巻線群24bとが直列に繋がる構造であるため、この点で巻線の構造が簡素なものとる。
図15は、U相巻線群20Ua、20Ubの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの構造を模式的に示している。この図15の構造では、第1U相巻線群20Uaの各巻線群22a、22bの巻き始め端a1、b1が接続されてこの接続端が電流の入力部30とされ、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの巻き終わり端a2が第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの巻き始め端a1′に繋がり、第1U相巻線群20Ubの逆巻線群22bの巻き終わり端b2が第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの巻き始め端b1′に繋がっている。そして、第2U相巻線群20Ubの各巻線群24a、24bの巻き終わり端a2′、b2′が接続されてこの接続端が中性点32とされている。すなわち、電流が入力される側を入力端、出力される側を出力端と定義したときに、第1U相巻線群20Uaにおける正巻線群22aおよび逆巻線群22bの各々入力端の巻線r1、r1′同士が並列に繋がり、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの出力端の巻線r3が第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの入力端の巻線r4に繋がり、第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bの出力端の巻線r3′が第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bの入力端の巻線r4′に繋がり、第2U相巻線群20Ubにおける正巻線群24aおよび逆巻線群24bの各々出力端の巻線r6,r6′同士が並列に繋がっている。
ここでは、U相巻線群20Ua、20Ubの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bの構造について説明したが、V相巻線群20Va、20Vbの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bや、W相巻線群20Wa、20Wbの正巻線群22a、24aおよび逆巻線群22b、24bも同様の構造である。
このようなステータSの構造によれば、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aとが直列に繋がり、第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bと第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bとが直列に繋がる構造であるため、この点で巻線の構造が簡素なものとる。
なお、上記実施形態では、各巻線群20Ua・20Ub、20Va・20Vb、20Wa・20Wbの巻線r1〜r3、r1′〜r3′r4〜r6、r4′〜r6′は断面正三角形であるが、巻線r1〜r3等は二つの等辺を有する断面三角形(断面二等辺三角形)であってもよい。例えば、巻線r1〜r3等は断面直角二等辺三角形のものであってもよい。この場合、例えばU相巻線群20Ua、20Uaを形成する巻線r1〜r3、r1′〜r3′r4〜r6、r4′〜r6′は、等辺が互いに当接するように隣接する巻線同士がステータコア10の径方向に一列に並べられた状態でスロット12に挿入され、かつ、ステータコア10の軸方向端面上では、U相巻線群20Ua、20Ua全体としての断面形状が平行四辺形(台形)になるように、当該U相巻線群20Ua、20Uaがステータコア10の軸方向に沿って配列されればよい。V相巻線群20Va、20Vb、W相巻線群20Wa、20Wbについても同様である。
また、各巻線群20Ua・20Ub、20Va・20Vb、20Wa・20Wbの巻線r1〜r3、r1′〜r3′r4〜r6、r4′〜r6′は断面三角形以外に、断面矩形や断面円形であってもよい。このように断面矩形や断面円形の巻線r1〜r3、r1′〜r3′r4〜r6、r4′〜r6′を用いる場合でも、図10及び図13〜図15に示すような構造に従えば、巻線の構造を簡素化して生産性の良いステータSを提供することが可能となる。
また、上記実施形態のステータSは、2組のコイル部材14A、14Bを備えているが、コイル部材は1組だけでもよいし、また、3組以上備えていてもよい。
また、上記実施形態のステータSでは、各巻線群20Ua、20Va、20Wa(20Ub、20Vb、20Wb)は、3つの巻線r1〜r3(r4〜r6)からなる正巻線群22a(24a)と、巻線r1′〜r3′(r4′〜r6′)からなる逆巻線群22b(24b)とから構成されているが、正巻線群22a(24a)および逆巻線群22b(24b)の巻線の数は3つに限定されるものではなく変更可能である。
また、上記実施形態のステータSでは、図4に示すように、例えば第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aは、電流の入力端の巻線r1がステータコア10の径方向外側(図4では左側)に位置し、出力端の巻線r3が径方向内側に位置するように各巻線r1〜r3がスロット12内において配列されているが、例えば図16(a)に示すように逆の配列であってもよい。また、図16(b)〜図16(e)に示すようなその他の配列であってもよい。但し、図4や図16(a)に示す配列の場合、1本の素線で正巻線群22a(逆巻線群22b)を構成しようとすると、スロット12内における巻線r1と巻線r2の向きが異なり、同様に巻線r2と巻線r3の向きが異なるため、スロット12への巻線の挿入際して素線を2回捩る必要がある。これに対して、例えば図16(b)の配列によれば、巻線r1と巻線r2の向きは同じで、巻線r2と巻線r3の向きだけが異なるため、スロット12への巻線の挿入際して素線を捩る回数は1回ですむ。図16(c)〜図16(e)についても同様に素線を捩る回数は1回ですむ。従って、図16(b)〜図16(e)の配列によれば、図4や図16(a)に示す配列に比べると、素線の捩り回数が少ない分、生産性が良いという利点がある。
また、上記実施形態のステータSでは、48スロット8極を具体的に取り上げて説明したが、スロット数、極数はこれに限定されるものではなく、その他のスロット数、極数を組合せたステータにおいても適用可能である。
なお、この実施形態では、三相交流モータに適用されるステータについて説明したが、本発明のステータは、勿論、発電機やモータ兼発電機等にも適用可能である。