JP2011205835A - ステータの製造方法及びステータ製造用の変形ガイド治具 - Google Patents

ステータの製造方法及びステータ製造用の変形ガイド治具 Download PDF

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Abstract

【課題】波巻コイルを塑性変形させてステータコアに組み付けるにも拘らず、波巻コイルの形状の精度が良く、性能に優れたステータを製造することができるステータの製造方法及びステータ製造用の変形ガイド治具を提供すること。
【解決手段】直線部31と渡り部32とを連結してなる波巻コイルを成形する成形工程と、波巻コイルから縮小波巻コイル30を成形する縮小変形工程と、縮小波巻コイル30を元の波巻コイルに戻すよう変形させる際に、複数の直線部31を複数のスロットに配置する配置工程とを行う。縮小変形工程においては、直線部31と渡り部32との間の角部33の屈曲形状及び直線部31の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の直線部31と渡り部32とによって三角形状を作るように、周方向に互いに隣接する角部33同士を近づけて、渡り部32を円弧状に変形させる。
【選択図】図18

Description

本発明は、波巻形状を有する波巻コイルをステータコアに組み付けてステータを製造する方法及びステータ製造用の変形ガイド治具に関する。
回転電機に用いるステータにおいては、ステータコアのスロットにおけるコイルの占積率(占有割合)を向上させるために、断面略四角形状の平角線をステータコアの周方向に巡回する波巻形状に形成してなる波巻コイルを用いることが行われている。
この波巻コイルは、ステータコアのスロットに配置する立体的形状に成形している。そのため、ステータコアに配置する際には、波巻コイルの形状に工夫をして軸方向から挿入配置できるようにするか、あるいはステータコアをスロットの形成位置において複数に分割し、この分割したコア部を波巻コイルの外周側から組み付けるようにしている。
ステータコアを分割すると、コイルに通電する際に形成される磁路が分断されることになり、回転電機の性能の低下を招くおそれがある。そのため、回転電機の性能低下を防ぐために、一体型のステータコアを用いることが好ましい。
一体型のステータコアを用いるために、波巻コイルに工夫を行った例として、例えば、特許文献1に開示された回転電機におけるステータコイルの巻装方法がある。この巻装方法においては、予めステータコイルをステータコアに巻装された形状に成形し、この成形したものを軸方向に引張ってステータコアの内径よりも小径の螺旋状に弾性変形させ、これをステータコアの内周側に挿入し、順次弾性復帰させて、ステータコイルをステータコアのスロットに収納することが開示されている。
特開2001−309619号公報
上記特許文献1に示されるように、一体型のステータコアに対して波巻コイルを配置する場合においては、何らかの方法で波巻コイルを変形させる必要が生じる。このとき、特にステータコアのスロットに配置する直線部は、スロット内に配置された状態で直線状に矯正することが困難なため、極力変形を避ける必要がある。また、直線部と、ステータコアの軸方向両側において直線部同士を連結する渡り部との間の角部は、一旦変形させてしまうと、元の形状に戻すことが容易でないため、極力変形を避ける必要がある。特許文献1の巻装方法によっては、ステータコイルを螺旋状に変形させる際に直線部及び角部が変形してしまうおそれがある。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、波巻コイルを塑性変形させてステータコアに組み付けるにも拘らず、波巻コイルの形状の精度が良く、性能に優れたステータを製造することができるステータの製造方法及びステータ製造用の変形ガイド治具を提供しようとするものである。
第1の発明は、ステータコアにおける複数のスロットに分散して配置する複数の直線部を、上記ステータコアの軸方向一方側の外方と軸方向他方側の外方とに周方向に沿って交互に配置する渡り部によって順次連結してなる波巻コイルを成形する成形工程と、
上記直線部と上記渡り部との間の角部の屈曲形状及び上記直線部の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の上記直線部と上記渡り部とによって三角形状を作るように、周方向に互いに隣接する上記角部同士を近づけて、上記渡り部を円弧状に変形させることによって、上記波巻コイルの外形を上記ステータコアにおけるティースの内周面よりも縮小させた縮小波巻コイルを成形する縮小変形工程と、
上記縮小波巻コイルを上記ステータコアの内周側に対向配置し、該縮小波巻コイルを元の上記波巻コイルに戻すよう変形させる際に、上記複数の直線部を上記複数のスロットに配置する配置工程とを含むことを特徴とするステータの製造方法にある(請求項1)。
第2の発明は、ステータコアにおける複数のスロットに分散して配置する複数の直線部を、上記ステータコアの軸方向一方側の外方と軸方向他方側の外方とに周方向に沿って交互に配置する渡り部によって順次連結してなる波巻コイルを、上記ステータコアに組み付ける際に用いる変形ガイド治具であって、
該変形ガイド治具は、上記ステータコアの内周側に対向配置する円柱形状を有し、該円柱形状の外周に複数のガイド溝を形成してなり、
該複数のガイド溝は、上記直線部と上記渡り部との間の角部の屈曲形状及び上記直線部の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の上記直線部と上記渡り部とによって三角形状を作るように、周方向に互いに隣接する上記角部同士を近づけて上記渡り部を円弧状に変形させる際に、上記複数の直線部が移動する経路に沿って形成してあることを特徴とするステータ製造用の変形ガイド治具にある(請求項7)。
第1の発明のステータの製造方法においては、ステータコアに配置する際の波巻コイルの変形形状に工夫をし、一体型のステータコアに波巻コイルを配置する際に、波巻コイルにおける角部の屈曲形状及び直線部の直線形状に変形を生じないようにしている。
具体的には、上記成形工程において波巻コイルを成形し、これを縮小変形工程において縮小波巻コイルに変形した後、配置工程において縮小波巻コイルをステータコアに組み付けて元の波巻コイルとする。
縮小変形工程においては、直線部と渡り部との間の角部の屈曲形状及び直線部の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の直線部と渡り部とによって三角形状を作るように、周方向に互いに隣接する角部同士を近づけて、渡り部を円弧状に変形させる。すなわち、各渡り部を円弧状に変形させながら、周方向に互いに隣接する各角部同士を近づけることにより、各角部の屈曲形状と各直線部の直線形状とを維持することができる。そして、この変形を行うことにより、波巻コイルの外形をステータコアにおけるティースの内周面よりも縮小させた縮小波巻コイルを成形する。
次いで、配置工程においては、縮小波巻コイルをステータコアの内周側に対向配置し、縮小波巻コイルを元の波巻コイルに戻すよう変形させる際に、複数の直線部を複数のスロットに配置する。
これにより、本発明においては、ステータコアを複数に分割することなく、かつ波巻コイルの各角部の屈曲形状及び各直線部の直線形状を維持して、波巻コイルをステータコアに組み付けることができる。
それ故、第1の発明のステータの製造方法によれば、波巻コイルを塑性変形させてステータコアに組み付けるにも拘らず、波巻コイルの形状の精度が良く、性能に優れたステータを製造することができる。
第2の発明のステータ製造用の変形ガイド治具によれば、上記第1の発明と同様に、波巻コイルを塑性変形させてステータコアに組み付けるにも拘らず、波巻コイルの形状の精度が良く、性能に優れたステータを製造することができる。
実施例における、波巻コイルを示す平面図。 実施例における、波巻コイルを示す正面図。 実施例における、第1変形段階の変形を行った波巻コイルを示す平面図。 実施例における、第1変形段階の変形を行った波巻コイルを示す正面図。 実施例における、第2変形段階の変形を行った縮小波巻コイルを示す平面図。 実施例における、第2変形段階の変形を行った縮小波巻コイルを示す正面図。 実施例における、波巻コイルを組み付けたステータコアを示す断面説明図。 実施例における、3相の波巻コイルを組み付けたステータコアを示す断面説明図。 実施例における、波巻コイルをステータコアに組み付けてなるステータについて、渡り部の形成状態を模式的に示す説明図。 実施例における、波巻コイルをステータコアに組み付けた状態を、平面的に展開した状態で模式的に示す説明図。 実施例における、変形ガイド治具を示す平面図。 実施例における、波巻コイルに移動ガイド治具及び縮小押出治具を配置した状態を示す断面説明図。 実施例における、移動ガイド治具及び縮小押出治具に対して変形ガイド治具を配置した状態を示す断面説明図。 実施例における、移動ガイド治具及び縮小押出治具に対して変形ガイド治具を配置した状態を示す正面説明図。 実施例における、第1変形段階を行った状態を示す断面説明図。 実施例における、第1変形段階を行った状態を示す正面説明図。 実施例における、第2変形段階を行った状態を示す断面説明図。 実施例における、第2変形段階を行った状態を示す正面説明図。 実施例における、縮小波巻コイルを保持する変形ガイド治具を示す断面説明図。 実施例における、縮小波巻コイルを保持する変形ガイド治具をステータコアの内周側に配置した状態を示す断面説明図。 実施例における、拡大押出治具によって縮小波巻コイルの変形を戻す状態を示す断面説明図。 実施例における、縮小波巻コイルを波巻コイルに戻した状態を示す断面説明図。 実施例における、縮小波巻コイルを波巻コイルに戻した状態を示す正面説明図。
上述した第1、第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、上記縮小変形工程においては、上記波巻コイルの軸中心から上記直線部の外周面までの距離が上記ティースの内周面の半径以上であるときに、上記角部の屈曲形状、上記直線部の直線形状及び上記直線部が互いに平行な状態を維持して、上記渡り部を円弧状に変形させることによって上記波巻コイルの外形を縮小させる第1変形段階と、上記波巻コイルの軸中心から上記直線部の外周面までの距離が上記ティースの内周面の半径よりも小さくなったときに、上記角部の屈曲形状及び上記直線部の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の上記直線部と上記渡り部とによって三角形状を作るように、周方向に互いに隣接する上記角部同士を近づけて、上記渡り部を円弧状にさらに変形させることによって上記縮小波巻コイルを成形する第2変形段階とを行うことが好ましい(請求項2)。
この場合には、波巻コイルを第1変形段階と第2変形段階との2段階に変形させて縮小波巻コイルを成形することにより、縮小波巻コイルを成形する過程を、縮小波巻コイルをステータコアへ組み付ける際の変形過程と逆にすることができる。そのため、縮小波巻コイルの変形を戻して波巻コイルをステータコアに組み付けることが容易になる。
また、上記縮小変形工程及び上記配置工程においては、上記ステータコアの内周側に対向配置する円柱形状を有し、該円柱形状の外周に、上記波巻コイルから上記縮小波巻コイルに外形を縮小させる際の上記複数の直線部の移動経路に沿った複数のガイド溝を形成してなる変形ガイド治具を用い、上記縮小変形工程の上記第2変形段階及び上記配置工程においては、上記ガイド溝によって上記直線部の移動をガイドすることが好ましい(請求項3)。
この場合には、変形ガイド治具を用いることにより、波巻コイルから縮小波巻コイルに変形させることが容易になり、かつ縮小波巻コイルの変形を戻して波巻コイルをステータコアに組み付けることも容易になる。そして、ステータコアへの波巻コイルの組付を安定して行うことができる。
また、上記縮小変形工程においては、上記ステータコアの上記スロットと同じ平面形状を有するガイド用スロットを形成してなる移動ガイド治具を用い、上記縮小変形工程の上記第1変形段階においては、上記ガイド用スロットによって上記直線部の移動をガイドすることが好ましい(請求項4)。
この場合には、波巻コイルの第1変形段階を安定して行うことができる。
また、上記縮小変形工程の上記第1変形段階及び上記第2変形段階においては、上記ステータコアの軸方向両端面から突出する上記直線部の一部である一対の立上り部を、その外周側に配置した縮小押出治具によって内周側へ押し出し、上記縮小変形工程の上記第2変形段階においては、上記複数の直線部を上記ガイド溝における内周側底部に押し当てて上記縮小波巻コイルを成形することが好ましい(請求項5)。
この場合には、変形ガイド治具と縮小押出治具とを用いることにより、波巻コイルから縮小波巻コイルに安定して変形させることができる。
また、上記配置工程においては、上記縮小波巻コイルが配置された上記変形ガイド治具を上記ステータコアの内周側に配置し、上記ステータコアの軸方向両端面から突出する上記直線部の一部である一対の立上り部を、その内周側に配置した拡大押出治具によって外周側へ押し出し、上記ガイド溝から上記スロットへ上記直線部を移動させて上記縮小波巻コイルを元の上記波巻コイルに戻すよう変形させることが好ましい(請求項6)。
この場合には、変形ガイド治具と拡大押出治具とを用いることにより、縮小波巻コイルを元の波巻コイルに安定して変形させることができる。
以下に、本発明のステータの製造方法及びステータ製造用の変形ガイド治具に係る実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のステータ1の製造方法は、次の成形工程、縮小変形工程及び配置工程を行うことによって、波巻コイル3をステータコア2に組み付けるものである。
成形工程においては、図1、図2に示すごとく、ステータコア2における複数のスロット21に分散して配置する複数の直線部31を、ステータコア2の軸方向Lの一方側の外方と軸方向Lの他方側の外方とに周方向Cに沿って交互に配置する渡り部32によって順次連結してなる波巻コイル3を成形する。
縮小変形工程においては、図5、図6に示すごとく、直線部31と渡り部32との間の角部33の屈曲形状及び直線部31の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の直線部31と渡り部32とによって三角形状を作るように、周方向Cに互いに隣接する角部33同士を近づけて、渡り部32を円弧状に変形させることによって、波巻コイル3の外形をステータコア2におけるティース22の内周面221よりも縮小させた縮小波巻コイル30を成形する。
配置工程においては、図7に示すごとく、縮小波巻コイル30をステータコア2の内周側に対向配置し、縮小波巻コイル30を元の波巻コイル3に戻すよう変形させる際に、複数の直線部31を複数のスロット21に配置する。
以下に、本例のステータ1の製造方法及びステータ製造用の変形ガイド治具4につき、図1〜図23を参照して詳説する。
図8に示すごとく、本例のステータ1は、3相回転電機に用いるものであり、ステータコア2に対してU相、V相、W相の3相の波巻コイル3を、ステータコア2の各スロット21に対して所定スロット数ずつ空けながら分散配置して製造する。
本例の各相の波巻コイル3は、ステータコア2の周方向Cに複数巡回する形状に形成され、ステータコア2の径方向Rに重ねて配置される。本例の各相の波巻コイル3は、互いに隣接する同相の2つのスロット21に直線部31を分散配置して、ステータコア2の周方向Cに複数巡回して配置される。図7、図8においては、ステータコア2の取付部を省略して示す。
図1、図2、図7、図8においては、互いに隣接する同相の2つのスロット21に配置する直線部31が、渡り部32において軸方向Lに並んで配置される波巻コイル3を示している。同各図においては、波巻コイル3がステータコア2の周方向Cに2巡回する形状で示している。これに対し、図9、図10に示すごとく、波巻コイル3は、同じスロット21において径方向Rに2本の直線部31を並べて配置し、ステータコア2の軸方向端面201の外方において、互いに隣接する同相の2つのスロット21から繋がる渡り部32が、軸方向Lに4つ並ぶ形状に形成することもできる。この場合においても、本例のステータ1の製造方法を適用することができる。なお、図9においては、U相、V相、W相のコイル3を3(U)、3(V)、3(W)によって示す。
図9に示すごとく、本例のステータコア2は、2つずつ隣接するU相、V相及びW相のスロット21を、周方向Cに繰り返し形成してなる。本例のステータコア2においては、U相、V相及びW相のスロット21の6つを、周方向Cに8回繰り返して、48個のスロット21が形成されている。各相のスロット21においては、各波巻コイル3の直線部31が径方向Rに複数並んで配置される。また、各スロット21同士の間には、残部としてのティース22が形成されている。ステータコア2におけるスロット21は、周方向Cに位置する一対の壁面が互いに平行な平行スロットとして形成されている。波巻コイル3は、長方形の断面形状を有すると共に、四方の角部33分が丸みを帯びた形状(R形状)に形成されている。
本例の縮小変形工程においては、波巻コイル3を第1変形段階と第2変形段階との2段階に変形させて、縮小波巻コイル30を成形する。
第1変形段階は、波巻コイル3の軸中心から直線部31の外周面までの距離がティース22の内周面221(後述する移動ガイド治具5の内側面52)の半径以上であるときの波巻コイル3の変形段階である。そして、第1変形段階においては、角部33の屈曲形状、直線部31の直線形状及び直線部31が互いに平行な状態を維持して、渡り部32を円弧状に変形させることによって波巻コイル3の外形を縮小させる。
第2変形段階は、波巻コイル3の軸中心から直線部31の外周面までの距離がティース22の内周面221の半径よりも小さくなったときの波巻コイル3の変形段階である。そして、第2変形段階においては、角部33の屈曲形状及び直線部31の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の直線部31と渡り部32とによって三角形状を作るように、周方向Cに互いに隣接する角部33同士を近づけて、渡り部32を円弧状にさらに変形させることによって縮小波巻コイル30を成形する。
また、図11に示すごとく、縮小変形工程及び配置工程においては、ステータコア2の内周側に対向配置する円柱形状を有し、円柱形状の外周に複数のガイド溝41を形成してなる変形ガイド治具4を用いる。
複数のガイド溝41は、波巻コイル3から縮小波巻コイル30に外形を縮小させる際の複数の直線部31の移動経路に沿って形成してある。すなわち、複数のガイド溝41は、角部33の屈曲形状及び直線部31の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の直線部31と渡り部32とによって三角形状を作るように、周方向Cに互いに隣接する角部33同士を近づけて渡り部32を円弧状に変形させる際に、複数の直線部31が移動する経路に沿って形成してある。
縮小波巻コイル30は、その各直線部31が周方向Cに対して傾斜して成形される。そして、各ガイド溝41は、その外周側開口部411が変形ガイド治具4の軸方向Lに平行に形成され、その内周側底部412が変形ガイド治具4の周方向Cに向けて倒れるように軸方向Lに対して傾斜して形成されている(図14参照)。なお、ガイド溝41の軸方向Lの両側の端部は、変形ガイド治具4の軸方向Lの両側の端面に開口している。
図13〜図18に示すごとく、本例の縮小変形工程の第1変形段階及び第2変形段階においては、波巻コイル3を縮小波巻コイル30に変形させる際に、縮小押出治具6を用いる。この縮小押出治具6は、ステータコア2の軸方向両端面201から突出する直線部31の一部である一対の立上り部311を、内周側へ押し出すよう構成してある(図14参照)。縮小押出治具6は、波巻コイル3における各直線部31の形成位置の外周側に位置するよう放射状に配置する。また、縮小押出治具6によって波巻コイル3における立上り部311を内周側へ押し出す際には、波巻コイル3の各渡り部32に対する内周側にポール61を配置する。そして、縮小押出治具6を内周側へ移動させる際に、各ポール61に対して渡り部32を引っ掛けることにより、波巻コイル3を縮小波巻コイル30に変形させる際に、渡り部32を径方向Rの外方に膨らむ円弧形状に変形させることができる。なお、各ポール61は、縮小押出治具6を内周側へ移動させる際に、所定の荷重が加わったときに、縮小押出治具6の移動に従動して内周側へ移動させることができる。
また、図13、図14に示すごとく、縮小変形工程の第1変形段階においては、波巻コイル3の直線部31を互いに平行な状態を維持して内周側へ移動させるための移動ガイド治具5を用いる。この移動ガイド治具5は、ステータコア2のスロット21と同じ平面形状を有するガイド用スロット51を形成してなる。移動ガイド治具5は、ガイド用スロット51に直線部31が配置されるように、変形前の波巻コイル3における直線部31に対して外周側から配置する。
図20〜図23に示すごとく、本例の配置工程においては、縮小波巻コイル30を元の波巻コイル3に変形させる際に、拡大押出治具7を用いる。この拡大押出治具7は、ステータコア2の軸方向両端面201から突出する直線部31の一部である一対の立上り部311を、外周側へ押し出すよう構成してある。拡大押出治具7は、波巻コイル3における各直線部31の形成位置の内周側に位置するよう放射状に配置する。
また、配置工程においては、ステータコア2の軸方向端面201に配置して、拡大押出治具7によって外周側へ押し出される波巻コイル3の渡り部32を受け止める受止治具71を用いる。この受止治具71は、曲率半径が小さく変形された渡り部32の円弧形状を元の形状に矯正する内周面を有している。そして、渡り部32は、拡大押出治具7と受止治具71とによって押圧されて、形状が矯正される。
次に、上記各治具4、5、6、7を用いて、ステータコア2に対して波巻コイル3を組み付ける順序についてさらに詳説する。
本例においては、成形工程において波巻コイル3を成形し、これを縮小変形工程において縮小波巻コイル30に変形した後、配置工程において縮小波巻コイル30をステータコア2に組み付けて元の波巻コイル3とする。
まず、成形工程として、図1、図2に示すごとく、波巻コイル3を成形する。この波巻コイル3は、ステータコア2における径方向Rの配置位置によって外形が異なるものを成形する。また、3相回転電機用のステータ1を形成するために、各相の波巻コイル3を成形する。
次いで、縮小変形工程においては、まず、図12に示すごとく、変形前の波巻コイル3における直線部31をガイド用スロット51に配置し、各直線部31に対して外周側から移動ガイド治具5を配置する。このとき、移動ガイド治具5には、ガイド用スロット51内及びガイド用スロット51同士の間のティース部の内側面に、波巻コイル3に傷が入ることを防止するためのスロット紙を配置しておくことができる。本例においては、互いに隣接する2つの直線部31に対して1つの移動ガイド治具5をそれぞれ配置し、波巻コイル3に対して放射状に移動ガイド治具5を配置する。
また、図13に示すごとく、放射状に配置した移動ガイド治具5の中心部に、変形ガイド治具4を配置する。変形ガイド治具4は、波巻コイル3における各直線部31に対してガイド溝41の外周側開口部411が対向するように配置する。また、波巻コイル3の軸中心から複数の移動ガイド治具5の内側面52までの距離は、ステータコア2の軸中心からステータコア2におけるティース22の内周面221までの半径と略同じ距離に設定される。
なお、変形ガイド治具4の外周及びガイド溝41には、波巻コイル3に傷が入ることを防止するための紙等を配置しておくことができる。
次いで、図14に示すごとく、各直線部31における一対の立上り部311に対して外周側から縮小押出治具6を配置する。また、各渡り部32の内周側にポール61を配置する。本例においては、互いに隣接する2つの直線部31に対して1つの縮小押出治具6をそれぞれ配置し、波巻コイル3の軸方向Lの両側において放射状に縮小押出治具6を配置する。
そして、図15、図16に示すごとく、第1変形段階として、各直線部31における一対の立上り部311を、縮小押出治具6によって内周側へ押し出す。このとき、波巻コイル3の各直線部31が、移動ガイド治具5における各ガイド用スロット51によってガイドされ、角部33の屈曲形状、直線部31の直線形状及び直線部31が互いに平行な状態を維持して、渡り部32を径方向Rの外方に円弧状に膨らませることによって波巻コイル3の外形が縮小される(図3、図4参照)。また、直線部31が移動ガイド治具5におけるガイド用スロット51の内周側開口部まで移動する。
なお、渡り部32は、変形前の波巻コイル3においても周方向Cに沿った円弧状に形成されており、第1変形段階において、渡り部32は円弧状の曲率半径を小さくするように変形する。
次いで、図17、図18に示すごとく、第2変形段階として、各直線部31における一対の立上り部311を、縮小押出治具6によって内周側へさらに押し出す。このとき、直線部31は、縮小押出治具6によって押し出されて、変形ガイド治具4におけるガイド溝41の外周側開口部411へ挿入される。そして、波巻コイル3の各直線部31が、変形ガイド治具4における各ガイド溝41によってガイドされ、角部33の屈曲形状及び直線部31の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の直線部31と渡り部32とによって三角形状を作るように、周方向Cに互いに隣接する角部33同士を近づけて、渡り部32を円弧状にさらに変形させる。そして、各直線部31をガイド溝41における内周側底部412に押し当てて縮小波巻コイル30を成形する(図5、図6参照)。
第2変形段階を行う際に、各直線部31が周方向Cに傾倒するときには、円弧状に変形される渡り部32は、周方向Cの中心部分が径方向Rの外周側に変形すると共に、周方向Cの中心部分が軸方向Lの外方に最も突出するように軸方向Lに向けても変形する。また、第2変形段階において、渡り部32は円弧状の曲率半径をさらに小さくするように変形する。
このように、縮小変形工程においては、各渡り部32を径方向Rの外方に円弧状に膨らませながら、周方向Cに互いに隣接する各角部33同士を近づけることにより、各角部33の屈曲形状と各直線部31の直線形状とを維持することができる。また、上記2段階の変形を行うことにより、波巻コイル3の外形をステータコア2におけるティース22の内周面221よりも縮小させた縮小波巻コイル30を成形する。
次いで、配置工程においては、まず、図19に示すごとく、複数の移動ガイド治具5及び複数の縮小押出治具6から、縮小波巻コイル30が保持された変形ガイド治具4を取り出す。そして、図20に示すごとく、縮小波巻コイル30が保持された変形ガイド治具4を、ステータコア2の内周側に配置し、変形ガイド治具4における各ガイド溝41の外周側開口部411をステータコア2におけるスロット21の内周側開口部に対向させる。
なお、ステータコア2のスロット21には、スロット紙を配置しておく。
また、ステータコア2の軸方向両端面201に受止治具71を配置する。この状態で、変形ガイド治具4の軸方向両端面において、縮小波巻コイル30の直線部31における一対の立上り部311の内周側に拡大押出治具7を配置する。本例においては、互いに隣接する2つの直線部31に対して1つの拡大押出治具7をそれぞれ配置し、波巻コイル3の軸方向Lの両側において放射状に拡大押出治具7を配置する。
そして、図21に示すごとく、各直線部31における一対の立上り部311を、拡大押出治具7によって外周側へ押し出す。このとき、直線部31は、拡大押出治具7によって押し出されて、変形ガイド治具4のガイド溝41によってガイドされ、角部33の屈曲形状及び直線部31の直線形状を維持して、傾斜した状態から軸方向Lに平行な状態まで変形する。そして、各直線部31は、ステータコア2の各スロット21の内周側開口部まで移動する。
次いで、図22、図23に示すごとく、各直線部31における一対の立上り部311を、拡大押出治具7によって外周側へさらに押し出す。このとき、各直線部31が、ステータコア2における各スロット21によってガイドされ、角部33の屈曲形状、直線部31の直線形状及び直線部31が互いに平行な状態を維持して、渡り部32の円弧状の変形が復帰し、各直線部31がスロット21の外周側底部に押し当てられ、各渡り部32が受止治具71の内周面に押し当てられる。こうして、縮小波巻コイル30を元の波巻コイル3の形状に復帰させると共に、各直線部31を各スロット21に配置して、ステータコア2に対する波巻コイル3の組付を行うことができる。
このように、本例のステータ1の製造方法においては、ステータコア2を複数に分割することなく、かつ波巻コイル3の各角部33の屈曲形状及び各直線部31の直線形状を維持して、波巻コイル3をステータコア2に組み付けることができる。
それ故、ステータ1の製造方法及びステータ製造用の変形ガイド治具4によれば、波巻コイル3を塑性変形させてステータコア2に組み付けるにも拘らず、波巻コイル3の形状の精度が良く、性能に優れたステータ1を製造することができる。
1 ステータ
2 ステータコア
21 スロット
22 ティース
3 波巻コイル
30 縮小波巻コイル
31 直線部
311 立上り部
32 渡り部
33 角部
4 変形ガイド治具
41 ガイド溝
5 移動ガイド治具
51 ガイド用スロット
6 縮小押出治具
7 拡大押出治具

Claims (7)

  1. ステータコアにおける複数のスロットに分散して配置する複数の直線部を、上記ステータコアの軸方向一方側の外方と軸方向他方側の外方とに周方向に沿って交互に配置する渡り部によって順次連結してなる波巻コイルを成形する成形工程と、
    上記直線部と上記渡り部との間の角部の屈曲形状及び上記直線部の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の上記直線部と上記渡り部とによって三角形状を作るように、周方向に互いに隣接する上記角部同士を近づけて、上記渡り部を円弧状に変形させることによって、上記波巻コイルの外形を上記ステータコアにおけるティースの内周面よりも縮小させた縮小波巻コイルを成形する縮小変形工程と、
    上記縮小波巻コイルを上記ステータコアの内周側に対向配置し、該縮小波巻コイルを元の上記波巻コイルに戻すよう変形させる際に、上記複数の直線部を上記複数のスロットに配置する配置工程とを含むことを特徴とするステータの製造方法。
  2. 請求項1に記載のステータの製造方法において、上記縮小変形工程においては、上記波巻コイルの軸中心から上記直線部の外周面までの距離が上記ティースの内周面の半径以上であるときに、上記角部の屈曲形状、上記直線部の直線形状及び上記直線部が互いに平行な状態を維持して、上記渡り部を円弧状に変形させることによって上記波巻コイルの外形を縮小させる第1変形段階と、
    上記波巻コイルの軸中心から上記直線部の外周面までの距離が上記ティースの内周面の半径よりも小さくなったときに、上記角部の屈曲形状及び上記直線部の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の上記直線部と上記渡り部とによって三角形状を作るように、周方向に互いに隣接する上記角部同士を近づけて、上記渡り部を円弧状にさらに変形させることによって上記縮小波巻コイルを成形する第2変形段階とを行うことを特徴とするステータの製造方法。
  3. 請求項2に記載のステータの製造方法において、上記縮小変形工程及び上記配置工程においては、上記ステータコアの内周側に対向配置する円柱形状を有し、該円柱形状の外周に、上記波巻コイルから上記縮小波巻コイルに外形を縮小させる際の上記複数の直線部の移動経路に沿った複数のガイド溝を形成してなる変形ガイド治具を用い、
    上記縮小変形工程の上記第2変形段階及び上記配置工程においては、上記ガイド溝によって上記直線部の移動をガイドすることを特徴とするステータの製造方法。
  4. 請求項3に記載のステータの製造方法において、上記縮小変形工程においては、上記ステータコアの上記スロットと同じ平面形状を有するガイド用スロットを形成してなる移動ガイド治具を用い、
    上記縮小変形工程の上記第1変形段階においては、上記ガイド用スロットによって上記直線部の移動をガイドすることを特徴とするステータの製造方法。
  5. 請求項3又は4に記載のステータの製造方法において、上記縮小変形工程の上記第1変形段階及び上記第2変形段階においては、上記ステータコアの軸方向両端面から突出する上記直線部の一部である一対の立上り部を、その外周側に配置した縮小押出治具によって内周側へ押し出し、
    上記縮小変形工程の上記第2変形段階においては、上記複数の直線部を上記ガイド溝における内周側底部に押し当てて上記縮小波巻コイルを成形することを特徴とするステータの製造方法。
  6. 請求項3〜5のいずれか一項に記載のステータの製造方法において、上記配置工程においては、上記縮小波巻コイルが配置された上記変形ガイド治具を上記ステータコアの内周側に配置し、上記ステータコアの軸方向両端面から突出する上記直線部の一部である一対の立上り部を、その内周側に配置した拡大押出治具によって外周側へ押し出し、上記ガイド溝から上記スロットへ上記直線部を移動させて上記縮小波巻コイルを元の上記波巻コイルに戻すよう変形させることを特徴とするステータの製造方法。
  7. ステータコアにおける複数のスロットに分散して配置する複数の直線部を、上記ステータコアの軸方向一方側の外方と軸方向他方側の外方とに周方向に沿って交互に配置する渡り部によって順次連結してなる波巻コイルを、上記ステータコアに組み付ける際に用いる変形ガイド治具であって、
    該変形ガイド治具は、上記ステータコアの内周側に対向配置する円柱形状を有し、該円柱形状の外周に複数のガイド溝を形成してなり、
    該複数のガイド溝は、上記直線部と上記渡り部との間の角部の屈曲形状及び上記直線部の直線形状を維持して、互いに隣接する一対の上記直線部と上記渡り部とによって三角形状を作るように、周方向に互いに隣接する上記角部同士を近づけて上記渡り部を円弧状に変形させる際に、上記複数の直線部が移動する経路に沿って形成してあることを特徴とするステータ製造用の変形ガイド治具。
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