JP6209455B2 - ダム堤体における貫通孔の形成方法 - Google Patents
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Description
ダム堤体に貫通孔を形成する手法としては、例えば、特許文献1,2に記載の手法が挙げられる。
一方、特許文献2では、ダム堤体のうち貫通孔が形成される予定の部分を、ワイヤーソーを用いて複数のコンクリートブロックに分割して当該コンクリートブロックを搬出することで、ダム堤体に貫通孔を形成している。
しかしながら、特許文献1に記載のように掘削機を用いてダム堤体に貫通孔を形成する場合には、当該孔の貫通時に大きな振動が発生しかねない。これは、貫通孔の形成が進むにつれて、ダム堤体のうち掘削機によって掘削される予定の部分の厚さ(下流側から上流側に向かう方向での厚さ)が徐々に薄くなり、その結果、掘削による振動が当該部分で減衰しづらくなっていくからである。この掘削による振動は、孔の貫通時に最も顕著である。
本発明は、このような実状に鑑み、ダム堤体に形成される貫通孔の貫通時に発生する振動を抑制すること、及び、ダム堤体に貫通孔を効率良く形成することを目的とする。
また本発明によれば、掘削機による掘削か、又は発破掘削により、堤体に第1の空間を形成する。これにより、貫通孔の主部分となり得る第1の空間を効率良く形成することができるので、堤体に貫通孔を効率良く形成することができる。
図1は本発明の一実施形態におけるダム堤体に形成された貫通孔を示す。図2は図1の部分Pの部分拡大図である。図3はワイヤーソー切断装置の概略構成を示す。
貫通孔3は、その断面形状が略角形状であり、ダム堤体1の下流側から上流側に向かう方向に延びている。尚、本実施形態では、貫通孔3の断面形状が略角形状であるが、貫通孔3の断面形状はこれに限らず、例えば、略円形状であってもよい。
尚、本実施形態では、自由断面掘削機5を用いて第1の空間6を形成する手法を以下説明するが、第1の空間6の形成手法はこれに限らない。また、本実施形態では、本発明の「コンクリート切断装置」としてワイヤーソー切断装置7を用いるが、コンクリートを切断する「コンクリート切断装置」はこれに限らない。
尚、第2の空間9は、上流に向かって高さ及び幅が大きくなる錐台状であってもよい。しかしながら、第2の空間9の内空の高さ・幅の勾配が変化する場合には、コンクリート切断装置によるコンクリートの切断に手間がかかりかねない。それゆえ、第2の空間9が錐台状である場合には、その高さ方向の勾配及び/又は幅方向の勾配が略一定であることが好ましい。
本体10は、ワイヤーソー11を回転走行させるものであり、取付基台12、ロッド13〜15、駆動用プーリー16、ガイドプーリー17〜22、油圧モータ23を含んで構成される。
取付基台12は、ダム堤体1の上流側の壁面1aに取り付けられる。ロッド13は、その基端が取付基台12に固定されて、壁面1aに対して略直交するように上流側に向かって延びている。
ロッド14は、ロッド13に対して略平行に延びている。ロッド15は、ロッド13,14の下流側端部同士に跨るように各々に固定されており、これにより、ロッド13〜15が一体化されている。ガイドプーリー17,18はロッド14に回転自在に取り付けられており、また、ガイドプーリー19〜22はロッド15に回転自在に取り付けられている。ここで、ガイドプーリー17,18は、ロッド14に対してその長手方向に摺動可能にロッド14に取り付けられてもよい。また、ガイドプーリー19〜22は、ロッド15に対してその長手方向に摺動可能にロッド15に取り付けられてもよい。
本実施形態では、ダム堤体1の所定の未掘削区間30を複数(図10(A)では、上下4個×左右4個の計16個)のコンクリートブロックCB1〜CB16に分割する際に、ワイヤーソー切断装置7が用いられる。このコンクリートプロックCB1〜CB16への分割については、その詳細を後述する。尚、説明の便宜上、図10(A)に示すように、上から1段目の4個のコンクリートブロックを左から右へ順にCB1〜CB4とし、上から2段目の4個のコンクリートブロックを左から右へ順にCB5〜CB8とし、上から3段目の4個のコンクリートブロックを左から右へ順にCB9〜CB12とし、上から4段目の4個のコンクリートブロックを左から右へ順にCB13〜CB16として、以下説明する。
仮締切設備40は、平面視で下流側開放のコ字状であり、鉛直方向に延在している。仮締切設備40の下流側端面はダム堤体1の上流側の壁面1aに水密に固定される。尚、台座コンクリート41に固定された仮締切設備40については、後述する孔貫通準備作業が開始されるまでの間、貯水池2に水没させておくことが可能である。
尚、仮締切設備40は、台座コンクリート41を必ずしも必要とするものではない。仮締切設備40は、作業空間βを確保でき、貯水池2の水が作業空間βに流入することを防止できればよい。
孔貫通準備作業では、仮締切設備40内の作業空間βにて、図示しない昇降設備、換気設備、照明設備等の設置作業が行われる。また、クレーン8等を用いて、コンクリートブロックCB1〜CB12の分割・搬出作業用の足場45の設置作業も行われる。尚、この孔貫通準備作業についても、自由断面掘削機5による掘削作業と並行して実施される。
このようにして、孔貫通準備作業では、ダム堤体1の上流側の壁面1aに隣接するように足場45が設けられる。尚、足場45については、ダム堤体1より搬出されるコンクリートブロックCBの高さ位置が低くなるほど、足場45の高さが低くされ得る(図5〜図9参照)。
尚、コアボーリング機はダム堤体1の上流側(作業空間β内)に設けられることが好ましい。コアボーリング機をダム堤体1の上流側に設置することで、自由断面掘削機5による掘削作業とコアボーリング機の準備やボーリングに関する作業とを並行して実施することができ、従って、作業を効率的に実施することが可能となる。
次に、ワイヤーソー切断装置7の設置を行う。そして、コンクリートブロックCB1,CB2の境界となる計画線33に沿って、ワイヤーソー切断装置7によりコンクリートの切断を行い、更に、コンクリートブロックCB1,CB5の境界となる計画線33に沿って、ワイヤーソー切断装置7によりコンクリートの切断を行うことで、コンクリートブロックCB1をダム堤体1から縁切りする。この縁切り時には、図5(エ)に示すように、自由断面掘削機5を利用して控えを取ることが好ましい。
また、左右一対のボーリング孔G,Gの各々にレール60を挿入する。レール60は、例えば、上フランジ、下フランジ、及びウェブからなるH形鋼材により構成される。レール60の長手方向の長さは、所定の未掘削区間30の距離L12よりも長い。
ここで、図16に示すように、コンクリートブロックCB1の下流側端部と、レール60との間に、上流側が先細形状であるくさび61を挿入することにより、コンクリートブロックCB1とレール60とが互いに接触する面積を低減することができるので、コンクリートブロックCB1の引き出しをスムーズに行うことができる。
このようにして、コンクリートブロックCB1がダム堤体1の上流側より搬出される。
次に、第1足場ユニット46をクレーン8により吊り上げて、図6(カ)に示すように、第1足場ユニット46を作業空間β内から撤去する。これにより、足場45の高さが低くなる。
次に、第2足場ユニット47をクレーン8により吊り上げて、図7(ク)に示すように、第2足場ユニット47を作業空間β内から撤去する。これにより、足場45の高さが低くなる。
次に、第1足場ユニット48をクレーン8により吊り上げて、図9(サ)に示すように、第1足場ユニット48を作業空間β内から撤去する。これにより、足場45が完全に撤去される。
次に、図15(B)に示すように、拡幅部4の下半分の内面の凹凸を削って整形する。この整形には、例えばエクセルカッター(登録商標)等の削孔機が用いられる。
このようにして、拡幅部4を含む貫通孔3が、ダム堤体1に形成される。
図17は、非洪水期において、第1の空間6の形成時に並行して仮締切設備40の設置を行うことを示している。また、非洪水期において、第1の空間6の形成時に並行して、足場45の設置を含む孔貫通準備作業を行うことを示している。このように、自由断面掘削機1を用いる第1の空間6の形成時に、仮締切設備40の設置や孔貫通準備作業を行うことにより、第1の空間6の形成と並行して、第2の空間9を形成するための準備を行うことができるので、貫通孔形成の工期を短縮することができる。
また、本実施形態では、掘削機による掘削によって第1の空間6を形成しているが、この他、発破掘削によって第1の空間6を形成してもよい。この場合には、孔形成予定部分αの掘削面(鏡)に爆薬挿入用の穴をドリル等で削孔し、この穴にダイナマイト等の爆薬を挿入して発破・爆発させて掘削する。ただし、振動の低減・抑制の面からは、発破掘削によって第1の空間6を形成するよりも掘削機による掘削によって第1の空間6を形成するほうが好ましい。
1a,1b 壁面
2 貯水池
3 貫通孔
4 拡幅部
4a 第1の部分
4b 第2の部分
5 自由断面掘削機
6 第1の空間
7 ワイヤーソー切断装置
8 クレーン
9 第2の空間
10 本体
11 ワイヤーソー
12 取付基台
13〜15 ロッド
16 駆動用プーリー
17〜22 ガイドプーリー
23 油圧モータ
30 所定の未掘削区間
32 予定線
33 計画線
40 仮締切設備
41 台座コンクリート
45 足場
46 第1足場ユニット
47 第2足場ユニット
48 第3足場ユニット
51,52 縁切りボーリング孔
55 ナイロンスリング
60 レール
61 くさび
α 孔形成予定部分
β 作業空間
CB,CB1〜CB16 コンクリートブロック
E,F,G,H ボーリング孔
Claims (6)
- 既設のコンクリートダムの堤体の上流側と下流側とを連通するように、第1の空間と第2の空間とを含む貫通孔を前記堤体に形成する方法であって、
前記堤体の上流側端部に所定の未掘削区間を残すように、前記堤体を、その下流側から上流側に向かって掘削機又は発破によって掘削することにより、前記堤体に前記第1の空間を形成する工程と、
前記堤体の上流側と前記第1の空間とを連通するように、前記堤体の前記所定の未掘削区間に複数のボーリング孔を形成する工程と、
前記ボーリング孔にワイヤーソーを通す工程と、
該ワイヤーソーを用いて、前記堤体の前記所定の未掘削区間を複数のコンクリートブロックに分割する工程と、
前記コンクリートブロックを前記堤体の上流側より搬出することによって、前記堤体の上流側端部に前記第2の空間を形成する工程と、
を含み、
前記ワイヤーソーを回転走行させるワイヤーソー切断装置の本体が前記堤体の上流側に設けられる、ダム堤体における貫通孔の形成方法。 - 既設のコンクリートダムの堤体の上流側と下流側とを連通するように、第1の空間と第2の空間とを含む貫通孔を前記堤体に形成する方法であって、
前記堤体の上流側端部に所定の未掘削区間を残すように、前記堤体を、その下流側から上流側に向かって掘削機又は発破によって掘削することにより、前記堤体に前記第1の空間を形成する工程と、
コンクリート切断装置を用いて、前記堤体の前記所定の未掘削区間を複数のコンクリートブロックに分割する工程と、
前記コンクリートブロックを前記堤体の上流側より搬出することによって、前記堤体の上流側端部に前記第2の空間を形成する工程と、
を含み、
前記コンクリート切断装置が前記堤体の上流側に設けられる、ダム堤体における貫通孔の形成方法。 - 前記貫通孔は、その上流側端部に拡幅部を有し、該拡幅部が前記第2の空間を含む、請求項1又は請求項2に記載のダム堤体における貫通孔の形成方法。
- 前記第1の空間を形成する工程と並行して、前記堤体の上流側の壁面に隣接する作業空間を確保するための仮締切設備を設ける工程を更に含む、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のダム堤体における貫通孔の形成方法。
- 前記コンクリートブロックを前記堤体の上流側より搬出することは、前記堤体の天端に配置されたクレーンにより、前記コンクリートブロックを前記作業空間内から吊り上げることを含む、請求項4に記載のダム堤体における貫通孔の形成方法。
- 前記第1の空間を形成する工程と並行して、前記堤体の上流側の壁面に隣接するように足場を設ける工程を更に含む、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のダム堤体における貫通孔の形成方法。
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