以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
(実施例1)
本発明の一実施形態の化粧部材120は、壁表に固定されて、壁孔から引き出された配線・配管材Pの周囲を化粧することに用いられる。図1(a)、(b)は、該化粧部材120の表面側及び裏面側からの斜視図である。図2(a)〜(d)は、該化粧部材120の正面図、背面図、側面図、A−A断面図である。
図1及び図2に示すとおり、一実施形態の化粧部材120は、金属製の円環状薄板からなり、正面視円形状の輪郭を有しており、壁表側に露出する表面120aと、壁面側に配置される裏面120bとを有する。該化粧部材120は、同一形状を有する半環状の一対の分割体121が2組の連結機構を介して連結されたものである。そして、該化粧部材120は、表面120a側に円形の平面を形成する覆い部122と、該覆い部122の外周縁から裏面120b側に屈曲して延設された側縁部123と、覆い部122の略中央で配線・配管材Pが通過可能な径で開口する開口部124と、各分割体121の外縁近傍に穿設された一対のビス孔(固定部)126と、を備える。
また、当該覆い部122の外周全体において、側縁部123が形成されている。該側縁部123は、表面120aと略直角に裏面120b側(壁面側)に折り返されて延設されており、その延設する方向に高さhを有する。この高さhは、覆い部122裏面から側縁部123先端までの距離であり、化粧部材120を壁面に出来る限り平行に固定すべく、壁面周縁の凹凸、段差又は配設体(例えば、熱膨張性耐火部材のフランジ部)を収容するための逃げ空間(隙間S)を形成する。なお、図10で後述するが、化粧部材120がフランジ部112の表面及び端面を被覆して壁面に設置された状態で、フランジ部112及び本体部111端面の膨張を許容する隙間Sを化粧部材裏面120bとフランジ部112表面との間に形成する。
また、化粧部材120の覆い部122略中央には、一対の分割体121が組み合わさって、円形の開口部124が形成されている。この開口部124の内径は、壁孔Hの内径よりも小さく形成されている。そして、化粧部材120の周縁近傍には、一対のビス孔126が穿設されている。このビス孔126は、一対の分割体121の各々に形成されたものである。
続いて、図3及び図4を参照して、化粧部材120を構成する各分割体121の構造を説明する。図3(a)、(b)は、該化粧部材120を構成する分割体121の表面側及び裏面側からの斜視図である。図4(a)〜(c)は、該分割体121の正面図、底面図及び側面図である。図3及び図4に示すように、各分割体121は正面視半円状を有し、(化粧部材120の表面120a及び裏面120bに対応する)表面121a及び裏面121bを有している。そして、該一対の分割体121の一方及び他方の分割体は全く同じ形状を有している。このように、各分割体121を同一形状したことにより、構造が簡素化され、製造コストの削減に貢献している。
また、図4(a)に示すとおり、分割体121は、一対の分割体121同士が互いに連結する側縁(すなわち、化粧部材120の分割縁)において、略中央に半円形状の切り欠き部124aと、該切り欠き部124aの両側で直線状に延びる接合縁部125とを有する。切り欠き部124aは、一対の分割体121同士が互いに組み合わさったときに円形の開口部124を形成する。他方、接合縁部125は化粧部材120の分割縁であり、両分割体121の接合縁部125同士が互い違いに接合することにより、一対の分割体121が連結する。なお、図4(a)において、開口部124の左側の接合縁部125を第1接合縁部125aと定め、右側の接合縁部125を第2接合縁部125bと定める。すなわち、一方の分割体121の第1接合縁部125aと他方の分割体121の第2接合縁部125bとが対向して連結し、一方の分割体121の第2接合縁部125bと他方の分割体121の第1接合縁部125aとが対向して連結することにより、一対の分割体121同士が互いに組み合わされる。
そして、該分割体121の第1接合縁部125aの略中央には、細幅の係合突起127が第1接合縁部125aの外方(又は第1接合縁部125aの離隔方向)に向けて延出するように一体的に設けられている。すなわち、接合縁部125の延在方向と係合突起127の延設方向とは直交している。該係合突起127の表面及び裏面は、分割体表面121a及び裏面121bと平行に延在し、分割体121の板厚と同じ厚みを有する。
当該係合突起127は、分割体表面121aと同一平面上で第1接合縁部125aから外方に延びる基端部127aと、該基端部127a(の先端側)から裏面121b側に屈折して形成された係合段部127bと、該係合段部127b(の先端側)から基端部127aの延設方向(第1接合縁部125aとの離隔方向)に沿って延びる先端部127cと、を備える。つまり、基端部127a及び係合段部127bと係合段部127b及び先端部127cとはそれぞれL字形状に屈曲している。すなわち、該係合突起127では、先端部127cが基端部127aに対して裏面121b側に後退(凹設)されており、基端部127aと先端部127cとの間に係合段部127bが段差状に形成されている。そして、先端部127cの後退幅は、係合段部127bが後述の分割体121表面から凹設された係合縁部128aに係合可能であるように定められている。
他方、分割体121の第2接合縁部125bの内側に係合突起127を挿通可能な矩形状の係合孔128が穿設されている。当該係合孔128は、接合縁部125bを残し、且つ、(対となる分割体121の)係合突起127に対向(又は対応)する位置に形成されている。さらに、係合孔128は、係合突起127を遊挿可能な(接合縁部125に沿った方向の)横幅及び(接合縁部125に直交する方向の)縦幅を有する。具体的には、係合孔128の横幅が係合突起127の横幅よりも十分に大きく、且つ、係合孔128の縦幅が係合突起127の横幅よりも小さい。すなわち、係合突起127は係合孔128内で完全に一回転することはできないが、係合孔128に挿通された状態で所定角度の係合突起127の遊動(本実施形態では90°弱の回動)が許容される。また、係合孔128の縦幅は、係合段部127cを有する係合突起127が傾斜方向から表面側から裏面側に通過(挿し込み)可能な大きさを有し、尚且つ、係合突起127の先端部127cの長さよりも小さい。後述するとおり、係合突起127が係合孔128に挿通されたときに、係合突起127の先端部127cが係合孔128を越えて分割体裏面121bにまで延在する。
また、係合孔128は、分割体121の第2接合縁部125b中央近傍に穿設され、縦横4辺の周縁によって縁取られている。この周縁のうち接合縁部125側の周縁を係合縁部128aと定める。この係合縁部128aは、分割体121の外縁の一部をなすように第2接合縁部125bと隣接している。あるいは、係合縁部128aを第2接合縁部125bの一部として見なすこともできる。そして、該係合縁部128aは、第2接合縁部125bの端面から僅か後退した位置に配置されている。この係合縁部128aは、図4(b)に示すように、分割体表面121aから所定深さで凹設された細幅片であり、分割体表面121aと係合縁部128a表面とが異なる高さに配置されている。また、分割体裏面121bにおいて係合縁部128aに対向する側の係合孔128周縁は、他方の分割体121の係合突起先端部127cに当接する当接部128bとして定められる。つまり、係合孔128は、接合縁部125側に形成された係合縁部128aと、その反対側に形成された当接部128cとを有する。
そして、化粧部材120は、(一方及び他方の)分割体121の第1接合縁部125aと(他方及び一方の)分割体121の第2接合縁部125bとをそれぞれ2箇所で互い違いに連結すべく、2組の連結機構を備える。すなわち、連結機構は、一方(又は他方)の分割体121の第1接合縁部125aに形成された係合突起127と、他方(又は一方)の分割体121の第2接合縁部125bに形成された係合孔128とからなる。
図5は、連結機構で一対の分割体121を連結した状態を示す部分拡大図である。図5(a)に示すとおり、該連結機構では、一方の分割体121の係合突起127が他方の分割体121の係合孔128に挿通されて、一対の分割体121同士が互いに連結(又は嵌合)されている。この連結状態では、係合突起127が係合孔128をその表面121a側から裏面121b側に貫通している。
より具体的に説明すると、図5(a)に示すように、当該係合突起127の基端部127aが、凹状の係合縁部128aの表面側に配置されている。また、図5(b)に示すように、基端部127aの横幅は係合縁部128aの横幅とほぼ等しく、基端部127aが係合縁部128上の凹部に収容されている。これにより、化粧部材120の表面120aから連結機構(係合突起127)が突出することが防止される。そして、係合段部127bが係合孔128を貫通するように表面121a側から裏面121b側(分割体121の厚み方向)に延びている。この係合段部127bは、係合孔128内で係合縁部128aに隣接して配置されている。さらに、先端部127cが分割体裏面121b側で係合段部127bから第1接合縁部125aの離隔方向に延びており、該先端部127cは係合孔128の係合縁部128aと反対側の周縁における当接部128bまで延在している。
当該連結機構では、一方の分割体121の係合突起127が、他方の分割体121の係合縁部128a及び裏面121b(当接部128b)に係合又は当接することにより、一対の分割体121が互いに分離することが規制される。すなわち、一対の分割体121がその平面方向に沿って互いに離隔する方向に移動しようとすると、係合段部127bが係合縁部128a(係合孔128の内周端面)に係合する。他方、一対の分割体121が近接方向に移動しようとすると、接合縁部125同士が係合する。よって、連結機構により、一対の分割体121の離隔方向の相対移動が規制される。また、化粧部材120の表面120aが接合縁部125を境に山折り方向(分割体表面121a同士が離隔する方向)に屈折しようとすると、係合突起127の先端部127c表面が分割体121裏面の当接部128bに係合する。これにより、一対の分割体121の表面同士が互いに離隔する方向に回動することが規制される。
図5(c)は、一対の分割体121の表面121aが互いに近接する側に傾斜した傾斜姿勢を示している。この傾斜姿勢では、係合段部127bと係合縁部128aとが係合せずに係合突起127が係合孔128を通過可能である。すなわち、当該谷折り状の傾斜姿勢で、(表面121aに対して)傾斜した係合突起127を係合孔128に挿通又は離脱方向に移動させて一対の分割体127を連結又は分離可能である。なお、係合孔128が係合突起127を遊挿可能な大きさを有するため、分割体121自体の工作精度が多少低いとしても、係合突起127を係合孔128に通過させて一対の分割体127を連結又は分離可能である。
図6を参照して、上述した連結機構によって一対の分割体121を組み合わせて化粧部材120を組み立てる工程を説明する。図6では、説明の便宜上、一対の分割体121の各々を一方の分割体121’及び他方の分割体121”として区別して表記する。また、化粧部材120は2組の連結機構を有し、いずれも同じ構造であるが、説明の便宜上、第1連結機構を一方の分割体121’の係合突起127’と他方の分割体121”の係合孔128”の組と定め、且つ、第2連結機構を一方の分割体121’の係合孔128’と他方の分割体121”の係合突起127”の組と定める。
まず、図6(a)に示すとおり、一方の分割体121’と他方の分割体121”の表面同士を近接させる側に互いに傾斜させた(相対的な)傾斜姿勢を維持し、一方の分割体121’の係合突起127’を他方の分割体121”の係合孔128”に表面側121”から挿入する。このとき、係合突起127’の先端部127c’の裏面を係合孔128”の係合縁部128a”表面に当接させつつ摺動させることで、係合突起127’を係合孔128”内に簡単に導くことができる。また、この傾斜姿勢とは、図5(c)で説明したように、一方の分割体121’が他方の分割体121”に対して、傾斜した係合突起127’を係合孔128”に表面側から裏面側へと挿入可能に、少なくとも分割体表面121a’、121a”同士が互いに同一平面上に整列していない状態を意味する。分割体表面121a’、121a”間の角度を100〜170°程度とすることが好ましく、この角度範囲では係合突起127’を係合孔128”に簡単に挿入可能である。
図6(b)の段階では、第1連結機構が一方及び他方の分割体121’、121”を仮止めしている。この片持ちの仮組み状態では、係合突起127’が係合孔128”に遊挿(遊嵌)されているため、一方の分割体121’の他方の分割体121”に対する姿勢を変位可能である。次に、図6(b)に示すとおり、第1連結機構(係合突起127’及び係合孔128”)を支点として、一対の分割体121’、121”の相対姿勢を変位させつつ、一方の分割体121’を矢印方向に回動させて、第2連結機構の係合孔128’に係合突起127”を近接させ、係合孔128’内に係合突起127”を挿し入れる。その結果、第1連結機構及び第2連結機構の両方で一対の分割体121’、121”が仮連結される。なお、図6(b)の一連の動作では、一方の分割体121’が他方の分割体121”に当接しながら互い摺動し、その相対的な姿勢が矯正されるように、一方の連結機構を支点として他方の連結機構の係合突起127”が係合孔128’内に導かれる。すなわち、図6(c)の形態を容易に構成することができる。
そして、図6(c)に示す仮連結状態では、各接合縁部125’、125”が接合した状態で一対の分割体121’、121”が互いに傾斜した姿勢にある。続いて、第1及び第2連結機構の両方(又は接合縁部125’、125”)を支点として、図6(c)の矢印方向に一対の分割体121’、121”を相対的に回動させて、一対の分割体121’、121”の表面を同一平面上に整合させる。換言すると、一対の分割体121’121”の相対的な姿勢を傾斜姿勢(本実施形態では、分割体表面間の角度が100〜170°程度)から一対の分割体表面間の角度が約180°である連結姿勢に変位させる。これにより、一平面状の覆い部122を有する化粧部材120が組み立てられる。この組み立てた状態では、図8を参照して説明したように、化粧部材120の表面120aに平行な方向に沿って離隔することが第1及び第2連結機構によって規制されており、所謂ロック状態が形成されている。なお、上記連結工程において、他方の分割体121”をビス孔126”を介して壁面に固定した後で、一方の分割体121’を他方の分割体121”に連結することも可能である。
これに対して、化粧部材120を一対の分割体121’、121”に分割するには、接合縁部125に沿って一対の分割体121’、121”の表面同士を互いに近接方向に傾斜させるように回動させる。そして、この傾斜姿勢から互いの姿勢を捻るように変位させることにより、各係合突起127’、127”を各係合孔128’、128”から引き抜いて、第1及び第2連結機構による連結を簡単に解除することができる。
次に、一実施形態の化粧部材120を応用例として、防火区画用の壁材Wに配線・配管材Pの配設用の貫通部を形成するための貫通部形成装置100を説明する。図7は、該貫通部形成装置100を示す分解斜視図である。図7に示すとおり、本実施形態の貫通部形成装置100は、壁孔H内に配置されると共に配線・配管材Pを内挿する熱膨張性耐火部材110と、該熱膨張性耐火部材110の端面を被覆した状態で壁材Wの壁面に固定される化粧部材120とを備える。
図8及び図9を参照して、本実施形態の貫通部形成装置100の熱膨張性耐火部材110を説明する。図8(a)、(b)は、本実施形態の貫通部形成装置100の熱膨張性耐火部材110の一端側及び他端側からの斜視図である。図9(a)〜(d)は、該熱膨張性耐火部材110の正面図、背面図、側面図、D−D断面図である。
本実施形態の熱膨張性耐火部材110は、熱膨張製材料で一体成形されたものである。より具体的には、熱膨張性材料は熱膨張性ゴムであり、この熱膨張性ゴムは300℃以上の熱を受けると体積が加熱前の2倍以上に膨張する膨張材(膨張黒鉛)を混入し、所定形状に成形した(成形工程を経た)ゴムに加硫工程を経てなるものである。なお、加硫工程とは、成形工程を経たゴムに熱を加え、加硫(架橋)反応や接着反応を起こさせ、ゴム弾性を有する製品を得る工程である。そして、熱膨張性耐火部材110は、熱膨張性ゴム自身により円筒状(形状)を維持している。
図8及び図9に示すとおり、熱膨張性耐火部材110は、中空円筒状に形成された本体部111と、該本体部111の一端側から外方に一体的に張り出した板状のフランジ部112とを備える。該中空筒状の本体部111は、図9(c)に示すように、その軸方向(又は貫通方向)に沿って一様な径で一端から他端に向けて直線状に延びている。この中空筒状の本体部111の内周面111a内側の中空空間に、配線・配管材Pを通過可能な貫通部が定められる。他方、本体部111の外形(輪郭)は、外周面111bによって定められている。すなわち、本体部111の内周面111a及び外周面111bの肉厚部分(熱膨張性材料)が壁孔内壁と配線・配管材Pの外面との間に配置される。なお、外周面111bの外径は、壁孔Hの直径と略同一(わずかに小さい)に形成され、且つ、当該外周面111bの形状(円形)と壁孔Hの形状(円形)とが略同一になっている。
また、該本体部111は、その径方向に沿って内周面111aと外周面111bとの間に所定厚の円筒壁を有している。この本体部111は、火災等で発生した熱による加熱によって本体部111の内径方向へ膨張して貫通部を閉塞する(すなわち、内周面111aの内側空間を埋める)だけの厚みを有していることが好ましい。また、本体部111は、内周面111a側から加熱されて膨張したときに、本体部111の外周面111b側の形状を維持する厚みを外周面側に確保していることが好ましい。換言すると、本体部111の厚みは、内周面111a側が加熱されたときに、その熱が本体部111の内周面111aから外周面111b側に影響を及ぼさないような厚みに設定されていることが好ましい。
本実施形態では、本体部111の厚みは、内周面111aの内径に対する熱膨張性ゴムの膨張率の比の値よりも厚くなるように設定されている。また、本体部111の厚みは、本体部111の周方向に沿って一定である。なお、本実施形態では、耐火具本体12の厚みは20mmである。上記好ましい形態によって、(先行技術文献1に示されているとおり)ケーブル芯線の加熱で内周面111側から本体部111が加熱された場合に、貫通部の内側への最適な熱膨張が可能である。しかしながら、本発明はこのような内周面111aからの加熱のみを想定したものではないので、本発明の熱膨張性耐火部材の形状寸法は本実施形態に限定されることはない。
そして、フランジ部112は、本体部111の一端の外周縁から径方向に延びるように該本体部111の周方向全体で薄肉状(本実施形態では約2mm厚)に形成されている。図9(a)、(b)に示すように、フランジ部112の輪郭を定める外縁は円形状であり、その直径は壁孔Hの直径よりも大きい。すなわち、フランジ部112の裏面が壁孔Hの周縁の壁面に当接可能である。
さらに、本体部111(フランジ部112)の略中心には、軸方向一端側で貫通部を閉鎖する閉鎖部113が形成されている。図9(d)に示すように、閉鎖部113は、フランジ部112と同様に薄肉状に形成され、本体部111(又は貫通部)の一端面を閉鎖している。この閉鎖部113は、その中心を通る複数の切り込みで複数に分割されている。つまり、該閉鎖部113には、本体部111一端の内周面111aから径方向内方(中心)に延びる複数の舌片113aが形成されている。各舌片113aは、その基端を支点として軸方向に沿って(図3(d)の仮想線のように)弾性変形可能である。舌片113aを弾性変形させることにより、該閉鎖部113は、本体部111端面を開放するように配線・配管材Pを通過可能に変形する。そして、該閉鎖部113では、配線・配管材Pを挿し込んだ後に舌片113aが弾性復帰することにより、各舌片113aが配線・配管材Pの外面に密着して、再度端面を閉鎖する。
また、熱膨張性耐火部材110には、本体部111の軸方向全体に亘って延びるとともに、軸方向に対して直交する方向(径方向)へ延びる切断部114が形成されている。そして、切断部114は、本体部111の内周面111a、外周面111b及びフランジ部112外周縁を連通するように繋いでいる。熱膨張性耐火部材110を弾性変形させることにより、この切断部114を開口させて貫通部を開放可能である。なお、この切断部114は、舌片113a形成するための複数の切り込みのうちの一つであり、舌片113aの形成に利用されている。
なお、化粧部材120と熱膨張性耐火部材110との寸法形状の関係は次のとおりである。化粧部材120の覆い部122は、(開口部124の外周側で)熱膨張性耐火部材110の端面(フランジ部112の輪郭全体)を被覆する大きさを有する。すなわち、覆い部122の径は、フランジ部112の径よりも大きい。フランジ部112の端縁を外側から被覆可能に側縁部123が形成されている。該側縁部123の延設する方向に高さhは、覆い部122裏面から側縁部123先端までの距離であり、フランジ部112の厚みdよりも大きい。なお、本実施形態では、フランジ部112の厚みdが約2mmであり、側縁部123の延設方向の高さhが約5mmである。そして、フランジ部112が2倍以上に熱膨張することを考慮すると、側縁部123の延設方向の高さhがフランジ部112の厚みdの2倍以上であることが好ましい。しかしながら、本発明は上記形状寸法に限定されず、任意に設定してもよい。また、開口部124の内径は、熱膨張性耐火部材110の本体部内周面111a(貫通部)の内径よりも大きい。すなわち、本実施形態では、開口部124の内径は、壁孔Hの内径よりも小さく、且つ、貫通部の内径よりも大きく定められている。そして、化粧部材120のビス孔126は、覆い部122の径方向においてフランジ部112の径よりも外側に配置される。
続いて、図10及び図11を参照して、本発明の一実施形態の防火区画壁構造10を詳細に説明する。図10は、貫通部形成装置100を防火区画用の壁材Wに設置した防火区画壁構造10の断面図である。
本実施形態の防火区画用の壁材Wは、垂直に立設した中空の耐火壁である。この壁材Wは、石膏ボードからなり、立設された複数本の間柱(図示せず)に固定されて構築されたものである。これら2枚の壁材Wが間柱を挟んで前後に構築されることにより、壁材Wの間に中空空間(壁裏空間)が形成されている。そして、当該中空の耐火壁を貫通すべく、各壁材Wには、所定の太さの配線・配管材Pが貫通可能な径を有する壁孔Hがホルソー等によって穿設されている。この壁孔Hは正円形状を有し、その内径は熱膨張性耐火部材110の本体部111の外径と略同一(わずかに大きく)に形成されている。そして、2つの壁孔Hによって一方の壁材Wの壁表空間と他方の壁材Wの壁表空間とが連通されている。すなわち、防火区画壁構造10は、両壁孔H及び中空空間を介して配線・配管材Pを貫通可能としている。なお、本発明の壁材は防火区画用の天井や床等の構造体をも含む概念であり、本実施形態の形態に限定されない。
本実施形態の防火区画壁構造10では、図10に示すとおり、2組の貫通部形成装置100が一対の壁材Wの壁孔Hにそれぞれ設置されており、2枚の壁材Wを通して配線・配管材Pを貫通可能とすべく連通した貫通部を各壁材Wに形成している。各貫通部形成装置100において、熱膨張性耐火部材110の円筒状の本体部111が壁材Wの壁孔H内に挿入されている。上述したように、本体部111の外径と壁孔Hの内径とがほぼ等しいため、本体部111の外周面111bと壁孔Hの内周面とがほぼ密接している。また、熱膨張性耐火部材110の一端が壁表側に配置され、他端が壁裏側に突出している。そして、フランジ部112裏面が壁孔H周縁の壁面に当接している。さらに、当該フランジ部112表面を被覆するように、化粧部材120が壁材Wの壁表側の壁面に固定されている。この化粧部材120の表面120aが壁面と略平行となっている。これら両方の熱膨張性耐火部材110の壁裏側の他端面は、壁裏空間で互いに近接した位置に対向配置されている。
この防火区画壁構造10では、化粧部材120の覆い部122の外径が熱膨張性耐火部材110のフランジ部112の輪郭よりも大きいので、覆い部122で熱膨張性耐火部材110の一端面(フランジ部112の輪郭)が被覆されている。ここで、開口部124の内径が壁孔Hの内径よりも小さく、且つ、貫通部の内径よりも大きい。すなわち、覆い部122が熱膨張性耐火部材110の本体部111端面の一部を開口部124の外方且つ壁孔Hの内方の範囲で覆っている。換言すると、覆い部122は、壁孔H内の熱膨張性耐火材110の端面の少なくとも一部を覆って、開口部124の裏側を除いた熱膨張性耐火部材110の端面全体を被覆している。さらに、内挿された配線・配管材P外面と開口部124内周面との間に柔らかい(弾性の)熱膨張性耐火部材110が介在している。これにより、配線・配管材Pが化粧部材120の開口部124の端縁に当接することが防がれ、配線・配管材Pの外面に傷が付くことが抑止されている。また、開口部124の内径によって貫通部の内径が狭められることがない。
この化粧部材120は、上下一対のビス孔126を2本のビス(固定部材)126aがそれぞれ貫通することにより、壁面に固定されている。ビス孔126がフランジ部112の径方向外側に位置しているので、ビス126aがフランジ部112を避けて壁材Wに貫通している。これにより、ビス126aがフランジ部112を貫通して熱膨張性耐火部材110を傷つけることが防止されている。
そして、1本の配線・配管材Pが2つの壁材Wを貫通するように両壁孔Hの略中心に貫通配置されている。この配線・配管材Pは、熱膨張性耐火部材110の中空筒体の本体部111を軸方向に貫通すると共に、化粧部材120の開口部124を貫通している。そして、閉鎖部113の各舌片113aが貫通部内方に折れ曲がり、その弾性復帰力により各舌片113aが配線・配管材Pの外面に密着している。すなわち、熱膨張性耐火部材110内の貫通部が壁表に露出しないように、配線・配管材Pの外面と本体部110の内周面111bとの間が閉塞部113で閉鎖されている。
さらに、覆い部122外周縁から壁面側に屈折して延びる側縁部123がフランジ部112の端縁を覆っている。この側縁部123の高さ(又は延設方向の長さ)hは、フランジ部112の厚みdよりも大きいので、熱膨張性耐火部材110の一端面(又はフランジ部112表面)と覆い部122の裏面120bとの間に所定の大きさの隙間Sが形成されている。本実施形態では、当該隙間の大きさは約3mmである。図示しないが、隙間Sにおいて、閉鎖部113(切れ目)、該閉鎖部113と配線・配管材Pとの接触箇所、及び/又は切断部114を埋めるように熱膨張性(非熱膨張性であってもよい)の防火パテが熱膨張性耐火部材110の一端面に配置される。防火機能をより確実にするために、この防火パテはその端面からの隆起が少なくとも2mmとなるように盛られる。本実施形態では、防火パテの最低限の隆起量を超えるように隙間Sの大きさを約3mmとしたことで、(特に防火パテが膨張する材料で形成されている場合には)防火パテの膨張に必要な厚さが確保されている。
なお、本実施形態の配線・配管材Pは、建築物内に配設される配線(制御用ケーブル、同軸ケーブル、光ケーブル等)及び配管材(合成樹脂製可撓電線管、鋼製電線管等)等の金属製の芯線を含むケーブルであるが、本発明の配線・配管材は種々の長尺材を意味する幅広い概念であり、これに限定されない。すなわち、本発明の配線・配管材は、金属製の芯線を有さないものであってもよい。
図11は、火災が生じたときに壁孔H(又は貫通部)が閉鎖された防火区画壁構造10’の模式図である。この防火区画壁構造10’は、一方側(図11の左側)の空間のみに火災が生じ、該貫通部形成装置100が該火災空間から加熱された場合を想定したものである。そして、一方側で発生した火炎、煙、有毒ガスが貫通部を介して他方側(図11の右側)の空間に流入することが阻止されている。なお、先行技術文献1は、配線・配管材Pの芯線から主に伝熱されることを想定したものであるが、本実施形態は、壁面近傍で火災が発生して、配線・配管材Pの芯線だけでなく、熱膨張性耐火部材110端面が火災空間から直接的に加熱された場合を想定したものである。
より詳細には、図11に示すとおり、防火区画壁構造10’では、火災空間側で配線・配管材Pの被覆材の一部が燃えて金属製の芯線P’が部分的に露出している。そして、熱膨張性耐火部材110の本体部111の内周面111aが径方向内側に膨張し、部分的に露出した芯線P’の外面を密封状態で包囲している。換言すると、配線・配管材Pの外面と熱膨張性耐火部材110の内周面111aとの間の当初空隙が部分的に熱膨張性材料によって埋められて密封閉鎖されている。
また、火災空間の壁表側の熱膨張性耐火部材110の一端面が加熱されて壁表側に膨張している。そして、本体部111端面が壁表側に隆起し、且つ、フランジ部112全体が厚さ方向及び径方向に膨張している。すなわち、当初の化粧部材120裏面120bとフランジ部112表面との隙間S内で本体部111端面及びフランジ部112が膨張し、その膨張した本体部111端面が化粧部材120裏面120bに当接している。そして、フランジ部112が裏面側に膨張した分、壁表側に熱膨張性耐火部材110が押し出されることになるが、化粧部材120が熱膨張性耐火部材110を脱落しないように壁面に対して押さえ付けている。当該熱膨張性耐火部材110が化粧部材120に作用する力の反作用として、化粧部材120が熱膨張性耐火部材110の膨張端面を壁裏方向に押圧するため、フランジ部112裏面と壁材W壁面との密着力がより強まり、より確実に壁孔Hを密閉することができる。このとき、化粧部材120の略中央に壁表側の力が加わるが、上述した連結機構によって、一対の分割体121の表面が互いに離隔する方向に回動する(化粧部材表面120aが山折り方向に屈折する)ことが規制されている。つまり、覆い部材120の裏面120b側に係合突起127の先端部127cが当接するため、被覆する熱膨張性耐火部材110の膨張の力(壁面からの押圧)に対して強い。そのため、化粧部材120は、覆い部122裏面で熱膨張性耐火部材110を強固に押さえ付けることができる。
さらに、図11の防火区画壁構造10’では、一方側の熱膨張性耐火部材110の(壁裏側の)他端面が熱伝導により壁裏側に熱膨出している。また、一方側から伝わった熱により、他方側の熱膨張性耐火部材110の他端面(壁裏端面)が部分的に熱膨張している。一方側の熱膨張性耐火部材110の他端面が他方側の熱膨張性耐火部材110の他端面に当接し、互いに軸方向に膨出した分、他方の熱膨張性耐火部材110が他方の壁表側に押し出される。しかしながら、本実施形態では、他方の壁材Wの壁面に固定された化粧部材裏面120bによって、熱膨張性耐火部材110の一端面(壁表端面)が係止されている。すなわち、本実施形態のような熱膨張性耐火部材110の他端面が加熱膨張された場合においても、貫通部形成装置100は、該熱膨張性耐火部材110が壁表空間に抜け出ることを防止している。
ここで、図11の防火区画壁構造10’のように熱膨張性耐火部材110が膨張する機構を考察する。本実施形態の防火区画壁構造10’では、熱膨張性耐火部材110端面の所定量の膨張を許容する隙間Sを設けたことにより、該隙間S内で本体部111及びフランジ部112が壁表側に膨張することが許容されている。特に、図11に示すように、熱膨張性耐火部材110の壁表側の端部が加熱された場合、中空筒状の本体部111の肉厚部(内周面111aと外周面111bとの間の熱膨張性材料)が壁表側に大きく膨張し始める。これに対し、化粧部材120の覆い部122が壁孔H内で本体部111の肉厚部の端面の一部(好ましくは半分以上)を覆っている。そのため、本体部111端面が壁表側に熱膨張すると、その膨張した端面が覆い部122裏面に当接する。そして、熱膨張性耐火部材110がさらに壁表側に膨張しようとすると、これ以上の壁表側への熱膨張が化粧部材120によって規制され、空隙が残る本体部111の内径方向へと熱膨張性耐火部材110の膨張がガイドされる。このとき、熱膨張性耐火部材110の膨張方向が壁表方向から内径方向又は壁裏方向に変換されたので、化粧部材120の開口部124から熱膨張性材料が飛び出ることが抑えられる。すなわち、本防火区画壁構造10’では、熱膨張性耐火部材110の壁表側への膨張を許容する隙間Sを敢えて設けたことにより、熱膨張性耐火部材110の膨張方向が内方(本体部111の中空空間)に向けられ、配線・配管材P外面と本体部内周面111aとの間の空隙が熱膨張性材料でより密に埋められる。これに対し、隙間Sを設けない場合を考察する。このような場合、熱膨張性耐火部材の膨張がガイドされることがないので、開口部124から壁表側に膨張した多くの熱膨張性材料がはみ出ることが考えられる。そのため、本実施形態と比較して、熱膨張性耐火部材110の体積全体を有効に利用することができず、密閉性能が劣ることが考えられる。
なお、ここで説明した防火区画壁構造10、10’は一実施例にすぎず、本発明の防火区画壁構造はこれに限定されない。例えば、壁材は中空の耐火壁でなく、中空空間(又は壁裏空間)を含まない1枚のコンクリート壁であってもよい。また、本発明の貫通部形成装置において、熱膨張性耐火部材の膨張の形態は、火災の環境等により常に変化するものである。よって、ここで説明した防火区画壁構造10’は、膨張形態の一例を説明するものにすぎず、本発明を限定するものではない。
続いて、図12〜図14を参照して、本実施形態の貫通部形成装置100を壁材Wに設置して防火区画壁構造10を構築する方法を説明する。図12〜図14では、説明の便宜上、1枚の壁材Wに対して1組の貫通部形成装置100が設置されることが示されている。
まず、壁材Wに所定の大きさの壁孔Hをホルソー等によって穿設する。次に、配線・配管材Pを壁孔H内に貫通配置する。次いで、図12に示すように、熱膨張性耐火部材110を弾性変形させて切断部114を開放し、この開放した切断部114を介して貫通部に対して配線・配管材Pを挿入する。そして、熱膨張性耐火部材110を弾性復帰させることにより、切断部114が閉じて配線・配管材Pを貫通部内に保持することができる。
他方、図12に示すように、配線・配管材Pをその径方向から挟み込んで切り欠き部124a内に配置するように、化粧部材120の一対の分割体121を互いに傾斜した姿勢で近接させる。そして、図13に示すとおり、2組の連結機構のうち一方の連結機構の係合突起127を係合孔128に挿通する。この片持ちの仮組み状態で、一対の分割体121の相対的な姿勢を矢印方向に変位させて、他方の連結機構の係合突起127を係合孔128に挿通させる。そして、一対の分割体121を回動させて平行姿勢をとることにより、化粧部材120を組み立てると同時に開口部124内に配線・配管材Pを挿通することができる。
続いて、熱膨張性耐火部材110を配線・配管材Pに沿ってスライドさせて、本体部111を壁孔Hに配置すると共にフランジ部112を壁面に当接させる。同様に、化粧部材120を配線・配管材Pに沿ってスライドさせて、覆い部122で熱膨張性耐火部材110の一端面(フランジ部112表面)全体を覆うと共に側縁部123の端面を壁面に当接させる。そして、図14に示すように、熱膨張性耐火部材110と化粧部材120の中心を合わせつつ、2本のビス126aをビス孔126に挿入して化粧部材120を壁面に固定する。その結果、壁材Wに貫通部形成装置100が設置される。なお、図10の防火区画壁構造10を構築するには、他方の壁材Wに対しても同様の作業を実施すればよい。
なお、ここで説明した方法は、一例にすぎず、当業者であれば、各工程の順序を入れ替え、又は、状況に応じて不要な工程を省略することも可能である。例えば、貫通部形成装置100を設置して壁材Wに予め貫通部を形成し、当該貫通部に配線・配管材Pを壁表又は壁裏をその長尺方向から挿し込むことも可能である。
以下、本発明に係る一実施形態の化粧部材120及び防火区画壁構造10の作用効果について説明する。
本実施形態の化粧部材120では、一方の分割体121の接合縁部125から延出された係合突起127を接合縁部125の内側で係合突起127に対向する位置に穿設された係合孔128に表面121a側から裏面121b側に挿通させることにより、一対の分割体121の接合縁部125同士を連結することができる。すなわち、当該連結機構では、係合孔128に対して係合突起127を表面121a側から裏面121b側へと傾斜方向に挿通移動させるため、一対の分割体121を連結させる際の相対的な姿勢を(平行姿勢に制限されず)任意の角度に傾斜させることが可能である。そして、一対の分割体121が連結機構によって同一平面上に配置されて連結された状態では、係合段部127bと係合縁部128aとの係合により、一対の分割体121が互いに分離することが確実に規制される。
そして、本連結機構は、図6に示したように、一対の分割体の表面121a’、121a”が互いに近接する方向に傾斜した(谷折り状の)傾斜姿勢で、一対の分割体121’、121”を連結可能であり、尚且つ、この傾斜姿勢で連結機構の連結を解除して化粧部材120を分割することができる。また、本連結機構は、一対の分割体121’、121”の表面121a’、121a”が互いに平行となる連結姿勢では、(係合段部127bと係合縁部128aとの係合関係により)係合突起127が係合孔128から離脱することを規制し、一対の分割体121’、121”の連結をロックする。さらに、本連結機構は、係合突起先端部127cと分割体裏面121bの当接部128bとの係合関係によって、該連結姿勢から分割体表面121’、121”が互いに離隔する方向に傾斜するように回動することを規制する。つまり、この連結状態では、分割体表面121a’、121a”間の角度が180°を超えて、化粧部材120が山折り状に屈折されることはない。したがって、本実施形態では、第1及び第2連結機構により、一対の分割体121’、121”を簡単且つ迅速に組み立て及び分解可能であり、尚且つ、連結した化粧部材120の形態を安定的に維持することができる。
さらに、本実施形態の化粧部材120では、係合孔128内で係合突起128が遊動可能であることにより、2組の連結機構のうち一方の連結機構の係合突起127を係合孔128に挿通した状態で、他方の連結機構の係合突起127を係合孔128に挿通操作すべく一対の分割体121の相対的な姿勢を変位可能である。すなわち、一方の連結機構で一対の分割体同士が部分的に支持された仮組み状態で、一対の分割体の相対的な姿勢を変位させつつ他方の連結機構を操作して、一対の分割体を簡単に連結することができる。
したがって、本実施形態の化粧部材120によれば、簡易な構造の連結機構で一対の分割体121を連結させることにより、化粧部材120を配線・配管材Pに組み付ける際の作業性を大幅に向上させ、迅速且つ簡単に化粧部材120で壁孔Hの周縁を化粧することが可能である。
本実施形態の防火区画壁構造10では、化粧部材120が熱膨張性耐火部材110の端面を被覆した状態で壁材Wの壁面に固定されることにより、熱膨張性耐火部材110が任意の方向に熱膨張したときに壁孔Hから壁表側に抜け出すことを防止することができる。また、熱膨張性耐火部材110の端部の壁表側への膨張が化粧部材120によって少なくとも部分的に規制されるため、中空筒状の本体部111の内径方向への膨張を促進し、配線・配管材Pと本体部内周面111aとの間の空隙をより確実に閉塞することができる。さらに、化粧部材120は、一対の分割体110が互いに組み合わされて覆い部122及び開口部124を形成する。すなわち、該化粧部材120の覆い部122で熱膨張性耐火部材110の端面を被覆することにより、熱膨張性耐火部材110のフランジ部112の輪郭が壁表側に露出することを防止し、防火区画用の壁材Wの見栄えを改善することができる。また、配線・配管材Pが壁孔Hに配設された後であっても、配線・配管材Pの径方向から一対の分割体121を挟み込むように組み合わせて、配線・配管材Pを開口部124内に簡単に配置することができる。したがって、本実施形態の防火区画壁構造10によれば、より確実に防火性能を発揮させた状態で防火区画用の壁材Wに配線・配管用の貫通部を簡単に形成することができる。
(実施例2)
図15〜19は、別実施形態の化粧部材220を示している。実施例2の化粧部材220は、一実施形態の化粧部材120と比べて、連結機構(係合突起227及び係合孔228)の構造が異なる。すなわち、図15及び図16に示すとおり、該化粧部材220は、同一形状の一対の分割体221を2組の連結機構で組み合わせてなり、表面220a側に円形の平面を形成する覆い部222と、該覆い部222の外周縁から裏面220b側に屈曲して延設された側縁部223と、覆い部222の略中央で配線・配管材Pが通過可能な径で開口する開口部224と、各分割体221の外縁近傍に穿設された一対の固定部(ビス孔)226と、を備える。すなわち、実施例2の化粧部材220は、連結機構を除いて実施例1の化粧部材120と共通する構成を有している。なお、実施例1の化粧部材120では、係合突起127が表面120bから突出していないが、図16(c)に示すように、実施例2の化粧部材220では、係合突起227の基部227aが表面220aから突出している。以下、実施例2の連結機構を詳細に説明する。
図17及び図18に示すとおり、一対の分割体221同士が互いに連結する側(すなわち、化粧部材220の分割縁)において、該分割体221は、略中央に半円形状の切り欠き部224aと、該切り欠き部224aの両側で直線状に延びる接合縁部225とを有する。図18(a)において、開口部224の左側の接合縁部225を第1接合縁部225aと定め、右側の接合縁部225を第2接合縁部225bと定める。そして、該分割体221の第1接合縁部225aの略中央には、細幅の係合突起227がその離隔方向に延出するように一体形成されている。係合突起227は、分割体221の覆い部222と同じ板厚を有し、且つ、係合突起227の表面は分割体表面221aと平行に延在している。
実施例2の係合突起227は、(実施例1と異なり)屈曲して分割体表面221aから略垂直に隆起した上で第1接合縁部225aから外方に延びる基端部227aと、該基端部227aから裏面側に屈折して形成された係合段部227bと、該係合段部227bから基端部227aの延設方向(第1接合縁部125aとの離隔方向)に沿って延びる先端部227cと、を備える。
他方、分割体221の第2接合縁部225bに隣接して矩形状の係合孔228が穿設されている。係合孔228は、(対となる分割体221の)係合突起227を挿通可能な形状で構成されている。この係合孔228は、分割体221の第2接合縁部225b中央近傍に穿設され、縦横4辺の周縁によって縁取られている。この周縁のうち接合縁部225側の周縁は係合縁部228aと定められる。この係合縁部228aは、分割体121の外縁の一部をなすように第2接合縁部225bに隣接している。そして、該係合縁部228aは、第2接合縁部225bの端面から僅か後退した位置に配置されている。実施例2の係合縁部228aは、図18(b)に示すように、(実施例1と異なり)分割体表面221aと同じ平面上に配置された細幅片である。また、分割体裏面221bにおいて係合縁228aに対向する側の係合孔228周縁は、他方の分割体221の係合突起227の先端部227cに当接する当接部228bとして定められている。
図19は、連結機構で一対の分割体221を連結した状態を示す部分拡大図である。図19(a)に示すとおり、該連結機構では、一方の分割体221の係合突起227が他方の分割体221の係合孔228に挿通されて、一対の分割体221同士が互いに連結(又は嵌合)されている。この連結状態では、係合突起227が係合孔228を化粧部材220表面220a側から裏面220b側に貫通している。より詳細には、分割体表面221aから高い位置で延びる係合突起227の基端部227aが、係合縁部228a表面を跨ぐように配置されている。そして、係合段部227bが係合孔228を貫通するように表面221a側から裏面221b側に延びている。この係合段部227bは、係合縁部228aに隣接して配置されている。さらに、先端部227cが裏面221b側で係合段部227bから第1接合縁部225aの離隔方向に延び、係合孔228の係合縁部228aの反対側の周縁に位置する当接部228bまで延在している。
実施例2の連結機構では、実施例1と同様に、一方の分割体221の係合突起227が他方の分割体221の係合縁部228a及び裏面220bに係合又は当接することにより、一対の分割体221が互いに分離したり、化粧部材220の表面220aが接合縁部225を境に山折り方向に屈折したりすることが規制される。つまり、覆い部材220の裏面220b側に係合突起227の先端部227cが当接するため、被覆する熱膨張性耐火部材210の膨張の力(壁面からの押圧)に対して強い。
図19(c)は、一対の分割体221の表面が互いに近接する側に傾斜した傾斜姿勢を示している。この傾斜姿勢では、係合段部227bと係合縁部228aとが係合せずに係合突起227が係合孔228を通過可能である。すなわち、当該谷折り状の傾斜姿勢で、傾斜した係合突起227を係合孔228に対して挿通又は離脱方向に移動させて一対の分割体227を連結又は分離可能である。
したがって、本実施形態では、実施例1と同様に、第1及び第2連結機構により、一対の分割体221を簡単且つ迅速に組み立て及び分解可能であり、尚且つ、連結した化粧部材220の形態を安定的に維持することができる。
(実施例3)
図20は、本発明の別実施形態の防火区画壁構造30を示す模式図である。図20の防火区画壁構造30では、実施例1と異なり、壁材W’は中空耐火壁でなく、厚いコンクリート壁である。すなわち、防火区画壁構造30には、壁裏空間が存在せずに、1枚の壁材W’の両壁面が壁表空間に接している。
本実施例の貫通部形成装置300は、壁孔H’に配置された1つの熱膨張性耐火部材310と、その両端を被覆するように両壁面にそれぞれ固定された2つの化粧部材320と、を備える。そして、該貫通部形成装置300が配線・配管材Pを貫通配置するための貫通部を壁材W’に形成して防火区画壁構造30を構築している。実施例3の熱膨張性耐火部材310は、中空筒状の本体部311からなり、フランジ部や閉鎖部が設けられていない。該本体部311は、内周面311aと外周面311bとを有し、該内周面311aの内側に配線・配管材Pのための貫通部を定める。他方、化粧部材320は、実施例1の化粧部材120と同じものであり、その説明を省略する。
図21は、火災が生じたときに壁孔H’(又は貫通部)が閉鎖された防火区画壁構造30’の模式図である。図21に示すとおり、この防火区画壁構造30’では、一方側の火災空間から熱膨張性耐火部材310が加熱され、本体部311の一方側が部分的に膨張して壁孔Hを閉塞している。なお、この防火区画壁構造30’は、一方側(図21の左側)の空間のみに火災が生じた場合を想定したものであり、一方側で発生した火炎、煙、有毒ガスが他方側(図21の右側)の空間に流入することが阻止されている。
より詳細には、防火区画壁構造30’では、火災空間側で配線・配管材Pの被覆材の一部が燃えて金属製の芯線P’が部分的に露出している。すなわち、熱膨張性耐火部材310の他方側では、配線・配管材Pの被覆材が燃焼していない。そして、熱膨張性耐火部材310の一方側において、本体部311の内周面311aが径方向内側に膨張し、部分的に露出した芯線P’の外面を密封状態で包囲している。本実施例では、一方側からの熱が熱膨張性耐火部材310全体に完全に伝達されておらず、本体部310の他端側が膨張せずにその原形を留めている。また、火災空間の壁表側の熱膨張性耐火部材310の一端面が加熱されて壁表側に熱膨張している。そして、当初隙間S内で本体部311端面が膨張し、その膨張した本体部311端面が一方側の化粧部材320の裏面320bに当接している。
該防火区画壁構造30’では、一方側の化粧部材320により熱膨張性耐火部材310の壁表側への膨張が規制されている。そして、この熱膨張によって熱膨張性耐火部材310が壁孔H’内で他端側に押し出される。これに対し、熱膨張性耐火部材320の他端側には、他方の化粧部材320が固定されており、熱膨張性耐火部材320の他端面が他方の化粧部材320の裏面320bに当接している。この他方側の化粧部材320は、熱膨張性耐火部材310が他方側の壁表空間に壁孔H’から抜け出ることを規制している。よって、図21のように熱膨張性耐火部材310が仮に押し出されても、直ちに壁面からの突出を抑えるため、狭い壁孔H’内に熱膨張性耐火部材110の大部分を留めることができ、壁孔H内で効率よく延焼防止を行うことができる。したがって、本実施例3の貫通部形成装置300によれば、より確実に防火性能を発揮させた状態で防火区画用の壁材W’に配線・配管用の貫通部を簡単に形成することができる。
(実施例4)
上記実施例の連結機構では、係合突起が表面側から裏面側に貫通するように形成されているが、連結機構を表裏逆に構成することもできる。例えば、図22に示した覆い部材420の分割体421は、実施例1の覆い部材120の分割体121と異なり、表裏反転した連結機構(係合突起427及び係合孔428)を備える。つまり、該連結機構は、一方の分割体421の接合縁部425aから延出された係合突起427と、他方の分割体421の接合縁部425bの内側で係合突起427に対向する位置に穿設され、該係合突起427を裏面421a側から表面421a側に挿通可能な係合孔428とからなる。係合突起427は、接合縁部425aから外方に延びる基端部427aと、該基端部427aから表面421a側に屈折形成された係合段部427bと、該係合段部427bから接合縁部425aの離隔方向に延びる先端部427cとを有する。他方、係合孔428は、接合縁部425b側の周縁に係合縁部428bを有する。この係合縁部428aは、図22に示すように、分割体表面421aから所定深さで凸設された細幅片であり、分割体表面421aと係合縁部428a表面とが異なる高さに配置されている。なお、本実施例では、組み立てた覆い部材420が、(実施例1、2とは異なり)谷折り方向に屈折することが規制されている。つまり、覆い部材420の表面420b側に係合突起427の先端部427cが当接するため、壁表側からの押圧力に対して強い。したがって、設置状況に応じて、覆い部材120、220、420を使い分け可能である。
(変形例)
本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施例1〜4に限定されない。例えば、上記実施形態では、化粧部材の平面形状、開口部形状、壁孔及び熱膨張性耐火部材の本体部の外周形状が全て正円形であるが、これらは長円や多角形等の他の形状であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、実施形態では、化粧部材は防火区画壁構造を構築することに用いられたが、熱膨張性耐火部材を省略し、壁孔周縁の化粧だけを目的として使用されてもよい。さらに、上記実施形態では、固定部はビス孔であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、側縁部を省略し、覆い部の裏面に両面テープ等を貼付け、壁面や熱膨張性耐火部材のフランジ部に化粧部材を接着してもよい。そして、本実施形態では、化粧部材に1つの開口部が形成されているが、複数の開口部を形成してもよい。また、上記実施形態(実施例1)の防火区画壁構造では、中空の耐火壁の両壁材Wに貫通部形成装置が設置されたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の防火区画壁構造は、中空の耐火壁の一方の壁材Wのみに貫通部形成装置を設置した構造も含んでいる。このような形態でも、火災時に一方の壁材Wの壁孔Hが閉塞されることで、中空壁を挟んだ両空間を隔絶することができるので、同様の効果を発揮できる。
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。