<実施の形態1>
以下、本発明の第1の実施の形態(実施の形態1という)に係る印刷機1について、図1乃至図8を参照しながら説明する。なお、図1は、本発明の実施の形態1に係る印刷機1を側面から見た概略側面図である。
印刷機1は、例えば、回路基板等の被印刷物5上に所定の電子回路パターンを印刷するために用いられるものである。
実施の形態1に係る印刷機1は、図1に示すような構成であり、第1のロール2と、第2のロール3と、第1のロール2上および第2のロール3上を走行する無端状の凹版ベルト4と、第1のロール2に対して被印刷物5を挟んで対向する圧胴6とを備えており、印刷動作中に、第1のロール2に位置する凹版ベルト4でもって被印刷物5上にペースト10を印刷する印刷機であって、凹版ベルト4の長さを調整するための調整手段8を備えている。
第2の回転軸3aを有する第2のロール3は、第1のロール2に対向して設けられている。また、第2のロール3は、第2の回転軸3aが第1のロール2の第1の回転軸2aにほぼ平行に位置するように設けられている。また、ほぼ平行とは、印刷機1として第1のロール2および第2のロール3が互いのロールの回転等に支障を与えないように第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとが配置されている状態であり、また、第1の回転軸2aおよび第2の回転軸3aが上下方向に同じ位置にある場合も、また、異なる位置にある場合も含まれている。
また、無端状の凹版ベルト4は、外周面に印刷パターンとなる凹部が形成された無端状のベルトであり、凹版部4bを有するグラビア印刷ベルトである。以下では、凹版ベルト4は、説明の便宜上、グラビア印刷ベルト4として、また、印刷機1は、グラビア印刷機1として説明する。また、印刷機1は、グラビア印刷ベルト4を用いたグラビア印刷機1である。
第1のロール2は、第1の回転軸2aが回転駆動部(図示せず)に連結された駆動ロールであり、被印刷物5に対して印刷位置を決めるものである。また、第2のロール3は、第2の回転軸3aが回転自在になるように設けられた回転自在ロールである。
第1のロール2および第2のロール3は、図3および図4に示すように、円柱状であり、例えば、アルミニウム、鉄または銅等の金属材料あるいは樹脂材料からなる。
第1のロール2は、両側の側面には側面板2dを備えており、両側の側面板2dの中央部に第1の回転軸2aが設けられている。なお、側面板2dは、グラビア印刷ベルト4が走行中に第1のロール2から外れるのを抑制することができる。
また、第2のロール3は、図4に示すように、第1のロール2と同様に両側の側面には側面板3dが設けられており、両側の側面板3dの中央部に第2の回転軸3aが設けられている。なお、側面板3dは、グラビア印刷ベルト4が走行中に第2のロール3から外れるのを抑制することができる。
第1のロール2の外径(直径)は、被印刷物5の寸法等に応じて適宜設定されるが、例えば、100(mm)〜300(mm)である。また、第2のロールの外径(直径)は、例えば、30(mm)〜100(mm)である。
調整手段8によって、第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとの間の距離を調整する際
に、グラビア印刷ベルト4は、第1のロール2または第2のロール3上においてベルトすべりが発生する虞があり、特に、第1のロール2は、印刷位置を決めるロールであり、印刷機1において、この第1のロール2上でベルトすべりが発生することは好ましくない。
しかしながら、たとえ、グラビア印刷ベルト4でベルトすべりが発生しても、グラビア印刷機1は、ベルトすべりを回転自在の第2のロール上で起こさせるために、第2のロール3の外径(直径)を第1のロールの外径(直径)よりも小さくして、第2のロール3とグラビア印刷ベルト4との接触面積を第1のロール2とグラビア印刷ベルト4との接触面積よりも小さくすることによって、第1のロール2上でのベルトすべりの発生を抑制している。このように、グラビア印刷機1は、たとえ、ベルトすべりが発生しても、第2のロール3上でベルトすべりが起こるようにしている。
したがって、第2のロール3の外径(直径)は、第1のロール2の外径(直径)よりも小さくなるように設定することが好ましい。すなわち、第1のロール2は、外径(直径)を大きくすることによってグラビア印刷ベルト4との接触面積を大きくして、グラビア印刷ベルト4との摩擦が大きくなるように設定されている。また、第2のロール3は、第1のロール2に近接して配置するほどにグラビア印刷4との接触面積が小さくなり、第1のロール2上でのベルトすべりの発生を抑制する効果を大きくすることができる。
第2のロール3は、図4で示すような構成であり、第2の回転軸3aが軸支持体3bの内部で回転自在になっているが、これに限らない。第2のロール3は、図10に示すように、第2の回転軸3aが固定されて、固定された第2の回転軸3aに対して第2のロール3のロール部が回転自在となっていてもよい。
グラビア印刷ベルト4は、外周面に印刷パターンとなるグラビア印刷版4aが形成されており、印刷動作中に、第1のロール2および第2のロール3上を循環して走行する。すなわち、第1のロール2および第2のロール3が矢印の方向に回転することによって、グラビア印刷ベルト4は、印刷動作中に第1のロール2および第2のロール3上を循環して走行する。
これによって、グラビア印刷機1は、被印刷物5がキャリア11に保持されており、この被印刷物5上にグラビア印刷ベルト4でもってペースト10で印刷パターンを印刷する。なお、被印刷物5は、図1に示すように、キャリア11に保持されて矢印の方向に搬送される。すなわち、グラビア印刷ベルト4となる凹版ベルト4は、第1のロール2上でペースト10が凹版ベルト4に供給されて、凹部にペースト10が付与される。そして、印刷機1は、ペーストが付与された凹版ベルト4でもって被印刷物5上に印刷パターンを印刷する。
グラビア印刷ベルト4は、樹脂からなり、外周面にグラビア印刷版4aは形成されており、柔軟性を有していることが好ましい。
また、グラビア印刷ベルト4は、図1(b)に示すように、第1の層4cが内周側に設けられており、第2の層4dが第1の層4cの外周側に設けられており、これらによって2層構造になっている。そして、第2の層4dは、凹版部4bが設けられている。第1の層4cは、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムまたは天然ゴム等のゴム体であり、延伸性、柔軟性または弾性復元力等を有していることが好ましい。また、第2の層4dは、グラビア印刷版4aの凹部版4bが設けられており、例えば、ポリジエン系の樹脂、天然ゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムまたはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体からなるニトリルゴム等からなり、柔軟性を有している。
グラビア印刷ベルト4は、グラビア印刷版4aが形成されており、このグラビア印刷版4aは、周知のレーザ加工法等によって、被印刷物5に印刷すべき電子回路パターンに対応した凹版部4bが樹脂層の外周部に刻印されている。グラビア印刷ベルト4は、凹版部4bがグラビア印刷版4aの版部、すなわち、印刷パターンとなり、グラビア印刷機1は、被印刷物5上にグラビア印刷版4aの凹版部4bに応じた電子回路パターンを印刷することができる。すなわち、グラビア印刷機1は、凹版部4bにペーストが付与されて、被印刷物5上に印刷パターンを形成する。
また、グラビア印刷機1は、グラビア印刷ベルト4が柔軟性を有しているため、回路基板のような硬い被印刷物5だけではなく、表面に凹凸を有するような被印刷物5に対しても適用することができる。
また、被印刷物5は、図1および図2に示すように、キャリア11に保持された状態にある。グラビア印刷機1は、被印刷物5が第1のロール2と圧胴6との間を通過する際に、第1のロール2に位置するグラビア印刷ベルト4によって被印刷物5上にペースト10で印刷パターンを印刷する。なお、図2は、被印刷物5上にペースト10を印刷してペースト膜10aが設けられた状態を示している。このペースト膜10aが印刷パターンとなる。
被印刷物5は、例えば、回路基板またはセラミックグリーンシートである。回路基板は、例えば、ガラスエポキシまたはセラミックを絶縁層とする基板等である。被印刷物5は、グラビア印刷機1によってペースト10を印刷できるものであればよく、特に限定はされない。
ペースト10は、図1に示すように、タンク9から第1のロール2上でグラビア印刷ベルト4に供給され、グラビア印刷ベルト4の凹版部4bに付与される。すなわち、第1のロール2上において、ペースト10がグラビア印刷ベルト4のグラビア印刷版4aの凹版部4bに付与される。そして、凹版部4bにペースト10が付与されたグラビア印刷ベルト4でもって被印刷物5上に印刷パターンを印刷する。また、グラビア印刷版4aの凹版部4bの外周面上の余分なペースト10は、ドクターブレード7によって掻き取られる。
また、ペースト10は、導電性を有しており、導体材料(金属)にバインダ、溶剤および分散剤等を混練することで作製される。導体材料としては、例えば、Ni、Cu、Ag、PdまたはAu等の金属あるいはこれらの金属の一種以上を含む、例えば、Ag−Pd合金等の合金が挙げられる。
グラビア印刷機1は、図1に示すように、グラビア印刷ベルト4の長さを調整するための調整手段8を備えている。調整手段8は、例えば、第1のロール2の第1の回転軸2aと第2のロール3の第2の回転軸3aとの間の距離を大きくまたは小さくするものである。
したがって、調整手段8は、第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとの間の距離を変えることによってグラビア印刷ベルト4に所定の張力を付与してグラビア印刷ベルト4の長さを調整することができる。調整手段8の詳細については、後述する。
また、グラビア印刷機1は、例えば、被印刷物5の所定の測定点の位置情報を取得するための測定用カメラ13と、測定用カメラ13で得られた位置情報に基づいて被印刷物5の変形量を算出するための変形量算出部14と、被印刷物5の変形量に応じて、第1のロール2の第1の回転軸2aと第2のロール3の第2の回転軸3aとの間の距離を調整する
ための移動量調整部15とを備えている。これらの詳細については、後述する。
ここで、調整手段8の構成およびその調整手段8について以下に説明する。また、調整手段8を用いて第2の回転軸3aを移動させる移動方法について、図5および図6を参照しながら以下に説明する。
実施の形態1では、調整手段8は、第2のロール3に設けられており、第1の回転軸2aに対して第2の回転軸3aを移動させる構成である。これによって、調整手段8は、第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとの間の距離を変えることによってグラビア印刷ベルト4の長さを調整することができる。
また、グラビア印刷ベルト4は、被印刷物5の寸法が長くなったり、または、短くなったりと長さが変化することを考慮して、第1のロール2と第2のロール3との間の距離を調整することで一定の張力をグラビア印刷ベルト4に付与することによって、ベルトの長さが所定の長さになるように調整されている。
そして、グラビア印刷ベルト4は、図1に示すように、一定の張力が付与された所定の長さでもって第1のロール2上および第2のロール3上に配設されている。すなわち、グラビア印刷ベルト4は、第1のロール2と第2のロール3との間の距離を調整することで所定の長さに設定されており、この所定の長さに設定されたグラビア印刷ベルト4は、調整手段8でベルトの長さを長くしたり、または、短くしたりして調整される。
したがって、グラビア印刷機1は、グラビア印刷ベルト4の長さを調整することによって、グラビア印刷ベルト4のグラビア印刷版4aの寸法が調整されることになり、被印刷物5の寸法に応じて最適な位置にペースト10で印刷パターンを印刷することができる。
まず、第1のロール2aおよび第2のロール3aについて、図5を参照しながら以下に説明する。
第1のロール2は、図5に示すように、第1の回転軸2aが軸支持体2bに支持されている。そして、軸支持体2bは保持体2cに保持されており、この保持体2cは固定されている。すなわち、第1のロール2は、第1の回転軸2aが軸支持体2bを介して保持体2cに固定されており、第1の回転軸2aが回転駆動部(図示せず)に連結されて回転駆動する。
また、第2のロール3は、図5に示すように、第2の回転軸3aが軸支持体3bに支持されている。そして、軸支持体3bは保持体3cに保持されており、この保持体3cは、移動可能なスライダー8c上に固定されている。すなわち、第2のロール3は、第2の回転軸3aが軸支持体3bを介して保持体3cに固定されており、さらに、保持体3cがスライダー8c上に固定されており、軸支持体3bで第2の回転軸3aが回転自在に回転する。第2のロール3は、図5に示すように、スライダー8cのX方向の移動に伴って、第2の回転軸3aがX方向に移動する。
つぎに、グラビア印刷ベルト4の長さを調整するための調整手段8について、図6を参照しながら以下に説明する。なお、実施形態の1では、調整手段8は、第2のロール3の第2の回転軸3aがX方向に移動するように設けられている場合を例示している。
調整手段8は、図6に示すように、スライダーステージ8aと、ガイドレール8bと、スライダー8cと、スライダースクリュー8dと、モータ8eとを備えて構成されている。
スライダーステージ8aは、図6に示すように、上面にガイドレール8bがX方向に延びるように設けられている。
スライダー8cは、図6に示すように、スライダースクリュー8dと螺合し、ガイドレール8bにガイドされており、このガイドレール8bにガイドされてX方向にスライド自在に移動することができる。なお、スライダースクリュー8dは、スライダーステージ8a上の軸受8fによって2箇所で支持されている。
モータ8eは、スライダースクリュー8dと連動しており、スライダーステージ8aの上面に設けられている。モータ8eは、例えば、ステッピングモータである。モータ8eは、移動量調整部15から送られてくる駆動パルスの数に基づいてモータ8eの回転軸が回転するように設けられている。
また、モータ8eは、スライダースクリュー8dに連動しており、モータ8eの回転軸の回転に伴ってスライダースクリュー8dが回転するように設けられている。また、スライダースクリュー8dおよびモータ8eは、図6に示すように、スライダー8cの片側に設けられているが、両側に設けられていてもよい。スライダースクリュー8dおよびモータ8eは、スライダー8cの両側に設けられることによって、スライダー8cを安定して移動させることができる。
したがって、スライダー8cは、モータ8eの回転軸の回転に伴って、連動しているスライダースクリュー8dが回転することによって、ガイドレール8bにガイドされた状態でスライダーステージ8a上をX方向に移動することができる。
これによって、スライダー8cは、軸支持体3bを介して第2の回転軸3aが保持体3cに保持されて固定されているため、第1の回転軸2aに対してスライダーステージ8a上をX方向に移動することによって、第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとの間の距離を調整することができる。
スライダー8cは、第1の回転軸2aの中心と第2の回転軸3aの中心とを結ぶ線上を平行に移動するように設けられているが、これに限らない。スライダー8cの移動する方向は、グラビア印刷ベルト4の長さを調整することができる方向であれば、どの方向であってもよく、任意の方向に設定することができる。
また、グラビア印刷ベルト4は、第1のロール2と第2のロール3との間で、すなわち、第1のロール2および第3のロール3から拘束されていない位置で伸び縮みしやすい。グラビア印刷ベルト4は、グラビア印刷版4aが第1のロール2と第2のロールとの間に位置している際に、第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとの間の距離を大きくまたは小さくしてグラビア印刷ベルト4の長さを調整することが好ましい。
スライダー8cは、第1の回転軸2aの中心と第2の回転軸3aの中心とを結ぶ線上を平行に移動することが好ましい。これによって、グラビア印刷機1は、第1の回転軸2aの中心と第2の回転軸3aの中心とを結ぶ線を中心にしてグラビア印刷ベルト4の長さを均等に調整することができる。
ここでは、グラビア印刷機1は、第1のロール2aに設けられる保持体2cを固定して、スライダー8cで第2のロール3の第2の回転軸3aを移動させて、グラビア印刷ベルト4の長さを調整したが、これに限らない。
グラビア印刷機1は、第2のロール3に設けられる保持体3cを固定して、第1のロール2aに設けられる保持体2cが移動可能なスライダー8c上に固定されて、スライダー8cで第1のロール2の第1の回転軸2aを移動させて、グラビア印刷ベルト4のベルトの長さを調整してもよい。すなわち、グラビア印刷機1は、第1のロール2に調整手段8を設けてもよい。
これによって、保持体2cをスライダー8cに固定して、このスライダー8cが第2の回転軸3aに対してスライダーステージ8a上をX方向に移動することによって、第2の回転軸3aと第1の回転軸2aとの間の距離を調整することができる。
また、グラビア印刷機1は、調整手段8を第1のロール2および第2のロール3の両方に設けて、グラビア印刷ベルト4の長さを調整してもよい。
ここで、グラビア印刷ベルト4の長さを調整する方法およびグラビア印刷機1を用いた印刷方法について、図7および図8を参照しながら以下に説明する。
図7は、グラビア印刷ベルト4の長さを調整する調整方法のフローチャートであり、図8は、図1に示すグラビア印刷機1を用いて被印刷物5上にペースト10を印刷する状態を説明する説明図である。なお、図8は、タンク9、第1のロール2の下部に配置されている圧胴4等を除いて示している。
被印刷物5は、例えば、キャリア11に保持されて、図8に矢印で示す方向に搬送されており、グラビア印刷機1は、被印刷物5が第1のロール2と圧胴6との間を通過する際に、グラビア印刷ベルト4に形成されたグラビア印刷版4aによってペースト10で印刷パターンを被印刷物5上に印刷する。
また、被印刷物5は、製造工程上の寸法ばらつきあるいはペースト10を印刷する前の熱履歴で設計時点の寸法とは異なった寸法になることがあるが、グラビア印刷機1は、グラビア印刷ベルト4の長さを調整することによって被印刷物5の寸法に応じてペースト10で印刷パターンを印刷することができる。すなわち、グラビア印刷機1は、調整手段8でもって被印刷物5に印刷されるグラビア印刷版4aの部分を被印刷物5の寸法に応じて調整することができる。
また、被印刷物5は、図8に示すように、長手方向が搬送方向になるように配置されている。これによって、グラビア印刷機1は、長手方向に寸法がばらついたまたは変化した被印刷物5の寸法に対して、グラビア印刷ベルト4の長さを調整して、被印刷物5上にペースト10を印刷することができる。なお、以下の説明は、被印刷物5がペースト10の印刷前に熱履歴を受けた場合を例にしている。
グラビア印刷機1は、図7および図8に示すように、第2の回転軸3aを移動させてグラビア印刷ベルト4の長さを調整するために、被印刷物5の変形量に応じて、第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとの間の距離を調整するための移動量調整部15を備えている。被印刷物5の変形量は、図7および図8に示すように、例えば、測定用カメラ13aおよび13bで被印刷物5の所定の測定点(x1、x2)の位置情報を取得して、測定用カメラ13a、13bで得られた位置情報に基づいて変形量算出部14で算出される。
測定用カメラ13aおよび13bは、図7および図8に示すように、被印刷物5上にペースト10を印刷する前に、被印刷物5の所定の2点(x1、x2)の位置座標を測定して、その位置座標信号を変形量算出部14に出力する。
変形量算出部14は、図7および図8に示すように、測定カメラ13aおよび13bから出力された位置座標信号に基づいて、印刷前の被印刷物5の2点(x1、x2)間の寸法X1を算出する。また、変形量算出部14は、熱履歴を受けていない被印刷物5の設計時の2点(x1、x2)間の寸法X2が予めメモリされており、X1とX2との差である変形量ΔX(=X1−X2)を算出する。この算出された変形量ΔXは、熱履歴によって被印刷物5が変形した変形量になる。
そして、この変形量ΔXに基づく変形量信号が、変形量算出部14から移動量調整部15に出力される。なお、印刷前の被印刷物5の寸法は、設計時の寸法よりも伸びる場合も縮む場合もあり、変形量ΔXは、プラスまたはマイナスの値になる。
移動量調整部15は、変形量信号が変形量算出部14から入力される。また、移動量調整部15は、被印刷物5の変形量ΔXとグラビア印刷ベルト4の長さとの関係およびグラビア印刷ベルト4の長さとスライダー8cの移動量との関係が予めメモリされている。さらに、移動量調整部15は、モータ8eの回転量を制御する機能を有しており、例えば、駆動パルスの数に基づいてモータ8eの回転軸を回転させる機能を有している。すなわち、移動量調整部15は、変形量ΔXに応じてモータ8eを介してスライダー8cを移動させるための回転量制御信号を作成する。回転量制御信号は、例えば、モータ8eの回転量を制御するための駆動パルスであり、移動量調整部15からモータ8eに出力される。
モータ8eは、移動量調整部15からの回転量制御信号に応じて、回転軸が回転してスライダー8cを移動させる。これによって、グラビア印刷機1は、スライダー8cの移動に伴って、第2の回転軸3aが移動することによってグラビア印刷ベルト4の長さを調整することができる。
したがって、グラビア印刷機1は、被印刷物5の変形量ΔXが算出された後に、被印刷物5に対応したグラビア印刷版4aの部分が被印刷物5の変形量ΔXに応じた寸法となるように、グラビア印刷ベルト4の長さを調整してペースト10を印刷する。
移動量調整部15は、変形量ΔXがプラスの値を示す場合には、グラビア印刷ベルト4の長さが被印刷物5の変形量ΔXに応じたベルトの長さになるように、モータ8eの回転軸を回転させて図8に示すXa方向にスライダー8cを移動させる。
また、移動量調整部15は、変形量ΔXがマイナスの値を示す場合には、グラビア印刷ベルト4の長さが被印刷物5の変形量ΔXに応じたベルトの長さになるように、モータ8eの回転軸を回転させて図8に示すXb方向にスライダー8cを移動させる。
このように、第2のロール2に設けられた移動手段8によってスライダー8cを移動させることによって、グラビア印刷機1は、グラビア印刷ベルト4のベルトの長さを被印刷物5の熱履歴による変形量ΔXに応じて調整することができる。これによって、グラビア印刷機1は、被印刷物5の変形量ΔXに応じてグラビア印刷ベルト4の長さが調整されたグラビア印刷版4aでもって被印刷物5上にペースト10で印刷パターンを印刷することができる。
グラビア印刷機1では、スライダー8cを移動させることによって、第1のロール2および第2のロール3上を走行するブラビア印刷ベルト4の長さを調整することができる。これによって、グラビア印刷機1は、製造工程上の寸法ばらつきがある被印刷物3あるいは熱履歴によって変形量の異なる被印刷物5に対して、被印刷物5毎にグラビア印刷ベルト4の長さを調整して最適な位置にペースト10を印刷することができる。したがって、グラビア印刷機1は、被印刷物5へのペースト10の印刷精度を向上させることができる
。
また、グラビア印刷機1は、例えば、積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品を製造するために用いることができる。すなわち、グラビア印刷機1は、図12に示すように、積層セラミック電子部品に備える積層構造物の一部をなすパターニングされた層となるべきペース膜10aを被印刷物5上にグラビア印刷によってペースト10を印刷するために用いることができる。
本発明は上述の第1の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。以下、他の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態に係るグラビア印刷機1および第1のロール2および第2のロール3のうち、第1の実施の形態に係るグラビア印刷機1、第1のロール2および第2のロール3と同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
<実施の形態2>
以下、本発明の第2の実施の形態(実施の形態2という)に係るグラビア印刷機1Aおよびグラビア印刷機1Bについて、図9および図10を参照しながら説明する。図9は、グラビア印刷機1Aおよびグラビア印刷機1Bの構成の一部、例えば、測定用カメラ13、変形量算出部14、移動量調整部15等を省略して示している。
実施の形態2では、グラビア印刷ベルト4の長さを調整する調整手段8Aの構成が、実施の形態1のグラビア印刷機1の調整手段8とは異なっている。また、実施の形態2では、第1のロール2の保持体2cおよび第2のロール3の保持体3cはそれぞれ固定されている。
また、グラビア印刷機1Aおよびグラビア印刷機1Bでは、グラビア印刷ベルト4は、被印刷物5の寸法が伸びたり縮んだりすることを考慮して、第1のロール2と第2のロール3との距離を調整して一定の張力を付与することでベルトの長さが所定の長さに調整されている。そして、グラビア印刷ベルト4は、所定の長さでもって第1のロール2および第2のロール3上に配設されている。すなわち、グラビア印刷ベルト4は、第1のロール2と第2のロール3とで所定の長さに設定されており、調整手段8Aによって所定の長さに設定されたグラビア印刷ベルト4の長さを長くしたりまたは短くしたりして調整される。
実施の形態2に係るグラビア印刷機1Aは、図9(a)に示すような構成であり、第1のロール2と第2のロール3との間に、グラビア印刷ベルト4の内周面に当接して設けられた第3の回転軸を有する第4のロール12を有している。
そして、第4のロール12は、調整手段8Aによって、グラビア印刷ベルト4が第1のロール2または第2のロール3から離れる方向または第1のロール2または第2のロール3に巻き付く方向に移動する。すなわち、第4のロール12は、図9(a)に示すように、Xcの方向またはXdの方向に移動する。
したがって、第4のロール12は、Xcの方向またはXdの方向に移動することによって、第4の回転軸12aと第1の回転軸2aとの距離または第4の回転軸12aと第2の回転軸3aとの距離を大きくまたは小さくするで、グラビア印刷ベルト4の長さを調整することができる。
調整手段8Aは、図10に示すように、スライダースクリュー8d1とモータ8e1とを備えて構成されている。スライダースクリュー8d1は、第3のロール12の回転軸1
2aが軸支持体12bを介して保持されている保持体12cに連動している。保持体12cは、スライダースクュー8d1と螺合しており、実施の形態1のスライダー8cと同様な動作で第4のロール12を移動させることができる。
実施の形態1と同様に、モータ8e1は、スライダースクュー8d1に連動しており、移動量調整部15からの回転量制御信号に応じて回転軸が回転して、図9に示すXcの方向またはXdの方向に保持体12cを移動させることができる。すなわち、調整手段8Aは、被印刷物5の変形量ΔXに応じて、Xcの方向またはXdの方向に第3のロール12を移動させることができる。
これによって、グラビア印刷機1Aは、調整手段8Aによって、第4の回転軸12aと第1の回転軸2aとの距離または第4の回転軸12aと第2の回転軸3aとの間の距離を大きくまたは小さくすることができる。したがって、グラビア印刷機1Aは、調整手段8Aによってグラビア印刷ベルト4の長さを調整することができる。
また、調整手段8Aは、第4の回転軸12aの両側に設けることによって安定的に第4のロール12を移動させることができる。
また、実施の形態2に係るグラビア印刷機1Bは、図9(b)に示すような構成であり、第4のロール12の配置が、図9(a)とは異なっている。すなわち、第1のロール2と第2のロール3との間に、グラビア印刷ベルト4の外周面に当接して設けられた第4の回転軸12aを有する第4のロール12を有している。
そして、第4のロール12は、調整手段8Aによって、グラビア印刷ベルト4が第1のロール2または第2のロール3から離れる方向または第1のロール2または第2のロール3に巻き付く方向に移動する。すなわち、第4のロール12は、図9(b)に示すように、Xcの方向またはXdの方向に移動する。
したがって、第4のロール12は、Xcの方向またはXdの方向に移動することによって、第4の回転軸12aと第1の回転軸2aとの距離または第4の回転軸12aと第2の回転軸3aとの距離を大きくまたは小さくするので、グラビア印刷ベルト4の長さを調整することができる。
また、第4のロール12は、図9に示すように、第1のロール2と第2のロール3との間に設けられているが、これに限らない。第4のロール12は、第1のロール2と第2のロール3との間に位置しているグラビア印刷ベルト4のどの位置に設けられていてもよい。
また、第4のロール12の外径(直径)は、第1のロール2上でのベルトすべりを抑制するために、第1のロール2の外径(直径)よりも小さくなるように設定することが好ましい。
<実施の形態3>
以下、本発明の第3の実施の形態(実施の形態3という)に係る印刷機20について、図14乃至図17を参照しながら説明する。
実施の形態3に係る印刷機20は、図14に示すような構成であり、第1のロール2と、第1のロールに対向する第2のロール3と、第1のロールに対向する第3のロール30と、第1のロール2上および第2のロール3上を循環して走行する無端状の凸版ベルト40と、第3のロール30に対して被印刷物5を挟んで対向する圧胴6とを備えており、第
1のロール2と第3のロール30との間で、凸版ベルト40の凸状部40cで印刷パターン用塗膜の非印刷パターン部10cを取り除いて第3のロール30の外表面に印刷パターンを設けて、印刷パターンが設けられた第3のロール30でもって印刷パターンを被印刷物上に印刷する印刷機20であって、凸版ベルト40の長さを調整するための調整手段8を備えている。なお、調整手段8は、実施の形態1に係る印刷機1で用いられているものと同じである。
第2の回転軸3aを有する第2のロール3は、第1のロール2に対向して設けられている。また、第2のロール3は、第2の回転軸3aが第1のロール2の第1の回転軸2aにほぼ平行に位置するように設けられている。同様に、第3のロール30の回転軸30aも第1のロール2aにほぼ平行に位置するように設けられている。
また、ほぼ平行とは、印刷機1として第1のロール2および第2のロール3が互いのロールの回転等に支障を与えないように第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとが配置されている状態であり、また、第1の回転軸2aおよび第2の回転軸3aが上下方向に同じ位置にある場合も、また、異なる位置にある場合も含まれている。同様に、第1のロール2および第3のロール30が互いのロールの回転等に支障を与えないように第1の回転軸2aと第3の回転軸30aとが配置されている状態であり、また、第1の回転軸2aおよび第3の回転軸30aが上下方向に同じ位置にある場合も、また、異なる位置にある場合も含まれている。
実施の形態1に係るグラビア印刷機1では、外周面に印刷パターンとなる凹部が形成された無端状の凹版ベルト4を用いて、この凹版ベルト4でもって被印刷物5上に印刷パターンを印刷している。一方、実施の形態3に係る印刷機20では、外周面に凸部が形成された無端状の凸版ベルト40が用いられており、この凸版ベルト40で第3のロール30に形成された印刷パターン用塗膜10bの非印刷パターン部10cを取り除いて、第3のロール30の外周面に印刷パターンを設けて、この第3のロール30でもって被印刷物5上に印刷パターンを印刷している。第3のロール30は、外表面に設けられた印刷パターンを被印刷物5上に転写する。なお、非印刷パターン部10cは、印刷パターンを形成する上で印刷パターンにとって不要な部分をいう。
第1のロール2は、第1の回転軸2aが回転駆動部(図示せず)に連結された駆動ロールである。また、第2のロール3は、第2の回転軸3aが回転自在になるように設けられた回転自在ロールである。第3のロール30は、第1のロール2に近接して配置されており、外表面に設けられた印刷パターンを被印刷物5上に転写(印刷)する転写ロールである。また、第3のロール30は、塗工ヘッド16からペースト10が塗布されて外表面に印刷パターン用塗膜10bが形成されて、凸版ベルト40で非印刷パターン部10cが取り除かれて外表面に印刷パターンが形成されるロールである。
第3のロール30は、外周面に塗工ヘッド16によってペースト10が塗布されて、印刷パターンを設けるための印刷パターン用塗膜10bが形成される。この第3のロール30は、固定された塗工ヘッド16に対して外周面が回転することで、連続した印刷パターン用塗膜10bが外周面に形成される。また、印刷パターン用塗膜10bの膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.3(μm)〜2(μm)である。
凸版ベルト40は、外周面に凸状部40cが形成された無端状のベルトであり、印刷動作中に、第1のロール2上および第2のロール3上を循環して走行するとともに、第1のロール2と第3のロール30との間を走行する。そして、第1のロール2と第3のロール30との間を走行する際に、凸版ベルト40は、図15に示すように、第3のロール30に形成された印刷パターン用塗膜10bのうちの非印刷パターン部10cを凸状部40c
でもって取り除くことによって、第3のロール30の外表面に所定の印刷パターンを設けることができる。すなわち、凸版ベルト40は、印刷パターン用塗膜10bを印刷パターンに対応するように凸状部40cでもって非印刷パターン部10cを掻き出して所定の印刷パターンを第3のロール30の外表面に形成する。
このように、凸版ベルト40の凸状部40cは、印刷パターン用塗膜10bから非印刷パターン部10cを取り除く機能を有している。したがって、印刷パターン用塗膜10bのうち非印刷パターン部10cを取り除いた残りの部分が被印刷物5上に印刷されるべき印刷パターンとなり、印刷パターン用塗膜10bは、非印刷パターン部10cが凸版ベルト40の凸状部40cを用いて取り除かれることによって印刷パターンとなる。
したがって、第3のロール30は、外周面に所定の印刷パターンが設けられることになり、この第3のロール30に設けられた所定の印刷パターンを被印刷物5上に印刷する。すなわち、第3のロール30は、外表面に設けられた印刷パターンを被印刷物5上に転写する。
第3のロール30は、第1のロール2および第2のロール3と同様に、円柱状であり、例えば、アルミニウム、鉄または銅等の金属材料あるいは樹脂材料からなり、また、外周面にはゴム状体が設けられており、このゴム状体の外表面に印刷パターン用塗膜10bが形成される。ゴム状体は、例えば、天然ゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムまたはニトリルゴム等であり、延伸性、柔軟性または弾性復元性等を有している。また、ゴム状体は、ペーストまたは溶剤等に対する耐性を有していることが好ましい。また、第3のロール30の外径(直径)は、被印刷物5の寸法等に応じて適宜設定されるが、例えば、100(mm)〜300(mm)である。
凸版ベルト40は、図14(b)に示すように、例えば、第1の層40aと第2の層40bと含んで構成されている。また、無端状の凸版ベルト40は、ダイキャスト法、無端多層工法またはベルト接合法等を用いて製造される。
第1の層40aは、凸版ベルト40のベース層であり、例えば、天然ゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムまたはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体からなるニトリルゴム等からなり、延伸性、柔軟性、弾性復元力等を有していることが好ましい。第1の層40aは、印刷ベルト4に寸法上の安定性を付与するために繊維強化されたものであってもよい。
また、第2の層40bは、例えば、天然ゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムまたはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体からなるニトリルゴム等からなる。また、第2の層40bは、延伸性、柔軟性、弾性復元力等を有していることが好ましい。また、第2の層40bは、ペーストまたは溶剤等に対する耐性を有していることが好ましい。また、凸部40cは、第2の層40bに設けられている。
また、凸状部40cは、図14(b)に示すように、断面形状が四角形状になるように設けられているが、これに限らない。凸状部40cは、例えば、側部が凸状部40bの上部から下部に向かって拡がるように傾斜する断面形状であってもよい。このような傾斜の断面形状は、直線状であっても、凹状または凸状であってもよい。第2の層40bは、凸状部40cの側部がこのような傾斜している形状で形成されることによって、印刷パターン用塗膜の非印刷パターン部を取り除きやすくなる。
凸版ベルト40の凸状部40cは、周知のレーザ加工法等で所定の非印刷パターン形状
となるように第1の層40bの一部を除去して形成される。
凸版ベルト40は、第1の層40aと第2の層40bとの層間は、例えば、樹脂材料からなる接着材層4a3を介して接着されている。凸版ベルト40は、全体として柔軟性を有していることが好ましい。また、凸版ベルト40は、1層で構成されていてもよい。この場合は、凸版ベルト40は、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムまたはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体からなるニトリルゴム等の材料で構成される。また、凸版ベルト40は、1層または2層に限らず、3層以上の構成であってもよい。
また、印刷機20では、凸版ベルト40の凸状部40cには印刷パターン用塗膜10bから取り除いた非印刷パターン部10cのペース10が付着しており、この凸状部40cに付着したペースト10を洗浄するための洗浄ロール50を備えている。洗浄ロール50は、図14に示すように、凸版ベルト40に近接して設けられており、凸状部40cに付着したペーストを洗浄ロール50の外周面に付着させて凸状部40cからペースト10を連続的に取り除くことができる。
印刷機20は、図14および図16に示すように、調整手段8を用いて凸版ベルト40の長さを調整することによって、凸版ベルト40の寸法を調整することができる。このように、凸版ベルト40の寸法が、被印刷物5の寸法に応じて調整されるので、調整された凸版ベルト40でもって、第3のロール30の外表面に印刷パターンが形成される。したがって、印刷機20は、調整された凸版ベルト40の凸状部40cを用いて、印刷パターン用塗膜10bから非印刷パターン部10cを取り除くことによって、第3のロール30の外表面に所望の印刷パターンが形成される。これによって、被印刷物5の寸法に応じた印刷パターンを第3のロール30の外表面に形成することができる。
そして、凸版ベルト40は、図14に示すように、一定の張力が付与された所定の長さでもって第1のロール2上および第2のロール3上に配設されている。すなわち、凸版ベルト40は、第1のロール2と第2のロール3との間の距離を調整することで所定の長さに設定されており、この所定の長さに設定された凸版ベルト40は、調整手段8でベルトの長さを長くしたり、または、短くしたりして調整される。
まず、第1のロール2aおよび第2のロール3aの移動について、図16を参照しながら以下に説明する。
第1のロール2は、図16に示すように、第1の回転軸2aが軸支持体2bに支持されている。そして、軸支持体2bは保持体2cに保持されており、この保持体2cは固定されている。すなわち、第1のロール2は、第1の回転軸2aが軸支持体2bを介して保持体2cに固定されており、第1の回転軸2aが回転駆動部(図示せず)に連結されて回転駆動する。
また、第2のロール3は、図16に示すように、第2の回転軸3aが軸支持体3bに支持されている。そして、軸支持体3bは保持体3cに保持されており、この保持体3cは、移動可能なスライダー8c上に固定されている。すなわち、第2のロール3は、第2の回転軸3aが軸支持体3bを介して保持体3cに固定されており、さらに、保持体3cがスライダー8c上に固定されており、軸支持体3bで第2の回転軸3aが回転自在に回転する。第2のロール3は、図16に示すように、スライダー8cのX方向の移動に伴って、第2の回転軸3aがX方向に移動する。このように、第2の回転軸3aがX方向に移動することにとって、凸版ベルト40はベルトの長さを調整することができる。
また、凸版ベルト40は、調整手段8でベルトの長さが調整される。調整手段8は、上述で説明したように実施の形態1に係るグラビア印刷機1で用いたものと同じものを用いることができる。
印刷機20は、図17に示すように、第2の回転軸3aを移動させて凸版ベルト40の長さを調整するために、被印刷物5の変形量に応じて、第1の回転軸2aと第2の回転軸3aとの間の距離を調整するための移動量調整部15を備えている。被印刷物5の変形量は、図17に示すように、例えば、測定用カメラ13aおよび13bで被印刷物5の所定の測定点(x1、x2)の位置情報を取得して、測定用カメラ13aおよび13bで得られた位置情報に基づいて変形量算出部14で算出される。
測定用カメラ13aおよび13bは、図17に示すように、被印刷物5上に印刷パターンを印刷する前に、被印刷物5の所定の2点(x1、x2)の位置座標を測定して、その位置座標信号を変形量算出部14に出力する。
変形量算出部14は、図17に示すように、測定カメラ13a、13bから出力された位置座標信号に基づいて、印刷前の被印刷物5の2点(x1、x2)間の寸法X1を算出する。また、変形量算出部14は、熱履歴を受けていない被印刷物5の設計時の2点(x1、x2)間の寸法X2が予めメモリされており、X1とX2との差である変形量ΔX(=X1−X2)を算出する。この算出された変形量ΔXは、熱履歴によって被印刷物5が変形した変形量になる。なお、以下の説明では、被印刷物5が印刷パターンの印刷前に熱履歴を受けた場合を例にしている。
そして、この変形量ΔXに基づく変形量信号が、変形量算出部14から移動量調整部15に出力される。なお、印刷前の被印刷物5の寸法は、設計時の寸法よりも伸びる場合もあり、また、縮む場合もあり、したがって、変形量ΔX(=X1−X2)は、プラスまたはマイナスの値になる。
移動量調整部15は、変形量信号が変形量算出部14から入力される。また、移動量調整部15は、被印刷物5の変形量ΔXと凸版ベルト40の長さとの関係および凸版ベルト40の長さとスライダー8cの移動量との関係が予めメモリされている。さらに、移動量調整部15は、モータ8eの回転量を制御する機能を有しており、例えば、駆動パルスの数に基づいてモータ8eの回転軸を回転させる機能を有している。すなわち、移動量調整部15は、変形量ΔXに応じてモータ8eを介してスライダー8cを移動させるための回転量制御信号を作成する。回転量制御信号は、例えば、モータ8eの回転量を制御するための駆動パルスであり、移動量調整部15からモータ8eに出力される。
モータ8eは、移動量調整部15からの回転量制御信号に応じて、回転軸が回転してスライダー8cを移動させる。これによって、印刷機20は、スライダー8cの移動に伴って、第2の回転軸3aが移動することによって凸版ベルト40の長さを調整することができる。
したがって、印刷機20は、被印刷物5の変形量ΔXが算出された後に、被印刷物5の寸法に応じて凸版ベルト40の長さを調整することができる。このように、印刷機1は、調整された凸版ベルト40でもって第3のロール30に形成された印刷パターン用塗膜10bの非印刷パターン部10cを取り除いて、第3のロール30の外周面に印刷パターンを設けて、この第3のロール30でもって被印刷物5上に印刷パターンを印刷している。
移動量調整部15は、変形量ΔXがプラスの値を示す場合には、凸版ベルト40の長さが被印刷物5の変形量ΔXに応じたベルトの長さになるように、モータ8eの回転軸を回
転させて図8に示すXa方向にスライダー8cを移動させる。
また、移動量調整部15は、変形量ΔXがマイナスの値を示す場合には、凸版ベルト40の長さが被印刷物5の変形量ΔXに応じたベルトの長さになるように、モータ8eの回転軸を回転させて図8に示すXb方向にスライダー8cを移動させる。
このように、第2のロール2に設けられた移動手段8によってスライダー8cを移動させることによって、印刷機20は、凸版ベルト40のベルトの長さを被印刷物5の熱履歴による変形量ΔXに応じて調整することができる。これによって、印刷機1は、被印刷物5の変形量ΔXに応じて凸版ベルト40の長さが調整されて、調整された凸版ベルト40でもって第3のロールの外表面に印刷パターンを設けて、第3のロール30はこの印刷パターンをペースト10で被印刷物5上に印刷することができる。したがって、印刷機20は、凸版ベルト40の長さを調整することによって、被印刷物5の寸法に応じて第3のロール30の外周面に印刷パターンを設けることができるので、被印刷物5への印刷パターンの印刷精度を向上させることができる。
本発明は、上述した実施の形態1乃至実施の形態3に特に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更および改良が可能である。
例えば、グラビア印刷機1は、図13に示すように、実施の形態1のグラビア印刷機1に対して、第1のロール2、第2のロール3および圧胴6の配置を上下で入れ替えた構成であってもよい。
また、例えば、スライダーは、モータでもって移動させたが、ソレノイド等を用いて移動させてもよい。
また、例えば、被印刷物の寸法の測定は、1台の測定用カメラを用いて、被印刷物の所定の2点(x1、x2)が測定用カメラを通過する際の時間と被印刷物の搬送速度とで算出する方法であってもよい。