JP6208405B1 - 希土類薄膜磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

Nd、Fe、Bを必須成分とする希土類薄膜磁石であって、表面に酸化膜が形成されたSi基板上に化学量論組成よりNd含有量が多い組成のNd−Fe−B下地膜を備え、下地膜の上にα—Fe相とNd2Fe14Bとが交互に配列し、かつ3次元的に分散した組織を有する膜(ナノコンポジット膜)を備えることを特徴とする希土類薄膜磁石。膜剥離や基板破壊の発生が少なく、良好な磁気特性を備えた希土類薄膜磁石を提供することを課題とする。【選択図】図1

Description

本発明は、シリコン基板上に形成したNd−Fe−B膜からなる希土類薄膜磁石及びパルスレーザーデポジション法(PLD法)によって形成したNd−Fe−B膜の希土類薄膜磁石の製造方法に関する。
近年、電子機器の軽薄短小化に伴い、優れた磁気特性を有する希土類磁石の小型化、高性能化が進められている。中でも、ネオジム−鉄−ホウ素(Nd−Fe−B)系磁石は、現有の磁石の中で最も高い最大エネルギー積を有することから、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やエナジーハーベスト(環境発電)などのエネルギー分野や、医療機器分野などへの応用が期待されている。
このような希土類磁石の薄膜は、通常、スパッタリング法(特許文献1、非特許文献1)やパルスレーザーデポジション(PLD:Pulsed Laser Deposition)法(特許文献2、非特許文献2)などのPVD:Physical Vapor Deposition法(非特許文献3)を用いて作製することが知られている。また、これらは、いずれもタンタルやモリブデン等の金属基板の上に希土類磁石の薄膜を形成している。
一方、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用のマイクロ磁気デバイスのマイクロアクチュエータなどを作製する際には、シリコン(Si)半導体を基礎としたリソグラフィー技術を有効に活用するために、汎用性のあるSi基板上に、Nd−Fe−B膜の希土類磁石薄膜を安定して形成することが強く要望されている。
非特許文献4には、化学量論組成であるNdFe14Bと同程度の組成を有する磁石膜をSi基板上に直接成膜すると、成膜の熱処理工程により、Si基板とNd−Fe−B膜の線膨張率差により応力が発生し、磁石膜が剥離することが記載されている。そして、熱処理における応力の緩和を促す手法として、厚さ50nmのMoSi歪緩衝膜をSi基板上に形成することで、2μmの厚さでも剥離の無いNd−Fe−B膜を形成できたことが記載されている。
しかし、膜厚が数μm程度と薄い場合、面内から垂直方向に取り出される磁界は反磁界の影響を受けやすいために小さくなり、また、膜の断面方向に取り出される磁界は反磁界の影響を受けないものの、薄膜磁石の体積が小さいために充分な領域に磁界を供給することは難しくなる。膜の外部に十分な磁界を取り出すためには、少なくとも10μm以上の厚さの膜が要求されている。一方で、基板と膜の線膨張率の差がある場合、膜厚が厚くなるに従って、膜と基板の界面に加わる歪が大きくなるので、膜の剥離がより一層発生し易くなることから、Si基板上に厚膜のNd−Fe−B膜を成膜しても剥離の発生しない歪緩衝膜材料が長年にわたり待ち望まれていた。
非特許文献5には、パルスレーザーデポジション(PLD)法を用いて、Si基板上に、SiとNdFe14Bの線膨張係数の中間の値を有するTa膜を介することで、最大膜厚20μmまで剥離の無いNd−Fe−B膜を成膜したことが記載されている。しかし、膜厚が20μmを超える膜を形成した場合、Nd―Fe−B膜とTa膜との間で剥離が発生したり、Si基板内部での破壊が起きたりするなどの問題が生じていた。
特開2012−207274号公報 特開2009−091613号公報 特願2014−218378 特願2016−043193
N.M.Dempsey, A.Walther, F.May, D.Givord, K.Khlopkov, O.Gutfeisch: Appl.Phys.Lett. vol.90 (2007) 092509-1-092509-3. H.Fukunaga, T.Kamikawatoko, M.Nakano,T. Yanai, F.Yamashita: J. Appl. Phys. vol.109 (2011) 07A758-1-07A758-3. G. Rieger, J. Wecker, W. Rodewalt, W. Scatter, Fe.-W. Bach, T.Duda and W.Unterberg: J. Appl. Phys. vol. 87(2000) 5329-5331. 安達、伊佐、太田、奥田:セラミック基盤工学センター年報vol.6(2006)46-50. 押領司、中野、柳井、福永、藤井:電気学会マグネティックス研究会資料、MAG-13-075(2013).
以前、本発明者らは、Nd−Fe−B膜とSi基板との剥離やSi基板内部での破壊を抑止する方法について研究を進めたところ、Ndの線膨張係数が、NdFe14BとSiのそれぞれの線膨張係数の中間にあることに着目し、化学量論組成よりもNd含有量の多いNd−Fe−B膜をシリコン基板上に直接成膜することで、「Si基板とNd−Fe−B膜の界面に存在するNdリッチ相」がそれぞれの線膨張率の差を軽減し、膜の剥離や基板の破壊を回避させた(特許文献3)。
この方法によれば、パルスレーザーデポジション法によって、熱酸化膜付きシリコン基板上に化学量論組成よりNd含有量が多い組成、すなわち0.150≦Nd/(Nd+Fe)を満たすNd−Fe−B膜を成膜することにより、膜の剥離や基板の破壊を抑制し、160μm程度の厚膜化を実現することができる。しかしながら、Nd含有量が増加するに従い、保磁力が向上するものの、一方で、残留磁化や(BH)maxを低下させるという問題があった。
また、本発明者らは、Si基板上にNd下地膜を形成することで、化学量論組成(Nd/(Nd+Fe)=0.125)近傍の組成範囲に相当する0.120≦Nd/(Nd+Fe)<0.150を満たすNd−Fe−B膜を、剥離や基板の破壊が発生することなく安定して成膜でき、また、得られた薄膜は、良好な磁気特性を示した(特許文献4)。しかしながら、この方法ではNdターゲットとNd−Fe−Bターゲットの2種類をパルスレーザーデポジョン装置内に装着させる必要があり、装置が複雑となり、又、成膜工程中に2種類のターゲット材を切り換えて成膜するという複雑な工程を有しており、生産上の問題があった。
上記課題を解決するために、さらに鋭意研究を行った結果、酸化膜が形成されたSi基板上に化学量論組成よりNd含有量が多い組成のNd−Fe−B下地膜を形成し、その上に、優れた磁気特性を有する、α―Fe相とNdFe14Bとが交互に配列し、かつ、3次元的に分散した組織を有する膜(ナノコンポジット膜)とすることで、熱処理後においても膜剥離や基板破壊が発生することなく、良好な磁気特性を備えるという知見を得た。さらに、上記構造体は、PLD成膜の際のレーザーの条件を調節することで、1種類のターゲットから連続して作製することができる、との知見が得られた。
このような知見に基づき、本発明者らは、以下の手段を提供する。
1)Nd、Fe、Bを必須成分とする希土類薄膜磁石であって、表面に酸化膜が形成されたSi基板上に化学量論組成よりNd含有量が多い組成のNd−Fe−B下地膜を備え、下地膜の上にα―Fe相とNdFe14Bとが交互に配列し、かつ3次元的に分散した組織を有する膜(ナノコンポジット膜)を備えることを特徴とする希土類薄膜磁石。
2)下地膜の膜厚が0.5μm以上であることを特徴とする上記1)に記載の希土類薄膜磁石。
3)ナノコンポジット膜の膜厚が10μm以上42μm以下であることを特徴とする上記1)又は2)に記載の希土類薄膜磁石。
4)ナノコンポジット膜に対する下地膜の膜厚比が1/10以下であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一に記載の希土類薄膜磁石。
5)Si基板の表面の酸化膜が熱酸化膜であることを特徴とする上記1)〜4)のいずれか一に記載の希土類薄膜磁石。
6)残留磁化が0.70T以上であること特徴とする上記1)〜5)のいずれか一に記載の希土類薄膜磁石。
7)保磁力が480kA/m以上であることを特徴とする上記1)〜6)のいずれか一に記載の希土類薄膜磁石。
8)最大エネルギー積(BH)maxが70kJ/m以上であることを特徴とする上記1)〜7)のいずれか一に記載の希土類薄膜磁石。
9)Si基板上に酸化膜を形成し、次いで、パルスレーザーデポジション法により、前記Si基板上に化学量論組成よりNd含有量が多い組成のNd−Fe−B下地膜の第1層を形成した後、前記第1層の上にα―Fe相とNdFe14Bとが交互に配列し、かつ3次元的に分散した組織を有する膜を第2層として形成し、その後、熱処理することを特徴とする希土類薄膜磁石の製造方法。
10)NdFe14B(但し、Xは2.1〜2.7を満たす数)からなるターゲットを用いて成膜することを特徴とする上記9)記載の希土類薄膜磁石の製造方法。
11)レーザー強度密度は、前記第1層目の下地膜形成においては1J/cm以上10J/cm未満とし、前記第2層目のα―Fe相とNdFe14Bとが交互に配列した組織の膜形成においては10J/cm以上1000J/cm以下とすることを特徴とする上記10)記載の希土類薄膜磁石の製造方法。
12)熱処理は、500℃以上800℃以下で行うことを特徴とする上記9)〜11)のいずれか一に記載の希土類薄膜磁石の製造方法。
本発明は、酸化膜が形成されたSi基板上に化学量論組成よりNd含有量が多いNd−Fe−B下地膜形成し、その膜の上にα―Fe/Nd−Fe−Bナノコンポジット膜を成膜し、その後、熱処理を行うことにより、膜剥離や基板破壊の発生が少なく、良好な磁気特性を備えた希土類薄膜磁石を作製することができる。さらに、1種類のNd−Fe−Bターゲットのみを用い、ターゲットに照射するレーザー強度を変えることにより、上記構造を備えるNd−Fe−B膜を連続的かつ安定して形成することができる。
本発明のNd−Fe−B希土類薄膜磁石の一例を示す断面模式図である。 実施例1の成膜後のX線回折パターンを示す図である。 実施例1の希土類薄膜磁石のTEM観察写真を示す図である。 実施例1の希土類薄膜磁石の磁気特性を示す図である。 実施例1のダイシング後の薄膜磁石の外観を示す写真である。 比較例4の希土類薄膜磁石の磁気特性を示す図である。
本発明は、Nd、Fe、Bを必須成分とする希土類薄膜磁石であって、表面に酸化膜が形成されたSi基板上に、化学量論組成よりNd含有量が多い組成のNd−Fe−B下地膜を備え、下地膜の上にα―Fe相とNdFe14Bとが交互に配列し、かつ、3次元的に分散した組織を有する膜(ナノコンポジット膜)を備えることを特徴とするものである。本発明の希土類薄膜磁石の断面模式図を図1に示す。
ナノコンポジット膜は、α−Fe相(ソフト相:高い飽和磁化を有する)と化学量論組成のNdFe14B相(ハード相:高保磁力を有する)とが交互に配列し、かつ、3次元次元的に分散した構造を有し、優れた磁気特性を備えるものである。また、それぞれの結晶粒径は10nm〜30nm程度である。
ナノコンポジット膜の膜厚は、10μm以上42μm以下とするのが好ましい。膜厚が10μm未満であると、膜の外部に十分な磁界を取り出すことができなくなる。一方42μmを超える場合、下地膜の厚さに対して、ナノコンポジット膜の厚みの割合が高くなり、機械的強度の関係上、剥離等を抑制しきれないことがある。
Nd−Fe−B下地膜は、化学量論組成よりNd含有量が多い組成からなり、具体的には、NdとFeの原子比が0.150≦Nd/(Nd+Fe)の条件を満たすものである。化学量論組成よりNdが過剰な下地膜は、Si基板とナノコンポジット膜の間の線膨張率差を緩和して、膜の剥離や基板の破壊を抑制することに寄与する。また、Nd−Fe−B下地膜の結晶粒径は200nm〜300nm程度であって、上記ナノコンポジット膜におけるNd―Fe―B相と明確に区別される。
Nd−Fe−B下地膜は、膜厚を0.5μm以上とするのが好ましい。膜厚が0.5μm未満の場合、基板表面の全体を均一に覆うことが困難となり、剥離等の抑制効果が低減することがある。一方、Nd−Fe−B下地膜の膜厚は、ナノコンポジット膜の膜厚に対して膜厚比1/10未満とするのが好ましい。これより厚膜にすると、M−H特性において顕著な2段化が起きて磁気特性が低下することがある。
なお、本発明おいて2段化とは、M−H特性のヒステリシス曲線において、変曲点が複数確認できる現象をいい、後述する比較例4のようにヒステリシス曲線の第2象限(X軸及びY軸上を除く)において、磁気分極軸(Y軸)上の残留磁化を示す点と外部磁界軸(X軸)上の保持力を示す点とを直線で結んだ場合に、その直線とM−H曲線とが第2象限内で交差することが起こり得る現象をいう。
また、Si基板上に形成する酸化膜は、下地膜との密着性の観点から、熱酸化膜が好ましい。自然酸化膜の場合、Siと希土類薄膜磁石との界面において剥離が発生することがある。熱酸化膜の場合は、Si基板自体が破壊するという実験結果から、下地層は自然酸化膜よりも熱酸化膜との密着性が良いことが考えられる。
また、熱酸化膜は、自然酸化膜に比べて、その膜厚の制御が容易ということからも好ましい。なお、熱酸化膜の厚みは380〜600nmであり、好ましくは500〜550nmである。一般的なSi基板上の自然酸化膜の厚みである数nm(たとえば、1〜3nm程度)とは区別される。
本発明の希土類薄膜磁石は、優れた磁気特性を有するものであるが、特に、残留磁化を0.70T以上、保磁力を480kA/m以上、最大エネルギー積(BH)maxを70kJ/m以上まで達成することができる。本発明は、厚膜とした場合でも、膜の剥離等が発生せず、このような良好な磁気特性を維持することができる点で、特に優れている。
希土類薄膜磁石の製造方法は、まず、酸化膜が形成されたSi基板をパルスレーザーデポジション(PLD)装置内に設置すると共に、該基板に対向させるようにしてNd−Fe−Bターゲットを設置する。次に、チャンバー内を真空度が2×10−5〜8×10−5Paとなるまで排気した後、ターゲットに集光レンズを通してレーザーを照射して、成膜を開始する。レーザーには、Nd:YAGレーザー(発振波長:355nm、繰り返し周波数:30Hz)を使用することができる。
使用するターゲットは、化学量論組成よりNd含有量が多い組成のNdFe14B(X:2.1〜2.7)とする。Xが2.1未満となると、Nd−Fe−B下地膜中のNd濃度が減少してSi基板と下地膜の界面に形成されるNdリッチ層が薄くなり、熱処理後に膜剥離やSi基板内破壊が発生することがある。一方、Xが2.7を超えると、ナノコンポジット膜中のα―Fe相の体積率が減少して、余剰の非磁性成分であるNdが残存して残留磁化が低下することがある。
そして、焦点距離をターゲットの表面から外した状態(デフォーカス照射)にして、レーザー強度を低エネルギー密度(1J/cm以上10J/cm未満)で照射し、化学量論組成よりNdが過剰な組成からなるNd−Fe−B下地膜を形成する。レーザー強度密度が1J/cm未満であると、レーザーがターゲットに照射した際、ドロップレットが大量発生して密度が低下し、ひいては、磁気特性の劣化が生じることがある。一方、10J/cm以上であると、NdとFeの原子比が0.150≦Nd/(Nd+Fe)の条件を満たす、Nd組成が化学量論組成より過剰な所望の組成比のNd−Fe−B膜が得られない。このNd過剰のNd−Fe−B下地層は、後段工程の熱処理工程によって、Si基板直上にNd過剰層が形成され、歪を緩和する効果を有する。
次に、同一のNd−Fe−Bターゲットを使用して、レーザーの焦点距離をターゲット材表面に合わせた状態(フォーカス照射)に切り替えて照射することで、エネルギー密度を高めたレーザー強度(10〜1000J/cm)で成膜する。レーザー強度密度が10J/cm未満であると、ナノコンポジット膜が安定して形成できず、一方、1000J/cmを超えると、アブレーション現象が停止する等の現象が生じるためである。このようなフォーカス条件で成膜すると、ターゲット材の組成がNd過剰組成のものを使用しても、α―Feと化学量論組成のNd−Fe−B層からなるナノコンポジット膜を形成させることができる。
上記のようにしてレーザー照射されたターゲット表面は、化学反応と溶融反応が起き、プルームと呼ばれるプラズマが発生する。このプルームが、対向する基板上に到達することで、基板上にアモルファスな膜を形成することができる。このようにして成膜したアモルファス膜は、結晶化させるため、成膜後に定格出力約8kW、最大出力の保持時間約3秒の条件でパルス熱処理を施して、Nd−Fe−Bアモルファス相を結晶化させる。
ここで、熱処理が十分施されないと、膜中のNd−Fe−Bアモルファス相の結晶化が十分でなく、アモルファス相が多く残存することがあり、一方、過度の熱処理は、結晶粒が粗大化して、磁気特性は劣化することがある。したがって、パルス熱処理の条件は500〜800℃の範囲で行うのが好ましい。なお、パルス熱処理は、赤外線を極短時間で照射することで、試料の瞬時の結晶化を促し、結晶粒の微細化を実現することができる。
その後、この結晶化薄膜に対して、たとえば、磁界7Tでパルス着磁を施すことで、希土類薄膜磁石を作製することができる。なお、本発明においては、着磁の方法に特に制限はなく、公知の着磁方法を用いることができる。これより、Nd−Fe−B希土類薄膜磁石を製造することができる。この希土類薄膜磁石は、優れた磁気特性を有するだけでなく、汎用性のあるSi基板上に直接成膜されているので、MEMS用のマイクロ磁気デバイス等のマイクロアクチュエータなどの作製に有用である。
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であって、これら例によって本発明は何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
(実施例1)
Nd2.5Fe14Bターゲット準備し、基板には、厚さ622μm、5mm角の単結晶Si(100)を用いた。なお、Si基板上には、酸素雰囲気中で800℃の温度で加熱することにより形成した厚さ約515nmの熱酸化膜が形成されている。次に、これらをパルスレーザーデポジション装置の所定の位置に装着した後、チャンバー内を真空に排気して、10−5Paの真空度に到達したことを確認後、約11rpmで回転させたターゲットに繰り返し周波数30HzのNd:YAGレーザー(発振波長:355nm)を照射し、ターゲット物質をアブレーションして基板上に成膜した。このとき、ターゲットと基板との距離を10mmとした。
まず、ターゲット表面でのレーザー強度密度を2J/cm程度としてSi基板上にNd−Fe−Bのアモルファス下地膜を1.0μm成膜し、その後、レーザー強度密度を20J/cm程度に増加させて、下地膜の上に連続してα―Fe/NdFe14Bナノコンポジットのアモルファス膜を膜厚23μm成膜した。なお、エネルギー密度を制御する方法として、レーザーの集光レンズを移動させて焦点距離をずらし、レーザーのスポット面積を変化させる手法を用いた。ここで、焦点距離からのズレを数値化する
DF(デフォーカス)Rateは、DF Rate=(TD−FD)/FD、の式から算出される(TD:ターゲットと集光レンズとの距離、FD:焦点距離、を示す)。そして、Nd−Fe−B下地膜の成膜においては、DF Rateを0.3とし、ナノコンポジット膜を成膜においては、DF Rateを0(ゼロ)とした。
成膜後のX線回折パターンを図2に示す。図2では、α−Fe結晶粒のピークが確認されるとともに、従来のTa基板上に形成したナノコンポジット膜のX線回折パターンと同様な結果が得られている。次に、定格出力8kW、最大出力の保持時間約3秒にてパルス熱処理を行って、Nd−Fe−B系アモルファス相を結晶化させた。図3に熱処理後の膜の透過電子顕微鏡(TEM)断面写真を示す。図3のTEM写真では、従来のTa基板上に形成したナノコンポジット膜と同様の結果が得られている。その後、磁界7Tでパルス着磁を施して、希土類薄膜磁石を作製した。膜の剥離性を調べるために、ダイシングにより5mm×5mm角の試料を2.5mm×2.5mmへと四分割するように切削加工を行った。その結果、図5に示す通り、機械的破損することなく加工できることを確認した。次に、ダイシング後の試料についてVSM(Vibrating Sample Magnetometer)により磁気特性を測定した。その結果、表1に示す通り、残留磁化は0.87T、保磁力が570kA/m、(BH)maxは86kJ/mとなり、良好な磁気特性が得られた。図4にM−H曲線を示す。
(実施例2〜11)
実施例2〜11では、実施例1と同様の方法を用いて、Si基板上にNd−Fe−B下地膜、その上にα―Fe/NdFe14Bナノコンポジット膜を成膜し、その後、パルス熱処理を施して結晶化膜とした。このとき、それぞれの実施例2〜11において、表1に示すように、ターゲットの組成、Nd下地膜の膜厚、ナノコンポジット膜の膜厚、レーザー強度密度を変化させた。それぞれの薄膜について、パルス着磁を施して、希土類薄膜磁石を作製し、得られた希土類薄膜磁石について、実施例1と同様、膜の剥離や磁気特性などを調べた結果、表1に示すように、実施例2〜6はいずれも膜剥離や基板内破壊がなく、良好な磁気特性を示した。
(比較例1)
実施例1と同様の方法を用いて、Si基板上にNd−Fe−B下地膜、その上にα―Fe/NdFe14Bナノコンポジット膜を成膜し、その後、パルス熱処理を施して結晶化膜とした。但し、ターゲットの組成をNdFe14Bとした。この薄膜について、パルス着磁を施して、希土類薄膜磁石を作製した。このようにして得られた希土類薄膜磁石について、実施例1と同様の方法で、ダイシングにより5mm×5mm角の試料を、2.5mm×2.5mmへと四分割するように切削加工を行ったが、膜の剥離が生じ、磁気特性を調べることができなかった。この原因は、Nd−Fe−B下地膜のNdが少ないため、Si基板界面に歪を緩和する役目をするNdリッチ層を形成できなかったためと考えられる。
(比較例2)
実施例1と同様の方法を用いて、Si基板上にNd−Fe−B下地膜、その上にα―Fe/NdFe14Bナノコンポジット膜を成膜し、その後、パルス熱処理を施して結晶化膜とした。但し、下地膜の膜厚を0.45μmとした。この薄膜について、パルス着磁を施して、希土類薄膜磁石を作製した。このようにして得られた希土類薄膜磁石について、実施例1と同様の方法で、ダイシングにより5mm×5mm角の試料を、2.5mm×2.5mmへと四分割するように切削加工を行ったが、膜の剥離が生じ、磁気特性を図ることができなかった。この原因は、Nd−Fe−B下地膜が薄く、Si基板表面全体を均一に覆うことができなかったためと考えられる。
(比較例3)
実施例1と同様の方法を用いて、Si基板上にNd−Fe−B下地膜、その上にα―Fe/NdFe14Bナノコンポジット膜を成膜し、その後、パルス熱処理を施して結晶化膜とした。但し、ナノコンポジット膜の膜厚を43μmとした。この薄膜について、パルス着磁を施して、希土類薄膜磁石を作製した。このようにして得られた希土類薄膜磁石について、実施例1と同様の方法で、ダイシングにより5×5mm角の試料を、2.5×2.5mmへと四分割するように切削加工を行ったが、膜の一部に剥離が生じ、磁気特性を図ることができなかった。なお、この比較例3は、ナノコンポジット膜に対する下地膜の膜厚比は0.07であり、下地膜の磁気特性がナノコンポジット膜に影響を与えることを抑制できる技術的特徴の範囲内(0.1以下)であるが、ナノコンポジット膜が厚過ぎるため機械的強度が低下して、剥離や基板破壊を抑制できず、磁気特性を測定することができなかった。
(比較例4)
実施例1と同様の方法を用いて、Si基板上にNd−Fe−B下地膜、その上にα―Fe/NdFe14Bナノコンポジット膜を成膜し、その後、パルス熱処理を施して結晶化膜とした。但し、ナノコンポジット膜に対する下地膜の膜厚比を0.11とした。次に、この薄膜について、パルス着磁を施して、希土類薄膜磁石を作製した。このようにして得られた希土類薄膜磁石について、実施例1と同様の方法で、ダイシングにより5×5mm角の試料を、2.5×2.5mmへと四分割するように切削加工を行った。なお、機械的破損することなく加工できることを確認した。次に、ダイシング後の試料についてVSM(Vibrating Sample Magnetometer)により磁気特性を測定した。残留磁化は0.78T、保磁力が488kA/m、(BH)maxは68kJ/mとなったが、図6に示すように、M−H特性に極端な二段化が観察された。
ここで、M−H特性の二段化とは、異なる磁気特性を有する磁石材料が混在しているように、M−Hループの変曲点が複数確認できる現象を言う。本発明においては、この二段化の原因として、ナノコンポジット膜に対する下地膜の膜厚が厚くなることにより、下地膜の有する磁気特性の占める影響が大きくなった結果、下地膜とナノコンポジット膜の各々の磁化過程が反映したものと考えられる。
本発明は、1種類のターゲットだけ用い、このターゲットに照射するレーザー強度を変えるだけで、Si基板上にNd−Fe−B下地膜を形成した後、連続的にα―Fe/Nd−Fe−Bナノコンポジット膜を成膜することができるので、希土類磁石の生産性を著しく向上させることができる。また、得られる希土類薄膜磁石は剥離や基板の破壊が発生することなく、良好な磁気特性を示す。本発明のNd−Fe−B希土類薄膜磁石は、エナジーハーベスト(環境発電)などのエネルギー分野や医療機器分野などに応用される磁気デバイス用として有用である。また特に、MEMS用のマイクロ磁気デバイス等のマイクロアクチュエータなどを作製するために有用である。

Claims (12)

  1. Nd、Fe、Bを必須成分とする希土類薄膜磁石であって、表面に酸化膜が形成されたSi基板上に化学量論組成よりNd含有量が多い組成のNd−Fe−B下地膜を備え、下地膜の上にα―Fe相とNdFe14Bとが交互に配列し、かつ3次元的に分散した組織を有する膜(ナノコンポジット膜)を備えることを特徴とする希土類薄膜磁石。
  2. 下地膜の膜厚が0.5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の希土類薄膜磁石。
  3. ナノコンポジット膜の膜厚が10μm以上42μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類薄膜磁石。
  4. ナノコンポジット膜に対する下地膜の膜厚比が1/10以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類薄膜磁石。
  5. Si基板の表面の酸化膜が熱酸化膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類薄膜磁石。
  6. 残留磁化が0.70T以上であること特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の希土類薄膜磁石。
  7. 保磁力が480kA/m以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の希土類薄膜磁石。
  8. 最大エネルギー積(BH)maxが70kJ/m以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の希土類薄膜磁石。
  9. Si基板上に酸化膜を形成し、次いで、パルスレーザーデポジション法により、前記Si基板上に化学量論組成よりNd含有量が多い組成のNd−Fe−B下地膜の第1層を形成した後、前記第1層の上にα―Fe相とNdFe14Bとが交互に配列し、かつ3次元的に分散した組織を有する膜を第2層として形成し、その後、熱処理することを特徴とする希土類薄膜磁石の製造方法。
  10. NdFe14B(但し、Xは2.1〜2.7を満たす数)からなるターゲットを用いて成膜することを特徴とする請求項9記載の希土類薄膜磁石の製造方法。
  11. レーザー強度密度は、前記第1層目の下地膜形成においては1J/cm以上10J/cm未満とし、前記第2層目のα―Fe相とNdFe14Bとが交互に配列した組織の膜形成においては10J/cm以上1000J/cm以下とすることを特徴とする請求項10記載の希土類薄膜磁石の製造方法。
  12. 熱処理は、500℃以上800℃以下で行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の希土類薄膜磁石の製造方法。
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