JP2016186990A - R−t−b系薄膜永久磁石 - Google Patents

R−t−b系薄膜永久磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のR−T−B系薄膜永久磁石と比較して、磁気特性に優れた薄膜永久磁石を提供すること。
【解決手段】Mo下地上の、薄膜の組成が(R11−xR2)−T−Bであり、主相粒子(2−14−1相)と粒界相αを含み、Mo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域における前記粒界相αの断面積割合が30%以上であることで磁気特性に優れたR−T−B系薄膜永久磁石が得られる。
ただし、R1はY、Ceを含まない希土類元素の少なくとも1種であり、R2はY、Ceの1種以上からなる希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素であり、xは0.5以下(0を含まず)である。粒界相αは、粒界に存在するRリッチ相の1種であり、αに含まれる希土類元素のうち70at%以上がR2である。
【選択図】図1

Description

本発明は、希土類薄膜永久磁石に関し、特にR−T−B系薄膜永久磁石におけるRの一部を選択的にYおよびCeに置換することによって得られる薄膜永久磁石に関する。
正方晶R14B化合物を主相とするR−T−B系永久磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはその一部がCoによって置換されたFe)は優れた磁気特性を有することが知られており、1982年の発明(特許文献1:特開昭59−46008号公報)以来、代表的な高性能永久磁石である。
希土類元素RがNd、Pr、Dy、Ho、TbからなるR−T−B系磁石は異方性磁界Haが大きく永久磁石材料として好ましい。中でも希土類元素RをNdとしたNd−Fe−B系永久磁石は、飽和磁化Is、キュリー温度Tc、異方性磁界Haのバランスが良く、資源量、耐食性において他の希土類元素Rを用いたR−T−B系永久磁石よりも優れているために民生、産業、輸送機器などに広く用いられている。
近年では、より微小な磁石がマイクロマシンやセンサ分野において要求されている。例えば、厚さが1mm以下の平板状磁石は、焼結体ブロックから切断や研磨などの工程を経て製作するが、磁石強度や生産性の問題により0.5mm以下の磁石を得ることは困難である。
このような問題を解決するために、最近、スパッタリングやレーザーデポジション等の物理的成膜法により微小寸法の薄膜永久磁石が作製されている。
特開昭59−46008号公報 特開平11−288812号公報 特開2001−217124号公報
特許文献2および特許文献3には、異方性R−T−B系薄膜永久磁石の製造方法が開示されており、成膜後に加熱することにより高保磁力が得られるとしている。しかしながら、X線回折からは垂直磁気異方性に寄与する(00l)以外の回折ピークも確認されており、垂直磁気異方性が十分でない。
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、高い残留磁束密度を有する異方性R−T−B系薄膜永久磁石を提供することを目的とする。
本発明の異方性R−T−B系薄膜永久磁石は、Mo下地上の、薄膜の組成が(R11−xR2)−T−Bであり、主相粒子(2−14−1相)と粒界相αを含み、Mo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域における前記粒界相αの断面積割合が30%以上の異方性R−T−B系薄膜永久磁石であることを特徴とする。ただし、R1はY、Ceを含まない希土類元素の少なくとも1種であり、R2はY、Ceの1種以上からなる希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素であり、xは0.5以下(0を含まず)である。粒界相αは、粒界に存在するRリッチ相の1種であり、αに含まれる希土類元素のうち70at%以上がR2である。
本発明の異方性R−T−B系薄膜永久磁石は、R14B結晶の磁化容易軸であるc軸が膜面に対して略垂直に配向している。
下地材料とその上に形成する薄膜の格子定数が近い場合、エピタキシャル成長しやすいことが知られている。そのため、下地材料によってその上に形成する薄膜の結晶方位を制御できる。この性質により、Mo(110)面とR14B(001)面の格子定数がマッチングし、R14B構造が基板に対して略垂直にc軸配向する。これにより膜面に対して垂直方向に高い残留磁束密度を得ることができる。また、Moは多様な基板で(110)面が優先配向することが知られており、安定的に(110)面が得られる。
本発明者らは、YまたはCeを該膜中に含むことで、c軸配向性が向上する効果が得られる事実を見出した。この理由は定かでないが、R2が含まれない場合、Moは不動態を形成するなど、酸素との結合が非常に強いため、R−T−B系薄膜形成前にMo表面に酸素が付着し、MoO、MoOなどの形成が回避できない。この上にR−T−B系薄膜を形成するとR14B(001)面の格子定数とのミスマッチングが大きくなり、配向性が悪くなり残留磁束密度が低下する。一方で、適切な量の粒界相αが含まれる場合、Mo表面の酸素と粒界相α中のR2が選択的に反応し凝集することにより、Mo(110)面が最表面に露出し、その上に磁性層を形成すると、マッチングの効果によりc軸配向性が向上し、高い残留磁束密度を得ることができると発明者らは考える。R2としては、Y、Ceの1種以上で特にc軸配向性が向上する効果が得られた。これは、YおよびCeがR1種より酸化され易いためと考える。なお、R1が希土類元素のうち70at%以上を占める粒界相が存在しても、粒界相αのような酸素除去効果は得られない。
粒界相α上にR−T−B系薄膜を形成する場合も高いc軸配向が得られ、高い残留磁束密度を得ることができる。これは、本発明の粒界相αは主にアモルファスであるため、その上に磁性層を形成すると、正方晶の最密充填のc軸方向に配向しやすいと考えられる。
R−T−B系永久磁石の構成要素として、主相粒子のほかにRリッチ相と呼ばれる希土類リッチ相やRT相などの粒界相が存在していることが知られている。本発明の粒界相αはこのRリッチ相の1種である。
本発明によれば、YおよびCeのうち少なくとも1種類を添加したR−T−B系薄膜永久磁石において、Mo下地上に(R1、R2)−T−B系結晶層を積層させることによって、R1−T−B系薄膜永久磁石より高い残留磁束密度を有する薄膜永久磁石を得ることができる。
図1は実施例2の断面におけるSTEM−EDS元素マッピング像である。
以下、本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
本実施形態に係る異方性R−T−B系薄膜永久磁石は、R14B結晶の磁化容易軸であるc軸が膜面に対して略垂直に配向している。
本実施形態に係る異方性R−T−B系薄膜永久磁石は、R−T−B主相粒子と、Rリッチ相、RT相などの粒界相で構成される。本発明の粒界相αはこのRリッチ相の1種であり、主にアモルファスである。
本実施形態において、下地は配向したMoである。ここで、Mo下地とすることで、Mo(110)とR14Bの格子定数がマッチングし、R14B構造が基板に対して垂直にc軸配向する。これにより高い残留磁束密度を得ることができる。なお、基板の結晶方位を制御することで、Moを(001)面配向させることができるが、この場合もこの面とR14B(001)面の格子定数がマッチングし、R14B構造が基板に対して略垂直にc軸配向する。
本実施形態において、異方性R−T−B系薄膜永久磁石の組成は、(R11−xR2)−T−Bで表される。R1はY、Ceを含まない希土類元素の少なくとも1種である。なお、R1は高い異方性磁界を得ることを考慮すると、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbであることが好ましく、また、原料価格と耐食性の観点から、Ndが更に好ましい。
本実施形態において、R2はY、Ceの1種以上からなる希土類元素である。 ここで、Y、CeはR1種より酸化され易いため、酸素除去効果が高い。これにより、Mo表面の酸素と粒界相α中のR2が選択的に反応し凝集することにより、Mo(110)の結晶構造が現れ、主相粒子の配向性を向上させることができる。また、粒界相α上に主相粒子が析出する場合でも高いc軸配向が得られる。
本実施形態において、R−T−B系薄膜中の全希土類量に占めるR2の量xは0.5以下(0を含まず)である。 この範囲にすることで、粒界相α中のR2による酸素除去効果を得ることができ、かつR−T−B薄膜永久磁石の特性低下を抑えることができる。xが0.0の場合、Mo表面に付着した酸素の除去効果が得られず、c軸配向性が低下する。xが0.5より大きい場合、Y、Ceの磁化が低いため、これらの比率が増えると残留磁束密度が低下する。
本実施形態において、Bはその一部をCで置換してもよい。Cの置換量はBに対して10at%以下とすることが好ましい。
本実施形態において、組成残部であるTはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素である。Co量はT量に対して0at%以上10at%以下が望ましい。Co量の増加によってキュリー温度を向上させることができ、温度上昇に対する保磁力の低下を小さく抑えることが可能となる。また、Co量の増加によって希土類永久磁石の耐食性を向上させることができる。また、Al、Cuのうち少なくとも1種類を0.01at%〜1.2at%の範囲で含有することにより、得られる薄膜磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可能となる。
本実施形態において、他の元素の含有を許容する。例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。また、原料に由来する不純物、又は製造時に混入する不純物としての他の成分を含んでもよい。
本実施形態に係る粒界相αは、αに含まれる希土類元素のうち70at%以上がR2である。この割合が70at%未満のRリッチ相では酸素除去効果は得られにくい。なお、この粒界相αは、R2のほかにO、R1、Tによって構成されている。
本実施形態において、粒界相αの断面積割合は、R−T−B系薄膜のMo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域にて30%以上を占める。なお、層になっている必要はなく、凝集して存在する場合もある。この割合が30%未満の場合、Mo表面に付着した酸素の除去効果が十分に得られず、c軸配向性が低下する。
以下、本件発明の製造方法の好適な例について説明する。
R−T−B系薄膜永久磁石の製造方法は、スパッタリングやレーザーデポジション等の物理的成膜方法があるが、スパッタリングによる製造方法の一例について説明する。
材料として、先ずターゲット材を準備する。ターゲット材は、Moターゲット材および所望の組成を有する(R1、R2)−T−B合金ターゲット材とする。ここで、ターゲット材の組成比とスパッタリングで成膜したR−T−B系薄膜の組成比は、各元素のスパッタ率が異なるためにずれる場合があり、調整が必要である。5個以上のスパッタリング機構を有する装置を使用する場合、R1、R2、T、B、Mo各々の単元素ターゲット材を準備し、所望の割合でスパッタリングすることもできる。また、R1、R2、T−Bのように、一部合金ターゲット材を用いて、所望の割合でスパッタリングすることもできる。他の元素、例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等を適宜含有させたい場合も同様に、合金ターゲット材、単元素ターゲット材の両方の方法で含有させることができる。一方で、O、N、C等の不純物元素を極力低減することが望ましいため、ターゲット材中の不純物含有量も極力低減する。
ターゲット材は、保管中に表面から酸化する。特に、R1、R2の希土類ターゲット材を使用する場合は酸化の速度が速い。そのため、これらのターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておく必要がある。
スパッタリングにて成膜を行う基板は、Mo単結晶(110)配向基板、各種の金属、ガラス、シリコン、セラミックスなどを選択して使用することができる。ただし、所望の結晶組織を得るために高温での処理を行うため、高融点な材料を選択することが望ましい。Mo単結晶(110)配向基板以外を基板として使用する場合、R−T−B系薄膜の成膜を行う前に、Moの下地膜を成膜する。Mo下地膜とすることで、MoとR14Bの格子定数がマッチングし、R14B構造が基板に対して垂直にc軸配向する。これにより高い残留磁束密度を得ることができる。また、基板との密着性を向上することもできる。R−T−B系薄膜の成膜を行った後、R−T−B系薄膜の酸化を防ぐため、Ti、Ta、Moなどの保護膜を設けることができる。
スパッタリングを行う成膜装置は、O、N、C等の不純物元素を極力低減することが望ましいため、10−6Pa以下、より好ましくは10−8Pa以下となるまで真空槽内が排気されていることが望ましい。高い真空状態を保つため、成膜室と繋がった基板導入室を有することが望ましい。また、ターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておく必要があるため、成膜装置は、基板とターゲット材の間に真空状態で操作可能な遮蔽機構を有することが望ましい。加えて、基板加熱下で成膜を行うため、基板加熱機構を有している必要がある。
スパッタリングの方法は、不純物元素を極力低減するという目的で、より低圧のAr雰囲気でスパッタリングが可能となるマグネトロン・スパッタリング法が好ましい。ここで、Fe、Coを含むターゲット材は、マグネトロン・スパッタリングの漏れ磁束を大きく低減させ、スパッタリングを困難にするため、ターゲット材の厚みを適切に選択することが必要である。スパッタリングの電源は、DC、RFどちらでも使用可能であり、ターゲット材に応じて適宜選択できる。
成膜の手順は、上述したターゲット材および基板を用いて、まずMoを成膜し、その後R−T−B系薄膜を成膜する。ただし、Mo単結晶(110)配向基板を使用する場合は、Moの成膜を行う必要はない。R1、R2、T、Bのように複数のターゲット材を用いて成膜する際、多元同時成膜、もしくは各元素を単独でスパッタリングする積層成膜のどちらでも可能である。また、Mo下地膜とR−T−B系薄膜は、基板を成膜装置内で移送することによって、別室のチャンバーにて作製することも可能である。
所望の仕込み組成の薄膜を得るためには、成膜時の基板加熱温度、成膜レートおよび成膜時間を調整してスパッタリングを行う。成膜レートの確認は、所定のパワー、所定の時間で成膜した膜を接触式段差計で測定することが一般に行われている。また、成膜装置内に水晶振動子膜厚計等を備え付けて用いることも可能である。
R−T−B系薄膜(R11−xR2)−T−Bのxを0.5以下とするためには、ターゲットの仕込み組成のR1とR2を調整することによって制御することができる。仕込み組成と薄膜組成のズレは1.0at%未満で制御することが可能である。
粒界相α内の希土類量に対するR2の割合は、ターゲットの仕込み組成および高温加熱を施すことによって制御することが出来る。
Mo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域での粒界相αの断面積割合を30%以上とするためには、ターゲットの仕込み組成、R/T比率を調整することおよび高温加熱を施すことによって制御することが出来る。
R−T−B系薄膜のスパッタリング開始時から10nm〜20nmの厚み分スパッタリングする間、基板の高温加熱を実施する。この高温加熱とは、600℃〜680℃に加熱することである。高温加熱を実施することにより、粒界相αが形成されR2とMo表面の酸素との反応が促進する。これは、CeとYが高温加熱により十分な熱エネルギーを与えられることでMo表面を自由に動き回り、酸素と反応しつつ、凝集することで粒界相αになる。なお、高温加熱下でのR−T−B系薄膜スパッタリング時間が10nmの厚み分スパッタリングする時間より短い場合や、基板加熱温度が600℃より低い場合、粒界相αが形成されにくくなり、R2が70at%未満のRリッチ相が形成されるため、Mo表面の酸素除去効果が不十分である。また、高温加熱下でのR−T−B系薄膜スパッタリング時間が20nmの厚み分スパッタリングする時間より長い場合や、その温度が680℃より高い場合、主相(2−14−1相)の一部が分解してα−Fe相などになるため、主相比率が低下し残留磁束密度が低下する。
適切な高温加熱を行い、R2の割合を0より大きくすれば、希土類量に対するR2の割合が70at%以上の粒界相αを形成させることができる。さらに、R/T比率を十分に大きくすることで、粒界相に十分なRが存在し、Mo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域における粒界相αの断面積割合を30%以上とすることできる。
高温加熱下でスパッタリングした後は、基板の温度を400℃〜600℃に保ちながらスパッタリングを行う。この温度でスパッタリングすることで、主相(2−14−1相)が結晶化し、かつ適切な粒成長を促すことができる。あるいは、高温加熱下でスパッタリングした後は、基材を室温に保ち、成膜後に400℃〜1100℃の熱処理を行うことによって主相を結晶化させることも可能である。この場合、成膜後のR−T−B系薄膜は、通常数十nm程度の微細結晶やアモルファスから成っており、熱処理によって結晶が成長する。熱処理は、酸化、窒化を極力低減するため、真空もしくは不活性ガス中で行うことが好ましい。同様の目的で、熱処理機構と成膜装置は真空中で搬送可能であることがより好ましい。熱処理時間は短時間であることが望ましく、1分〜1時間の範囲で十分である。また、成膜中の加熱と熱処理は、任意に組み合わせて行うことが可能である。
以上、本件発明を好適に実施するための製造方法に関する形態を説明したが、次いで、本件発明の異方性R−T−B系薄膜永久磁石について、各項目を評価する方法について説明する。
本件発明において、R−T−B系薄膜永久磁石の組成は、ICP質量分析法(ICP:Inductively Coupled Plasma Mass Spectrametry)にて決定することが可能である。ここで、仕込み組成と薄膜組成のズレが1.0at%未満であることを確認する。
主相粒子の結晶構造は、X線回折法(XRD:X−ray Diffraction)によって主たる生成相が正方晶R14B構造に帰属されることを確認する。X線回折測定は、Cu管球を用い、出力1.8kWにてθ−2θ法にて行う。
主相粒子の配向性は、配向度にて決定することが可能である。配向度を測定するには、XRDのθ−2θ法によって得られた回折ピークを基にロットゲーリング法により配向度を算出する。ロットゲーリング法は、(00l)反射の成分のX線回折強度I(00l)と(hkl)反射の成分のX線回折強度I(hkl)に基づいて、下記数式1により配向度fcを算出する方法である。
[数式1]

ΣI(00l)
fc=――――――― ×100
ΣI(hkl)
粒界相αの存在は、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置にて厚さ100nmの薄片状に加工し、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)に備えられたEDS装置(EDS:Energy Dispersive X−ray Spectrometry)にてRリッチ相の中央近傍を分析し、薄膜補正機能を用いることによって確認できる。ここで、希土類元素のうちR2が70at%以上含まれる相を粒界相αと定義する。
粒界相αの断面積割合は、EDS装置を用いてMo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域について、元素分布のマッピング画像から定量化できる。
磁気特性は、振動試料型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)を用い、基板に対して垂直方向に±4Tの磁界を加えて測定する。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ターゲット材は、下地膜および保護膜に用いるMoターゲット材と、スパッタリングによって形成したR−T−B系薄膜の組成が(R11−xR2)−T−Bとなるように調整したR1−Fe−B合金ターゲット材、R2−Fe−B合金ターゲット材、(R1、R2)−Fe−B合金ターゲット材を作製した。なお、各合金ターゲット材は、組成比を変えたものを複数作製した。表1に記載した仕込み組成となるよう、R1をNd、あるいはPr、R2をY、Ceの1種以上とした。ターゲット材のサイズは直径76.2mm、基板のサイズは10mm×10mmとし、膜の面内均一性が十分に保たれるよう、スパッタ装置の回転機構で基板を回転させながらスパッタリングを行った。
成膜装置は、10−8Pa以下まで排気が可能であり、同一槽内に複数のスパッタリング機構を有する装置を用いた。この成膜装置内にMoターゲット材と前記合金ターゲット材を、作製する試料の構成に応じて装着した。スパッタリングは、マグネトロン・スパッタリング法を用いることにより、1PaのAr雰囲気とし、RF、DC電源にて行った。尚、RF、DC電源のパワーと成膜時間は、試料の構成に応じて調整した。
基板には熱酸化膜付Si基板を使用し、膜構成は、先ず下地膜としてMoを200℃で20nm成膜した。なお、作製したMo下地膜は、(110)面が配向していることがXRDから確認できている。次に、各々の表1記載の実施例および比較例に応じてR−T−B系薄膜の仕込み組成比を調整し、熱酸化膜付Si基板を30℃〜610℃に加熱し、R−T−B系薄膜厚みを20nm狙いで成膜を行った。その後、熱酸化膜付Si基板が480℃まで降温するのを待ち、780nm狙いで成膜を行った。R−T−B系薄膜成膜後に保護膜として、酸化防止のため再びMoを50nm成膜した。
仕込み組成のR1とR2を調整することによって、R−T−B系薄膜内の総希土類量に対するR2の割合と粒界相α内の希土類量に対するR2の割合を制御した。また、R/Tを調整することによって、粒界相αの断面積割合を制御した。また、成膜中に基板を高温加熱することで、粒界相αの形成を制御した。
作製した試料は、ICP質量分析法によって仕込み組成と薄膜組成のズレが1.0at%未満であることを確認し、XRDによって主たる生成相が正方晶R14B型に帰属されることを確認すると共に配向度を算出した後、VSMを用いて残留磁束密度Brを求めた。なお、残留磁束密度Brは50個の試料を測定して平均の値とした。その後、FIBにて試料の加工を行い、STEM−EDSにて図1のような画像データから粒界相αの組成と断面積割合を定量化した。
粒界相αの組成と断面積割合の算出方法について記載する。STEM−EDSにてMo下地と磁性層の界面近傍を200nm×200nmの視野で、300μm間隔で20か所測定した。解析はMo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域で行った。Fe、R1、R2の元素マッピングを行うことで、3種類の相(主相、Rリッチ相、粒界相α)に分類した。主相は、希土類元素とFeの比率が大凡2:14であることから判断した。Rリッチ相は、Fe比率が主相未満であり、R1とR2の比率が仕込み比率とほぼ同じであることから判断した。粒界相αは、Fe比率が主相未満であり、希土類元素のうち70at%以上がR2であることから判断した。粒界相αは、この方法で各視野5点、20か所の視野で合計100点の組成を求め、平均値を算出した。さらに元素マッピングより、Mo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域における粒界相αの断面積割合を算出した。
表1に、各々の試料の仕込み組成と成膜時の高温加熱の温度を示す。また、作製した試料の分析によって得られた粒界相α内の希土類量に対するR2の割合とR−T−B系薄膜のMo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域における前記粒界相αの断面積割合についても表1に記載する。
(実施例1)
表1に示す通り、R1としてNd、R2としてYを選択し、仕込み組成(Nd0.950.0522.7Fe64.812.5のNd−Y−Fe−B薄膜を前記述の成膜方法にて薄膜永久磁石を得た。得られた薄膜永久磁石は、前記述の評価方法にて評価を行った。
(比較例1)
仕込み組成のR1としてNdを選択し、R2を添加しないこと以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例2)
仕込み組成のR2としてYを選択し、R1を添加しないこと以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例3)
仕込み組成のR2としてCeを選択し、R1を添加しないこと以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例2)
仕込み組成のR1をNd、R2をYとし、xを0.30とする以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例3)
仕込み組成のR1をPr、とする以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例4)
仕込み組成のR/T比率を0.25とする以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例4)
熱酸化膜付Si基板を加熱なしの30℃としR−T−B系薄膜厚みを20nm狙いで成膜を行うこと以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例5)
基板加熱温度を480℃としR−T−B系薄膜厚みを20nm狙いで成膜を行うこと以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例6)
基板加熱温度を550℃としR−T−B系薄膜厚みを20nm狙いで成膜を行うこと以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例7)
下地膜としてVを200℃で20nm成膜すること以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例8)
仕込み組成のR/T比率を0.15とする以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例5)
仕込み組成のR1をNd、R2をYとし、xを0.50とする以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例6)
基板加熱温度を680℃としR−T−B系薄膜厚みを20nm狙いで成膜を行うこと以外は実施例5と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例9)
仕込み組成のR1をNd、R2をYとし、xを0.70とする以外は実施例2と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例7)
仕込み組成のR1をNd、R2をY70Ce30とし、xを0.50とする以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例8)
仕込み組成のR1をNd、R2をCeとし、xを0.05とする以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例9)
仕込み組成のR1をNd、R2をCeとし、xを0.30とする以外は実施例7と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例10)
仕込み組成のR1をNd、R2をCeとし、xを0.50とする以外は実施例7と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例10)
仕込み組成のR1をNd、R2をCeとし、xを0.60とする以外は実施例7と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
Figure 2016186990
表2に、表1の実施例1〜10および比較例1〜10の試料について、各々配向度fcと残留磁束密度Brを示す。

Figure 2016186990
[実施例1〜10、比較例1]
Ndの一部をYとCeのうち少なくとも1つ元素で置換させる方が、残留磁束密度が高いことがわかった。これは、高いc軸配向の(R11−xR214Bが得られたためである。
[実施例1〜10、比較例2、3、9、10]
実施例1〜10のほうが比較例2、3、9、10より高い残留磁束密度が得られることが分かった。これは、YおよびCeの磁化が低いため、xを0.5より大きくしたことにより残留磁束密度が低下したためである。
[実施例2、比較例4〜6]
R−T−B系薄膜厚みを20nm狙いで成膜を行う際、基板加熱温度が低かったため比較例4、5では、Rリッチ相は十分に存在するが、Rリッチ相の希土類元素のうちR2の割合が70at%未満であり、粒界相αが得られなかった。また、比較例6では、R2の割合(平均値)が70.2at%の粒界相αは形成されたが、高温加熱の温度が低いため断面積割合が30%未満であった。そのため粒界相α中のR2によるMo表面の酸素除去効果が十分に得られず、c軸配向性が向上せず、残留磁束密度が低下した。
[実施例5、6]
高温加熱の温度が高いため断面積割合が78%と高くなった場合も、断面積割合が44%であった場合と同様の効果が得られることが確認できた。
[実施例2、3]
R1をPr、R2をYとした場合も、R1をNd、R2をYとした場合と同様の効果が得られることが確認できた。
[実施例2、比較例7]
下地膜をVとした場合、VとR14Bの格子定数がマッチングせず、c軸配向性が低下した。これにより残留磁束密度も低下した。
[実施例2、比較例8]
R/Tを0.15とした場合、R−T−B系薄膜全体においてRリッチ相が減り、R−T−B系薄膜厚みを20nm狙いで成膜を行う際、基板加熱温度が十分であっても粒界相αの存在割合が低く、粒界相α中のR2によるMo表面の酸素除去効果が十分に得られず、c軸配向性が向上せず、残留磁束密度が低下した。

Claims (1)

  1. Mo下地上の、薄膜の組成が(R11−xR2)−T−Bであり、主相粒子(2−14−1相)と粒界相αを含み、Mo下地と磁性層の界面から磁性層側に厚み10nmの領域における前記粒界相αの断面積割合が30%以上であることを特徴とする異方性R−T−B系薄膜永久磁石。
    ただし、R1はY、Ceを含まない希土類元素の少なくとも1種であり、R2はY、Ceの1種以上からなる希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素であり、xは0.5以下(0を含まず)である。粒界相αは、粒界に存在するRリッチ相の1種であり、αに含まれる希土類元素のうち70at%以上がR2である。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018174214A (ja) * 2017-03-31 2018-11-08 Tdk株式会社 永久磁石薄膜
CN112071544A (zh) * 2020-08-20 2020-12-11 钢铁研究总院 一种低密度含y永磁体及其制备方法
CN114420439A (zh) * 2022-03-02 2022-04-29 浙江大学 高温氧化处理提高高丰度稀土永磁抗蚀性的方法

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