JP2017183324A - R−t−b系永久磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のR−T−B系永久磁石と比較して、磁気特性を著しく低下させることなく、温度特性に優れた永久磁石を提供することである。【解決手段】本願発明は、R−T−B系の構造において、R−T1−BとR−Fe−Bを交互に積層し、R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の交互積層構造を形成することによって、R−Fe−B系結晶層の高い保磁力を維持しながら、R−T1−B系結晶層のキュリー温度上昇効果を得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、希土類永久磁石に関し、特にR−T−B系永久磁石におけるTの一部を選択的にFeを含まない1種以上の遷移金属元素に置換することによって得られる永久磁石に関する。
正方晶R14B化合物を主相とするR−Tx−B系永久磁石(Rは希土類元素、TxはFeまたはその一部がCoによって置換されたFe)は優れた磁気特性を有することが知られており、1982年の発明(特許文献1:特開昭59−46008号公報)以来、代表的な高性能永久磁石である。
特に、希土類元素RがNd、Pr、Dy、Ho、TbからなるR−T−B系永久磁石は異方性磁界Hが大きく永久磁石材料として好ましい。中でも希土類元素RをNdとしたNd−Fe−B系永久磁石は、飽和磁化I、キュリー温度T、異方性磁界Hのバランスが良く、資源量、耐食性において他の希土類元素Rを用いたR−T−B系永久磁石よりも優れているために民生、産業、輸送機器などに広く用いられている。
近年では、電子部品と同様に様々な分野で磁石の耐熱性が要求されており、さらに高特性なR−T−B系永久磁石が要求されている。
特開昭59−46008号公報
M.Sagawa et al、J.Appl.Phys.61巻、3559頁、1987年
非特許文献1には、Nd−Fe−B系永久磁石にCoを添加したNd−Fe−Co−B系永久磁石が開示されており、キュリー温度が向上するとしている。しかしながら、非特許文献1に開示されているNd−Fe−B系永久磁石はCoを添加することで、保磁力が低下する問題がある。
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、保磁力を低下させずに高いキュリー温度を有するR−T−B系永久磁石を提供することを目的とする。
本発明のR−T−B系永久磁石は、R14B構造を有し、R−T1−B系結晶層(ただし、Rは希土類元素の少なくとも1種であり、T1はFeを含まない1種以上の遷移金属元素)とR−Fe−B系結晶層が交互に積層していることを特徴とする。
本発明者らは、R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層を交互に積層させることで、保磁力を低下させず、キュリー温度向上効果が得られる事実を見出した。この理由は定かでないが、交互積層構造を有していない場合、T1添加によってキュリー温度上昇するが、保磁力が低下してしまう。例えば、RをNd、T1をCoとした場合、Nd−Co−Bは、磁化容易軸方向が面内にあり、1軸異方性を示さない。このことが要因と考えられる。一方、交互積層構造を有している場合、格子ひずみによって磁化容易軸の面直方向成分が大きくなる傾向があると発明者らは考える。これによって、保磁力を低下させることなく、キュリー温度を上昇させることができる。
本発明のR−T−B系永久磁石は、T1atのTat(Tatは、T1の原子量T1atとFeの原子量の総和)に対する原子組成比T1at/Tatが、0.1以上且つ0.6以下の範囲内にあることが好ましい。実験結果より、係る範囲とすることで、特に高い飽和磁化が得られることを見出した。ここでのTとは、T1およびFeの総称である。
本発明のR−T−B系永久磁石は、R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の各々の厚みが0.6nm以上且つ300nm以下であることが好ましい。実験結果より、係る範囲とすることで、効果的にひずみが伝わり保磁力が向上することを見出した。
本発明によれば、保磁力を低下させずに高いキュリー温度を有するR−T−B系永久磁石を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の組成は、R−T1−Fe−Bで表される。Rは希土類元素の少なくとも1種である。なお、Rは高い異方性磁界を得ることを考慮すると、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbであることが好ましく、また、原料価格と耐食性の観点から、Ndが更に好ましい。
本実施形態に係るT1は、Feを含まない1種以上の遷移金属元素である。なお、T1は高い飽和磁化を得ることを考慮すると、Co、Ni、Mn、Cr、Vであることが好ましく、また、原料価格と耐食性の観点から、Co、Niが更に好ましい。
本実施形態において、Bはその一部をCで置換しても良い。Cの置換量はBに対して10at%以下とすることが好ましい。
本実施形態において、他の元素の含有を許容する。例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。また、原料に由来する不純物、又は製造時に混入する不純物としての他の成分を含んでもよい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層が交互に積層している。RT114B結晶とRFe14B結晶には格子ミスマッチがある。例えば、RをNd、T1をCoとした場合、NdCo14B結晶のa軸はNdFe14B結晶のa軸と比較して2%程度短い。そのため、NdCo14B結晶のa軸は伸びる方向、NdFe14B結晶のa軸は縮む方向に作用する格子歪が生じる。これにより、NdCo14B結晶の磁化容易軸のc軸方向成分が大きくなり、保磁力を低下させることなく、キュリー温度上昇させることができる。
本実施形態に係るRT114B結晶とRFe14B結晶は、それぞれ層を形成している。ここで、R−T1−B系結晶層とは、RT114B結晶がab面(結晶のa軸およびb軸がなす面)方向に連続に存在している状態を表し、同様に、R−Fe−B系結晶層とはRFe14B結晶がab面方向に連続に存在している状態を表す。そのため、これらの層と層の界面に対しc軸が略垂直に向いている。なお、より広い領域で積層構造を維持するために、各結晶層界面の凹凸が少ない状態であることが好ましく、また、コヒーレント成長により格子歪が生じるという観点から、その界面が原子レベルで平滑なことが更に好ましい。
ここで好ましくは、T1atのTatに対する原子組成比T1at/Tatが、0.1以上且つ0.6以下の範囲内とする。係る範囲とすることで、R−Fe−B系結晶層の高い保磁力を維持とR−T1−B系結晶層のキュリー温度向上の効果のバランスがとれ、特に高い磁気特性を得ることができる。
さらに好ましくは、R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の各々の厚みが0.6nm以上且つ300nm以下とする。R14Bの単磁区臨界粒径が300nm程度であるため、各々の結晶層の厚みを300nm以下にすることで、R−T−B系永久磁石において一般的に論述されているニュークリエーション型の保磁力発現機構に加え、単磁区由来の保磁力発現機構も生じるようになり、高い保磁力が得られる。一方、R14Bの結晶構造におけるc軸方向の原子間距離は0.6nm程度であり、これ以下でR−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の交互積層構造を得ることはできない。各々の結晶層の厚みを0.6nm未満にするとT1とFeが一部ランダムに配置したR14Bの結晶構造となる。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、民生、産業、輸送機器など幅広い利用を念頭に置いているため、キュリー温度が350℃以上、保磁力が10.0kOe以上、飽和磁化10.0kG以上すべてを満たすことを特徴とする。
以下、本件発明の製造方法の好適な例について説明する。
R−T−B系永久磁石の製造方法は、焼結法、超急冷凝固法、蒸着法、HDDR法などがあるが、蒸着法におけるスパッタリングによる製造方法の一例について説明する。
材料として、先ずターゲット材を準備する。ターゲット材は、所望の組成を有するR−T1−B合金ターゲット材およびR−Fe−B合金ターゲット材とする。ここで、ターゲット材の組成比とスパッタリングで成膜したR−T−B系薄膜の組成比は、各元素のスパッタ率が異なるためにずれる場合があり、調整が必要である。4個以上のスパッタリング機構を有する装置を使用する場合、R、T1、Fe、B各々の単元素ターゲット材を準備し、所望の割合でスパッタリングすることもできる。また、R、T1−B、Fe−Bのように、一部合金ターゲット材を用いて、所望の割合でスパッタリングすることもできる。他の元素、例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等を適宜含有させたい場合も同様に、合金ターゲット材、単元素ターゲット材の両方の方法で含有させることができる。一方で、O、N、C等の不純物元素を極力低減することが望ましいため、ターゲット材中の不純物含有量も極力低減する。
ターゲット材は、保管中に表面から酸化する。特に、Rの希土類ターゲット材を使用する場合は酸化の速度が速い。そのため、これらのターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておく必要がある。
スパッタリングにて成膜を行う基板は、各種の金属、ガラス、シリコン、セラミックスなどを選択して使用することができる。ただし、所望の結晶組織を得るために高温での処理を行うため、高融点な材料を選択することが望ましい。なお、高温処理における耐性の他に、R−T−B系薄膜との密着性が不足する場合があり、その対策としてCrやTi、Ta、Moなどの下地膜を設けることにより密着性を向上することが通常行われる。R−T−B系薄膜の成膜を行った後、R−T−B系薄膜の酸化を防ぐため、Ti、Ta、Moなどの保護膜を設けることができる。
スパッタリングを行う成膜装置は、O、N、C等の不純物元素を極力低減することが望ましいため、10−6Pa以下、より好ましくは10−8Pa以下となるまで真空槽内が排気されていることが望ましい。高い真空状態を保つため、成膜室と繋がった基板導入室を有することが望ましい。また、ターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておく必要があるため、成膜装置は、基板とターゲット材の間に真空状態で操作可能な遮蔽機構を有することが望ましい。加えて、基板加熱下で成膜を行うため、基板加熱機構を有している必要がある。
スパッタリングの方法は、不純物元素を極力低減するという目的で、より低圧のAr雰囲気でスパッタリングが可能となるマグネトロン・スパッタリング法が好ましい。ここで、Fe、Coを含むターゲット材は、マグネトロン・スパッタリングの漏れ磁束を大きく低減させ、スパッタリングを困難にするため、ターゲット材の厚みを適切に選択することが必要である。スパッタリングの電源は、DC、RFどちらでも使用可能であり、ターゲット材に応じて適宜選択できる。
上述したターゲット材および基板を用いて、R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の交互積層構造を作製するには、R−T1−B合金ターゲット材とR−Fe−B合金ターゲット材を用い交互にスパッタリングする。このとき、各合金ターゲット材の組成は、Rat(Ratは、Rの原子量)のTatに対する原子組成比Rat/Tatが0.14以上且つ0.35以下の範囲とする。Rat/Tatが0.14より小さい場合、RFe14B結晶の化学量論比より小さい値であるため、R14B結晶(主相)の比率が下がってしまう。Rat/Tatが0.35より大きい場合、R量が多いため副相(RT結晶など)が増え、飽和磁化値の低下が懸念される。R、T1、Fe、B各々の単元素ターゲット材を用いる場合には、R、T1、Bの3種のターゲット材を用い所望の割合でスパッタリングした後に、R、Fe、Bの3種のターゲット材を所望の割合でスパッタリングする。これを交互に繰り返すことによって合金ターゲット材を用いた場合と同様の交互積層構造を得ることができる。R、T1、BおよびR、Fe、Bにように3種のターゲット材を用いスパッタリングする際、3元同時スパッタリング、もしくは各元素を単独でスパッタリングする積層スパッタリングのどちらでも可能である。積層スパッタリングであっても、適切な割合、厚みで積層し、加熱することで熱力学的安定性によってR−T−B系の結晶構造が形成される。また、交互積層構造は、基板を成膜装置内で移送することによって、別室のチャンバーにて異なるターゲット材のスパッタリングを行うことによっても作製可能である。
所望の組成の薄膜を得るためには、成膜時の基板加熱温度、成膜レートおよび成膜時間を調整してスパッタリングを行う。成膜レートの確認は、所定のパワー、所定の時間で成膜した膜を接触式段差計で測定することが一般に行われている。また、成膜装置内に水晶振動子膜厚計等を備え付けて用いることも可能である。
R−T1−B系結晶層の厚みとは、T1が存在する層の厚みとする。R−Fe−B系結晶層の厚みとは、Feが存在する層の厚みとする。これらの厚みは、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)に備えられたエネルギー分散型X線分析(EDS:Energy Dispersive X−ray Spectrometry)装置にて断面観察を行い、元素分布マッピング画像から定量化することができる。EDS装置は、電子線照射により発生する特性X線をエネルギーで分光し、検出する。このとき、特性X線のエネルギーは元素固有のため、試料を構成する元素の同定が行える。
交互積層構造におけるR−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の厚みは、スパッタリングのパワーおよび時間を調整することで任意の厚みに設定することができる。R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の厚みに差をつけることでT1atのTatに対する原子組成比T1at/Tatを調整することができる。ここで、厚みの調整を行うには、あらかじめ成膜レートの確認を行っておく必要がある。
積層構造の繰り返し回数は、R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層を積層した1セット以上で、任意の回数に設定することができる。ここで、繰り返しの度に厚さを変化させていくことで厚みに傾斜をつけるといったことも可能であり、これによって局所的な特性向上を狙うこともできる。
R−T−B系薄膜の成膜を開始して膜厚0.6nm分スパッタリングする間、基板の高温加熱を実施する。この高温加熱とは、600℃〜680℃に加熱することである。高温加熱を実施することにより、高配向な結晶化が促進する。その後のスパッタリングは、基板を400℃〜550℃で加熱し結晶化させる方法と、基板を室温に保ち、成膜後に熱処理を行うことによって結晶化させる方法がある。この成膜後に熱処理を行う方法の場合、成膜後のR−T−B膜は、通常数十nm程度の微細結晶やアモルファスから成っており、熱処理によって結晶が成長する。熱処理は、酸化、窒化を極力低減するため、真空もしくは不活性ガス中で行うことが好ましい。同様の目的で、熱処理機構と成膜装置は真空中で搬送可能であることがより好ましい。熱処理時間は短時間であることが望ましく、1分〜1時間の範囲で十分である。また、成膜中の加熱と熱処理は、任意に組み合わせて行うことが可能である。
本発明者らは、R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の格子定数は近いため、エピタキシャル成長しやすいと考える。そこで、R−T−B系薄膜の成膜を開始して膜厚0.6nm分スパッタリングする間、基板の高温加熱を実施し高配向で平滑な膜にしておくことで、その後に形成する薄膜の結晶方位を制御することができる。すなわち、RFe14B結晶の磁化容易軸であるc軸を基板に対して略垂直方向に配向させるため、この高温加熱の手順は必須なのである。
R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層は、スパッタリングのエネルギーと基板加熱のエネルギーによって結晶化される。スパッタリングのエネルギーは、スパッタ粒子が基板に付着し、結晶形成後、熱に変わりすぐに失われる。一方、基板加熱のエネルギーは成膜時に継続して供給されるが、400℃〜550℃の熱エネルギーではR−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の拡散はほぼ進行せず、交互積層構造が維持される。
このまま、薄膜磁石として用いてもよいが、本実施形態によって得られた交互積層体を用いて、さらに希土類ボンド磁石や希土類焼結磁石とすることができる。以下、その製造方法を述べる。
希土類ボンド磁石の製造方法の一例について説明する。先ずスパッタリングで作製した交互積層構造を有する膜を基板から剥がし微粉砕する。その後、樹脂を含む樹脂バインダーと本粉末とを例えば加圧ニーダー等の加圧混練機で混練して、樹脂バインダーと交互積層構造を有するR−T−B系永久磁石粉末とを含む希土類ボンド磁石用コンパウンド(組成物)を調製する。樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のエラストマー、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂がある。なかでも、圧縮成形をする場合に用いる樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂がより好ましい。また、射出成形をする場合に用いる樹脂は熱可塑性樹脂が好ましい。また、希土類ボンド磁石用コンパウンドには、必要に応じて、カップリング剤やその他の添加材を加えてもよい。
また、希土類ボンド磁石におけるR−T−B系永久磁石粉末と樹脂との含有比率は、本粉末100質量%に対して、樹脂を例えば0.5質量%以上20質量%以下含むことが好ましい。R−T−B系永久磁石粉末100質量%に対して、樹脂の含有量が0.5質量%未満であると、保形性が損なわれる傾向があり、樹脂が20質量%と超えると、十分に優れた磁気特性が得られ難くなる傾向がある。
上述の希土類ボンド磁石用コンパウンドを調製した後、この希土類ボンド磁石用コンパウンドを射出成形することにより、交互積層構造を有するR−T−B系永久磁石粉末と樹脂とを含む希土類ボンド磁石を得ることができる。射出成形により希土類ボンド磁石を作製する場合、希土類ボンド磁石用コンパウンドを、必要に応じてバインダー(熱可塑性樹脂)の溶融温度まで加熱し、流動状態とした後、この希土類ボンド磁石用コンパウンドを所定の形状を有する金型内に射出して成形を行う。その後、冷却し、金型から所定形状を有する成形品(希土類ボンド磁石)を取り出す。このようにして希土類ボンド磁石が得られる。希土類ボンド磁石の製造方法は、上述の射出成形による方法に限定されるものではなく、例えば希土類ボンド磁石用コンパウンドを圧縮成形することによりR−T−B系永久磁石粉末と樹脂とを含む希土類ボンド磁石を得るようにしてもよい。圧縮成形により希土類ボンド磁石を作製する場合、上述の希土類ボンド磁石用コンパウンドを調製した後、この希土類ボンド磁石用コンパウンドを所定の形状を有する金型内に充填し、圧力を加えて金型から所定形状を有する成形品(希土類ボンド磁石)を取り出す。金型にて希土類ボンド磁石用コンパウンドを成形し、取り出す際には、機械プレスや油圧プレス等の圧縮成形機を用いて行なわれる。その後、加熱炉や真空乾燥炉などの炉に入れて熱をかけることにより硬化させることで、希土類ボンド磁石が得られる。
成形して得られる希土類ボンド磁石の形状は特に限定されるものではなく、用いる金型の形状に応じて、例えば平板状、柱状、断面形状がリング状等、希土類ボンド磁石の形状に応じて変更することができる。また、得られた希土類ボンド磁石は、その表面上に酸化層や樹脂層等の劣化を防止するためにめっきや塗装を施すようにしてもよい。
希土類ボンド磁石用コンパウンドは目的とする所定の形状に成形する際、磁場を印加して成形して得られる成形体を一定方向に配向させるようにしてもよい。これにより、希土類ボンド磁石が特定方向に配向するので、より磁性の強い異方性希土類ボンド磁石が得られる。
希土類焼結磁石の製造方法の一例について説明する。上述のように、交互積層構造を有するR−T−B系永久磁石粉末を、例えばプレス成形などにより目的とする所定形状に成形する。交互積層構造を有するR−T−B系永久磁石粉末を成形して得られる成形体の形状は特に限定されるものではなく、用いる金型の形状に応じて、例えば平板状、柱状、断面形状がリング状等、希土類焼結磁石の形状に応じて変更することができる。
次いで、成形体を、例えば、真空中又は不活性ガスの存在下、1000℃から1200℃の温度で、1時間から10時間加熱処理して焼成する。これにより、焼結体(希土類焼結磁石)が得られる。焼成後、得られた希土類焼結磁石を焼成時よりも低い温度で保持することなどによって、希土類焼結磁石に時効処理を施す。時効処理は、例えば、700℃から900℃の温度で1時間から3時間、更に500℃から700℃の温度で1時間から3時間加熱する2段階加熱や、600℃付近の温度で1時間から3時間加熱する1段階加熱等、時効処理を施す回数に応じて適宜処理条件を調整する。このような時効処理によって、希土類焼結磁石の磁気特性を向上させることができる。
得られた希土類焼結磁石は、所望のサイズに切断するほか、表面を平滑化することで、所定形状の希土類焼結磁石としてもよい。また、得られた希土類焼結磁石は、その表面上に酸化層や樹脂層等の劣化を防止するためめっきや塗装を施すようにしてもよい。
また、交互積層構造を有するR−T−B系永久磁石粉末を目的とする所定の形状に成形する際、磁場を印加して成形して得られる成形体を一定方向に配向させるようにしてもよい。これにより、希土類焼結磁石が特定方向に配向するので、より磁性の強い異方性希土類焼結磁石が得られる。
以上、本件発明を好適に実施するための製造方法に関する形態を説明したが、次いで、本件発明のR−T−B系永久磁石について、各項目を評価する方法について説明する。
本件発明において、R−T−B系永久磁石の組成比は、ICP質量分析法(ICP:Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)にて決定することが可能である。ここで、組成の設計値とのずれが1.0at%未満であることを確認する。
R−T−B系永久磁石の結晶構造は、X線回折法(XRD:X−ray Diffraction)によって主たる生成相が正方晶R14B構造に帰属されることを確認する。X線回折測定は、Cu管球を用い、出力1.8kWにてθ−2θ法にて行う。
R−T−B系永久磁石が交互積層構造を有していることを調べるため、磁気特性の評価後に断面観察を行う。集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置にて厚さ100nmの薄片状に加工し、STEMを用いて観察を行う。ここで、設計通りの交互積層構造を有していることを確認する。
R−T−B系永久磁石が有している交互積層構造のR−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の組成は、EDS装置による点分析にて確認することが可能である。各層の測定を5箇所で行い、平均値から判断する。
R−T1−B系結晶層の厚みとR−Fe−B系結晶層の厚みは、走査透過電子顕微鏡に備えられたEDS装置にて元素分布のマッピング画像から計測する。各層の測定を5箇所で行い、平均値から判断する。
キュリー温度は、振動試料型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)を用いて求めた。90kOeで着磁した試料に対して、2kOeの磁場を印加しながら、Ar雰囲気中で1℃/minで25℃〜750℃まで昇温を行った。この温度―磁化曲線において、接線の勾配が最大になる点で直線を引き、温度軸との交点での温度をキュリー温度とした。
保磁力と飽和磁化は、VSMを用い、基板に対して垂直方向に±4Tの磁界を加えて測定する。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ターゲット材は、下地膜および保護膜に用いるMoターゲット材と交互積層構造構成する各元素(R、T1、Fe、B)のターゲット、スパッタリングによって形成したR−T1−B系結晶層の組成がR−T114−Bとなるように調整したR−T1−B合金ターゲット材、R−Fe−B系結晶層の組成がR−Fe14−Bとなるように調整したR−Fe−B合金ターゲット材を作製した。このとき、各合金ターゲット材の組成は、RatのTatに対する原子組成比Rat/Tatが0.25となるように作製した。表1に記載した主相組成となるよう、RをNd、あるいはPr、T1をCo、Niとした。ターゲット材のサイズは直径76.2mm、基板のサイズは10mm×10mmとし、膜の面内均一性が十分に保たれるよう、スパッタ装置の回転機構で基板を回転させながらスパッタリングを行った。
成膜装置は、10−8Pa以下まで排気が可能であり、同一槽内に複数のスパッタリング機構を有する装置を用いた。この成膜装置内に、作製する試料の構成に応じてMoターゲット材と前記ターゲット材を装着した。スパッタリングは、マグネトロン・スパッタリング法を用いることにより、1PaのAr雰囲気とし、RF、DC電源にて行った。尚、RF、DC電源のパワーと成膜時間は、試料の構成に応じて調整した。
基板には熱酸化膜付Si基板を使用し、膜構成は、先ず下地膜としてMoを200℃で20nm成膜した。なお、作製したMo下地膜は、(110)面が配向していることがXRDから確認できている。次に、各々の表1記載の実施例および比較例に応じてR−T−B系永久磁石薄膜の組成の設計値を調整し、熱酸化膜付Si基板を650℃に加熱し、0.6nmの成膜を行った。その後、熱酸化膜付Si基板が480℃まで降温するのを待ち、各々の表1記載の実施例および比較例に応じて繰り返し回数分の成膜を行った。スパッタリング方法としては、試料の構成に応じて2つのターゲット材を用い交互にスパッタリングする方法と、2つのターゲット材を用い同時にスパッタリングする方法の2通りから選択した。R−T−B系永久磁石薄膜成膜後に保護膜として、酸化防止のため再びMoを20nm成膜した。
組成の設計値のT1とFeを調整することによって、T1atのTatに対する原子組成比T1at/Tatを制御した。また、RF、DC電源のパワーと成膜時間を調整することによって、R−T1−B系結晶層の厚みとR−Fe−B系結晶層の厚みを制御した。
作製した試料は、XRDによって主たる生成相が正方晶R14B型に帰属されることを確認した後、ICP質量分析法によって組成の設計値と薄膜組成のずれが1.0at%未満であることを確認した後、VSMを用いて保磁力Hcと飽和磁化Iを求めた。なお、保磁力と飽和磁化は50個の試料を測定して平均の値とした。その後、FIBにて試料の加工を行い、STEM−EDSで点分析にてR−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の組成を算出し、設計値とのずれが1at%未満であることを確認し、同装置による元素分布のマッピング画像からR−T1−B系結晶層の厚みとR−Fe−B系結晶層の厚みを計測し、設計厚みとのずれが10%未満であることを確認した。
(実施例1)
表1に示す通り、RとしてNd、T1としてCoを選択し、Nd−Co−B結晶層の組成の設計値はNd18.0Co72.010.0、厚さの設計値は325nmとし、Nd−Fe−B結晶層の組成の設計値はNd18.0Fe72.010.0、厚さの設計値は
175nmとして、Nd−Co−B合金ターゲット材とNd−Fe−B合金ターゲット材を用い交互にスパッタリングし、これを10回繰り返す成膜方法にてNd−Co−Fe−B薄膜永久磁石を得た。得られた薄膜永久磁石は、前記述の評価方法にて評価を行った。
(比較例1)Nd−Co−B合金ターゲット材のみを用い5000nmスパッタリングする以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例2)Nd−Fe−B合金ターゲット材のみを用い5000nmスパッタリングする以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(比較例3)
Nd−Co−B合金ターゲット材とNd−Fe−B合金ターゲット材を用い同時に5000nmスパッタリングする以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例2)
各元素(Nd、Co、Fe、B)のターゲット材を用い、各元素(Nd、Co、B)のターゲット材で325nmと各元素(Nd、Fe、B)のターゲット材で175nmを順番にスパッタリングする方法を10回繰り返す以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例3)
Nd−Co−B合金ターゲット材で50nmとNd−Fe−B合金ターゲット材で450nmを交互にスパッタリングし、これを10回繰り返す以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例4)
Nd−Co−B合金ターゲット材で200nmとNd−Fe−B合金ターゲット材で600nmを交互にスパッタリングし、これを6回繰り返す以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例5)
Nd−Co−B合金ターゲット材で450nmとNd−Fe−B合金ターゲット材で300nmを交互にスパッタリングし、これを7回繰り返す以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例6)
Nd−Co−B合金ターゲット材で260nmとNd−Fe−B合金ターゲット材で140nmを交互にスパッタリングし、これを12回繰り返す以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例7)
Nd−Co−B合金ターゲット材で100nmとNd−Fe−B合金ターゲット材で300nmを交互にスパッタリングし、これを15回繰り返す以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例8)
Nd−Co−B合金ターゲット材で0.9nmとNd−Fe−B合金ターゲット材で0.6nmを交互にスパッタリングし、これを3000回繰り返す以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例9)
T1としてNiを選択する以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例10)
RとしてPrを選択する以外は実施例1と同様に薄膜永久磁石を作製した。そして、実施例1と同様に評価を行った。
Figure 2017183324
表2に、表1の実施例1〜7および比較例1〜3の試料について、各々キュリー温度、保磁力、飽和磁化を示す。
Figure 2017183324
[実施例1〜10、比較例1]
R−Fe−B結晶層が存在している方が、保磁力が高いことが分かった。これは、高い1軸異方性が得られたためである。
[実施例1〜10、比較例2]
R−T1−B結晶層が存在している方が、キュリー温度が高いことが分かった。これは、T1添加によってキュリー温度上昇効果が得られたためである。
[実施例1、比較例3]
交互積層構造を形成している方が、保磁力が高いことが分かった。これは、格子ひずみによって磁化容易軸の面直方向成分が大きくなる効果が得られたためである。
[実施例1、2]
各元素(Nd、Co、Fe、B)のターゲット材を用いた場合も、合金ターゲット材を用いた場合と同様の効果が得られることが確認できた。
[実施例1、9]
T1をNiとした場合も、T1をCoとした場合と同様の効果が得られることが確認できた。
[実施例1、10]
RをPrとした場合も、RをNdとした場合と同様の効果が得られることが確認できた。

Claims (3)

  1. 14B構造を有し、R−T1−B系結晶層(ただし、Rは希土類元素の少なくとも1種であり、T1はFeを含まない1種以上の遷移金属元素)とR−Fe−B系結晶層が交互に積層していることを特徴とするR−T−B系永久磁石。
  2. T1atのTat(TatはT1atの原子量とFeの原子量の総和)に対する原子組成比T1at/Tatが、0.1以上且つ0.6以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のR−T−B系永久磁石。
  3. R−T1−B系結晶層とR−Fe−B系結晶層の各々の厚みが0.6nm以上且つ300nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のR−T−B系永久磁石。
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