JP6208197B2 - アンカーピン - Google Patents

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本発明は、例えばセメントモルタル製又はコンクリート製又はゴム製の覆工マット等の被固定部材を法面等の地盤に多数敷き詰めて固定する場合に使用するアンカーピンに関する。
従来のアンカーピンとして、下記特許文献1,2に開示のアンカーピンが既知である。
これら従来のアンカーピンは、被固定部材の上部に係止する頭部と該頭部から垂下し下端に先鋭部を有する脚部とを備え、該脚部の尖鋭部の基部外周面に抜け止め用の爪部を設ける構成となっており、該爪部が地盤に喰い付くことにより被固定部材の浮き上がりを防止しつつ被固定部材を固定することができる。
意匠登録第1247979号公報 実用新案登録第3153378号公報
上記従来のアンカーピンにあっては、地盤に食い込む爪部により安定した抜け止めを図りながら被固定部材を固定することができるが、冬季等の気温が低いときに凍上、つまり土中の水分が凍結して地盤が盛り上がる現象が生じた場合には、次のような問題点を有している。
すなわち、凍上が生じた場合には地盤自体が盛り上がるため、たとえ抜け止め用の爪部が地盤に食い込んでいたとしても被固定部材が地盤ごと浮き上がり、該被固定部材の浮き上がりに伴いアンカーピンも浮き上がることとなるが、その後に凍結していた水分が解けて地盤の盛り上がりがなくなると、それに伴い被固定部材のみが下がり、アンカーピンだけが突出した状態で取り残されてしまう問題点を有している。
また、凍上による被固定部材の浮き上がりとその後の被固定部材の沈下が繰り返されると、徐々にアンカーピンの突出量が増大し、最悪の場合にはアンカーピンが抜け外れてしまう問題点を有している。
したがって、従来のアンカーピンにあっては、上記のように突出した状態で取り残されたアンカーピンを再度打ち込む作業が必須となっていた。
本発明は、上述した従来のアンカーピンのように地盤に食い込む抜け止め用の爪部を設けることを廃して、被固定部材の浮き上がりと沈下、つまり被固定部材の上下動に敢えて追随する構成とした比類なきアンカーピンを提供する。
要述すると、本発明に係るアンカーピンは、地盤に被固定部材を固定するために使用するアンカーピンであって、被固定部材の上部に係止する頭部と、該頭部から垂下し下端に尖鋭部を有すると共に地盤からの抜け止め手段を有しない脚部と、上記頭部直下の上記脚部の外周面に設けた係合体とを備え、該係合体が上記被固定部材の下部に係合することにより、上記被固定部材の上下動に追随する構成とする。そのため、凍上によって地盤が盛り上がったときには、地盤の盛り上がりと共に上動した上記被固定部材の下部に上記係合体が係合して追随すると共に、凍上が解除されて地盤が元に戻るときには、上記被固定部材の下部と係合した上記係合体が該被固定部材により押圧されて該被固定部材の下動に追随することにより、アンカーピンだけが突出した状態で取り残されることがない。
加えて、上記係合体は上記脚部の地盤への打ち込み時には該脚部外周面に沿い、打ち込み後に上記被固定部材の直下において拡開する構成とし、スムーズな打ち込みを図ると共に上記係合体を上記被固定部材の直下で確実に待機させることができる。当該係合体の構成は、例えば、上記係合体を一対の弧状の金属片で構成し、該各金属片を上記脚部外周面に回動可能に軸支する構成により達成できる。又は上記係合体を一対の細長状の金属片で構成し、該各金属片における長手方向の一端部を上記脚部外周面に固定し、両金属片を逆ハの字状に固定する構成により達成できる。
又は、上記係合体を下端部が先細り形状の一対の金属片で構成し、該各金属片を上記脚部外周面に螺旋状に固定する構成により、上記係合体の耐久性を向上することもできる。

本発明に係るアンカーピンにあっては、地盤に打ち込まれる脚部に敢えて抜け止め手段を備えることを廃止して、アンカーピン全体を上下動可能にすると共に、係合体を被固定部材の下部に係合して被固定部材の上下動に追随することにより、凍上が生じて地盤が盛り上がった後に元に戻る場合でも、地面から突出することなく適切に被固定部材の固定状態を維持することができる。
本発明に係るアンカーピンの斜視図。 (A)乃至(C)は図1のアンカーピンの地盤への打ち込みの過程を順を追って説明する説明図。 本発明に係るアンカーピンの他例を示す斜視図。 (A),(B)は図3のアンカーピンの地盤への打ち込みの過程を順を追って説明する説明図。 本発明に係るアンカーピンの他例を示す斜視図。 (A),(B)は図5のアンカーピンの地盤への打ち込みの過程を順を追って説明する説明図。 被固定部材を地盤に多数敷き詰め、アンカーピンで固定した状態を示す説明図。 凍上が生じていない場合の被固定部材及びアンカーピンの状態を示す断面図。 凍上が生じた場合の被固定部材及びアンカーピンの状態を示す断面図。
以下、本発明に係るアンカーピンの実施形態を図1乃至図9に基づき説明する。
図1,図2は本発明に係るアンカーピン1の第一例を、図3,図4は同第二例を、図5,図6は同第三例を示している。
本発明に係るアンカーピン1は、図1,図3及び図5に示すように、基本構成として、被固定部材Pの上部Paに係止する頭部2と、頭部2から垂下し下端に尖鋭部4を有する脚部5と、頭部2直下の脚部5の外周面に設けた係合体3とを備え、図2,図4及び図6に示すように、被固定部材Pに穿設した貫通孔11を介して脚部5を地盤Gに打ち込み、係合体3を被固定部材Pの直下に待機させて使用に供する。
具体的構成について説明すると、図1,図2に例示するアンカーピン1は、係合体3を一対の弧状の金属片3A,3Bで構成し、該各金属片3A,3Bを頭部2直下の脚部5の外周面に回動可能に軸支する。すなわち、各金属片3A,3Bの中央部をそれぞれ軸6により回動可能に固定する。
図2(A)乃至図2(C)に示すように、本例のアンカーピン1にあっては、脚部5の地盤Gへの打ち込み時には、係合体3を構成する各金属片3A,3Bは、脚部5の外周面に沿うように長手方向が垂直方向となるように回動し、被固定部材Pに穿設された貫通孔11を円滑に通過した後、該被固定部材Pの直下の地中において拡開するように回動して待機する。この際には、各金属片3A,3Bの上端の係合部3Aa,3Baは被固定部材Pの下部Pbと僅かな間隔を置いて対向するが、凍上により地盤G中の水分が凍って該地盤Gが盛り上がったときには即座に被固定部材Pの下部Pbと係合する。
加えて、アンカーピン1の頭部2は被固定部材Pの上部Paに設けられた頭部係止用凹部10に嵌合し、これにより頭部2が被固定部材Pの上部Paに係止すると共に不用意に頭部2が被固定部材Pから突出しないようにする。
また、図3,図4に例示するアンカーピン1は、係合体3を一対の細長状の金属片3A,3Bで構成し、該各金属片3A,3Bにおける長手方向の一端部(下端部)を頭部2直下の脚部5の外周面に固定し、他端部(上端部)を拡開することにより、両金属片3A,3Bを逆ハの字状に固定する。なお各金属片3A,3Bの上記一端部の固定は溶接又はピン止めにより行う。
図4(A),図4(B)に示すように、本例のアンカーピン1にあっては、脚部5の地盤Gへの打ち込み時には、係合体3を構成する各金属片3A,3Bは、脚部5の外周面に沿うように弾性変形し、被固定部材Pに穿設された貫通孔11を円滑に通過した後、該被固定部材Pの直下の地中において逆ハの字状に復元して拡開して待機する。この際に、好ましくは、各金属片3A,3Bの上端の係合部3Aa,3Baは被固定部材Pの下部Pbと係合するように配する。
加えて、図1,図2の例示と同様に、アンカーピン1の頭部2は被固定部材Pの上部Paに設けられた頭部係止用凹部10に嵌合し、これにより頭部2が被固定部材Pの上部Paに係止すると共に不用意に頭部2が被固定部材Pから突出しないようにする。
また、図5,図6に例示するアンカーピン1は、係合体3を下端部が先細り形状の一対の金属片3A,3Bで構成し、該各金属片3A,3Bを頭部2直下の脚部5の外周面に螺旋状に固定する。すなわち、直角三角形状の一対の金属片3A,3Bの二つの隣辺の内、長い方の隣辺を約90度回転しながら螺旋状に固定すると共に短い方の隣辺を後記係合部3Aa,3Baとして突出させる構成とする。なお各金属片3A,3Bの上記螺旋状の固定は溶接により行う。本例における係合体3は打ち込み時に変形する必要がなく、耐久性を向上できる。
図6(A),図6(B)に示すように、脚部5の地盤Gへの打ち込み時には、係合体3を構成する各金属片3A,3Bを脚部5を中心として回転させながら打ち込むこととなる。なお、被固定部材Pに穿設された貫通孔11は各金属片3A,3Bの最も突出する係合部3Aa,3Baの通過を許容しつつ、打ち込み後は該係合部3Aa,3Baの抜け止めを図るために、長円状とする。該長円状の貫通孔11を回転しながら通過した各金属片3A,3Bは、被固定部材Pの直下の地中において該各金属片3A,3Bの上端の係合部3Aa,3Baを被固定部材Pの下部Pbと係合した状態となる。
加えて、図1,図2の例示や図3,図4の例示と同様に、アンカーピン1の頭部2は被固定部材Pの上部Paに設けられた頭部係止用凹部10に嵌合し、これにより頭部2が被固定部材Pの上部Paに係止すると共に不用意に頭部2が被固定部材Pから突出しないようにする。
上記のように、本発明に係るアンカーピン1は、何れの例示の場合も、脚部5の打ち込み後には、係合部3が被固定部材Pの直下の地中において待機し、該被固定部材Pの下部Pbとの係合に備える構成となっている。なお、各例における金属片3A,3Bは金属製の板を加工して形成する。
次に本発明に係るアンカーピン1の実際の使用について説明する。なお、説明の便宜上、図8,図9においては、図3,図4にて示したアンカーピン1に基づき図示しているが、図1,図2に示したアンカーピン1及び図5,図6に示したアンカーピン1も使用については同様である。
本発明に係るアンカーピン1は、図7に示すように、セメントモルタル製又はコンクリート製又はゴム製の覆工マット等のある程度の重量を有する被固定部材Pを法面等の地盤Gに多数敷き詰めて固定する場合に使用するものであり、適度に間隔を置いて打ち込む。
図8に示すように、平常時の地盤Gにおいては、アンカーピン1は、上述した如く、頭部2を被固定部材Pの上部Paに設けた頭部係止用凹部10に嵌合して該頭部2を被固定部材Pの上部Paに係止すると共に、係合体3を被固定部材Pの直下の地中にて待機させる状態で地盤Gに脚部5を打ち込まれている。
そして、凍上が生じて地盤Gが盛り上がったときには、図9に示すように、地盤Gの盛り上がりと共に上動した被固定部材Pの下部Pbに係合体3(一対の金属片3A,3B)の係合部3Aa,3Baが係合して、該被固定部材Pの上動に追随する。よって係合体3を介してアンカーピン1は被固定部材Pの上動に追随する。
また、図9の凍上が生じた状態が解除されると、盛り上がっていた地盤Gが元に戻ろうとするが、その際には被固定部材Pが沈下し、該被固定部材Pの下部Pbに係合している係合体3が同被固定部材Pの自重により下方向に押圧される。そのため、係合体3を介してアンカーピン1が被固定部材Pの下動に追随し、図8に示す状態に戻る。
したがって、本発明にあっては、アンカーピン1だけが取り残されて突出してしまうおそれがない。また。凍上とその解除が繰り返されたとしても、アンカーピン1は被固定部材Pの上下動に追随することを繰り返すのみであり、地盤Gから抜け外れてしまうおそれもない。
1…アンカーピン、2…頭部、3…係合体、3A…一方の金属片、3B…他方の金属片、3Aa,3Ba…係合部、4…尖鋭部、5…脚部、6…軸、10…頭部係止用凹部、11…貫通孔、P…被固定部材、Pa…被固定部材の上部、Pb…被固定部材の下部、G…地盤。

Claims (4)

  1. 地盤に被固定部材を固定するために使用するアンカーピンであって、被固定部材の上部に係止する頭部と、該頭部から垂下し下端に尖鋭部を有すると共に地盤からの抜け止め手段を有しない脚部と、上記頭部直下の上記脚部の外周面に設けた係合体とを備え、該係合体は上記脚部の地盤への打ち込み時には該脚部の外周面に沿い、打ち込み後に上記被固定部材の直下において拡開する構成とし、該係合体が上記被固定部材の下部に係合することにより、上記被固定部材の上下動に追随することを特徴とするアンカーピン。
  2. 上記係合体を一対の弧状の金属片で構成し、該各金属片を上記脚部外周面に回動可能に軸支したことを特徴とする請求項記載のアンカーピン。
  3. 上記係合体を一対の細長状の金属片で構成し、該各金属片における長手方向の一端部を上記脚部外周面に固定し、両金属片を逆ハの字状に固定したことを特徴とする請求項記載のアンカーピン。
  4. 地盤に被固定部材を固定するために使用するアンカーピンであって、被固定部材の上部に係止する頭部と、該頭部から垂下し下端に尖鋭部を有すると共に地盤からの抜け止め手段を有しない脚部と、上記頭部直下の上記脚部の外周面に設けた係合体とを備え、該係合体を下端部が先細り形状の一対の金属片で構成し、該各金属片を上記脚部外周面に螺旋状に固定し、該係合体が上記被固定部材の下部に係合することにより、上記被固定部材の上下動に追随することを特徴とするアンカーピン。
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