a.実施形態
以下、本発明の一実施形態に係る回転検出装置の構成について図面を用いて説明する。図1(a)〜(c)は、回転検出装置を概略的に表しており、特に回転磁石と磁気センサの位置関係を表している。図1(a)は平面図であり、図1(b)は側面図であり、図1(c)は斜視図である。なお、図1(c)においては、基板60を省略して示している。回転検出装置は、回転磁石21,22と、回転磁石21,22の回転を検出する第1乃至第3磁気センサ30,40,50とを備えている。
回転磁石21,22は、環状に形成されていて、その内周面にて回転軸10の外周面に固定されている。回転磁石21,22は、回転軸10の軸線方向に2列に配置されていて、円周方向に沿って着磁された第1及び第2磁気パターンをそれぞれ有する。なお、以降の説明では、この回転軸10の軸線方向を上下方向とする。第1磁気パターンは、円周方向に全周(360度)に渡って等間隔にN極とS極とを交互に着磁した着磁パターンである。第2磁気パターンは、円周方向に180度に渡って等間隔にN極とS極とを交互に着磁した着磁パターンである第1ブロック22aと、残りの180度に渡って等間隔にN極とS極とを交互に着磁した着磁パターンである第2ブロック22bとからなる着磁パターンである。本実施形態では、第1磁気パターンにおけるN極とS極とを合計した極数nは「16」である。また、第1ブロックにおけるN極とS極とを合計した極数n1は[9]であり、第2ブロック22bにおけるN極とS極とを合計した極数n2は「7」である。したがって、第1ブロック22aの円周方向の着磁幅と、第2ブロック22bにおける円周方向の着磁幅とは異なる。
なお、本実施形態で、第1磁気パターン、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bにおける極数n,n1,n2をそれぞれ「16」、「9」、「7」としたが、詳しくは後述するように、第1磁気パターンの極数n、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2の間には、次の関係があればよい。すなわち、第1磁気パターンにおいて、隣合う極は異なる極(N極及びS極)となるので、極数nは偶数であって、極数n1と極数n2との加算値n1+n2に等しい。また、互いに隣合う第1ブロックの一端と第1ブロック22bの一端との磁極(N,S極)は異なるとともに、互いに隣合う第1ブロックの他端と第2ブロック22bの他端との磁極(N,S極)は異なるので、極数n1,n2は共に偶数であるか、又は共に奇数であり、極数n1,n2の差の絶対値|n1−n2|は「0」を含む2の倍数である。さらに、本実施形態では、説明を簡単にするために、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの角度を共に180度としたが、これに関しても、詳しくは後述するように、第1及び第2ブロック22a,22bの角度の合計が360度であれば、第1及び第2ブロック22a,22bの角度は180度でなくてもよい。
この着磁パターンについて、図2を用いて説明する。着磁パターンは、図2(a)に示すように、回転磁石21,22の中心から径方向に所定の着磁角度λをもって着磁されている。第1磁気パターンにおいては、着磁パターンの外周面を横方向に延ばした図2(b)の平面展開図に示すように、着磁角度λ0(本実施形態では360/16=22.5度)で全周に渡って等分に着磁されている。第2磁気パターンにおいては、図2(b)と同様な図2(c)の平面展開図に示すように、第1ブロック22aでは着磁角度λ1(本実施形態では180/9=20度)で等分に着磁され、第2ブロック22bでは着磁角度λ2(本実施形態では180/7=25.71度)で等分に着磁されている。なお、着磁角度λ0,λ1,λ2は、λ1<λ0<λ2の関係にある。
なお、回転磁石21,22は、一体である磁性体に第1磁気パターン及び第2磁気パターンを磁化するようにしてもよいし、第1磁気パターン及び第2磁気パターンをそれぞれ磁化した2つ磁性体を張り合わせて構成してもよい。また、前記例では、環状の回転磁石21,22を回転軸10の外周面上に固定するようにしたが、回転磁石21,22を円形状に構成して、回転磁石21,22の上面及び/又は下面に回転軸10を固定するようにしてもよい。
第1磁気センサ30は、基板60の上面に固定されて、回転磁石21の上下方向の中間位置にて径方向外側に配置されている。第2及び第3磁気センサ40,50は、基板60の下面に固定されて、回転磁石22の上下方向の中間位置にて径方向外側に配置されている。第1乃至第3磁気センサ30,40,50の回転磁石21,22の中心からの径方向距離は全て同じである。第2及び第3磁気センサ40,50の円周方向位置は、回転磁石22の中心回りに90度互いに異なる。第1磁気センサ30の円周方向位置は、回転磁石21の中心回りのいずれの位置でもよいが、基板60の面積を小さくするために、円周方向において第2及び第3磁気センサ40,50との間である。基板60は、平板状に構成されて、回転磁石21,22の外側位置にて、90度よりも若干大きな角度だけ円周方向に延設されていて、図示しない部材に固定されており、後述する電気回路を配置させている。
第1乃至第3磁気センサ30,40,50は、1磁極を1周期として、互いに90度の位相差をもった一対の正弦波信号(正弦波信号及び余弦波信号)をそれぞれ出力する(図6(a)〜(c)参照)。これらの第1乃至第3磁気センサ30,40,50の具体的構成について、図3を用いて説明する。第1磁気センサ30は、第1及び第2フルブリッジ回路31,32を有する。
第1フルブリッジ回路31は、図3(a)に示すように、強磁性層で形成された4個の異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dからなる。異方性磁気抵抗効果素子31a,31cは、図3(d)に太線で示すように、回転磁石21の回転面に平行な面内にて、回転磁石21の磁気センサ30と近接する外周面位置の接線方向に対して45度傾いた方向に延設されている。異方性磁気抵抗効果素子31b,31dは、図3(d)に太線で示すように、回転磁石21の回転面に平行な面内にて、異方性磁気抵抗効果素子31a,31cと直交する方向に延設されている。これらの異方性磁気抵抗効果素子31a,31c及び異方性磁気抵抗効果素子31b,31dの延設方向は必ずしも前記方向でなくてもよいが、異方性磁気抵抗効果素子31a,31cの延設方向と異方性磁気抵抗効果素子31b,31dの延設方向とは90度の角度を成す。
これらの異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dは、前記延設方向以外は同様に構成されている。具体的には、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dは、図3(c)に示すように、細く形成した長尺状かつ薄肉の前記強磁性層膜を折り返して延設させて構成されており、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dの前記延設方向はこの強磁性層膜の延設方向である。本明細書では、4個の異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dの強磁性層の延設面を磁気センサ(異方性磁気抵抗効果素子)の感磁面という。
このように構成された異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dにおいては、異方性磁気抵抗効果素子31a,31bが直列に接続されるとともに、それらの両端に電圧Vccが印加されて、それらの接続点の電圧が電圧信号V1aとして取出される。また、異方性磁気抵抗効果素子31d,31cが直列に接続されるとともに、それらの両端に電圧Vccが印加されて、それらの接続点の電圧が電圧信号V2aとして取出される。そして、これらの電圧信号V1a,V2aは、後述する電気回路内の差動増幅器33により減算されて検出信号A0(=V1a−V2a)として出力される(図4参照)。
この検出信号A0について、磁界の方向を矢印で示した図3(d)を用いて説明する。第1フルブリッジ回路31の異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dの延設面内の重心位置C1が回転磁石21の1極分の位置aから位置eまで等間隔ずつ位置a,b,c,d,eの順に移動したことを想定する。この場合、位置a,b,c,d,eは、磁気パターンの1極を1ピッチ(P)としたとき、位置aからの距離P/4,P/2,3P/4,4P/4だけ離れた位置を表す。位置bでは、異方性磁気抵抗効果素子31a,31cの抵抗値が最小かつ異方性磁気抵抗効果素子31b,31dの抵抗値が最大であるので、検出信号A0は最大(正)となる。位置dでは、異方性磁気抵抗効果素子31b,31dの抵抗値が最小かつ異方性磁気抵抗効果素子31a,31cの抵抗値が最大であるので、検出信号A0は最小(負)となる。位置a,c,eでは、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dの抵抗値がそれぞれ等しくなり、検出信号A0は「0」となる。その結果、検出信号A0は、図3(e)に太い実線で示すように、1極分を360度して正弦波状に変化する。なお、異方性磁気抵抗効果素子31a,31dと、異方性磁気抵抗効果素子31b,31cの回転磁石21に対する径方向位置の相違による誤差は、前記電圧信号V1a,V2aの減算により打ち消されて、高い検出精度となる。
第2フルブリッジ回路32も、図3(b)に示すように、4個の異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dからなる。そして、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dは、回転磁石21の回転面に平行な面内にて異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dと同一位置にて、絶縁膜を挟んで重ねられて磁気センサ31と多層に構成されている。すなわち、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dの延設平面内における重心位置C1と、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dの延設平面内における重心位置C2が、感磁面に直交する同一直線上にある。異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dは、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dと同様に構成されているが、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dの各延設方向は、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dの各延設方向を45度だけ回転させた方向である。
このように構成された異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dにおいては、異方性磁気抵抗効果素子32a,32bが直列に接続されるとともに、それらの両端に電圧Vccが印加されて、それらの接続点の電圧が電圧信号V1bとして取出される。また、異方性磁気抵抗効果素子32d,32cが直列に接続されるとともに、それらの両端に電圧Vccが印加されて、それらの接続点の電圧が電圧信号V2bとして取出される。そして、これらの電圧信号V1b,V2bは、後述する電気回路内の差動増幅器34により減算されて検出信号B0(=V1b−V2b)として出力される(図4参照)。
この場合、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dの重心位置C2が回転磁石21の1極分の位置aから位置eまで等間隔ずつ位置a,b,c,d,eの順に移動すると、位置a,eでは、異方性磁気抵抗効果素子32a,32cの抵抗値が最小かつ異方性磁気抵抗効果素子32b,32dの抵抗値が最大であるので、検出信号B0は最大(正)となる。位置cでは、異方性磁気抵抗効果素子32b,32dの抵抗値が最小かつ異方性磁気抵抗効果素子32a,32cの抵抗値が最大であるので、検出信号B0は最小(負)となる。位置b,dでは、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dの抵抗値がそれぞれ等しくなり、検出信号B0は「0」となる。その結果、検出信号B0は、図3(e)に細い実線で示すように、余弦波状(すなわち検出信号A0に対して位相遅れが90度である正弦波状)に変化する。なお、この場合も、異方性磁気抵抗効果素子32a,32dと、異方性磁気抵抗効果素子32b,32cの回転磁石21に対する径方向位置の相違による誤差は、前記電圧信号V1b,V2bの減算により打ち消されて、高い検出精度となる。
このように、第1磁気センサ30は、第1及び第2フルブリッジ回路31,32により、第1磁気パターンにおける1極(N極又はS極)で1周期の相互に90度位相をもった正弦波状の検出信号A0,B0(正弦波信号A0及び余弦波信号B0)を出力する。そして、図6(a)に示すように、回転磁石21の1回転あたり、16周期の同一周期の検出信号A0,B0が第1磁気センサ30から出力されることになる。この場合、第1フルブリッジ回路31(異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31d)の重心位置C1と、第2フルブリッジ回路32(異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32d)の重心位置C2は、第1及び第2フルブリッジ回路31,32の感磁面に対して直交する同一直線上にあるので、第1及び第2フルブリッジ回路31,32は同じ大きさで変化する磁界の変化を検出し、検出信号A0,B0の振幅が一致する。
第2磁気センサ40も、第1磁気センサ30の第1及び第2フルブリッジ回路31,32と同様な、第1及び第2フルブリッジ回路41,42を有する。そして、第1フルブリッジ回路41からの電圧信号V1a,V2aも電気回路内の差動増幅器43により減算されて正弦波状の検出信号A1として取出されるとともに、第2フルブリッジ回路42からの電圧信号V1b,V2bも電気回路内の差動増幅器44により減算されて検出信号A1と90度位相が異なる正弦波状(すなわち余弦波状)の検出信号B1として取出される(図4参照)。したがって、第2磁気センサ40は、第2磁気パターンにおける1極(N極又はS極)で1周期の相互に90度位相をもった検出信号A1,B1(正弦波信号A1及び余弦波信号B1)を出力する。ただし、第2磁気パターンは、9極の磁気パターンからなる第1ブロック22aと、7極の磁気パターンからなる第2ブロック22bとからなるので、図6(b)に示すように、回転磁石22の1回転当たり、第1ブロック22aに対応した9周期の同一周期の検出信号A1,B1と、第2ブロック22bに対応した7周期の同一周期の検出信号A1,B1が第2磁気センサ40から出力されることになる。
第3磁気センサ50も、第1磁気センサ30の第1及び第2フルブリッジ回路31,32と同様な、第1及び第2フルブリッジ回路51,52を有する。そして、第1フルブリッジ回路51からの電圧信号V1a,V2aも電気回路内の差動増幅器53によりに減算されて検出信号A2として取出されるとともに、第2フルブリッジ回路52からの電圧信号V1b,V2bも電気回路内の差動増幅器54により減算されて検出信号A2と90度位相が異なる正弦波状(すなわち余弦波状)の検出信号B2として取出される(図4参照)。したがって、第3磁気センサ50も、第1及び第2フルブリッジ回路51,52と後述する電気回路内の減算との協働により、第2磁気パターンにおける1極(N極又はS極)で1周期の相互に90度位相をもった検出信号A2,B2(正弦波信号A2及び余弦波信号B2)を出力する。ただし、この場合も、第2磁気パターンは、9極の磁気パターンからなる第1ブロック22aと、7極の磁気パターンからなる第2ブロック22bとからなるので、図6(c)に示すように、回転磁石22の1回転当たり、第1ブロック22aに対応した9周期の同一周期の検出信号A2,B2と、第2ブロック22bに対応した7周期の同一周期の検出信号A2,B2が第2磁気センサ40から出力されることになる。また、第2磁気センサ40と第3磁気センサ50とは90度の角度差をもって配置されているので、検出信号A2,B2の周期の変化点は、検出信号A2,B2の周期の変化点に対して、回転磁石22の1回転当たり90度だけ異なる。
次に、基板60に配置された電気回路について、図4を用いて説明する。第1フルブリッジ回路31からの電圧信号V1a,V2aは差動増幅器33の非反転入力及び反転入力にそれぞれ供給される。差動増幅器33は、電圧信号V1aから電圧信号V2aを減算して検出信号A0として出力する。第2フルブリッジ回路32から出力される電圧信号V1b,V2bは、差動増幅器34の非反転入力及び反転入力にそれぞれ供給される。差動増幅器34は、電圧信号V1bから電圧信号V2bを減算して検出信号B0として出力する。したがって、第1磁気センサ30は、第1及び第2フルブリッジ回路31,32と、差動増幅器33,34とにより構成され、前述した相互に90度位相をもった正弦波状の検出信号A0,B0(正弦波信号A0及び余弦波信号B0)を出力する(図6(a)参照)。
第2磁気センサ40も、第1磁気センサ30と同様に、第1及び第2フルブリッジ回路41,42と、差動増幅器43,44とにより構成され、前述した相互に90度位相をもった正弦波状の検出信号A1,B1(正弦波信号A1及び余弦波信号B1)を出力する。第3磁気センサ50も、第1磁気センサ30と同様に、第1及び第2フルブリッジ回路51,52と、差動増幅器53,54とにより構成され、前述した相互に90度位相をもった正弦波状の検出信号A2,B2(正弦波信号A2及び余弦波信号B2)を出力する。
第1乃至第3磁気センサ30,40,50には、A/D変換器70が接続されている。A/D変換器70は、第1乃至第3磁気センサ30,40,50からの検出信号A0,B0,A1,B1,A2,B2をそれぞれA/D変換して信号処理回路80に出力する。信号処理回路80は、CPU、ROM、RAM、記憶装置などからなるコンピュータ装置で構成されており、図5のフローチャートに対応したプログラムに従って演算処理を実行する。このプログラムの実行においては、バーニア演算処理を用いて、前記検出信号A0,B0,A1,B1,A2,B2に対応したディジタル信号を信号処理して、回転軸10の絶対回転角φ3を計算する。
次に、上記のように構成した回転検出装置の動作について説明する。回転軸10すなわち回転磁石21,22を回転させると、第1磁気センサ30から、回転磁石21の0〜360度(第1磁気パターンに対応)の1回転当たり、周期の等しい16周期の検出信号A0,B0が出力される(図6(a)参照)。また、第2磁気センサ40から、回転磁石22の0〜180度(第1ブロック22aに対応)の半回転当たりで周期の等しい9周期の出力信号と、回転磁石22の180〜360度(第2ブロック22bに対応)の半回転当たりで周期の等しい7周期の出力信号とからなる検出信号A1,B1が出力される(図6(b)参照)。さらに、第3磁気センサ50から、回転磁石22の0〜90,270〜360度(第1ブロック22aに対応)の半回転当たりで周期の等しい9周期の出力信号と、回転磁石22の90〜270度(第2ブロック22bに対応)の半回転当たりで周期の等しい7周期の出力信号とからなる検出信号A2,B2が出力される(図6(c)参照)。
これらの検出信号A0,B0,A1,B1,A2,B2は、A/D変換器70によってそれぞれディジタル信号に変換されて、信号処理回路80に供給される。信号処理回路80は、回転角の計測開始時に図5のステップS10にプログラムの実行を開始し、その後、ステップS12〜S30からなる循環処理を実行する。ステップS12においては、信号処理回路80は、供給された検出信号A0,B0,A1,B1,A2,B2の瞬時値をそれぞれ入力する。次に、信号処理回路80は、ステップS14にて、検出信号A0,B0,A1,B1,A2,B2を用いた下記数2〜4の逆正接演算により、逆正接角度θ0,θ1,θ2を計算する。これらの逆正接角度θ0,θ1,θ2は、第1及び第2磁気パターンの1極を1周期とする鋸歯状波状に変化する。これらの逆正接角度θ0,θ1,θ2の変化を図7(a)〜(c)にそれぞれ示す。
前記ステップS14の処理後、信号処理回路80は、ステップS16にて、逆正接角度θ0,θ1,θ2を用いた下記数5,6の剰余演算により、逆正接角度θ0,θ1間の位相差φ1と、逆正接角度θ0,θ2の位相差φ2を計算する。
前記数5,6におけるmod(x,y)の演算式は、xをyで割ったときの余剰を求める余剰演算を表している。そして、前記数5,6の演算では、yを2πとしているので、位相差φ1,φ2はラジアン単位で0〜2πに渡って変化する。しかし、yは基本単位を表しているだけであるので、このyは単に予め決められた定数とすればよい。例えば、このyを2πに代えて360度とすれば、位相差φ1,φ2は0〜360度に渡って変化することになる。なお、これらのステップS14,S16の演算が、バーニア演算である。
これらの位相差φ1,φ2を、回転磁石21,22の回転角度(0〜360度)に対応させて図8に示す。この場合、位相差φ1は、第1ブロック22a(0〜180度の範囲)では右上がりの直線となり、第2ブロック22b(180〜360度)では右下がりの直線となる。このことは、第2磁気センサ40が第1ブロック22aに対向している状態では位相差φ1が右上がりの直線上を変化し、かつ第2磁気センサ40が第2ブロック22bに対向している状態では位相差φ1が右下がりの直線上を変化することを意味する。一方、位相差φ2は、位相差φ1よりも90度位相が異なる。すなわち、位相差φ2は、第1ブロック22aの前半部分(0〜90度)及び第2ブロック22bの後半部分(270〜360度)では右上がりの直線となり、第1ブロック22aの後半部分(90〜180度)及び第2ブロック22bの前半部分(約180〜270度)では右下がりの直線となる。これらの位相差φ1,φ2の変化幅をKとする。なお、この変化幅Kは、本実施形態では2πである。
前記ステップS16の処理後、信号処理回路80は、ステップS18にて、位相差φ2から所定値Xを減算して、減算結果φ2−Xが「0」以上であるか否かを判定する。この場合、値Xは回転角度θが0度であるとき、すなわち位相差φ1が最小であるときの位相差φ2の値(位相差φ1が最大であるときの位相差φ2の値と同じ)であり、このプログラム処理とは別に検出して記憶しておいた値である。また、この値Xを、このプログラム処理の実行開始時に計算したり、又はこのプログラムの実行中に定期的に計算したりして記憶しておいてもよい。なお、本実施形態では、値Xは変化幅Kの半分であるK/2となるが、第2磁気パターンにおける第1及び第2ブロック22a,22bの各範囲がそれぞれ180度でない場合には、値Xは変化幅Kの半分であるK/2と異なる値となる。
前記減算結果φ2−Xは、図9に破線で示すように変化し、第1ブロック22aにて正となり、第2ブロック22bにて負となる。そして、減算結果φ2−Xが「0」以上であれば、信号処理回路80は、前記ステップS18にて「Yes」と判定し、ステップS20にて増加フラグUPを“1”に設定する。また、減算結果φ2−Xが「0」未満であれば、信号処理回路80は、ステップS18にて「No」と判定し、ステップS22にて増加フラグUPを“0”に設定する。この増加フラグUPの値を、回転磁石21,22の1回転(0〜360度)に対応させて図9に太線で示す。これにより、増加フラグUPは、“1”により、第2磁気センサ40が第1ブロック22aに対向して位置し、位相差φ1が右上がりの直線(図8参照)上の値を取ることを示すことになる。また、増加フラグUPは、“0”により、第2磁気センサ40が第2ブロック22bに対向して位置し、位相差φ1が右下がり直線(図8参照)上の値を取ることを示すことになる。
前記ステップS20,S22の処理後、信号処理回路80は、ステップS24にて増加フラグUPが“1”であるか否かを判定する。第2磁気センサ40が第1ブロック22aに対向して位置し、増加フラグUPが“1”であれば、信号処理回路80は、ステップS24にて「Yes」と判定して、ステップS26にて位相差φ1を絶対回転角φ3として設定する。一方、第2磁気センサ40が第2ブロック22bに対向して位置し、増加フラグUPが“0”であれば、信号処理回路80は、ステップS24にて「No」と判定して、ステップS28にて変化幅Kを2倍した値2・Kから位相差φ1を減算した値2・K−φ1を絶対回転角φ3として設定する。
この場合も、変化幅Kは、回転磁石21,22の180度の回転に対応した位相差φ1、すなわち位相差φ1の最大値(位相差φ2の変化幅Kである最大値にも等しい)でもあり、予め検出して記憶しておいた値である。そして、値K−φ1は、図10(a)に示すように、第2ブロック22bにおける最大値Kと位相差φ1との差であり、値2・K−φ1(=K+K−φ1)は最大値Kを中心に位相差φ1を折り返した値である。したがって、回転磁石21,22の180〜360度の角度の範囲、すなわち第2磁気センサ40が第2ブロック22bに対向して位置する状態における絶対回転角φ3が前記ステップS28の処理によって計算される。その結果、回転磁石21,22の1回転(0〜360度)に対して、0〜2・K(本実施形態では、0〜4π)に渡って変化する絶対回転角φ3が計算されることになる。この絶対回転角φ3の変化を図10(b)に示す。また、図10(c)は、前記計算で求めた絶対回転角φ3である電気角と、回転磁石21,22の実際の回転角度である機械角との差、すなわち絶対回転角φ3の角度誤差Δφ3を示している。なお、この実施形態では、第1及び第2ブロック22a,22bの角度範囲は共に180度であるので、角度誤差Δφ3は生じない。
なお、前記ステップS18〜S28からなる演算処理によって絶対回転角φ3を検出できる理由は、位相差φ1が最小値及び最大値となる2つの回転角度θにおける位相差φ2の2つの値は一致するとともに、位相差φ2が最小値及び最大値となる2つの回転角度θにおける位相差φ1の2つの値は一致することを前提とするものである。そして、前記ステップS18では、位相差φ1が最小値及び最大値となる回転角度θにおける位相差φ2を値Xとしたものである。したがって、前記絶対回転角φ3の計算は、値X以上となる位相差φ2の角度範囲では、位相差φ1は最小値から最大値まで増加し、値X以下となる位相差2の角度範囲では、位相差φ1は最大値から最小値まで減少することを利用している。なお、前記前提は、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの両角度範囲が異なる場合を含む多くのシミュレーション結果により確認された事実である。
前記ステップS26,S28の処理後、信号処理回路80は、ステップS30にて、絶対回転角φ3及び逆正接角度θ0を用いた内挿演算処理を実行する。具体的には、図11に示すように、前記計算した絶対回転角φ3を所定数のビットで表して内挿後の絶対回転角φ3’の上位ビットとし、逆正接角度θ0(=tan-1(A0/B0))を所定数のビットで表して内挿後の絶対回転角φ3’の下位ビット(絶対回転角φ3の最下位ビットに続く下位ビット)とする。例えば、内挿後の絶対回転角φ3’を15ビットとする場合、内挿後の絶対回転角φ3’の上位10ビットを10ビットで表した絶対回転角φ3とし、内挿後の絶対回転角φ3’の下位5ビットを5ビットで表した逆正接角度θ0とする(φ3’=φ3・25+θ0)。これにより、回転磁石21,22の回転角度を細かな間隔(角度)、すなわち高分解能で表すことができ、全体として高精度の回転検出装置が実現される。
前記ステップS30の処理後、信号処理回路80は、ステップS12の実行に戻り、以降、ステップS12〜S30の処理を繰返し実行して、絶対回転角φ3を内挿演算処理した回転角φ3’を計算し続ける。なお、高分解能の絶対回転角φ3’を必要としない場合には、前記ステップS30の処理は不要である。
上記実施形態のように構成するとともに動作する回転検出装置においては、第1磁気センサ30は、第1磁気パターンによる磁界の変化を検出して、第1磁気パターンの1極当たり1周期の位相の異なる2つの検出信号A0,B0を出力し、第2及び第3磁気センサ40,50は、第2及び第3磁気パターンによる磁界の変化を検出して、第2及び第2磁気パターンの1極当たり1周期の位相の異なる2つの検出信号A1,B1,A2,B2をそれぞれ出力する。そして、信号処理回路80は、第1乃至第3磁気センサ30,40,50からの検出信号を用いたバーニア演算処理(逆正接演算処理及び位相差演算処理)により、回転軸10の絶対回転角φ3を計算する。この場合、第1乃至第3磁気パターンの各1極当たり1周期の検出信号A0,B0,A1,B1,A2,B2を用いて絶対回転角φ3を計算するので、高分解能で絶対回転角φ3を検出でき、回転軸10の絶対回転角φ3を高い精度で検出できる。また、第1乃至第3磁気センサ30,40,50は回転軸10の中心軸の延長線上には設けられていないので、回転軸10を貫通させるような構造の回転体にも適用できる。もちろん、回転軸を貫通させるような構造の回転体にも適用できる。
また、上記実施形態においては、信号処理回路80は、さらに、計算された逆正接角度θ0を用いて、絶対回転角φ3の内挿演算処理を実行して内挿絶対回転角φ3‘を計算するので、回転軸10の絶対回転角φ3を高分解能にすることができる。
また、上記実施形態においては、第1乃至第3磁気センサ30,40,50を、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dからなる第1フルブリッジ回路31,41,51と、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dからなる第2フルブリッジ回路32,42,52とで構成したので、第1乃至第3磁気センサ30,40,50によって検出される電圧信号V1a,V2a,V1b,V2bの精度が高くなり、絶対回転角φ3が高精度となる。
さらに、第1乃至第3磁気センサ30,40,50のそれぞれにおいて、第1フルブリッジ回路31,41,51を構成する異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31と、第2フルブリッジ回路32,42,52を構成する異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dとを絶縁膜を介して重ねて配置し、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31の重心位置C1が、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dの重心位置C2を通り、かつ異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31が配置された平面に直交する直線上に位置するようにした。これにより、第1及び第2フルブリッジ回路31,32,41,42,51,52は、同じ大きさで変化する磁界の変化を検出することになり、第1乃至第3磁気センサ30,40,50によって検出される電圧信号V1a,V2a,V1b,V2bがさらに高精度となり、絶対回転角φ3がさらに高精度となる。
また、上記実施形態においては、回転磁石21,22は、回転軸方向に2列に配置されるとともに外径を一致させており、回転磁石21,22の外周面の外側に回転磁石21,22の境界位置にて円周方向に延設された平板状の基板60を配置して、第1磁気センサ30を基板60の上面に固定して回転磁石21の第1磁気パターンに対向させ、かつ第2及び第3磁気センサ30,40を基板60の下面に固定して第2磁気パターンに対向させるようにした。これにより、第1乃至第3磁気センサ30,40,50を一つの基板60上に搭載させることができるので、回転検出装置の構造が簡単になる。さらに、第1磁気センサ30は、回転磁石21,22の円周方向において、第2磁気センサ40と第3磁気センサ50の間に配置されているので、基板60の円周方向の延設角度を90度よりも若干大きくするだけで、第1乃至第3磁気センサ30,40,50を基板60に搭載できるので、基板60を小型化できる。
b.第1及び第2磁気パターンの極数及び着磁角度について
上記実施形態では、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの角度範囲を共に180度とした。また、第1磁気パターンの極数nを「16」に設定するとともに、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2をそれぞれ「9」、「7」に設定した。しかし、上述のように、本発明は、第1及び第2ブロック22a,22bの角度範囲の合計が360度であれば、第1及び第2ブロック22a,22bの角度範囲は180度でなくてもよい。また、第1磁気パターンの極数nと、第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2とにおいては、極数nが偶数であり、極数n1,n2が共に偶数又は奇数であって、n=n1+n2の関係にあればよい。
この点について、図12及び図13を用いて説明する。図12及び図13においては、図面を見易くするために、第1磁気パターンの極数nを「8」にし、第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2の合計値n1+n2を「8」として示している。
まず、第1及び第2ブロック22a,22bの角度範囲を180度からずらした場合について説明する。図12(a)は、第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2が「5」,「3」であり、第1ブロック22aと第2ブロック22bの境界が第1磁気パターンの5番目の磁極範囲内にある場合を示している。この場合、逆正接角度θ0,θ1,θ2は図12(b)に示すように変化し、逆正接角度θ1の5周期目の終点は逆正接角度θ0の4周期目の終点と5周期目の終点との間に位置し、逆正接角度θ2の5周期目の終点は逆正接角度θ0の2周期目の終点と3周期目の終点との間に位置する。したがって、位相差φ1,φ2は図12(c)に示すように0〜Kの間で折り返し変化し、位相差φ1は逆正接角度θ0の4周期目の終点と5周期目の終点との間で最大値となり、増加傾向から減少傾向に折り返し変化する。この折り返し点をTPとする。そして、この場合も、位相差φ2は位相差φ1から90度遅れて変化するので、増加フラグUPは折り返し点TPで“1”から“0”に反転する。
この場合、逆正接角度θ1の5周期目の終点位置の逆正接角度θ0に対する位相差φ1は、0〜2πの間の値であるので、折り返し点TPの位相差φ1である値Kは0〜2πの間の値であり、また位相差φ1は回転磁石21,22の1回転で0〜Kの間を1往復するだけであるので、位相差φ1は回転磁石21,22の回転角を表すことになる。しかし、折り返し点TPは180度位置にはないので、位相差θ1の増加時の傾斜は減少時の傾斜に比べて小さく、位相差φ1を折り返して得られる絶対回転角φ3は図12(d)の実線で示すように、折り返し点TPで傾斜角が変化する。これに対して、上記実施形態の場合には、折り返し点TPは180度位置にあり、位相差φ1の増加時及び減少時の傾斜は等しいので、絶対回転角φ3は図12(d)の破線で示すようになる。したがって、この場合には、上記実施形態の場合に比べて、絶対回転角φ3の検出精度が悪化する。このことは、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの角度範囲を180度に近い値に設定することが望ましいことを意味する。
また、前述のように、折り返し点TPの位相差φ1である値Kは0〜2πの間の値であり、2πより小さい。これに対して、上記実施形態の場合には、折り返し点TPの位相差φ1である値Kは2πである。したがって、この場合には、上記実施形態の場合に比べて、回転磁石21,22の1回転当たりの絶対回転角φ3の変化量が小さくなり、絶対回転角φ3の検出精度が悪化する。このことは、折り返し点TPが、逆正接角度θ1の5周期目の終点位置が逆正接角度θ0の4周期目の終点位置と一致、すなわち第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの境界角度が第1磁気パターンの極の終点位置に一致させることが、回転磁石21,22の1回転当たりの絶対回転角φ3の変化量を最大にできることを意味する。また、着磁角度λ1を大きくして、折り返し点TPすなわち逆正接角度θ1の5周期目の終点位置を、逆正接角度θ0の5周期目の終点位置に近づけることは、値K(位相差θ1−θ0)が徐々に小さくなり、回転磁石21,22の1回転当たりの絶対回転角φ3の変化量を小さくして、絶対回転角φ3の検出精度を悪化させることを意味する。なお、第1ブロック22aの着磁角度λ1は第1磁気パターンの着磁角度λ0よりも小さいので、逆正接角度θ1の5周期目が逆正接角度θ0の5周期目に達することはあり得ない。
一方、折り返し点TPすなわち逆正接角度θ1の5周期目の終点位置を、逆正接角度θ0の4周期目の終点位置よりも図示左側にすると、すなわち逆正接角度θ1の5周期を逆正接角度θ0の4周期よりも短くすると、折り返し点TPの位相差φ1(=θ1−θ0)は、逆正接角度θ1の5周期目で2πを超えてしまう。したがって、この場合には、逆正接角度θ1は折り返し点TPに達する前に急激に減少し、絶対回転角φ3を検出できなくなる。
以上の点を整理すると、極数nが「8」であり、極数n1が「5」である場合には、逆正接角度θ1の5周期目の終点位置が図13(a)のP5min〜P5maxの範囲、すなわち逆正接角度θ1の5周期が逆正接角度θ0の4周期以上かつ5周期未満の範囲であることを条件に、絶対回転角φ3の検出が可能となる。そして、逆正接角度θ1の5周期と逆正接角度θ0の4周期とが一致する場合に、絶対回転角φ3は最大に変化する。
次に、極数nが「8」であり、極数n1が「4」である場合について説明すると、この場合には、逆正接角度θ1の4周期目の終点位置が図13(a)のP4min〜P4maxの範囲、すなわち逆正接角度θ1の4周期が逆正接角度θ0の3周期以上かつ4周期未満の範囲であることを条件に、絶対回転角φ3の検出が可能となる。そして、この場合も、逆正接角度θ1の4周期と逆正接角度θ0の3周期とが一致する場合に、絶対回転角φ3は最大に変化する。
また、極数nが「8」であり、極数n1が「6」である場合について説明すると、この場合には、逆正接角度θ1の6周期目の終点位置が図13(a)のP6min〜P6maxの範囲、すなわち逆正接角度θ1の6周期が逆正接角度θ0の5周期以上かつ6周期未満の範囲であることを条件に、絶対回転角φ3の検出が可能となる。そして、この場合も、逆正接角度θ1の6周期と逆正接角度θ0の5周期とが一致する場合に、絶対回転角φ3は最大に変化する。
また、極数nが「8」であり、極数n1が「7」である場合について説明すると、この場合には、逆正接角度θ1の7周期目の終点位置が図13(a)のP7min〜P7maxの範囲、すなわち逆正接角度θ1の6周期が逆正接角度θ0の6周期以上かつ7周期未満の範囲であることを条件に、絶対回転角φ3の検出が可能となる。そして、この場合も、逆正接角度θ1の7周期と逆正接角度θ0の6周期とが一致する場合に、絶対回転角φ3は最大に変化する。
このように、第1磁気パターンの極数nが「8」である場合、第2磁気パターンの第1ブロック22aの極数n1が「4」、「5」、「6」及び「7」のいずれであっても、次の条件を満足すれば、絶対回転角φ3の検出は可能である。すなわち、第1ブロック22aの角度すなわち極数n1に着磁角度λ1を乗算した値n1・λ1が、前記極数n1よりも「1」だけ小さな極数n1−1の第1磁気パターンの角度すなわち極数n1−1に着磁角度λ0を乗算した値(n1−1)・λ0以上、かつ前記極数n1の第1磁気パターンの角度すなわち極数n1に着磁角度λ0を乗算した値n1・λ0未満であれば、絶対回転角φ3の検出は可能である。なお、この場合の極数n1は、第2ブロック22bの極数n2以上であることを前提としているので、極数n1が「1」、「2」及び「3」はあり得ない。言い換えれば、第1及び第2ブロック22a,22bが相対的であるので、極数n1が「1」、「2」及び「3」を考慮する必要はない。
ただし、極数n1を「4」、「6」又は「7」に設定すると、極数n1が「5」である場合に比べて、図13(b)に示すように、折り返し点TPが回転磁石21,22の180度位置からのずれが大きくなり、角度誤差が大きくなる。また、図13(c)には、極数n1を「5」にした場合において、逆正接角度θ1の5周期目の終点位置を図13(a)のP5min〜P5maxに変化させた場合の値Kの変化範囲を示している。これにより、前述のように、逆正接角度θ1の5周期目の終点位置を逆正接角度θ0の4周期目の終点位置に近づけるほど、位相差φ1及び絶対回転角φ3の変化範囲を大きくすることができる。また、この点に関しては、極数n1を「4」、「6」及び「7」に設定した場合も同様であり、逆正接角度θ1の4周期目、6周期目及び7周期目の終点位置を、それぞれ度θ0の3周期目、5期目及び6周期目の終点位置に近づけるほど、位相差φ1及び絶対回転角φ3の変化範囲を大きくすることができる。さらに、前記例では極数nを「8」に設定した場合について説明したが、極数nを「8」以外の偶数に設定した場合にも同様な理論が成立する。
次に、前記絶対回転角φ3の検出が可能である極数及び着磁角度について理論的な説明をしておく。ここで、第1磁気パターンの極数及び着磁角度をn,λ0とする。また、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの極数の差を2・aとして、第2磁気パターンの第1ブロック22aの極数及び着磁角度を(n/2)+a(=n1),λ1とし、第2磁気パターンの第2ブロック22bの極数及び着磁角度を(n/2)−a(=n2),λ2とする。なお、値nは偶数であり、値aはn/2未満の「0」を含む自然数である。
この場合、前記説明から明らかなように、前記絶対回転角φ3の検出を可能とするためには、下記数7が成立すればよい。また、この場合、下記数8も成立する。
前記数8を前記数7に代入して変形すれば、下記数9が成立する。なお、この数9は、前記第1磁気パターンの極数n,第2磁気パターンの第1ブロック22aの極数(n/2)+a、及び着角度λ0,λ1の関係と同様に、前記第1磁気パターンの極数n,第2磁気パターンの第2ブロック22bの極数(n/2)−a、及び着角度λ0,λ2の関係を考慮しても導き出せるものである。
そして、前記数7と前記数9を変形すれば下記数10及び数11が成立する。
したがって、前記数10,11が成立すれば、絶対回転角φ3の検出が可能となる。
ただし、上述した説明からも分かるように、第1ブロック22aの極数と第2ブロック22bの極数との差aが「0」又は「2」であれば、折り返し点TPを180度又は180度近くにすることができる。また、前記差aが「0」である場合には、折り返し点TPを180度から離すに従って、値K(すなわち位相差φ1、φ2)は2πに近づく。一方、前記差aが「2」である場合には、折り返し点TPを180度に近づけるに従って、値K(すなわち位相差φ1、φ2)は2πに近づく。したがって、高い精度を保ったままで絶対回転角の分解能を高めるためには、前記差aは「2」であることが好ましい。
c.シミュレーション例
上記実施形態の説明、並びに上記第1及び第2磁気パターンの極数及び着磁角度では、着磁角度λ0,λ1,λ2の制限については触れなかった。しかし、実際の製品化においては、着磁角度λ0,λ1,λ2の精度の問題があるので、製品化における着磁角度λ0,λ1,λ2の制限を考慮して行った複数のシミュレーション結果について説明しておく。
c1.絶対回転角φ3を検出可能なシミュレーション例
まず、絶対回転角φ3を検出可能な第1乃至第3シミュレーション例について説明する。第1シミュレーション例としては、第1磁気パターンの極数nは「16」であり、第2磁気パターンにおける第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2はそれぞれ「9」、「7」である。そして、第1磁気パターンの着磁角度λ0は22.5度であり、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は20.05度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は25.65度である。この条件は前記数10,11の条件を満足する。また、第1ブロック22aの角度範囲は180.45度であり、第2ブロック22bの角度範囲は179.55度であり、両角度範囲は180度に極めて近い。したがって、位相差φ1,φ2及び増加フラグUP、絶対回転角φ3、並びに角度誤差Δφ3は上述した図10(a)(b)(c)とほぼ同じになり、絶対回転角φ3の変化範囲及び誤差も極めて小さくなる。
第2シミュレーション例としては、第1磁気パターンの極数nは「16」であり、第2磁気パターンにおける第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2はそれぞれ「8」、「8」である。そして、第1磁気パターンの着磁角度λ0は22.5度であり、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は19.75度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は25.25度である。この条件も前記数10,11の条件を満足する。また、第1ブロック22aの角度範囲は158.00度であり、第2ブロック22bの角度範囲は202.00度となる。
この第2シミュレーション例における位相差φ1,φ2及び増加フラグUP、絶対回転角φ3、並び角度誤差Δφ3を図14(a)(b)(c)にそれぞれ示す。この場合、位相差φ1の折り返し点TPは180度から小さい側にずれて、絶対回転角の傾斜も前記折り返し点TPで変化し、角度誤差Δφ3も比較的大きくなる。なお、位相差φ1及び絶対回転角φ3の変化範囲も前記第1シミュレーション例の場合よりも小さくなる。その結果、この第2シミュレーション例に検出精度は、前記第1シミュレーション例の検出精度よりも悪化する。しかし、このような第2シミュレーション例による回転検出装置でも、回転角度θとして360度を必要とせずに、特定角度範囲の精度を要求する用途(例えば、ロボットアーム等)とっては、有効である。
第3シミュレーション例としては、第1磁気パターンの極数nは「16」であり、第2磁気パターンにおける第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2はそれぞれ「10」、「6」である。そして、第1磁気パターンの着磁角度λ0は22.5度であり、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は20.37度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は26.05度である。この条件も前記数10,11の条件を満足する。また、第1ブロック22aの角度範囲は203.70度であり、第2ブロック22bの角度範囲は156.30度となる。
この第3シミュレーション例における位相差φ1,φ2及び増加フラグUP、絶対回転角φ3、並び角度誤差Δφ3を図15(a)(b)(c)にそれぞれ示す。この場合、位相差φ1の折り返し点TPは180度から大きい側にずれて、絶対回転角の傾斜も前記折り返し点TPで変化し、角度誤差Δφ3も比較的大きくなる。なお、位相差φ1及び絶対回転角φ3の変化範囲も前記第1シミュレーション例の場合よりも小さくなる。その結果、この第3シミュレーション例に検出精度は、前記第1シミュレーション例の検出精度よりも悪化する。しかし、このような第3シミュレーション例による回転検出装置でも、回転角度θとして360度を必要とせずに、特定角度範囲の精度を要求する用途(例えば、ロボットアーム等)とっては、有効である。
c2.絶対回転角φ3を検出不能なシミュレーション例
次に、絶対回転角φ3を検出不能な第4乃至第6シミュレーション例について説明する。第4シミュレーション例としては、第1磁気パターンの極数nは「16」であり、第2磁気パターンにおける第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2はそれぞれ「9」、「7」である。そして、第1磁気パターンの着磁角度λ0は22.5度であり、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は19.970度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は25.753度である。この条件は前記数10,11の条件を満足しない。なお、第1ブロック22aの角度範囲は179.73度であり、第2ブロック22bの角度範囲は180.27度となる。
この第4シミュレーション例における位相差φ1及び増加フラグUP、並び絶対回転角φ3を図16(a)(b)にそれぞれ示す。この場合、位相差φ1が最大値に達した位置で急激に減少して折り返し点TPが存在しなくなり、かつ増加フラグUPも回転角度の180度までの範囲で“1”から“0”に2回変化する。そして、絶対回転角φ3は、急激に変化する回転角度が存在する。したがって、この第4シミュレーション例では、絶対回転角φ3の検出が不能となる。
第5シミュレーション例としては、第1磁気パターンの極数nは「18」であり、第2磁気パターンにおける第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2はそれぞれ「10」、「8」である。そして、第1磁気パターンの着磁角度λ0は20.0度であり、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は17.930度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は22.588度である。この条件も前記数10,11の条件を満足しない。なお、第1ブロック22aの角度範囲は179.30度であり、第2ブロック22bの角度範囲は180.70度となる。この第5シミュレーション例における位相差φ1及び増加フラグUP、並び絶対回転角φ3を図17(a)(b)にそれぞれ示す。この場合も、前記第4シミュレーション例の場合と同様に、絶対回転角φ3の検出が不能となる。
第6シミュレーション例としては、第1磁気パターンの極数nは「20」であり、第2磁気パターンにおける第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2はそれぞれ「11」、「9」である。そして、第1磁気パターンの着磁角度λ0は18.0度であり、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は16.310度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は20.066度である。この条件も前記数10,11の条件を満足しない。なお、第1ブロック22aの角度範囲は179.41度であり、第2ブロック22bの角度範囲は180.59度となる。この第6シミュレーション例における位相差φ1及び増加フラグUP、並び絶対回転角φ3を図18(a)(b)にそれぞれ示す。この場合も、前記第4シミュレーション例の場合と同様に、絶対回転角φ3の検出が不能となる。
c3.検出可能な絶対回転角φ3の変化範囲を示すシミュレーション例
次に、絶対回転角φ3を検出可能であるが、着磁角度λ1,λ2の関係を異ならせて場合、すなわち前記折り返し点TPを異ならせた第7乃至第9シミュレーション例について説明する。第7乃至第9シミュレーション例のいずれの場合も、第1磁気パターンの極数nは「16」であり、第2磁気パターンにおける第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2はそれぞれ「9」、「7」であり、第1磁気パターンの着磁角度λ0は22.5度である。
第7シミュレーション例では、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は20.010度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は25.701度である。この条件は前記数10,11の条件を満足する。また、第1ブロック22aの角度範囲は180.09度であり、第2ブロック22bの角度範囲は179.91度となる。
第8シミュレーション例では、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は20.690度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は24.827度である。この条件も前記数10,11の条件を満足する。また、第1ブロック22aの角度範囲は186.21度であり、第2ブロック22bの角度範囲は173.79度となる。
第9シミュレーション例では、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1は21.200度であり、第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2は24.171度である。この条件も前記数10,11の条件を満足する。また、第1ブロック22aの角度範囲は190.80度であり、第2ブロック22bの角度範囲は169.20度となる。
図19は、第7乃至第9シミュレーション例における絶対回転角φ3の変化を示す。この場合、絶対回転角φ3の変化範囲が第7シミュレーション例から第9シミュレーションに向かって徐々に小さくなる。これは、上述したように、折り返して位置TPが180度から離れるに従って(図示矢印参照)、位相差φ1の最大値Kが2πから徐々に減少するためである(図13参照)。したがって、これらの第7乃至第9シミュレーション結果は、上述した着磁角度λ1,λ2と極数n1,n2との関係で述べたことと一致する。
d.変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
d1.磁気抵抗素子に関する変形例
上記実施形態の第1乃至第3磁気センサ30,40,50においては、第1フルブリッジ回路31,41,51を4個の異方性磁気抵抗効果素子(第1フルブリッジ回路31の場合には、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31d)をフルブリッジ接続して構成するとともに、第2フルブリッジ回路32,42,52を4個の異方性磁気抵抗効果素子((第2フルブリッジ回路32の場合には、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32d)をフルブリッジ接続して構成するようにした。しかし、本発明においては、第1フルブリッジ回路31,41,51及び第2フルブリッジ回路32,42,52が、第1及び第2磁気パターンの1極当たり1周期であって、位相が90度異なる1対の正弦波状の検出信号をそれぞれ出力するものであれば、フルブリッジ回路を異方性磁気抵抗効果素子で構成しなくても、他の磁気抵抗素子で構成するようにしてもよい。
例えば、第1フルブリッジ回路31,41,51及び第2フルブリッジ回路32,42,52を、それぞれ下記(1)乃至(3)の磁気抵抗素子で構成してもよい。
(1)強磁性層と非磁性層との多層膜からなる人工格子型磁気抵抗素子
(2)強磁性金属からなるnmサイズの微粒子と、非磁性金属からなる粒界相とを備えた金属−金属系ナノグラニュラー磁気抵抗素子
(3)nmサイズの強磁性金属合金微粒子と、非磁性・絶縁性材料からなる粒界相とを備えた金属−絶縁体系ナノグラニュラー磁気抵抗素子
これらの(1)乃至(3)の磁気抵抗素子においては、上記実施形態の異方性磁気抵抗効果素子に比べて異方性は弱いので、素子のアスペクト比を大きくするか、透磁率の高い磁性体を素子近傍に置くことにより集磁効果によって異方性を高めるようにするとよい。
d2.磁気抵抗素子の配置の変形例
また、上記実施形態の第1乃至第3磁気センサ30,40,50においては、第1フルブリッジ回路31,41,51と第2フルブリッジ回路32,42,52を同一位置にて重ねて、第1フルブリッジ回路31,41,51の4個の異方性磁気抵抗素子が配置された第1平面と、第2フルブリッジ回路32,42,52の4個の異方性磁気抵抗素子が配置された第2平面とが平行であり、かつ第1フルブリッジ回路31,41,51の4個の異方性磁気抵抗素子の重心位置C1(以下、単に第1フルブリッジ回路の重心位置C1という)が、第2フルブリッジ回路32,42,52の4個の異方性磁気抵抗素子の重心位置C2(以下、単に第2フルブリッジ回路の重心位置C2という)を通り、かつ第2平面(及び第1平面)と直交する直線上に位置するようにした。すなわち、第1フルブリッジ回路の重心位置C1と、第2フルブリッジ回路の重心位置C2とが、第1及び第2平面を構成する2次元座標の同一座標位置に位置するようにした。
しかし、これに代えて、第1フルブリッジ回路31と同一構成のフルブリッジ回路を45度回転させて第2フルブリッジ回路32とし、両重心位置C1,C2を前記ように一致させて、第1フルブリッジ回路31と前記45度回転させた第2フルブリッジ回路32とを重ねることにより第1磁気センサ30を構成してもよい。また、逆に、第2フルブリッジ回路32と同一構成のフルブリッジ回路を45度回転させて第1フルブリッジ回路31とし、両重心位置C1,C2を前記ように一致させて、前記45度回転させた第1フルブリッジ回路31と第2フルブリッジ回路32とを重ねることにより第1磁気センサ30を構成してもよい。第2及び第3磁気センサ40,50も前記と同様に構成してもよい。
また、第1フルブリッジ回路31(又は第1フルブリッジ回路41,51)を構成する4個の異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dと、第2フルブリッジ回路32(又は第2フルブリッジ回路42,52)を構成する4個の異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dとを同一平面上に配置して、第1フルブリッジ回路の重心位置C1と第2フルブリッジ回路の重心位置C2を一致させるようにしてもよい。以下、同一平面上に設けた4個の異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dと4個の異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dとの配置例について説明するが、この場合の「上下」及び「左右」は図面上における位置関係を示す。
例えば、図20(a)に示すように、異方性磁気抵抗効果素子32a,32cを重心位置Co(重心位置C1,C2と同じ)を挟んで上下に配置し、異方性磁気抵抗効果素子32a,32cの右側に異方性磁気抵抗効果素子31a,31bを重心位置Coを挟んで上下に配置し、異方性磁気抵抗効果素子32a,32cの左側に異方性磁気抵抗効果素子31d,31cを重心位置Coを挟んで上下に配置し、異方性磁気抵抗効果素子31a,31bの右側に異方性磁気抵抗効果素子32aを重心位置Coを中心にして配置し、かつ異方性磁気抵抗効果素子31d,31cの左側に異方性磁気抵抗効果素子32bを重心位置Coを中心にして配置する。
また、図20(b)に示すように、異方性磁気抵抗効果素子32a,32dを重心位置Coの上側にて重心位置Coを挟んで左右に配置し、異方性磁気抵抗効果素子31a,31dを重心位置Coの下側にて重心位置Coを挟んで左右に配置し、異方性磁気抵抗効果素子31b,31cを重心位置Coの上側にて異方性磁気抵抗効果素子32a,32dの左右外側に配置し、異方性磁気抵抗効果素子32b,32cを重心位置Coの下側にて異方性磁気抵抗効果素子31a、31dの左右外側に配置してもよい。
また、図20(c)に示すように、異方性磁気抵抗効果素子32d,31d,32c,31a,32b,31b,32a,31cを、重心位置Coを中心にして上から時計方向回りに配置してもよい。
また、図20(d)に示すように、異方性磁気抵抗効果素子31d,31c,31b,31aを重心位置Coを中心にして上から時計方向回りに配置し、異方性磁気抵抗効果素子32a,32b及び異方性磁気抵抗効果素子32d,32cを異方性磁気抵抗効果素子31d,31c,31b,31aの外側にて重心位置Coを中心に左右両側に配置してもよい。これらによっても、第1乃至第3磁気センサ30,40,50から出力される検出信号A0、B0,A1,B1,A2,B2は上記実施形態と同じになる。
前記のような変形例では、第1乃至第3磁気センサ30,40,50のそれぞれにおいて、第1ブリッジ回路31,41,51を構成する複数の異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dと、第2ブリッジ回路32,42,52を構成する複数の異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dとを同一の平面内に配置し、複数の異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dの重心位置C1と、複数の異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dの重心位置C2とを一致させるようにした。これにより、上記実施形態の場合と同様に、第1及び第2フルブリッジ回路31,32,41,42,51,52は、同じ大きさで変化する磁界の変化を検出するので、第1乃至第3磁気センサ30,40,50から出力される各2つの検出信号A0、B0,A1,B1,A2,B2の精度が向上して、検出される回転軸10の絶対回転角φ3が高精度となる。また、複数の異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,31c,31dと複数の異方性磁気抵抗効果素子32a,32b,32c,32dは、同一の平面内に配置させているので、第1乃至第3磁気センサ30,40,50の製造工程において、第1及び第2フルブリッジ31,32,41,42,51,52を一つの製造工程で同時に製造でき、第1乃至第3磁気センサ30,40,50を簡単かつ安価に製造できるという効果もある。
なお、この変形例に係る第1乃至第3磁気センサ30,40,50においても、上記(1)乃至(3)の人工格子型磁気抵抗素子、金属−金属系ナノグラニュラー磁気抵抗素子又は属−絶縁体系ナノグラニュラー磁気抵抗素子を用いて、第1及び第2フルブリッジ31,32,41,42,51,52を構成してもよい。
d3.ハーフブリッジ回路の採用
また、上記実施形態では、第1乃至第3磁気センサ30,40,50をそれぞれ第1フルブリッジ回路31,41,51及び第2フルブリッジ回路32,42,52で構成するようにした。しかし、これに代えて、第1乃至第3磁気センサ30,40,50をそれぞれハーフブリッジ回路で構成してもよい。
この場合、上記第1フルブリッジ回路31,41,51に代えて、図21(a)に示すように、上記実施形態と同様な異方性磁気抵抗効果素子31a,31bで第1ハーフブリッジ回路を構成する。そして、異方性磁気抵抗効果素子31a,31bの両端に電源電圧+Vcc,−Vccを印加して、異方性磁気抵抗効果素子31a,31bの接続点の電圧信号を取り出し、この取出した電圧信号を上記実施形態の検出信号A0,A1,A2としてA/D変換器70に供給するようにする。また、第2フルブリッジ回路32,42,52に代えて、図21(b)に示すように、上記実施形態と同様な異方性磁気抵抗効果素子32a,32bで第2ハーフブリッジ回路を構成する。そして、異方性磁気抵抗効果素子32a,32bの両端に電源電圧+Vcc,−Vccを印加して、異方性磁気抵抗効果素子32a,32bの接続点の電圧信号を取り出し、この取出した電圧信号を上記実施形態の検出信号B0,B1,B2としてA/D変換器70に供給するようにする。
この場合も、第1ハーフブリッジ回路と第2ハーフブリッジ回路を同一位置にて重ねて配置する場合には、第1ハーフブリッジ回路の2個の異方性磁気抵抗素子31a,31bが配置された第1平面と、第2ハーフブリッジ回路の2個の異方性磁気抵抗素子32a,32bが配置された第2平面とが平行であり、かつ第1ハーフブリッジ回路の2個の異方性磁気抵抗素子31a,31bの重心位置C1(中点位置)が、第2ハーフブリッジ回路の2個の異方性磁気抵抗素子32a,32bの重心位置C2(中点位置)を通り、かつ第2平面(及び第1平面)に直交する直線上に位置するようにするとよい。また、第1ハーフブリッジ回路の2個の異方性磁気抵抗素子31a,31bと、第2ハーフブリッジ回路の2個の異方性磁気抵抗素子32a,32bとを同一平面上に配置する場合には、第1ハーフブリッジ回路の2個の異方性磁気抵抗素子31a,31bの重心位置C1と、第2ハーフブリッジ回路の2個の異方性磁気抵抗素子32a,32bの重心位置C2とが同一平面上で同じになるようにするとよい。
このように、第1乃至第3磁気センサ30,40,50をそれぞれ第1及び第2ハーフブリッジで構成することにより、上記第1乃至第3磁気センサ30,40,50をそれぞれ第1及び第2フルブリッジ回路31,32,41,42,51,52で構成した場合に比べて、精度は悪くなるが、第1乃至第3磁気センサ30,40,50を簡単に構成することができる。なお、この場合も、前記両重心位置C1,C2がずれていると多少の誤差はでるが、両重心位置C1,C2は近くにあれば実用上は問題ない。さらに、この第1乃至第3磁気センサ30,40,50をそれぞれ第1及び第2ハーフブリッジで構成した場合でも、異方性磁気抵抗効果素子31a,31b,32a,32bに代えて、上記(1)乃至(3)の人工格子型磁気抵抗素子、金属−金属系ナノグラニュラー磁気抵抗素子又は属−絶縁体系ナノグラニュラー磁気抵抗素子を用いてもよい。
d4.ブリッジ回路の配置の変形例
上記実施形態及び変形例の第1乃至第3磁気センサ30,40,50においては、第1フルブリッジ回路31,41,51(又は第1ハーフブリッジ回路)及び第2フルブリッジ回路32,42,52(又は第2ハーフブリッジ回路)を異なる構成(位相が90度異なる正弦波信号を発生する構成)にして、第1フルブリッジ回路31,41,51(又は第1ハーフブリッジ回路)及び第2フルブリッジ回路32,42,52(又は第2ハーフブリッジ回路)の両重心位置C1,C2を、回転磁石21,22の回転軸に対して円周方向及び径方向の同一位置に配置するようにした。しかし、前記第1フルブリッジ回路31,41,51(又は第1ハーフブリッジ回路)及び第2フルブリッジ回路32,42,52(又は第2ハーフブリッジ回路)を同一の構成にして、回転磁石21,22の1極の1/4の角度だけ離れた位置(90度離れた位置)にそれぞれ配置するようにしてもよい。
例えば、上述した図3に対応させた図22に示すように、上述した第1フルブリッジ回路31と同一構成のフルブリッジ回路を第1フルブリッジ回路31’として位置aに配置し、かつ上述した第1フルブリッジ回路31と同一構成のフルブリッジ回路を第2フルブリッジ回路31”として位置bに配置する。これによっても、第1及び第2フルブリッジ回路31’,31”の出力信号は、回転磁石21,22の回転に伴って共に正弦波状に変化し、90度位相差を有することになる。その結果、これによっても、上記実施形態及び各種変形例の場合と同様に、絶対回転角φ3の検出が可能となる。また、この場合も、第1及び第2フルブリッジ回路31’,32”に代えて、上述した第2フルブリッジ回路32を用いてもよいし、他のフルブリッジ回路を用いてもよい。また、フルブリッジ回路に代えてハーフブリッジ回路を用いてもよい。
ただし、第1磁気パターンの着磁角度λ0、第2磁気パターンの第1ブロック22aの着磁角度λ1、及び第2磁気パターンの第2ブロック22bの着磁角度λ2はそれぞれ異なり、λ1<λ0<λ2の関係にある。したがって、前述のように、第1及び第2フルブリッジ回路31’,31”を回転磁石21,22の1極の1/4の角度だけ離れた位置(90度離れた位置)にそれぞれ配置するとは言っても、一義的には定まらない。この場合、着磁角度λ1,λ2の間の角度である着磁角度λ0に着目して、第1磁気パターンの1極の1/4の角度だけ離れた位置(90度離れた位置)に、第1及び第2フルブリッジ回路31’、32”を配置する。これによれば、第1磁気センサ30からの正弦波状の検出信号A0,B0の位相差、第2磁気センサ40からの正弦波状の検出信号A1,B1の位相差、及び第3磁気センサ50からの正弦波状の検出信号A2,B2間の位相差は、それぞれほぼ90度となる。したがって、第1乃至第3磁気センサ30,40,50から出力される検出信号A0,B0,A1,B1,A2、B2の誤差を小さくすることができる。特に、第1磁気パターンの着磁角度λ0と、第2磁気パターンの第1及び第2ブロック22a,22bの着磁角度λ1,λ2とのそれぞれの差λ0−λ1,λ2−λ0を小さくすれば、この誤差を小さくすることができる。
d5.回転磁石の配置の変形例
上記実施形態及び各種変形例においては、回転磁石21,22を回転軸方向に2列に設けるようにしたが、回転磁石21,22を径方向に2列に設けるようにしてもよい。図23(a)〜(c)は、この変形例に係る回転検出装置を概略的に表している。図23(a)は平面図であり、図23(b)は側面図であり、図23(c)は下面図である。なお、図23(c)においては、基板60を省略してその位置を仮想線で示している。
この回転検出装置は、回転軸10を有する円形の回転板11の下面に、環状に形成した第1及び第2回転磁石21A,22Aをその上面にて同心円状に固定して、第1及び第2回転磁石21A,22Aを回転板11の下方に突出させている。第1及び第2回転磁石21A,22Aは、上記実施形態と同様な第1及び第2磁気パターンを有する。すなわち、第1磁気パターンは、円周方向に全周(360度)に渡って等間隔(着磁角度λ0)でN極とS極とを交互に着磁した着磁パターンである。第2磁気パターンは、所定角度に渡って等間隔(着磁角度λ1)でN極とS極とを交互に着磁した着磁パターンである第1ブロック22aと、360度から前記所定角度を減算した角度に渡って等間隔(着磁角度λ2)でN極とS極とを交互に着磁した着磁パターンである第2ブロック22bとからなる着磁パターンである。
図23では、第1磁気パターンの極数nは「16」であり、第1及び第2ブロック22a,22bの極数n1,n2は[9]、「7」であり、かつ前記所定角度は180度である。しかし、これらの極数n,n1,n2は、上述したように、極数nが偶数であるとともに極数n1,n2の加算値n1+n2に等しく、かつ極数n1,n2が共に偶数であるか、又は共に奇数であればよい。また、第1及び第2ブロック22a,22bの角度の合計が360度であれば、第1及び第2ブロック22a,22bの角度は180度でなくてもよい。なお、極数n,n1,n2及び着磁角度λ0,λ1,λ2の関係も上述した数10,11の関係にあればよい。
なお、この場合、第1磁気パターン及び第2磁気パターンをそれぞれ磁化した回転磁石21A,22Aを径方向に隔離して設けたり、張り合わせて構成したりしてもよい。また、回転磁石21A,22Aを、一体である磁性体に第1磁気パターン及び第2磁気パターンを磁化して構成してもよい。
また、この変形例に係る回転検出装置においても、第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aを備えている。第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aは、上記実施形態又はその変形例の場合と同様に構成されている。第1磁気センサ30Aは、その感磁面に対して回転磁石21Aの回転軸が直交するように基板60の上面に固定されて、回転磁石21A(第1磁気パターン)の上下方向の中間位置にて、回転磁石21Aの径方向内側に配置されている。第2及び第3磁気センサ40,50は、その感磁面に対して回転磁石22Aの回転軸が直交するように基板60の上面に固定されて、回転磁石22A(第2磁気パターン)の上下方向の中間位置にて、回転磁石22Aの径方向外側に配置されている。なお、基板60の上面には、第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aを支持する支持部60a,60b,60cが一体的に設けられている。
第1磁気センサ30Aの中心位置(重心位置)から回転磁石21Aの内面までの径方向距離と、第2及び第3磁気センサ40A,50Aの中心位置(重心位置)から回転磁石22Aの外面までの径方向距離は全て同じである。また、この場合も、第2及び第3磁気センサ40A,50Aの円周方向位置は回転磁石21A,22Aの回転軸回りに90度互いに異なり、第1磁気センサ30Aの円周方向位置は回転磁石21A,22Aの回転軸回りのいずれの位置でもよいが、基板60の面積を小さくするために、円周方向において第2及び第3磁気センサ40A,50A間であるとよい。基板60は、回転磁石21Aの内面よりも若干内側の位置から回転磁石22Aの外面から若干外側位置まで径方向に延設されるとともに、90度よりも若干大きな角度だけ円周方向に延設されて平板状に構成されており、図示しない部材に固定されている。なお、この基板60上に前述した電気回路が配置されている点も上記実施形態と同じである。
他の構成は、上記実施形態及びその変形例の場合と同じであり、この変形例に係る回転検出装置も上記実施形態及びその変形例と同様に動作する。したがって、この変形例に係る回転検出装置によっても、上記実施形態及びその変形例と同様な機能的効果が期待される。
また、この変形例においては、回転磁石21A,22Aを環状に形成し、回転磁石21A,22Aの回転軸方向において一致した位置にて径方向に2列に配置されており、回転磁石21A,22Aの下面から離れた位置にて、前記下面に対向するように、円周方向に延設された平板状の基板60を配置し、第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aを基板60の上面に固定して、第1磁気センサ30Aを回転磁石21Aの第1磁気パターンに対向させ、かつ第2及び第3磁気センサ30A,40Aを回転磁石22Aの第2磁気パターンに対向させるようにした。したがって、この変形例においても、第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aを一つの基板60上に搭載させることができるので、回転検出装置の構造が簡単になる。さらに、この変形例でも、第1磁気センサ30Aは、回転磁石21A,22Aの円周方向において、第2及び第3磁気センサ40A,50A間に配置されているので、基板60の円周方向の延設角度を90度よりも若干大きくするだけで、第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aを基板60に搭載できて、基板60を小型化できる。
d6.磁気センサの配置の変形例
上記実施形態及びその変形例では、第1磁気センサ30を基板60の上面に固定するとともに、第2及び第3磁気センサ40,50を基板60の下面に固定した。しかし、これに代えて、基板60を回転磁石21,22の下方に設けて、第1乃至第3磁気センサ30,40,50の全てを基板60の上面に固定するようにしてもよい。また、基板60を回転磁石21,22の上方に設けて、第1乃至第3磁気センサ30,40,50の全てを基板60の下面に固定するようにしてもよい。この場合、基板60の上面又は下面に、前記d5の変形例で説明したような支持部60a,60b,60cを設けるようにすればよい。なお、この場合の第1乃至第3磁気センサ30,40,50の回転軸10に対する軸線方向位置、径方向位置及び円周方向位置は上記実施形態の場合と同じである。
また、回転磁石21,22を環状に形成すれば、回転磁石21,22の第1及び第2磁気パターンは回転磁石21,22の内側においても、回転磁石21,22の回転軸が直交する平行な面内にて磁界を発生する。なお、この場合には、前記d5の変形例で説明したような回転軸10と一体回転する回転板11の上面又は下面に、回転磁石21,22をその下面又は上面にて固定する。そして、このように回転磁石21,22を環状に形成した場合には、第1乃至第3磁気センサ30,40,50の一部又は全てを、回転磁石21,22の内側に配置するようにしてもよい。なお、この場合の第1乃至第3磁気センサ30,40,50の回転軸10に対する軸線方向位置及び円周方向位置は上記実施形態と同じであり、第1乃至第3磁気センサ30,40,50の一部又は全ての回転軸10に対する径方向位置を回転磁石21,22の内側にする。
さらに、上記実施形態及びその変形例では、第1乃至第3磁気センサ30,40,50を、回転磁石21,22の回転軸が第1乃至第3磁気センサ30,40,50の感磁面に対して直交するように、回転磁石21,22の側面の外側又は内側に配置した。しかし、回転磁石21,22の第1及び第2磁気パターンは回転磁石21,22の上面側及び下面側においても、回転磁石21,22の回転軸と平行な面内にて磁界を発生する。したがって、図24(a)の上面図に示すように、第1磁気センサ30を、感磁面が回転磁石21,22の接線方向と平行になるように、回転磁石21,22の上面の上側に配置するようにしてもよい。また、図24(b)の下面図に示すように、第2及び第2磁気センサ40,50を、感磁面が回転磁石21,22の接線方向と平行になるように、回転磁石21,22の下面の下側に配置するようにしてもよい。この場合も、第1乃至第3磁気センサ30,40,50の径方向及び円周方向の位置関係は上記第1実施形態及びその変形例の場合と同じである。これによっても、絶対回転角φ3の検出が可能である。
また、前記d5の変形例においては、第1磁気センサ30Aを回転磁石21Aの内側に設けるとともに、第2及び第3磁気センサ40A,50Aを回転磁石22Aの外側に設けるようにした。しかし、回転磁石21Aの着磁パターンと回転磁石22Aの着磁パターンを入れ替えれば、第1磁気センサ30Aを回転磁石22Aの外側に設けるとともに、第2及び第3磁気センサ40A,50Aを回転磁石21Aの内側に設けるようにしてもよい。なお、この場合の第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aの回転軸10に対する軸線方向位置及び円周方向位置は前記d5の変形例と同じである。
また、前記d5の変形例における回転磁石21A,22A間に間隔を設けるとともに磁気遮蔽部材を設け、又は回転磁石21A,22A間の径方向の間隔を充分に大きくすれば、回転磁石21A,22Aは、回転磁石21A,22Aの内外両側において、回転磁石21A,22Aの回転軸10が直交する平行な面内にて磁界を発生する。したがって、この場合には、第1磁気センサ30Aを回転磁石21Aの外側に設けたり、第2及び/又は第3磁気センサ40A,50Aを回転磁石22Aの内側に設けるようにしてもよい。なお、この場合も、第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aの回転軸10に対する軸線方向位置及び円周方向位置は前記d5の変形例と同じである。
また、前記のように、回転磁石21A,22A間の径方向の間隔を充分に大きくして、回転磁石21Aの外側に第1磁気センサ21Aを配置し、又は回転磁石21A,22A間若しくは回転磁石22Aの外側に第2及び第2磁気センサ30A,30Bを配置する場合には、回転磁石21Aを環状でなく円形状に形成してもよい。これらの変形例をまとめると、回転磁石21Aに第1磁気パターンを形成するとともに、回転磁石22Aに第2磁気パターンを形成し、回転磁石21Aを円形状又は環状に形成し、かつ回転磁石22Aを回転磁石21Aの外径よりも大きな内径を有する環状に形成し、回転磁石21A,22Aを回転軸方向において一致した位置にて径方向に2列に回転軸を同一にして配置する。そして、第1磁気センサ30Aを回転磁石21Aの第1磁気パターンの外周面の外側又は第1磁気パターンの内周面の内側に対向させて配置し、かつ第2及び第3磁気センサ40A,50Aを回転磁石22Aの第2磁気パターンの外周面の外側又は第2磁気パターンの内周面の内側に対向させて配置するようにしてもよい。また、回転磁石21Aに第2磁気パターンを形成するとともに、回転磁石22Aに第1磁気パターンを形成し、第2及び第3磁気センサ40A、50Aを回転磁石21Aの第2磁気パターンの外周面の外側又は第2磁気パターンの内周面の内側にて対向させて配置し、かつ第1磁気センサ30Aを回転磁石22Aの第1磁気パターンの外周面の外側又は第1磁気パターンの内周面の内側に対向させて配置するようにしてもよい。
さらに、前記d5の変形例においても、第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aを、回転磁石21A,22Aの回転軸が感磁面に対して直交するように、回転磁石21,22の側面の内側及び外側に配置した。しかし、この場合も、回転磁石21A,22A(第1及び第2磁気パターン)は、回転磁石21,22の下面側においても、回転磁石21,22の回転軸と平行な面内にて磁界を発生する。したがって、図25の下面図に示すように、第1磁気センサ30Aを、感磁面が回転磁石21A(第1磁気パターン)の接線方向と平行になるように、回転磁石21Aの下面の下側に配置するようにしてもよい。また、第2及び第2磁気センサ40A,50Aを、感磁面が回転磁石22A(第2磁気パターン)の接線方向と平行になるように、回転磁石22Aの下面の下側に配置するようにしてもよい。この場合も、第1乃至第3磁気センサ30A,40A,50Aの径方向及び円周方向の位置関係は上記第1実施形態及びその変形例の場合と同じである。これらの各種変形例によっても、絶対回転角φ3の検出が可能である。
d7.その他の変形例
さらに、上記実施形態及び各種変形例においては、本発明に係る回転検出装置を回転軸を貫通させた回転検出装置について説明したが、当然、本発明に係る回転検出装置は回転軸を貫通させない回転検出装置にも適用されるものである。