JP6206659B2 - 2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
これらの文献に示されている水素添加では触媒としてパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金等の貴金属を触媒成分とする触媒が用いられているが、その使用量は反応を短時間に完了させるために非常に多くの量を必要としている。たとえば、特許文献1の実施例では、原料の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルに対する触媒金属で0.33〜1質量%ものパラジウム触媒を使用している。
〔1〕
下記式(2)で表される2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステルを、貴金属触媒の存在下で水素を作用させ、下記式(1)で表される2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルを製造する方法であって、次の(I)〜(III)の全てを満たす条件下で反応を行うことを特徴とする2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
(I)前記貴金属触媒の使用量が、前記2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステルに対する貴金属触媒中の触媒貴金属量で0.0005〜0.03質量%
(II)反応温度が、151〜230℃
(III)水素圧力が、1.6〜15MPa
〔2〕
前記貴金属触媒が、パラジウム触媒、及びルテニウム触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕に記載の2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
〔3〕
前記貴金属触媒が、パラジウム触媒である、〔1〕に記載の2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
〔4〕
水素圧力が3〜12MPaである、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
2,6−TDCEはポリエステルやポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドなどの樹脂原料、液晶組成物、高分子改質剤、医薬中間体などとしての利用が考えられるため、その工業的な意義は大きい。
を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態の原料として使用される2,6−NDCEは、前記の式(2)で表される。式(2)中、R及びR’で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−エチルヘキシル基等があげられる。
入手容易性の観点から原料としてより好ましいのは、R及びR’が共にメチル基である2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルである。
なお、原料の2,6−NDCEは、2,7−NDCE、1,5−NDCE等の構造異性体、及びナフトエ酸アルキルエステルやテレフタル酸アルキルエステル等の不純物を含んでいてもよいが、2,6−NDCEの純度として80質量%以上であるのが好ましく、純度90質量%以上であるのがより好ましく、純度95質量%以上であるのが更に好ましい。
本実施形態で用いられる貴金属触媒としては、パラジウム(以下Pdと記載する場合がある)、ルテニウム(以下Ruと記載する場合がある)、ロジウム(以下Rhと記載する場合がある)、白金が好ましく、水素添加反応における選択性が高いという観点から、パラジウム、ルテニウムがより好ましく、パラジウムが更に好ましい。
担持触媒中の貴金属の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
本実施形態で反応に用いられる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されない。例えば、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、エタノール、イソプロパノール、ターシャリーブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、酢酸、プロピオン酸等の酸性溶媒が挙げられる。なお、反応時の蒸気圧が過大にならないように、使用する溶媒は、沸点が大気圧下で60℃以上であるのが好ましく、70℃以上であるのがより好ましい。
本実施形態の水素添加反応は、通常オートクレーブ等の加圧容器中で実施されることが好ましい。水素添加における水素圧力は1.6MPa以上であるのが好ましく、3MPa以上であるのがより好ましく、3.5MPa以上であるのがさらに好ましい。水素圧力の上限は特に限定されないが、15MPa以下であるのが好ましく、12MPa以下であるのがより好ましい。上記の水素圧力範囲で反応を行なうことで、反応の選択性が高くなり、また、適度な反応速度が得られ効率良く2,6−TDCEを製造できる。
なお、水素添加は以下に示すように加熱下で実施するため、反応器の圧力(全圧)は溶媒の蒸気圧を考慮して設定する必要がある。すなわち、反応器の圧力は、上記に示す水素圧力に溶媒の蒸気圧を上乗せした圧力に保持する必要がある。また、圧力を一定に保持するために、反応で消費された量に見合う水素を反応器に供給する方法を用いることができる。
なお、前記反応時間は、工業的な生産効率の観点より10時間以下であるのが好ましく、6時間以内であるのがより好ましく、4時間以内であるのがさらに好ましい。
本実施形態の水素添加反応の反応方法は特に限定されないが、反応器中に原料、溶媒、貴金属触媒を仕込み、所定の反応温度、水素圧力に設定して反応を行う回分式の反応方法、および、溶媒と貴金属触媒を仕込み所定の反応温度、水素圧力に維持した反応器に原料を供給する半回分式の反応方法が例示される。
本実施形態で得られる生成物中の2,6−TDCEは、溶媒の使用量にもよるが通常は全量が溶媒に溶解しているので、例えば反応生成物から触媒を濾別した後、溶媒を留去することにより、粗2,6−TDCEを取り出すことができる。
更に、再結晶、蒸留やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製を行ってもよい。
攪拌機付き200mLオートクレーブ(SUS316L製)に、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(以下2,6−NDCM)30g、エヌ・イーケムキャット社製5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプ90mg、イソプロパノール50gを仕込んだ。室温で、オートクレーブ内を窒素1MPaで2回置換し、次いで水素1MPaで2回置換した。その後常圧まで落圧した後、反応器内の温度を170℃に昇温し、水素で5MPaまで加圧し、同温度、同圧力を保持して攪拌下(回転数1500rpm)で水素添加反応を実施した。水素は圧力が一定に維持されるように消費量に見合う量を供給した。
60分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却した。水素を放出し、窒素1MPaで2回置換した後、焼結金属を通して触媒を分離し、反応液を抜き出した。得られた反応液から溶媒を除去して、粗2,6−テトラリンジカルボン酸ジメチル(以下2,6−TDCM)(30.1g)を得た。ガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、生成物の組成は、2,6−NDCM:0.5%、2,6−TDCM:98.0%、2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル(以下2,6−DDCM):0.3%であった。2,6−TDCMの収率は96.7モル%であった。
反応温度を190℃とした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
45分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.9g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を30mgとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
150分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.0g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を30mgとし、反応圧力を10MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
60分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.9g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を100mgとし、反応温度を160℃とした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
100分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.1g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を150mgとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
45分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.8g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を300mgとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
30分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.2g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
反応圧力を3MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
300分後、水素供給量が微量(3mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.0g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
2,6−NDCMの仕込み量を15g、5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を45mg、イソプロパノールの仕込み量を75gとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
75分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.4g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
貴金属触媒として5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプ100mg、及びエヌ・イーケムキャット社製5%Ruカーボン粉末(含水率50重量%)Aタイプ100mgを仕込んだ以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
60分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.6g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
溶媒としてイソプロパノールに代えて酢酸エチル50gを用いた以外は実施例5と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
105分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.5g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
反応温度を130℃とした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
360分後、水素供給量が微量(3mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(21.3g)を得た。なお、未反応の原料と思われる結晶が、触媒と共に焼結金属で反応液から分離された。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。反応温度が低い条件では、原料の2,6−NDCMの残存量が多く、反応の進行が不十分である。
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を150mgとし、反応温度を150℃、反応圧力を3.5MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
360分後、水素供給量が微量(3mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(22.6g)を得た。なお、未反応の原料と思われる結晶が、触媒と共に焼結金属で反応液から分離された。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。反応温度が低い条件では、原料の2,6−NDCMの残存量が多く、反応の進行が不十分である。
2,6−NDCMの仕込み量を20g、5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を1000mg、イソプロパノールの仕込み量を60gとし、反応温度を140℃、反応圧力を1.0MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
240分後、水素供給量が微量(3mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(20.6g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。反応温度および反応圧力が低い条件では、触媒濃度を大幅に高くしても、原料の2,6−NDCMの残存量が多く、反応の進行が不十分になっている。
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を1000mgとし、イソプロパノールの仕込み量を30gとし、反応温度を140℃、反応圧力を3.0MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
60分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.2g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。触媒使用量が過大な条件では、反応温度を下げて反応を行っても水添反応が過剰に進行し2,6−DDCMの副生が増加し、2,6−TDCMの収率が低下している。
2,6−NDCMの仕込み量を20g、5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を400mg、イソプロパノールの仕込み量を60gとし、反応温度を135℃、反応圧力を2.0MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
75分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(19.5g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。触媒使用量を比較例4よりも少なくしたものの、やはり触媒使用量が過大な条件では、水添反応が過剰に進行し、2,6−TDCMの収率が低下している。
2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルはポリエステルやポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドとして、液晶組成物、高分子改質剤、医薬中間体などとしての利用が考えられるため、その工業的な意義は大きい。
Claims (4)
- 下記式(2)で表される2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステルを、貴金属触媒の存在下で水素を作用させ、下記式(1)で表される2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルを製造する方法であって、次の(I)〜(III)の全てを満たす条件下で反応を行うことを特徴とする2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
(I)前記貴金属触媒の使用量が、前記2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステルに対する貴金属触媒中の触媒貴金属量で0.0005〜0.03質量%
(II)反応温度が、151〜230℃
(III)水素圧力が、1.6〜15MPa
- 前記貴金属触媒が、パラジウム触媒、及びルテニウム触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
- 前記貴金属触媒が、パラジウム触媒である、請求項1に記載の2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
- 水素圧力が3〜12MPaである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の2,6−テトラリンジカルボン酸ジアルキルエステルの製造方法。
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