以下の実施形態および変形例には、同様の構成が含まれている。それら同様の構成には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が省略される。また、各図では、便宜上、方向(X方向、Y方向、Z方向)が示されている。X方向は、車体2の前後方向での後方、Y方向は、車体2の幅方向の一方向(右方向)、Z方向は、車体2の高さ方向(上下方向での上方)である。X方向、Y方向、およびZ方向は、相互に直交している。
[第1の実施形態]
本実施形態では、一例として、図1に示すように、車両1は、車体2と左右一対の車輪3A,3Bとの間に介在したサスペンション4を備えている。本実施形態では、車輪3A,3Bは、一例として、左右一対の後輪である。なお、左右一対の車輪3A,3Bを特段に区別せずに説明する場合には、それらを単に車輪3ともいう。各車輪3のそれぞれには、一例として、支持機構5(支持部)が連結されており、各車輪3は、支持機構5により車体2と相対上下動可能に連結されている。支持機構5は、車体2と車輪3とに連結されたアーム部材6(リンク部材)を含む。本実施形態では、アーム部材6は、車輪3に連結された連結部材(車輪3を支持した支持部材)の一例である。
また、本実施形態では、一例として、図1,2に示すように、サスペンション4は、ケーシング10(基体、ハウジング)と、ケーシング10に設けられた左右一対の油圧シリンダ11A,11Bと、油圧シリンダ11A,11Bのそれぞれに設けられたリンク機構12と、ケーシング10に結合された一対のアキュムレータ13A,13Bと、を備えている。左側の油圧シリンダ11Aは、左側の車輪3Aに対して設けられ、右側の油圧シリンダ11Bは、右側の車輪3Bに対して設けられている。つまり、油圧シリンダ11A,11Bは、左右一対の車輪3A,3Bのそれぞれに対応して設けられている。本実施形態では、一例として、油圧シリンダ11A,11Bは、車幅方向に沿って一列に配置され、車幅方向で相互に対向している。車幅方向は、車体2の高さ方向と交差する方向の一例である。なお、一対の油圧シリンダ11A,11Bを特段に区別せずに説明する場合には、油圧シリンダ11ともいう。また、一対のアキュムレータ13A,13Bを特段に区別せずに説明する場合には、アキュムレータ13ともいう。また、サスペンション4は、車体2とアーム部材6との間に介在した左右一対の懸架ばね14(ばね)を備えている。懸架ばね14は、各車輪3のそれぞれに対応して設けられている。懸架ばね14は、一例としてコイルばねである。
また、本実施形態では、一例として、図1〜3に示すように、ケーシング10は、基部10aと、筒状の一対の外筒部10bと、一対の固定部10cと、を有している。ケーシング10は、車体2に固定(結合)されている。
一対の外筒部10bは、基部10aの車幅方向の両端部から、車幅方向に沿って相互に反対方向に延出している。また、図3に示すように、外筒部10bにおける基部10a側の一端部には、支持部10b1が設けられている。支持部10b1の内径は、外筒部10bの他の部分の内径に比べて小さい。また、外筒部10bにおける基部10a側と反対側の他端部には、キャップ15が設けられている。
一対の固定部10cは、本実施形態では一例として、基部10aの前後方向の両端部に凹状に設けられている。前側(一方)の固定部10cには、アキュムレータ13Aが固定され、後側(他方)の固定部10cには、アキュムレータ13Bが固定されている。固定部10cとアキュムレータ13との結合は、例えば、ねじ結合や嵌め合い等によってなされる。アキュムレータ13A,13Bは、ケーシング10を挟んで車体2の前後方向に沿って並んで位置されている。本実施形態では、アキュムレータ13Aが第一アキュムレータの一例であり、該アキュムレータ13Aが固定された固定部10cが第一固定部の一例である。また、アキュムレータ13Bが第二アキュムレータの一例であり、該アキュムレータ13Bが固定された固定部10cが第二固定部の一例である。
本実施形態では、一例として、油圧シリンダ11A,11Bは、車幅方向で対向して配置されるとともに、ケーシング10によって一体化されている。各油圧シリンダ11は、シリンダ部16(シリンダチューブ、シリンダ部)と、シリンダ部16の内部に位置されたピストン17と、ピストン17に連結されたピストンロッド18と、ピストンロッド18を案内するロッド支持部19と、を有している。油圧シリンダ11は、車体2の幅方向に伸縮する。車体2の幅方向は、車体2の高さ方向と交差する方向の一例である。
また、本実施形態では、一例として、左側(一方)の油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と、右側(他方)の油圧シリンダ11Bのシリンダ部16とは、車体2の幅方向に沿って一直線状に位置されている。各シリンダ部16は、ケーシング10に設けられた外筒部10bと、外筒部10bの内部に挿入された筒状の内筒部16a(シリンダ本体)と、を有している。即ち、シリンダ部16は、二重管構造となっている。また、本実施形態では、前述したとおり、ケーシング10が車体2に固定されている。つまり、シリンダ部16が車体2に固定されている。以上から分かるように、本実施形態では、ケーシング10は、左側(一方)の油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と右側(他方)の油圧シリンダ11Bのシリンダ部16とが一体化されて構成され、車体2に固定されている。
内筒部16aにおける基部10a側の一端部は、支持部10b1に嵌合されて支持部10b1に支持されている。内筒部16aの一端部の開口は、ケーシング10の基部10aに設けられた面10a1によって覆われている。また、内筒部16aにおける基部10aと反対側の他端部の開口は、ロッド支持部19によって覆われている。内筒部16aの内部には、油室Rが設けられている。油室Rには、作動油(作動流体、流体、液体、媒体)が充満している。油室Rは、ピストン17によって、第一室R1(第一油室)と第二室R2(第二油室)とに区画されている。本実施形態では、第一室R1は、ピストンロッド18が貫通した油室であり、第二室R2は、ピストン17と面10a1との間の油室である。
また、内筒部16aの他端部には、ロッド支持部19が設けられている。ロッド支持部19は、外筒部10b内に挿入されるととともに、その一部が外筒部10bから突出している。ロッド支持部19は、一例として複数の部品によって構成されうる。また、内筒部16aの他端部には、キャップ15が結合されており、内筒部16aの他端部およびロッド支持部19は、キャップ15によって覆われている。
また、外筒部10bと内筒部16aとの間には、外筒部10bに対して内筒部16aを位置決め(固定)する支持部(図示せず)が部分的に設けられている。該支持部は、外筒部10bと内筒部16aとの一方または両方に設けられている。
ピストン17は、一例として、車幅方向でシリンダ部16に対する相対往復動が可能にシリンダ部16(内筒部16a、油室R)内に位置されている。車幅方向は、車体2の高さ方向と交差する方向の一例である。
ピストンロッド18の一端部は、ピストン17に連結(固定)され、ピストンロッド18の他端部は、リンク機構12に結合されており、ピストンロッド18の一部は、油室R(第一室R1)内に位置されている。また、ピストンロッド18は、ロッド支持部19に摺動可能に支持されており、ロッド支持部19によって車幅方向に案内される。油圧シリンダ11Aのピストンロッド18と油圧シリンダ11Bのピストンロッド18とは、相互に反対方向に油室Rから突出している。油圧シリンダ11は、シリンダ部16に対してピストンロッド18がピストン17とともに往復動をすることで、伸縮する。
本実施形態では、一例として、図1に示すように、リンク機構12は、車輪3に連結されたアーム部材6と、該車輪3に対応して設けられた油圧シリンダ11のピストンロッド18との間に介在し、アーム部材6の動作に従動して該油圧シリンダ11を伸縮させる。
リンク機構12は、詳細には、車体2に連結されたベルクランク21と、ベルクランク21をピストンロッド18およびアーム部材6に連結させたリンク部材22,23と、を有している。
ベルクランク21は、一例として、凸状の三つの連結部21a〜21c(端部)を有している。連結部21aは、車体2の前後方向を軸芯方向とした軸部材24によって、車体2に回動可能に連結されている。また、連結部21bは、リンク部材22を介して、シリンダ部16から突出したピストンロッド18の端部に連結されている。リンク部材22の一端部は、車体2の前後方向を軸芯方向とした軸部材25によって、該軸部材25回りにピストンロッド18の端部に回動可能に連結され、リンク部材22の他端部は、車体2の前後方向を軸芯方向とした軸部材26によって、該軸部材26回りにベルクランク21の連結部21bに回動可能に連結されている。また、連結部21cは、リンク部材23を介して、アーム部材6に連結されている。リンク部材23の一端部23aは、車体2の前後方向を軸芯方向とした軸部材27によって、該軸部材27回りにアーム部材6に回動可能に連結され、リンク部材23の他端部は、車体2の前後方向を軸芯方向とした軸部材28によって、該軸部材28回りにベルクランク21の連結部21cに回動可能に連結されている。本実施形態では、リンク部材23の一端部23aは、アーム部材6との連結部の一例である。このリンク部材23の一端部23aは、車体2の高さ方向で油圧シリンダ11よりも下方に位置されている。即ち、本実施形態では、油圧シリンダ11は、アーム部材6と連結されたリンク部材23の一端部23aよりも上方に位置されている。ここで、アーム部材6は、一例として、車体2の前後方向を軸芯方向とした軸部材7によって、上下方向に回動可能となっている。リンク機構12は、一例として、アーム部材6の回動運動を油圧シリンダ11の伸縮運動に変換する。本実施形態では、一例として、連結部21a(軸部材24)の上方に連結部21b(軸部材26)が位置され、連結部21a(軸部材24)の車幅方向外方に連結部21c(軸部材28)が位置されている。かかる構成により、本実施形態では、リンク機構12は、該リンク機構12が連結された車輪3が上方へ向かって車体2と相対移動した場合、該リンク機構12が連結された油圧シリンダ11を縮ませる方向に該油圧シリンダ11を動作させる。これにより、該相対移動の前に比べて、第一室R1の容積が増大し第二室R2の容積が減少する。一方、リンク機構12は、該リンク機構12が連結された車輪3が下方へ向かって車体2と相対移動した場合、該リンク機構12が連結された油圧シリンダ11を伸ばす方向に該油圧シリンダ11を動作させる。これにより、該相対移動の前に比べて、第一室R1の容積が減少し第二室R2の容積が増大する。
次に、作動油が流れる通路構造について説明する。本実施形態では、一例として、図3,4に示すように、サスペンション4には、第一通路31と第二通路32とが設けられている。第一通路31は、油圧シリンダ11A,11Bのうちの左側(一方)の油圧シリンダ11Aの第一室R1と、一対の油圧シリンダ11A,11Bのうちの右側(他方)の油圧シリンダ11Bの第二室R2とを連通している。一方、第二通路32は、左側(一方)の油圧シリンダ11Aの第二室R2と、右側(他方)の油圧シリンダ11Bの第一室R1とを連通している。これらの第一通路31および第二通路32には、作動油が充満しており、第一通路31および第二通路32には、作動油が流れる。
第一通路31および第二通路32は、複数の部分(第一部分40a〜第五部分40e、通路部)を含んでいる。以下、第一通路31について詳しく説明する。第一部分40aは、油圧シリンダ11Aの外筒部10bと内筒部16aとの間に設けられ、略筒状となっている。第一部分40aは、油圧シリンダ11Aの内筒部16aの他端部とロッド支持部19との間に設けられた開口16bを介して、油圧シリンダ11Aの第一室R1と連通している。図4に示すように、第一部分40aにおける内筒部16aの一端部近傍の部分は、第二部分40bと連通している。第二部分40bは、ケーシング10の基部10aに設けられ、第一部分40aから基部10aの下端部に至る。第二部分40bは、配管33Aに設けられた第三部分40cと連通している。配管33Aは、一例として剛体であり、基部10aに取り付けられている。第三部分40cは、基部10aに設けられた第四部分40dと連通している。第四部分40dは、油圧シリンダ11Bの内筒部16aの一端部を覆った面10b1を貫通して設けられ、油圧シリンダ11Bの第二室R2と連通している。また、この第四部分40dは、アキュムレータ13Aと連通している。詳細には、第四部分40dの途中には、アキュムレータ13Aと連通した第五部分40eが連通している。第五部分40eは、基部10aに設けられている。
次に、第二通路32について、詳しく説明する。第一部分40aは、油圧シリンダ11Bの外筒部10bと内筒部16aとの間に設けられ、略筒状となっている。第一部分40aは、油圧シリンダ11Bの内筒部16aの他端部とロッド支持部19との間に設けられた開口16bを介して、油圧シリンダ11Bの第一室R1と連通している。第一部分40aにおける内筒部16aの一端部近傍の部分は、第二部分(図示せず)と連通している。第二部分は、ケーシング10の基部10aに設けられ、第一部分40aから基部10aの下端部に至る。第二部分は、配管33Bに設けられた第三部分(図示せず)と連通している。配管33Bは、一例として剛体であり、基部10aに取り付けられている。第三部分は、基部10aに設けられた第四部分40dと連通している。第四部分40dは、油圧シリンダ11Aの内筒部16aの一端部を覆った面10b1を貫通して設けられ、油圧シリンダ11Aの第二室R2と連通している。また、この第四部分40dは、アキュムレータ13Bと連通している。詳細には、第四部分40dの途中には、アキュムレータ13Bと連通した第五部分40eが連通している。第五部分40eは、基部10aに設けられている。
以上から分かるように、本実施形態では、第一通路31と第二通路32とは、ケーシング10と内筒部16aとロッド支持部19と配管33A,33Bとを含んだ組立体である通路体34に設けられている。通路体34は、第一通路31と第二通路32とを規定している。また、本実施形態では、ケーシング10には、第一通路31の少なくとも一部(本実施形態では一部)と第二通路32の少なくとも一部(本実施形態では一部)とが設けられ、ケーシング10は、通路体34の少なくとも一部(本実施形態では一部)を構成している。
次に、サスペンション4の動作を説明する。サスペンション4の動作として、油圧シリンダ11A,11Bの変位が同位相である場合と、油圧シリンダの変位が逆位相の場合とを、それぞれ説明する
まず、油圧シリンダ11A,11Bの変位が同位相であって、油圧シリンダ11A,11Bが伸びる場合について説明する。これは、本実施形態では、車輪3A,3Bが車体2に対して相対的に下方に向かって移動する場合に生じる。この場合、各油圧シリンダ11A,11Bでは、第一室R1の容積が減少し、第二室R2の容積が増大する。したがって、油圧シリンダ11Aの第一室R1から流出した作動油は、第一通路31を通って油圧シリンダ11Bの第二室R2に流入する。一方、油圧シリンダ11Bの第一室R1から流出した作動油は、第二通路32を通って油圧シリンダ11Aの第二室R2に流入する。このとき、第一室R1において減少する容積は、第二室R2において増大する容積に対して、ピストンロッド18が第一室R1から出た体積分だけ小さいため、その分、第一室R1からの流入する作動油だけでは第二室R2へ流入する作動油が不足する。この不足分の作動油は、油圧シリンダ11Bの第二室R2には、第一通路31を介してアキュムレータ13Aから供給され、油圧シリンダ11Aの第二室R2には、第二通路32を介してアキュムレータ13Bから供給される。
次に、油圧シリンダ11A,11Bの変位が同位相であって、油圧シリンダ11A,11Bが縮む場合について説明する。これは、本実施形態では、車輪3A,3Bが車体2に対して相対的に上方に向かって移動する場合に生じる。この場合、各油圧シリンダ11A,11Bでは、第一室R1の容積が増大し、第二室R2の容積が減少する。したがって、油圧シリンダ11Aの第二室R2から流出した作動油は、第二通路32を通って油圧シリンダ11Bの第一室R1に流入する。一方、油圧シリンダ11Bの第二室R2から流出した作動油は、第一通路31を通って油圧シリンダ11Aの第一室R1に流入する。このとき、第一室R1において増大する容積は、第二室R2において減少する容積に対して、ピストンロッド18が第一室R1へ入った体積分だけ小さいため、その分、第二室R2から流出した作動油が第一室R1へ流入できずに余剰となる。この余剰分の作動油は、油圧シリンダ11Aの第二室R2からは、第二通路32を介してアキュムレータ13Bへ流れ、油圧シリンダ11Bの第二室R2からは、第一通路31を介してアキュムレータ13Aへ流れる。
次に、油圧シリンダ11A,11Bの変位が逆位相の場合について説明する。この場合、油圧シリンダ11A,11Bの一方が伸び他方が縮む。これは、例えば、車輪3A,3Bの一方が車体2に対して相対的に上方に向かって移動し、車輪3A,3Bの他方が車体2に対して相対的に下方に向かって位相する場合に生じる。一例として、油圧シリンダ11Aが伸びて、油圧シリンダ11Bが縮む場合、油圧シリンダ11Aでは、第一室R1の容積が減少し、第二室R2の容積が増大する。一方、油圧シリンダ11Bでは、第一室R1の容積が増大し、第二室R2の容積が減少する。この場合、第一通路31で連通された油圧シリンダ11Aの第一室R1と油圧シリンダ11Bの第二室R2との両方で容積が減少するため、油圧シリンダ11Aの第一室R1から流出した作動油と油圧シリンダ11Bの第二室R2から流出した作動油とが、アキュムレータ13Aに流入する。また、この場合、第二通路32で連通された油圧シリンダ11Aの第二室R2と油圧シリンダ11Bの第一室R1との両方で容積が増大するため、油圧シリンダ11Aの第二室R2と油圧シリンダ11Bの第一室R1とに、アキュムレータ13Bから作動油が供給される。ここで、本実施形態では、車両1のロール時には、外輪となる車輪3に設けられた油圧シリンダ11が縮み、内輪となる車輪3に設けられた油圧シリンダ11が伸びる。
以上の動作においては、アキュムレータ13A,13Bへの作動油の流入出量は、油圧シリンダ11A,11Bが同位相で変位する場合に比べて、油圧シリンダ11A,11Bが逆位相で変位する場合の方が多くなる。よって、一例として、本実施形態では、アキュムレータ13A,13Bのガスばね効果を用いたスタビライザー作用で車両1のロール運動の制御を行うことが可能である。
以上、説明したとおり、本実施形態では、油圧シリンダ11が車両1の車体2の高さ方向と交差する方向(一例として、車幅方向)に伸縮するので、油圧シリンダが車体2の高さ方向に沿って伸縮するように設けられた場合に比べて、車高が高くなるのを抑制することができる。また、一例として、本実施形態では、アーム部材6に対するリンク機構12の連結部であるリンク部材23の一端部23aが油圧シリンダ11よりも下方に位置されている、即ち油圧シリンダ11がアーム部材6に対するリンク部材23の一端部23aよりも上方に位置されているので、油圧シリンダがアーム部材6に直接連結されている場合に比べて、油圧シリンダ11に路面からの飛び石等が当たるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、リンク機構12は、車体2に回動可能に連結されたベルクランク21を有している。したがって、本実施形態によれば、比較的簡素な構成でリンク機構12を構成しやすい。
また、本実施形態では、サスペンション4は、左側(一方)の油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と右側(他方)の油圧シリンダ11Bのシリンダ部16とが一体化され車体2に固定されたケーシング10を備えている。したがって、本実施形態によれば、一例として、一対の油圧シリンダ11のシリンダ部16が一体化されていることにより、一対のシリンダ部16の相対移動が無いので、フレキシブル配管を用いること無く通路体34を構成することができる。よって、本実施形態によれば、一例として、油圧による通路体34の膨張を抑制することができる。また、本実施形態によれば、一例として、一対の油圧シリンダ11のシリンダ部16が一体化されていることにより、第一通路31および第二通路32の長さを短くしやすい。ここで、一対の油圧シリンダを別体で設けて、車体2の左右に車体2の高さ方向に沿って配置した場合、第一通路と第二通路とがX字状の配置となり、第一通路と第二通路との長さが長くなってしまう。
また、本実施形態では、一例として、ケーシング10は、アキュムレータ13Aが固定された固定部10cと、アキュムレータ13Bが固定された固定部10cと、を有している。したがって、本実施形態によれば、一例として、一対の油圧シリンダ11のシリンダ部16とアキュムレータ13A,13Bとが一体化されていて、一対のシリンダ部16とアキュムレータ13A,13Bとの相対移動が無いので、フレキシブル配管を用いること無くそれらの間の作動油の通路を規定する通路体34を構成することができる。よって、油圧による通路体34の膨張を抑制することができる。また、本実施形態によれば、一例として、一対のシリンダ部16と一対のアキュムレータ13とが一体化されているので、組立完成後のサスペンション4を容易に車両1に搭載することができる。よって、車両1への搭載時にサスペンション4内に異物が混入するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、ケーシング10には、第一通路31の一部と第二通路32の一部とが設けられている。したがって、本実施形態によれば、一例として、第一通路31および第二通路32用の配管を少なくすることができる。
また、本実施形態では、左側(一方)の油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と、右側の(他方)の油圧シリンダ11Bのシリンダ部16とは、車体2の車幅方向に沿って一直線状に位置されている。したがって、本実施形態によれば、一例として、シリンダ部同士が車体2の高さ方向に沿って位置されている場合に比べて、サスペンション4の高さを低くしやすい。
また、本実施形態では、アキュムレータ13A,13Bは、ケーシング10を挟んで車体2の前後方向に沿って並んで位置されている。したがって、本実施形態によれば、一例として、一対のアキュムレータが車体2の高さ方向に並んで位置された場合に比べて、サスペンション4の高さを低くしやすい。
[変形例]
図5に示すように、本変形例では、各第二室R2には、オリフィス51(51A,51B)と、減衰力バルブ52(52A,52B)とが連通している。オリフィス51は、第二室R2に対する作動油に流入出を許容する。減衰力バルブ52は、一例として、弁体52aと弁体52aを閉弁方向に付勢するばね52bとを有する。減衰力バルブ52は、開弁することで第二室R2からの作動油の流出を許容し、閉弁することで第二室R2への作動油の流入を規制する(流入させない)。減衰力バルブ52は、差圧が所定値以上で開弁し差圧に応じて流量を調整する。減衰力バルブ52は、一例として、油圧シリンダ11の縮み動作時に第二室R2の内圧の上昇に応じて開弁し、第二室R2から作動油を流出させる。かかる構成の減衰力バルブ52は、第二室R2からの作動油の流出時に減衰力を発生する。オリフィス51と、減衰力バルブ52とは、ケーシング10内に設けられている。油圧シリンダ11Aに対して設けられたオリフィス51Aと減衰力バルブ52Aとは、第二通路32の一部を規定しており、油圧シリンダ11Bに対して設けられたオリフィス51Bと減衰力バルブ52Bとは、第一通路31の一部を規定している。これらのオリフィス51A,51Bおよび減衰力バルブ52A,52Bは、通路体34に含まれる。なお、第一室R1に対しても、第二室R2と同様にオリフィスと減衰力バルブとを設けてもよい。
また、本変形例では、各アキュムレータ13には、オリフィス53(53A,53B)と、減衰力バルブ54(54A,54B)とが連通している。オリフィス53は、アキュムレータ13に対する作動油に流入出を許容する。減衰力バルブ54は、一例として、弁体54aと弁体54aを閉弁方向に付勢するばね54bとを有する。減衰力バルブ54は、開弁することでアキュムレータ13からの作動油の流出を許容し、閉弁することでアキュムレータ13への作動油の流入を規制する(流入させない)。減衰力バルブ54は、差圧が所定値以上で開弁し差圧に応じて流量を調整する。減衰力バルブ54は、該減衰力バルブ54のアキュムレータ13側の油圧がアキュムレータ13とは反対側の油圧よりも大きくなるに応じて開弁し、アキュムレータ13から作動油を流出させる。かかる構成の減衰力バルブ54は、アキュムレータ13からの作動油の流出時に減衰力を発生する。オリフィス53と、減衰力バルブ54とは、ケーシング10内に設けられている。アキュムレータ13Aに対して設けられたオリフィス53Aと減衰力バルブ54Aとは、第一通路31の一部を規定しており、アキュムレータ13Bに対して設けられたオリフィス53Bと減衰力バルブ54Bとは、第二通路32の一部を規定している。これらのオリフィス53A,53Bおよび減衰力バルブ54A,54Bは、通路体34に含まれる。
以上の構成では、オリフィス51,53および減衰力バルブ52,54を作動油が通過する際に、減衰力が発生する。
[第2の実施形態]
図6,7に示すように、本実施形態では、油圧シリンダ11の配置やベルクランク21の姿勢が第1の実施形態と異なる。
本実施形態では、一例として、左側(一方)の油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と、右側(他方)の油圧シリンダ11Bのシリンダ部16とは、車体2の高さ方向で重ねられており、油圧シリンダ11Aのピストンロッド18と油圧シリンダ11Bのピストンロッド18とは、車幅方向に沿って相互に反対方向に油室Rから突出している。本実施形態では、車体2の高さ方向は、車幅方向と交差する第一方向の一例である。なお、第一方向は、車体2の前後方向等であってもよい。
本実施形態では、シリンダ部16には、外筒部10bが設けられていない。本実施形態では、ケーシング10は、車体2の高さ方向で重ねられた油圧シリンダ11A,11Bのシリンダ部16を含んでいる。したがって、本実施形態では、油圧シリンダ11Aのシリンダ部16の油室Rと、油圧シリンダ11Bのシリンダ部16の油室Rとが、車体2の高さ方向で相互に間隔をあけて相互に平行に設けられている。ケーシング10は、油圧シリンダ11A,11Bを一体化している。また、ケーシング10は、各シリンダ部16の端部から延出した筒状の延出部10gを有し、この延出部10gの外周部に固定部10cが設けられている。
また、本実施形態では、一例として、図6〜8から分かるように、アキュムレータ13Aは、車体2の前後方向で油圧シリンダ11Bのシリンダ部16と対向し、アキュムレータ13Bは、車体2の前後方向で油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と対向している。本実施形態では、車体2の前後方向は、車幅方向と交差する第二方向の一例である。なお、第二方向は、車体2の前後であってもよい。
また、本実施形態では、一例として、図6,7に示すように、ピストンロッド18は、連結部材61を介してリンク部材22に連結されている。連結部材61は、ピストンロッド18に固定されるとともに、車体2の前後方向を軸芯方向とする軸部材25によって、該軸部材25回りにリンク部材22に回動可能に連結されている。また、本実施形態では、油圧シリンダ11は、覆部材62(ブーツ)を有している。覆部材62は、ピストンロッド18においてシリンダ部16から突出した部分を覆っている。覆部材62は、一端部がシリンダ部16(ケーシング10)に固定され、他端部が連結部材61に固定されている。覆部材62は、蛇腹状を呈しており、ピストンロッド18の往復動に応じて伸縮する。
また、本実施形態では、一例として、図6に示すように、ベルクランク21は、連結部21a(軸部材24)の下方に連結部21b(軸部材26)が位置され、連結部21a(軸部材24)の車幅方向外方に連結部21c(軸部材28)が位置されている。かかる構成により、本実施形態では、リンク機構12は、該リンク機構12が連結された車輪3が上方へ向かって車体2と相対移動した場合、該リンク機構12が連結された油圧シリンダ11を伸ばす方向に該油圧シリンダ11を動作させる。これにより、該相対移動の前に比べて、第一室R1の容積が減少し第二室R2の容積が増大する。一方、リンク機構12は、該リンク機構12が連結された車輪3が下方へ向かって車体2と相対移動した場合、該リンク機構12が連結された油圧シリンダ11を縮ませる方向に該油圧シリンダ11を動作させる。これにより、該相対移動の前に比べて、第一室R1の容積が増大し第二室R2の容積が減少する。
また、本実施形態では、一例として、図7,8に示すように、第一通路31および第二通路32の全てが、ケーシング10に設けられている。
第一通路31および第二通路32は、複数の部分(第一部分63a〜第四部分63dを含んでいる。以下、第一通路31について詳しく説明する。第一部分63aは、油圧シリンダ11Aの第一室R1と連通している。第二部分63bは、油圧シリンダ11Bの第二室R2と連通している。第三部分63cは、アキュムレータ13Aと連通している。第四部分63dは、第一部分63a〜第三部分63cと連通しており、第一部分63a〜第三部分63cを接続している。
次に、第二通路32について詳しく説明する。第一部分63aは、油圧シリンダ11Bの第一室R1と連通している。第二部分63bは、油圧シリンダ11Aの第二室R2と連通している。第三部分は、アキュムレータ13Bと連通している。第四部分63dは、第一部分63a〜第三部分63cと連通しており、第一部分63a〜第三部分63cを接続している。
また、本実施形態では、一例として、各アキュムレータ13には、第1の実施形態の変形例と同様に、オリフィス53と減衰力バルブ54とが連通しており、アキュムレータ13には、オリフィス53と減衰力バルブ54とを介して作動油が流入する。また、アキュムレータ13から流出した作動油は、オリフィス53を通過する。オリフィス53と減衰力バルブ54とは、延出部10g内に設けられている。
以上から分かるように、本実施形態では、第一通路31と第二通路32とは、ケーシング10に設けられており、本実施形態では、ケーシング10が通路体となっている。また、本実施形態では、ケーシング10には、第一通路31の少なくとも一部(本実施形態では全部)と第二通路32の少なくとも一部(本実施形態では全部)とが設けられ、ケーシング10は、通路体の少なくとも一部(本実施形態では全部)を構成している。
次に、サスペンション4の動作を説明する。本実施形態では、第1の実施形態とは逆に、車輪3A,3Bが車体2に対して相対的に上方に向かって移動(バウンド)する場合に、油圧シリンダ11A,11Bが伸び、車輪3A,3Bが車体2に対して相対的に下方に向かって移動する場合に、油圧シリンダ11A,11Bが縮む。また、本実施形態では、車両1のロール時には、外輪となる車輪3に設けられた油圧シリンダ11が伸びて、内輪となる車輪3に設けられた油圧シリンダ11が縮む。このとき、外輪となる車輪3に設けられた油圧シリンダ11においてピストン17に作用する第一室R1と第二室R2との差圧よりも、内輪となる車輪3に設けられた油圧シリンダ11においてピストン17に作用する第一室R1と第二室R2との差圧の方が大きくなる。これにより、一例として、車両1のロール時に、外輪となる車輪3への負荷の増大を抑制しながら、内輪となる車輪3への負荷を残しやすい。
以上の動作においては、アキュムレータ13A,13Bへの作動油の流入出量は、油圧シリンダ11A,11Bが同位相で変位する場合に比べて、油圧シリンダ11A,11Bが逆位相で変位する場合の方が多くなる。よって、一例として、本実施形態では、アキュムレータ13A,13Bのガスばね効果を用いたスタビライザー作用で車両1のロール運動の制御を行うことが可能である。
以上説明したとおり、本実施形態では、左側(一方)の油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と、右側(他方)の油圧シリンダ11Bのシリンダ部16とは、車体2(車両1)の高さ方向で重ねられている。したがって、本実施形態によれば、一例として、一対のシリンダ部16が車体2(車両1)の高さ方向で重ねられているので、第一通路31や第二通路32の長さを短くしやすい。
また、本実施形態では、一例として、左側(一方)の油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と、右側(他方)の油圧シリンダ11Bのシリンダ部16とは、車体2(車両1)の高さ方向で重ねられているとともに、アキュムレータ13Aが、車体2の前後方向で油圧シリンダ11Bのシリンダ部16と対向し、アキュムレータ13Bが、車体2の前後方向で油圧シリンダ11Aのシリンダ部16と対向している。したがって、本実施形態によれば、一例として、一対の油圧シリンダ11A,11Bとアキュムレータ13A,13Bとを車幅方向での車体2の中央部に集約して配置しやすい。
また、本実施形態では、リンク機構12は、該リンク機構12が連結された車輪3が上方へ向かって車体2と相対移動する場合、該リンク機構12に連結された油圧シリンダ11を伸ばす方向に該油圧シリンダ11を動作させる。したがって、本実施形態によれば、一例として、車両1のロール時に、外輪となる車輪3への負荷の増大を抑制しながら、内輪となる車輪3への負荷を残しやすい。
[第3の実施形態]
図9に示すように、本実施形態は、油圧シリンダ11A,11B(シリンダ部16)が別体で設けられている点が第1の実施形態と異なる。
本実施形態では、各油圧シリンダ11は、それぞれケーシング110を有している。ケーシング110は、ケーシング10の基部10aに対応する基部110aを有している。また、ケーシング110は、ケーシング10と同様に、面10a1や外筒部10b、支持部10b1、固定部10c等を有している。本実施形態の固定部10cは、基部110aの下端部に設けられており、一対のアキュムレータ13は、基部110aから下方へ向けて突出している。このように、本実施形態では、一対のアキュムレータ13は、油圧シリンダ11に対して同じ側に設けられている。
また、本実施形態では、シリンダ部16が、車体2に回動可能に連結され、ピストンロッド18がベルクランク21に回動可能に連結されている。詳細には、ケーシング110は、車体2の前後方向を軸芯方向とした軸部材71によって車体2に回動可能に連結された連結部110bを有している。また、本実施形態では、リンク部材22は設けられておらず、ピストンロッド18がベルクランク21の連結部21bに軸部材26によって回動可能に連結されている。
また、本実施形態では、油圧シリンダ11Aの第一室R1と、油圧シリンダ11Bの第二室R2とは、フレキシブル配管72を介して連通されている。また、油圧シリンダ11Aの第二室R2と、油圧シリンダ11Bの第一室R1とは、フレキシブル配管73を介して連通されている。つまり、本実施形態では、第一通路31の一部は、フレキシブル配管72に設けられ、第二通路32の一部は、フレキシブル配管73に設けられている。フレキシブル配管72,73は、可撓性を有しており、車体2に対する油圧シリンダ11A,11Bの回動を許容する。また。本実施形態では、通路体34は、ケーシング110と内筒部16aとロッド支持部19とフレキシブル配管72,73とを含んだ組立体として構成され、通路体34に第一通路31と第二通路32とが設けられている。
以上説明したとおり、本実施形態では、シリンダ部16が車体2に回動可能に連結され、ピストンロッド18がベルクランク21に回動可能に連結されている。したがって、本実施形態によれば、一例として、各油圧シリンダ11が車体2に対して回動可能であるので、その分、リンク機構12を簡素化しやすい。また、本実施形態によれば、一例として、各油圧シリンダ11が車体2に対して回動可能であるので、各油圧シリンダ11を相互に離間させて配置しやすいので、サスペンション4の車両1への搭載の制約を受けにくい。
以上、本発明の実施形態や変形例を例示したが、上記実施形態や変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や、形状、表示要素等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。例えば、油圧シリンダ11の形状やレイアウトは、種々に変更して実施することができる。
また、例えば、サスペンション4が連結される一対の車輪3は、左右一対の後輪に限るものではなく、左右一対の前輪や、右側の前後一対の車輪、左側の前後一対の車輪、前後左右の四つの車輪のうち対角線上に配置された一対の車輪等であってもよい。
また、車輪3に連結された連結部材としては、アーム部材6に限るものではなく、アクスルビーム(アクスルハウジング)等であってもよい。
また、油圧シリンダ11の伸縮方向は、車幅方向に限るものではない。油圧シリンダ11の伸縮方向としては、車体2の高さ方向と交差する車体2の前後方向等であってもよい。
また、一対の油圧シリンダ11は、車両前後方向に沿って一直線状に配置されてもよい。また、一対の油圧シリンダ11は、前後や左右に重ねて配置されてもよい。
また、油圧シリンダ11は、ピストンロッド18が車体2に連結され、シリンダ部16がリンク機構12に連結されていてもよい。
また、一対のアキュムレータ13は、車体2の前後や左右で並べて配置されていてもよい。
また、アキュムレータ13は、ケーシング10,110と別体で設けられていてもよい。
また、懸架ばね14は、コイルばねに限るものではなく、空気ばねや板ばね等であってもよい。