本発明に係る鉄道車両の走行位置検出システムの実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の走行位置検出システムKSの構成を示した図である。走行位置検出システムKSは、図1に示すように、鉄道車両1に組み込まれたものであり、鉄道車両1は、車上子2と、速度発電機3と、ヨー角速度センサ4とを備えている。
走行位置検出システムKSは、実測距離演算部10と、走行速度演算部20と、データベース処理部30と、通過曲線情報作成部40と、候補曲線情報作成部50と、候補曲線情報群作成部50Aと、一致率演算部60と、曲線特定部70と、実測距離補正部80とを備えていて、周知のCPU、RAM、ROM、入出力インタフェース、及びこれらを接続するバスからなる電子制御装置によって実現されている。
鉄道車両1が走行する線路には、多数の地上子Tが配置されている。各地上子Tは、例えばトランスポンダ等によって構成され、線路に沿って間隔を隔てて任意の位置に設置されていて、固有の識別値を有している。車上子2は、鉄道車両1の車体の底部に取付けられていて、例えば、トランスポンダ等によって構成され、走行中に地上子Tと対向することで、地上子Tから送信される識別値を検知して取得するようになっている。取得された地上子Tの識別値は、データベース処理部30に送信される。
速度発電機3は、鉄道車両1の走行速度V(km/h)を測定するためのものであり、車輪の車軸に取付けられていて、車軸の回転に伴って発生するパルス又は正弦波の出力信号を走行速度演算部20に出力する。なお、速度発電機3の出力の方式は特に限定されるものではない。ヨー角速度センサ4は、車体に作用するヨー角の時間的変化をヨー角速度θ(rad/s)として検出する。検出されたヨー角速度θは、通過曲線情報作成部40に送信される。
実測距離演算部10は、走行速度演算部20で演算された走行速度Vと経過時間を乗算することで、鉄道車両1が走行した距離を実測距離S(m)として演算する。演算された実測距離Sは、通過曲線情報作成部40及び実測距離補正部80に送信される。走行速度演算部20は、速度発電機3から入力する出力信号をカウントすることで、周知の方法によって走行速度Vを演算する。演算された走行速度Vは、通過曲線情報作成部40に送信される。なお、実測距離Sを演算する方法は、上記した方法に限定されるものではなく適宜変更可能であり、例えば加速度センサを用いて演算しても良い。また、走行速度Vを演算する方法も適宜変更可能であり、例えば実測距離演算部10から入力する実測距離Sを微分して演算しても良い。
データベース処理部30は、地上子Tの正確な位置情報、即ち地上子Tの絶対位置や、地上子T間の絶対距離等を予め記憶している。データベース処理部30は、送信される地上子Tの識別値に基づいて、検知された地上子Tの位置情報を検索して、その地上子Tを特定する。こうして、鉄道車両1が地上子Tを検知した場合、地上子Tの位置情報が実測距離補正部80に送信され、実測距離補正部80は、地上子Tの位置情報に基づいて実測距離Sを補正して、現地点での自車の走行位置を特定する。そして、車体傾斜制御部90は、データベース処理部30から送信される曲線情報(カント、曲率半径、曲線方向等)と特定された自車の走行位置とに基づいて、車体を傾ける適切な地点を決定して、車体傾斜制御を適切に実行するようになっている。
ところで、鉄道車両1は、天候状態や電波状況が悪い場合、機器が故障した場合等に、地上子Tを検知できない事態が生じ得る。万一このような事態が生じた場合、地上子Tの正確な位置情報を取得できないため、実測距離Sを補正することができず、自車の正確な走行位置を検出することができない。特に、図2に示すように、鉄道車両が線路A1を走行して分岐駅を通過した後、仮に地上子Tを検知できなかった場合に、鉄道車両1は自車の正確な走行位置を検出できず、自身が線路A2又は線路A3のどちらを走行しているのかが分からなくなる。その結果、車体傾斜制御が誤った地点で実行されるおそれがある。
そこで、本実施形態の走行位置検出システムKSは、万一地上子Tが検知できなかった場合であっても、線路の曲線部を通過するときの実測値に基づいて、通過した曲線部を特定して、自車の走行位置を検出することができるように構成されている。以下、走行位置検出システムKSの各処理部30〜80の構成について、図3〜図18を参照しながら説明する。図3は、本実施形態の路線状況を示した図である。
鉄道車両の路線状況は各国に応じて事情が異なるが、本実施形態では図3に示した路線状況を例にして説明する。図3に示した路線状況では、2本の線路がおおよそ平行に並んで南北方向に延びていて、西側に配置された線路を「西線W」と呼び、東側に配置された線路を「東線E」と呼ぶことにする。そして、西線Wには3つの曲線部W1,W2,W3が形成され、東線Eにも3つの曲線部E1,E2,E3が形成されている。
鉄道車両1は、これら西線W及び東線Eの両方の線路において、北側及び南側の双方向に向かって走行するようになっている。即ち、鉄道車両1が走行する路線状況は、単線並列による双方向運用になっている。ここでは、北側に向かって走行する場合を「順行」と呼び、南側に向かって走行する場合を「逆行」と呼ぶことにする。また、曲線部W1と曲線部W2の間の直線部分と、曲線部E1と曲線部E2の間の直線部分との間には、渡り線C1,C2が配置されていて、鉄道車両1は渡り線C1,C2を通って西線Wから東線Eへ、又は東線Eから西線Wへ移ることができるようになっている。
次に、各曲線部E1,E2,E3,W1,W2,W3の構造について、図4を参照しながら、曲線部E1を例にして説明する。曲線部E1は、緩和曲線開始位置p1と円曲線開始位置p2と円曲線終了位置p3と緩和曲線終了位置p4とを有し、緩和曲線開始位置p1と円曲線開始位置p2との間が入口緩和曲線であり、円曲線開始位置p2と円曲線終了位置p3との間が円曲線であり、円曲線終了位置p3と緩和曲線終了位置p4との間が出口緩和曲線である。なお、入口及び出口の名称は、図4の右側に向かって走行する場合(順行)を基準にしている。また、円曲線は曲線部E1のうち曲率がほぼ最大で一定値になる部分であり、入口緩和曲線は直線部分から円曲線に向かって緩やかに曲がる部分であり、出口緩和曲線は円曲線から出口緩和曲線に向かって緩やかに曲がる部分である。
ここで、データベース処理部30が予め記憶している情報値について、図5を参照しながら説明する。図5は、データベース処理部30が各曲線部E1,E2,E3,W1,W2,W3毎に記憶している情報値を模式的に示した図である。先ず、「a」の文字は、円曲線の曲率半径を意味している。そして、「b」の文字は、入口緩和曲線の長さを意味していて、「c」の文字は、円曲線の長さを意味していて、「d」の文字は、出口緩和曲線の長さを意味している。
こうして、各曲線部E1,E2,E3,W1,W2,W3のそれぞれにおいて、緩和曲線開始位置p1、円曲線開始位置p2、円曲線終了位置p3、緩和曲線終了位置p4、曲率半径a、入口緩和曲線長b、円曲線長c、出口緩和曲線長dの正確な情報値を、鉄道車両1が事前の走行試験によって測定して、データベース処理部30が記憶している。例えば、曲線部E1に対応して記憶しているデータ曲線情報DE1は、「E1」の文字が付いていて、緩和曲線開始位置E1p1、円曲線開始位置E1p2、円曲線終了位置E1p3、緩和曲線終了位置E1p4、曲率半径E1a、入口緩和曲線長E1b、円曲線長E1c、出口緩和曲線長E1dである。なお、上記した各情報値は、車体傾斜制御を実行するためにデータベース処理部30が予め記憶しているものである。
続いて、鉄道車両1の走行状況について説明する。本実施形態では、図3に示すように、鉄道車両1が、東線Eを二点鎖線で示した位置から順行して、曲線部E1を通過して、渡り線C1を通って西線に移って、曲線部W2を通過した後、現時点では曲線部W2と曲線部W3の間の地点を走行している状況である。しかし、鉄道車両1は、地上子Tを検出できなくて、現地点では自身がどの曲線部を通過したかが分からないという状況で説明することにする。本実施形態では、データベース処理部30が地上子Tを検出できなかったことを判断すると、鉄道車両1は、地上子Tの位置情報に基づく走行位置の検出を中断し、本実施形態の走行位置検出システムKSを実行するようになっている。なお、後述する走行位置検出システムKSは、地上子による地点検知のバックアップのシステムとして常時稼働していて、地点検知を行う機器の故障を検知した場合又は地点検知による現在の走行位置の補正が失敗した場合に、地上子による地点検知から切り替わって実行しても良い。
走行位置検出システムKSの各処理部40〜80の説明に戻る。通過曲線情報作成部40は、随時ヨー角度センサ4からヨー角速度θを入力されて、曲線部を通過する度に、通過した曲線部に対応する通過曲線情報Rを作成するものである。この通過曲線情報Rは、走行中に測定された値である実測値を複数含むものであり、具体的には、実測曲率半径az、実測入口緩和曲線長bz、実測円曲線長cz、実測出口緩和曲線長dz、実測曲線方向ez、実測曲線間長fzをそれぞれ実測値として含んでいる。ここで、実測曲線間長fzとは、2つの曲線部を通過したときに、一方の曲線部の緩和曲線終了位置p4から他方の曲線部の緩和曲線開始位置p1までの実測距離Sである。なお、上記した各実測値の最後の文字には、測定した実測値であることを意味する「z」を付して区別している。
本実施形態では、図3に示すように、直前に通過した曲線部(実際には、曲線部W2)の通過曲線情報を「R1」で表わし、各実測値を、実測曲率半径R1az、実測入口緩和曲線長R1bz、実測円曲線長R1cz、実測出口緩和曲線長R1dz、実測曲線方向R1ez、実測曲線間長R1fzで表わすことにする。実測曲線間長R1fzは、曲線部E1の緩和曲線終了位置p4から曲線部W2の入口緩和曲線開始位置p1までの実測距離である。
また、直前より1つ前に通過した曲線部(実際には、曲線部E1)の通過曲線情報を「R2」で表わし、各実測値を、実測曲率半径R2az、実測入口緩和曲線長R2bz、実測円曲線長R2cz、実測出口緩和曲線長R2dz、実測曲線方向R2ez、実測曲線間長R2fzで表わすことにする。また、直前より2つ前に通過した曲線部の通過曲線情報を「R3」で表わし、各実測値を、実測曲率半径R3az、実測入口緩和曲線長R3bz、実測円曲線長R3cz、実測出口緩和曲線長R3dz、実測曲線方向R3ez、実測曲線間長R3fzで表わすことにする。なお、通過曲線情報作成部40は、鉄道車両1が新たに曲線部を通過したときに測定した通過曲線情報Rを、直前の通過曲線情報R1として、それまでの通過曲線情報R1,R2,R3,・・・を一つ前の通過曲線情報R2,R3,・・・に更新する。
上述した各実測値の測定方法について説明する。図6は、曲線部を通過したときに検出されたヨー角速度θを示した図である。図6に示すように、ヨー角速度θは波形状で表わされ、曲線部の円曲線を通過中にヨー角速度θが最大値θ1となる。このため、このヨー角速度θ1を走行速度Vで除算することによって、円曲線の曲率が算出される。この円曲線の曲率は、曲線部の最大の曲率であるため、その曲率の逆数が実測曲率半径azになる。
ここで、図6に示したヨー角速度θが増加する区間Aにおいて、ヨー角速度θを走行速度Vで除算して曲率を算出し、その曲率と円曲線の曲率(最大の曲率)との曲率比αが、図7の実線で示されている。そして、図7において、波形状に示された曲率比αの時間微分が、曲率微分値βとして破線で示されている。
緩和曲線開始位置は、曲率微分値βが「0」から上昇し始めた位置であるため、本実施形態では、曲率微分値βが増加中で0.1になる点を求めて、図7のX1で示した位置を緩和曲線開始位置に決定している。また、円曲線開始位置は、曲率微分値βが「0」まで減少する直前の位置であるため、本実施形態では、曲率微分値が減少中で0.1になる点を求めて、図7のX2で示した位置を円曲線開始位置に決定している。なお、緩和曲線開始位置及び円曲線開始位置を決定するために、曲率微分値βの値が0.1になる位置を求めたが、例えば曲率微分値βの値が0.05になる位置を求めても良く、適宜変更可能である。
また、図6に示したヨー角速度θが減少する区間Bにおいて、ヨー角速度θを走行速度Vで除算して曲率を算出し、その曲率と円曲線の曲率(最大の曲率)との曲率比αが、図8の実線で示されている。そして、図8において、波形状に示された曲率比αの時間微分が、曲率微分値βとして破線で示されている。
円曲線終了位置は、曲率微分値が「0」から減少し始めた位置であるため、本実施形態では、曲率微分値βが減少中で−0.1になる点を求めて、図8のX3で示した点を円曲線終了位置に決定している。また、緩和曲線終了位置は、曲率微分値βが「0」まで上昇する直前の位置であるため、本実施形態では、曲率微分値βが増加中で−0.1になる点を求めて、図8のX4で示した位置を緩和曲線終了位置に決定している。なお、円曲線終了位置及び緩和曲線終了位置を求めるために、曲率微分値βの値が−0.1になる位置を求めたが、例えば曲率微分値βが−0.05になる位置を求めても良く、適宜変更可能である。
こうして、緩和曲線開始位置、円曲線開始位置、円曲線終了位置、緩和曲線終了位置が分かることによって、緩和曲線開始位置と円曲線開始位置との間の実測距離Sが実測入口緩和曲線長bzになり、円曲線開始位置と円曲線終了位置との間の実測距離Sが実測円曲線長czになり、円曲線終了位置と緩和曲線終了位置との間の実測距離Sが実測出口緩和曲線長dzになる。そして、曲線部を通過したときに検出するヨー角速度θの正負によって、右向きに曲がる曲線部又は左向きに曲がる曲線部が分かるため、実測曲線方向ezが分かる。なお、実測曲線方向ezは、例えば、右向きに曲がる曲線部の場合に「+1」に定義し、左向きに曲がる曲線部の場合に「−1」に定義すれば良い。また、通過した2つの曲線部において、一方の曲線部の緩和曲線終了位置と他方の曲線部の緩和曲線開始位置が分かるため、実測曲線間長fzが分かる。
上述したように、曲率(曲率微分値β)を利用して、緩和曲線開始位置、円曲線開始位置、円曲線終了位置、緩和曲線終了位置を特定する方法は、曲率がヨー角速度θを走行速度Vで除算したものであるため、曲率の値に走行速度Vの影響が出ないというメリットがある。一方、緩和曲線開始位置、円曲線開始位置、円曲線終了位置、緩和曲線終了位置を特定する別の方法として、ヨー角速度θをそのまま利用しても良い。この場合には、ヨー角速度θを走行速度Vで除算して曲率を算出しないため、計算量が減り、ソフトウェアの構造が簡単になるというメリットがある。なお、緩和曲線開始位置等を特定する方法は、ヨー角速度センサ4が検出したヨー角速度θを用いる方法以外にも適宜変更可能であり、例えば加速度センサが検出した鉄道車両1の横方向に作用する横加速度を用いても良い。
次に、走行位置検出システムKSの処理フローについて、図9を参照しながら説明する。図9に示すように、本実施形態において、走行位置検出システムKSが実行されると、単曲線一致率演算処理(ステップ100)、候補曲線情報群作成処理(ステップ200)、総合一致率演算処理(ステップ300)が順番に実行される。そして、後述するように、演算された総合一致率Jの値に応じて、走行位置検出システムKSを終了する、又は新総合一致率演算処理(ステップ400)を実行する、或いは再び単曲線一致率演算処理(ステップ100)を実行するようになっている。
<単曲線一致率演算処理>
図10に示すように、単曲線一致率演算処理では、先ず、候補曲線情報作成部50が、データベース処理部30に記憶された全ての曲線部、即ち鉄道車両1が通過し得る全ての曲線部に対応する候補曲線情報Kを作成する(ステップ110)。続いて、通過曲線情報作成部40が、直前に通過した曲線部の通過曲線情報R1(図3参照)を用意する(ステップ120)。なお、以下の説明では、候補曲線情報Kを作成する対象の曲線部が、路線に存在する全ての曲線部(曲線部W1,W2,W3,E1,E2,E3)としているが、直前に走行している路線が分かっている場合においてその路線から遷移可能な路線に存在する曲線部としても良い。
ここで、図11は、候補曲線情報作成部50が作成した候補曲線情報Kを模式的に示した図である。本実施形態では、図11に示すように、候補曲線情報作成部50は、各曲線部W1,W2,W3,E1,E2,E3に対応して、候補曲線情報KW1n,KW2n,KW3n,KW1s,KW2s,KW3s,KE1n,KE2n,KE3n,KE1s,KE2s,KE3sを作成する。先ず、これら候補曲線情報Kの種類について説明する。
各候補曲線情報Kでは、仮に鉄道車両1が西線Wを南側から順行(北側に向かって走行)した場合を想定すると、曲線部W1,W2,W3を順番に通過するため(図3参照)、曲線部W1,W2,W3の順番に、候補曲線情報KW1n,KW2n,KW3nを対応させている。なお、候補曲線情報Kの最後の文字には、北側に向かって走行した場合を意味するnを付して区別している。例えば、候補曲線情報KW3nは、曲線部W3を北側に向かって通過した場合の候補曲線情報Kを意味している。
また、仮に鉄道車両1が西線Wを北側から逆行(南側に向かって走行)した場合を想定すると、曲線部W3,W2,W1を順番に通過するため、曲線部W3,W2,W1の順番に、候補曲線情報KW1s,KW2s,KW3sを対応させている。なお、候補曲線情報Kの最後の文字には、南側に向かって走行した場合を意味するsを付して区別している。例えば、候補曲線情報KW3sは、曲線部W1を南側に向かって通過した場合の候補曲線情報Kを意味している。
東線Eでも同様に、仮に鉄道車両1が東線Eを南側から順行した場合を想定すると、曲線部E1,E2,E3を順番に通過するため、曲線部E1,E2,E3の順番に、候補曲線情報KE1n,KE2n,KE3nを対応させている。また、仮に鉄道車両1が東線Eを北側から逆行した場合を想定すると、曲線部E3,E2,E1を順番に通過するため、曲線部E3,E2,E1の順番に、候補曲線情報KE1s,KE2s,KE3sを対応させている。
次に、各候補曲線情報Kに含まれている各データ値について説明する。各データ値は、曲線部における曲率半径a、入口緩和曲線長b、円曲線長c、出口緩和曲線長d、曲線方向e、曲線間長fであるが、これらのデータ値は、曲線部を通過するときの方向(順行又は逆行)を考慮した値である。これは、例えば曲線部E1を順行する場合と逆行する場合とでは、曲率半径a、入口緩和曲線長b、円曲線長c、出口緩和曲線長d、曲線方向e、曲線間長fが異なるためである。本実施形態では、候補曲線情報Kに含まれるデータ値について、例えば「データ曲率半径」のように、「データ」を付けて区別することにする。
例えば、上述したように、候補曲線情報KW3nは、曲線部W3を北側に向かって通過した場合の候補曲線情報Kを意味しているため、候補曲線情報作成部50は、候補曲線情報KW3nの各データ値として、曲線部W3のデータ曲線情報DW3の各情報値(図5参照)に基づいて、データ曲率半径W3a−n、データ入口緩和曲線長W3b−n、データ円曲線長W3c−n、データ出口緩和曲線長W3d−n、データ曲線方向W3e−nを作成する。なお、データ曲線方向W3e−nは、曲線部W3を北側に向かって通過する場合の曲線方向として、例えば左向きに曲がることを意味する「−1」が入る。また、候補曲線情報作成部50は、データ曲線情報DW3とデータ曲線情報DW2に基づいて、曲線部W2の緩和曲線終了位置p4から曲線部W3の緩和曲線開始位置p1までの距離であるデータ曲線間長W3f−nを作成する。
同様に、例えば、上述したように、候補曲線情報KW3sは、曲線部W1を南側に向かって通過した場合の候補曲線情報Kを意味しているため、候補曲線情報作成部50は、候補曲線情報KW3sの各データ値として、曲線部W1のデータ曲線情報DW1の各情報値に基づいて、データ曲率半径W3a−s、データ入口緩和曲線長W3b−s、データ円曲線長W3c−s、データ出口緩和曲線長W3d−s、データ曲線方向W3e−sを作成する。また、候補曲線情報作成部50は、曲線部W1のデータ曲線情報DW1及び曲線部W2のデータ曲線情報DW2に基づいて、曲線部W2の緩和曲線終了位置p4から曲線部1の緩和曲線開始位置p1までの距離であるデータ曲線間長W3f−sを作成する。こうして、候補曲線情報作成部50は、走行し得る全ての曲線部E1〜W3に対応する各候補曲線情報KW1n〜KE3sを作成する。
単曲線一致率演算処理の説明に戻る。図10に示すように、ステップ110及びステップ120の後に、一致率演算部60は、部分一致率Hを算出して(ステップ130)、単曲線一致率Iを演算する(ステップ140)。ここで、単曲線一致率Iとは、直前の通過曲線情報R1と各候補曲線情報KW1n〜KE3sとが、0から1までの範囲でどのくらい一致しているかを数値で表わしたものである。単曲線一致率Iが1に近い程、直前の通過曲線情報R1と対象となる候補曲線情報Kとが一致していることを意味する。この単曲線一致率Iを演算するために、直前の通過曲線情報R1の各実測値と、対象となる候補曲線情報Kの各データ値とによって、部分一致率Hが算出される。
部分一致率Hを求めるための演算式は、以下の数1で表わされる。
上記した数1で算出される部分一致率Hは、0から1までの範囲でどのくらい実測値とデータ値とが一致しているかを数値で表わしたものであり、部分一致率Hが大きい程、実測値とデータ値とが一致していることを意味する。上記した数1の場合、実測値がデータ値の2倍より大きい値であると、部分一致率Hが0より小さい値になる。従って、本実施形態では、部分一致率Hが0より小さい場合には、「0」と定義するようになっている。
例えば、直前の通過曲線情報R1と候補曲線情報KW1nとの単曲線一致率IW1nを算出するためには、直前の通過曲線情報R1の各実測値(実測曲率半径R1az、実測入口緩和曲線長R1bz、実測円曲線長R1cz、実測出口緩和曲線長R1dz、実測曲線方向R1ez)と、候補曲線情報KW1nの各データ値(データ曲率半径W1a−n、データ入口緩和曲線長W1b−n、データ円曲線長W1c−n、データ出口緩和曲線長W1d−n、データ曲線方向W1e−n)とによって、各部分一致率H(Ha,Hb,Hc,Hd,He)が算出される。
即ち、実測曲率半径R1azとデータ曲率半径W1a−nとの部分一致率Haは、上記した数1の実測値に実測曲率半径R1azが代入され、上記した数1のデータ値にデータ曲率半径W1a−nが代入されて、算出される。同様に、実測入口緩和曲線長R1bzとデータ入口緩和曲線長W1b−nとの部分一致率Hb、実測円曲線長R1czとデータ円曲線長W1c−nとの部分一致率Hc、実測出口緩和曲線長R1dzとデータ出口緩和曲線長W1d−nとの部分一致率Hd、実測曲線方向R1ezとデータ曲線方向W1e−nとの部分一致率Heが算出される。なお、実測曲線方向R1ezとデータ曲線方向W1e−nとの部分一致率Heは、例えば、上記した数1を用いずに、同じ値(同じ曲線方向)である場合には「1」になり、異なる値(逆の曲線方向)である場合には「−1」になるように設定しても良い。そして、これら各部分一致率Ha,Hb,Hc,Hd,Heが全て乗算されることで、直前の通過曲線情報R1と候補曲線情報KW1nとの単曲線一致率IW1n(図12参照)が演算される。なお、単曲線一致率Iは1つの曲線部の一致度合いを表すものであるため、単曲線一致率IW1nを演算する際に、直前の通過曲線情報R1に含まれる実測曲線間長R1fz及び候補曲線情報KW1nに含まれるデータ曲線間長W1f−nが用いられることはない。
以下、同様に、図11に示す全ての候補曲線情報KW1n〜KE3sに対して、単曲線一致率IW1n〜IE3sがそれぞれ演算される。ここで、図12は、本実施形態において演算された単曲線一致率IW1n〜IE3sの値を示した図である。図12に示すように、例えば、単曲線一致率IW1nは0.1であるため、直前の通過曲線情報R1と候補曲線情報KW1nとがほとんど似ていないことを意味している。一方、単曲線一致率IW2nは0.95であるため、直前の通過曲線情報R1と候補曲線情報KW2nとが非常に似ていることを意味し、単曲線一致率IE2nも0.9であるため、直前の通過曲線情報R1と候補曲線情報KE2nとが非常に似ていることを意味している。また、例えば、単曲線一致率IW1sは0であり、直前の通過曲線情報R1と候補曲線情報KW1sとが全く似ていないことを意味しているが、これは曲線方向が逆であるためである。
単曲線一致率演算処理の説明に戻る。図10に示すように、ステップ140の後、曲線特定部70は、各単曲線一致率IW1n〜IE3nが所定値Ia以上であるか否かを判断して、所定値Ia以上の単曲線一致率Iのみを残す(ステップ150)。所定値Iaは、直前の通過曲線情報R1と各候補曲線情報KW1n〜KE3sとが一致していることを判断するための基準になる値であり、1に極めて近い値に設定されている。本実施形態では、所定値Iaは0.9に設定されているが、適宜変更可能である。このため、図11に示すように、単曲線一致率IW2n及び単曲線一致率IE2nのみが0.9以上であるため、ステップ150において、曲線特定部70は、単曲線一致率IW2n及び単曲線一致率IE2nを残す。
次に、ステップ160において、曲線特定部70は、残った単曲線一致率Iが有るか否かを判断する。本実施形態では、単曲線一致率IW2n及び単曲線一致率IE2nが残っているため、「Yes」と判断されて、ステップ170に進む。続いて、ステップ170において、曲線特定部70は、残った単曲線一致率Iが2つ以上有るか否かを判断する。本実施形態では、「Yes」と判断されて、単曲線一致率演算処理が終了し、候補曲線情報群作成処理が実行される。
ところで、上述したように残った単曲線一致率Iが2つ以上存在する場合とは、直前の通過曲線情報R1が各候補曲線情報KW1n〜KE3sのうち2つ以上の候補曲線情報Kと非常に似ている、即ち直前に通過した曲線部が全ての曲線部の中で2つ以上の曲線部と非常に似ている場合を意味している。具体的に、本実施形態では、直前に通過した曲線部が、順行(北側に向かって走行)する場合の曲線部W2、及び順行する場合の曲線部E2と非常に似ている場合を意味している。
このように、曲線部W2の形状と曲線部E2と形状とが似ていると、直前に通過した曲線部が、曲線部W2又は曲線部E2のどちらなのかが分からない事態が生じる。要するに、複数本の線路が並行して敷設された区間を走行する場合、例えば日本のように片側通行が主流である状況においては、形状が類似した曲線部が検出され難くて、特定する曲線部を誤認することが少ない。しかしながら、本実施形態で説明するように単線双方向運用を行う状況においては、並行する複数の線路上に形状が類似した曲線部が存在し、それらを区別する必要がある。このため、本実施形態の走行位置検出システムKSでは、直前に通過した曲線部の一致度合いを演算するだけでなく、直線より前に通過した曲線部の一致度合いを演算することで、直前に通過した曲線部がどの曲線部なのかを特定できるように構成されている。
ここで、単曲線一致率演算処理のステップ180、ステップ190、ステップ195について説明しておく。本実施形態と異なる場合として、仮に、各単曲線一致率IW1n〜IE3sが全て所定値Iaより小さい結果が得られた場合、ステップ160において、残った単曲線一致率Iが無いため、「No」と判断されて、ステップ180に進むことになる。これは、直前の通過曲線情報R1が各候補曲線情報KW1n〜KE3sの全てに似ていない、即ち直前に通過した曲線部が全ての曲線部の中で何れも似ていないという結果が得られた場合の処理である。
上記した仮の場合では、ステップ180において、曲線特定部70が直前に通過した曲線部を特定できないため、鉄道車両1が次の曲線部を通過するまで走行位置検出システムKSの実行を待機する。これは、直前に通過した曲線部を誤って特定することを回避するためである。従って、ステップ180に進んだ段階では、次の曲線部を通過するまで待機して、鉄道車両1が新たに曲線部を通過した段階でステップ120に戻る。そして、新たに用意する直前の通過曲線情報R1に基づいて上述したステップ120〜160の処理が実行されるようになっている。
また、本実施形態と異なる場合として、仮に、各単曲線一致率IW2nのみが所定値Iaより大きい結果が得られた場合について説明する。この場合、ステップ170において、残った単曲線一致率Iが2つ以上ではないため、「No」と判断されて、ステップ190に進むことになる。これは、直前の通過曲線情報R1が候補曲線情報KW2nのみに非常に似ていて、即ち直前に通過した曲線部が順行(北側に向かって走行)する場合の曲線部W2にのみ非常に似ている場合の処理である。上記した仮の場合では、ステップ190において、曲線特定部70は、鉄道車両1自身が北側に向かって走行して、直前に曲線部W2を通過したことを特定することになる。
その後、ステップ191において、実測距離補正部80は、上述したように特定された曲線部W2に基づいて、実測距離Sを補正する。即ち、鉄道車両1は、直前に曲線部W2を北側に向かって走行したことが分かると共に、その曲線部W2の緩和曲線終了位置p4(図4参照)が分かるため、実測距離補正部80が現地点での実測距離Sを、曲線部W2の緩和曲線終了位置p4から測定された実測距離Sを用いて補正する。こうして、鉄道車両1は、直前に通過した曲線部を特定することで、自身の走行位置を検出できるようになっている。ステップ191の後、ステップ192に進み、走行位置検出システムKSが終了する。
<候補曲線情報群作成処理>
しかしながら、上述したように、本実施形態では、直前に通過した曲線部が曲線部W2又は曲線部E2のどちらなのかが分からなかったため、単曲線一致率演算処理後に、候補曲線情報群作成処理が実行される。先ず、図13に示すように、ステップ210において、通過曲線情報作成部40は、直前より1つ前に通過した曲線部の通過曲線情報R2(図3参照)を用意する。次に、ステップ220において、候補曲線情報群作成部50Aは、連続して通過する2つの曲線部に対応する2つの候補曲線情報Kの組み合わせを、各候補曲線情報群Gとして用意する。
ここで、図14は、候補曲線情報群作成部50Aが用意する各候補曲線情報群Gを模式的に示した図である。直前より前に通過した曲線部と、直前に通過した曲線部との組み合わせは、曲線部W1→W2、曲線部W2→W3、曲線部W3→W2、曲線部W2→W1、曲線部E1→E2、曲線部E2→E3、曲線部E3→E2、曲線部E2→E1が考えられる。更に、渡り線C1,C2(図3参照)を通過する場合を含めると、曲線部W1→E2、曲線部W1→E1(順行から逆行)、曲線部W2→E1、曲線部W2→E2(逆行から順行)、曲線部E1→W2、曲線部E1→W1(順行から逆行)、曲線部E2→W1、曲線部E2→W2(逆行から順行)が考えられる。
そして、図14に示すように、上述した曲線部の組み合わせに各候補曲線情報Kが対応していて、2つの候補曲線情報Kの集まりが候補曲線情報群Gになっている。例えば、候補曲線情報群G1(W1→W2)は、直前より前に通過した曲線部が曲線部W1で、直前に通過した曲線部が曲線部W2である場合を想定して、候補曲線情報KW1nと候補曲線情報KW2nを含んでいる。以下、同様に、候補曲線情報群G2(W2→W3)〜G16(E2→W2)が用意される。
また、本実施形態では、各候補曲線情報群G1(W1→W2)〜G16(E2→W2)には、それぞれデータ曲線間長Fが含まれるようになっている。例えば、候補曲線情報群G1(W1→W2)は、曲線部W1を順行して通過した後に、曲線部W2を順行して通過した場合を想定しているため、曲線部W1の緩和曲線終了位置p4から曲線部W2の緩和曲線開始位置p1までのデータ曲線間長F1を含んでいる。なお、このデータ曲線間長F1は、候補曲線情報KW2nに含まれるデータ曲線間長W2f−nと同じものである。
また、例えば、候補曲線情報群G9(W1→E2)は、曲線部W1を順行して通過した後に、渡り線C2を通って東線Eに移り、曲線部E2を順行して通過した場合を想定しているため、曲線部W1の緩和曲線終了位置p4から曲線部E2の緩和曲線開始位置p1までのデータ曲線間長F9を含んでいる。なお、このデータ曲線間長F9は、曲線部W1の緩和曲線終了位置p4から渡り線C2の入口位置までの長さと、渡り線C2の長さと、渡り線C2の出口位置から曲線部E2の緩和曲線開始位置p1までの長さに基づいて作成されたものである。
候補曲線情報群作成処理の説明に戻る。本実施形態では、ステップ230において、候補曲線情報群作成部50Aが、各候補曲線情報群G1(W1→W2)〜G16(E2→W2)を絞り込むようになっている。具体的には、単曲線一致率演算処理で、直前に通過した曲線部が順行する場合の曲線部W2又は曲線部E2のどちらかであることが分かっているため、候補曲線情報群50Aは、各候補曲線情報群G1(W1→W2)〜G16(E2→W2)の中で、直前に通過した曲線部に対応する候補曲線情報Kが候補曲線情報KW2n又は候補曲線情報KE2nである候補曲線情報群Gに絞り込む。この結果、図14に示す各候補曲線情報群G1(W1→W2)〜G16(E2→W2)は、図15に示す各候補曲線情報群G1(W1→W2),G5(E1→E2),G9(W1→E2),G12(W2→E2),G13(E1→W2),G16(E2→W2)に絞り込まれる。こうして、各候補曲線情報群Gが絞り込まれた後に、候補曲線情報群作成処理が終了し、総合一致率演算処理が実行される。
<総合一致率演算処理>
総合一致率演算処理では、先ず、図16に示すように、ステップ310において、一致率演算部60は、絞り込まれた候補曲線情報群G毎に、直前より前の曲線部の一致度合いを意味する単曲線一致率IIを演算する。この単曲線一致率IIは、直前より前の通過曲線情報R2と、対象になる候補曲線情報Kとが、0から1までの範囲でどのくらい一致しているかを数値で表わしたものである。単曲線一致率IIが1に近い程、直前より前の通過曲線情報R2と、対象になる候補曲線情報Kとが一致していることを意味する。本実施形態において、対象になる候補曲線情報Kは候補曲線情報KW1n,KE1n,KW2s,KE2sであるため(図15参照)、単曲線一致率IIを演算するために、上記した数1を用いて、直前の通過曲線情報R2の各実測値と各候補曲線情報のKW1n,KE1n,KW2s,KE2sの各データ値とによって、部分一致率Hが演算される。
例えば、直前より前の通過曲線情報R2と候補曲線情報KW1nとの単曲線一致率IIW1nを演算するためには、直前の通過曲線情報R2の各実測値(実測曲率半径R2az、実測入口緩和曲線長R2bz、実測円曲線長R2cz、実測出口緩和曲線長R2dz、実測曲線方向R2ez)と、候補曲線情報KW1nの各データ値(データ曲率半径W1a−n、データ入口緩和曲線長W1b−n、データ円曲線長W1c−n、データ出口緩和曲線長W1d−n、データ曲線方向W1e−n)とによって、各部分一致率Hが演算される。そして、これら各部分一致率Hが全て乗算されることで、単曲線一致率IIW1n(図17参照)が演算される。
以下、同様に、候補曲線情報のKE1n,KW2s,KE2sに対して、単曲線一致率IIE1n,IIW2s,IIE2sが演算される。ここで、図17は、本実施形態において演算された単曲線一致率IIW1n,IIE1n,IIW2s,IIE2sの値を示した図である。図17に示すように、例えば、単曲線一致率IIE1nは0.95であるため、直前より前の通過曲線情報R2と候補曲線情報KE1nとが非常に似ていて、直前より前に通過した曲線部が順行する場合の曲線部E1に非常に似ていることを意味している。また、例えば、単曲線一致率IIW2s,IIE2sは0であるため、直前より前の通過曲線情報R2と候補曲線情報KW2s,KE2sとが全く似ていないことを意味しているが、これは曲線方向が逆であるためである。
総合一致率演算処理の説明に戻る。本実施形態では、ステップ320において、一致率演算部60は、通過した2つの曲線部間の長さの一致度合いを意味する曲線間長一致率Lを演算するようになっている。この曲線間長一致率Lは、直前の通過曲線情報R1の実測曲線間長R1fz(図3参照)と、各候補曲線情報群Gのデータ曲線間長F1,F5,F9,F12,F13,F16とが、0から1までの範囲でどのくらい一致しているかを数値で表わしたものである。曲線間長一致率Lが1に近い程、2つの曲線部を通過したときに測定した実測距離S(実測曲線間長R1fz)と、候補として考える2つの曲線部間のデータ曲線間長Fとが一致していることを意味する。
例えば、候補曲線情報群G1の曲線間長一致率L1は、上記した数1を用いて、実測曲線間長R1fzを実測値に代入し且つデータ曲線間長F1をデータ値に代入することで、演算される。なお、上記した数1の部分一致率Hが、曲線間長一致率L1に代わる。以下、同様に、候補曲線情報群G5,G9,G12,G13,G16に対して、曲線間長一致率L5,L9,L12,L13,L16が演算される。ここで、図17には、本実施形態で演算された曲線間長一致率L1,L5,L9,L12,L13,L16の各値が示されている。例えば、曲線間長一致率L12は0.3であるため、実測曲線間長R1fzが候補として考える2つの曲線部の間のデータ曲線間長F12とほとんど一致していないことを意味している。また、例えば、曲線間長一致率L13は0.95であるため、実測曲線間長R1fzが候補として考える2つの曲線部の間のデータ曲線間長F13とほぼ一致していることを意味している。
こうして、単曲線一致率II及び曲線間長一致率Lを演算した後、ステップ330において、一致率演算部60は、各候補曲線情報群G1,G5,G9,G12,G13,G16毎に、総合一致率Jを演算する。総合一致率Jとは、直前の通過曲線情報R1と直前より前の通過曲線情報R2と実測曲線間長R1fzが、各候補曲線情報群Gに対して、0から1までの範囲でどのくらい一致しているかを数値で表わしたものである。総合一致率Jが1に近い程、複数の曲線部を通過したときに測定した各実測値の集まりが、候補曲線情報群Gに含まれる各データ値の集まりと一致していることを意味する。この総合一致率Jは、単曲線一致率IIと単曲線一致率Iと曲線間長一致率Lとが乗算されることによって、演算される。
例えば、図17に示すように、候補曲線情報群G1の総合一致率J1は、単曲線一致率IW1nと単曲線一致率IIW1nと曲線間長一致率L1とが乗算されることによって、演算される。以下、同様に、候補曲線情報群G5,G9,G12,G13,G16に対して、総合一致率J5,J9,J12,J13,J16が演算される。ここで、図17には、本実施形態で演算された総合一致率J1,J5,J9,J12,J13,J16の各値が示されている。本実施形態では、候補曲線情報群G13の総合一致率J13は0.86であり、他の総合一致率J1,J5,J9,J12,J13,J16よりも大きく且つ1に近い値である。こうして、総合一致率Jが演算された後、総合一致率演算処理が終了し、図9に示すステップ510に進む。
図9に示すように、ステップ510において、曲線特定部70が、各総合一致率J1,J5,J9,J12,J13,J16が、基準値Ja以上であるか否かを判断して、基準値Ja以上の総合一致率Jのみを残す。基準値Jaは、直前の通過曲線情報R1と直前より前の通過曲線情報R2と実測曲線間長R1fzとが、候補曲線情報群Gに対して一致していることを判断するための基準になる値であり、1に近い値に設定されている。本実施形態では、基準値Jaが0.85に設定されているが、適宜変更可能である。このため、ステップ510において、総合一致率J13のみが0.85以上であるため、曲線特定部70は、総合一致率J13のみを残す。
次に、ステップ520において、残った総合一致率J13が有るか否かを判断する。本実施形態では、総合一致率J13のみが残っているため、「Yes」と判断されて、ステップ530に進む。続いて、ステップ530において、曲線特定部70は、残った総合一致率Jが1つであるか否かを判断する。本実施形態では、総合一致率J13のみが残っているため、「Yes」と判断されて、ステップ540に進む。ステップ540において、曲線特定部70は、直前の通過曲線情報R1と直前より前の通過曲線情報R2と実測曲線間長R1fzとが、候補曲線情報群G13に一致していることを最終的に決定して、直前に通過した曲線部を特定する。こうして、鉄道車両1は自身が曲線部E1を順行して通過した後、直前に曲線部W2を順行して通過したことを特定することになる。
その後、ステップ550において、実測距離補正部80は、上述したように特定された曲線部W2に基づいて、実測距離Sを補正する。即ち、鉄道車両1は、直前に曲線部W2を北側に向かって走行したことが分かると共に、その曲線部W2の緩和曲線終了位置p4(図4参照)が分かるため、実測距離補正部80が現地点での実測距離Sを、曲線部W2の緩和曲線終了位置p4から測定された実測距離Sを用いて補正する。こうして、鉄道車両1は、直前に通過した曲線部を特定することで、自身の走行位置を検出することができる。ステップ550の後、ステップ560に進み、走行位置検出システムKSが終了する。なお、実測距離Sの補正は、曲線部を通過する毎に、上述した単曲線一致率演算処理(ステップ100)、候補曲線情報群作成処理(ステップ200)、総合一致率演算処理(ステップ300)が実行されることで行われる。つまり、実測距離補正部80が走行距離Sを補正するタイミングは、鉄道車両1が新たに曲線部を通過するときである。
走行位置が検出された後には、実測距離補正部80が現地点での走行位置を車体傾斜制御部90に送信し、データベース処理部30が次に通過する曲線部の曲線情報(カント、曲率半径、曲線方向、変曲点の位置等)を車体傾斜制御部90に送信する。これにより、車体傾斜制御部90は、送信された現地点での走行位置及び曲線情報に基づいて、次に通過する曲線部で車体を傾ける適切な地点を決定して、車体傾斜制御を適切に実行する。なお、実測距離Sは、実測距離補正部80から車体傾斜制御部90へ常時送られていて、車体傾斜制御部90は常時実行されている。
ここで、図9に示す走行位置検出システムKSのステップ570、及びステップ400のサブルーチンについて説明しておく。本実施形態と異なる場合として、仮に、各総合一致率J1,J5,J9,J12,J13,J16が全て基準値Jaより小さい結果が得られた場合、ステップ520において、残った総合一致率Jが無いため、「No」と判断されて、ステップ570に進むことになる。これは、直前に通過した曲線部及び直前より前に通過した曲線部が、候補の中で何れにも似ていないという結果が得られた場合の処理である。
上記した場合では、ステップ570において、曲線特定部70が直前に通過した曲線部を特定できないため、鉄道車両1が次の曲線部を通過するまで走行位置検出システムKSの実行を待機する。これは、直前に通過した曲線部を誤って特定することを回避するためである。従って、ステップ570に進んだ段階では、次の曲線部を通過するまで待機して、鉄道車両1が新たに曲線部を通過した段階でステップ100に戻る。そして、新たに用意する直前の通過曲線情報R1、直前より前の通過曲線情報R2、実測曲線間長R1fzに基づいて、走行位置検出システムKSの処理が実行されるようになっている。
また、本実施形態と異なる場合として、仮に、総合一致率J9及び総合一致率J13が基準値Jaより大きい結果が得られた場合(以下、「仮定の場合」と呼ぶ)、ステップ530において、残った総合一致率Jが2つであるため、「No」と判断されて、ステップ400のサブルーチンに進み、新総合一致率演算処理が実行されるようになっている(ステップ400)。これは、直前に通過した曲線部及び直前より前に通過した曲線部が、候補の中で似ているものが2つ以上存在するという結果が得られた場合の処理である。
このため、図18に示すように、新総合一致率演算処理が実行されると、先ず、ステップ410において、通過曲線情報作成部40が、それまでに用意していた通過曲線情報Rより1つ前の通過曲線情報Rを新たに用意する。このため、仮定の場合では、直前より前の前の通過曲線情報R3が新たに用意される。なお、以下の説明では、基本的に上述した処理(ステップ200及びステップ300)の繰り返しであるため、簡略して説明する。
次に、ステップ420において、候補曲線情報群作成部50Aは、基準値Jaより大きい総合一致率Jの原因になった各候補曲線情報群Gに対して、新たに用意した通過曲線情報Rに対応する候補曲線情報Kを含めて、新しい各候補曲線情報群Gnを作成する。このため、仮定の場合では、候補曲線情報群G9及び候補曲線情報群G13に対して、直前より前の前に通過したと考えられる曲線部の候補曲線情報Kを含めて、新しい各候補曲線情報群Gn9,Gn13,・・・を作成する。
続いて、ステップ430において、一致率演算部60は、新たに用意した通過曲線情報Rと、新しい各候補曲線情報群Gnの中で対応する候補曲線情報Kとの追加単曲線一致率Inを演算する。このため、仮定の場合では、直前より前の前の通過曲線情報R3の各実測値と、新しい各候補曲線情報群Gn9,Gn13,・・・の中で対応する候補曲線情報Kの各データ値とを、上記した数1に代入して、各部分一致率Hを算出して、追加単曲線一致率Inを演算する。
また、ステップ440において、一致率演算部60は、新たに通過曲線情報Rを用意したことよって考えられる実測曲線間長fnと新たに候補曲線情報Kを含めたことによって考えられるデータ曲線間長Fnとの追加曲線間長一致率Lnを演算する。このため、仮定の場合では、直前より前の前に通過した曲線部から直前より前に通過した曲線部までの実測距離S(実測曲線間長R2fz)と、新たに候補曲線情報Kを含めたことによって考えられるデータ曲線間長Fnとを、上記した数1に代入して、追加曲線間長一致率Lnを演算する。
最後に、ステップ450において、一致率演算部60は、新しい候補曲線情報群Gn毎に、それまでの総合一致率Jに対して、追加単曲線一致率In及び追加曲線間一致率Lnを乗算して、新たに総合一致率Jを演算する。こうして、新総合一致率演算処理では、より多くの実測値及びデータ値を用いて、通過した複数の曲線部の一致度合いとして新たに総合一致率Jを演算するようになっている。このため、仮定の場合のように、総合一致率J9及び総合一致率J13が基準値Jaより大きい結果が得られた場合であっても、新総合一致率演算処理を実行することで、正しい結果を示す総合一致率Jのみが大きな値になるように演算することができる。
そして、新総合一致率演算処理が終わると、図9に示すステップ510に戻り、新たに演算された総合一致率Jが基準値Ja以上であるか否かが判断されて、基準値Ja以上の総合一致率Jのみが残される。以下同様に、ステップ520及びステップ530に進み、残った総合一致率Jが1つであれば、ステップ540において、直前に通過した曲線部を特定することができる。一方、仮に未だ基準値Ja以上の総合一致率Jが2つ以上存在する場合には、ステップ400のサブルーチンに進み、同様に新総合一致率演算処理が実行されることになる。従って、基準値Ja以上の総合一致率Jが2つ以上存在しても、新総合一致率演算処理を繰り返し実行することで、基準値Ja以上の総合一致率Jを1つだけ残すことができ、直前に通過した曲線部を特定することができる。
本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、一つの曲線部を通過したときに得られる通過曲線情報R1に基づいて一つの曲線部の一致度合い(単曲線一致率I)を比較するのではなく、複数の曲線部を通過したときに得られる複数の通過曲線情報R1,R2に基づいて複数の曲線部の集まりの一致度合い(総合一致率J)を比較している。即ち、一つずつの曲線部の一致度合いを単曲線一致率I,IIとして数値化し、更に曲線部間の曲線間長の一致度合いを曲線間長一致率Lとして数値化して、各単曲線一致率I,IIと曲線間長一致率Lとを乗算して総合一致率Jを演算している。このため、実際に直前に通過した曲線部W2とそれ以外の曲線部E2との形状とが似ていても、正しい結果を示す総合一致率J13のみを大きな値で表わすことができる。従って、直前に通過した曲線部がどの曲線部なのかが的確に特定できて、鉄道車両は自身の走行位置を検出することができる。
また、本実施形態によれば、上述したように、総合一致率Jを演算するためのパラメータとして、一つずつの曲線部の一致度合いだけでなく、曲線間長の一致度合いも含めることで、より正確な総合一致率Jを演算している。更に、本実施形態では、通過曲線情報Rの実測値として、実測曲率半径azと、実測入口緩和曲線長bzと、実測円曲線長czと、実測出口緩和曲線長dzとを用いている。これは、上記した各実測値が、その他の測定値に比べて、走行中に真値に近い正確な値を測定できるためである。従って、各部分一致率Hを算出するための実測値として相応しく、より正確な単曲線一致率I,IIを演算することができる。
また、本実施形態によれば、通過曲線情報Rの実測値として、実測曲線方向ezが含まれ、候補曲線情報のデータ値として、データ曲線方向eが含まれている。こうして、曲線部を特徴づけるパラメータに曲線方向が含まれているため、曲線部を特定する際に、その曲線部の曲がっている方向が分かる。即ち、一つの曲線部であっても、例えば順行するときには右向きに曲がる曲線部であり、逆行するときには左向きに曲がる曲線部になるため、曲線部の曲がっている方向が分かることで、順行しているのか又は逆行しているのかが分かることになる。
また、本実施形態によれば、候補曲線情報群作成部50Aは、通過する2つの曲線部の全ての組み合わせに対応する各候補曲線情報群G1〜G16(図14参照)を、単曲線一致率Iを演算した結果に基づいて、各候補曲線情報群G1,G5,G9,G12,G13,G16に絞り込む。これにより、候補曲線情報群G毎に演算する総合一致率Jの数が少なくなる。この結果、総合一致率Jを演算するための計算量を少なくすることができて、計算負荷を軽減することができる。
ところで、実測値(通過曲線情報R)とデータ値(候補曲線情報K)とによって、曲線部の一致度合いを0から1までの値で数値化する方法として、本実施形態のように上記した数1を用いて部分一致率H(単曲線一致率I)を演算する方法の他、相関関数を用いて相関演算する方法がある。そこで、相関演算する方法と、上記した数1を用いて演算する方法とを比較して説明する。なお、相関演算する方法の説明では、実測曲率とデータ曲率との一致度合いを求める場合を例にする。
先ず、図19は、相関演算する方法を説明するための図であり、或る曲線部のデータ曲率が波形状に実線で示され、或る曲線部を通過したときに測定された実測曲率が波形状に破線で示されている。図19に示すように、相関演算する方法では、データ曲率である実線と実測曲率である破線との一致度合いを求めるために、実線と破線の差である斜線で示した面積が最小になる地点を探すことになる。言い換えると、斜線で示した面積が最小になる地点を探すために、データ曲率と実測曲率を逐次読み込んで相関関数を用いて相関演算している。
このため、相関演算する方法では、計算量が非常に多くて、計算負荷が大きい。また、相関演算を行うためのデータ曲率として、波形を表わす非常に多くのデータの集合体を、予め走行試験で準備しておく必要がある。そして、準備しておく波形状のデータ曲率及び走行中に測定される波形状の実測曲率は、鉄道車両や線路の状況に応じて変化し易いため、正確な結果を得るために準備しなければならないデータ曲率は、何度か走行試験で取得した情報を加工して、常に更新していく仕組みが必要になる。従って、事前にデータ曲率を準備するための手間が大きい。
一方、図20は、上記した数1を用いて演算する方法を説明するための図であり、或る曲線部のデータ曲率が波形状に実線で示され、或る曲線部を通過したときに測定された実測曲率が破線で示されている。上記した数1を用いて演算する方法は、概念的には以下のように説明することができる。先ず、図20に示すように、線路の曲線部は入口緩和曲線と円曲線と出口緩和曲線とで構成されることに基づいて、実測曲率である破線を、入口緩和曲線と円曲線と出口緩和曲線とで直線状に区分けされた二点鎖線で理想化している。破線を直線状の二点鎖線で理想化できると考えたのは、円曲線での曲率の変化幅Z1は、曲線部全体での曲率の変化幅Zに比べて十分小さく、実測曲率である破線と理想化された二点鎖線との間の誤差は無視できるほど小さいためである。
こうして、上記した数1を用いて演算する方法では、実測曲率を理想化して、実線と二点鎖線との一致度合いを求めるようになっている。このとき、単曲線一致率Iを演算するために、上記した数1によって、曲率半径、入口緩和曲線長、円曲線長、出口緩和曲線長、曲線方向のそれぞれ部分一致率Ha,Hb,Hc,Hd,Heを算出し、且つそれぞれの部分一致率Ha,Hb,Hc,Hd,Heを乗算するだけであるため、計算量が少なくて、計算負荷が小さい。
そして、実線と一点鎖線を比較する方法が、曲線部のパラメータの各部分一致率Hを乗算する方法であるため、データ曲率(データ曲率半径)等の一つのパラメータにおいて、鉄道車両や線路の状況に応じて変化し易い値であっても、乗算の集合である単曲線一致率Iにはほとんど影響はない。従って、相関演算する方法のように、正確な結果を得るために何度か走行試験で取得した情報を加工して、常にデータ曲率を更新する必要はない。即ち、車体傾斜制御するために各曲線部に対して予め記憶しているデータ曲線情報(図5参照)だけを利用して実施することができ、事前にデータを準備する手間をほとんど無くすことができる。
また、上述したように、単曲線一致率Iは任意に選択したパラメータの各部分一致率を乗算するだけで演算されるものであるため、曲線部を特徴づけるために相応しいパラメータを新たに追加したい場合には、追加したパラメータの部分一致率を算出して乗算するだけで、対応することができる。従って、上記した数1を用いて単曲線一致率Iを演算する本実施形態の方法は、柔軟性が高い方法である。
以上、本発明に係る鉄道車両の走行位置検出システムの実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態では、部分一致率Hを求めるために上記した数1を用いたが、上記した数1に換えて、変形実施形態として下記の数2を用いても良い。
本実施形態のように、上記した数1を用いて部分一致率Hを演算する場合には、各部分一致率Hを算出する際の分母が全てデータ値で統一されるため、各部分一致率Hを同じ基準で数値化することができる。一方、上記した数2の各部分一致率Hは、分母についてデータ値又は実測値のどちらかを用いて算出される。このため、上記した数1の場合には、分母を全てデータ値に統一することで、単曲線一致率Iをデータ値に対して実測値がどの程度類似しているかを正規化した数値で評価できる。一方、上記した数2の場合には、上記した数1を用いる場合のように、実測値がデータ値2倍より大きい値であるときに部分一致率Hを「0」に定義するという制約を無くすことができ、実測値の全ての値を対象にすることができる。
また、本実施形態では、通過曲線情報Rの実測値として実測曲率半径azを用い、候補曲線情報Kのデータ値としてデータ曲率aを用いたが、実測曲率半径azに換えて実測曲率を用い、データ曲率半径aに換えてデータ曲率を用いても良い。また、本実施形態では、通過曲線情報Rの各実測値、及び候補曲線情報Kの各データ値のパラメータとして、曲率半径、入口緩和曲線長、円曲線長、出口緩和曲線長を用いたが、パラメータは上記したものに限定されるものではない。即ち、本発明は、曲線部を特徴づける任意のパラメータについてデータ値(理想値)と実測値との一致度合いを照合することを特徴とするものであり、パラメータは主成分分析等によって任意に選択することができる。
また、本実施形態では、図9のステップ530及びステップ540に示すように、残った総合一致率Jが1つのみである場合に、直前に通過した曲線部を特定するように設定したが、直前に通過した曲線部を特定する方法は、適宜変更可能である。例えば、残った総合一致率Jが任意の指定数個である場合に、運転士が残った総合一致率Jの値を視覚的に認識することができ、その総合一致率Jの値に応じて直前に通過した曲線部を特定しても良い。
また、本実施形態では、分かり易く説明するために、図3に示した単線並列による双方向運用を例にしたが、本実施形態の走行位置検出システムKSは、あらゆる路線状況に対して適用することができる。従って、例えば、駅間が一本の線路でつながっている路線状況、又は駅間が三本以上の線路でつながっている路線状況に対して適用することができる。また、鉄道車両が線路に対して双方向に走行する路線状況だけでなく、線路に対して一方向にのみ走行する路線状況でも当然適用できる。この場合には、曲線部を特徴づけるパラメータに曲線方向を含めなくても良い。