<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明は、例示のために特定の詳細な内容が含まれている。しかし、当業者であれば、以下に説明する詳細な内容に様々な変更を加えた場合であっても、本発明の範囲を超えないことは理解できるであろう。従って、以下に説明する本発明の例示的な実施形態は、権利を請求された発明に対して、一般性を失わせることなく、また、何ら限定をすることもなく、述べられたものである。
図1は、本第1の実施形態による固体撮像装置における基板の接続構成を示した概観図である。本第1の実施形態の固体撮像装置1は、第1の基板10と、第2の基板20と、基板間接続部30とから構成される。固体撮像装置1は、図1(a)に示したように、第1の基板10と第2の基板20との2つのチップが積層され、第1の基板10と第2の基板20とが基板間接続部30で接続された構成である。
第1の基板10には、通常の撮影において可視光に応じた信号を蓄積する通常の画素(以下、「撮像信号取得用画素」という)が形成され、撮像信号取得用画素が蓄積した可視光に応じた信号を撮像信号として読み出す読み出し回路を備えている。また、第2の基板20には、被写体までの距離を表す情報を取得するために、赤外光に応じた信号を蓄積する特殊な画素(以下、「距離信号取得用画素」という)が形成され、距離信号取得用画素が蓄積した赤外光に応じた信号を距離信号として読み出す読み出し回路を備えている。
そして、第2の基板20に備えた読み出し回路によって読み出された距離信号は、基板間接続部30を介して第1の基板10に出力され、第1の基板10を経由して固体撮像装置1の外部に出力される。すなわち、固体撮像装置1では、固体撮像装置1から撮像信号を外部に出力するためのパッドと、固体撮像装置1から距離信号を外部に出力するためのパッドとを共有している。
第1の基板10は、形成された撮像信号取得用画素に、配線層の反対側から被写体光(可視光)が入射される裏面照射(BackSide Illumination:BSI)型のシリコン基板である。第1の基板10は、図1(b)に示したように、画素アレイ部11と、垂直読み出し回路12と、カラム信号処理回路13と、水平読み出し回路14と、出力アンプ15とから構成される。
画素アレイ部11は、複数の撮像信号取得用画素が2次元の行列状に配置されている。画素アレイ部11内のそれぞれの撮像信号取得用画素は、入射した可視光に応じた信号を蓄積し、垂直読み出し回路12から入力された制御信号に応じて、可視光に応じた画素信号をカラム信号処理回路13に出力する。なお、この撮像信号取得用画素に関する詳細な説明は、後述する。
垂直読み出し回路12は、画素アレイ部11内のそれぞれの撮像信号取得用画素を制御し、それぞれの撮像信号取得用画素が蓄積した可視光に応じた画素信号を順次読み出し、カラム信号処理回路13に順次出力させる。垂直読み出し回路12は、撮像信号取得用画素を制御するための制御信号を、画素アレイ部11に配置された撮像信号取得用画素の行毎に出力する。
カラム信号処理回路13は、画素アレイ部11の各列に配置され、画素アレイ部11の各列に配置された撮像信号取得用画素のそれぞれから出力された画素信号に対してノイズ抑圧など処理を行う、CDS(Correlated Double Sampling:相関二重サンプリング)処理などの処理回路である。カラム信号処理回路13は、水平読み出し回路14からの制御に応じて、画素信号に対して処理を行った出力信号を、出力アンプ15に出力する。
水平読み出し回路14は、各列に配置されたカラム信号処理回路13から出力される処理後の出力信号を順次読み出し、出力アンプ15に順次出力させる。水平読み出し回路14によって読み出されたカラム信号処理回路13の出力信号は、通常の撮影における撮像信号として、出力アンプ15を介して固体撮像装置1の外部に出力される。
なお、図1に示した固体撮像装置1では、垂直読み出し回路12と、カラム信号処理回路13と、水平読み出し回路14と、出力アンプ15とを、第1の基板10に備えた読み出し回路として構成している。
第2の基板20は、形成された距離信号取得用画素に、配線層の側から被写体光(赤外光)が入射される表面照射(FrontSide Illumination:FSI)型のシリコン基板である。第2の基板20は、図1(c)に示したように、画素アレイ部21と、垂直読み出し回路22と、カラム信号処理回路23と、水平読み出し回路24と、出力アンプ25とから構成される。
画素アレイ部21は、複数の距離信号取得用画素が2次元の行列状に配置されている。画素アレイ部21内のそれぞれの距離信号取得用画素は、入射した赤外光に応じた信号を蓄積し、垂直読み出し回路22から入力された制御信号に応じて、赤外光に応じた画素信号をカラム信号処理回路23に出力する。なお、この距離信号取得用画素に関する詳細な説明は、後述する。
垂直読み出し回路22は、画素アレイ部21内のそれぞれの距離信号取得用画素を制御し、それぞれの距離信号取得用画素が蓄積した赤外光に応じた画素信号を順次読み出し、カラム信号処理回路23に順次出力させる。垂直読み出し回路22は、距離信号取得用画素を制御するための制御信号を、画素アレイ部21に配置された距離信号取得用画素の行毎に出力する。
カラム信号処理回路23は、画素アレイ部21の各列に配置され、画素アレイ部21の各列に配置された距離信号取得用画素のそれぞれから出力された画素信号に対してノイズ抑圧など処理を行う、CDS処理などの処理回路である。カラム信号処理回路23は、水平読み出し回路24からの制御に応じて、画素信号に対して処理を行った出力信号を、出力アンプ25に出力する。
水平読み出し回路24は、各列に配置されたカラム信号処理回路23から出力される処理後の出力信号を順次読み出し、出力アンプ25に順次出力させる。水平読み出し回路24によって読み出されたカラム信号処理回路23の出力信号は、被写体までの距離の情報を表す距離信号として、出力アンプ25から基板間接続部30を介して第1の基板10に出力され、第1の基板10を経由して固体撮像装置1の外部に出力される。
なお、図1に示した固体撮像装置1では、垂直読み出し回路22と、カラム信号処理回路23と、水平読み出し回路24と、出力アンプ25とを、第2の基板20に備えた読み出し回路として構成している。
基板間接続部30は、第1の基板10と第2の基板20とを電気的に接続するための接続部である。基板間接続部30は、例えば、蒸着法、めっき法で作製されるバンプなどを用いる。なお、第1の基板10と第2の基板20との間に存在する空間には、接着剤などの絶縁部材を充填させてもよい。第1の基板10と第2の基板20とは、基板間接続部30を介して信号の送受信を行う。図1に示した本第1の実施形態の固体撮像装置1では、第1の基板10に備えた出力アンプ15が撮像信号を出力する出力信号線と、第2の基板20に備えた出力アンプ25が距離信号を出力する出力信号線とが、基板間接続部30によって接続されている構成を示している。
次に、本第1の実施形態の固体撮像装置1内の画素アレイ部11に備えた撮像信号取得用画素について説明する。図2は、本第1の実施形態の固体撮像装置1の画素アレイ部11内の撮像信号取得用画素の概略構成の一例を示した回路図である。図2には、固体撮像装置1内の画素アレイ部11に備えた複数の撮像信号取得用画素の内、1つの撮像信号取得用画素を示している。
図2に示した撮像信号取得用画素110は、可視光用光電変換部PDと、転送トランジスタM111と、電荷蓄積部FDと、リセットトランジスタM112と、増幅トランジスタM113と、選択トランジスタM114とから構成される。撮像信号取得用画素110は、入射した被写体光(可視光)を画素信号に変換し、垂直信号線130に出力する。
なお、電荷蓄積部FDは、増幅トランジスタM113のゲート端子に接続されたノードに付随する容量であり、図2に示した撮像信号取得用画素110の概略構成においては、キャパシタの記号で示している。なお、撮像信号取得用画素110の構成は、距離信号を取得しない一般的な従来の固体撮像装置における画素の構成と同様の構成である。
可視光用光電変換部PDは、入射した可視光を光電変換して信号電荷を発生させ、光電変換信号として蓄積する。転送トランジスタM111は、垂直読み出し回路12から入力された制御信号φTXに応じて、可視光用光電変換部PDに蓄積された光電変換信号を、増幅トランジスタM113のゲート端子に接続された電荷蓄積部FDに転送する。電荷蓄積部FDは、光電変換信号を保持(蓄積)する容量である。転送トランジスタM111によって転送された光電変換信号は、電荷蓄積部FDに蓄積される。
増幅トランジスタM113は、ゲート端子に接続された電荷蓄積部FDに蓄積された光電変換信号に応じた信号電圧を出力する。選択トランジスタM114は、垂直読み出し回路12から入力された制御信号φSELに応じて、増幅トランジスタM113が出力した信号電圧を、撮像信号取得用画素110が出力する画素信号として垂直信号線130に出力する。
リセットトランジスタM112は、垂直読み出し回路12から入力された制御信号φRSTに応じて、撮像信号取得用画素110内の信号を電源電圧VDDにリセットする。
次に、本第1の実施形態の固体撮像装置1内の画素アレイ部21に備えた距離信号取得用画素について説明する。図3は、本第1の実施形態の固体撮像装置1の画素アレイ部21内の距離信号取得用画素の概略構成の一例を示した回路図である。図3には、固体撮像装置1内の画素アレイ部21に備えた複数の距離信号取得用画素の内、1つの距離信号取得用画素を示している。
図3に示した距離信号取得用画素210は、赤外光用光電変換部PDIRと、光電変換部リセットトランジスタM215と、第1の転送トランジスタM211と、蓄積加算メモリ部MEMと、第2の転送トランジスタM216と、電荷蓄積部FDIRと、画素リセットトランジスタM212と、増幅トランジスタM213と、選択トランジスタM214とから構成される。距離信号取得用画素210は、入射した被写体光(赤外光)を画素信号に変換し、垂直信号線230に出力する。
なお、電荷蓄積部FDIRは、増幅トランジスタM213のゲート端子に接続されたノードに付随する容量であり、図3に示した距離信号取得用画素210の概略構成においては、キャパシタの記号で示している。また、蓄積加算メモリ部MEMは、第1の転送トランジスタM211のソース端子およびドレイン端子の一方の端子と、第2の転送トランジスタM216のソース端子およびドレイン端子の一方の端子とが接続されたノードに付随する容量であり、図3に示した距離信号取得用画素210の概略構成においては、キャパシタの記号で示している。なお、距離信号取得用画素210の構成は、距離信号を取得する従来の固体撮像装置における距離画像取得用の画素の構成と同様の構成である。
赤外光用光電変換部PDIRは、入射した赤外光を光電変換して信号電荷を発生させ、光電変換信号として蓄積する。第1の転送トランジスタM211は、垂直読み出し回路22から入力された制御信号φTX1に応じて、赤外光用光電変換部PDIRに蓄積された光電変換信号を、第2の転送トランジスタM216のソース端子およびドレイン端子の一方の端子との間に接続された蓄積加算メモリ部MEMに転送する。蓄積加算メモリ部MEMは、光電変換信号を保持(蓄積)する容量である。第1の転送トランジスタM211によって転送された光電変換信号は、蓄積加算メモリ部MEMに蓄積される。
第2の転送トランジスタM216は、垂直読み出し回路22から入力された制御信号φTX2に応じて、蓄積加算メモリ部MEMに保持(蓄積)された光電変換信号を、増幅トランジスタM213のゲート端子に接続された電荷蓄積部FDIRに転送する。電荷蓄積部FDIRは、光電変換信号を保持(蓄積)する容量である。第2の転送トランジスタM216によって転送された光電変換信号は、電荷蓄積部FDIRに蓄積される。
増幅トランジスタM213は、ゲート端子に接続された電荷蓄積部FDIRに蓄積された光電変換信号に応じた信号電圧を出力する。選択トランジスタM214は、垂直読み出し回路22から入力された制御信号φSELに応じて、増幅トランジスタM213が出力した信号電圧を、距離信号取得用画素210が出力する画素信号として垂直信号線230に出力する。
光電変換部リセットトランジスタM215は、垂直読み出し回路22から入力された制御信号φFTに応じて、赤外光用光電変換部PDIRを電源電圧VDDにリセットする。画素リセットトランジスタM212は、垂直読み出し回路22から入力された制御信号φRSTに応じて、距離信号取得用画素210内の信号を電源電圧VDDにリセットする。
次に、本第1の実施形態の固体撮像装置1に備えた画素の構造と配置について説明する。図4は、本第1の実施形態の固体撮像装置1における画素の構造と配置を説明する図である。図4(a)には、固体撮像装置1の第1の基板10内の画素アレイ部11および第2の基板20内の画素アレイ部21に形成された、撮像信号取得用画素110および距離信号取得用画素210の一部を側面から見た縦構造図を示している。また、図4(b)には、固体撮像装置1の第1の基板10内の画素アレイ部11および第2の基板20内の画素アレイ部21に形成された、撮像信号取得用画素110および距離信号取得用画素210の配置の一例を示している。
固体撮像装置1は、上述したように、第1の基板10と第2の基板20とが積層された構造である。より具体的には、図4(a)に示したように、第1の基板10の受光面と反対側に、第2の基板20が配置されている。また、固体撮像装置1は、第1の基板10の受光面側に、例えば、ベイヤー配列のオンチップカラーフィルタ(Onchip Color Filter:OCF)やマイクロレンズなどが形成されている。なお、図4には、オンチップカラーフィルタ(以下、単に「カラーフィルタ」という)のみを示している。
カラーフィルタは、それぞれの色の可視光を透過する。また、カラーフィルタは、可視光以外に、赤外光も透過する。より具体的には、赤色(R)のカラーフィルタは、赤色の可視光と赤外光とを透過し、緑色(G)のカラーフィルタは、緑色の可視光と赤外光とを透過し、青色(B)のカラーフィルタは、青色の可視光と赤外光とを透過する。
第1の基板10は、上述したように、裏面照射型のシリコン基板であり、その厚さは、例えば、3um〜6um程度の厚さである。なお、シリコン基板における光の吸収率は、光の波長によって変わり、シリコン基板の厚さが薄くなるほど、波長が短い光の吸収率が高く、波長が長い光の吸収率が低くなる。このため、上述した3um〜6um程度の厚さである第1の基板10の受光面側から入射した被写体光の一部は、第1の基板10を透過し、第2の基板20の受光面側に入射する。より具体的には、カラーフィルタを透過して第1の基板10に入射した被写体光の内、可視光は第1の基板10によって吸収され、赤外光は第1の基板10で吸収されることなく、第1の基板10を透過して第2の基板20に入射される。
そして、固体撮像装置1では、第1の基板10に形成された可視光用光電変換部PDで、入射した被写体光内の可視光を露光し、第2の基板20に形成された赤外光用光電変換部PDIRで、入射した被写体光内の赤外光を露光する。これにより、固体撮像装置1では、被写体光(可視光)を第1の基板10に形成された可視光用光電変換部PDで露光して取得する通常の撮像信号以外にも、固体撮像装置1を搭載した撮像装置が、波長が長い赤外光をパルス光として被写体に照射し、被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)を、第2の基板20に形成された赤外光用光電変換部PDIRで露光し、TOF方式の距離の計測方法による距離信号を取得することができる。
なお、第2の基板20は、上述したように、表面照射型のシリコン基板であり、シリコン基板の厚さが第1の基板10よりも厚くなっている。これにより、赤外光を露光して光電変換することができる深い構造の赤外光用光電変換部PDIRを、第2の基板20に形成することができる。
固体撮像装置1では、第1の基板10に形成された撮像信号取得用画素110と同様の位置の第2の基板20上に、すなわち、第1の基板10に形成された撮像信号取得用画素110のそれぞれに対応した位置に、距離信号取得用画素210のそれぞれが形成されている。より具体的には、図4(b)に示したように、赤色の可視光と赤外光とが透過する赤色(R)のカラーフィルタが形成された撮像信号取得用画素110である撮像信号取得用画素110Rに対応した位置に、撮像信号取得用画素110Rを透過した赤外光が入射する距離信号取得用画素210である距離信号取得用画素2101が配置されている。また、緑色の可視光と赤外光とが透過する緑色(G1)のカラーフィルタが形成された撮像信号取得用画素110である撮像信号取得用画素110G1に対応した位置に、撮像信号取得用画素110G1を透過した赤外光が入射する距離信号取得用画素210である距離信号取得用画素2102が配置されている。また、緑色の可視光と赤外光とが透過する緑色(G2)のカラーフィルタが形成された撮像信号取得用画素110である撮像信号取得用画素110G2に対応した位置に、撮像信号取得用画素110G2を透過した赤外光が入射する距離信号取得用画素210である距離信号取得用画素2103が配置されている。また、青色の可視光と赤外光とが透過する青色(B)のカラーフィルタが形成された撮像信号取得用画素110である撮像信号取得用画素110Bに対応した位置に、撮像信号取得用画素110Bを透過した赤外光が入射する距離信号取得用画素210である距離信号取得用画素2104が配置されている。
固体撮像装置1では、図4(b)に示したようなそれぞれの画素の配置によって、第1の基板10に形成された撮像信号取得用画素110による通常の撮像信号と、撮像信号取得用画素110のそれぞれの位置における撮像信号のそれぞれに対応した距離信号とを取得することができる。
次に、本第1の実施形態の固体撮像装置1において距離信号を取得する動作シーケンスについて説明する。なお、固体撮像装置1の通常の撮影における撮像信号の取得は、第1の基板10内の画素アレイ部11に備えた撮像信号取得用画素110を、第1の基板10に備えた読み出し回路(垂直読み出し回路12と、カラム信号処理回路13と、水平読み出し回路14と、出力アンプ15)で制御することによって行うことができる。すなわち、固体撮像装置1の通常の撮影における撮像信号の取得は、第1の基板10内の構成要素のみで行うことができる。このとき、固体撮像装置1において撮像信号を取得する動作シーケンスは、距離信号を取得しない一般的な従来の固体撮像装置において撮像信号を取得する動作シーケンスと同様である。従って、固体撮像装置1の通常の撮影における撮像信号取得の動作シーケンスに関する、詳細な説明は省略する。
図5は、本第1の実施形態の固体撮像装置1において距離信号を取得する動作シーケンスのタイミングを示したタイミングチャートである。図5に示した距離信号取得の動作シーケンスでは、固体撮像装置1を搭載した撮像装置が、波長が長い赤外光を、例えば、LEDによって短い時間で一定の周期のパルス光として被写体に照射する。そして、固体撮像装置1は、パルス光が照射されているタイミングに同期して、被写体に反射して戻ってきたパルス光を、距離信号取得用画素210で露光することによって、被写体までの距離に応じた大きさの光電変換信号を蓄積する。このとき、距離信号取得用画素210が露光する、被写体に反射して戻ってきたパルス光は、上述したように、第1の基板10を透過して第2の基板20に入射された赤外光である。また、距離信号取得の動作シーケンスでは、距離信号取得用画素210によるパルス光の露光を複数回行う、すなわち、光電変換信号の蓄積を複数回行うことによって、光電変換信号を積算する。そして、距離信号取得の動作シーケンスでは、積算した光電変換信号に応じた距離信号を、画素アレイ部21の行毎に順次出力する。
図5に示したタイミングチャートは、全ての距離信号取得用画素210で同時に複数回露光し、画素アレイ部21の各行の距離信号取得用画素210が、積算した光電変換信号に応じた信号電圧を、赤外光に応じた画素信号として垂直信号線230に順次出力する場合の画素アレイ部21の動作において、垂直読み出し回路22によって制御される1つの行の距離信号取得用画素210のタイミングを示している。また、図5には、固体撮像装置1を搭載した撮像装置が、一定の短い周期(図5では、10MHz=50nsの周期)で被写体への照射を繰り返すパルス光(赤外光)のタイミングも併せて示している。
なお、図5に示したパルス光のタイミングは、“H”レベルのときに赤外光が照射(例えば、LEDが点灯)され、“L”レベルのときに赤外光の照射が停止(例えば、LEDが消灯)されるものとして説明する。また、画素アレイ部21内の全ての距離信号取得用画素210はリセットされている状態から、図5に示した距離信号取得の動作シーケンスを開始するものとして説明する。
まず、時刻t1において、固体撮像装置1を搭載した撮像装置がパルス光の照射を開始すると同時に、垂直読み出し回路22は、距離信号取得用画素210による被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)の露光と赤外光用光電変換部PDIRが発生した光電変換信号の転送とを開始する。より具体的には、時刻t1において、垂直読み出し回路22は、制御信号φFTを“L”レベルにして、光電変換部リセットトランジスタM215をオフ状態にする。これにより、画素アレイ部21内の全ての距離信号取得用画素210に備えた赤外光用光電変換部PDIRのリセットが解除され、画素アレイ部21内の全ての距離信号取得用画素210が同時に露光を開始する。そして、距離信号取得用画素210に備えた赤外光用光電変換部PDIRは、被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)を光電変換した信号電荷を発生させ、光電変換信号として蓄積する。
ここで、赤外光用光電変換部PDIRが蓄積する光電変換信号は、被写体までの距離(絶対距離)に応じた大きさの信号である。例えば、被写体が近くにある場合には、照射したパルス光(赤外光)が短い時間で被写体に反射して戻ってくるため、距離信号取得用画素210は、赤外光をより長い時間露光することになる。反対に、被写体が遠くにある場合には、照射したパルス光(赤外光)が被写体に反射して戻ってくるまでにより長い時間を要するため、距離信号取得用画素210が赤外光を露光する時間が短くなる。すなわち、照射したパルス光(赤外光)が被写体に反射して戻ってくる時間は、被写体までの絶対的な距離に比例した時間である。このため、赤外光用光電変換部PDIRが露光期間中に被写体に反射して戻ってきた赤外光を露光して蓄積した光電変換信号の大きさも、被写体までの絶対的な距離に応じた大きさの信号、すなわち、被写体までの距離が近いほど大きな信号となり、被写体までの距離が遠くなるほど小さな信号となる。
このように、TOF方式による距離の計測方法では、パルス光(赤外光)を照射した瞬間から赤外光の露光を開始し、赤外光が被写体に反射して戻ってきた分の赤外光を露光する。そして、赤外光用光電変換部PDIRが蓄積した光電変換信号の大きさを、パルス光(赤外光)が進む速度に基づいて処理する。これにより、TOF方式による距離の計測方法では、被写体までの絶対的な距離を計測することができる。
また、時刻t1において、垂直読み出し回路22は、制御信号φTX1を“H”レベルにして、第1の転送トランジスタM211をオン状態にする。これにより、それぞれの赤外光用光電変換部PDIRが発生した蓄積した赤外光に応じた光電変換信号が、蓄積加算メモリ部MEMに転送される。
その後、時刻t2において、固体撮像装置1を搭載した撮像装置がパルス光の照射を停止すると同時に、垂直読み出し回路22は、赤外光用光電変換部PDIRのリセットと赤外光用光電変換部PDIRが発生した光電変換信号の転送とを停止する。より具体的には、時刻t2において、垂直読み出し回路22は、制御信号φTX1を“L”レベルにして、第1の転送トランジスタM211をオフ状態にする。これにより、それぞれの赤外光用光電変換部PDIRが発生した蓄積した赤外光に応じた光電変換信号の蓄積加算メモリ部MEMへの転送が終了し、今までに転送された光電変換信号が、蓄積加算メモリ部MEMに保持(蓄積)される。
また、時刻t2において、垂直読み出し回路22は、制御信号φFTを“H”レベルにして、光電変換部リセットトランジスタM215をオン状態にする。これにより、画素アレイ部21内の全ての距離信号取得用画素210に備えた赤外光用光電変換部PDIRが電源電圧VDDにリセットされ、画素アレイ部21内の全ての距離信号取得用画素210が同時に露光を終了する。
その後、時刻t3において、固体撮像装置1を搭載した撮像装置がパルス光の照射を再び開始すると同時に、垂直読み出し回路22は、時刻t1のときと同様に距離信号取得用画素210を制御し、距離信号取得用画素210による被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)の露光と赤外光用光電変換部PDIRが発生した光電変換信号の転送とを再び開始する。
その後、時刻t4において、固体撮像装置1を搭載した撮像装置がパルス光の照射を再び停止すると同時に、垂直読み出し回路22は、時刻t2のときと同様に距離信号取得用画素210を制御し、赤外光用光電変換部PDIRのリセットと赤外光用光電変換部PDIRが発生した光電変換信号の転送とを再び停止する。
その後、同様に、垂直読み出し回路22は、固体撮像装置1を搭載した撮像装置が、距離信号に基づいた距離画像を得るために必要な光電変換信号の蓄積期間の間、固体撮像装置1を搭載した撮像装置がパルス光を照射するタイミングおよびパルス光の照射を停止するタイミングに同期した距離信号取得用画素210の制御を繰り返す。これにより、短い露光期間で蓄積した光電変換信号を、蓄積加算メモリ部MEM内に積算して保持(蓄積)することができ、被写体までの距離(絶対距離)の計測における分解能を高めることができる。
続いて、光電変換信号の蓄積期間が経過した時刻t5から、垂直読み出し回路22は、画素アレイ部21内のそれぞれの距離信号取得用画素210からの画素信号の読み出しを順次行う。
より具体的には、画素信号の読み出し期間では、時刻t6において、垂直読み出し回路22は、画素アレイ部21に備えた全ての距離信号取得用画素210の内、画素信号の読み出しを行う行の距離信号取得用画素210に対応した制御信号φSELを“H”レベルにして、選択トランジスタM214をオン状態にする。これにより、画素信号の読み出しを行う行の距離信号取得用画素210が垂直信号線230に画素信号を出力する状態となる。
その後、時刻t7において、垂直読み出し回路22は、制御信号φRSTを“H”レベルにして、画素リセットトランジスタM212をオン状態にする。これにより、画素信号の読み出しを行う行の距離信号取得用画素210内の電荷蓄積部FDIRが電源電圧VDDにリセットされ、増幅トランジスタM213から距離信号取得用画素210のリセットレベルの信号電圧が、選択トランジスタM214を介して、リセット時の画素信号(以下、「リセット画素信号」という)として垂直信号線230に出力される。そして、カラム信号処理回路23は、画素アレイ部21から出力されたリセット画素信号の信号電圧を一旦保持する。その後、時刻t8において、垂直読み出し回路22は、制御信号φRSTを“L”レベルにして、画素リセットトランジスタM212をオフ状態にし、電荷蓄積部FDIRのリセットを解除する。
その後、時刻t9において、垂直読み出し回路22は、制御信号φTX2を“H”レベルにして、第2の転送トランジスタM216をオン状態にする。これにより、画素信号の読み出しを行う行の距離信号取得用画素210内の蓄積加算メモリ部MEMに保持(蓄積)された光電変換信号が、増幅トランジスタM213のゲート端子に接続された電荷蓄積部FDIRに転送され蓄積される。これにより、増幅トランジスタM213から、電荷蓄積部FDIRに蓄積された光電変換信号に応じた信号電圧が、選択トランジスタM214を介して、被写体までの距離に応じた画素信号(以下、「距離画素信号」という)として垂直信号線230に出力される。そして、カラム信号処理回路23は、一旦保持しているリセット画素信号の信号電圧と、画素アレイ部21から出力された距離画素信号の信号電圧との差分、すなわち、ノイズ抑圧された距離画像信号に応じた出力信号を、水平読み出し回路24からの制御に応じて出力アンプ25に出力する。
その後、時刻t10において、垂直読み出し回路22は、制御信号φTX2を“L”レベルにして、第2の転送トランジスタM216をオフ状態にし、蓄積加算メモリ部MEMに保持(蓄積)された光電変換信号の電荷蓄積部FDIRへの転送を停止する。
その後、時刻t11において、垂直読み出し回路22は、制御信号φSELを“L”レベルにして選択トランジスタM214をオフ状態にし、画素信号の読み出しを行う行の距離信号取得用画素210からの画素信号の読み出しを終了する。ここまでの制御が、画素信号の読み出しを行う1つの行の距離信号取得用画素210からの画素信号の読み出し制御である。
以降、垂直読み出し回路22は、画素信号の読み出しを行う行の距離信号取得用画素210に対応した制御信号を1行ずつ順次制御して、画素アレイ部21内の全ての距離信号取得用画素210からの画素信号の読み出しを順次行う。
このような距離信号取得の動作シーケンスのタイミングによって、本第1の実施形態の固体撮像装置1では、画素アレイ部21に備えた全ての距離信号取得用画素210が出力する画素信号に対してノイズ抑圧した出力信号を距離信号として、出力アンプ25から基板間接続部30を介して第1の基板10に出力し、第1の基板10を経由して固体撮像装置1の外部に出力する。
上記に述べたように、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、第1の基板10内に通常の撮影における撮像信号を取得する撮像信号取得用画素110を形成し、第2の基板20内に被写体までの距離を表す距離信号を取得する距離信号取得用画素210を形成する。これにより、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、従来の固体撮像装置のように、異なる構成の画素を同一の基板内に形成する必要がなくなり、それぞれの画素に適した製造プロセスで、第1の基板10および第2の基板20を製造することができる。また、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、従来の固体撮像装置のように、同一平面上に撮像信号取得用画素110と距離信号取得用画素210とを形成する必要がないため、1つの固体撮像装置1で距離信号を取得する場合においても、通常の撮影における撮像信号の解像度が低下することなく、好適な撮像信号を得ることができる。
また、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、第1の基板10をシリコン基板の厚さが薄い裏面照射型とする。これにより、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、距離信号を取得するために露光する被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)が第1の基板10で吸収されることなく、第1の基板10を透過して第2の基板20に入射される。すなわち、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、撮像信号を取得するために不要な赤外光は第1の基板10を透過して第2の基板20に入射され、距離信号を取得するために不要な可視光は第1の基板10によって吸収されて第2の基板20に入射されない。つまり、パルス光(赤外光)は第1の基板10における撮像信号の取得に影響を及ぼさず、被写体光(可視光)は第2の基板20における距離信号の取得に影響を及ぼさない。これにより、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、好適な撮像信号を得ることができると共に、良好な距離信号を得ることができる。
このことにより、本第1の実施形態における固体撮像装置1を搭載した撮像装置では、好適な撮像信号に基づいた良好な画質の撮像画像を得ることができると共に、良好な距離信号に基づいた好適な距離画像を得ることができる。
なお、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、上述した距離信号取得の動作シーケンスからもわかるように、距離信号を固体撮像装置1の外部に出力する際に、基板間接続部30で接続された第1の基板10を経由して出力する以外は、固体撮像装置1における距離信号の取得を、第2の基板20内の構成要素のみで行うことができる。すなわち、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、第2の基板20内の画素アレイ部21に備えた距離信号取得用画素210を、第2の基板20に備えた読み出し回路(垂直読み出し回路22と、カラム信号処理回路23と、水平読み出し回路24と、出力アンプ25)で制御することによって、距離信号の取得を行うことができる。これにより、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、通常の撮影における撮像信号の取得の制御と距離信号の取得の制御とを同時に行うことも、選択的に行う、すなわち、個別に選択して行うこともできる。
なお、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、全ての距離信号取得用画素210で同時に赤外光を複数回露光して、光電変換信号を蓄積加算メモリ部MEMに同時に転送し、それぞれの距離信号取得用画素210内の蓄積加算メモリ部MEMに保持(蓄積)された光電変換信号を、画素アレイ部21の行毎に順次、電荷蓄積部FDIRに転送して出力する場合について説明した。しかし、距離信号取得用画素210内のそれぞれの構成要素の動作を制御する動作シーケンスは、本第1の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、それぞれの距離信号取得用画素210内の蓄積加算メモリ部MEMに保持(蓄積)された光電変換信号を、電荷蓄積部FDIRに同時に転送し、その後、増幅トランジスタM213から出力される電荷蓄積部FDIRに蓄積された光電変換信号に応じた信号電圧を、画素アレイ部21の行毎に順次出力するように制御する動作シーケンスにすることもできる。
なお、本第1の実施形態における固体撮像装置1では、図4に示したように、第1の基板10に形成された撮像信号取得用画素110のそれぞれに対応した位置の第2の基板20上に、距離信号取得用画素210のそれぞれを形成した場合、すなわち、通常の撮像信号を取得したときの撮像信号取得用画素110のそれぞれの位置に対応した距離信号を取得する構成である場合について説明した。しかし、第1の基板10内に形成する撮像信号取得用画素110の配置と、第2の基板20内に形成する距離信号取得用画素210の配置との関係は、本第1の実施形態の関係に限定されるものではない。例えば、距離信号取得用画素210によって取得する距離信号の解像度は、撮像信号取得用画素110によって取得する撮像信号の解像度よりも低くてもよい場合もある。すなわち、距離信号取得用画素210の画素数を、撮像信号取得用画素110の画素数よりも少なくてもよい場合もある。この場合には、第2の基板20内に形成する距離信号取得用画素210の画素数を、必要な距離信号の解像度に応じて変更し、第1の基板10内に形成する撮像信号取得用画素110の配置と、第2の基板20内に形成する距離信号取得用画素210の配置との関係を変更することができる。つまり、第1の基板10内に形成された予め定めた数の撮像信号取得用画素110に対して1つの距離信号取得用画素210を、第2の基板20内に形成することができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態の固体撮像装置について説明する。本第2の実施形態の固体撮像装置と、第1の実施形態の固体撮像装置1との異なる点は、本第2の実施形態の固体撮像装置に備える第2の基板内に形成する距離信号取得用画素の画素数を、第1の実施形態の固体撮像装置1よりも少なくしている点である。そして、本第2の実施形態の固体撮像装置におけるその他の構成要素は、第1の実施形態の固体撮像装置1と同様である。従って、本第2の実施形態の固体撮像装置の構成要素において、第1の実施形態の固体撮像装置1と異なる点のみを説明し、第1の実施形態の固体撮像装置1と同様の構成要素には、同一の符号を付加して詳細な説明は省略する。より具体的には、本第2の実施形態の固体撮像装置も固体撮像装置1とし、本第2の実施形態の固体撮像装置1に備えた画素の構造と配置についてのみを説明する。
図6は、本第2の実施形態による固体撮像装置1における画素の構造と配置を説明する図である。図6(a)には、本第2の実施形態の固体撮像装置1の第1の基板10内の画素アレイ部11および第2の基板20内の画素アレイ部21に形成された、撮像信号取得用画素110および距離信号取得用画素210の一部を側面から見た縦構造図を示している。また、図6(b)には、本第2の実施形態の固体撮像装置1の第1の基板10内の画素アレイ部11および第2の基板20内の画素アレイ部21に形成された、撮像信号取得用画素110および距離信号取得用画素210の配置の一例を示している。
本第2の実施形態の固体撮像装置1も、第1の実施形態の固体撮像装置1と同様に、第1の基板10と第2の基板20とが積層された構造である。そして、図6(a)に示したように、第2の基板20は第1の基板10の受光面と反対側に配置され、第1の基板10の受光面側には、カラーフィルタやマイクロレンズなどが形成されている。なお、図6においても、カラーフィルタのみを示している。
第1の基板10は、第1の実施形態の固体撮像装置1の第1の基板10と同様に、例えば、3um〜6um程度の厚さの裏面照射型のシリコン基板であり、カラーフィルタを透過して入射した被写体光の内の可視光を吸収し、赤外光を透過して第2の基板20に入射させる。これにより、本第2の実施形態の固体撮像装置1でも、第1の実施形態の固体撮像装置1と同様に、被写体光(可視光)を第1の基板10に形成された可視光用光電変換部PDで露光して通常の撮像信号を取得し、本第2の実施形態の固体撮像装置1を搭載した撮像装置が照射して被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)を第2の基板20に形成された赤外光用光電変換部PDIRで露光することによって、TOF方式の距離の計測方法による距離信号を取得することができる。
なお、本第2の実施形態の固体撮像装置1でも、第1の実施形態の固体撮像装置1と同様に、第2の基板20は、厚さが第1の基板10よりも厚い表面照射型のシリコン基板であり、赤外光を露光して光電変換することができる深い構造の赤外光用光電変換部PDIRを形成している。
ただし、本第2の実施形態の固体撮像装置1では、上述したように、第2の基板20内に形成する距離信号取得用画素210の画素数を、第1の実施形態の固体撮像装置1の第2の基板20内に形成した距離信号取得用画素210の画素数よりも少なくしている。より具体的には、本第2の実施形態の固体撮像装置1では、第1の基板10において縦と横に隣接して形成された2画素ずつの合計4つの撮像信号取得用画素110を1つの組とし、この1つの組に対して1つの距離信号取得用画素210を形成することによって、第2の基板20内に形成する距離信号取得用画素210の画素数を、第1の基板10内に形成する撮像信号取得用画素110の画素数の1/4にしている。
より具体的には、図6(b)に示したように、撮像信号取得用画素110Rと、撮像信号取得用画素110G1と、撮像信号取得用画素110G2と、撮像信号取得用画素110Bとの1つの組に対応した位置に、それぞれの撮像信号取得用画素110を透過した赤外光が入射する1つの距離信号取得用画素210である距離信号取得用画素2105が配置されている。
本第2の実施形態の固体撮像装置1では、図6(b)に示したようなそれぞれの画素の配置によって、第1の基板10に形成された撮像信号取得用画素110による通常の撮像信号と、距離信号取得用画素210の位置における1つの組の撮像信号に対応した距離信号とを取得することができる。また、複数の撮像信号取得用画素110の組に対して1つの距離信号取得用画素210を形成することによって、距離信号取得用画素210の特に赤外光用光電変換部PDIRの大きさ(面積)を大きくすることができる。
図6(b)に示したように、1つの距離信号取得用画素210を、複数の撮像信号取得用画素110からなる1つの組に対応させることによって、距離信号取得用画素210によって取得する距離信号の解像度は、撮像信号取得用画素110によって取得する撮像信号の解像度よりも低くなる。しかし、それぞれの距離信号取得用画素210は、上述したように、赤外光用光電変換部PDIRの大きさ(面積)を、複数の撮像信号取得用画素110からなる1つの組の大きさまでの範囲で大きくすることができるため、被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)をより多く露光することができる。すなわち、本第2の実施形態の固体撮像装置1では、パルス光(赤外光)に対する距離信号取得用画素210の感度を高くすることができる。これにより、本第2の実施形態の固体撮像装置1では、TOF方式の距離の計測方法における被写体までの絶対的な距離の計測を、より高精度に行える距離信号を出力することができる。
なお、本第2の実施形態の固体撮像装置1において距離信号を取得する動作シーケンスは、距離信号取得用画素210の画素数が異なるのみで、図5に示した本第1の実施形態の固体撮像装置1における距離信号取得の動作シーケンスと同様であるため、詳細な説明は省略する。
上記に述べたように、本第2の実施形態における固体撮像装置1でも、第1の実施形態の固体撮像装置1と同様に、第1の基板10内に通常の撮影における撮像信号を取得する撮像信号取得用画素110を形成し、第2の基板20内に被写体までの距離を表す距離信号を取得する距離信号取得用画素210を形成する。これにより、本第2の実施形態における固体撮像装置1でも、第1の実施形態の固体撮像装置1と同様の効果を得ることができる。
また、本第2の実施形態における固体撮像装置1では、複数の撮像信号取得用画素110からなる1つの組に対して1つの距離信号取得用画素210を第2の基板20内に形成する。これにより、本第2の実施形態における固体撮像装置1では、それぞれの距離信号取得用画素210の大きさを大きくし、被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)に対する感度を高くした高精度の距離信号を出力することができる。このことにより、本第2の実施形態における固体撮像装置1を搭載した撮像装置では、高精度の距離信号に基づいて、TOF方式の距離の計測方法における被写体までの絶対的な距離の計測をより高精度にした距離画像を得ることができる。
なお、本第2の実施形態における固体撮像装置1では、4つの撮像信号取得用画素110を1つの組とし、この1つの組に対して1つの距離信号取得用画素210を形成する場合について説明したが、1つの距離信号取得用画素210が対応する撮像信号取得用画素110の数は、本第2の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、第1の基板10において縦と横に隣接して形成された4画素ずつの合計16個の撮像信号取得用画素110を1つの組とし、この1つの組に対して1つの距離信号取得用画素210を形成する構成にすることもできる。このように、1つの距離信号取得用画素210が対応する撮像信号取得用画素110の数を多くすることによって、距離信号取得用画素210によって取得する距離信号の解像度は低くなるが、その分、赤外光用光電変換部PDIRの大きさ(面積)を大きくすることができる。赤外光用光電変換部PDIRの大きさ(面積)を大きくすることができるということは、距離信号取得の動作シーケンスでは、赤外光用光電変換部PDIRの露光期間が短い(図5参照)ため、パルス光(赤外光)に対する距離信号取得用画素210の高感度化には優位である。
なお、第1の実施形態および本第2の実施形態における固体撮像装置1では、第1の基板10と第2の基板20とのそれぞれの基板に、それぞれの画素から信号を読み出す読み出し回路を備えている場合について説明した。より具体的には、撮像信号取得用画素110から撮像信号を読み出す読み出し回路として、垂直読み出し回路12と、カラム信号処理回路13と、水平読み出し回路14と、出力アンプ15とを第1の基板10に備え、距離信号取得用画素210から距離信号を読み出す読み出し回路として、垂直読み出し回路22と、カラム信号処理回路23と、水平読み出し回路24と、出力アンプ25とを第2の基板20に備えている場合について説明した。しかし、第1の基板10と第2の基板20とのそれぞれの基板に備える読み出し回路の構成は、第1の実施形態および本第2の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、第1の基板10と第2の基板20とに備える読み出し回路の一部や全部を共有し、第1の基板10と第2の基板20とで共有された読み出し回路が、第1の基板10の画素アレイ部11内に備えた撮像信号取得用画素110が蓄積した可視光に応じた撮像信号の読み出しと、第2の基板20の画素アレイ部21内に備えた距離信号取得用画素210が蓄積した赤外光に応じた距離信号の読み出しとを行う構成にすることもできる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態の固体撮像装置について説明する。本第3の実施形態の固体撮像装置と、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1との異なる点は、本第3の実施形態の固体撮像装置では、撮像信号取得用画素110が蓄積した可視光に応じた撮像信号を読み出す読み出し回路と、距離信号取得用画素210が蓄積した赤外光に応じた距離信号を読み出す読み出し回路との一部を共有している点である。なお、撮像信号取得用画素110と距離信号取得用画素210とで読み出し回路を共有している場合であっても、それぞれの画素を読み出す機能は、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と同様である。従って、本第3の実施形態の固体撮像装置の構成要素において、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と異なる点のみを説明し、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と同様の構成要素には、同一の符号を付加して詳細な説明は省略する。より具体的には、本第3の実施形態の固体撮像装置におけるそれぞれの基板の構成と接続構成とについてのみを説明する。
図7は、本第3の実施形態による固体撮像装置における基板の接続構成を示した概観図である。図7に示した本第3の実施形態の固体撮像装置2も、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と同様に、第1の基板40と、第2の基板50と、基板間接続部30とから構成される。そして、固体撮像装置2も、図7(a)に示したように、第1の基板40と第2の基板50との2つのチップが積層され、第1の基板40と第2の基板50とが基板間接続部30で接続された構成である。
第1の基板40には撮像信号取得用画素110が、第2の基板50には距離信号取得用画素210がそれぞれ形成され、それぞれの画素から信号を読み出す読み出し回路を、第1の基板40と第2の基板50とに分割して備えている。そして、読み出し回路によって読み出された距離信号は、基板間接続部30を介して第1の基板40に出力され、第1の基板40を経由して固体撮像装置2の外部に出力される。すなわち、固体撮像装置2でも、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と同様に、固体撮像装置2から撮像信号を外部に出力するためのパッドと、固体撮像装置2から距離信号を外部に出力するためのパッドとを共有している。
第1の基板40は、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1の第1の基板10と同様に、形成された撮像信号取得用画素に、配線層の反対側から被写体光(可視光)が入射される裏面照射型のシリコン基板である。第1の基板40は、図7(b)に示したように、画素アレイ部11と、垂直読み出し回路12と、カラム信号処理回路201と、水平読み出し回路14と、出力アンプ15とから構成される。
第2の基板50は、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1の第2の基板20と同様に、形成された距離信号取得用画素に、配線層の側から被写体光(赤外光)が入射される表面照射型のシリコン基板である。第2の基板50は、図7(c)に示したように、画素アレイ部21と、垂直読み出し回路22と、カラム信号処理回路202と、水平読み出し回路24と、出力アンプ25とから構成される。
固体撮像装置2は、それぞれの画素から信号を読み出す読み出し回路の内、カラム信号処理回路を共有している構成である。すなわち、固体撮像装置2では、垂直読み出し回路12と、カラム信号処理回路200と、水平読み出し回路14と、出力アンプ15とで、第1の基板40に備えた撮像信号取得用画素110の読み出し回路を構成し、垂直読み出し回路22と、カラム信号処理回路200と、水平読み出し回路24と、出力アンプ25とで、第2の基板50に備えた距離信号取得用画素210の読み出し回路を構成している。そして、固体撮像装置2では、第1の基板40に備えたカラム信号処理回路201と第2の基板50に備えたカラム信号処理回路202とで、1つのカラム信号処理回路の機能を実現している。
従って、固体撮像装置2は、図7(a)に示したように、第1の基板40に備えたカラム信号処理回路201と第2の基板50に備えたカラム信号処理回路202とが、第1の基板40内の信号線と第2の基板50内の信号線とを電気的に接続するための接続部であるが基板間接続部30で接続され、基板間接続部30を介して、1つのカラム信号処理回路の機能を実現するための各構成要素の信号が送受信される構成になっている。以下の説明においては、第1の基板40に備えたカラム信号処理回路201と第2の基板50に備えたカラム信号処理回路202とで実現される1つのカラム信号処理回路を、「カラム信号処理回路200」という。
画素アレイ部11は、複数の撮像信号取得用画素110が2次元の行列状に配置され、画素アレイ部11内のそれぞれの撮像信号取得用画素110は、入射した可視光に応じた信号を蓄積し、垂直読み出し回路12から入力された制御信号に応じて、可視光に応じた画素信号をカラム信号処理回路200に出力する。
垂直読み出し回路12は、画素アレイ部11内のそれぞれの撮像信号取得用画素110を制御し、それぞれの撮像信号取得用画素110が蓄積した可視光に応じた画素信号を順次読み出し、カラム信号処理回路200に順次出力させる。垂直読み出し回路12は、撮像信号取得用画素110を制御するための制御信号を、画素アレイ部11に配置された撮像信号取得用画素110の行毎に出力する。
画素アレイ部21は、複数の距離信号取得用画素210が2次元の行列状に配置され、画素アレイ部21内のそれぞれの距離信号取得用画素210は、入射した赤外光に応じた信号を蓄積し、垂直読み出し回路22から入力された制御信号に応じて、赤外光に応じた画素信号をカラム信号処理回路200に出力する。
垂直読み出し回路22は、画素アレイ部21内のそれぞれの距離信号取得用画素210を制御し、それぞれの距離信号取得用画素210が蓄積した赤外光に応じた画素信号を順次読み出し、カラム信号処理回路200に順次出力させる。垂直読み出し回路22は、距離信号取得用画素210を制御するための制御信号を、画素アレイ部21に配置された距離信号取得用画素210の行毎に出力する。
カラム信号処理回路200は、画素アレイ部11の各列に配置され、画素アレイ部11の各列に配置された撮像信号取得用画素110または画素アレイ部21の各列に配置された距離信号取得用画素210のそれぞれから出力された画素信号に対してノイズ抑圧など処理を行う、CDS処理などの処理回路である。カラム信号処理回路200は、水平読み出し回路14からの制御に応じて、撮像信号取得用画素110のそれぞれから出力された画素信号に対して処理を行った出力信号を、出力アンプ15に出力する。また、カラム信号処理回路200は、水平読み出し回路24からの制御に応じて、距離信号取得用画素210のそれぞれから出力された画素信号に対して処理を行った出力信号を、出力アンプ25に出力する。
水平読み出し回路14は、各列に配置されたカラム信号処理回路200から出力される処理後の出力信号を順次読み出し、出力アンプ15に順次出力させる。水平読み出し回路14によって読み出されたカラム信号処理回路200の出力信号は、通常の撮影における撮像信号として、出力アンプ15を介して固体撮像装置2の外部に出力される。
水平読み出し回路24は、各列に配置されたカラム信号処理回路200から出力される処理後の出力信号を順次読み出し、出力アンプ25に順次出力させる。水平読み出し回路24によって読み出されたカラム信号処理回路200の出力信号は、被写体までの距離の情報を表す距離信号として、出力アンプ25から基板間接続部30を介して第1の基板40に出力され、第1の基板40を経由して固体撮像装置2の外部に出力される。
なお、固体撮像装置2においては、例えば、第2の実施形態の固体撮像装置1のように、第2の基板50内に形成する距離信号取得用画素210の画素数が、第1の基板40内に形成する撮像信号取得用画素110の画素数のよりも少ない場合でも、カラム信号処理回路200を画素アレイ部11の各列に対応して配置する。これは、画素アレイ部11の各列に配置された撮像信号取得用画素110のそれぞれから出力された画素信号に対してCDS処理などの処理を行うためである。このため、水平読み出し回路24は、距離信号取得用画素210の画素数が撮像信号取得用画素110の画素数のよりも少ない場合、すなわち、第1の基板40に形成された複数の撮像信号取得用画素110からなる1つの組に対して1つの距離信号取得用画素210を第2の基板50内に形成した場合には、距離信号取得用画素210の画素信号が出力されない画素アレイ部21の列に対応して配置されたカラム信号処理回路200を動作させないように制御する。水平読み出し回路24がこのように制御することによって、固体撮像装置2における不要な動作を行わないようにすることができる。
なお、本第3の実施形態の固体撮像装置2においても、固体撮像装置2に備えた画素(撮像信号取得用画素110および距離信号取得用画素210)の構成、構造、配置や、撮像信号を取得する動作シーケンスおよび距離信号を取得する動作シーケンスは、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と同様に考えることができるため、詳細な説明は省略する。
上記に述べたように、本第3の実施形態における固体撮像装置2でも、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と同様に、第1の基板40内に通常の撮影における撮像信号を取得する撮像信号取得用画素110を形成し、第2の基板50内に被写体までの距離を表す距離信号を取得する距離信号取得用画素210を形成する。これにより、本第3の実施形態における固体撮像装置2でも、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と同様の効果を得ることができる。
また、本第3の実施形態における固体撮像装置2では、撮像信号取得用画素110が蓄積した可視光に応じた撮像信号を読み出す読み出し回路と、距離信号取得用画素210が蓄積した赤外光に応じた距離信号を読み出す読み出し回路との一部を共有する。これにより、本第3の実施形態における固体撮像装置2では、第1の基板40と第2の基板50との両方に備える同じ回路を削減することができ、第1の基板40と第2の基板50との基板面積(チップ面積)の増大を抑えつつ、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1と同様に、1つの固体撮像装置2で撮像信号と距離信号とを得ることができる。このことにより、本第3の実施形態における固体撮像装置2を搭載した撮像装置では、撮像信号に基づいた良好な画質の撮像画像と、距離信号に基づいた好適な距離画像とを得ることができる。
なお、本第3の実施形態における固体撮像装置2では、撮像信号取得用画素110および距離信号取得用画素210から信号を読み出す読み出し回路の内、カラム信号処理回路の一部を共有している構成である場合について説明したが、それぞれの画素の読み出し回路で共有する部分は、本第2の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、カラム信号処理回路の全体を共有する構成にすることもできる。また、カラム信号処理回路のみではなく、垂直読み出し回路、水平読み出し回路、出力アンプの一部や全部を共有する構成にすることもできる。例えば、撮像信号取得用画素110および距離信号取得用画素210から信号を読み出す読み出し回路の全部を共有する構成にすることもできる。このように、本発明の考え方を適用し、第1の基板40と第2の基板50とで共有する読み出し回路の構成要素や部分は、固体撮像装置の構成によって適宜変更することができる。
なお、第1の基板40と第2の基板50とで読み出し回路を共有する際には、第1の基板40と第2の基板50との基板面積(チップ面積)が同程度の面積となることが望ましい。これにより、固体撮像装置を搭載する撮像装置における実装面積を小さくすることができると考えられる。
<撮像装置>
次に、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1、または第3の実施形態における固体撮像装置2のいずれかを搭載した撮像装置について説明する。図8は、本発明の実施形態による固体撮像装置を搭載した撮像装置(例えば、デジタル一眼カメラ)の概略構成を示したブロック図である。なお、図8には、第1の実施形態および第2の実施形態の固体撮像装置1を搭載した撮像装置の一例を示している。ここに示した各構成要素は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子で実現することができ、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるものであるが、ここでは、これらの連携によって実現される機能ブロックとして示している。従って、これらの機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェアの組合せによって、様々な形式で実現できるということは、当業者には理解できるであろう。
図8に示した撮像装置100は、レンズユニット部3と、固体撮像装置1と、赤外光照射装置4と、画像信号処理装置5と、記録装置6と、表示装置7と、カメラ制御装置8とから構成される。
なお、撮像装置100では、一般的な撮像装置において赤外光が固体撮像装置に入射するのを防止する、すなわち、赤外光を遮光する赤外光遮光フィルタ(IRカットフィルタ)を備えない。これは、上述したように、第1の実施形態または第2の実施形態の固体撮像装置1では、撮像信号を取得するために不要な赤外光は、被写体光(可視光)を電気信号に変換する可視光用光電変換部PDが形成された第1の基板10を透過して、第2の基板20に形成された、距離信号を取得するためにパルス光(赤外光)を電気信号に変換する赤外光用光電変換部PDIRに入射されるためである。ただし、図8においては、一般的な撮像装置においてIRカットフィルタが配置されている位置に、IRカットフィルタ900を一点鎖線で示している。
レンズユニット部3は、カメラ制御装置8によってズーム、フォーカス、絞りなどが駆動制御され、被写体像を固体撮像装置1に結像させる。
赤外光照射装置4は、カメラ制御装置8によって駆動・制御され、固体撮像装置1が距離信号を取得するために露光する、短い時間で一定の周期の点滅する赤外光をパルス光として被写体に照射する、LEDなどの発光部(光源)を備えた光照射装置である。
固体撮像装置1は、第1の実施形態または第2の実施形態の固体撮像装置1である。固体撮像装置1は、カメラ制御装置8によって駆動・制御され、レンズユニット部3を介して固体撮像装置1内に入射した被写体光(可視光)を電気信号に変換し、可視光の入射光量に応じた撮像信号を画像信号処理装置5に出力する。また、固体撮像装置1は、レンズユニット部3を介して固体撮像装置1内に入射した、被写体に反射して戻ってきた赤外光照射装置4が照射したパルス光(赤外光)を電気信号に変換し、パルス光(赤外光)が入射した時間に応じた距離信号を画像信号処理装置5に出力する。
画像信号処理装置5は、固体撮像装置1から出力された撮像信号に対して、信号の増幅、画像データへの変換および各種の補正、画像データの圧縮などの処理を行った撮像画像を生成する。また、画像信号処理装置5は、固体撮像装置1から出力された距離信号に対して、信号の増幅、画像データへの変換および各種の補正、TOF方式の距離の計測などの処理を行った距離画像を生成する。画像信号処理装置5が生成した撮像画像や距離画像は、記録装置6に記録することや、表示装置7に表示させることができる。また、画像信号処理装置5が生成した撮像画像や距離画像に対して、画像信号処理装置5がさらに種々の処理を行うことによって、撮像装置100で、奥行き情報を持った3次元画像の生成や、被写体の動きを認識するゼスチャー認識などの機能を実現することができる。なお、画像信号処理装置5は、各処理における画像データの一時記憶手段として不図示のメモリを利用する構成であってもよい。
記録装置6は、半導体メモリなどの着脱可能な記録媒体であり、画像データの記録または読み出しを行う。
表示装置7は、固体撮像装置1に結像され、画像信号処理装置5によって処理された画像のデータ、または記録装置6から読み出された画像のデータに基づく画像を表示する液晶などの表示装置である。
カメラ制御装置8は、撮像装置100の全体の制御を行う制御装置である。また、カメラ制御装置8は、固体撮像装置1によって通常の撮影における撮像信号を取得する固体撮像装置1の駆動と制御、すなわち、撮像信号取得の動作シーケンスを行う。また、カメラ制御装置8は、固体撮像装置1によってTOF方式の距離の計測に用いる距離信号を取得するために、赤外光照射装置4の駆動と固体撮像装置1の駆動とを同期した制御、すなわち、距離信号取得の動作シーケンスを行う。
上記に述べたように、本実施形態の撮像装置100は、第1の実施形態〜第3の実施形態のいずれかの固体撮像装置を搭載する。そして、本実施形態の撮像装置100に備えたカメラ制御装置8は、通常の撮影における撮像信号取得の動作シーケンスを行いながら、距離信号取得の動作シーケンスによってTOF方式の距離の計測に用いる距離信号を取得するように、固体撮像装置の駆動を制御する。これにより、本実施形態の撮像装置100に備えた画像信号処理装置5は、固体撮像装置が出力した撮像信号に基づいた撮像画像を生成すると共に、固体撮像装置が出力した距離信号に基づいた距離画像を生成することができる。
なお、本実施形態の撮像装置100は、上述したように、IRカットフィルタ900を備えない。しかし、撮像装置100にIRカットフィルタ900を備えた構成にすることもできる。この場合には、カメラ制御装置8が、IRカットフィルタ900を介した光を固体撮像装置1内に入射させるか、IRカットフィルタ900を介さない光を固体撮像装置1内に入射させるかを切り替える制御を行うことになる。すなわち、固体撮像装置1に対して撮像信号取得の動作シーケンスを行う場合には、IRカットフィルタ900を介した被写体光(可視光)が固体撮像装置1内に入射するように切り替える制御を行い、固体撮像装置1に対して距離信号取得の動作シーケンスを行う場合には、IRカットフィルタ900を介さないパルス光(赤外光)が固体撮像装置1内に入射するように切り替える制御を行うことになる。
上記に述べたように、本発明を実施するための形態によれば、固体撮像装置において、通常の撮影における撮像信号を取得する撮像信号取得用画素を第1の基板内に形成し、被写体までの距離を表す距離信号を取得する距離信号取得用画素を第2の基板内に形成する。これにより、本発明を実施するための形態による固体撮像装置では、従来の固体撮像装置のように、異なる構成の画素を同一の基板内に形成する必要がなくなり、それぞれの画素に適した製造プロセスで、第1の基板および第2の基板を製造することができる。また、本発明を実施するための形態による固体撮像装置では、従来の固体撮像装置のように、同一平面上に撮像信号取得用画素と距離信号取得用画素とを形成する必要がないため、1つの固体撮像装置で距離信号を取得する場合においても、通常の撮影における撮像信号の解像度が低下することなく、好適な撮像信号を得ることができる。このことにより、本発明を実施するための形態による固体撮像装置を搭載した撮像装置では、好適な撮像信号に基づいた良好な画質の撮像画像を得ることができる。
また、本発明を実施するための形態による固体撮像装置では、第1の基板を基板の厚さが薄い裏面照射型のシリコン基板とし、第2の基板を第1の基板よりも厚さが厚い表面照射型のシリコン基板とする。そして、本発明を実施するための形態による固体撮像装置では、可視光を露光して光電変換するのに適した浅い構造の可視光用光電変換部を第1の基板のみに形成し、赤外光を露光して光電変換するのに適した深い構造の赤外光用光電変換部を第2の基板のみに形成する。これにより、本発明を実施するための形態による固体撮像装置では、距離信号を取得するために露光する被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)が第1の基板で吸収されることなく、第1の基板を透過して第2の基板に形成した赤外光用光電変換部に入射される。すなわち、本発明を実施するための形態による固体撮像装置では、撮像信号を取得するために不要な赤外光は第1の基板を透過して第2の基板に形成した赤外光用光電変換部に入射され、距離信号を取得するために不要な可視光は第1の基板によって吸収されて第2の基板に形成した赤外光用光電変換部に入射されない。つまり、本発明を実施するための形態による固体撮像装置では、パルス光(赤外光)は第1の基板における撮像信号の取得に影響を及ぼさず、被写体光(可視光)は第2の基板における距離信号の取得に影響を及ぼさない。これにより、本発明を実施するための形態による固体撮像装置では、好適な撮像信号を得ることができると共に、良好な距離信号を得ることができる。
このことにより、本発明を実施するための形態による固体撮像装置を搭載した撮像装置では、好適な撮像信号に基づいた良好な画質の撮像画像を得ることができると共に、良好な距離信号に基づいた好適な距離画像を得ることができる。
なお、本発明を実施するための形態による固体撮像装置においては、第1の基板が裏面照射型のシリコン基板である場合について説明したが、第1の基板の構造は、本発明を実施するための形態による固体撮像装置の構造に限定されるものではなく、可視光を吸収し赤外光を透過する構造の基板であれば、いかなる構造の基板であっても同様に、本発明の考え方を適用することができる。
また、本発明を実施するための形態においては、被写体までの距離の情報を表す距離信号を取得するために、赤外光照射装置4によって赤外光をパルス光として被写体に照射し、固体撮像装置1に備えた距離信号取得用画素210が、被写体に反射して戻ってきたパルス光(赤外光)を露光する構成である場合について説明した。しかし、被写体までの距離の情報を表す距離信号を取得するために用いる光は、本発明を実施するための形態に示した赤外光に限定されるものではなく、被写体に反射して戻ってきたパルス光が第1の基板で吸収されることなく、第1の基板を透過して第2の基板に入射される光であれば、いかなる波長の光であっても同様に、本発明の考え方を適用することができる。この場合、第2の基板の画素アレイ部21内には、入射される光の波長に対応した画素を形成することになる。
また、本発明における回路構成および駆動方法の具体的な構成は、本発明を実施するための形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更をすることができる。例えば、撮像信号取得用画素、距離信号取得用画素、または読み出し回路の構成要素や駆動方法が変わったことにより、固体撮像装置の制御方法やそれぞれの画素の駆動方法が変更された場合でも、それぞれの画素や読み出し回路の構成要素や回路構成、変更された駆動方法や制御方法に適宜対応することによって、本発明の考え方は同様に適用することができる。
また、本発明の実施形態に係る固体撮像装置は、2枚の基板が接続部により接続されていてもよいし、3枚以上の基板が接続部で接続されていてもよい。3枚以上の基板が接続部で接続される固体撮像装置の場合、そのうちの2枚が請求項に係る第1の基板と第2の基板に相当する。
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。