以下、図1〜図7を用いて、本発明の実施形態を説明する。そして、本説明では組み込みシステム101としての複合機100(画像形成装置に相当)を例に挙げて説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
(複合機100の概要)
まず、図1を用いて、複合機100の概要を説明する。図1は、実施形態に係る複合機100の構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の複合機100は、前面に取り付けられた操作パネル1(操作入力部に相当)を有する。そして、複合機100は上部に原稿搬送部2aと画像読取部2bを含む読取部2(動作部に相当)を有する。又、複合機100は、内部に、印刷部3(動作部に相当)として、給紙部3a、第1搬送部3b、画像形成部3c、定着部3d、第2搬送部3eを含む。
まず、操作パネル1は、複合機100の状態や各種メッセージや設定用画面を表示する表示部11を備える。また、表示部11に対し、各種操作、設定を受け付けるためのタッチパネル部12やハードキー13が設けられる。ハードキー13としては、コピー機能や送信機能などのような用いる機能を選択するためのキーや、テンキーや、ジョブの実行を指示するためのスタートキーなど、複数種のキーが設けられる。操作パネル1は、送信方法、送信先のアドレス、用紙のサイズ及び種類、原稿のサイズ及び種類のような送信や印刷の条件などの設定を受け付ける。
原稿を搬送して読み取るとき、原稿搬送部2aは、原稿トレイに載置された原稿を1枚ずつ読取位置に向けて搬送する。画像読取部2bは、搬送される原稿や原稿台に載置された原稿を読み取り、原稿の画像データを生成する。
給紙部3aは、複数枚の用紙を収容し、印刷のとき、用紙を送り出す。第1搬送部3bは、給紙部3aから供給された用紙を画像形成部3cまで搬送する。画像形成部3cは、印刷する画像データに基づき、トナー像を形成し、用紙にトナー像を転写する。定着部3dは、トナー像が転写された用紙を加熱・加圧して、用紙にトナー像を定着させる。第2搬送部3eは、定着部3dを通過した用紙を搬送し、機外に(排出トレイ)に排出する。
(複合機100等のハードウェア構成)
次に、図2を用いて、実施形態に係る複合機100のハードウェア構成の一例を説明する。図2は、実施形態に係る複合機100のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る複合機100は、制御部4(処理部に相当)を含む。制御部4は、複合機100に含まれる各部を制御する。制御部4は、CPU41や、印刷や送信(ファクシミリ通信を含む)に用いる画像データを生成する画像処理部42やその他の電子回路や素子を含む。CPU41は、記憶部5に格納される制御プログラム(ファームウェア7)や制御用のデータに基づき複合機100の各部の制御や演算を行う。記憶部5は、ROM51(例えば、フラッシュROM、第1記憶部に相当)、HDD53(第2記憶部に相当)のような不揮発性と記憶装置と、RAM52のような揮発性の記憶装置の組み合わせで構成される(図3参照)。
そして、制御部4は、用紙搬送や、トナー像形成、転写、定着により印刷を行う印刷部3(給紙部3a、第1搬送部3b、画像形成部3c、定着部3d、第2搬送部3eなど)と読取部2の動作を制御する。そして、制御部4は、プリンターとして機能するとき、コンピューター200から受信した印刷用データ(画像データや印刷設定データ)に基づき、印刷部3に印刷を行わせる(プリンター機能)。また、操作パネル1の入力により、コピージョブを実行するとき、制御部4は、読取部2に原稿読み取りを行わせ、読み取りで得られた画像データに基づき印刷部3に印刷を行わせる(コピー機能)。
又、制御部4には、通信部43(動作部に相当)が接続される。制御部4は通信部43の動作、通信処理を制御する。通信部43は、パーソナルコンピューター200やサーバーのようなコンピューター200やファクシミリ装置300と通信を行うためのインターフェイスである。通信部43は、複合機100をプリンターとして利用するとき、画像データや印刷用データの入力をコンピューター200から受信する。また、通信部43は読取部2の原稿読み取りで得られた画像データに基づき、コンピューター200やファクシミリ装置300に画像データを送信できる(送信機能)
又、制御部4は、操作パネル1の表示等の動作を制御する。又、制御部4は、操作パネル1でなされた設定内容を認識し、設定内容や印刷の実行指示を認識する。制御部4は、入力(使用者の設定)に応じたジョブが行われるように複合機100を制御する。
具体的に、操作パネル1は、パネル制御部10、表示部11、タッチパネル部12、ハードキー13、表示部11で表示する画面、画像の画像データを記憶するメモリー14、表示部11の動作を実際に制御するドライバ回路10aを含む。パネル制御部10は、CPUやIC等で構成され、制御部4の指示に基づき表示部11の表示を制御する。また、パネル制御部10は、タッチパネル部12の出力を受け、どのキーや画像の表示位置がタッチされたかを認識し、なされた操作を認識する。
取得部6は、メモリーカードや携帯型磁気記憶装置のような携帯可能な記憶媒体400から、後述する定義ファイル8のようなデータを取得する部分である。取得部6は、記憶媒体400を接続するためのソケットや、接続された記憶媒体400を認識して記憶媒体400に格納されるデータを読み出すための回路などを含む。
(記憶部5)
次に、図3を用いて、記憶部5について説明する。図3は、実施形態に係る複合機100の記憶部5を説明するための図である。
図3に示すように、本実施形態の複合機100の記憶部5は、ROM51(第1記憶部に相当)、RAM52、HDD53(第2記憶部に相当)を含む。
ROM51は、制御部4の基板に実装される。ROM51には、EEPROMやフラッシュROMを用いることができる。そして、ROM51には、ファームウェア7が格納される(不揮発的に記憶される)。
ファームウェア7は、組み込みシステム101(複合機100)が有する機能を実行させる(機能を実現させる)ためのソフトウェアである。ROM51には、ソースコードに対し、コンパイルやリンクを行ってビルド済みの(実行可能な形式の)ファームウェア7が記憶される。制御部4は、ファームウェア7のうち、使用者の指示に基づき実行する(印刷や送信などの各種機能)に関する部分の処理(プログラム)を実行する。
本実施形態の複合機100は、コピー機能、プリンター機能、スキャン送信機能、FAX機能のように、複数の機能を有する。これらの各機能に応じて、コピー用ファームウェア、プリント用ファームウェア、スキャン送信用ファームウェア、FAX用ファームウェアといった各種ファームウェア7がROM51に記憶される。
そして、実行する機能が操作パネル1やコンピューター200などからの入力で選択、決定されると、制御部4は、予めRAM52に読み出していたファームウェア7のうち、実現する機能に対応する部分のファームウェア7を実行する(機能が選択されてからROM51からRAM52に対応するファームウェア7が読み出されてもよい)。具体的に、制御部4は、ファームウェア7のうち、操作パネル1でなされた操作、入力や、ジョブの実行指示に応じた部分の処理(命令、関数、ルーチンなど)を実行する。その結果、制御部4は、操作パネル1への入力に応じた表示を表示部11に行わせたり、印刷を印刷部3に行わせたり、読取部2に原稿を読み取らせたり、通信部43に画像データの送信を行わせる。
また、記憶部5は、HDD53を含む。HDD53は、コネクタやコードなどで制御部4の基板と通信可能に接続される。HDD53に変えてSSDやフラッシュROMが用いられてもよい。そして、HDD53は、制御用データ53aや、画像データや、ファームウェア7で定められた処理に基づいて読み出されるデータ(読出対象データ)など、様々なデータを記憶する。
例えば、HDD53は、制御用データ53aとして、印刷部3や読取部2に動作を行わせるときの設定値やパラメータのようなデータを記憶する。制御部4は、ファームウェア7に基づく処理の実行に応じ、制御用データ53a中の必要なデータへのアクセス(RAM52への読み出し)を行う。制御部4は、読み出されたデータに基づき、制御、処理を行う。
また、HDD53は、複合機100が有する複数の機能について、利用できるか否か(利用可能か不可か)を定義するための定義ファイル8を記憶する。この定義ファイル8によって、複合機100が実行可能な機能について、個別に利用できるか否かを設定することができる。
定義ファイル8にて、複合機100が有する機能のそれぞれについて、利用可能とするか否かを設定できる。複合機100が有する機能は、多数に及ぶので、以下の説明では、定義ファイル8で静音モードの利用可否を設定する例を説明する。尚、以下の説明は、複合機100が有する機能の全てに適用でき、静音モードの利用可否に限られない。
(通常モードと静音モード)
次に、図4を用いて、実施形態に係る複合機100でのジョブの実行速度に関するモードについて説明する。図4は、実施形態に係る複合機100でのジョブの実行速度切替を説明するための図である。
本実施形態の複合機100は、通常の速度で印刷や原稿読み取りを実行する通常モードを有する。通常モードは、仕様上、予め定められた通常のジョブの実行速度(例えば、仕様上の1分間あたりの印刷枚数や原稿読取枚数)でジョブを実行するモードである。
一方、複合機100は、通常モードよりもジョブの実行速度を遅くし、ジョブの実行に伴って複合機100から生ずる音量(発する音のレベル)を抑える静音モードを有する。
尚、静音モードでの印刷や、静音モードでの原稿読み取りや、通常モードでの印刷や、通常モードでの原稿読み取りのため、読取部2や印刷部3を制御するための処理(プログラム、ソフトウェア)がファームウェア7の一部としてROM51に記憶される。制御部4は、静音モードや通常モードでの印刷や原稿読み取りのとき、ファームウェア7から対応する処理(プログラム、ソフトウェア)を読み出し、実行することで、印刷部3や読取部2の動作を制御する。
静音モードでは、ジョブの実行速度が抑えられる。そのため、原稿搬送部2aに載置された原稿や、給紙部3aに載置された用紙の送り出し音や、原稿や用紙が搬送ガイドに衝突する音や擦れにより生ずる音や、各種モーターの回転音や、ジョブ実行に際して回転する回転体や機械要素(ローラーやドラムのような回転体を回転させるギア)から生ずる音など、ジョブ実行に伴い複合機100から生ずる音の大きさを抑えることができる。言い換えると、静音モードは、通常モードよりも複合機100から生ずる音を抑えるモード(機能)である。
具体的に、静音モードでのジョブの実行速度(以下、「静音モード速度」)は、通常モードでのジョブの実行速度(以下、「通常モード速度」)の1/2程度に設定される。以下の説明では、静音モード速度を通常モード速度の1/2(半速)とする例を説明する。ただし、静音モード速度は、通常モード速度の1/3や3/4や2/3や、3/5程度としてもよく、適宜定めることができる。言い換えると、通常モード速度は、静音モード速度よりも速い。
静音モードでの印刷や原稿読み取りが定義ファイル8で利用可能とされているとき、静音モードでジョブを実行するか、通常モードでジョブを実行するかの指示は、操作パネル1で行うことできる。そのため、例えば、操作パネル1の表示部11は、静音モードでジョブを実行するか、通常モードでジョブを実行するかを定めるためのモード設定キー1515やモード設定画面16を表示する(不図示)。使用者は、モード設定キー15やモード設定画面16に対して操作を行うことにより、静音モードでジョブを実行するか、通常モードでジョブを実行するかの設定を行うことができる。尚、モード設定キー15は、操作パネル1にハードキーとして設けられてもよい。
次に、図4を用いて、ジョブの実行速度の制御を説明する。図4に示すように、読取部2の原稿搬送部2aには、原稿搬送制御部21が設けられる。原稿搬送制御部21は、ファームウェア7を実行した制御部4の指示に基づき、原稿搬送を制御する。原稿搬送制御部21は、CPUやROMやRAMやICや素子を含む回路(基板)である。
コピージョブ(読取部2の原稿読み取りに基づく画像データを用いて、印刷するジョブ)や、送信ジョブ(読取部2の原稿読み取りに基づく画像データをコンピューター200やファクシミリ装置300やHDD53に送信するジョブ)のとき、原稿搬送制御部21は、原稿搬送部2aの原稿を置くためのトレイに載置された原稿を1枚ずつ搬送する。なお、読取部2には、トレイに原稿があるか否かを検知するための原稿検知センサー21aが設けられる。
原稿搬送制御部21は、トレイに載置された原稿を搬送する回転体を回転させる原稿搬送モーター21bを制御する。原稿搬送制御部21は、通常モードでジョブ(原稿搬送)を実行するとき、予め定められた搬送速度(標準速度)で原稿が搬送されるように、原稿搬送モーター21bを回転させる。原稿搬送制御部21は、静音モードでジョブ(原稿搬送)を実行するとき、通常モードでジョブを実行するときよりも、原稿搬送モーター21bの回転速度を遅くする(1/2程度とする)。これにより、静音モードでは、原稿搬送制御部21は、通常モードのときよりも1/2程度の速度で原稿を搬送する。
また、読取部2の画像読取部2bには、読取制御部22が設けられる。読取制御部22は、ファームウェア7を実行した制御部4の指示に基づき、原稿の読み取りを制御する。読取制御部22は、CPUやROMやRAMやICや素子を含む回路(基板)である。
画像読取部2bは、CCD方式のイメージセンサー22aを含む、そして、読取制御部22は、原稿に光を照射するランプ22bの点消灯を制御する。また、画像読取部2bは、ランプ22bや、イメージセンサー22aに原稿の反射光を入射するためのミラーが設置された移動枠を含む。そして、読み取り位置を移動させるため、読取制御部22は、移動枠を移動させる巻取モーター22cの回転速度や、回転方向を制御する。
また、読取制御部22は、原稿を読み取るとき、ランプ22bを点灯し、読み取りが終了するとランプ22bを消灯させる。また、読取制御部22は、イメージセンサー22aの動作を制御する。また、読取制御部22は、イメージセンサー22aのアナログ出力に基づき、A/D変換部22dに画像データを生成させる。また、読取制御部22は、A/D変換部22dにより生成された画像データに対し、読取データ処理部22eに各種補正や調整のための画像処理を行わせる。また、読取制御部22は、画像メモリー22fに読取データ処理部22eが処理した画像データを蓄積させ、画像データを制御部4や記憶部5に向けて送信させる。
コピージョブや、送信ジョブのとき、読取制御部22は、送り読取用コンタクトガラス23(図1参照)を通過するように搬送される原稿や、巻取モーター22cを動作させて載置読取用コンタクトガラス24(図1参照)に載置された原稿を読み取るための制御を行う。
読取制御部22は、静音モードで載置読取用コンタクトガラス24に載置された原稿の読み取りを伴うジョブを実行するとき、通常モードでジョブを実行するときよりも、巻取モーター22cの回転速度を遅くする(1/2程度とする)。これにより、静音モードでは、読取制御部22は原稿の読み取り速度を通常モードのときよりも1/2程度とする。
読取制御部22は、静音モードで原稿の読み取りを行うとき、イメージセンサー22aやA/D変換部22dや読取データ処理部22eや画像メモリー22fの動作速度(動作クロック)を通常モードのときよりも遅い速度で動作させてもよい(例えば、動作周波数を1/2程度とする)。尚、読取制御部22は、イメージセンサー22aやA/D変換部22dや読取データ処理部22eや画像メモリー22fを通常モードと、静音モードとで同じ速度で動作させてもよい。この場合、原稿搬送方向(副走査方向)でのライン数は予め定められた読取解像度に比べ多くなるので、読取制御部22は不要なラインを読取データ処理部22eに間引き処理させる。
また、印刷部3には、エンジン制御部30が設けられる。エンジン制御部30は、ファームウェア7を実行した制御部4の指示に基づき、印刷速度(単位時間あたりの印刷枚数)を制御する。エンジン制御部30は、エンジンCPU31やエンジンメモリー32やICや素子を含む回路(基板)である。
エンジン制御部30は、印刷部3内に設けられる印刷用モーター33のON/OFFや回転速度を制御する。印刷用モーター33は、1又は複数設けられる。印刷用モーター33は、印刷に用いる用紙搬送用のローラーや、用紙搬送を行いつつ印刷に関する処理を行う回転体(定着部3dのローラーなど)や、トナー像の形成に関する画像形成部3cの回転体(例えば、感光体ドラム35。図1参照)のような印刷時に回転する回転体を回転させる。また、読取制御部22は、感光体ドラム35の走査、露光を行う露光装置36(図1参照)内のポリゴンミラーを回転させるポリゴンモーター34のON/OFFや回転速度を制御する。
コピージョブや、コンピューター200のような外部から送信されたデータに基づき印刷を行うプリントジョブや、記憶部5に蓄積された画像データに基づき印刷を行うボックス印刷ジョブのとき、エンジン制御部30は、印刷部3に印刷を行わせる。
エンジン制御部30は、静音モードで印刷に関するジョブを実行するとき、通常モードでジョブを実行するときよりも、印刷用モーター33の回転速度を遅くする(1/2程度とする)。これにより、静音モードでは、エンジン制御部30は、印刷ジョブの実行速度を通常モードのときよりも1/2程度とする。
また、エンジン制御部30は、静音モードで感光体ドラム35の走査、露光を行うとき、通常モードよりも感光体ドラム35の回転速度が遅くなるのにあわせて、ポリゴンモーター34の回転速度を通常モードよりも遅くしてもよい(例えば、ポリゴンモーター34に入力する駆動信号の周波数を1/2程度とする)。あるいは、エンジン制御部30は、静音モードでは、ポリゴンモーター34の回転速度を同じとしつつ、減速率にあわせて、数ラインに1ラインの割合で、感光体ドラム35の走査、露光を行うようにしてもよい(例えば、2ライン中、1ラインのみ画像データにあわせて露光する)。
(識別番号と定義ファイル8)
次に、図5に基づき、ファームウェア7で定められる機能を実現するための各処理に付される識別番号と、定義ファイル8について説明する。図5は、実施形態に係るファームウェア7内の各処理に付される識別番号と、定義ファイル8を説明するための図である。
ファームウェア7には、機能を実現するために、複合機100の各部分に適切な動作を行わせるための処理(プログラム)が複数種定められる。処理(プログラム)は、関数、命令、ルーチンなどで構成される。
そして、図5の(a)、(b)に示すように、本実施形態の複合機100(組み込みシステム101)のファームウェア7には、実現する機能単位(実現する機能のプログラム単位)で、識別番号が付される。なお、実現する1つ機能は、ファームウェア7のうち、同じ識別番号が付されたファームウェア7の部分(1又は複数の処理、関数、命令、ルーチン)を実行することにより実現される。
図5(a)、(b)の例では、ファームウェア7のうち、「通常モードで印刷」の機能に対応する処理には、「01001」の識別番号が付されている。また、ファームウェア7のうち、「静音モードで印刷」の機能に対応する処理には、「01002」の識別番号が付されている。また、ファームウェア7のうち、「通常モードで読取」の機能に対応する処理には、「01003」の識別番号が付されている。また、ファームウェア7のうち、「静音モードで読取」の機能に対応する処理には、「01002」の識別番号が付されている。また、ファームウェア7のうち、「システム再起動」の機能に対応する処理には、「01005」の識別番号が付されている。また、ファームウェア7のうち、「省電力モード」の機能に対応する処理には、「01006」の識別番号が付されている。また、ファームウェア7のうち、「データ送信」の機能に対応する処理には、「01007」の識別番号が付さている。
尚、「システム再起動」の機能は、操作パネル1に所定の操作が行われたときや、所定のエラーが発生したときなど、予め定められた再起動条件が満たされると、制御部4が複合機100の再起動を行う機能である。再起動により、制御部4の起動や、ファームウェア7のROM51からの読み出しなど、複合機100を利用可能な状態に立ち上げるための処理がなされる。
「省電力モード」の機能は、複合機100が一定時間利用されないときや、操作パネル1に省電力モード移行用の操作が行われたとき、印刷部3や読取部2など、予め定められた電力供給停止部分への電力供給を停止する機能である。尚、使用者が操作パネル1にタッチしたなどの省電力モードを解除するための操作、入力が複合機100になされると、省電力モードが解除され、制御部4は、複合機100を利用可能な状態に立ち上げるための処理を行う。
「データ送信」の機能は、読取部2の原稿読み取りで得られた画像データや、HDD53に蓄積された画像データに基づき、設定された送信先に画像データをコンピューター200などに送信する機能である。「データ送信機能」に付随して、送信先の登録や、登録した送信先検索や、送信先の指定を行うための「アドレス帳機能」などが複合機100に搭載される。
このように、識別番号の値は、実現する機能ごとに異なる。言い換えると、識別番号は、機能ごとにユニークな値である。例えば、コンパイルやリンクのときに、ファームウェア7中、機能を実現するための各処理に識別番号が付される。例えば、コンパイラーやリンカーが識別番号を付与する処理を行う。
そして、定義ファイル8は、処理に付された識別番号を用いて、利用可能な処理と利用不可な処理を定義するためのファイルである。
図5(a)に示す定義ファイル8は、利用可能な機能の識別番号が列挙して記されている形式の定義ファイル8である。この形式のとき、制御部4は、複合機100の主電源が投入されたときや、省電力モードの復帰や、再起動時のような起動処理のとき、定義ファイル8を参照して、定義ファイル8に記載された識別番号の機能が利用可能と認識する。一方、制御部4は、起動処理のとき、定義ファイル8を参照して、定義ファイル8に記載されていない識別番号の機能が利用不可と認識する。
図5(a)の例では、定義ファイル8に、「01001」、「01003」、「01005」、「01006」、「01007」、・・・「n」の識別番号が記されている。そのため、制御部4は、起動のとき、定義ファイル8に識別番号がある「通常モードで印刷」、「通常モードで読み取り」、「システム再起動」、「省電力モード」、「データ送信」の機能が利用可能と認識し、識別番号が無い「静音モードで印刷」、「静音モードで読み取り」の機能は利用不可と認識する。
一方、図5(b)に示す定義ファイル8は、利用不可な機能の識別番号が列挙して記されている形式の定義ファイル8である。この形式のとき、制御部4は、複合機100の主電源が投入されたときや、省電力モードの復帰や、再起動時のような起動処理のとき、定義ファイル8を参照して、定義ファイル8に記載された識別番号の機能が利用不可と認識する。一方、制御部4は、起動処理のとき、定義ファイル8を参照して、定義ファイル8に記載されていない識別番号の機能が利用可能と認識する。
図5(b)の例では、定義ファイル8に、「01002」、「01004」の識別番号が記されている。そのため、制御部46は、起動のとき、定義ファイル8に識別番号がある「静音モードで印刷」、「静音モードで読み取り」の機能は利用不可と認識する。一方、制御部4は、定義ファイル8に識別番号がない「通常モードで印刷」、「通常モードで読み取り」、「システム再起動」、「省電力モード」、「データ送信」の機能が利用可能と認識する。
利用不可と認識した機能については、制御部4は、利用不可と認識した機能の設定画面を表示させない。また、制御部4は、利用不可と認識した機能の設定を受け付けさせない。また、制御部4は、印刷部3や読取部2のような機能を実現するために動作を行う部分に、利用不可と認識した機能でのジョブ(動作)を、行わせない。
(定義ファイル8を用いた組み込みシステム101の動作変更)
次に、図6を用いて、定義ファイル8を用いた組み込みシステム101の利用可能な機能の変更を説明する。図6は、実施形態に係る定義ファイル8による利用可能な機能の変更を説明するための図である。
以下、定義ファイル8を用いた組み込みシステム101で利用可能な機能の(実現できる機能の追加、削除)を説明する。尚、以下の例では、静音モードでの印刷、原稿読取の機能の追加と、画像データ送信の機能の削除を例に挙げて説明するが、本発明での機能の追加削除は、これらの機能に限られない。例えば、定義ファイル8を用いて、ファームウェア7のうち、コピー機能に関する特定の設定項目(例えば、両面印刷や集約印刷など多数種)利用できるか否かを設定したり、特定の設定画面を表示するか否かを設定したり、表示部11に特定のボタンやキーが表示されないようにして特定の設定項目や設定値の利用可否の設定を行える。
まず、定義ファイル8による機能の追加、削除の必要性について説明する。複合機100のような組み込みシステム101では、多数の機能が搭載される。機能としては、コビーや原稿読み取りや送信のような機能や、コピーや原稿読み取りのような機能内でも、静音モードや各種設定項目のように、多様な小分類的な機能が設けられる。
制御部4の基板や、複合機100に用いられる部材などがほぼ共通している機体が、異なる機種として販売されることがある。例えば、新興国用には、購入できるように低価格帯の機種を用意する必要がある。新興国用の低価格帯の機種の基板や、部材は、大量生産によるコスト削減との関係で、その機種よりも高価格帯の機種と構造自体がほぼ同じとなることがある。
従来では、価格に見合うような機能に限定するため、構造がほぼ同じでも、組み込むファームウェア7(プログラム)の一部を削除することにより(ファームウェア7のうち、一部の機能を利用するための処理を削除しておくことにより)、搭載される機能の制限が行われる場合がある。
ファームウェア7の更新は容易ではないので、使用者の要望に基づき、限定していた機能を使えるようにすることは、従来容易ではなかった。
そこで、本実施形態の複合機100(組み込みシステム101)では、ROM51には、出荷地域や国柄などを考慮して、静音モードのような、要望が強い、又は、要望が出ると予測される機能を実現するためのファームウェア7(処理、プログラム)をROM51に記憶しておく。そして、定義ファイル8を書き換えることで、ファームウェア7の更新のような手間を要さず、眠らされた状態の機能の利用を可能としたり、現在利用可能な機能を利用できない状態にできるようにする。
次に、図6を用いて、定義ファイル8の変更(更新)により、利用できる機能の変更について説明する。尚、図8の定義ファイル8は、ファームウェア7に含まれる処理のうち、利用可能な識別番号を定義ファイル8に記しておくタイプのファイルである(図5(a)のタイプ)。尚、複合機100に予め持たせられた機能のうち、利用不可の機能の識別番号を定義ファイル8に記しておくタイプの定義ファイル8(図5(b)のタイプ)で、機能の利用可能、利用不可が定義されてもよい。
図6の上側の左の図は、変更前の定義ファイル8の一例を示している。例えば、出荷時のデフォルトの定義ファイル8である(出荷時など、予め仕様どおりの利用可能な機能を定義した定義ファイル8を予めHDD53に記憶させる。)。一方、図6の上側の右の図は、変更後の定義ファイル8の一例を示す。
ここで、図2、図3を用いて、定義ファイル8の更新について説明する。まず、定義ファイル8は、HDD53に記憶される。本実施形態の複合機100では、定義ファイル8は、複合機100に接続された記憶媒体400からダウンロードすることにより取得される。具体的に、使用者は、所望の機能が利用可能、又は、利用不可となるように、定義ファイル8をコンピューター200や、携帯情報端末(例えば、タブレット端末やスマートフォン)などを用いて作成する。具体的には、例えば、定義ファイル8に対し、利用可能としたい機能に対応する識別番号に対する操作を行う(識別番号の削除や追加)。
そして、使用者は、作成した定義ファイル8を記憶媒体400に記憶させる。続いて、使用者は、定義ファイル8が記憶された記憶媒体400を取得部6に接続する(差し込む)。取得部6への記憶媒体400の接続を取得部6が認識すると、制御部4は、記憶媒体400に格納される定義ファイル8を読み出し、HDD53に記憶させる。このようにして、定義ファイル8を更新することができる。
尚、無線通信や有線通信により、複合機100の通信部43とコンピューター200や携帯情報端末を通信可能に接続し、記憶媒体400を介さない通信によって、制御部4は、定義ファイル8をダウンロードして、HDD53に記憶させるようにしてもよい。
具体的に、図6の定義ファイル8をみると、変更前の定義ファイル8には、「01001」、「01003」、「01005」〜「01007」の範囲の識別番号が定義されている。これらの識別番号に対応して、「通常モードでの印刷」、「通常モードでの読取」
、「システム再起動」、「省電力モード」、「画像データ通信」が複合機100で利用可能であると制御部4は判断する。
一方、図6の変更後の定義ファイル8では、「01001」〜「01006」の識別番号が定義されている(「01002」、「01004」の追加)。また、変更後の定義ファイル8では、変更前の識別番号「01007」が定義されていない(消されている)。
その結果、制御部4は、定義ファイル8で消された識別番号「01007」(定義されていない識別番号)に対応する機能(「画像データ送信」の機能)が利用不可になったと認識する。その結果、図8に示す例では、「01002」と「01004」の識別番号が追加されたので、制御部4は、変更後の定義ファイル8に基づき、もともとの「通常モードでの印刷」、「通常モードでの読取」、「システム再起動」、「省電力モード」に加え、「静音モードでの印刷」機能と、「静音モードでの読取」機能が利用可能であると認識する。このように、定義ファイル8によって、簡易に複合機100で利用可能な機能の変更を行うことができる。
(定義ファイル8に基づく機能変更の流れ)
次に、図7を用いて、本実施形態の組み込みシステム101での定義ファイル8に基づく利用可能な機能変更の流れについて説明する。図7は、実施形態に係る定義ファイル8に基づく利用可能な機能変更の流れの一例を示すフローチャートである。
図7のスタートは、組み込みシステム101(複合機100)の主電源投入時や、省電力モードから通常モードに復帰したときなど、電力供給がなされることにより、制御部4が起動処理をを開始する時点である。
まず、制御部4は、記憶部5(HDD53)に記憶される定義ファイル8をRAM52に読み出し、定義ファイル8に基づき、利用可能な機能を認識する(ステップ♯1)。そして、制御部4は、ROM51に記憶されたファームウェア7のうち、定義ファイル8の識別番号に基づき、利用可能と定義される機能に対応するファームウェア7(処理、プログラム)をRAM52に読み出す(ステップ♯2)。これにより、利用可能と定義される機能を利用できる状態になる。
そして、制御部4は、使用者若しくはコンピューター200などから、操作パネル1や通信部43に対し入力がなされたか否かを認識する(ステップ♯3)。もし、入力があれば、制御部4は、使用者の操作に応じて、利用可能な機能に応じた設定画面(例えば、静音モードによるジョブ実行の設定画面)を操作パネル1の表示部11に表示させ、利用可能な機能の設定入力を受け付け、ジョブの実行指示に伴い設定された機能(ジョプ)を印刷部3や読取部2など、複合機100に含まれる部分に実行させる(ステップ♯4)。そして、フローは、例えば、ステップ♯5に移行する。
一方、入力が無ければ(ステップ♯3のNo)、制御部4は、取得部6に定義ファイル8が記憶されたメモリーカードのような記憶媒体400が接続されたか否かを確認する(ステップ♯5)。接続されたのであれば(ステップ♯5のYes)、制御部4は、記憶媒体400から定義ファイル8を読み出し、記憶部5(HDD53)に記憶させ、取得した(変更後)の定義ファイル8に更新する(ステップ♯6)。そして、フローは、ステップ♯1に戻る。一方、記憶媒体400が接続されていなければ(ステップ♯5のNo)、フローはステップ♯2に戻る。
尚、制御部4は、取得部6に、定義ファイル8が記憶された記憶媒体400が接続されたとき、自動的に直ちに定義ファイル8の更新を行うのではなく、操作パネル1に入力された認証情報(パスワードやキーワード)により、定義ファイル8を更新する権限を有する者による作業であると確認できてから、HDD53の定義ファイル8を記憶媒体400の定義ファイル8に置き換える(更新する)ようにしてもよい。
また、本フローは、省電力モードに移行する前や、主電源が切られる前であり、表示部11での表示を続け、制御部4や取得部6への電力供給がなされている間、続けられる。
このようにして、本実施形態の組み込みシステム101は、機能を実現するため動作する動作部(印刷部3、読取部2、通信部43など)と、実行可能な形式にビルド済のファームウェア7を不揮発的に記憶する第1記憶部(ROM51)と、ファームウェア7に従って処理を実行し、動作部(印刷部3、読取部2、通信部43など)を動作させる処理部(制御部4)と、ファームウェア7に基づき実現される機能が利用可能であるか否かを定義するための定義ファイル8を取得する取得部6と、取得部6で取得された定義ファイル8記憶する第2記憶部(HDD53)と、を含み、処理部は、ファームウェア7に含まれる処理のうち、定義ファイル8に基づいて利用可能とされている機能を実現するための処理を実行し、ファームウェア7に含まれる処理のうち、利用不可とされている機能の処理を実行しないこととした。
これにより、予め組み込みシステム101に多くの機能を持たせておき、定義ファイル8により機能を利用できるか否かを定めることで、ファームウェア7を変更することなく、提供する機能を変更することができる。また、定義ファイル8により、簡易に機能を利用できなくすることもできる。例えば、新興国向けの製品では、製品価格を下げるため、機能を価格に見合うように限定する必要があるところ、機能の限定を定義ファイル8のみで行うことができる。
また、定義ファイル8により機能を利用できるか否かを定めることができるので、使用者が定義ファイル8を作成して、所望する機能を簡易、迅速に追加することができる。また、別途、アプリケーションを作成して機能を追加する場合に比べ、アプリケーションを作成する必要がないので、開発環境を用意する必要やアプリケーションの開発に手間と時間をかける必要もなく、簡易に機能を追加することができる。
また、ファームウェア7に含まれる処理には、実現する機能単位で識別番号が付され、定義ファイル8は、利用可能とする機能の識別番号が定められるとともに利用不可とする機能の識別番号を含まない、又は、利用可能とする処理の識別番号を含まないとともに利用不可とする識別番号を含む形式で、機能の利用可能と利用不可が定義されることとした。
これにより、使用者は、機能に対応する識別番号を定義ファイル8に含めるか否かという作業のみで、組み込みシステム101での機能の追加、削除を行うことができる。従って、機能の追加、削除を簡易、迅速に行うことができる。
また、動作部として、印刷を行う印刷部3と原稿の読み取りを行う読取部2の何れか一方、又は両方を含み、と、定義ファイル8で印刷部3と読取部2の何れか一方、又は、両方を通常モードよりも動作速度を落として動作させる静音モードの機能が利用可能と定義されているとき、静音モードの利用に関する表示を行うともに通常モード又は静音モードでのジョブの実行指示を受け付け、定義ファイル8で静音モードの機能が利用不可と定義されているとき、静音モードの利用に関する表示を行わず通常モードでのジョブの実行指示を受け付けるが静音モードでのジョブの実行指示を受け付けない操作入力部(操作パネル1)を含み、処理部(制御部4)は、操作入力部が静音モードでのジョブの実行指示を受け付けたとき、ファームウェア7のうち静音モードの機能に対応する処理を実行して印刷部3と読取部2の何れか一方、又は、両方を静音モードの速度で動作させ、操作入力部が通常モードでジョブを実行する実行指示を受け付けたとき、ファームウェア7のうち通常モードの機能に対応する処理を実行して印刷部3と読取部2の何れか一方、又は、両方を通常モードの速度で動作させることとした。
これにより、使用者は定義ファイル8によって、組み込みシステム101を静音モードで動作させることができるか否かを定めることができる。
また、取得部6は、接続された携帯可能な記憶媒体400から定義ファイル8を取得し、第2記憶部(HDD53)は、取得部6が取得した定義ファイル8に基づき、定義ファイル8を更新することとした。
これにより、メモリーカードや外付HDD53のような記憶媒体400から使用者が作成した定義ファイル8を組み込みシステム101に簡易に記憶させることができる。言い換えると、定義ファイル8の更新を容易に行うことができる。
また、実施形態に係る画像形成装置(複合機100)は、実施形態に係る組み込みシステム101を含む。これにより、コンパイルやリンクのやり直し(ビルド)をしなくても、ファームウェア7に基づく組み込みシステム101が提供する機能を簡易に変更することができる画像形成装置を提供することができる。
尚、上記の説明では、組み込みシステム101として複合機100を例に挙げたが、複写機、FAX装置、プリンターのような組み込みシステム101(画像形成装置)に対しても適用することができる。
又、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。