本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
図1に示す氷蓄熱システム(10)は、本実施形態の製氷装置(11)と、蓄熱装置(14)とを備えている。この氷蓄熱システム(10)は、製氷と、空気調和と、給湯用の温水の生成とを行う。
−製氷装置−
図1に示すように、製氷装置(11)は、冷媒回路(20)と、制御器(65)と、室外ファン(12)とを備えている。室外ファン(12)は、後述する冷媒回路(20)の室外熱交換器(33)へ室外空気を供給する。
〈冷媒回路〉
冷媒回路(20)は、主回路(21)と、製氷用回路(24)と、バイパス回路(25)とを備えている。冷媒回路(20)には、冷媒として例えばR410Aが充填されている。
主回路(21)には、圧縮機(31)と、四方切換弁(32)と、室外熱交換器(33)と、主膨張弁(34)と、水熱交換器(35)とが設けられている。主回路(21)において、圧縮機(31)は、吐出口が吐出配管(22)を介して四方切換弁(32)の第1のポートに接続され、吸入口が吸入配管(23)を介して四方切換弁(32)の第2のポートに接続されている。また、主回路(21)では、四方切換弁(32)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に、室外熱交換器(33)と主膨張弁(34)と水熱交換器(35)とが配置されている。
主回路(21)には、三つの電磁弁(SV1,SV2,SV3)が設けられている。第1電磁弁(SV1)は、室外熱交換器(33)と主膨張弁(34)の間に配置されている。第2電磁弁(SV2)は、主膨張弁(34)と水熱交換器(35)の間に配置されている。第3電磁弁(SV3)は、第2電磁弁(SV2)と水熱交換器(35)の間に配置されている。
圧縮機(31)は、全密閉型のスクロール圧縮機(31)である。この圧縮機(31)は、その運転容量が可変となっている。具体的に、圧縮機(31)のモータには、図外のインバータを介して交流が供給される。インバータが圧縮機(31)へ供給する交流の周波数(即ち、圧縮機(31)の運転周波数)を変更すると、圧縮機(31)の回転速度が変化し、その結果、圧縮機(31)の運転容量が変化する。圧縮機(31)の運転容量は、圧縮機(31)の回転速度に実質的に比例し、圧縮機(31)の回転速度は、圧縮機(31)の運転周波数に実質的に比例する。
四方切換弁(32)は、第1のポートが第3のポートと連通し且つ第2のポートが第4のポートと連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートと連通し且つ第2のポートが第3のポートと連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わる。
室外熱交換器(33)は、冷媒を室外空気と熱交換させるための熱交換器である。主膨張弁(34)は、開度可変の電子膨張弁である。水熱交換器(35)は、冷媒流路(35a)と水流路(35b)とが形成された熱交換器である。水熱交換器(35)は、冷媒流路(35a)が冷媒回路(20)の主回路(21)に接続され、水流路(35b)が水配管(13)に接続されている。水熱交換器(35)は、水流路(35b)を流れる水を、冷媒流路(35a)を流れる冷媒と熱交換させる。
製氷用回路(24)は、その一端が主回路(21)における第2電磁弁(SV2)と第3電磁弁(SV3)の間に接続され、その他端が主回路(21)の吸入配管(23)に接続されている。製氷用回路(24)には、その一端から他端へ向かって順に、第4電磁弁(SV4)と、製氷用膨張弁(36)と、製氷器(40)とが配置されている。
製氷用膨張弁(36)は、開度可変の電子膨張弁である。図示しないが、製氷用膨張弁(36)は、ニードル状の弁体と、弁体を駆動するパルスモータとを備えている。製氷用膨張弁(36)の開度は、そのパルスモータへ入力されるパルス数を変更することによって調節される。製氷器(40)については後述する。
バイパス回路(25)は、その一端が主回路(21)における室外熱交換器(33)と第2電磁弁(SV2)の間に接続され、その他端が主回路(21)における第2電磁弁(SV2)と第3電磁弁(SV3)の間に接続されている。バイパス回路(25)には、第5電磁弁(SV5)が設けられている。
〈製氷器〉
図2に示すように、製氷器(40)は、本体部(41)と、ダッシャー(46)と、ダッシャー(46)を駆動する駆動モータ(49)とを備えている。製氷器(40)は、蒸発器として機能し、熱媒体を冷却して過冷却状態にする冷却器を構成している。また、詳しくは後述するが、この製氷器(40)は、熱媒体の流路において、熱媒体の冷却と、熱媒体の過冷却の解消とを行うように構成されている。
本体部(41)は、内筒(42)と外筒(43)とを備えた二重管状の部材である。本体部(41)は、その軸方向が概ね鉛直方向となる姿勢で設置されている。
内筒(42)は、両端が閉塞された円筒状の部材である。内筒(42)の内側の空間は、熱媒体が流れる熱媒体流路(44)となっている。内筒(42)は、その下端部に熱媒体の流入口(42a)が形成され、その上端部に熱媒体の流出口(42b)が形成されている。熱媒体流路(44)では、熱媒体が下方から上方へ向かって流れる。内筒(42)の内周面は、熱媒体を冷却するための伝熱面を構成している。
外筒(43)は、内筒(42)の周囲を囲うように設けられた円筒状の部材である。外筒(43)と内筒(42)の間の空間は、冷媒が流れる冷媒流路(45)となっている。外筒(43)は、その下端部に冷媒の流入口(43a)が形成され、その上端部に冷媒の流出口(43b)が形成されている。冷媒流路(45)には、冷媒回路(20)の製氷用回路(24)が接続されている。流入口(43a)には、製氷用膨張弁(36)と製氷器(40)を繋ぐ配管が接続され、流出口(43b)には、製氷器(40)と吸入配管(23)を繋ぐ配管が接続されている(図1を参照)。冷媒流路(45)では、冷媒が下方から上方へ向かって流れる。
ダッシャー(46)は、一本の駆動軸(47)と、複数の撹拌羽根(48)とを備えている。ダッシャー(46)は、駆動軸(47)の軸方向が内筒(42)の中心軸と実質的に一致する姿勢で、内筒(42)に収容されている。つまり、ダッシャー(46)は、熱媒体流路(44)に配置されている。撹拌羽根(48)は、上下に長い棒状または板状の部材であって、駆動軸(47)に固定されている。撹拌羽根(48)は、内筒(42)の内周面に近接する位置に設けられている。駆動軸(47)が回転すると、撹拌羽根(48)は、内筒(42)の内周面に沿って、内周面の周方向へ移動する。このダッシャー(46)は、冷却器である製氷器(40)において冷却された熱媒体の過冷却状態を解消させる過冷却解消部材を構成している。
駆動モータ(49)は、駆動軸(47)の上端部に連結され、駆動軸(47)を駆動する。駆動モータ(49)は、本体部(41)の内筒(42)の外部に配置されている。この駆動モータ(49)は、ダッシャー(46)を例えば毎分40回転程度の回転速度で回転させる。
〈センサ〉
図1に示すように、製氷装置(11)には、吸入圧力センサ(61)と、吐出圧力センサ(62)と、吐出温度センサ(63)と、水温センサ(64)とが設けられている。
吸入圧力センサ(61)は、吸入配管(23)に取り付けられ、圧縮機(31)へ吸入される冷媒の圧力を計測する。吸入圧力センサ(61)の計測値は、冷媒回路(20)で行われる冷凍サイクルの低圧と実質的に等しい。吐出圧力センサ(62)は、吐出配管(22)に取り付けられ、圧縮機(31)から吐出された冷媒の圧力を計測する。吐出圧力センサ(62)の計測値は、冷媒回路(20)で行われる冷凍サイクルの高圧と実質的に等しい。
吐出温度センサ(63)は、吐出配管(22)に取り付けられ、吐出配管(22)の温度を計測する。吐出温度センサ(63)の計測値は、圧縮機(31)から吐出された冷媒の温度と実質的に等しい。水温センサ(64)は、水熱交換器(35)に接続された水配管(13)に取り付けられ、水熱交換器(35)の水流路(35b)から流出した水の温度を計測する。
〈制御器〉
図1に示すように、制御器(65)は、その動作に必要なデータを記憶するメモリ(66)と、制御動作を行うCPU(67)とを備えている。制御器(65)には、吸入圧力センサ(61)、吐出圧力センサ(62)、吐出温度センサ(63)、及び水温センサ(64)の計測値が入力される。
図3に示すように、制御器(65)には、圧縮機制御部(68)と、製氷用膨張弁制御部(69)とが形成されている。また、制御器(65)は、四方切換弁(32)の操作、主膨張弁(34)の開度調節、電磁弁(SV1〜SV5)の操作などを行う。
圧縮機制御部(68)は、圧縮機(31)の運転周波数(即ち、インバータの出力周波数)を制御することによって、圧縮機(31)の運転容量を調節する。製氷用膨張弁制御部(69)は、製氷装置(11)の運転状態に応じて製氷用膨張弁(36)の開度を調節する。製氷用膨張弁制御部(69)の詳細な動作は後述する。メモリ(66)は、製氷用膨張弁制御部(69)の動作に必要なデータを、図4に示すようなマトリックスとして記憶している。メモリ(66)が記憶するデータの詳細は後述する。
−蓄熱装置−
図1に示すように、蓄熱装置(14)は、蓄熱タンク(15)と、製氷側循環路(50)と、一次側循環路(56)と、利用側熱交換器(55)とを備えている。
蓄熱タンク(15)は、いわゆるブラインからなる熱媒体を貯留するタンクである。熱媒体を構成するブラインの一例としては、エチレングリコール水溶液と、プロピレングリコール水溶液とが挙げられる。なお、熱媒体として水道水を用いてもよい。
製氷側循環路(50)は、製氷装置(11)の製氷器(40)と蓄熱タンク(15)の間で熱媒体を循環させるための管路である。製氷側循環路(50)は、導入配管(51)と供給配管(52)とを備えている。導入配管(51)は、蓄熱タンク(15)を製氷器(40)の熱媒体流路(44)に接続する。導入配管(51)は、その入口端が蓄熱タンク(15)の底部に開口し、その出口端が製氷器(40)の内筒(42)の流入口(42a)に接続されている。また、導入配管(51)には、製氷側ポンプ(53)が設けられている。供給配管(52)は、製氷器(40)の熱媒体流路(44)を蓄熱タンク(15)に接続する。供給配管(52)は、その入口端が製氷器(40)の内筒(42)の流出口(42b)に接続され、その出口端が蓄熱タンク(15)の底部に開口している。
一次側循環路(56)は、蓄熱タンク(15)と利用側熱交換器(55)の間で熱媒体を循環させるための管路である。一次側循環路(56)は、その入口端が蓄熱タンク(15)の底部に開口し、その出口端が蓄熱タンク(15)の上端付近に開口している。一次側循環路(56)には、その入口端から出口端へ向かって順に、利用側ポンプ(57)と利用側熱交換器(55)とが配置されている。
利用側熱交換器(55)は、一次側流路(55a)と二次側流路(55b)とが形成された熱交換器である。利用側熱交換器(55)は、一次側流路(55a)が一次側循環路(56)に接続され、二次側流路(55b)が二次側循環路(58)に接続されている。二次側流路(55b)は、図外のファインコイルユニットと利用側熱交換器(55)との間で熱媒水を循環させるための管路である。利用側熱交換器(55)は、二次側流路(55b)を流れる熱媒水を、一次側流路(55a)を流れる熱媒体と熱交換させる。
−氷蓄熱システムの運転動作−
氷蓄熱システム(10)は、第1製氷運転と、第2製氷運転と、蓄熱利用冷房運転と、冷房運転と、暖房運転とを選択的に行う。
〈第1製氷運転〉
第1製氷運転について、図5を参照しながら説明する。第1製氷運転は、製氷器(40)における製氷だけを行う運転である。
第1製氷運転では、四方切換弁(32)が第1状態に設定され、第1電磁弁(SV1)、第2電磁弁(SV2)、及び第3電磁弁(SV3)が閉鎖され、第4電磁弁(SV4)及び第5電磁弁(SV5)が開放される。また、第1製氷運転では、圧縮機(31)と製氷側ポンプ(53)とが作動し、利用側ポンプ(57)が停止する。製氷用膨張弁(36)の開度は、制御器(65)の製氷用膨張弁制御部(69)によって調節される。この製氷用膨張弁制御部(69)の動作の詳細は後述する。
冷媒回路(20)では、冷媒が循環し、蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(20)では、室外熱交換器(33)が凝縮器として機能し、製氷器(40)が蒸発器として機能する。具体的に、圧縮機(31)から吐出配管(22)へ吐出された冷媒は、室外熱交換器(33)へ流入し、室外空気へ放熱して凝縮する。続いて、冷媒は、製氷用膨張弁(36)を通過する際に膨張してから製氷器(40)の冷媒流路(45)へ流入し、熱媒体流路(44)を流れる熱媒体から吸熱して蒸発する。その後、冷媒は、圧縮機(31)へ吸入されて圧縮される。
製氷器(40)の熱媒体流路(44)には、蓄熱タンク(15)の底部に存在する熱媒体が、導入配管(51)を通じて供給される。製氷器(40)の熱媒体流路(44)を流れる熱媒体は、その冷媒流路(45)を流れる冷媒によって冷却されて過冷却状態となる。また、製氷器(40)の熱媒体流路(44)を流れる熱媒体は、回転するダッシャー(46)によって撹拌される。その結果、熱媒体の過冷却状態が解消され、熱媒体に含まれる水が凍結して微細な粒子状の氷となる。熱媒体流路(44)において生成した粒子状の氷は、液体である熱媒体と共に、氷スラリーを構成する。
製氷器(40)において生成した氷スラリーは、供給配管(52)を通って蓄熱タンク(15)へ流入する。蓄熱タンク(15)には、氷スラリーに含まれる氷が蓄えられる。このように、製氷器(40)の熱媒体流路(44)では、熱媒体の冷却と、熱媒体の過冷却状態の解消との両方が行われる。
製氷装置(11)の熱媒体流路(44)では、熱媒体の過冷却状態を解消することによって、粒子状の氷が継続的に生成する。このため、製氷装置(11)の熱媒体流路(44)を流れる熱媒体の温度は、実質的に一定の値(例えば−3.0℃)に保たれる。また、熱媒体流路(44)を流れる熱媒体は、回転するダッシャー(46)によって継続的に撹拌される。このため、内筒(42)の内面で構成される伝熱面には、温度が実質的に一定の熱媒体が接触する。また、粒子状の氷は、主にダッシャー(46)の撹拌羽根(48)の後側の領域で生成する。このため、通常の運転状態では、内筒(42)の内面で構成される伝熱面に氷は付着しない。
〈第2製氷運転〉
第2製氷運転について、図6を参照しながら説明する。第2製氷運転は、製氷器(40)における製氷と、水熱交換器(35)における水の加熱とを同時に並行して行う運転である。
第2製氷運転では、四方切換弁(32)が第2状態に設定され、第1電磁弁(SV1)、第2電磁弁(SV2)、及び第5電磁弁(SV5)が閉鎖され、第3電磁弁(SV3)及び第4電磁弁(SV4)が開放される。また、第2製氷運転では、圧縮機(31)と製氷側ポンプ(53)とが作動し、利用側ポンプ(57)が停止する。製氷用膨張弁(36)の開度は、制御器(65)の製氷用膨張弁制御部(69)によって調節される。この製氷用膨張弁制御部(69)の動作の詳細は後述する。
冷媒回路(20)では、冷媒が循環し、蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(20)では、水熱交換器(35)が凝縮器として機能し、製氷器(40)が蒸発器として機能する。具体的に、圧縮機(31)から吐出配管(22)へ吐出された冷媒は、水熱交換器(35)の冷媒流路(35a)へ流入し、水流路(35b)を流れる水へ放熱して凝縮する。続いて、冷媒は、製氷用膨張弁(36)を通過する際に膨張してから製氷器(40)の冷媒流路(45)へ流入し、熱媒体流路(44)を流れる熱媒体から吸熱して蒸発する。その後、冷媒は、圧縮機(31)へ吸入されて圧縮される。
第1製氷運転中と同様に、製氷器(40)では、熱媒体流路(44)を流れる熱媒体の過冷却状態を解消することによって氷スラリーが生成する。そして、製氷器(40)で生成した氷スラリーは、蓄熱タンク(15)へ送られて蓄えられる。また、水熱交換器(35)において加熱された水(即ち、温水)は、給湯に利用される。
〈蓄熱利用冷房運転〉
蓄熱利用冷房運転について、図7を参照しながら説明する。蓄熱利用冷房運転は、蓄熱タンク(15)に蓄えられた氷を利用して冷房を行う運転である。
蓄熱利用冷房運転では、製氷装置(11)が停止し、蓄熱装置(14)が作動する。蓄熱装置(14)では、製氷側ポンプ(53)が停止する一方、利用側ポンプ(57)が作動し、一次側循環路(56)において熱媒体が循環する。
蓄熱タンク(15)から一次側循環路(56)へ流入した熱媒体は、利用側熱交換器(55)の一次側流路(55a)へ流入し、その二次側流路(55b)を流れる熱媒水から吸熱する。熱媒水から吸熱して温度が上昇した熱媒体は、一次側循環路(56)を流れて蓄熱タンク(15)へ送り返され、蓄熱タンク(15)に蓄えられた氷に上方から散布される。
二次側循環路(58)では、利用側熱交換器(55)とファンコイルユニットの間で熱媒水が循環し、利用側熱交換器(55)において冷却された熱媒水がファンコイルユニットへ供給される。
〈冷水生成運転〉
冷水生成運転について、図8を参照しながら説明する。冷水生成運転は、水熱交換器(35)における水の冷却だけを行う運転である。
冷水生成運転では、四方切換弁(32)が第1状態に設定され、第4電磁弁(SV4)及び第5電磁弁(SV5)が閉鎖され、第1電磁弁(SV1)、第2電磁弁(SV2)、及び第3電磁弁(SV3)が開放される。また、冷水生成運転では、圧縮機(31)が作動し、製氷側ポンプ(53)と利用側ポンプ(57)とが停止する。主膨張弁(34)の開度は、制御器(65)によって調節される。制御器(65)は、主膨張弁(34)の開度を、水熱交換器(35)の冷媒流路(35a)の出口における冷媒の過熱度が所定の目標値となるように調節する。
冷媒回路(20)では、冷媒が循環し、蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(20)では、室外熱交換器(33)が凝縮器として機能し、水熱交換器(35)が蒸発器として機能する。具体的に、圧縮機(31)から吐出配管(22)へ吐出された冷媒は、室外熱交換器(33)へ流入し、室外空気へ放熱して凝縮する。続いて、冷媒は、主膨張弁(34)を通過する際に膨張してから水熱交換器(35)の冷媒流路(35a)へ流入し、水流路(35b)を流れる水から吸熱して蒸発する。その後、冷媒は、圧縮機(31)へ吸入されて圧縮される。
水熱交換器(35)では、水流路(35b)を流れる水が冷媒によって冷却される。水熱交換器(35)において冷却された水(即ち、冷水)は、図外のファンコイルユニット等へ供給され、室内の冷房に利用される。
〈温水生成運転〉
温水生成運転について、図9を参照しながら説明する。温水生成運転は、水熱交換器(35)における水の加熱だけを行う運転である。
温水生成運転では、四方切換弁(32)が第2状態に設定され、第4電磁弁(SV4)及び第5電磁弁(SV5)が閉鎖され、第1電磁弁(SV1)、第2電磁弁(SV2)、及び第3電磁弁(SV3)が開放される。また、温水生成運転では、圧縮機(31)が作動し、製氷側ポンプ(53)と利用側ポンプ(57)とが停止する。主膨張弁(34)の開度は、制御器(65)によって調節される。制御器(65)は、主膨張弁(34)の開度を、室外熱交換器(33)の出口における冷媒の過熱度が所定の目標値となるように調節する。
冷媒回路(20)では、冷媒が循環し、蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(20)では、水熱交換器(35)が凝縮器として機能し、室外熱交換器(33)が蒸発器として機能する。具体的に、圧縮機(31)から吐出配管(22)へ吐出された冷媒は、水熱交換器(35)の冷媒流路(35a)へ流入し、水流路(35b)を流れる水へ放熱して凝縮する。続いて、冷媒は、主膨張弁(34)を通過する際に膨張してから室外熱交換器(33)へ流入し、室外空気から吸熱して蒸発する。その後、冷媒は、圧縮機(31)へ吸入されて圧縮される。
水熱交換器(35)では、水流路(35b)を流れる水が冷媒によって加熱される。水熱交換器(35)において加熱された水(即ち、温水)は、給湯に利用される。
−圧縮機制御部の制御動作−
制御器(65)の圧縮機制御部(68)は、圧縮機(31)の運転容量を調節する。ここでは、圧縮機制御部(68)が行う動作について説明する。
圧縮機制御部(68)は、圧縮機(31)の運転容量を10段階に調節する。上述したように、圧縮機(31)の運転容量は、圧縮機(31)の回転速度に実質的に比例する。そこで、圧縮機制御部(68)は、インバータの出力周波数を調節することによって、圧縮機(31)の回転速度を10段階に調節する。なお、ここに示した圧縮機(31)の回転速度に関する段階の数は、単なる一例である。
圧縮機(31)の回転速度の調節範囲は、図4に示すR0が下限値であり、同図に示すR9が上限値である。図4に示す各段階の圧縮機(31)の回転速度については、R0<R1<R2<R3<R4<R5<R6<R7<R8<R9の関係が成立する。圧縮機制御部(68)は、圧縮機(31)の回転速度を、図4に示すR0〜R9までの何れか一つに設定する。
図5に示す第1製氷運転において、圧縮機制御部(68)は、圧縮機(31)の回転速度をR9(即ち、調節範囲の上限値)に保持する。従って、第1製氷運転中は、圧縮機(31)の運転容量が最大に保たれる。
図6に示す第2製氷運転において、圧縮機制御部(68)は、水温センサ(64)の計測値が所定の目標温度範囲となるように、圧縮機(31)の回転速度を調節する。具体的に、圧縮機制御部(68)は、水温センサ(64)の計測値が目標温度範囲を下回っている場合は圧縮機(31)の回転速度を引き上げ、水温センサ(64)の計測値が目標温度範囲を上回っている場合は圧縮機(31)の回転速度を引き下げ、水温センサ(64)の計測値が目標温度範囲にある場合は圧縮機(31)の回転速度を保持する。
図8に示す冷水生成運転と、図9に示す温水生成運転のそれぞれおいて、圧縮機制御部(68)は、水温センサ(64)の計測値が所定の目標温度範囲となるように、圧縮機(31)の運転周波数を調節する。
−製氷用膨張弁制御部の制御動作−
制御器(65)の製氷用膨張弁制御部(69)は、第1製氷運転と第2製氷運転とにおいて、製氷用膨張弁(36)の開度を調節する。ここでは、製氷用膨張弁制御部(69)が行う動作について説明する。
製氷用膨張弁制御部(69)は、圧縮機(31)の運転容量が所定の基準容量以上である場合に第1制御動作を行い、圧縮機(31)の運転容量が所定の基準容量未満である場合に第2制御動作を行う。
上述したように、圧縮機(31)の運転容量は、圧縮機(31)の回転速度に実質的に比例する。そこで、製氷用膨張弁制御部(69)は、圧縮機(31)の回転速度が図4に示すR8又はR9に設定されている場合に第1制御動作を行い、圧縮機(31)の回転速度が図4に示すR0〜R7の何れかに設定されている場合に第2制御動作を行う。本実施形態では、回転速度がR8であるときの圧縮機(31)の運転容量が、基準容量となる。
〈第1制御動作〉
第1制御動作は、圧縮機(31)から吐出された冷媒の過熱度(即ち、圧縮機(31)の吐出過熱度)が所定の目標過熱度範囲となるように製氷用膨張弁(36)の開度を調節する開度制御動作である。
第1制御動作において、製氷用膨張弁制御部(69)は、吐出圧力センサ(62)の計測値と、吐出温度センサ(63)の計測値とを読み込む。製氷用膨張弁制御部(69)は、吐出圧力センサ(62)の計測値と冷媒の物性とを用い、吐出圧力センサ(62)の計測値における冷媒の飽和温度を算出し、その飽和温度を吐出温度センサ(63)の計測値から差し引くことによって、圧縮機(31)の吐出過熱度を算出する。
製氷用膨張弁制御部(69)は、圧縮機(31)の吐出過熱度の算出値SHdを、予め記憶する目標過熱度SHd_tgtと比較する。そして、製氷用膨張弁制御部(69)は、吐出過熱度の算出値SHdが目標過熱度範囲の下限値SHd_tgtよりも低い場合(SHd<SHd_tgt)は製氷用膨張弁(36)の開度を縮小し、吐出過熱度の算出値SHdが目標過熱度範囲の上限値(SHd_tgt+ds)よりも高い場合(SHd_tgt+ds<SHd)は製氷用膨張弁(36)の開度を拡大し、吐出過熱度の算出値SHdが目標過熱度範囲に入っている場合(SHd_tgt≦SHd≦SHd_tgt+ds)は製氷用膨張弁(36)の開度を保持する。
なお、第1制御動作において、製氷用膨張弁(36)の開度の調節範囲は制限されていない。従って、第1制御動作中の製氷用膨張弁制御部(69)は、全閉から全開までの範囲で製氷用膨張弁(36)の開度を設定できる。
ここで、図11に示す試験運転の結果から分かるように、本実施形態の製氷装置(11)と同形式の製氷器を備える製氷装置の冷媒回路では、膨張弁の開度を変更すると、それに伴って圧縮機の吐出過熱度が比較的大きく変化する。また、この吐出過熱度は、膨張弁の開度が大きくなって製氷器を通過する冷媒の質量流量が増大するにつれて低くなり、膨張弁の開度が小さくなって製氷器を通過する冷媒の質量流量が減少するにつれて高くなる。
上述したように、本実施形態の製氷用膨張弁制御部(69)は、圧縮機(31)の吐出過熱度が目標過熱度範囲となるように製氷用膨張弁(36)の開度を調節する。このため、目標過熱度範囲を適切に設定することによって、製氷器(40)を通過する冷媒の質量流量が、製氷器(40)に要求される熱交換量(即ち、冷却能力)に応じて適切に調節される。
〈第2制御動作〉
第2制御動作は、膨張弁の開度を、予め記憶する複数の指定開度の中から選択した指定開度に設定する動作である。その際、製氷用膨張弁制御部(69)は、その時点における圧縮機(31)の運転容量と圧縮機(31)の吸入圧力とに基づいて、複数の指定開度の中から一つの指定開度を選択する。
制御器(65)のメモリ(66)は、製氷用膨張弁制御部(69)が第2制御動作を行う際に用いる複数の指定開度を、図4に示すマトリックスとして記憶している。図4に示すマトリックスでは、圧縮機(31)の吸入圧力Psが10段階に区分されている。なお、ここに示した圧縮機(31)の吸入圧力に関する段階の数は、単なる一例である。
一方、上述したように、本実施形態の圧縮機(31)の回転速度は、R0〜R9の10段階に調節される。また、第2制御動作は、圧縮機(31)の回転速度がR0〜R7の何れかに設定されている場合に行われる。そこで、制御器(65)のメモリ(66)は、圧縮機(31)の吸入圧力Psに関する10の段階と、圧縮機(31)の回転速度の回転速度に関する8つの段階(R0〜R7)のそれぞれに対応して予め定められた80個の指定開度(Eij,i=0〜9,j=0〜7)を予め記憶している。この指定開度は、製氷用膨張弁(36)のパルスモータへ入力されるパルス数によって表されている。
図4に示す80個の指定開度は、製氷装置(11)を設計する際に予め試験を行うことによって定められる。この指定開度は、8段階の圧縮機(31)の回転速度と、10段階の圧縮機(31)の吸入圧力とのそれぞれにおいて、製氷装置(11)の冷媒回路(20)において行われる冷凍サイクルが最も適切となるように定められる。例えば、圧縮機(31)の吐出過熱度が適正な範囲に収まると共に、冷媒回路(20)における冷媒循環量が過剰になって凝縮器における冷媒の圧力損失が過大にならないような製氷用膨張弁(36)の開度を試験運転において探索し、圧縮機(31)の回転速度の各段階と圧縮機(31)の吸入圧力の各段階とにおいて最も適切な運転状態となる製氷用膨張弁(36)の開度が、指定開度として定められる。
また、図4に示す80個の指定開度Eijは、圧縮機(31)の回転速度が低くなるほど小さくなり、且つ圧縮機(31)の吸入圧力が低くなるほど小さくなる。つまり、図4に示す指定開度Eijについて、Ei0<Ei1<Ei2<Ei3<Ei4<Ei5<Ei6<Ei7(i=0〜9)という関係が成立し、且つE0j<E1j<E2j<E3j<E4j<E5j<E6j<E7j<E8j<E9j(j=0〜7)という関係が成立する。
ここで、圧縮機(31)の回転速度が比較的低い場合は、冷媒回路(20)を循環する冷媒の質量流量(即ち、冷媒循環量)が比較的少なくなる。そして、製氷用膨張弁(36)の開度を一定量だけ変更したときの冷媒循環量の変化量が比較的小さくなり、その結果、圧縮機(31)の吐出過熱度の変化量が比較的小さくなる。このため、圧縮機(31)の回転速度が比較的低い場合は、圧縮機(31)の吐出過熱度に基づいて製氷用膨張弁(36)の開度を適切に制御できないおそれがある。
そこで、圧縮機(31)の回転速度がR8未満である場合、本実施形態の製氷用膨張弁制御部(69)は、その時の圧縮機(31)の回転速度と圧縮機(31)の吸入圧力とに対応する一つの指定開度を図4に示すマトリックスから選択し、製氷用膨張弁(36)の開度を選択した指定開度に設定する。
−実施形態の効果−
上述したように、本実施形態の製氷装置(11)は、“圧縮機(31)と、膨張弁(36)と、熱媒体を冷却して過冷却状態にする冷却器を構成する製氷器(40)とが設けられて冷凍サイクルを行う冷媒回路(20)”と、“製氷器(40)により構成された冷却器において冷却された熱媒体の過冷却状態を解消させる過冷却解消部材であるダッシャー(46)”とを備え、粒子状の氷を含む氷スラリーが生成するように冷媒回路(20)とダッシャー(46)とを作動させる。
この本実施形態の製氷装置(11)において、制御器(65)の製氷用膨張弁制御部(69)は、製氷器(40)の出口における冷媒の過熱度ではなく、製氷器(40)を通過する冷媒の質量流量(即ち、冷媒回路(20)における冷媒循環量)に応じて比較的大きく変化する圧縮機(31)の吐出過熱度に基づいて、製氷用膨張弁(36)の開度を制御する。従って、本実施形態によれば、目標過熱度範囲を適切に設定することによって、製氷器(40)を通過する冷媒の質量流量を、製氷器(40)に要求される熱交換量(即ち、冷却能力)に応じて適切に調節することが可能となる。
また、本実施形態の製氷用膨張弁制御部(69)は、圧縮機(31)の回転速度が未満である場合に、膨張弁の開度を、予め記憶する複数の指定開度の中から選択した指定開度に設定する。従って、本実施形態によれば、冷媒回路(20)における冷媒循環量が少なくなり、圧縮機(31)の吐出過熱度に基づいて製氷用膨張弁(36)の開度を適切に制御できないおそれがある場合でも、製氷用膨張弁(36)を適切な開度に設定することが可能となる。
−実施形態の変形例1−
本実施形態の製氷装置(11)において、制御器(65)の製氷用膨張弁制御部(69)は、第2制御動作として、製氷用膨張弁(36)の開度の調節範囲を、第1制御動作中よりも狭い範囲で調節する動作を行ってもよい。つまり、本変形例の製氷用膨張弁制御部(69)は、第2制御動作における製氷用膨張弁(36)の開度の調節範囲を、第1制御動作における製氷用膨張弁(36)の開度の調節範囲よりも制限する。
本変形例の製氷装置(11)において、制御器(65)のメモリ(66)は、第2制御動作を行うために必要なデータを、図10に示すマトリックスとして記憶している。具体的に、メモリ(66)は、圧縮機(31)の吸入圧力Psに関する10の段階と、圧縮機(31)の回転速度の回転速度に関する8つの段階(R0〜R7)のそれぞれに対応して予め定められた80個の指定範囲(Eij±eij,i=0〜9,j=0〜7)を予め記憶している。
本変形例の製氷用膨張弁制御部(69)は、図10に示す80個の指定範囲の中の一つを、その時点における圧縮機(31)の運転容量と圧縮機(31)の吸入圧力とに基づいて選択する。そして、製氷用膨張弁制御部(69)は、製氷用膨張弁(36)の開度を、製氷用膨張弁(36)の開度を圧縮機(31)の吐出過熱度が目標過熱度範囲となるように、選択した指定範囲内で調節する。つまり、製氷用膨張弁制御部(69)は、製氷用膨張弁(36)の開度を、(Eij−eij)以上(Eij+eij)以下の範囲で調節する。
なお、図10に示すEij(i=0〜9,j=0〜7)の値は、図4に示す指定開度Eij(i=0〜9,j=0〜7)の値と同じである。また、指定範囲を定めるeij(i=0〜9,j=0〜7)の値は、圧縮機(31)の回転速度が低くなるほど小さくなり、且つ圧縮機(31)の吸入圧力が低くなるほど小さくなる。つまり、図10に示す値eijについて、ei0<ei1<ei2<ei3<ei4<ei5<ei6<ei7(i=0〜9)という関係が成立し、且つe0j<e1j<e2j<e3j<e4j<e5j<e6j<e7j<e8j<e9j(j=0〜7)という関係が成立する。
このように、本変形例の製氷用膨張弁制御部(69)は、第2制御動作における製氷用膨張弁(36)の開度の調節範囲を、第1制御動作における製氷用膨張弁(36)の開度の調節範囲よりも狭くしている。このため、製氷用膨張弁(36)の開度の調節範囲が適正な値から大幅にはずれる可能性が低く抑えられる。
−実施形態の変形例2−
本実施形態の製氷装置(11)では、圧縮機(31)の運転容量を、圧縮機(31)の回転速度を変更することによって調節しているが、他の手段によって圧縮機(31)の運転容量を調節してもよい。例えば、製氷装置(11)に複数台の圧縮機(31)が設けられている場合は、圧縮機(31)の運転台数を変更することによって、各圧縮機(31)の運転容量の合計を調節してもよい。