JP4867851B2 - 冷凍機及びその運転方法並びに空調設備及びその運転方法 - Google Patents

冷凍機及びその運転方法並びに空調設備及びその運転方法 Download PDF

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本発明は、圧縮機と凝縮器と蒸発器とに冷媒を流通させる冷凍サイクルを備える冷凍機及びその運転方法に関し、より詳しくは、蓄熱式空調システムに用いる水和物スラリを製造する冷凍機及びその運転方法並びに冷凍機を備えた空調設備及びその運転方法に関する。
なお、本発明において、次に掲げる用語は、別段の説明がなされる場合を除き、以下のとおり解釈されるものとする。
(1) 「包接水和物」には、準包接水和物が含まれる。
(2) 「包接水和物」は「水和物」と略称される場合がある。
(3) 「スラリ」とは、液体中に固体粒子が分散又は懸濁した状態又はその状態にある物質をいう。沈降しがちな固体粒子を浮遊状態とするために界面活性剤を添加したり、機械的に攪拌したりすることもあるが、液体中に固体粒子が分散又は懸濁している限り、「スラリ」という。液体中に固体粒子が分散又は懸濁している限り、その分散又は懸濁が不均一なものであっても、「スラリ」という。
(4) 「包接水和物のスラリ」は「包接水和物スラリ」又は「水和物スラリ」と略称される場合がある。
(5) 「原料水溶液」とは、包接水和物のゲスト化合物を含む水溶液をいう。当該ゲスト化合物とは別の微量物質が添加されていても「原料水溶液」という。また、包接水和物が分散又は懸濁していても、即ち水和物スラリの様相を呈していても、包接水和物のゲスト化合物を含む水溶液であれば「原料水溶液」という。
(6) 「水和物生成温度」とは、原料水溶液を冷却したときに、包接水和物が生成すべき温度をいう。原料水溶液のゲスト化合物の濃度により包接化合物が生成すべき温度が変動する場合であっても、これを「水和物生成温度」という。なお、簡便のため、「水和物生成温度」を包接水和物又は水和物の「凝固点」という場合がある。
水和物スラリ製造用蒸発器を備える冷凍機で原料水溶液を冷却してできる包接水和物のスラリを冷熱媒体として使用する空調設備(水和物スラリを熱利用系の熱交換器に直接供給する設備に限らない。以下「水和物スラリ空調設備」という場合がある)には、これを夜間に運転して水和物スラリを製造し、蓄熱槽に蓄え、昼間この蓄えられた水和物スラリを利用して空調を行うようにした蓄熱設備を具備するものがある(以下、この蓄熱設備を備える水和物スラリ空調設備を「水和物スラリ蓄熱空調設備」という場合がある)(特許文献1、特許文献2)。
このような水和物スラリ空調設備においては、水和物スラリ製造用蒸発器で原料水溶液が冷却されて水和物スラリが製造される。原料水溶液におけるゲスト化合物の濃度に対応した水和物生成温度が0℃以上であるが故に、水和物スラリを製造するための水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度は0℃以上に設定される。そして、その冷媒との熱交換により製造される水和物スラリの温度(理想的に伝熱面積が無限大であれば水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と同義であるが、現実的には水和物スラリ製造用蒸発器の出口における水和物スラリの温度の意とする)は、空調のための蓄熱材としての用途から実用上4〜8℃程度に設定されることが多い。
例えば、臭化テトラnブチルアンモニウム(以下「TBAB」という場合がある)をゲスト化合物とする包接水和物のスラリの場合、TBABの濃度が11wt%の水溶液を冷却すると、水和物生成温度の約7℃になると当該水溶液の中に包接水和物が生成し始め、これが分散又は懸濁してスラリとなる。そして、5℃まで至ると水和物スラリが蓄積する熱量(顕熱相当の熱エネルギーと潜熱相当の熱エネルギーの総和としての熱量)は、単位体積あたり、冷水の約2倍となる。それ故、蓄熱量の増大という長所を活かすという実用上の要請からすれば、冷媒との熱交換により製造される水和物スラリの温度が4〜8℃程度に設定されてくるのは自然なことといえる。
一方、冷水製造用の蒸発器を備える冷凍機で冷却した水を冷熱媒体として使用する空調設備(以下「冷水空調設備」という場合がある)では、製造した冷水を蓄えて事後に利用する蓄熱設備を有すると否とに拘らず、冷媒の温度(正確には冷媒蒸発温度)を下げ過ぎると冷水を流通させる冷水管内の冷水が凍結し、蒸発器を損傷させたり、設備の健全な運転に支障を来たしたりするおそれがある(以下、これらの問題を「凍結問題」と総称する場合がある)。
このため、冷媒との熱交換により製造される冷水の温度(理想的に伝熱面積が無限大であれば冷水製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と同義であるが、現実的には冷水製造用蒸発器の出口における冷水の温度の意)は4〜7℃が限度とされ(特許文献3、特許文献4)、実用上は4〜8℃程度に設定されることが多い。
特開平11−351775号公報 特開2004−93052号公報 特公平7−122524号公報 特許3467407号公報
水和物スラリ空調設備を構成する冷凍機が水和物スラリを製造し蓄熱するためだけに夜間しか使用されないのであれば、昼間不使用となる分だけ当該冷凍機は有効に活用されていない。従って設備費用や運転費用に対する効果を十分に発揮できていないことになる。
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、水和物スラリ空調設備を構成する冷凍機を有効に活用することができる冷凍機及びその運転方法並びに冷凍機を備えた空調設備及びその運転方法に係る技術を提供することを目的とする。
従来では、冷凍機は蓄熱するためだけに夜間しか使用されず、昼間不使用となる分だけ有効に活用されていない問題を解決するために、少なくとも昼間において当該冷凍機が別の目的のために使用されるように工夫を施すことは合理的であり、有益である。しかし、そのような工夫を行うにしても、水和物スラリの製造という本来の目的の達成に支障を与えるような工夫は避けるべきであり、また当該冷凍機やそれらの運転に大幅な変更が必要とされない工夫であるべきである。
一方、水和物スラリ空調設備は水和物スラリが蓄積する潜熱相当の熱エネルギーを使用する設備であり、冷水空調設備は冷水が蓄積する顕熱相当の熱エネルギーを使用する設備であるので、ある意味根本的部分が互いに異なる異種の空調設備といえる。同様のことはこれらの空調設備で採用されている水和物スラリ製造用蒸発器を備える冷凍サイクル(以下、「水和物スラリ製造用冷凍サイクル」という場合がある)と冷水製造用蒸発器を備える冷凍サイクル(以下、「冷水製造用冷凍サイクル」という場合がある)について当て嵌まり、ある意味根本的部分が互いに異なる異種の冷凍サイクルといえる。
しかし、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとはかなり類似している。両冷凍サイクルは、いずれも、圧縮機と凝縮器と蒸発器との間を冷媒が流通する配管で連結することで構成される冷凍サイクルであるが、類似点はそのような基本構造上の特徴だけにとどまらない。冷水空調設備において凍結問題を回避するために必要な冷媒の蒸発温度と水和物スラリを製造するための冷媒の蒸発温度は、いずれも0℃以上である。また、冷水製造用蒸発器により製造される冷水について設定される実用上の温度範囲と、水和物スラリ製造用蒸発器により製造される水和物スラリについて設定される実用上の温度範囲は、いずれも4〜8℃である。このため、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器には、蒸発器又は熱交換器としての方式や構造に違いの有無に拘らず、蒸発器として要求される基本性能には互いに似通った部分が少なからず認められる(以下においては、これらの技術的事項を、単に、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルの「類似性」と総称する場合がある)。
本発明は、この両冷凍サイクルの類似性に鑑みてなされたものであり、水和物スラリ空調設備または水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する機器・装置を冷水製造用にも使用することができる冷凍機及びその運転方法に係る技術を見出してなされたものである。
本発明の第1の形態に係る冷凍機は、圧縮機と凝縮器と蒸発器との間を冷媒が流通する配管で連結する冷凍サイクルを構成する冷凍機であって、前記蒸発器は、水和物スラリを製造するための水和物スラリ製造用蒸発器と、冷水を製造するための冷水製造用蒸発器とが前記凝縮器と前記圧縮機との間に択一的に接続可能に構成されており、
水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとを択一的に構成すると共に前記圧縮機及び前記凝縮器を前記水和物スラリ製造用冷凍サイクルと前記冷水製造用冷凍サイクルにおいて兼用し、前記水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける冷媒蒸発温度と前記冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒蒸発温度との差が3度未満に設定されていることを特徴とするものである。
なお、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とを単一の冷凍サイクルを構成する圧縮機と凝縮器との間に択一的に接続可能にするための手段は、配管の開閉手段(バルブ)、その開閉動作を可能にする駆動手段及びその駆動手段の動作を制御する駆動制御手段を備える。当該開閉手段の開閉動作が手動で行われる場合には、駆動手段と駆動制御手段は不要である。
本発明の第2の形態に係る冷凍機は、第1の形態に係る冷凍機であって、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際に、前記冷媒の蒸発温度の変動を小さくする制御手段を備え、該制御手段は水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度を計測し、計測した冷媒蒸発温度と設定値とを比較し偏差をゼロとするように圧縮機の出力を制御することを特徴とするものである。
本発明の第3の形態に係る冷凍機は、第1又は第2の形態に係る冷凍機であって、前記冷媒の蒸発温度が0℃以上であることを特徴とするものである。すなわち水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒の蒸発温度と冷水製造用蒸発器における冷媒の蒸発温度とが0℃以上であることを特徴とするものである。
本発明の第4の形態に係る冷凍機は、第1乃至第3のいずれかの形態に係る冷凍機であって、前記水和物スラリ製造用蒸発器が満液式蒸発器であることを特徴とするものである。
本発明の第5の形態に係る冷凍機は、第1乃至第3のいずれかの形態に係る冷凍機であって、前記水和物スラリ製造用蒸発器は、前記冷媒と接する外壁面と水和物のゲスト化合物の水溶液と接する内壁面を備える伝熱管を備え、前記内壁面に付着する前記水和物の一部が前記水溶液の流れの力により取り除かれ、その残部が前記内壁面を覆うように残る満液式蒸発器であることを特徴とするものである。
本発明の第6の形態に係る冷凍機は、第4の形態に係る冷凍機であって、前記満液式蒸発器が、前記冷媒と接する外壁面と水和物のゲスト化合物の水溶液と接する内壁面とを備える伝熱管を複数個備え、前記内壁面に付着する前記水和物の一部が前記水溶液の流れの力により取り除かれ、その残部が前記内壁面を覆うように残る多管式熱交換器であることを特徴とするものである。
なお、本発明の第5及び第6の各形態における水和物スラリ製造用の満液式蒸発器には、伝熱管の内部を流通する水和物のゲスト化合物の水溶液の流速を任意に設定するための流速設定装置が付随していてもよい。
本発明の第7の形態に係る冷凍機の運転方法は、第1乃至第6の形態のいずれかに係る冷凍機の運転方法であって、蓄熱運転の際に前記水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する工程と、空調運転の際に前記冷水製造用蒸発器により冷水を製造する工程とを有することを特徴とするものである。
なお、後者の工程は、空調運転の際の追掛運転時に前記冷水製造用蒸発器により冷水を製造する工程であってもよい。
本発明の第8の形態に係る冷凍機の運転方法は、第1乃至第6の形態のいずれかに係る冷凍機の運転方法であって、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際に、前記冷媒の蒸発温度をその変動が小さくなるように制御する工程を有することを特徴とするものである。
本発明の第9の形態に係る冷凍機の運転方法は、第5又は第6の形態に係る運転方法であって、前記冷媒の蒸発温度の変動が小さくなるように前記圧縮機を制御する工程を有することを特徴とするものである。
本発明の第10の形態に係る空調設備は、第1乃至第6の形態のいずれかに係る冷凍機と、水和物スラリを蓄える蓄熱槽と、前記水和物製造用蒸発器において製造された水和物スラリを前記蓄熱槽に供給する第1の経路と、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第2の経路と、前記冷水製造用蒸発器において製造した冷水が有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第3の経路とを備えることを特徴とするものである。
本発明の第11の形態に係る空調設備の運転方法は、第10の形態に係る空調設備の運転方法であって、夜間または蓄熱運転の際に、前記水和物製造用蒸発器において水和物スラリを製造し、前記第1の経路を通じて前記蓄熱槽に蓄える工程と、昼間または空調運転の際に、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを前記第2の経路を通じて前記熱利用側負荷に供給する工程と有することを特徴とするものである。
本発明の第12の形態に係る空調設備の運転方法は、第11の形態に係る運転方法であって、昼間または空調運転の際に、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを前記熱利用側負荷に供給した後、前記冷水製造用蒸発器において製造した冷水が有する熱エネルギーを前記第3の経路を通じて前記熱利用側負荷に供給する工程を有することを特徴とするものである。
既述のとおり、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルには類似性が認められる。それ故、水和物スラリ製造用蒸発器を備える冷凍サイクルにおいて当該水和物スラリ製造用蒸発器を冷水製造用蒸発器で置換すれば、又は当該冷凍サイクルを構成する圧縮機、凝縮機及び冷媒が流通する配管の一部と冷水製造用蒸発器とを組み合わせれば、冷水製造用蒸発器を備える冷凍サイクルを構成することができる。
なお、逆の見方をすれば、冷水製造用蒸発器を備える冷凍サイクルにおいて当該冷水製造用蒸発器を水和物スラリ製造用蒸発器で置換すれば又は当該冷凍サイクルを構成する圧縮機、凝縮機及び冷媒が流通する配管の一部と水和物スラリ製造用蒸発器とを組み合わせれば、水和物スラリ製造用蒸発器を備える冷凍サイクルを構成することができるともいえる。
また、水和物スラリ製造用蒸発器も冷水製造用蒸発器も概ね同じ冷媒蒸発温度で運転することができるので、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器との間の切り替えの前後で、水和物スラリ製造用蒸発器を備える冷凍サイクルと冷水製造用蒸発器を備える冷凍サイクルにおいて兼用されている圧縮機の運転の仕方を変更する又は大幅に変更する必要がない。
従って、圧縮機、凝縮機及び冷媒が流通する配管の一部を兼用し、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とを択一的に接続する又は切り替えることにより構成される冷凍サイクルにより、大掛かりな変更を施すことなく、水和物スラリ製造用冷凍サイクル及び冷水製造用冷凍サイクルを択一的に実現することができる。
しかして、本発明によれば、冷凍サイクルを構成する蒸発器として水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とが当該冷凍サイクルに択一的に接続されるので、水和物スラリ空調設備及び冷水空調設備のいずれにも適用可能な単一の冷凍機を実現することができる。また、このとき、当該冷凍サイクルに水和物スラリ製造用蒸発器が接続されてなる冷凍機と冷水製造用蒸発器が接続されてなる冷凍機との間で圧縮機、凝縮機及び冷媒が流通する配管の一部が兼用されるので、両冷凍機を別々に用意し、択一的に切り替えて運転する場合に比べて設備費用を低減することができ、従って費用対効果(設備費用または運転費用に対して得られる効果の割合)を高めることができる。
本発明は、例えば水和物スラリ空調設備と冷水空調設備とを組み合わせることにより空調能力の維持又は増強を図ろうとする場合に特に有益である。このような組み合わせの設備においては、水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と水和物スラリの出口温度を、それぞれ、冷水製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と冷水の出口温度と概ね同じになるように設計する必要に迫られることがある。しかし、その場合であっても、本発明に係る冷凍機又はその運転方法を適用することにより、単一の冷凍機により、水和物スラリ空調設備及び冷水空調設備のそれぞれを構成することができ、しかも設備費用を相対的に低減し、費用対効果を相対的に高めることができる。
また、上記のような組み合わせの空調設備において水和物スラリを蓄えるための蓄熱槽を設け、比較的安価な夜間電力により、冷水よりも蓄熱量が多い水和物スラリを製造し、これを蓄熱槽に蓄えるとともに、昼間、この蓄熱槽に蓄えられている水和物スラリを利用し、蓄えられた水和物スラリだけでは不足する冷熱を補うために比較的高額な昼間電力により冷水を製造し、これを利用する運転(追掛運転)を行う場合には、昼間時の冷凍機の運転は負荷変動に応じた追従運転となり効率の悪い部分負荷運転となる。一方、夜間時の冷凍機の運転は効率の良い定格運転とすることができる。このような二つの運転の仕方が必要になる単一の空調設備であっても、本発明に係る冷凍機又はその運転方法を適用して、単一の冷凍機により、これを構成することができ、設備費用を相対的に低減し、費用対効果を相対的に高めることができる。
本発明の各形態が奏する作用効果は、以下のとおりである。
本発明の第1の形態によれば、水和物スラリ空調設備と冷水空調設備のいずれにも、また、水和物スラリを製造する蓄熱運転と冷水を製造する空調運転(特に追掛運転)を行う空調設備にも適用可能な単一の冷凍機を、相対的に低い設備費用により又は高い費用対効果により実現することができる。
本発明は、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとの間の類似性を基礎とするものの、その類似性から多少逸脱しても、本発明が予定する作用効果を奏する。尤も、本発明に係る冷凍機としてより好ましい態様は、本発明の第1の形態である。即ち、水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と冷水製造用蒸発器における冷媒蒸発温度との差が3度未満(好ましくは2度以下)であれば、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器との間の切り替えの前後で、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルにおいて兼用されている圧縮機の運転の仕方を大幅に変更する必要がない。
本発明の第3の形態によれば、冷媒の蒸発温度が0℃以上であるので、冷凍サイクルを構成する蒸発器が水和物スラリ製造用蒸発器であっても水和物スラリを製造できることは勿論のこと、冷凍サイクルを構成する蒸発器が冷水製造用蒸発器であっても凍結問題を起こすことなく冷水を製造することができる冷凍機を実現することができる。
水和物生成温度は原料水溶液の濃度により変動し、その濃度は原料水溶液から包接水和物が生成するに従って変動するので、水和物スラリ製造用蒸発器において冷媒の蒸発温度をその水和物生成温度以下に制御して、水和物スラリが製造される。ここで、水和物スラリ製造用蒸発器は、冷媒の温度(特に蒸発温度)の制御が容易で、その制御の精度が高いものであることが望まれる。この意味から、伝熱効率が高く、冷媒蒸発温度の局所的低下を防止でき、蒸発器内の冷媒蒸発温度を均一し易く、冷媒の温度(特に冷媒の蒸発温度)の制御の精度が高い満液式蒸発器は水和物スラリ製造用蒸発器として好適といえる。それ故、本発明の第4の形態によれば、水和物スラリ製造に好適な冷凍機を実現することができる。
本発明の第5の形態によれば、本発明に係る冷凍機の一態様を実現することができる。即ち、第1乃至第3のいずれかの形態に係る冷凍機において、水和物スラリ製造用蒸発器を満液式蒸発器とし、伝熱管の内壁面に付着する包接水和物の一部が水和物のゲスト化合物の水溶液(原料水溶液という)の流れの力により取り除かれ、その残部が当該内壁面を覆うように残るようにする。これにより、冷媒との熱交換の過程で伝熱管の内壁面に付着する包接水和物の量の増加が、その伝熱管の内部を流れる原料水溶液の流れの力により抑制されるようになるので、水和物スラリを長時間に亘り又は連続して、安定的に製造することができる冷凍機を実現することができる。
本発明の第6の形態によれば、本発明に係る冷凍機の他の態様を実現することができる。即ち、第4の形態に係る冷凍機において、満液式蒸発器を多管式熱交換器とし、各伝熱管の内壁面に付着する包接水和物の一部が原料水溶液の流れの力により取り除かれ、その残部が当該内壁面を覆うように残るようにする。これにより、冷媒との熱交換の過程で各伝熱管の内壁面に付着する包接水和物の量の増加が、その伝熱管の内部を流れる原料水溶液の流れの力により抑制されるようになるので、水和物スラリを長時間に亘り又は連続して、安定的に製造することができる冷凍機を実現することができる。
なお、第5及び第6の各形態における水和物スラリ製造用の満液式蒸発器に流速設定装置を設けると、冷媒との熱交換の過程で伝熱管の内壁面に付着する包接水和物の一部を原料水溶液の流れの力により取り除き、その残部を当該各伝熱管の内壁面を覆うように残すのにより適した原料水溶液の流速を設定することができ、故に水和物スラリを長時間に亘り又は連続して、安定的に製造することができる冷凍機の実現に資することができる。
本発明の第7の形態によれば、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とを択一的に切り替え可能な単一の冷凍サイクルを備える冷凍機を用いて、夜間には水和物スラリを製造し、昼間には冷水を製造することができる。
先述の例、即ち水和物スラリを蓄えるための蓄熱槽を備える水和物スラリ空調設備と冷水空調設備とを組み合わせた空調設備では、本発明の第7の形態に係る冷凍機の運転方法は特に有益である。第7の形態によれば、蓄熱運転時には水和物スラリを製造し、これを蓄熱槽に蓄えておき、空調運転時には、当該蓄熱槽に蓄えられている水和物スラリを冷熱媒体として利用するとともに、冷熱の不足分を補充するために冷水を製造する運転又は追掛運転を行うことができる。これにより、効率の良い空調を行うことができる。
冷水製造用蒸発器において冷水を製造する場合には、冷媒蒸発温度が0℃以上であれば氷は生成せず、蒸発器の伝熱面に付着することもないので、凍結問題が生じることはない。一方、水和物スラリ製造用蒸発器において水和物スラリを製造する場合には、冷媒蒸発温度が0℃以上であっても水和物生成温度以下であれば、包接水和物が生成し、蒸発器の伝熱面に付着する。
このとき、水和物の付着の程度次第では、原料水溶液が冷却され難くなる、管閉塞が起こる等の理由により水和物スラリ製造用蒸発器の健全な運転に支障が生じてくるので、水和物の付着の進行を抑制するような工夫が別途望まれてくる。
しかし、そのような工夫を施しても又は蒸発器の伝熱面への水和物の付着が避け難いものとしてこれを受け入れたとしても、冷媒蒸発温度が変動すると原料水溶液の冷却のされ方が変動し、蒸発器の伝熱面への包接水和物の付着状態が変動するため、水和物の生成が不安定になり、総じて水和物スラリの製造が安定しない。これに対し、本発明の第8の形態によれば、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際、冷媒蒸発温度をその変動幅が小さなるように制御するので、水和物スラリを安定的に製造できる冷凍機の運転を実現することができる。
なお、冷媒蒸発温度をその変動幅が小さくなるように制御することには、結果として冷媒蒸発温度の変動幅が小さくなる限り、冷媒蒸発温度が一定、所定範囲内又は所定値以上になるように制御することが含まれる。
第5及び第6の各形態に係る冷凍機における水和物スラリ製造用蒸発器を用いて水和物スラリを連続的に製造する際には、伝熱管の内壁面にある程度の包接水和物を意図的に残したままにする。しかし、伝熱管の内壁面に付着したまま残される水和物の付着厚が変動すると、伝熱管の圧力損失が変動し、それに応じて水和物スラリ製造用蒸発器の運転状態が変動し、不安定になる。
これに対し、第9の形態によれば、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際に、冷媒の蒸発温度の変動幅が小さくなるように圧縮機を制御するので、水和物スラリを長時間に亘り安定的に製造できる冷凍機の運転を実現することができる。
本発明の第10の形態によれば、本発明に係る冷凍機を備える空調設備を実現することができる。この空調設備は、第1及び第2の経路による水和物スラリ蓄熱空調設備としての機能と、第3の経路による冷水空調設備としての機能とを兼ね備えたものとなる。水和物スラリ蓄熱空調設備としての機能は、第1及び第3の経路により実現され、冷水空調設備としての機能は第3の経路により実現される。第1の経路は、本発明に係る冷凍機における冷凍サイクルに水和物スラリ製造用蒸発器が接続されているときに構成され、第3の経路は当該冷凍サイクルに冷水製造用蒸発器が接続されているときに構成される。
本発明の第11の形態によれば、第10の形態に係る空調設備において、夜間または蓄熱運転の際に、第1の経路を通じて水和物スラリを蓄熱槽に蓄え、昼間または空調運転の際に、蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを第2の経路を通じて熱利用側負荷に供給することができる。
本発明の第12の形態によれば、昼間または空調運転の際に、熱利用側負荷において必要とされる熱エネルギーを蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーだけでは賄いきれない場合、冷水製造用蒸発器において冷水を製造し、その冷水が有する熱エネルギーを第3の経路を通じて熱利用側負荷に供給することができる。
以下、図を参照しつつ本発明に係る冷凍機及びその運転方法の実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
<冷凍機の基本構成>
図1は、本発明に係る冷凍機の一実施の形態の概略図である。図中、1は遠心式圧縮機、2は遠心式圧縮機1を駆動する電動機、3は凝縮器、4は冷水製造用蒸発器、5は水和物スラリ製造用蒸発器、6は冷水製造用冷凍サイクルにおける膨張弁又はオリフィス、7は水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける膨張弁又はオリフィス、8は冷媒液遮断弁、9は冷媒ガス遮断弁である。8a及び8bはそれぞれ冷水製造用冷凍サイクル及び水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する冷媒液遮断弁8、9a及び9bはそれぞれ冷水製造用冷凍サイクル及び水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する冷媒ガス遮断弁9である。
図中の実線矢印は、冷水製造用蒸発器4を使用して冷水を製造しているときの冷媒の流れ方向を示し、点線矢印は、水和物スラリ製造用蒸発器5を使用して水和物スラリを製造しているときの冷媒の流れ方向を示す。冷媒としてはR134aやR123が好適である。
冷水製造用冷凍サイクルは、遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3、冷媒液遮断弁8a、膨張弁又はオリフィス6、冷水製造用蒸発器4、冷媒ガス遮断弁9a及びこれらを接続する冷媒用配管を用い、遠心式圧縮機1、凝縮器3、冷媒液遮断弁8a、膨張弁又はオリフィス6、冷水製造用蒸発器4、冷媒ガス遮断弁9a、遠心式圧縮機1、・・・の順に冷媒が循環することによって実現される。冷水製造用蒸発器4では、送込まれてきた水が冷媒との熱交換により冷却され、冷水となって送出される。
水和物スラリ製造用冷凍サイクルは、遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3、冷媒液遮断弁8b、膨張弁又はオリフィス7、水和物スラリ製造用満液式蒸発器5、冷媒ガス遮断弁9b及びこれらを接続する冷媒用配管を用い、遠心式圧縮機1、凝縮器3、冷媒液遮断弁8b、膨張弁又はオリフィス7、水和物スラリ製造用蒸発器5、冷媒ガス遮断弁9b、遠心式圧縮機1、・・・の順に冷媒が循環することによって実現される。水和物スラリ製造用蒸発器5では、送込まれてきた原料水溶液が冷媒との熱交換により冷却され、水和物スラリとなって送出される。
水和物スラリ製造用蒸発器5の型式は特に問わないが、満液式であることが好ましい。水和物生成温度は、原料水溶液の濃度により変動し、その濃度は原料水溶液から包接水和物が生成するに従って変動するので、水和物スラリ製造用蒸発器は、冷媒の温度(特に蒸発温度)の制御が容易で、その制御の精度が高いものであることが望まれる。この意味から、伝熱効率が高く、冷媒の温度(特に冷媒の蒸発温度)の制御の精度が高い満液式蒸発器は水和物スラリ製造用蒸発器として好適といえる。
両冷凍サイクルの切替手段は、膨張弁又はオリフィス6、7、冷媒液遮断弁8(8a、8b)及び冷媒ガス遮断弁9(9a、9b)並びにこれらを駆動する駆動装置(K1〜K4)及び該駆動装置を制御する制御装置CTL(図示せず)から構成される。この切替手段により、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とが冷凍サイクルに択一的に接続可能となり、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとの切り替えが可能になり、全体として単一の冷凍サイクルが構成されることになる。そして、当該単一の冷凍サイクルを構成する少なくとも遠心式圧縮機1及び凝縮器3、より詳しくは遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3及びこれらを接続する冷媒用配管は、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとの間で兼用される。
<冷凍機の動作及び運転方法>
次に、図1に示す冷凍機の動作及び運転方法について説明する。冷媒液遮断弁(8a、8b)及び冷媒ガス遮断弁(9a、9b)は、冷媒の遮断のみを目的とする場合には、いずれか一方で足りるが、以下の説明においては、両遮断弁があるものとする。
(1)水和物スラリ製造用蒸発器5を使用して水和物スラリを製造する場合
まず、切替手段により、冷媒液遮断弁8a及び冷媒ガス遮断弁9aの少なくとも一方を閉とし、膨張弁又はオリフィス6を閉(動作不能)の状態にするとともに、冷冷媒液遮断弁8b及び冷媒ガス遮断弁9bを開とし、膨張弁又はオリフィス7を開(動作可能)の状態にする。これにより水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流通経路(図中の点線矢印に沿った経路)が構成される。
次に、遠心式圧縮機1を電動機2で駆動させ、冷媒ガスを圧縮する。遠心式圧縮機1で圧縮された冷媒ガスは、凝縮器3に送られて、そこで冷却水によって冷却される。この冷却により冷媒はほぼ飽和液になる。引き続き冷媒液は、膨張弁又はオリフィス7に送られ、減圧される。減圧された冷媒液は、水和物スラリ製造用満液式蒸発器5に送られ、当該水和物スラリ製造用蒸発器5内の伝熱管を流れる原料水溶液を冷却して包接水和物を生成させ、これが原料水溶液に分散又は顕濁してなる水和物スラリにし、自らは蒸発しガス化する。ガス化した冷媒は、再び遠心式圧縮機1に送られ、以後、以上の循環が繰り返される。それ故、冷媒は水和物スラリ製造用蒸発器5のみを流れる。
この結果、水和物スラリ製造用満液式蒸発器5において原料水溶液が冷却されて水和物スラリが製造される。
(2)冷水製造用蒸発器4を使用して冷水を製造する場合
まず、切替手段により、冷媒液遮断弁8b及び冷媒ガス遮断弁9bの少なくとも一つを閉とし、膨張弁又はオリフィス7を閉(動作不能)の状態とし、冷媒液遮断弁8a、冷媒ガス遮断弁9aをすべて開とし、膨張弁又はオリフィス6を開(動作可能)の状態にする。これにより冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流通経路(図中の実線矢印に沿った経路)が構成される。
次に、遠心式圧縮機1を電動機2で駆動させ、冷媒ガスを圧縮する。遠心式圧縮機1で圧縮された冷媒ガスは、凝縮器3に送られて、そこで冷却水によって冷却される。この冷却により冷媒はほぼ飽和液になる。引き続き冷媒液は、膨張弁又はオリフィス6に送られ、減圧される。減圧された冷媒液は、冷水製造用蒸発器4に送られ、当該蒸発器4内の伝熱管を流れる水を冷却して冷水にし、自らは蒸発しガス化する。ガス化した冷媒は、再び遠心式圧縮機1に送られ、以後、以上の循環が繰り返される。それ故、冷媒は冷水製造用蒸発器4のみを流れる。
この結果、冷水製造用蒸発器4において供給された水が冷却されて冷水が製造される。
(3)冷水及び水和物スラリの製造時の温度条件
(3−1) 冷水製造用蒸発器4及び水和物スラリ製造用満液式蒸発器5においてそれぞれ製造される冷水及び水和物スラリの各温度(いずれも各蒸発器4、5における出口温度)は、4〜8℃程度に設定される。冷水空調設備の場合には、既述の凍結問題を回避する必要上4℃が下限となり、一方、上限は、冷房負荷側設備(空調機、AHU、FCUなど)において要求される温度が一般的に7〜8℃であることから8℃程度となる。水和物スラリ空調設備の場合も、同様である。
(3−2) 図1に示す冷凍機の実施の形態において、冷水製造用蒸発器4と水和物スラリ製造用蒸発器5の各冷媒蒸発温度が同じになるように設計すれば、遠心式圧縮機1の運転条件は、それが水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成している場合であれ、冷水製造用冷凍サイクルを構成している場合であれ、同じにすることができる。
例えば、冷水製造用蒸発器4における冷媒蒸発温度及び冷水の出口温度をそれぞれ2℃及び5℃とし、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度及び水和物スラリの出口温度をそれぞれ2℃及び5℃となるように設計すれば、両蒸発器4、5における冷媒蒸発温度はいずれも2℃なので、遠心式圧縮機1の運転条件は、それが水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成している場合であれ、冷水製造用冷凍サイクルを構成している場合であれ、同じになる。
それ故、上記のような設計を行えば、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとの間で圧縮機1が兼用されるだけでなく、いずれの冷凍サイクルに切り替わったとしても、それに応じて圧縮機1の運転条件を変更する必要がなくなる。
<小 括>
従って、図1に示す冷凍機の実施の形態においては、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とは切替手段により単一の冷凍サイクルに択一的に接続可能となり、冷水製造用冷凍サイクルと水和物スラリ製造用冷凍サイクルとが択一的に切り替わる。それ故、水和物スラリ空調設備と冷水空調設備のいずれにも、また、水和物スラリを製造する夜間運転と冷水を製造する昼間運転(特に追掛運転)を行う空調設備にも適用可能な単一の冷凍機となる。そして、両冷凍サイクルにおいては、少なくとも遠心式圧縮機1及び凝縮器3が、より詳しくは遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3及びこれらを接続する冷媒用配管が兼用される。それ故、相対的に低い設備費用又は高い費用対効果を実現することができる。
なお、図中の遠心式圧縮機1は単段式で描かれているが、多段式でもよい。そして単段式よりも多段式の方が高額になるので、圧縮機を兼用することにより奏する設備費用の相対的低減又は費用対効果の相対的増加という本発明の効果は単段式よりも多段式の圧縮機の方が顕著となる。
図1に示す冷凍機においては、二つの冷媒用遮断弁(8a、8b)の機能をP点に配置した一つの三方弁により置き換えることができる。また、二つの冷媒ガス用遮断弁(9a、9b)の機能をQ点に配置した一つの三方弁により置き換えることができる。
なお、膨張弁又はオリフィス6及び7は、それぞれ、駆動装置(図示せず)を備え、制御装置CRL(図示せず)により開度を制御可能になるようにしてもよい。これにより、各冷凍サイクルにおいてそれぞれ好適な運転条件になるように膨張弁又はオリフィス6又は7の開度を各冷凍サイクルに応じて調整することが可能になる。例えば、蒸発器出口の冷媒ガスの過熱度を検出し、過熱度が一定値になるように膨張弁又はオリフィス6又は7の開度を調整する。また、蒸発器に液面計を設け液面位置を検出し、液面位置が一定になるように膨張弁又はオリフィス6又は7の開度を調整する。
[実施の形態2]
<冷凍機の基本構成>
図2は、本発明に係る冷凍機の他の実施の形態の概略図である。
図中の1〜5、8(8a、8b)及び9(9a、9b)は、図1中の1〜5、8(8a、8b)及び9(9a、9b)と同じものを指示している。10は、水和物製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとで兼用される膨張弁又はオリフィスである。冷媒としてはR134a又はR123が好適である。
冷水製造用冷凍サイクルは、遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3、膨張弁又はオリフィス10、冷媒液遮断弁8a、冷水製造用蒸発器4、冷媒ガス遮断弁9a及びこれらを接続する冷媒用配管を用い、遠心式圧縮機1、凝縮器3、膨張弁又はオリフィス10、冷媒液遮断弁8a、冷水製造用蒸発器4、冷媒ガス遮断弁9a、遠心式圧縮機1、・・・の順に冷媒が循環することにより実現される((図中の実線矢印に沿った経路参照)。
水和物スラリ製造用冷凍サイクルは、遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3、膨張弁又はオリフィス10、冷媒液遮断弁8b、水和物スラリ製造用蒸発器5、冷媒ガス遮断弁9b及びこれらを接続する冷媒用配管を用い、遠心式圧縮機1、凝縮器3、膨張弁又はオリフィス10、冷媒液遮断弁8b、水和物スラリ製造用蒸発器5、冷媒ガス遮断弁9b、遠心式圧縮機1、・・・の順に冷媒が循環することによって実現される((図中の点線矢印に沿った経路参照)。
水和物スラリ製造用蒸発器5の型式は特に問わないが、満液式であることが好ましい。水和物スラリ製造用蒸発器5は、冷媒の温度(特に蒸発温度)の制御が容易で、その制御の精度が高いものであることが望まれるので、伝熱効率が高く、冷媒の温度(特に冷媒の蒸発温度)の制御の精度が高い満液式蒸発器は水和物スラリ製造用蒸発器として好適といえる。
両冷凍サイクルの切替手段は、冷媒液遮断弁8(8a、8b)及び冷媒ガス遮断弁9(9a、9b)並びにこれらを駆動する駆動装置(K1〜K4)及び該駆動装置を制御する制御装置CRL(図示せず)から構成される。この切替手段により、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とが冷凍サイクルに択一的に接続可能となり、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとの切り替えが可能になり、全体として単一の冷凍サイクルが構成されることになる。
<冷凍機の動作及び運転方法>
次に、図2に示す冷凍機の動作及び運転方法について説明する。冷媒液遮断弁(8a、8b)及び冷媒ガス遮断弁(9a、9b)は、冷媒の遮断のみを目的とする場合には、いずれか一方で足りるが、以下の説明においては、両遮断弁があるものとする。
膨張弁10は常時開(動作可能)の状態にしておく。
(1)水和物スラリ製造用蒸発器5を使用して水和物スラリを製造する場合
まず、切替手段により、冷媒液遮断弁8a及び冷媒ガス遮断弁9aの少なくとも一方を閉とし、冷媒液遮断弁8b及び冷媒ガス遮断弁9bをすべて開とする。これにより水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流通経路(図中の点線矢印に沿った経路)が構成される。
次に、遠心式圧縮機1を電動機2で駆動させ、冷媒ガスを圧縮する。遠心式圧縮機1で圧縮された冷媒ガスは、凝縮器3に送られて、そこで冷却水によって冷却される。この冷却により冷媒はほぼ飽和液になる。引き続き冷媒液は、膨張弁10に送られ、減圧される。減圧された冷媒液は、水和物スラリ製造用蒸発器5に送られ、当該水和物スラリ製造用蒸発器5内の伝熱管を流れる原料水溶液を冷却して包接水和物を生成させ、これが原料水溶液に分散又は顕濁してなる水和物スラリにし、自らは蒸発しガス化する。ガス化した冷媒は、再び遠心式圧縮機1に送られ、以後、以上の循環が繰り返される。それ故、冷媒は水和物スラリ製造用蒸発器5のみを流れる。
この結果、水和物スラリ製造用満液式蒸発器5において原料水溶液が冷却されて水和物スラリが製造される。
(2)冷水製造用蒸発器4を使用して冷水を製造する場合
まず、切替手段により、冷媒液遮断弁8b及び冷媒ガス遮断弁9bの少なくとも一つを閉とし、冷媒液遮断弁8a、冷媒ガス遮断弁9aをすべて開とする。これにより冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流通経路(図中の実線矢印に沿った経路)が構成される。
次に、遠心式圧縮機1を電動機2で駆動させ、冷媒ガスを圧縮する。遠心式圧縮機1で圧縮された冷媒ガスは、凝縮器3に送られて、そこで冷却水によって冷却される。この冷却により冷媒はほぼ飽和液になる。引き続き冷媒液は、膨張弁10に送られ、減圧される。減圧された冷媒液は、冷水製造用蒸発器4に送られ、当該蒸発器4内の伝熱管を流れる水を冷却して冷水にし、自らは蒸発しガス化する。ガス化した冷媒は、再び遠心式圧縮機1に送られ、以後、以上の循環が繰り返される。それ故、冷媒は冷水製造用蒸発器4のみを流れる。
この結果、冷水製造用蒸発器4において供給された水が冷却されて冷水が製造される。
(3)冷水及び水和物スラリの製造時の温度条件
図1に示す冷凍機についての上記(3−1)及び(3−2)で説明した事項は、図2に示す冷凍機にも当て嵌まる。
<小括>
図2に示す冷凍機では、図1に示すものと同様に、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とは切替手段により単一の冷凍サイクルに択一的に接続可能となり、冷水製造用冷凍サイクルと水和物スラリ製造用冷凍サイクルとが択一的に切り替わる。それ故、水和物スラリ空調設備と冷水空調設備のいずれにも、また、水和物スラリを製造する夜間運転と冷水を製造する昼間運転(特に追掛運転)を行う空調設備にも適用可能な単一の冷凍機となる。
そして、図1に示す実施形態と同様に、両冷凍サイクルにおいては、少なくとも遠心式圧縮機1及び凝縮器3が、より詳しくは遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3及びこれらを接続する冷媒用配管が兼用される。それ故、相対的に低い設備費用又は高い費用対効果を実現することができる。
しかも、図2に示す冷凍機では、図1に示すものと異なり、膨張弁又はオリフィス10も兼用される。それ故、図2に示す冷凍機の方が、図1に示すものよりも、相対的に低い設備費用又は高い費用対効果を実現することができる。
なお、膨張弁又はオリフィス10は、兼用されるとはいえ、駆動装置(図示せず)を備え、制御装置(図示せず)により開度を制御可能になるようにしてもよい。これにより、各冷凍サイクルにおいてそれぞれ好適な運転条件になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を各冷凍サイクルに応じて調整することが可能になる。例えば、蒸発器出口の冷媒ガスの過熱度を検出し、過熱度が一定値になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を調整する。また、蒸発器に液面計を設け液面位置を検出し、液面位置が一定になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を調整する。
なお、図2中の遠心式圧縮機1は単段式で描かれているが、多段式でもよい。そして多段式の圧縮機の方が、単段式の圧縮機よりも高額であることから、圧縮機を兼用することにより奏する設備費用の相対的低減又は費用対効果の相対的増加という本発明の効果が顕著となる。
また、図2に示す冷凍機においては、二つの冷媒用遮断弁(8a、8b)の機能をP点に配置した一つの三方弁により置き換えることができ、二つの冷媒ガス用遮断弁(9a、9b)の機能をQ点に配置した一つの三方弁により置き換えることができる。
[実施の形態3]
<両蒸発器における冷媒蒸発温度の差について>
本発明においては、水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と冷水製造用蒸発器における冷媒蒸発温度との差が3度未満、好ましくは2度以下であることが望ましい(第3の形態)。以下にその理由を説明する。
(1) 圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器の順に冷媒が流れ、冷凍サイクルを構成するとき、圧縮機の性能は、一般に、吸込み冷媒流量と圧力比(圧縮機の吐出圧力/圧縮機の吸込圧力)で決まる。
ここで、圧縮機が一定回転数で運転されていれば、その圧縮機に吸い込まれる冷媒の体積流量は変わらないので、圧縮機の吸込みガスの比体積(m/kg)が分かれば吸込み冷媒流量は求まる。冷媒蒸発温度がわかれば、R134a、R123等の冷媒の蒸気表(公知)に照らして圧縮機の吸込みガスの比体積が求まる。それ故、冷媒蒸発温度が分かれば、圧縮機の吸込み冷媒流量が求まる。
また、対象となる冷凍サイクルを理論サイクルとみなした場合、圧縮機の吐出圧力は冷媒凝縮圧力に等しく、圧縮機の吸込圧力は冷媒蒸発圧力に等しくなる。この場合、冷媒の凝縮及び蒸発は飽和状態であるため、冷媒凝縮温度と冷媒蒸発温度が分かれば、冷媒の蒸気表(公知)に照らして冷媒凝縮圧力と冷媒蒸発圧力が求まる。それ故、冷媒凝縮温度と冷媒蒸発温度が分かれば、圧縮機の吐出圧力と吸込圧力が、従い圧縮機の圧力比が求まる。
(2) 冷凍サイクルの性能を表す指標として成績係数(冷凍効果/圧縮仕事)がある。成績係数は投入エネルギーに対して何倍の冷凍能力が得られるかを示した数値で、高いほど効率が良い。
図3は、冷媒がR134aである場合における圧力−比エンタルピ線図上に、一段圧縮理論サイクルを例示したものである。A点は圧縮機出口(凝縮器入口)、B点は凝縮器出口(膨張弁入口)、C点は蒸発器入口(膨張弁出口)、D点は蒸発器出口(圧縮機入口)を示している。D→Aが圧縮、A→Bが凝縮、B→Cが膨張、C→Dが蒸発の各段階である。圧縮機の吐出圧力と吸込圧力が求まれば、A〜Dの各点が求まり、横軸上に投影したC−D間の比エンタルピ差(冷凍効果)とD−A間の比エンタルピ差(圧縮仕事)が、従い冷凍サイクルの成績係数が求まる。冷媒がR123である場合も同じ要領で成績係数が求まる。
(3) 上記(1)及び(2)に基づき、遠心式圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器の順に冷媒が流れることで構成される冷凍サイクルを備える冷凍機(遠心式冷凍機)における圧縮機の吸込圧力、圧力比及び吸込比体積並びに冷凍サイクルの成績係数(まとめて冷凍機の特性という)を計算した結果を表1〜4にまとめて示す。表1及び2は冷媒がR134aの場合、表3及び4は冷媒がR123の場合である。
各表に示す値は、一般的な凝縮器の入口における冷却水の温度条件が入口32℃、出口37℃であり、冷媒凝縮温度が概ね38〜42℃となることを考慮して、冷媒凝縮温度が38℃(下限)と42℃(上限)に対して、冷媒蒸発温度を8℃から0℃まで、1度づつ低下させて、その都度計算して得た値である。その計算の際、冷媒蒸発温度の上限を8℃としたのは、冷水製造用蒸発器で製造される冷水の出口温度及び水和物スラリ製造用蒸発器で製造される水和物スラリの出口温度が、実用上8℃程度が上限であることを考慮したものである。
一方、下限を0℃としたのは、0℃未満にすると冷水製造用蒸発器では凍結問題が起こるためである。また、水和物スラリ製造用蒸発器でも0℃未満にすると(特に氷と包接水和物のゲスト分子との共晶温度以下にすると)氷が発生するので、冷水製造用蒸発器と同様の凍結問題が生じることがあり得るためであり、また水和物スラリ空調設備において使用される水和物スラリを構成する包接水和物の水和物生成温度は0℃以上であるので、冷媒蒸発温度を0℃未満にする必要性に乏しいためである。
(4) 表1〜4に示した計算結果を更に整理して、二つの蒸発器があり、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度と、他方の蒸発器における冷媒蒸発温度が異なったとき冷凍機の特性がどの程度増減するかを調べた。二つの蒸発器における冷媒蒸発温度が同一の場合における冷凍機の特性を基準として、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度が8℃から0℃の範囲のある温度について、他方の蒸発器における冷媒蒸発温度を8℃から0℃に変動させたとき、冷凍機の特性がどの程度増減するかを変化率としてまとめた。
結果を図4〜図7に表し、図4及び図5は冷媒がR134aの場合、図6及び図7は冷媒がR123の場合である。図4及び図6が、冷媒凝縮温度が38℃の場合、図5及び図7が、冷媒凝縮温度が42℃の場合である。
また、各図中(a)乃至(d)は、それぞれ順に、冷凍機の特性として圧縮機の吸込圧力、圧力比及び吸込比体積並びに冷凍サイクルの成績係数の変化率について纏めたものである。各図中の数値は、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度が8℃から0℃の範囲のある温度のとき、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度と他方の蒸発器における冷媒蒸発温度とが同じ場合を基準「100」として、他方の蒸発器における冷媒蒸発温度を8℃から0℃に変動させたとき、冷凍機の各特性が増減した変化率の値である。
例えば、冷媒がR134aであり、冷媒凝縮温度が38℃のとき、冷媒蒸発温度が4℃のときの圧縮機の圧力比は「2.85」である(表1参照)。また、冷媒蒸発温度が0℃であれば、圧縮機の圧力比は「3.29」となる(表1参照)。一方の蒸発器における冷媒蒸発温度と他方の蒸発器における冷媒蒸発温度とが同じ4℃のときの圧縮機の圧力比「2.85」を基準「100」としたとき、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度が4℃で他方の蒸発器における冷媒蒸発温度が0℃のときの圧縮機の圧力比「3.29」は変化率「115(3.29/2.85)」に相当する(図4(b)において、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度「4℃」の行において他方の蒸発器における冷媒蒸発温度「0℃」の列の交点が「115」となる)。この操作を繰り返してできたものが、図4〜図7である。
図4〜図7において、太線で示した横長の枠は、変化率が「90〜110」の範囲(両端を含まず)となる温度範囲を示す。圧縮機の吸込圧力、圧力比及び吸込比体積並びに冷凍システムの成績係数の各変化率の変動率(絶対値)が10%以上であれば、圧縮機や冷凍サイクルの性能が明確に変わったといってよい。この横長の枠は、各変化率の変動率が10%未満となる温度範囲である。
すると、上記の「90〜110」の範囲(両端を含まず)の範囲は、二つの蒸発器における冷媒蒸発温度の差が3度未満の範囲、より狭くは2度以内の範囲であることが分かる。このことは、二つの蒸発器における冷媒蒸発温度の差を3度未満、好ましくは2度以内の範囲に設定すれば、上記の各変化率が10%未満となり、圧縮機の性能が大幅には変わらないことを意味している。
(5) 従って、本発明に係る冷凍機の実用時(従って冷媒凝縮温度範囲が38〜42℃であるとき)において、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器を択一的に冷凍サイクルに接続して冷水製造用冷凍サイクルと水和物スラリ製造用冷凍サイクルとを切り替えても、水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と冷水製造用蒸発器における冷媒蒸発温度との差を3度未満、好ましくは2度以内の範囲に設計されていれば、両冷凍サイクルの性能や両冷凍サイクルで兼用される圧縮機の性能を大幅に変えないで済むことになる。これにより、本発明に係る冷凍機を最適仕様で又はより好適な仕様で設計し易くなり、圧縮機の兼用の効用(設備費の低減効果や費用対効果の向上)もより高くなる。
(6) 図1に示す冷凍機であっても、また図2に示す冷凍機であっても、水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と冷水製造用蒸発器における冷媒蒸発温度との差が3度未満、好ましくは2度以下であることが望ましい。
ただし、図2に示す冷凍機では、冷水製造用冷凍サイクルと水和物スラリ製造用冷凍サイクルで膨張弁又はオリフィス10が兼用され、従って単一の膨張弁又はオリフィス10により膨張させられた冷媒が異なる蒸発器(冷水製造用蒸発器4と水和物スラリ製造用蒸発器5)に択一的に供給される。それ故、図2に示す冷凍機では、図1に示すものより厳格に、冷水製造用蒸発器4における冷媒蒸発温度と水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度との差がより小さくなるように、即ちその差が3度未満、好ましくは2度以下、より好ましくはゼロ(従って同じ冷媒蒸発温度)になるように運転される。
<冷媒蒸発温度の制御>
冷媒蒸発温度が変動すると原料水溶液の冷却のされ方が変動し、蒸発器の伝熱面への包接水和物の付着状態が変動するため、水和物の生成が不安定になり、総じて水和物スラリの製造が安定しない。そこで、本発明においては、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際、冷媒蒸発温度をその変動幅が小さくなるように制御する(第8の形態)。
上記の制御は、例えば次の手法により実現される。
(a) まず、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を計測する手段を設ける。具体的には、水和物スラリ製造用蒸発器5の内部の温度を計測できる温度センサ(図7における温度センサ25に相当するもの)を設置し、その温度センサにより冷媒蒸発温度相当の温度を計測し、監視する。冷媒蒸発温度は飽和温度であるため、温度センサの代わりに圧力センサであっても良い。圧力を計測し、飽和温度に換算する。
(b) 上記温度センサの出力を設定値と比較して、偏差がゼロになるようにフィードバック制御を行う。例えば次のとおりである。
(b―1) 上記温度センサの出力が設定値を上回った場合(即ち、冷媒蒸発温度が高すぎる場合)には、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を上げ、最終的に冷媒蒸発温度が低下するようにする。上記温度センサの出力が設定値を下回った場合(即ち、冷媒蒸発温度が低すぎる場合)には、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を下げ、最終的に冷媒蒸発温度が上昇するようにする。
なお、電動機2の制御は、多くの場合インバータ制御であるが、これに限定されない。また、圧縮機1の出力を制御する方法として圧縮機入口の設けられたインレットガイドベーンの開度を調整する方法がある。
(b―2) 水和物スラリ製造用蒸発器5の内部に冷媒液又は冷媒ガスの温度を調整する冷媒温度調整装置(例えば、マット状のヒータ)を予め設置しておく。上記温度センサの出力が設定値を上回った場合には、設定値との偏差がゼロになるように、冷媒温度調整装置の動作を制御して最終的に冷媒蒸発温度が低下するようにする。上記温度センサの出力が設定値を下回った場合には、設定値との偏差がゼロになるように、冷媒温度調整装置の動作を制御して、最終的に冷媒蒸発温度が上昇するようにする。
なお、上記温度センサの出力が設定値を下回った場合にのみ、冷媒温度調整装置の動作を制御して、最終的に冷媒蒸発温度が増加するようにしてもよい。この場合、上記温度センサの出力が設定値を上回ったとき、上記(b−1)の制御(即ち、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を上げる制御)を行うようにしてもよい。
(c) 上記の設定値は、過去の実測結果や経験的知見に基づき予め設定しておいた値であるが、段階的又は動的に変化する値であってもよい。上記(b)のフィードバック制御を実質的に司る制御装置(演算装置、記憶装置を含む)やその制御を実行する際に常識的に必要になるその他の装置(電源装置、入出力デバイス等)は、言うまでもなく、別途用意する。
<その他のパラメータによる制御>
水和物スラリ空調設備では、水和物スラリを蓄える蓄熱槽の有無に拘らず、所定の温度又は温度範囲にある水和物スラリが製造されることが望まれるのが通常である。水和物スラリ製造用蒸発器において製造される水和物スラリを所定の温度又は温度範囲で製造するための制御は、例えば次の手法により実現される。
(a’) まず、水和物スラリ製造用蒸発器5における水和物スラリの出口温度を計測する手段を設ける。具体的には、水和物スラリ製造用蒸発器5から水和物スラリの送出す配管の適当位置において、温度センサをその配管の内部に突出させて設置し、その温度センサにより、水和物スラリ製造用蒸発器5における水和物スラリの出口温度相当の温度を計測し、監視する。
(b’) 上記温度センサの出力を設定値と比較して、偏差がゼロになるようにフィードバック制御を行う。例えば次のとおりである。
(b’―1) 上記温度センサの出力が設定値を上回った場合(即ち、水和物スラリ製造用蒸発器5における水和物スラリの出口温度が高すぎる場合)には、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を上げ、最終的に当該出口温度が低下するようにする。上記温度センサの出力が設定値を下回った場合(即ち、当該出口温度が低すぎる場合)には、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を下げ、最終的に当該出口温度が上昇するようにする。
なお、電動機2の制御は、多くの場合インバータ制御であるが、これに限定されない。
(b’―2) 水和物スラリ製造用蒸発器5の内部に冷媒液又は冷媒ガスの温度を調整する冷媒温度調整装置(例えば、マット状のヒータ)を予め設置しておく。上記温度センサの出力が設定値を上回った場合には、設定値との偏差がゼロになるように、冷媒温度調整装置の動作を制御して、最終的に冷水和物スラリ製造用蒸発器5における水和物スラリの出口温度が低下するようにする。上記温度センサの出力が設定値を下回った場合には、設定値との偏差がゼロになるように、冷媒温度調整装置の動作を制御して、最終的に当該出口温度が上昇するようにする。
なお、上記温度センサの出力が設定値を下回った場合にのみ、冷媒温度調整装置の動作を制御して、最終的に当該出口温度が上昇するようにしてもよい。この場合、上記温度センサの出力が設定値を上回ったとき、上記(b’−1)の制御(即ち、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を上げる制御)を行うようにしてもよい。
(c’) 上記の設定値は、過去の実測結果や経験的知見に基づき予め設定しておいた値であるが、段階的又は動的に変化する値であってもよい。上記(b)のフィードバック制御を実質的に司る制御装置(演算装置、記憶装置を含む)やその制御を実行する際に常識的に必要になるその他の装置(電源装置、入出力デバイス等)は、言うまでもなく、別途用意する。
[実施の形態4]
<水和物スラリ製造用蒸発器の基本構成>
図8は、本発明に係る冷凍機において採用される水和物スラリ製造用蒸発器5の一実施の形態である満液式蒸発器50(第5及び第6の各形態)の基本構成の説明図であり、図8(a)は縦断面図、図8(b)は横断面図である。いずれの図も、実際の寸法や寸法比では描かれていない。
この満液式蒸発器50は、シェルアンドチューブ型熱交換器であり、外殻部51と、外殻部51に設けられた冷媒液入口管52、冷媒ガス出口管53、原料水溶液入口管54及び水和物スラリ出口管55と、外殻部51内に設けられ、冷媒液入口管52から外殻部51内に供給された冷媒液に没するように配置される複数本の伝熱管56(以下、各伝熱管を同じ「56」で表記する場合がある)、外殻部51内に設けられ、複数本の伝熱管56と原料水溶液入口管54との間に配置される水箱57、外殻部51内に設けられ、複数本の伝熱管56と水和物スラリ出口管55との間に配置される水箱58、外殻部51内に設けられ、冷媒液入口管52から供給される冷媒液を外殻部51内に均一に分配するための液分配板59、外殻部51内に設けられ、冷媒液が蒸発してできる冷媒ガスに混入した冷媒液が冷媒ガス出口管53を経由して圧縮機1に入り込まないようにするためのデミスタ60を備える。冷媒は、R134a、R123などである。
なお、図8に示す蒸発器は一台であるが、これを複数台並列又は直列に接続して全体として一台の水和物製造用蒸発器5を構成してもよい。また、図8に示す蒸発器の内部を複数の区画に分け、原料水溶液がその複数の区画を順に流れるようにすることで、原料水溶液の流路を長くする工夫を施してもよい。
<蒸発器の動作>
図8に示す蒸発器50において、冷媒液は冷媒液入口管52から液分配板59を介して外殻部51内に供給される。外殻部51内の冷媒液は飽和液になっているので、冷媒液の温度は、概ねその飽和温度(蒸発温度)、即ち一定になる。この冷媒液に没している伝熱管56は、一定温度に冷却される。このとき、原料水溶液入口管54から水箱57を介して伝熱管56の内部に原料水溶液が供給されると、伝熱管56内を流通し、水箱58に到達するまでの間に、原料水溶液が伝熱管56の内壁面を介して冷媒(液)により水和物生成温度以下に冷却される。この冷却により包接水和物が生成し、原料水溶液に分散又は懸濁することにより水和物スラリとなり、水箱58を介して水和物スラリ出口管55を通じて外郭部51外へ送出される。他方、冷媒(液)は、原料水溶液を冷却することにより気化し、冷媒ガスとなる。冷媒ガスはデミスタ60を介し冷媒ガス出口管53を通じて外郭部51外の圧縮機1(図示せず)に向けて送出される。
<水和物スラリの製造及び冷媒蒸発温度の制御>
(1)水和物スラリの製造
(1−1) 図9は、図8に示す蒸発器50を用いる水和物スラリの製造において、その基礎となる現象、即ち伝熱管56の内壁面で起こる包接水和物の生成・付着と剥離を描写した概念説明図である。
原料水溶液が伝熱管56の内壁面を介して冷媒により水和物生成温度以下に冷却されると、その原料水溶液から包接水和物が生成する。包接水和物は、内壁面を広く覆うように付着し、徐々にその付着厚さを増加させる。このとき、原料水溶液の流速を一定以上にすると、その流れの力により、伝熱管56の内壁面に付着した包接水和物の一部が剥離し、原料水溶液に分散又は懸濁して水和物スラリとなる。
以後、内壁面における包接水和物の付着と剥離が繰り返される。その結果、内壁面における包接水和物の付着と剥離が均衡した段階で、伝熱管56の内壁面における包接水和物の付着厚さは頭打ち(一定)になり、伝熱管56を流れる原料水溶液の圧力損失も頭打ち(一定)になり(下記(1−2)参照)、伝熱管56の閉塞は回避される。その一方で、剥離した包接水和物から水和物スラリが連続的に製造されてゆく。
(1−2) 図10は、水和物スラリ製造用満液式蒸発器が備える伝熱管内を流れる原料水溶液の流速を1.5〜2.4m/sの範囲で変えて実験を行い、伝熱管の圧力損失と伝熱管内の原料水溶液の流速との関係を調べて得た実験結果を示すグラフである。横軸は原料水溶液の流速であり、縦軸に伝熱管の圧力損失が定常となったときの圧力損失である。冷媒温度(冷媒蒸発温度)を2℃とし、原料水溶液は、濃度14.4wt%のTBAB水溶液とした。この原料水溶液の水和物生成開始温度は、約8℃である。
この図によれば、伝熱管を流れる原料水溶液の流速が一定値(この測定条件の下では約1.8m/s)以上であれば、当該伝熱管の圧力損失は低い値に維持されることが分かる。伝熱管の圧力損失は、伝熱管の内壁面への包接水和物の付着厚とともに増加するので、原料水溶液の流速が一定値以上であれば、包接水和物の付着厚さは概ね一定値以下になるといえる。
(1−3) 内壁面に付着したまま残る包接水和物は、引き続く包接水和物の生成核として機能し、新たな包接水和物の生成を促す。新たに生成した包接水和物の少なくとも一部は原料水溶液の流れの力により剥離し、原料水溶液に分散又は懸濁して水和物スラリとなる。
原料水溶液に分散又は懸濁した包接水和物は、過冷却解除剤としても機能し、水和物スラリにおける固相割合の増加(即ち、蓄熱量の増加)を促進させる。
伝熱管56の内壁面における包接水和物の付着と剥離との均衡が崩れ、包接水和物の付着量が剥離量を上回ると、伝熱管56が徐々に閉塞してゆき、原料水溶液が流通し得る断面積が減少してゆく。しかし、その断面積の減少は原料水溶液の圧力を高め、包接水和物を剥離させる原料水溶液の流れの力を高めることになる。これにより、伝熱管56の内壁面における包接水和物の付着と剥離との均衡が回復し、水和物スラリの連続製造が安定化し、長時間製造の実現に資することができる。
包接水和物の熱伝導率は高いとはいえないので、包接水和物の付着厚がある程度大きくなると、伝熱管の内壁面の冷却効果が原料水溶液に及ばなくなり、包接水和物の生成が停滞してしまう。しかし、原料水溶液の流れの力により付着厚の増加が抑制されるので、伝熱管の内壁面の冷却効果は原料水溶液に及び続けることになる。これにより、水和物スラリの連続製造が安定化し、長時間製造に資することができる。
(2)冷媒蒸発温度の制御
図8に記載の水和物スラリ製造用蒸発器50(即ち、第5及び第6の形態に係る冷凍機における水和物スラリ製造用蒸発器)を用いて水和物スラリを連続的に製造する際には、上記(1)に記載のとおり、伝熱管の内壁面にある程度の包接水和物を意図的に残したままにする。しかし、伝熱管の内壁面に付着したまま残される水和物の付着厚が変動すると、伝熱管の圧力損失が変動し、それに応じて水和物スラリ製造用蒸発器の運転状態が変動し、不安定になる。そこで、本発明では、水和物スラリ製造用蒸発器50により水和物スラリを製造する際に、冷媒の蒸発温度の変動幅が小さくなるように圧縮機を制御する(第9の形態)。これにより、水和物スラリを長時間に亘り安定的に製造できる冷凍機の運転を実現することができる。
上記の制御は、例えば、実施の形態3(6)<冷媒蒸発温度の制御>における(a)〜(c)に記載の手法により実現することができる。
[実施の形態5]
<空調設備の基本構成>
図11は、本発明に係る冷凍機を組み込んだ空調設備の概略図である。この図では、本発明に係る冷凍機として図1に示すものを採用している。図11中の1〜7、8(8a、8b)及び9(9a、9b)は、図1中の1〜7、8(8a、8b)及び9(9a、9b)と同じものを指示しているので説明を省略する。
また、図1に示す冷凍機自体の動作及び運転方法については既述のとおりである。
図11中、11は冷却塔、12は三方弁、13はバッファタンク、14は水和物スラリ蓄熱槽、15は冷水/水和物スラリ熱交換器、16は熱利用側負荷(例えば空調機)、17〜21はポンプ、特に17は水和物スラリ再循環用ポンプ、18は原料水溶液搬送用ポンプ、19は水和物スラリ取り出し用ポンプ、20は冷水搬送用ポンプ、21は冷却水搬送用ポンプである。22は流量計、23〜27及び30〜32は温度センサ、28、29は開閉バルブである。蓄熱槽14には水和物スラリの収容量を検知するレベル計(図示せず)が設置される。
この図に示す空調設備は、本発明に係る冷凍機、冷却塔11と凝縮器3との間の冷却水/水の循環経路A、冷水製造用蒸発器4と熱利用側負荷16との間の冷水/水の循環経路B、水和物スラリ製造用熱交換器5と蓄熱槽14との間の水和物スラリ/原料水溶液の循環経路C、水和物スラリ製造用蒸発器5とバッファタンク13との間の水和物スラリの再循環経路D、蓄熱槽14と冷水/水和物スラリ熱交換器15との間の水和物スラリ/原料水溶液の循環経路E、冷水/水和物スラリ熱交換器15と熱利用側負荷16との間の冷水/水の循環経路Fを備える。
経路Aは11、12、21、23、3、M点、11、・・・を、経路Bは4、24、S点、16、20、R点、29、4、・・・をそれぞれ辿り巡る配管の経路である。経路Cは5、13、26、14、18、N点、22、5、30、13・・・を、経路Dは5、13、17、N点、22、5、・・・をそれぞれ辿り巡る配管の経路である。経路Eは14、19、15、14、・・・を、経路Fは15、27、S点、16、20、R点、15、・・・をそれぞれ辿り巡る配管の経路である。
経路A、冷凍機及び経路Bにより冷水の製造とその冷水が有する熱エネルギーの熱利用側負荷における熱利用が行われ、経路A、冷凍機、経路C及び経路Dにより水和物スラリの製造と蓄積が行われ、経路E及び経路Fにより、蓄積された水和物スラリが有する熱エネルギーの熱利用側負荷における熱利用が行われる。
(1) 経路Aについて
経路Aにおいて、冷却塔11から送出される冷却水は、ポンプ21により搬送され、三方弁12、ポンプ21、温度センサ23を通過して凝縮器3に供給され、凝縮器3において冷媒ガスを凝縮させるための熱交換に供され、その後水温が上がった水として冷却塔11に戻る。以後この循環が繰り返される。
冷却水の温度制御は、凝縮器3に供給される冷却水の温度を計測する温度センサ23の出力に基づき三方弁12の動作により行う。即ち、冷却水の温度が目標値より低い場合には、その偏差に相応分の三方弁12の駆動量をTICにおいて演算し、その演算値だけ三方弁12を駆動させて、M点から相対的に高温の水を取り込んで冷却水に混ぜ、冷却水の温度を上昇させる。冷却水の温度が目標値より高い場合には、三方弁12を動作させて、M点から相対的に高温の水を取り込まないようにして、冷却水の温度を低下させる。
(2)経路Bについて
経路Bは、本発明に係る冷凍機が冷水製造用冷凍サイクルを構成している場合の経路であり、本発明の第10の形態における冷水製造用蒸発器において製造した冷水が有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第3の経路に相当するものである。経路Bにおいて、蒸発器4から送出される冷水は、ポンプ20により搬送され、熱利用側負荷16において熱利用に供され、その後水温が上がった水としてポンプ20、R点、開閉バルブ29を通じて蒸発器4に戻る。以後この循環が繰り返される。
冷水の温度制御は、蒸発器4から送出される冷水の温度を計測する温度センサ24の出力に基づき電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させることにより行う。即ち、冷水の温度が目標値よりも低く、温度センサ24の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を下げ、蒸発器4における冷媒蒸発温度を高め、冷水の出口温度が上昇するようにする。冷水の温度が目標値よりも高く、温度センサ24の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を上げ、蒸発器4における冷媒蒸発温度を下げ、冷水の出口温度が低下するようにする。以上の制御を、温度センサ24の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。
(3)経路C及び経路Dについて
経路C及び経路Dはいずれも、本発明に係る冷凍機が水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成している場合の経路である。経路Cは、本発明の第10の形態における水和物製造用蒸発器において製造された水和物スラリを蓄熱槽に供給する第1の経路に相当するものである。経路Dは、水和物スラリ製造用蒸発器5に搬送する原料水溶液の流量を制御するために、バッファタンク13に貯留されている水和物スラリを取り出して経路Cに合流させる経路である。
(3−1) 経路Cにおいて、蓄熱槽14に予め蓄えられていた原料水溶液は、ポンプ18により搬送され、N点においてポンプ17によりバッファタンク13から搬送される水和物スラリと合流した後、水和物スラリ製造用蒸発器5に到達し、水和物スラリ製造用蒸発器5において冷媒液との熱交換に供される。ここで、原料水溶液が冷却され、水和物スラリが製造される。即ち、冷却された原料水溶液から包接水和物が生成し、生成した水和物が原料水溶液に分散又は懸濁にすることにより水和物スラリとなる。この水和物スラリは水和物スラリ製造用蒸発器5から送出され、その一部はバッファタンク13に蓄えられ、残部は蓄熱槽14に送出されて、そこで蓄えられる。このような水和物スラリ製造用蒸発器5と蓄熱槽14との間の原料水溶液/水和物スラリの循環が繰り返されることにより、バッファタンク13及び蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリの固相割合、従って蓄熱量は徐々に増加してゆく。
水和物スラリの温度制御は、次の(ア)及び(イ)の手法のうち少なくとも一つにより行う。
(ア) 蓄熱槽14に送出される水和物スラリの温度を計測する温度センサ26の出力に基づき電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させる。即ち、水和物スラリの温度が目標値より低く、従って温度センサ26の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を下げ、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を高め、水和物スラリの出口温度、延いてはバッファタンク13から蓄熱槽14に向かう水和物スラリの温度が上昇するようにする。水和物スラリの温度が目標値よりも高く、温度センサ26の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を上げ、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を下げ、水和物スラリの出口温度、延いてはバッファタンク13から蓄熱槽14に向かう水和物スラリの温度が低下するようにする。以上の制御を、温度センサ26の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。
(イ) 温度センサ26の出力に基づきポンプ18のインバータ制御を行い、水和物スラリ製造用蒸発器5への原料水溶液(原料水溶液としての水和物スラリを含む)の供給量を必要分だけ変化させることにより行う。即ち、水和物スラリの温度が目標値よりも低く、温度センサ26の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分のポンプ18の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけポンプ18の出力を上昇させ、水和物スラリ製造用蒸発器5への原料水溶液の供給量を高め、水和物スラリの出口温度が上昇するようにする。水和物スラリの温度が目標値よりも高く、温度センサ26の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分のポンプ18の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけポンプ18の出力を低下させ、水和物スラリ製造用蒸発器5への原料水溶液の供給量を下げ、水和物スラリの出口温度が低下するようにする。以上の制御を、温度センサ26の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。
(3−2) 経路Dにおいて、水和物スラリ製造用蒸発器5から送出される水和物スラリのうち、バッファタンク13に蓄えられるものは、ポンプ17により搬送され、N点においてポンプ18により搬送される原料水溶液(原料水溶液としての水和物スラリを含む)と合流した後、水和物スラリ製造用蒸発器5に到達し、水和物スラリ製造用蒸発器5において冷媒液との熱交換に供される。
ここで、原料水溶液が冷却され、水和物スラリが製造される。即ち、冷却された原料水溶液から包接水和物が生成し、生成した水和物が原料水溶液に分散又は懸濁することにより水和物スラリとなる。この水和物スラリは水和物スラリ製造用蒸発器5から送出され、その一部はバッファタンク13に蓄えられ、残部は蓄熱槽14に送出される。このような水和物スラリ製造用蒸発器5とバッファタンク14との間の水和物スラリの循環が繰り返されることにより、バッファタンク13及び蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリの固相割合、従って蓄熱量は徐々に増加してゆく。
水和物スラリ製造用蒸発器5が図8に示す満液式蒸発器50である場合には、伝熱管の内壁面に付着する水和物の一部を原料水溶液(又は原料水溶液としての水和物スラリ)の流れの力により取り除き、その残部を当該伝熱管の内壁面を覆うように残すようにして水和物スラリを製造することが望ましい(実施の形態4<水和物スラリの製造及び冷媒蒸発温度の制御>(1−1)〜(1−3)参照)。
その際には、伝熱管の内部を流れる原料水溶液の流速を所定値以上の一定速度に制御するために、流量を制御する。水和物スラリ製造用蒸発器5に供給される原料水溶液(原料水溶液としての水和物スラリを含む)の流量制御は、水和物スラリ製造用蒸発器5に供給される原料水溶液の流量を計測する流量計22の出力に基づきポンプ17のインバータ制御を行い、バッファタンク13からN点への水和物スラリの送出量を必要分だけ変化させることにより行う。即ち、原料水溶液の流量が目標値よりも低く、流量計22の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分のポンプ17の出力変更量をFICにおいて演算し、その演算値だけポンプ17の出力を上昇させ、バッファタンク13からN点への水和物スラリの送出量を増やし、N点から水和物スラリ製造用蒸発器5に向かう原料水溶液の流量が増加するようにする。原料水溶液の流量が目標値よりも高く、流量計22の出力が設定値を超えている場合には、その偏差に相応分のポンプ17の出力変更量をFICにおいて演算し、その演算値だけポンプ17の出力を低下させ、バッファタンク13からN点への水和物スラリの送出量を減らし、N点から水和物スラリ製造用蒸発器5に向かう原料水溶液の流量が減少するようにする。以上の制御を、流量計22の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。
(3−3) 水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度の制御は、その変動幅が小さくなるように行う(実施の形態3(6)<冷媒蒸発温度の制御>及び実施の形態4<蒸発器の動作>(2)参照>。
具体的には、水和物スラリ製造用蒸発器5内の冷媒温度を計測する温度センサ25の出力に基づき電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させる。即ち、冷媒蒸発温度が目標値より低く、従って温度センサ25の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を下げ、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を高める。
冷媒蒸発温度が目標値よりも高く、温度センサ25の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を上げ、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を下げる。
以上の制御を、温度センサ25の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。なお、25は温度センサでなく、冷媒ガスの圧力を計測する圧力センサであってもよい。上記の目標値及び設定値は複数個(例えば、上限値と下限値)であってもよい。
(3−4) 水和物スラリの製造を行う場合には、まず、経路Dにおいてこれを開始する。水和物スラリの製造を開始する時、バッファタンク13内には原料水溶液が貯留されており、ポンプ17を起動して原料水溶液を水和物スラリ製造用蒸発器5へ送出し冷媒液と熱交換して冷却する。バッファタンク13内に、別に製造した水和物スラリを添加することや冷却手段など原料水溶液の過冷却を解除する手段を設けることにより、過冷却解除され水和物が生成して水和物スラリが製造される。また、水和物スラリ製造用蒸発器5における水和物スラリの出口温度及びバッファタンク13内の水和物スラリの温度をそれぞれ温度センサ30及び31により計測し、監視する。温度センサ30又は31の出力が所定値に達したら、作業員による手動操作により又は制御装置CTLからの制御信号(g7)によりポンプ18を起動し、経路Cを重畳する。
蓄熱槽14に予め蓄えられていた原料水溶液は、ポンプ18により搬送され、N点においてバッファタンク13から搬送される水和物スラリと合流した後、水和物スラリ製造用蒸発器5に到達し、水和物スラリ製造用蒸発器5において冷媒液との熱交換に供され、原料水溶液が冷却され水和物スラリが製造される。この水和物スラリは水和物スラリ製造用蒸発器5から送出され、その一部はバッファタンク13に蓄えられ、残部は蓄熱槽14に送出されて、そこで蓄えられる。水和物スラリ製造用蒸発器5の伝熱管の内部を流れる原料水溶液の流速を所定値以上の一定速度に制御するために、流量計22の出力に基づきポンプ17のインバータ制御を行い、バッファタンク13から水和物スラリ製造用蒸発器5への水和物スラリの送出流量を制御する。水和物スラリの製造を行う際、経路Dは水和物スラリ製造用蒸発器5へ搬送される原料水溶液の流量を制御するための水和物スラリの再循環経路となっている。また、蓄熱槽14に送出される水和物スラリの温度を計測する温度センサ26の出力が設定値になるようにポンプ18が制御される(上記(3−1)(イ)参照)。
(4)経路E及び経路Fについて
経路E及び経路Fは、蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリが有する熱エネルギー(冷熱)を熱利用に供するための経路であり、本発明の第10の形態における蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第2の経路に相当するものである。
経路Eにおいて、蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリは、ポンプ19により搬送され、冷水/水和物スラリ熱交換器15に供給され、冷水/水和物スラリ熱交換器15において水を冷水にするための熱交換に供され、その後水溶液の状態で蓄熱槽14に戻る。以後この循環が繰り返される。経路Fにおいて、冷水/水和物スラリ熱交換器15における水和物スラリとの熱交換により製造された冷水は、ポンプ20により搬送され、熱利用側負荷16において熱利用に供され、その後水温が上がった水としてポンプ20、R点、開閉バルブ28を通じて冷水/水和物スラリ熱交換器15に戻る。以後この循環が繰り返される。それ故、経路E及び経路Fは冷水/水和物スラリ熱交換器15を介して互いに熱伝達的に繋がり、これにより水和物スラリが有する潜熱相当の熱エネルギーが、冷水が有する顕熱相当の熱エネルギーに変換され、熱利用側負荷16に供給される。
冷水/水和物スラリ熱交換器15における冷水の出口温度の制御は、冷水/水和物スラリ熱交換器15から送出される冷水の温度を計測する温度センサ27の出力に基づきポンプ19のインバータ制御を行い、冷水/水和物スラリ熱交換器15への水和物スラリの供給量を必要分だけ変化させることにより行う。即ち、冷水の温度が目標値よりも低く、温度センサ27の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分のポンプ19の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけポンプ19の出力を低下させ、冷水/水和物スラリ熱交換器15への水和物スラリの供給量を下げ、冷水の出口温度が上昇するようにする。冷水の温度が目標値よりも高く、温度センサ27の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分のポンプ19の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけポンプ19の出力を上昇させ、冷水/水和物スラリ熱交換器15への水和物スラリの供給量を高め、冷水の出口温度が低下するようにする。以上の制御を、温度センサ27の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。
<空調設備の動作及び運転モード>
図11に示す空調設備の全体動作は、本発明に係る冷凍機の動作を含め、制御装置CTLにより制御される。当該空調設備の運転方式には、少なくとも次の(M1)〜(M4)に掲げる運転モードがある。
(M1) 熱利用側負荷16に対し、冷水製造用蒸発器4において製造された冷水を供給する運転モード(即ち、冷凍機及び経路Bを使用する運転モード)
この運転モードにおいては、制御装置CTLが制御信号g1〜g4を発信し、冷媒用遮断弁8a、8b及び冷媒ガス用遮断弁9a、9bの各駆動装置(K1〜K4)を作動させ、遮断弁8a、9aを開き、遮断弁8b、9bを閉じ、これにより冷凍機において冷水製造用冷凍サイクルを構成する。同時に、制御装置CTLが制御信号g5、g6を発信し、開閉バルブ28、29の各駆動装置(K5、K6)を作動させ、バルブ28を閉じ、バルブ29を開き、これにより熱利用側負荷16を経路Bに接続し、経路Fに非接続とする。以上により、冷凍機と経路Bとが冷水製造用蒸発器4を介して接続し、蒸発器4において製造された冷水のみが熱利用側負荷16に供給されるようになる。
(M2) 蓄熱槽14に対し、水和物スラリ製造用蒸発器5において製造された水和物スラリを供給する運転モード(即ち、冷凍機、経路C及び経路Dを使用する運転モード)
この運転モードにおいては、制御装置CTLが制御信号g1〜g4を発信し、各駆動装置(K1〜K4)を作動させ、遮断弁8a、9aを閉じ、遮断弁8b、9bを開き、冷凍機において水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する。これにより、冷凍機と経路C及び経路Dとが水和物スラリ製造用蒸発器5を介して接続し、蒸発器4において製造された水和物スラリが蓄熱槽14に供給されるようになる。
(M3) 熱利用側負荷16に対し、蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリが有する熱エネルギーを供給する運転モード(即ち、経路E及び経路Fを使用する運転モード)
この運転モードにおいては、制御装置CTLが制御信号g5、g6を発信し、開閉バルブ28、29の各駆動装置(K5、K6)を作動させ、バルブ28を開き、バルブ29を閉じ、これにより熱利用側負荷16を経路Bに非接続とし、経路Fに接続とする。これにより、熱利用側負荷16と蓄熱槽14とが経路E、冷水/水和物スラリ熱交換器15及び経路Fを介して接続し、蓄熱槽14に蓄えられた水和物スラリが有する潜熱相当の熱エネルギーが冷水/水和物スラリ熱交換器15における水和物スラリと水との熱交換を通じて冷却された水が有する顕熱相当の熱エネルギーとして熱利用側負荷16に供給されるようになる。
(M4) その他の運転モード:水和物スラリ製造用蒸発器5において製造された水和物スラリを蓄熱槽14に十分蓄える前に、当該水和物スラリが有する熱エネルギーを熱利用側負荷16に供給する運転モード(即ち、冷凍機、経路C及び経路Dと同時に経路E及び経路Fを使用する運転モード)
この運転モードにおいては、制御装置CTLが制御信号g1〜g4を発信し、各駆動装置(K1〜K4)を作動させ、遮断弁8a、9aを閉じ、遮断弁8b、9bを開き、冷凍機において水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する。同時に、制御装置CTLが制御信号g5、g6を発信し、開閉バルブ28、29の各駆動装置(K5、K6)を作動させ、バルブ28を開き、バルブ29を閉じ、これにより熱利用側負荷16を経路Bに非接続とし、経路Fに接続とする。
以上により、冷凍機と経路C及び経路Dとが水和物スラリ製造用蒸発器5を介して接続し、蒸発器4において製造された水和物スラリが蓄熱槽14に供給されるとともに、熱利用側負荷16と蓄熱槽14とが経路E、冷水/水和物スラリ熱交換器15及び経路Fを介して接続し、蓄熱槽14に蓄えられた水和物スラリが有する潜熱相当の熱エネルギーが冷水/水和物スラリ熱交換器15における水和物スラリと水との熱交換を通じて冷却された水が有する顕熱相当の熱エネルギーとして熱利用側負荷16に供給されるようになる。
<空調設備の運転方法の具体例>
(1) 夜間の蓄熱運転
水和物スラリを製造し、これを蓄熱槽に蓄えておく運転、即ち蓄熱運転を夜間に行う。図11に示す空調設備において蓄熱運転を行う場合には、まず、本発明に係る冷凍機において冷水製造用蒸発器4ではなく水和物スラリ製造用蒸発器5を冷凍システムに接続し、水和物製造用冷凍システムを構成し、上記(M2)の運転モードで当該空調設備を運転する。この場合、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度の変動幅が小さくなるように制御する。具体的には、水和物スラリ製造用蒸発器5内の冷媒液温度を計測する温度センサ25の出力と設定値との偏差がゼロになるように電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させる(本実施の形態<空調設備の基本構成>(3−3)参照)。
水和物スラリ製造用蒸発器5が図8に示す満液式蒸発器50である場合には、伝熱管の内壁面に付着する水和物の一部を原料水溶液(又は原料水溶液としての水和物スラリ)の流れの力により取り除き、その残部を当該伝熱管の内壁面を覆うように残すようにして水和物スラリを製造する。その際には、伝熱管56の内部を流れる原料水溶液の流速を一定に制御するとともに、満液式蒸発器50における冷媒蒸発温度を過度に低下させないことが重要である。そこで、N点から水和物スラリ製造用蒸発器5に向かう原料水溶液の流量が目標値になるように又は流量計22の出力と設定値との偏差がゼロになるように水和物スラリを再循環させるポンプ17のインバータ制御を行い、バッファタンク13からN点への水和物スラリの送出量を必要分だけ変化させる(本実施の形態<空調設備の基本構成>(3−2)(3−4)参照)。同時に、水和物スラリ製造用蒸発器5内の冷媒液温度を計測する温度センサ25の出力と設定値との偏差をゼロになるように電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させる(本実施の形態<空調設備の基本構成>(3−3)参照)。
なお、上記の設定値の設定の仕方次第で、温度センサ25の出力が所定値以下にならないように電動機2を制御し、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させることも可能であり、図11に示す空調設備(水和物スラリ製造用蒸発器5が図8に示す満液式蒸発器50であると否とを問わない)の蓄熱運転において採用することができる。
水和物スラリの製造を行う場合には、まず、経路Dにおいてこれを開始し、水和物スラリ製造用蒸発器5における水和物スラリの出口温度又はバッファタンク13内の水和物スラリの温度が所定値になったとき、ポンプ18を起動し、経路Cを重畳し、蓄熱槽14における水和物スラリの入口温度が設定値になるようにポンプ18が制御される(本実施の形態<空調設備の基本構成>(3−4)参照)。
蓄熱槽14が水和物スラリで満たされたとき又は蓄熱時間が終了したとき、遠心式圧縮機1、電動機2を停止し、ポンプ18、ポンプ17の順に作業員の手動操作により又は制御装置CTLからの制御信号により停止する。
蓄熱運転中に水和物スラリ製造用蒸発器5の伝熱管の内壁面に付着する水和物量が増大し堆積して、伝熱管内の圧力損失が増加して水和物スラリの製造に支障が生じることがある場合には、付着した水和物を融解して除去する融解運転が必要である。融解運転のため冷凍機の圧縮機1をバイパスして水和物スラリ製造用蒸発器5と凝縮器3とを連通するバイパス経路とバイパス経路を開閉するバイパス弁を設けてもよい。融解運転時には圧縮機1、電動機2を停止し、バイパス弁を開け水和物スラリ製造用蒸発器5と凝縮器3とを圧縮機1をバイパスして連通すると、凝縮器3内の高温高圧の冷媒がバイパス経路を介して水和物スラリ製造用蒸発器5内に流通し、凝縮器3内の高温高圧の冷媒が保有する温熱により伝熱管内に付着した水和物を融解して除去することができる。
(2) 昼間の運転
(2−1)蓄熱利用運転
熱利用側負荷16側を冷房する運転、即ち空調運転を、蓄熱槽14内に蓄熱されている水和物スラリが有する熱エネルギー(冷熱)を利用して昼間に行う。図11に示す空調設備において蓄熱利用運転を行う場合には、上記(M3)の運転モードで当該空調設備を運転する。この場合、冷水/水和物スラリ熱交換器15における冷水の出口温度が目標値になるようにポンプ19を制御する(本実施の形態<空調設備の基本構成>(4)参照)。
(2−2)冷凍機追掛運転
熱利用側負荷16側を冷房するために必要な冷熱を賄うためには、蓄熱槽14内に蓄熱されている水和物スラリの冷熱だけでは不足分がある場合に、別途製造した冷水の冷熱により当該不足分を補填するための空調運転である。
例えば、本発明に係る冷凍機において水和物スラリ製造用蒸発器5(図8に示すものであれば蒸発器50)ではなく冷水製造用蒸発器4を冷凍システムに接続し、冷水製造用冷凍システムを構成し、上記(M1)の運転モードで当該空調設備を運転する。このとき冷水製造用蒸発器4の出口側に設けられた温度センサ24によって、冷水の出口温度を計測し、その出口温度が一定になるように遠心式圧縮機1の回転数を制御するようにする。そして、開閉弁28を開とし、冷水/水和物スラリ熱交換器15からの冷水と冷水製造用蒸発器4からの冷水とを熱利用側負荷16に搬送する。これにより両冷水が有する冷熱エネルギーを熱利用側負荷16に供給する。
別の例としては、まず、蓄熱槽14に蓄えられた水和物スラリが有する冷熱エネルギーを冷水/水和物スラリ熱交換器15により冷水に熱交換して当該冷水が有する冷熱エネルギーを熱利用側負荷16に供給し、できるだけ使い切るようにする(使い切る必要はない)。その後、上記(M1)の運転モードで当該空調設備を運転し、冷水製造用蒸発器4において製造した冷水が有する冷熱エネルギーを熱利用側負荷16に供給する。
上記の2例のいずれによっても追掛運転を実現できる。
[実施の形態6]
図12は、本発明に係る冷凍機を組み込んだ他の空調設備の概略図である。この図では、図11における本発明に係る冷凍機を図2に示すものに置き換えている。冷凍機における膨張弁又はオリフィス10は駆動装置K0を備え、制御装置CRLが発信する制御信号g0により当該駆動装置K0を作動させることにより、各冷凍サイクルにおいてそれぞれ好適な運転条件になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を各冷凍サイクルに応じて調整することが可能になる。その他の点は、基本的に図11に示す空調設備と同じであるので、説明を省略する。
なお、各冷凍サイクルに応じて調整する例としては、蒸発器出口の冷媒ガスの過熱度を検出し、過熱度が一定値になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を調整する場合が挙げられる。また、蒸発器に液面計を設け液面位置を検出し、液面位置が一定になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を調整するようにしてもよい。
本発明の一実施の形態に係る冷凍機の概略構成を示す図である。 本発明の他の実施の形態に係る冷凍機の概略構成を示す図である。 冷媒がR134aである場合における圧力−比エンタルピ線図上に、一段圧縮理論サイクルを例示したものである。 二つの蒸発器があり、二つの蒸発器における冷媒蒸発温度が同一の場合における冷凍機の特性を基準として、一方の蒸発器におけるある冷媒蒸発温度について、他方の蒸発器における冷媒蒸発温度の変化により各特性が増減する変化率をまとめた図である(冷媒:R134a、冷媒凝縮温度:38℃)。 二つの蒸発器があり、二つの蒸発器における冷媒蒸発温度が同一の場合における冷凍機の特性を基準として、一方の蒸発器におけるある冷媒蒸発温度について、他方の蒸発器における冷媒蒸発温度の変化により各特性が増減する変化率をまとめた図である(冷媒:R134a、冷媒凝縮温度:42℃)。 二つの蒸発器があり、二つの蒸発器における冷媒蒸発温度が同一の場合における冷凍機の特性を基準として、一方の蒸発器におけるある冷媒蒸発温度について、他方の蒸発器における冷媒蒸発温度の変化により各特性が増減する変化率をまとめた図である(冷媒:R123、冷媒凝縮温度:38℃)。 二つの蒸発器があり、二つの蒸発器における冷媒蒸発温度が同一の場合における冷凍機の特性を基準として、一方の蒸発器におけるある冷媒蒸発温度について、他方の蒸発器における冷媒蒸発温度の変化により各特性が増減する変化率をまとめた図である(冷媒:R123、冷媒凝縮温度:42℃)。 本発明に係る冷凍機において採用される水和物スラリ製造用蒸発器の一実施の形態である満液式蒸発器の基本構成の説明図である。 伝熱管の内壁面で起こる包接水和物の生成・付着と剥離を描写した概念説明図である。 伝熱管の圧力損失と伝熱管内の原料水溶液の流速との関係を示す実験データをグラフ表示した図である。 本発明に係る冷凍機を組み込んだ空調設備の概略構成を示す図である。 本発明に係る冷凍機を組み込んだ他の空調設備の概略構成を示す図である。
符号の説明
1 遠心式圧縮機
2 電動機
3 凝縮器
4 冷水製造用蒸発器
5 水和物スラリ製造用蒸発器
6、7 膨張弁又はオリフィス
8 冷媒液遮断弁
9 冷媒ガス遮断弁
10 膨張弁又はオリフィス
11 冷却塔
12 三方弁
13 バッファタンク
14 水和物スラリ蓄熱槽
15 冷水/水和物スラリ熱交換器
16 熱利用側負荷(例えば空調機)
17〜21 ポンプ
22 流量計
23〜27及び30〜32 温度センサ
28、29 開閉バルブ
50 満液式蒸発器

Claims (10)

  1. 圧縮機と凝縮器と蒸発器との間を冷媒が流通する配管で連結する冷凍サイクルを構成する冷凍機であって、前記蒸発器は、水和物スラリを製造するための水和物スラリ製造用蒸発器と、冷水を製造するための冷水製造用蒸発器とが前記凝縮器と前記圧縮機との間に択一的に接続可能に構成されており、
    水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとを択一的に構成すると共に前記圧縮機及び前記凝縮器を前記水和物スラリ製造用冷凍サイクルと前記冷水製造用冷凍サイクルにおいて兼用し、
    前記水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける冷媒蒸発温度と前記冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒蒸発温度との差が3度未満に設定されていることを特徴とする冷凍機。
  2. 水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際に、前記冷媒の蒸発温度の変動を小さくする制御手段を備え、該制御手段は水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度を計測し、計測した冷媒蒸発温度と設定値とを比較し偏差をゼロとするように圧縮機の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の冷凍機。
  3. 前記冷媒の蒸発温度が0℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍機。
  4. 前記水和物スラリ製造用蒸発器が満液式蒸発器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍機。
  5. 前記水和物スラリ製造用蒸発器は、前記冷媒と接する外壁面と水和物のゲスト化合物の水溶液と接する内壁面を備える伝熱管を備え、前記内壁面に付着する前記水和物の一部が前記水溶液の流れの力により取り除かれ、その残部が前記内壁面を覆うように残る満液式蒸発器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍機。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の冷凍機の運転方法であって、蓄熱運転の際に前記水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する工程と、空調運転の際に前記冷水製造用蒸発器により冷水を製造する工程を有することを特徴とする冷凍機の運転方法。
  7. 請求項5に記載の冷凍機の運転方法であって、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際に、前記冷媒の蒸発温度をその変動が小さくなるように制御する工程を有することを特徴とする冷凍機の運転方法。
  8. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の冷凍機と、水和物スラリを蓄える蓄熱槽と、前記水和物製造用蒸発器において製造された水和物スラリを前記蓄熱槽に供給する第1の経路と、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第2の経路と、前記冷水製造用蒸発器において製造した冷水が有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第3の経路とを備えることを特徴とする空調設備。
  9. 請求項8に記載の空調設備の運転方法であって、夜間、前記水和物製造用蒸発器において水和物スラリを製造し、前記第1の経路を通じて前記蓄熱槽に蓄える工程と、昼間、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを前記第2の経路を通じて前記熱利用側負荷に供給する工程と有することを特徴とする空調設備の運転方法。
  10. 昼間、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを前記熱利用側負荷に供給した後、前記冷水製造用蒸発器において製造した冷水が有する熱エネルギーを前記第3の経路を通じて前記熱利用側負荷に供給する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の空調設備の運転方法。
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