JP4867851B2 - 冷凍機及びその運転方法並びに空調設備及びその運転方法 - Google Patents
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Description
(1) 「包接水和物」には、準包接水和物が含まれる。
(2) 「包接水和物」は「水和物」と略称される場合がある。
(3) 「スラリ」とは、液体中に固体粒子が分散又は懸濁した状態又はその状態にある物質をいう。沈降しがちな固体粒子を浮遊状態とするために界面活性剤を添加したり、機械的に攪拌したりすることもあるが、液体中に固体粒子が分散又は懸濁している限り、「スラリ」という。液体中に固体粒子が分散又は懸濁している限り、その分散又は懸濁が不均一なものであっても、「スラリ」という。
(4) 「包接水和物のスラリ」は「包接水和物スラリ」又は「水和物スラリ」と略称される場合がある。
(5) 「原料水溶液」とは、包接水和物のゲスト化合物を含む水溶液をいう。当該ゲスト化合物とは別の微量物質が添加されていても「原料水溶液」という。また、包接水和物が分散又は懸濁していても、即ち水和物スラリの様相を呈していても、包接水和物のゲスト化合物を含む水溶液であれば「原料水溶液」という。
(6) 「水和物生成温度」とは、原料水溶液を冷却したときに、包接水和物が生成すべき温度をいう。原料水溶液のゲスト化合物の濃度により包接化合物が生成すべき温度が変動する場合であっても、これを「水和物生成温度」という。なお、簡便のため、「水和物生成温度」を包接水和物又は水和物の「凝固点」という場合がある。
このため、冷媒との熱交換により製造される冷水の温度(理想的に伝熱面積が無限大であれば冷水製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と同義であるが、現実的には冷水製造用蒸発器の出口における冷水の温度の意)は4〜7℃が限度とされ(特許文献3、特許文献4)、実用上は4〜8℃程度に設定されることが多い。
水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとを択一的に構成すると共に前記圧縮機及び前記凝縮器を前記水和物スラリ製造用冷凍サイクルと前記冷水製造用冷凍サイクルにおいて兼用し、前記水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける冷媒蒸発温度と前記冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒蒸発温度との差が3度未満に設定されていることを特徴とするものである。
なお、後者の工程は、空調運転の際の追掛運転時に前記冷水製造用蒸発器により冷水を製造する工程であってもよい。
なお、逆の見方をすれば、冷水製造用蒸発器を備える冷凍サイクルにおいて当該冷水製造用蒸発器を水和物スラリ製造用蒸発器で置換すれば又は当該冷凍サイクルを構成する圧縮機、凝縮機及び冷媒が流通する配管の一部と水和物スラリ製造用蒸発器とを組み合わせれば、水和物スラリ製造用蒸発器を備える冷凍サイクルを構成することができるともいえる。
従って、圧縮機、凝縮機及び冷媒が流通する配管の一部を兼用し、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とを択一的に接続する又は切り替えることにより構成される冷凍サイクルにより、大掛かりな変更を施すことなく、水和物スラリ製造用冷凍サイクル及び冷水製造用冷凍サイクルを択一的に実現することができる。
本発明の第1の形態によれば、水和物スラリ空調設備と冷水空調設備のいずれにも、また、水和物スラリを製造する蓄熱運転と冷水を製造する空調運転(特に追掛運転)を行う空調設備にも適用可能な単一の冷凍機を、相対的に低い設備費用により又は高い費用対効果により実現することができる。
先述の例、即ち水和物スラリを蓄えるための蓄熱槽を備える水和物スラリ空調設備と冷水空調設備とを組み合わせた空調設備では、本発明の第7の形態に係る冷凍機の運転方法は特に有益である。第7の形態によれば、蓄熱運転時には水和物スラリを製造し、これを蓄熱槽に蓄えておき、空調運転時には、当該蓄熱槽に蓄えられている水和物スラリを冷熱媒体として利用するとともに、冷熱の不足分を補充するために冷水を製造する運転又は追掛運転を行うことができる。これにより、効率の良い空調を行うことができる。
しかし、そのような工夫を施しても又は蒸発器の伝熱面への水和物の付着が避け難いものとしてこれを受け入れたとしても、冷媒蒸発温度が変動すると原料水溶液の冷却のされ方が変動し、蒸発器の伝熱面への包接水和物の付着状態が変動するため、水和物の生成が不安定になり、総じて水和物スラリの製造が安定しない。これに対し、本発明の第8の形態によれば、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際、冷媒蒸発温度をその変動幅が小さなるように制御するので、水和物スラリを安定的に製造できる冷凍機の運転を実現することができる。
なお、冷媒蒸発温度をその変動幅が小さくなるように制御することには、結果として冷媒蒸発温度の変動幅が小さくなる限り、冷媒蒸発温度が一定、所定範囲内又は所定値以上になるように制御することが含まれる。
これに対し、第9の形態によれば、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際に、冷媒の蒸発温度の変動幅が小さくなるように圧縮機を制御するので、水和物スラリを長時間に亘り安定的に製造できる冷凍機の運転を実現することができる。
[実施の形態1]
<冷凍機の基本構成>
図1は、本発明に係る冷凍機の一実施の形態の概略図である。図中、1は遠心式圧縮機、2は遠心式圧縮機1を駆動する電動機、3は凝縮器、4は冷水製造用蒸発器、5は水和物スラリ製造用蒸発器、6は冷水製造用冷凍サイクルにおける膨張弁又はオリフィス、7は水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける膨張弁又はオリフィス、8は冷媒液遮断弁、9は冷媒ガス遮断弁である。8a及び8bはそれぞれ冷水製造用冷凍サイクル及び水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する冷媒液遮断弁8、9a及び9bはそれぞれ冷水製造用冷凍サイクル及び水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する冷媒ガス遮断弁9である。
冷水製造用冷凍サイクルは、遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3、冷媒液遮断弁8a、膨張弁又はオリフィス6、冷水製造用蒸発器4、冷媒ガス遮断弁9a及びこれらを接続する冷媒用配管を用い、遠心式圧縮機1、凝縮器3、冷媒液遮断弁8a、膨張弁又はオリフィス6、冷水製造用蒸発器4、冷媒ガス遮断弁9a、遠心式圧縮機1、・・・の順に冷媒が循環することによって実現される。冷水製造用蒸発器4では、送込まれてきた水が冷媒との熱交換により冷却され、冷水となって送出される。
次に、図1に示す冷凍機の動作及び運転方法について説明する。冷媒液遮断弁(8a、8b)及び冷媒ガス遮断弁(9a、9b)は、冷媒の遮断のみを目的とする場合には、いずれか一方で足りるが、以下の説明においては、両遮断弁があるものとする。
(1)水和物スラリ製造用蒸発器5を使用して水和物スラリを製造する場合
まず、切替手段により、冷媒液遮断弁8a及び冷媒ガス遮断弁9aの少なくとも一方を閉とし、膨張弁又はオリフィス6を閉(動作不能)の状態にするとともに、冷冷媒液遮断弁8b及び冷媒ガス遮断弁9bを開とし、膨張弁又はオリフィス7を開(動作可能)の状態にする。これにより水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流通経路(図中の点線矢印に沿った経路)が構成される。
この結果、水和物スラリ製造用満液式蒸発器5において原料水溶液が冷却されて水和物スラリが製造される。
まず、切替手段により、冷媒液遮断弁8b及び冷媒ガス遮断弁9bの少なくとも一つを閉とし、膨張弁又はオリフィス7を閉(動作不能)の状態とし、冷媒液遮断弁8a、冷媒ガス遮断弁9aをすべて開とし、膨張弁又はオリフィス6を開(動作可能)の状態にする。これにより冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流通経路(図中の実線矢印に沿った経路)が構成される。
次に、遠心式圧縮機1を電動機2で駆動させ、冷媒ガスを圧縮する。遠心式圧縮機1で圧縮された冷媒ガスは、凝縮器3に送られて、そこで冷却水によって冷却される。この冷却により冷媒はほぼ飽和液になる。引き続き冷媒液は、膨張弁又はオリフィス6に送られ、減圧される。減圧された冷媒液は、冷水製造用蒸発器4に送られ、当該蒸発器4内の伝熱管を流れる水を冷却して冷水にし、自らは蒸発しガス化する。ガス化した冷媒は、再び遠心式圧縮機1に送られ、以後、以上の循環が繰り返される。それ故、冷媒は冷水製造用蒸発器4のみを流れる。
この結果、冷水製造用蒸発器4において供給された水が冷却されて冷水が製造される。
(3−1) 冷水製造用蒸発器4及び水和物スラリ製造用満液式蒸発器5においてそれぞれ製造される冷水及び水和物スラリの各温度(いずれも各蒸発器4、5における出口温度)は、4〜8℃程度に設定される。冷水空調設備の場合には、既述の凍結問題を回避する必要上4℃が下限となり、一方、上限は、冷房負荷側設備(空調機、AHU、FCUなど)において要求される温度が一般的に7〜8℃であることから8℃程度となる。水和物スラリ空調設備の場合も、同様である。
例えば、冷水製造用蒸発器4における冷媒蒸発温度及び冷水の出口温度をそれぞれ2℃及び5℃とし、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度及び水和物スラリの出口温度をそれぞれ2℃及び5℃となるように設計すれば、両蒸発器4、5における冷媒蒸発温度はいずれも2℃なので、遠心式圧縮機1の運転条件は、それが水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成している場合であれ、冷水製造用冷凍サイクルを構成している場合であれ、同じになる。
それ故、上記のような設計を行えば、水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとの間で圧縮機1が兼用されるだけでなく、いずれの冷凍サイクルに切り替わったとしても、それに応じて圧縮機1の運転条件を変更する必要がなくなる。
従って、図1に示す冷凍機の実施の形態においては、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とは切替手段により単一の冷凍サイクルに択一的に接続可能となり、冷水製造用冷凍サイクルと水和物スラリ製造用冷凍サイクルとが択一的に切り替わる。それ故、水和物スラリ空調設備と冷水空調設備のいずれにも、また、水和物スラリを製造する夜間運転と冷水を製造する昼間運転(特に追掛運転)を行う空調設備にも適用可能な単一の冷凍機となる。そして、両冷凍サイクルにおいては、少なくとも遠心式圧縮機1及び凝縮器3が、より詳しくは遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3及びこれらを接続する冷媒用配管が兼用される。それ故、相対的に低い設備費用又は高い費用対効果を実現することができる。
図1に示す冷凍機においては、二つの冷媒用遮断弁(8a、8b)の機能をP点に配置した一つの三方弁により置き換えることができる。また、二つの冷媒ガス用遮断弁(9a、9b)の機能をQ点に配置した一つの三方弁により置き換えることができる。
なお、膨張弁又はオリフィス6及び7は、それぞれ、駆動装置(図示せず)を備え、制御装置CRL(図示せず)により開度を制御可能になるようにしてもよい。これにより、各冷凍サイクルにおいてそれぞれ好適な運転条件になるように膨張弁又はオリフィス6又は7の開度を各冷凍サイクルに応じて調整することが可能になる。例えば、蒸発器出口の冷媒ガスの過熱度を検出し、過熱度が一定値になるように膨張弁又はオリフィス6又は7の開度を調整する。また、蒸発器に液面計を設け液面位置を検出し、液面位置が一定になるように膨張弁又はオリフィス6又は7の開度を調整する。
<冷凍機の基本構成>
図2は、本発明に係る冷凍機の他の実施の形態の概略図である。
図中の1〜5、8(8a、8b)及び9(9a、9b)は、図1中の1〜5、8(8a、8b)及び9(9a、9b)と同じものを指示している。10は、水和物製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとで兼用される膨張弁又はオリフィスである。冷媒としてはR134a又はR123が好適である。
次に、図2に示す冷凍機の動作及び運転方法について説明する。冷媒液遮断弁(8a、8b)及び冷媒ガス遮断弁(9a、9b)は、冷媒の遮断のみを目的とする場合には、いずれか一方で足りるが、以下の説明においては、両遮断弁があるものとする。
膨張弁10は常時開(動作可能)の状態にしておく。
まず、切替手段により、冷媒液遮断弁8a及び冷媒ガス遮断弁9aの少なくとも一方を閉とし、冷媒液遮断弁8b及び冷媒ガス遮断弁9bをすべて開とする。これにより水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流通経路(図中の点線矢印に沿った経路)が構成される。
この結果、水和物スラリ製造用満液式蒸発器5において原料水溶液が冷却されて水和物スラリが製造される。
まず、切替手段により、冷媒液遮断弁8b及び冷媒ガス遮断弁9bの少なくとも一つを閉とし、冷媒液遮断弁8a、冷媒ガス遮断弁9aをすべて開とする。これにより冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流通経路(図中の実線矢印に沿った経路)が構成される。
次に、遠心式圧縮機1を電動機2で駆動させ、冷媒ガスを圧縮する。遠心式圧縮機1で圧縮された冷媒ガスは、凝縮器3に送られて、そこで冷却水によって冷却される。この冷却により冷媒はほぼ飽和液になる。引き続き冷媒液は、膨張弁10に送られ、減圧される。減圧された冷媒液は、冷水製造用蒸発器4に送られ、当該蒸発器4内の伝熱管を流れる水を冷却して冷水にし、自らは蒸発しガス化する。ガス化した冷媒は、再び遠心式圧縮機1に送られ、以後、以上の循環が繰り返される。それ故、冷媒は冷水製造用蒸発器4のみを流れる。
この結果、冷水製造用蒸発器4において供給された水が冷却されて冷水が製造される。
図1に示す冷凍機についての上記(3−1)及び(3−2)で説明した事項は、図2に示す冷凍機にも当て嵌まる。
図2に示す冷凍機では、図1に示すものと同様に、水和物スラリ製造用蒸発器と冷水製造用蒸発器とは切替手段により単一の冷凍サイクルに択一的に接続可能となり、冷水製造用冷凍サイクルと水和物スラリ製造用冷凍サイクルとが択一的に切り替わる。それ故、水和物スラリ空調設備と冷水空調設備のいずれにも、また、水和物スラリを製造する夜間運転と冷水を製造する昼間運転(特に追掛運転)を行う空調設備にも適用可能な単一の冷凍機となる。
そして、図1に示す実施形態と同様に、両冷凍サイクルにおいては、少なくとも遠心式圧縮機1及び凝縮器3が、より詳しくは遠心式圧縮機1、電動機2、凝縮器3及びこれらを接続する冷媒用配管が兼用される。それ故、相対的に低い設備費用又は高い費用対効果を実現することができる。
しかも、図2に示す冷凍機では、図1に示すものと異なり、膨張弁又はオリフィス10も兼用される。それ故、図2に示す冷凍機の方が、図1に示すものよりも、相対的に低い設備費用又は高い費用対効果を実現することができる。
なお、膨張弁又はオリフィス10は、兼用されるとはいえ、駆動装置(図示せず)を備え、制御装置(図示せず)により開度を制御可能になるようにしてもよい。これにより、各冷凍サイクルにおいてそれぞれ好適な運転条件になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を各冷凍サイクルに応じて調整することが可能になる。例えば、蒸発器出口の冷媒ガスの過熱度を検出し、過熱度が一定値になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を調整する。また、蒸発器に液面計を設け液面位置を検出し、液面位置が一定になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を調整する。
また、図2に示す冷凍機においては、二つの冷媒用遮断弁(8a、8b)の機能をP点に配置した一つの三方弁により置き換えることができ、二つの冷媒ガス用遮断弁(9a、9b)の機能をQ点に配置した一つの三方弁により置き換えることができる。
<両蒸発器における冷媒蒸発温度の差について>
本発明においては、水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度と冷水製造用蒸発器における冷媒蒸発温度との差が3度未満、好ましくは2度以下であることが望ましい(第3の形態)。以下にその理由を説明する。
(1) 圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器の順に冷媒が流れ、冷凍サイクルを構成するとき、圧縮機の性能は、一般に、吸込み冷媒流量と圧力比(圧縮機の吐出圧力/圧縮機の吸込圧力)で決まる。
ここで、圧縮機が一定回転数で運転されていれば、その圧縮機に吸い込まれる冷媒の体積流量は変わらないので、圧縮機の吸込みガスの比体積(m3/kg)が分かれば吸込み冷媒流量は求まる。冷媒蒸発温度がわかれば、R134a、R123等の冷媒の蒸気表(公知)に照らして圧縮機の吸込みガスの比体積が求まる。それ故、冷媒蒸発温度が分かれば、圧縮機の吸込み冷媒流量が求まる。
図3は、冷媒がR134aである場合における圧力−比エンタルピ線図上に、一段圧縮理論サイクルを例示したものである。A点は圧縮機出口(凝縮器入口)、B点は凝縮器出口(膨張弁入口)、C点は蒸発器入口(膨張弁出口)、D点は蒸発器出口(圧縮機入口)を示している。D→Aが圧縮、A→Bが凝縮、B→Cが膨張、C→Dが蒸発の各段階である。圧縮機の吐出圧力と吸込圧力が求まれば、A〜Dの各点が求まり、横軸上に投影したC−D間の比エンタルピ差(冷凍効果)とD−A間の比エンタルピ差(圧縮仕事)が、従い冷凍サイクルの成績係数が求まる。冷媒がR123である場合も同じ要領で成績係数が求まる。
また、各図中(a)乃至(d)は、それぞれ順に、冷凍機の特性として圧縮機の吸込圧力、圧力比及び吸込比体積並びに冷凍サイクルの成績係数の変化率について纏めたものである。各図中の数値は、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度が8℃から0℃の範囲のある温度のとき、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度と他方の蒸発器における冷媒蒸発温度とが同じ場合を基準「100」として、他方の蒸発器における冷媒蒸発温度を8℃から0℃に変動させたとき、冷凍機の各特性が増減した変化率の値である。
例えば、冷媒がR134aであり、冷媒凝縮温度が38℃のとき、冷媒蒸発温度が4℃のときの圧縮機の圧力比は「2.85」である(表1参照)。また、冷媒蒸発温度が0℃であれば、圧縮機の圧力比は「3.29」となる(表1参照)。一方の蒸発器における冷媒蒸発温度と他方の蒸発器における冷媒蒸発温度とが同じ4℃のときの圧縮機の圧力比「2.85」を基準「100」としたとき、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度が4℃で他方の蒸発器における冷媒蒸発温度が0℃のときの圧縮機の圧力比「3.29」は変化率「115(3.29/2.85)」に相当する(図4(b)において、一方の蒸発器における冷媒蒸発温度「4℃」の行において他方の蒸発器における冷媒蒸発温度「0℃」の列の交点が「115」となる)。この操作を繰り返してできたものが、図4〜図7である。
すると、上記の「90〜110」の範囲(両端を含まず)の範囲は、二つの蒸発器における冷媒蒸発温度の差が3度未満の範囲、より狭くは2度以内の範囲であることが分かる。このことは、二つの蒸発器における冷媒蒸発温度の差を3度未満、好ましくは2度以内の範囲に設定すれば、上記の各変化率が10%未満となり、圧縮機の性能が大幅には変わらないことを意味している。
ただし、図2に示す冷凍機では、冷水製造用冷凍サイクルと水和物スラリ製造用冷凍サイクルで膨張弁又はオリフィス10が兼用され、従って単一の膨張弁又はオリフィス10により膨張させられた冷媒が異なる蒸発器(冷水製造用蒸発器4と水和物スラリ製造用蒸発器5)に択一的に供給される。それ故、図2に示す冷凍機では、図1に示すものより厳格に、冷水製造用蒸発器4における冷媒蒸発温度と水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度との差がより小さくなるように、即ちその差が3度未満、好ましくは2度以下、より好ましくはゼロ(従って同じ冷媒蒸発温度)になるように運転される。
冷媒蒸発温度が変動すると原料水溶液の冷却のされ方が変動し、蒸発器の伝熱面への包接水和物の付着状態が変動するため、水和物の生成が不安定になり、総じて水和物スラリの製造が安定しない。そこで、本発明においては、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際、冷媒蒸発温度をその変動幅が小さくなるように制御する(第8の形態)。
(a) まず、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を計測する手段を設ける。具体的には、水和物スラリ製造用蒸発器5の内部の温度を計測できる温度センサ(図7における温度センサ25に相当するもの)を設置し、その温度センサにより冷媒蒸発温度相当の温度を計測し、監視する。冷媒蒸発温度は飽和温度であるため、温度センサの代わりに圧力センサであっても良い。圧力を計測し、飽和温度に換算する。
(b―1) 上記温度センサの出力が設定値を上回った場合(即ち、冷媒蒸発温度が高すぎる場合)には、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を上げ、最終的に冷媒蒸発温度が低下するようにする。上記温度センサの出力が設定値を下回った場合(即ち、冷媒蒸発温度が低すぎる場合)には、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を下げ、最終的に冷媒蒸発温度が上昇するようにする。
なお、上記温度センサの出力が設定値を下回った場合にのみ、冷媒温度調整装置の動作を制御して、最終的に冷媒蒸発温度が増加するようにしてもよい。この場合、上記温度センサの出力が設定値を上回ったとき、上記(b−1)の制御(即ち、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を上げる制御)を行うようにしてもよい。
水和物スラリ空調設備では、水和物スラリを蓄える蓄熱槽の有無に拘らず、所定の温度又は温度範囲にある水和物スラリが製造されることが望まれるのが通常である。水和物スラリ製造用蒸発器において製造される水和物スラリを所定の温度又は温度範囲で製造するための制御は、例えば次の手法により実現される。
(b’―1) 上記温度センサの出力が設定値を上回った場合(即ち、水和物スラリ製造用蒸発器5における水和物スラリの出口温度が高すぎる場合)には、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を上げ、最終的に当該出口温度が低下するようにする。上記温度センサの出力が設定値を下回った場合(即ち、当該出口温度が低すぎる場合)には、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を下げ、最終的に当該出口温度が上昇するようにする。
なお、電動機2の制御は、多くの場合インバータ制御であるが、これに限定されない。
なお、上記温度センサの出力が設定値を下回った場合にのみ、冷媒温度調整装置の動作を制御して、最終的に当該出口温度が上昇するようにしてもよい。この場合、上記温度センサの出力が設定値を上回ったとき、上記(b’−1)の制御(即ち、設定値との偏差がゼロになるように、電動機2の動作を制御して、圧縮機1の出力を上げる制御)を行うようにしてもよい。
<水和物スラリ製造用蒸発器の基本構成>
図8は、本発明に係る冷凍機において採用される水和物スラリ製造用蒸発器5の一実施の形態である満液式蒸発器50(第5及び第6の各形態)の基本構成の説明図であり、図8(a)は縦断面図、図8(b)は横断面図である。いずれの図も、実際の寸法や寸法比では描かれていない。
図8に示す蒸発器50において、冷媒液は冷媒液入口管52から液分配板59を介して外殻部51内に供給される。外殻部51内の冷媒液は飽和液になっているので、冷媒液の温度は、概ねその飽和温度(蒸発温度)、即ち一定になる。この冷媒液に没している伝熱管56は、一定温度に冷却される。このとき、原料水溶液入口管54から水箱57を介して伝熱管56の内部に原料水溶液が供給されると、伝熱管56内を流通し、水箱58に到達するまでの間に、原料水溶液が伝熱管56の内壁面を介して冷媒(液)により水和物生成温度以下に冷却される。この冷却により包接水和物が生成し、原料水溶液に分散又は懸濁することにより水和物スラリとなり、水箱58を介して水和物スラリ出口管55を通じて外郭部51外へ送出される。他方、冷媒(液)は、原料水溶液を冷却することにより気化し、冷媒ガスとなる。冷媒ガスはデミスタ60を介し冷媒ガス出口管53を通じて外郭部51外の圧縮機1(図示せず)に向けて送出される。
(1)水和物スラリの製造
(1−1) 図9は、図8に示す蒸発器50を用いる水和物スラリの製造において、その基礎となる現象、即ち伝熱管56の内壁面で起こる包接水和物の生成・付着と剥離を描写した概念説明図である。
原料水溶液が伝熱管56の内壁面を介して冷媒により水和物生成温度以下に冷却されると、その原料水溶液から包接水和物が生成する。包接水和物は、内壁面を広く覆うように付着し、徐々にその付着厚さを増加させる。このとき、原料水溶液の流速を一定以上にすると、その流れの力により、伝熱管56の内壁面に付着した包接水和物の一部が剥離し、原料水溶液に分散又は懸濁して水和物スラリとなる。
以後、内壁面における包接水和物の付着と剥離が繰り返される。その結果、内壁面における包接水和物の付着と剥離が均衡した段階で、伝熱管56の内壁面における包接水和物の付着厚さは頭打ち(一定)になり、伝熱管56を流れる原料水溶液の圧力損失も頭打ち(一定)になり(下記(1−2)参照)、伝熱管56の閉塞は回避される。その一方で、剥離した包接水和物から水和物スラリが連続的に製造されてゆく。
この図によれば、伝熱管を流れる原料水溶液の流速が一定値(この測定条件の下では約1.8m/s)以上であれば、当該伝熱管の圧力損失は低い値に維持されることが分かる。伝熱管の圧力損失は、伝熱管の内壁面への包接水和物の付着厚とともに増加するので、原料水溶液の流速が一定値以上であれば、包接水和物の付着厚さは概ね一定値以下になるといえる。
原料水溶液に分散又は懸濁した包接水和物は、過冷却解除剤としても機能し、水和物スラリにおける固相割合の増加(即ち、蓄熱量の増加)を促進させる。
伝熱管56の内壁面における包接水和物の付着と剥離との均衡が崩れ、包接水和物の付着量が剥離量を上回ると、伝熱管56が徐々に閉塞してゆき、原料水溶液が流通し得る断面積が減少してゆく。しかし、その断面積の減少は原料水溶液の圧力を高め、包接水和物を剥離させる原料水溶液の流れの力を高めることになる。これにより、伝熱管56の内壁面における包接水和物の付着と剥離との均衡が回復し、水和物スラリの連続製造が安定化し、長時間製造の実現に資することができる。
図8に記載の水和物スラリ製造用蒸発器50(即ち、第5及び第6の形態に係る冷凍機における水和物スラリ製造用蒸発器)を用いて水和物スラリを連続的に製造する際には、上記(1)に記載のとおり、伝熱管の内壁面にある程度の包接水和物を意図的に残したままにする。しかし、伝熱管の内壁面に付着したまま残される水和物の付着厚が変動すると、伝熱管の圧力損失が変動し、それに応じて水和物スラリ製造用蒸発器の運転状態が変動し、不安定になる。そこで、本発明では、水和物スラリ製造用蒸発器50により水和物スラリを製造する際に、冷媒の蒸発温度の変動幅が小さくなるように圧縮機を制御する(第9の形態)。これにより、水和物スラリを長時間に亘り安定的に製造できる冷凍機の運転を実現することができる。
上記の制御は、例えば、実施の形態3(6)<冷媒蒸発温度の制御>における(a)〜(c)に記載の手法により実現することができる。
<空調設備の基本構成>
図11は、本発明に係る冷凍機を組み込んだ空調設備の概略図である。この図では、本発明に係る冷凍機として図1に示すものを採用している。図11中の1〜7、8(8a、8b)及び9(9a、9b)は、図1中の1〜7、8(8a、8b)及び9(9a、9b)と同じものを指示しているので説明を省略する。
また、図1に示す冷凍機自体の動作及び運転方法については既述のとおりである。
経路A、冷凍機及び経路Bにより冷水の製造とその冷水が有する熱エネルギーの熱利用側負荷における熱利用が行われ、経路A、冷凍機、経路C及び経路Dにより水和物スラリの製造と蓄積が行われ、経路E及び経路Fにより、蓄積された水和物スラリが有する熱エネルギーの熱利用側負荷における熱利用が行われる。
経路Aにおいて、冷却塔11から送出される冷却水は、ポンプ21により搬送され、三方弁12、ポンプ21、温度センサ23を通過して凝縮器3に供給され、凝縮器3において冷媒ガスを凝縮させるための熱交換に供され、その後水温が上がった水として冷却塔11に戻る。以後この循環が繰り返される。
冷却水の温度制御は、凝縮器3に供給される冷却水の温度を計測する温度センサ23の出力に基づき三方弁12の動作により行う。即ち、冷却水の温度が目標値より低い場合には、その偏差に相応分の三方弁12の駆動量をTICにおいて演算し、その演算値だけ三方弁12を駆動させて、M点から相対的に高温の水を取り込んで冷却水に混ぜ、冷却水の温度を上昇させる。冷却水の温度が目標値より高い場合には、三方弁12を動作させて、M点から相対的に高温の水を取り込まないようにして、冷却水の温度を低下させる。
経路Bは、本発明に係る冷凍機が冷水製造用冷凍サイクルを構成している場合の経路であり、本発明の第10の形態における冷水製造用蒸発器において製造した冷水が有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第3の経路に相当するものである。経路Bにおいて、蒸発器4から送出される冷水は、ポンプ20により搬送され、熱利用側負荷16において熱利用に供され、その後水温が上がった水としてポンプ20、R点、開閉バルブ29を通じて蒸発器4に戻る。以後この循環が繰り返される。
冷水の温度制御は、蒸発器4から送出される冷水の温度を計測する温度センサ24の出力に基づき電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させることにより行う。即ち、冷水の温度が目標値よりも低く、温度センサ24の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を下げ、蒸発器4における冷媒蒸発温度を高め、冷水の出口温度が上昇するようにする。冷水の温度が目標値よりも高く、温度センサ24の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を上げ、蒸発器4における冷媒蒸発温度を下げ、冷水の出口温度が低下するようにする。以上の制御を、温度センサ24の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。
経路C及び経路Dはいずれも、本発明に係る冷凍機が水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成している場合の経路である。経路Cは、本発明の第10の形態における水和物製造用蒸発器において製造された水和物スラリを蓄熱槽に供給する第1の経路に相当するものである。経路Dは、水和物スラリ製造用蒸発器5に搬送する原料水溶液の流量を制御するために、バッファタンク13に貯留されている水和物スラリを取り出して経路Cに合流させる経路である。
(3−1) 経路Cにおいて、蓄熱槽14に予め蓄えられていた原料水溶液は、ポンプ18により搬送され、N点においてポンプ17によりバッファタンク13から搬送される水和物スラリと合流した後、水和物スラリ製造用蒸発器5に到達し、水和物スラリ製造用蒸発器5において冷媒液との熱交換に供される。ここで、原料水溶液が冷却され、水和物スラリが製造される。即ち、冷却された原料水溶液から包接水和物が生成し、生成した水和物が原料水溶液に分散又は懸濁にすることにより水和物スラリとなる。この水和物スラリは水和物スラリ製造用蒸発器5から送出され、その一部はバッファタンク13に蓄えられ、残部は蓄熱槽14に送出されて、そこで蓄えられる。このような水和物スラリ製造用蒸発器5と蓄熱槽14との間の原料水溶液/水和物スラリの循環が繰り返されることにより、バッファタンク13及び蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリの固相割合、従って蓄熱量は徐々に増加してゆく。
(ア) 蓄熱槽14に送出される水和物スラリの温度を計測する温度センサ26の出力に基づき電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させる。即ち、水和物スラリの温度が目標値より低く、従って温度センサ26の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を下げ、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を高め、水和物スラリの出口温度、延いてはバッファタンク13から蓄熱槽14に向かう水和物スラリの温度が上昇するようにする。水和物スラリの温度が目標値よりも高く、温度センサ26の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を上げ、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を下げ、水和物スラリの出口温度、延いてはバッファタンク13から蓄熱槽14に向かう水和物スラリの温度が低下するようにする。以上の制御を、温度センサ26の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。
ここで、原料水溶液が冷却され、水和物スラリが製造される。即ち、冷却された原料水溶液から包接水和物が生成し、生成した水和物が原料水溶液に分散又は懸濁することにより水和物スラリとなる。この水和物スラリは水和物スラリ製造用蒸発器5から送出され、その一部はバッファタンク13に蓄えられ、残部は蓄熱槽14に送出される。このような水和物スラリ製造用蒸発器5とバッファタンク14との間の水和物スラリの循環が繰り返されることにより、バッファタンク13及び蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリの固相割合、従って蓄熱量は徐々に増加してゆく。
その際には、伝熱管の内部を流れる原料水溶液の流速を所定値以上の一定速度に制御するために、流量を制御する。水和物スラリ製造用蒸発器5に供給される原料水溶液(原料水溶液としての水和物スラリを含む)の流量制御は、水和物スラリ製造用蒸発器5に供給される原料水溶液の流量を計測する流量計22の出力に基づきポンプ17のインバータ制御を行い、バッファタンク13からN点への水和物スラリの送出量を必要分だけ変化させることにより行う。即ち、原料水溶液の流量が目標値よりも低く、流量計22の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分のポンプ17の出力変更量をFICにおいて演算し、その演算値だけポンプ17の出力を上昇させ、バッファタンク13からN点への水和物スラリの送出量を増やし、N点から水和物スラリ製造用蒸発器5に向かう原料水溶液の流量が増加するようにする。原料水溶液の流量が目標値よりも高く、流量計22の出力が設定値を超えている場合には、その偏差に相応分のポンプ17の出力変更量をFICにおいて演算し、その演算値だけポンプ17の出力を低下させ、バッファタンク13からN点への水和物スラリの送出量を減らし、N点から水和物スラリ製造用蒸発器5に向かう原料水溶液の流量が減少するようにする。以上の制御を、流量計22の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。
具体的には、水和物スラリ製造用蒸発器5内の冷媒温度を計測する温度センサ25の出力に基づき電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させる。即ち、冷媒蒸発温度が目標値より低く、従って温度センサ25の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を下げ、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を高める。
冷媒蒸発温度が目標値よりも高く、温度センサ25の出力が設定値に満たない場合には、その偏差に相応分の電動機2の出力変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動機2、従って圧縮機1の回転数を上げ、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度を下げる。
以上の制御を、温度センサ25の出力と設定値との偏差がゼロになるように行う。なお、25は温度センサでなく、冷媒ガスの圧力を計測する圧力センサであってもよい。上記の目標値及び設定値は複数個(例えば、上限値と下限値)であってもよい。
蓄熱槽14に予め蓄えられていた原料水溶液は、ポンプ18により搬送され、N点においてバッファタンク13から搬送される水和物スラリと合流した後、水和物スラリ製造用蒸発器5に到達し、水和物スラリ製造用蒸発器5において冷媒液との熱交換に供され、原料水溶液が冷却され水和物スラリが製造される。この水和物スラリは水和物スラリ製造用蒸発器5から送出され、その一部はバッファタンク13に蓄えられ、残部は蓄熱槽14に送出されて、そこで蓄えられる。水和物スラリ製造用蒸発器5の伝熱管の内部を流れる原料水溶液の流速を所定値以上の一定速度に制御するために、流量計22の出力に基づきポンプ17のインバータ制御を行い、バッファタンク13から水和物スラリ製造用蒸発器5への水和物スラリの送出流量を制御する。水和物スラリの製造を行う際、経路Dは水和物スラリ製造用蒸発器5へ搬送される原料水溶液の流量を制御するための水和物スラリの再循環経路となっている。また、蓄熱槽14に送出される水和物スラリの温度を計測する温度センサ26の出力が設定値になるようにポンプ18が制御される(上記(3−1)(イ)参照)。
経路E及び経路Fは、蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリが有する熱エネルギー(冷熱)を熱利用に供するための経路であり、本発明の第10の形態における蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第2の経路に相当するものである。
経路Eにおいて、蓄熱槽14に蓄えられている水和物スラリは、ポンプ19により搬送され、冷水/水和物スラリ熱交換器15に供給され、冷水/水和物スラリ熱交換器15において水を冷水にするための熱交換に供され、その後水溶液の状態で蓄熱槽14に戻る。以後この循環が繰り返される。経路Fにおいて、冷水/水和物スラリ熱交換器15における水和物スラリとの熱交換により製造された冷水は、ポンプ20により搬送され、熱利用側負荷16において熱利用に供され、その後水温が上がった水としてポンプ20、R点、開閉バルブ28を通じて冷水/水和物スラリ熱交換器15に戻る。以後この循環が繰り返される。それ故、経路E及び経路Fは冷水/水和物スラリ熱交換器15を介して互いに熱伝達的に繋がり、これにより水和物スラリが有する潜熱相当の熱エネルギーが、冷水が有する顕熱相当の熱エネルギーに変換され、熱利用側負荷16に供給される。
図11に示す空調設備の全体動作は、本発明に係る冷凍機の動作を含め、制御装置CTLにより制御される。当該空調設備の運転方式には、少なくとも次の(M1)〜(M4)に掲げる運転モードがある。
この運転モードにおいては、制御装置CTLが制御信号g1〜g4を発信し、冷媒用遮断弁8a、8b及び冷媒ガス用遮断弁9a、9bの各駆動装置(K1〜K4)を作動させ、遮断弁8a、9aを開き、遮断弁8b、9bを閉じ、これにより冷凍機において冷水製造用冷凍サイクルを構成する。同時に、制御装置CTLが制御信号g5、g6を発信し、開閉バルブ28、29の各駆動装置(K5、K6)を作動させ、バルブ28を閉じ、バルブ29を開き、これにより熱利用側負荷16を経路Bに接続し、経路Fに非接続とする。以上により、冷凍機と経路Bとが冷水製造用蒸発器4を介して接続し、蒸発器4において製造された冷水のみが熱利用側負荷16に供給されるようになる。
この運転モードにおいては、制御装置CTLが制御信号g1〜g4を発信し、各駆動装置(K1〜K4)を作動させ、遮断弁8a、9aを閉じ、遮断弁8b、9bを開き、冷凍機において水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する。これにより、冷凍機と経路C及び経路Dとが水和物スラリ製造用蒸発器5を介して接続し、蒸発器4において製造された水和物スラリが蓄熱槽14に供給されるようになる。
この運転モードにおいては、制御装置CTLが制御信号g5、g6を発信し、開閉バルブ28、29の各駆動装置(K5、K6)を作動させ、バルブ28を開き、バルブ29を閉じ、これにより熱利用側負荷16を経路Bに非接続とし、経路Fに接続とする。これにより、熱利用側負荷16と蓄熱槽14とが経路E、冷水/水和物スラリ熱交換器15及び経路Fを介して接続し、蓄熱槽14に蓄えられた水和物スラリが有する潜熱相当の熱エネルギーが冷水/水和物スラリ熱交換器15における水和物スラリと水との熱交換を通じて冷却された水が有する顕熱相当の熱エネルギーとして熱利用側負荷16に供給されるようになる。
この運転モードにおいては、制御装置CTLが制御信号g1〜g4を発信し、各駆動装置(K1〜K4)を作動させ、遮断弁8a、9aを閉じ、遮断弁8b、9bを開き、冷凍機において水和物スラリ製造用冷凍サイクルを構成する。同時に、制御装置CTLが制御信号g5、g6を発信し、開閉バルブ28、29の各駆動装置(K5、K6)を作動させ、バルブ28を開き、バルブ29を閉じ、これにより熱利用側負荷16を経路Bに非接続とし、経路Fに接続とする。
(1) 夜間の蓄熱運転
水和物スラリを製造し、これを蓄熱槽に蓄えておく運転、即ち蓄熱運転を夜間に行う。図11に示す空調設備において蓄熱運転を行う場合には、まず、本発明に係る冷凍機において冷水製造用蒸発器4ではなく水和物スラリ製造用蒸発器5を冷凍システムに接続し、水和物製造用冷凍システムを構成し、上記(M2)の運転モードで当該空調設備を運転する。この場合、水和物スラリ製造用蒸発器5における冷媒蒸発温度の変動幅が小さくなるように制御する。具体的には、水和物スラリ製造用蒸発器5内の冷媒液温度を計測する温度センサ25の出力と設定値との偏差がゼロになるように電動機2のインバータ制御を行い、圧縮機1の回転数を必要分だけ変化させる(本実施の形態<空調設備の基本構成>(3−3)参照)。
水和物スラリの製造を行う場合には、まず、経路Dにおいてこれを開始し、水和物スラリ製造用蒸発器5における水和物スラリの出口温度又はバッファタンク13内の水和物スラリの温度が所定値になったとき、ポンプ18を起動し、経路Cを重畳し、蓄熱槽14における水和物スラリの入口温度が設定値になるようにポンプ18が制御される(本実施の形態<空調設備の基本構成>(3−4)参照)。
蓄熱槽14が水和物スラリで満たされたとき又は蓄熱時間が終了したとき、遠心式圧縮機1、電動機2を停止し、ポンプ18、ポンプ17の順に作業員の手動操作により又は制御装置CTLからの制御信号により停止する。
(2−1)蓄熱利用運転
熱利用側負荷16側を冷房する運転、即ち空調運転を、蓄熱槽14内に蓄熱されている水和物スラリが有する熱エネルギー(冷熱)を利用して昼間に行う。図11に示す空調設備において蓄熱利用運転を行う場合には、上記(M3)の運転モードで当該空調設備を運転する。この場合、冷水/水和物スラリ熱交換器15における冷水の出口温度が目標値になるようにポンプ19を制御する(本実施の形態<空調設備の基本構成>(4)参照)。
熱利用側負荷16側を冷房するために必要な冷熱を賄うためには、蓄熱槽14内に蓄熱されている水和物スラリの冷熱だけでは不足分がある場合に、別途製造した冷水の冷熱により当該不足分を補填するための空調運転である。
例えば、本発明に係る冷凍機において水和物スラリ製造用蒸発器5(図8に示すものであれば蒸発器50)ではなく冷水製造用蒸発器4を冷凍システムに接続し、冷水製造用冷凍システムを構成し、上記(M1)の運転モードで当該空調設備を運転する。このとき冷水製造用蒸発器4の出口側に設けられた温度センサ24によって、冷水の出口温度を計測し、その出口温度が一定になるように遠心式圧縮機1の回転数を制御するようにする。そして、開閉弁28を開とし、冷水/水和物スラリ熱交換器15からの冷水と冷水製造用蒸発器4からの冷水とを熱利用側負荷16に搬送する。これにより両冷水が有する冷熱エネルギーを熱利用側負荷16に供給する。
別の例としては、まず、蓄熱槽14に蓄えられた水和物スラリが有する冷熱エネルギーを冷水/水和物スラリ熱交換器15により冷水に熱交換して当該冷水が有する冷熱エネルギーを熱利用側負荷16に供給し、できるだけ使い切るようにする(使い切る必要はない)。その後、上記(M1)の運転モードで当該空調設備を運転し、冷水製造用蒸発器4において製造した冷水が有する冷熱エネルギーを熱利用側負荷16に供給する。
上記の2例のいずれによっても追掛運転を実現できる。
図12は、本発明に係る冷凍機を組み込んだ他の空調設備の概略図である。この図では、図11における本発明に係る冷凍機を図2に示すものに置き換えている。冷凍機における膨張弁又はオリフィス10は駆動装置K0を備え、制御装置CRLが発信する制御信号g0により当該駆動装置K0を作動させることにより、各冷凍サイクルにおいてそれぞれ好適な運転条件になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を各冷凍サイクルに応じて調整することが可能になる。その他の点は、基本的に図11に示す空調設備と同じであるので、説明を省略する。
なお、各冷凍サイクルに応じて調整する例としては、蒸発器出口の冷媒ガスの過熱度を検出し、過熱度が一定値になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を調整する場合が挙げられる。また、蒸発器に液面計を設け液面位置を検出し、液面位置が一定になるように膨張弁又はオリフィス10の開度を調整するようにしてもよい。
2 電動機
3 凝縮器
4 冷水製造用蒸発器
5 水和物スラリ製造用蒸発器
6、7 膨張弁又はオリフィス
8 冷媒液遮断弁
9 冷媒ガス遮断弁
10 膨張弁又はオリフィス
11 冷却塔
12 三方弁
13 バッファタンク
14 水和物スラリ蓄熱槽
15 冷水/水和物スラリ熱交換器
16 熱利用側負荷(例えば空調機)
17〜21 ポンプ
22 流量計
23〜27及び30〜32 温度センサ
28、29 開閉バルブ
50 満液式蒸発器
Claims (10)
- 圧縮機と凝縮器と蒸発器との間を冷媒が流通する配管で連結する冷凍サイクルを構成する冷凍機であって、前記蒸発器は、水和物スラリを製造するための水和物スラリ製造用蒸発器と、冷水を製造するための冷水製造用蒸発器とが前記凝縮器と前記圧縮機との間に択一的に接続可能に構成されており、
水和物スラリ製造用冷凍サイクルと冷水製造用冷凍サイクルとを択一的に構成すると共に前記圧縮機及び前記凝縮器を前記水和物スラリ製造用冷凍サイクルと前記冷水製造用冷凍サイクルにおいて兼用し、
前記水和物スラリ製造用冷凍サイクルにおける冷媒蒸発温度と前記冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒蒸発温度との差が3度未満に設定されていることを特徴とする冷凍機。
- 水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際に、前記冷媒の蒸発温度の変動を小さくする制御手段を備え、該制御手段は水和物スラリ製造用蒸発器における冷媒蒸発温度を計測し、計測した冷媒蒸発温度と設定値とを比較し偏差をゼロとするように圧縮機の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の冷凍機。
- 前記冷媒の蒸発温度が0℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍機。
- 前記水和物スラリ製造用蒸発器が満液式蒸発器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍機。
- 前記水和物スラリ製造用蒸発器は、前記冷媒と接する外壁面と水和物のゲスト化合物の水溶液と接する内壁面を備える伝熱管を備え、前記内壁面に付着する前記水和物の一部が前記水溶液の流れの力により取り除かれ、その残部が前記内壁面を覆うように残る満液式蒸発器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍機。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の冷凍機の運転方法であって、蓄熱運転の際に前記水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する工程と、空調運転の際に前記冷水製造用蒸発器により冷水を製造する工程を有することを特徴とする冷凍機の運転方法。
- 請求項5に記載の冷凍機の運転方法であって、水和物スラリ製造用蒸発器により水和物スラリを製造する際に、前記冷媒の蒸発温度をその変動が小さくなるように制御する工程を有することを特徴とする冷凍機の運転方法。
- 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の冷凍機と、水和物スラリを蓄える蓄熱槽と、前記水和物製造用蒸発器において製造された水和物スラリを前記蓄熱槽に供給する第1の経路と、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第2の経路と、前記冷水製造用蒸発器において製造した冷水が有する熱エネルギーを熱利用側負荷に供給する第3の経路とを備えることを特徴とする空調設備。
- 請求項8に記載の空調設備の運転方法であって、夜間、前記水和物製造用蒸発器において水和物スラリを製造し、前記第1の経路を通じて前記蓄熱槽に蓄える工程と、昼間、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを前記第2の経路を通じて前記熱利用側負荷に供給する工程と有することを特徴とする空調設備の運転方法。
- 昼間、前記蓄熱槽に蓄えられた水和物スラリが有する熱エネルギーを前記熱利用側負荷に供給した後、前記冷水製造用蒸発器において製造した冷水が有する熱エネルギーを前記第3の経路を通じて前記熱利用側負荷に供給する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の空調設備の運転方法。
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