以下、図面を用いて、本発明に係るブラシレスモータ用駆動装置の故障診断装置及び故障診断方法の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例であるブラシレスモータ用駆動装置10の故障診断装置12の構成図を示す。また、図2は、本実施例のブラシレスモータ用駆動装置10の外観概略図を示す。
本実施例のブラシレスモータ用駆動装置(以下、単に駆動装置と称す。)10は、ブラシレスモータ14を回転駆動させる装置である。ブラシレスモータ14は、ブラシ及び整流子などの通電切替機構を有しない、ロータと、三相U,V,Wのステータコイルを有するステータと、からなる三相ブラシレスモータである。ブラシレスモータ14は、車両に搭載された、例えば燃料をエンジンへ供給する燃料ポンプなどに用いられる車載モータである。
駆動装置10は、ブラシレスモータ14の有する各相のモータ端子16U,16V,16Wに接続可能な駆動端子18U,18V,18Wを有している。駆動装置10は、駆動端子18U,18V,18Wが設けられるコネクタ20を有している。以下、このコネクタ20をモータ側コネクタ20と称す。モータ側コネクタ20には、また、アース端子22が設けられている。駆動装置10の駆動端子18U,18V,18Wは、モータ側コネクタ20に接続されたハーネス24を介してブラシレスモータ14のモータ端子16U,16V,16Wに接続される。ハーネス24は、モータ側コネクタ20に対して着脱可能である。
駆動装置10は、また、車両に搭載された直流電源であるバッテリの+B電位が入力される+B端子26、及び、そのバッテリのGND電位が入力されるGND端子28を有している。尚、上記したモータ側コネクタ20のアース端子22には、GND端子28に入力されるGND電位と同じ電位Eが入力される。駆動装置10は、+B端子26及びGND端子28が設けられるコネクタ30を有している。以下、このコネクタ30を電源側コネクタ30と称す。
駆動装置10は、また、ブラシレスモータ14の相ごとに対応して設けられるスイッチング素子Su,Sv,Swを有している。各相のスイッチング素子Su,Sv,Swは、+B端子26に接続される+Bライン32とGND端子28に接続されるGNDライン34との間に直列接続される上下2つのスイッチング素子Su,Sdからなる。各スイッチング素子Suu,Sud,Svu,Svd,Swu,Swdは、例えばnチャネル型のMOSトランジスタである。
U相のスイッチング素子Suu,Sudの共通接続点は、上記の駆動端子18Uに接続されている。V相のスイッチング素子Svu,Svdの共通接続点は、上記の駆動端子18Vに接続されている。また、W相のスイッチング素子Swu,Swdの共通接続点は、上記の駆動端子18Wに接続されている。
駆動装置10は、また、マイクロコンピュータを主体に構成される制御回路36を有している。制御回路36は、各スイッチング素子Suu,Sud,Svu,Svd,Swu,Swdそれぞれのオンオフを制御する回路である。具体的には、ブラシレスモータ14の出力調整が行われるように、各スイッチング素子Suu,Sud,Svu,Svd,Swu,Swdそれぞれのパルス幅変調(PWM)制御を行う。各スイッチング素子Suu,Sud,Svu,Svd,Swu,Swdはそれぞれ、制御回路36からの指示に従ってオンオフされる。
駆動装置10は、また、制御回路36に接続される電流検出回路38を有している。電流検出回路38は、駆動装置10を+Bライン32側からGNDライン34側へ向けて流れる電流Iuvwを検出するための回路である。電流検出回路38は、各相の一対のスイッチング素子Su,SdのうちGNDライン34側のスイッチング素子SdとGNDライン34との間に設けられている。電流検出回路38は、例えば、抵抗などからなり、その抵抗の両端間に生ずる電圧を出力する。制御回路36は、電流検出回路38の出力に基づいて、駆動装置10を+Bライン32側からGNDライン34側へ向けて電流Iuvwが流れるか否かを判別する。
駆動装置10は、また、制御回路36に接続される電圧検出回路40を有している。電圧検出回路40は、GND電位を基準として各相のスイッチング素子Su,Sdの共通接続点に生ずる電位、すなわち、各相の駆動端子18U,18V,18Wでの出力電圧Vu,Vv,Vwそれぞれを検出するための回路である。制御回路36は、電圧検出回路40の出力に基づいて、各相の出力電圧Vu,Vv,Vwそれぞれを検出する。
駆動装置10には、マイクロコンピュータを主体に構成される電子制御ユニット(以下、ECUと称す。)42が接続されている。ECU42と駆動装置10とは、通信線44を介して接続されている。通信線44の一端は、駆動装置10の電源側コネクタ30に設けられたSI端子45に接続されている。ECU42は、ブラシレスモータ14の回転を制御する装置である。ECU42は、主として、駆動装置10の制御回路36へブラシレスモータ14が所望の回転数rpmで回転駆動されるように回転指示を行う。
ECU42は、通信線44を介して駆動装置10の制御回路36と接続されるPWM通信回路46を有している。ECU42は、PWM通信回路46を用いて通信線44を介した制御回路36への上記回転指示をPWM通信により行う。PWM通信は、一パルス中におけるハイ時間の時間比率であるデューティ値で表される。制御回路36は、通信線44を介してSI端子45に入力されるECU42からのPWM通信によるデューティ値に従って、各相のスイッチング素子Su,Sdそれぞれのオンオフを制御する。
ECU42には、エンジン回転センサ48が接続されている。エンジン回転センサ48は、エンジンの回転数に応じた信号を出力するセンサである。エンジン回転センサ48の出力信号は、ECU42に供給される。ECU42は、エンジン回転センサ48の出力信号に基づいてエンジンの回転数を検出して、エンジンの回転が停止しているか否かを判別する。
故障診断装置12は、スキャンツール50を有している。スキャンツール50は、上記のECU42に着脱可能に接続される。スキャンツール50は、ECU42へ駆動装置10のショートやオープンなどの故障の診断の実施を指示する故障診断指示回路52を有している。スキャンツール50は、駆動装置10の故障診断を実施すべきでないときはECU42に接続されず、一方、駆動装置10の故障診断を実施すべきときにECU42に接続される。ECU42は、スキャンツール50が接続された状態でそのスキャンツール50の故障診断指示回路52から故障診断の実施が指示された場合に、駆動装置10の制御回路36へその駆動装置10の故障診断を実施するように指示する。
故障診断装置12は、また、汎用計測器であるテスタ54を有している。テスタ54は、上記の駆動装置10に着脱可能に接続される。テスタ54は、アース端子22の電位E(すなわち、GND電位)を基準として駆動装置10のモータ側コネクタ20の駆動端子18U,18V,18Wの出力電圧Vu,Vv,Vwを測定する電圧測定回路56を有している。テスタ54は、駆動装置10の故障診断を実施すべきでないときは駆動装置10に接続されず、一方、駆動装置10の故障診断を実施すべきときにモータ側コネクタ20を介して駆動装置10に接続される。テスタ54は、駆動装置10にモータ側コネクタ20を介して接続された状態で、電圧測定回路56にて測定される出力電圧Vu,Vv,Vwに基づいて、駆動装置10の故障を診断する。
以下、図3〜図8を参照して、本実施例の故障診断装置12による駆動装置10の故障を診断する手法について説明する。
図3は、本実施例の駆動装置10の故障診断装置12において実行されるメインルーチンの一例のフローチャートを示す。図4は、本実施例の駆動装置10の故障診断装置12において実行されるサブルーチンの一例のフローチャートを示す。図5は、本実施例の駆動装置10の故障診断装置12において実行されるサブルーチンの一例のフローチャートを示す。図6は、本実施例の駆動装置10の故障診断装置12において実行されるサブルーチンの一例のフローチャートを示す。図7は、本実施例の駆動装置10の故障診断装置12において実行されるサブルーチンの一例のフローチャートを示す。また、図8は、本実施例の駆動装置10の有する制御回路36におけるECU42からの入力とスイッチング素子Su,Sdへの出力との関係の一例を表した図を示す。
本実施例において、駆動装置10の故障診断は、その駆動装置10のモータ側コネクタ20にハーネス24が接続されず、駆動装置10とブラシレスモータ14とが接続されることなく行われる。また、この故障診断は、駆動装置10のモータ側コネクタ20にテスタ54が接続された状態で行われる。
ECU42は、電源投入後、スキャンツール50からの故障診断の実施指示を受信するか否かを判別する(図3に示すステップ100)。ECU42にスキャンツール50が接続されず、或いは、ECU42にスキャンツール50が接続されているがその故障診断指示回路52から故障診断の実施指示が送られていない場合は、ECU42は、スキャンツール50からの故障診断の実施指示を受信しない。一方、ECU42にスキャンツール50が接続されかつその故障診断指示回路52から故障診断の実施指示が送られた場合は、ECU42は、スキャンツール50からの故障診断の実施指示を受信する。
ECU42は、上記ステップ100においてスキャンツール50からの故障診断の実施指示を受信しないと判別した場合は、以後、図3に示すルーチンの処理を終了する。一方、スキャンツール50からの故障診断の実施指示を受信したと判別した場合は、次に、エンジン回転センサ48の出力信号に基づいてエンジンの回転が停止しているか否かを判別する(ステップ102)。
その結果、ECU42は、エンジンの回転が停止していないと判別した場合は、以後、図3に示すルーチンの処理を終了する。一方、エンジンの回転が停止していると判別した場合は、駆動装置10の制御回路36或いはテスタ54にその駆動装置10の故障診断を実施させる処理を行う(ステップ104)。ECU42は、駆動装置10の故障診断を実施させる処理として具体的には、駆動装置10の制御回路36へその駆動装置10の故障診断を実施するように指示する。
ECU42は、駆動装置10の制御回路36へその故障診断の実施を指示しない通常時は、通信線44を介して駆動装置10の制御回路36へ向けて、ブラシレスモータ14を所望の回転数rpmで回転駆動させるための回転指示をPWM通信により行う。この際、PWM通信によるデューティ値は、ブラシレスモータ14の所望の回転数rpmに応じて変動し、具体的には、図8に示す如く、その所望の回転数rpmが高いほどデューティ値0%〜100%のうち一部に限定された使用域(具体的には、デューティ値5%〜65%;以下、この使用域を通常使用域と称す。)内でリニアに大きくなる。
駆動装置10の制御回路36は、ECU42からのPWM通信により受信したデューティ値が通常使用域内であると判定した場合は、そのデューティ値に応じた回転数rpmでブラシレスモータ14が回転駆動されるように、各相のスイッチング素子Su,Sdそれぞれのオンオフを制御する。かかる処理によれば、各相のスイッチング素子Su,Sdそれぞれがオンオフされることで、ブラシレスモータ14が所望の回転数rpmで回転駆動されることとなる。
一方、ECU42は、上記ステップ104において駆動装置10の制御回路36へその駆動装置10の故障診断の実施を指示する場合は、その故障診断実施指示をPWM通信により行う。この際、PWM通信によるデューティ値は、デューティ値0%〜100%のうち上記したブラシレスモータ14の回転数rpmを指示するのに用いられる通常使用域とは異なる所定使用域を用いると共に、更に、故障診断を実施させるべき相に応じて変動する。例えば、図8に示す如く、U相についての故障診断の実施を指示する場合は、デューティ値85%を用い、V相についての故障診断の実施を指示する場合は、デューティ値90%を用い、また、W相についての故障診断の実施を指示する場合は、デューティ値95%を用いる。
駆動装置10の制御回路36は、ECU42からのPWM通信により受信したデューティ値が通常使用域とは異なる上記所定使用域内であると判定した場合は、そのデューティ値に応じた相についての故障診断を実施する処理を行う。
具体的には、まず、制御回路36は、通信線44を介してSI端子45に入力される信号SIの異常を判定する処理を行う(図4に示すステップ110)。かかるSI異常判定処理として、制御回路36は、まず、通信線44を介してSI端子45に入力されるPWM通信の周波数(PWM周波数)を算出する(図5に示すステップ130)。尚、このPWM周波数の算出は、例えば、信号SIのハイ信号の立ち上がりの時間間隔で規定されるように行われる。
そして、制御回路36は、上記ステップ130で算出したPWM周波数が所定の規定範囲内にあるか否かを判別する(ステップ132)。尚、この所定の規定範囲は、ECU42と制御回路36との間のPWM通信において用いられることが予め規定されたPWM周波数の値を中心にしたある程度の幅を持った範囲のことである。その結果、PWM周波数が所定の規定範囲内にないと判別した場合は、ノイズ重畳等に起因したSI異常が生じていると判定して、駆動装置10の故障診断の実施を禁止する(ステップ134)。一方、PWM周波数が所定の規定範囲内にあると判別した場合は、ノイズ重畳等に起因したSI異常が生じていないと判定して、駆動装置10の故障診断の実施を許可する(ステップ136)。
制御回路36は、上記図4に示すステップ110の処理後、上記図5に示すステップ134及び136の処理結果に基づいて、駆動装置10の故障診断の実施が許可されるか否かを判別する(ステップ112)。その結果、駆動装置10の故障診断の実施が禁止されると判別した場合は、以後、図4に示すルーチンの処理を終了する。一方、駆動装置10の故障診断の実施が許可されると判別した場合は、次に、駆動装置10の故障診断の実施の可否を判定する処理を行う(ステップ114)。
かかる実施可否判定として、制御回路36は、まず、駆動装置10内の全相の一対のスイッチング素子Su,Sdすべてをオフする(図6に示すステップ140)。そして、三相U,V,Wのうちから任意に選んだ一相(該当相)の一対のスイッチング素子Su,Sdのうち+Bライン32側のスイッチング素子Suをオンし(ステップ142)、かつ、その該当相とは異なる相(非該当相)ごとの一対のスイッチング素子Su,SdのうちGNDライン34側のスイッチング素子Sdを順次オンする(ステップ144)。例えば、U相のスイッチング素子SuuをオンしかつV相のスイッチング素子Svdをオンし、その後、U相のスイッチング素子SuuをオンしたままV相のスイッチング素子SvdをオフしかつW相のスイッチング素子Swdをオンする。
制御回路36は、上記ステップ140〜144の処理を行った以後、電圧検出回路40の出力に基づいて検出される該当相の出力電圧Vu,Vv,Vwが+B電位であるか否かを判別する(ステップ146)。該当相の+Bライン32側のスイッチング素子Suがオンしている場合は、該当相の出力電圧Vu,Vv,Vwは、駆動装置10が故障していなければ+B電位となる一方、駆動装置10が故障していれば+B電位とは異なる電位となることがある。
制御回路36は、上記ステップ146において該当相の出力電圧Vu,Vv,Vwが+B電位であると判別した場合は、次に、上記ステップ144においてGNDライン34側のスイッチング素子Sdがオンされた非該当相の、電圧検出回路40の出力に基づいて検出される出力電圧Vu,Vv,VwがGND電位であるか否かを判別する(ステップ148)。非該当相のGNDライン34側のスイッチング素子Sdがオンしている場合は、その該当相の出力電圧Vu,Vv,Vwは、駆動装置10が故障していなければGND電位となる一方、駆動装置10が故障していればGND電位とは異なる電位となることがある。
制御回路36は、上記ステップ148において上記した非該当相の出力電圧Vu,Vv,VwがGND電位であると判別した場合は、次に、電流検出回路38の出力に基づいて、駆動装置10を+Bライン32側からGNDライン34側へ向けて電流Iuvwが流れているか否かを判別する(ステップ150)。駆動装置10の故障診断はその駆動装置10にブラシレスモータ14が接続されることなく行われるので、電流Iuvwは、駆動装置10が故障していなければ流れない一方、駆動装置10が短絡により故障していれば流れることがある。
制御回路36は、上記ステップ150において電流Iuvwが流れていないと判別した場合は、三相U,V,Wすべてを上記の該当相として選んだうえで各相それぞれに対して上記ステップ142〜150の処理が完了したか否かを判別する(ステップ152)。その結果、三相U,V,Wすべてを上記の該当相に選んでおらず少なくとも何れか一の相に対して上記ステップ142〜150の処理が完了していないと判別した場合は、次に、三相U,V,Wのうち未だ上記の該当相に選ばれてない相をその該当相に選ぶことにより該当相を変更する(ステップ154)。かかる該当相の変更が行われると、その変更後の該当相について上記ステップ140以降の処理が繰り返し行われる。
一方、上記ステップ152において三相U,V,Wすべてを上記の該当相として選んで各相それぞれに対して上記ステップ142〜150の処理が完了したと判別した場合は、駆動装置10の故障診断の実施が可能であると判定して、その実施を許可する(ステップ156)。
制御回路36は、上記ステップ146において該当相の出力電圧Vu,Vv,Vwが+B電位でないと判別した場合、上記ステップ148において非該当相の出力電圧Vu,Vv,VwがGND電位でないと判別した場合、又は上記ステップ150において電流Iuvwが流れていると判別した場合は、次に、駆動装置10内の全相の一対のスイッチング素子Su,Sdすべてをオフしたうえで(ステップ158)、駆動装置10の故障診断の実施が不可であると判定して、その実施を禁止する(ステップ160)。
制御回路36は、上記図4に示すステップ114の処理後、上記図6に示すステップ156及び160の処理結果に基づいて、駆動装置10の故障診断の実施が許可されているか否かを判別する(ステップ116)。その結果、駆動装置10の故障診断の実施が禁止されていると判別した場合は、次に、駆動装置10に故障が生じていると判定する(ステップ118)。尚、制御回路36が駆動装置10に故障が生じていると判定した場合は、制御回路36から通信線44を介してECU42へその駆動装置10に故障が生じている旨が通知されることとしてもよい。
一方、制御回路36は、駆動装置10の故障診断の実施が許可されていると判別した場合は、次に、駆動装置10の駆動端子18U,18V,18Wの出力電圧Vu,Vv,Vwのテスト処理を行う(ステップ120)。
かかるテスト処理として、制御回路36は、まず、ECU42からのPWM通信によるデューティ値に基づいて判定された故障診断を実施すべき相がU相であるか否かを判別する(図7に示すステップ170)。その結果、その故障診断を実施すべき相がU相であると判別した場合は、次に、U相の一対のスイッチング素子Suu,Sudを交互にオンオフする(ステップ172)。この際、制御回路36によるU相のスイッチング素子Suu,Sudは、予め定められたデューティ値(例えば、50%)でオンオフされる。
駆動装置10のU相に故障が生じていない場合は、U相の駆動端子18Uに上記のスイッチング素子Suu,Sudへのデューティ値に応じた所望の電圧が現れる。例えば、そのデューティ値が50%であるときは、U相の駆動端子18Uに+Bライン32の電位+BとGNDライン34の電位GNDとの中間値(+B/2)の電圧が現れる。一方、駆動装置10のU相にオープンやショートなどの故障が生じている場合は、U相の駆動端子18Uに上記のスイッチング素子Suu,Sudへのデューティ値に応じた所望の電圧とは異なる電圧が現れる。
そこで、制御回路36が上記ステップ172の処理を実行する際、駆動装置10に接続されたテスタ54は、電圧測定回路56にてGND電位を基準として駆動端子18Uの出力電圧Vuを測定する(ステップ174)。
また、制御回路36は、上記ステップ170において故障診断を実施すべき相がU相でないと判別した場合は、次に、その故障診断を実施すべき相がV相であるか否かを判別する(ステップ176)。その結果、その故障診断を実施すべき相がV相であると判別した場合は、次に、V相の一対のスイッチング素子Svu,Svdを交互にオンオフする(ステップ178)。この際、制御回路36によるV相のスイッチング素子Svu,Svdは、予め定められたデューティ値(例えば、50%)でオンオフされる。
駆動装置10のV相に故障が生じていない場合は、V相の駆動端子18Vに上記のスイッチング素子Svu,Svdへのデューティ値に応じた所望の電圧が現れる。例えば、そのデューティ値が50%であるときは、V相の駆動端子18Vに+Bライン32の電位+BとGNDライン34の電位GNDとの中間値(+B/2)の電圧が現れる。一方、駆動装置10のV相にオープンやショートなどの故障が生じている場合は、V相の駆動端子18Vに上記のスイッチング素子Suu,Sudへのデューティ値に応じた所望の電圧とは異なる電圧が現れる。
そこで、制御回路36が上記ステップ178の処理を実行する際、駆動装置10に接続されたテスタ54は、電圧測定回路56にてGND電位を基準として駆動端子18Vの出力電圧Vvを測定する(ステップ180)。
更に、制御回路36は、上記ステップ176において故障診断を実施すべき相がV相でないと判別した場合は、その故障診断を実施すべき相がW相であると判定できるので、次に、W相の一対のスイッチング素子Swu,Swdを交互にオンオフする(ステップ182)。この際、制御回路36によるW相のスイッチング素子Swu,Swdは、予め定められたデューティ値(例えば、50%)でオンオフされる。
駆動装置10のW相に故障が生じていない場合は、W相の駆動端子18Wに上記のスイッチング素子Swu,Swdへのデューティ値に応じた所望の電圧が現れる。例えば、そのデューティ値が50%であるときは、W相の駆動端子18Wに+Bライン32の電位+BとGNDライン34の電位GNDとの中間値(+B/2)の電圧が現れる。一方、駆動装置10のW相にオープンやショートなどの故障が生じている場合は、W相の駆動端子18Wに上記のスイッチング素子Swu,Swdへのデューティ値に応じた所望の電圧とは異なる電圧が現れる。
そこで、制御回路36が上記ステップ182の処理を実行する際、駆動装置10に接続されたテスタ54は、電圧測定回路56にてGND電位を基準として駆動端子18Wの出力電圧Vwを測定する(ステップ184)。
テスタ54は、上記ステップ174,180,184において測定した出力電圧Vu,Vv,Vwが所定の規定範囲内にあるか否かを判別する(ステップ122)。尚、この所定の規定範囲は、制御回路36が各相の一対のスイッチング素子Su,Sdをオンオフしたデューティ値に応じた所望の電圧を中心にしたある程度の幅を持った範囲のことである。その結果、測定出力電圧Vu,Vv,Vwが所定の規定範囲内にあるすなわち上記した所望の電圧から所定以上離れた値でないと判別した場合は、駆動装置10に故障が生じていないと判定する。一方、測定出力電圧Vu,Vv,Vwが所定の規定範囲内にないすなわち上記した所望の電圧から所定以上離れた値でないと判別した場合は、駆動装置10に故障が生じていると判定する(ステップ118)。
このように、本実施例においては、ECU42に接続されたスキャンツール50からの指示に従って、駆動装置10に故障が生じているか否かの診断を実施させることができる。具体的には、スキャンツール50からの指示に従って、まず、制御回路36に、駆動装置10内の一相の一対のスイッチング素子Su,Sdのうち+Bライン32側のスイッチング素子Suをオンさせ、かつ、他の相の一対のスイッチング素子Su,SdのうちGNDライン34側のスイッチング素子Sdをオンさせた場合に、+Bライン32側のスイッチング素子Suがオンされた相の出力電圧Vu,Vv,Vwが+B電位であるか否か、GNDライン34側のスイッチング素子Sdがオンされた相の出力電圧Vu,Vv,VwがGND電位であるか否か、及び、駆動装置10を+Bライン32側からGNDライン34側へ向けて電流Iuvwが流れるか否かを判別させて、その判別結果に基づいて駆動装置10の故障診断の実施の可否を判定させることができる。
具体的には、制御回路36に、+Bライン32側のスイッチング素子Suがオンされた相の出力電圧Vu,Vv,Vwが+B電位であり、GNDライン34側のスイッチング素子Sdがオンされた相の出力電圧Vu,Vv,VwがGND電位であり、かつ、電流Iuvwが流れていないと判別した場合は、駆動装置10の故障診断の実施が可能であると判定させる。一方、+Bライン32側のスイッチング素子Suがオンされた相の出力電圧Vu,Vv,Vwが+B電位でない、GNDライン34側のスイッチング素子Sdがオンされた相の出力電圧Vu,Vv,VwがGND電位でない、又は、電流Iuvwが流れていると判別した場合は、駆動装置10の故障診断の実施が不可であると判定させ、駆動装置10に故障が生じていると判定させる。
この点、駆動装置10内の一相の一対のスイッチング素子Su,Sdのうち+Bライン32側のスイッチング素子Suがオンされ、かつ、他の相の一対のスイッチング素子Su,SdのうちGNDライン34側のスイッチング素子Sdがオンされた際に、駆動装置10を+Bライン32側からGNDライン34側へ向けて電流Iuvwが流れていないことを、駆動装置10の故障診断の実施条件とすることができ、その電流Iuvwが流れている場合は駆動装置10が故障していると判定することができる。
かかる構成においては、駆動装置10の故障診断を実施するうえで、その駆動装置10のモータ側コネクタ20すなわち駆動端子18U,18V,18Wにブラシレスモータ14のモータ端子16U,16V,16Wを接続させることは不要である。すなわち、駆動装置10にブラシレスモータ14を接続させることなく、上記したスイッチング素子Su,Sdのオン時に駆動装置10を+Bライン32側からGNDライン34側へ向けて電流Iuvwが流れるか否かに基づいて、その駆動装置10の故障診断を実施することができる。
かかる電流Iuvwの流通有無に基づく駆動装置10の故障診断時に駆動装置10にブラシレスモータ14が接続されていなければ、そのブラシレスモータ14の回転により誘起された電流が駆動装置10に流れることはなく、その駆動装置10の故障診断がそのブラシレスモータ14の回転により発生する誘起電圧の影響を受けることはない。このため、本実施例によれば、電流Iuvwの流通有無に基づく駆動装置10の故障診断を精度良く行うことができる。また、本実施例によれば、電流Iuvwの流通有無に基づいて駆動装置10の故障を診断するうえで、ブラシレスモータ14の回転が停止していることを保証する必要が無いので、その回転停止を検出するための回転センサや検出回路などの部品を設けることは不要であり、また、その回転停止を実現するための制御を実行することは不要であり、これにより、コストの削減を図ることができる。
従って、本実施例の駆動装置10の故障診断装置12によれば、電流Iuvwの流通有無に基づく駆動装置10の故障診断を簡易かつ低廉な構成で精度良く行うことができる。
また、本実施例においては、スキャンツール50からの指示に従って制御回路36が駆動装置10の故障診断の実施の可否を判定した結果としてその故障診断の実施が可能であると判定した場合は、更にその後、制御回路36に相ごとに一対のスイッチング素子Suu,Sudを所定デューティ値で交互にオンオフさせつつ、テスタ54に駆動装置10の各相の出力電圧Vu,Vv,Vwを測定させて、駆動装置10の故障診断を実施させることができる。
具体的には、駆動装置10の駆動端子18U,18V,18Wすなわちモータ側コネクタ20に接続されたテスタ54に、その測定出力電圧Vu,Vv,Vwが上記の所定デューティ値に応じた所望の電圧近傍(すなわち所定の規定範囲内)にあると判別した場合は、駆動装置10に故障が生じていないと判定させる。一方、その測定出力電圧Vu,Vv,Vwが上記の所定デューティ値に応じた所望の電圧近傍(すなわち所定の規定範囲内)にないと判別した場合は、駆動装置10にオープンやショートなどの故障が生じていると判定させる。
この点、駆動装置10の故障診断を、通常はブラシレスモータ14が接続される駆動端子18U,18V,18Wすなわちモータ側コネクタ20にそのブラシレスモータ14に代えてテスタ54を接続させつつ行うことができる。かかる構成においては、駆動装置10の故障診断を実施するうえで、その駆動装置10からECU42へ故障情報を通知することは不要であるので、その通知のために駆動装置10やECU42内の通信機能や通信線,端子などを設けることは不要であり、かかる故障診断を簡素かつ低廉な構成で実現することができる。
また、本実施例において、テスタ54は、駆動装置10にモータ側コネクタ20を介して接続され、アース端子22の電位Eを基準として駆動装置10の出力電圧Vu,Vv,Vwを測定する。このアース端子22の電位Eは、駆動装置10の基準電位(GND電位)と同じである。この点、本実施例によれば、テスタ54の基準電位として車両のボデーアースなどが利用されないので、テスタ54の電圧測定結果にそのボデーアースの利用に伴うアース抵抗や接触抵抗による電圧降下が含まれるのを回避することができ、テスタ54による駆動装置10の出力電圧Vu,Vv,Vwの測定精度を向上させることができる。
また、テスタ54は、駆動装置10のモータ側コネクタ20に設けられた互いに近傍に存在する駆動端子18U,18V,18W及びアース端子22を用いて駆動装置10の出力電圧Vu,Vv,Vwを測定する。このため、テスタ54による駆動装置10の出力電圧Vu,Vv,Vwの測定を容易に行うことができる。
また、本実施例において、ECU42は、スキャンツール50からの指示に従って駆動装置10へ故障診断の実施指示を通信線44を用いたPWM通信により行う。このECU42から駆動装置10への故障診断の実施指示時に用いられるPWM通信によるデューティ値は、ECU42から駆動装置10へのブラシレスモータ14の回転指示時に用いられるPWM通信による通常使用域とは異なる所定使用域を用いる。従って、かかる構成によれば、ECU42から駆動装置10へのモータ回転指示と故障診断実施指示とを共通の通信線44を介して行うことができるので、構成の簡素化と低コスト化とを図ることができる。
ところで、エンジンが回転していると、ECU42から駆動装置10へのPWM通信にノイズが重畳することがある。PWM通信にノイズが重畳すると、そのノイズの存在に起因してPWM通信によるデューティ値が所望のものから変化し、その結果として、駆動装置10の故障診断が誤判定されるおそれがある。これに対して、本実施例において、ECU42は、駆動装置10への故障診断の実施指示を、エンジンの回転が停止しているときに限り行い、エンジンが回転しているときには行わない。従って、本実施例によれば、駆動装置10の故障診断の実施を、誤診断が生ずるおそれのあるエンジン回転中のタイミングで行うのを抑制することができ、駆動装置10の故障診断を精度よく行うことができる。
また、本実施例において、駆動装置10の制御回路36は、ECU42からのPWM通信のPWM周波数を算出し、そのPWM周波数が所定の規定範囲内にある場合は、駆動装置10の故障診断の実施を許可する一方、そのPWM周波数が所定の規定範囲内にない場合は、駆動装置10の故障診断の実施を禁止する。従って、本実施例によれば、ECU42から駆動装置10へのPWM通信が、予め規定された所定の規定範囲内のPWM周波数からノイズ重畳等に起因してずれて行われた場合に、駆動装置10の故障診断の実施が禁止されるので、駆動装置10の故障診断が誤って行われるのを防止することができる。
尚、上記の実施例においては、駆動装置10の制御回路36が、駆動端子18U,18V,18Wにブラシレスモータ14のモータ端子16U,16V,16Wが接続されない状態で、図6に示すルーチン中ステップ142,144の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「スイッチ制御手段」に、制御回路36がステップ150の処理後に図4に示すルーチン中ステップ116,118を実行することが特許請求の範囲に記載した「第1の診断手段」及び「第1のステップ」に、テスタ54が図7に示すルーチン中ステップ174,180,184の処理後に図4に示すルーチン中ステップ122の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「第2の診断手段」及び「第2のステップ」に、それぞれ相当している。
また、+Bライン32が特許請求の範囲に記載した「電源+ライン」に、GNDライン34が特許請求の範囲に記載した「電源−ライン」に、制御回路36が特許請求の範囲に記載した「制御部」に、スキャンツール50が特許請求の範囲に記載した「指示手段」に、それぞれ相当している。