以下、本発明のブレーキ装置を実現する形態を、図面に基づき説明する。
[実施例1]
本実施例のブレーキ装置は、車両の各車輪にブレーキ液圧を付与して制動力を発生させる液圧式ブレーキシステムに適用される。上記車両は、例えば、車輪を駆動する原動機としてエンジンのほか電動式のモータ(ジェネレータ)を備えたハイブリッド車や、電動式のモータ(ジェネレータ)のみを備えた電気自動車等の電動車両である。なお、エンジンのみを駆動源とする非電動車両であってもよい。図1は、本実施例のブレーキシステムの概要を示す。ブレーキシステムは、ホイルシリンダW/Cと、ブレーキペダルBPと、ブレーキ装置1(以下、装置1という。)と、液圧制御ユニットHUと、電子制御ユニットECUとを備える。ホイルシリンダ(キャリパ)W/Cは、車両の各車輪FL〜RRに設けられており、ブレーキ液が供給されることにより液圧(ホイルシリンダ圧)を発生することで、車輪FL〜RRに制動力を付与する。
ブレーキペダルBPは、運転者のブレーキ操作が入力される操作部材である。ブレーキペダルBPは、所謂吊下げ型であり、ペダルアームの上端部が支軸に対し回転可能に車体側に連結されている。ブレーキペダルBPの下端部のペダルパッドが運転者により踏み込まれて操作力(踏力FP)を受けると、ブレーキペダルBPが支軸を中心として車両の前方に回動する。ブレーキペダルBPには、ストロークセンサ6が設けられている。ストロークセンサ6は、運転者のブレーキ操作量として、ブレーキペダルBPの回転方向移動量(ペダルストロークSP)を検出する。装置1は、ブレーキペダルBPに連動してマスタシリンダ4に液圧(マスタシリンダ圧)を発生可能な第1のブレーキ液圧発生源である。装置1は、運転者のブレーキ操作量に応じた液圧(マスタシリンダ圧)を発生し、ホイルシリンダW/Cへ向けてブレーキ液を供給可能に設けられている。
装置1は、倍力装置2と、ロッド3と、マスタシリンダ4とを備えている。図2は、マスタシリンダ4をその軸心を通る平面で切った部分断面を示す。ブレーキペダルBPに入力されたブレーキ操作(ペダルストロークSPないし踏力FP)は、倍力装置2を介してロッド3に伝達され、ロッド3の軸方向の移動(ロッドストロークSR)ないし軸方向の推力(ロッド推力FR)を発生する。ロッド3にはマスタシリンダ4のプライマリピストン41P(第1ピストン41Pa)が連結されている。ロッドストロークSRないしロッド推力FRは、プライマリピストン41Pの軸方向の移動(ピストンストローク)ないし軸方向の推進力(ピストン推力)に変換され、マスタシリンダ圧を発生する。以下、説明のため、ロッド3の軸方向にx軸を設け、ブレーキペダルBPの踏込みに応じてロッド3がストロークする車両前方を正とする。
倍力装置2は、ブレーキペダルBPとロッド3との間を接続し、踏力FPを増幅してロッド3へ伝達する。倍力装置2は、倍力比が可変なリンク式の可変倍力装置である。倍力装置2は、ペダルストロークSPに対するロッドストロークSRの比(ストローク比ないしレバー比)を可変とするリンク機構20を備えている。リンク機構20は、ブレーキペダルBPとマスタシリンダ4との間に、マスタシリンダ4に対し一体的に接続される。リンク機構20は、側面視で棒状の第1リンク21と、側面視で三角状の第2リンク22とを備えている。第1リンク21の一端は軸210によりブレーキペダルBP(ペダルアーム)の根元側に回転自在に連結されている。第2リンク22の第1の角部は軸220により車体側に回転自在に支持されている。第1リンク21の他端は軸211により第2リンク22の第2の角部に回転自在に連結されている。第2リンク22の第3の角部は軸221によりロッド3のx軸負方向端部に回転自在に連結されている。
ロッド3は、リンク機構20から(増幅されて)伝達された踏力FPを、x軸方向の推力(ロッド推力FR)としてマスタシリンダ4に伝達するプッシュロッドであり、ブレーキペダルBP(リンク機構20)に連動してx軸方向に作動する。ロッド3は、その軸方向中間部に大径のフランジ部31を有している。フランジ部31は、そのx軸正方向側に平面状の押し出し面310を備えると共に、x軸負方向側に凸曲面状の当接面311を備えている。押し出し面310はx軸に対して略直交するように延びる。ロッド3は、リンク機構20の出力部材である第2リンク22からの入力を受け、ブレーキペダルBPの踏込み操作に応じてx軸正方向にストロークする。ロッド3はマスタシリンダ4の入力部材(入力ロッド)でもあり、そのx軸正方向端はマスタシリンダ4のピストン41(プライマリピストン41P)に接続されている。なお、ストロークセンサ6は、運転者のブレーキ操作量として、ロッドストロークSR(プライマリピストン41Pのストローク)を検出することとしてもよい。
マスタシリンダ4は、所謂タンデム型であり、プライマリP系統の液圧室44PとセカンダリS系統の液圧室44Sを有している。マスタシリンダ4には、ブレーキ液を貯留するブレーキ液源であるリザーバタンク5が一体に設けられており、マスタシリンダ4の各液圧室44はリザーバタンク5からブレーキ液を補給される。リザーバタンク5の内部は、仕切部材51により2室50P,50Sに画成されている。マスタシリンダ4の各液圧室44は、それぞれ油路(ブレーキ配管)を介して液圧制御ユニットHUに接続しており、車両の所定の車輪のホイルシリンダW/Cと連通可能に設けられている。マスタシリンダ4は、ブレーキペダルBPに連動し軸方向に作動して、運転者によるブレーキペダルBPの操作(ブレーキ操作状態)に応じた液圧(マスタシリンダ圧)を発生する。マスタシリンダ圧は上記油路を介してホイルシリンダW/Cへ供給され、ホイルシリンダ圧(ブレーキ液圧)を発生させる。
液圧制御ユニットHUは、装置1とは独立してホイルシリンダW/Cに液圧を発生可能な第2のブレーキ液圧発生源である。液圧制御ユニットHUは油路(ブレーキ配管)を介して所定の車輪のホイルシリンダW/Cとマスタシリンダ4とに接続されており、マスタシリンダ4(リザーバタンク5)からブレーキ液の供給を受け、所定のホイルシリンダW/Cにマスタシリンダ圧又は制御液圧を個別に供給可能である。液圧制御ユニットHUは、制御液圧を発生するための液圧機器(アクチュエータ)として、液圧発生源であるポンプや、ハウジング内に形成された油路の連通状態を切り換える複数の制御弁(電磁弁)を有している。液圧制御ユニットHUには、油路の所定部位の液圧(マスタシリンダ圧等)を検出する液圧センサが設けられており、その検出値は電子制御ユニットECUに入力される。ECUは、ストロークセンサ6や液圧センサ等から入力される各種情報に基づき、内蔵されたプログラムに従って液圧制御ユニットHUの各アクチュエータの作動を制御することで、運転者のブレーキ操作から独立して各ホイルシリンダW/Cの液圧を制御(増圧、減圧、保持)可能に設けられている。ECUは、液圧制御ユニットHUを用いて、車輪のロック傾向を緩和するアンチロックブレーキ制御(ABS)や、車両の横滑り等を抑制して車両挙動を安定化するためのブレーキ制御(ESC等の車両挙動制御)を実行可能に設けられている。
液圧制御ユニットHUの各アクチュエータが非作動である状態では、マスタシリンダ4の液圧室44と所定のホイルシリンダW/Cとが連通した状態となる。このとき、踏力FPを用いて発生させたマスタシリンダ圧によってホイルシリンダ圧を発生する(以下、これを踏力ブレーキという)。運転者のブレーキ操作に応じた液圧制動力を発生させる通常ブレーキ時、ブレーキシステムは、ペダルストロークSPの全領域(すなわちブレーキ操作が開始された後の制動初期における低圧域を含め、制動の各段階における各液圧域)で、ポンプや電磁弁等を非通電状態とし、液圧制御ユニットHUを非作動状態とすることで、踏力ブレーキを実現する。その際、装置1により、所定のブレーキ特性、すなわちペダルストロークSPと踏力FPとホイルシリンダ圧P(車両減速度G)との間の理想の関係特性を実現するように設定している。本実施例では、例えば、リンク式の倍力装置を備えず、車両のエンジンが発生する吸気圧(負圧)を利用してブレーキ操作力(踏力)を倍力ないし増幅する通常サイズの負圧ブースタを備えたブレーキ装置において、上記負圧ブースタの作動により実現されるブレーキ特性を、上記理想の関係特性とする。
以下、必要に応じて、P系統に対応して設けられた部材にはその符号の末尾に添字Pを、S系統に対応する部材を示す符号の末尾には添字Sをそれぞれ付して、適宜区別する。なお、両系統で共通する構成についてはこれらを分けずにまとめて説明する。マスタシリンダ4は、シリンダ40と、ピストン41と、ピストンシール421,422と、戻しばね43とを、P,S系統毎に備えている。P系統の構成はx軸負方向側、S系統の構成はx軸正方向側に設けられている。シリンダ40内には、各系統のピストン41P,41Sにより、各系統の液圧室44P,44Sが画成されている。シリンダ40は、シリンダ本体40aとストッパ部40bを有している。シリンダ本体40aは、x軸正方向側が閉塞すると共にx軸負方向側が開口する有底筒状である。シリンダ本体40aは、ピストン収容孔400と、補給ポート401と、吐出ポート(供給ポート)402と、シール溝403,404と、嵌合凸部405とを有している。ピストン収容孔400は、シリンダ本体40aの内周側をx軸方向に延びる略円筒状に設けられている。プライマリピストン収容孔400Pは、セカンダリピストン収容孔400Sよりも大径に設けられている。両ピストン収容孔400P,400Sは略同軸上に延びている。セカンダリピストン収容孔400Sのx軸負方向端は、段差部を介してプライマリピストン収容孔400Pのx軸正方向端と連通する。
ピストン収容孔400には、補給ポート401と吐出ポート402が開口する。ピストン収容孔400において、補給ポート401の開口部は吐出ポート402の開口部よりもx軸負方向側に設けられている。補給ポート401は、シリンダ本体40aの内部を径方向に貫通するように設けられており、リザーバタンク5に接続してこれと連通する。P系統の補給ポート401PはS系統の補給ポート401Sよりも大径に設けられており、リザーバタンク5の室50Pに接続する。S系統の補給ポート401Sはリザーバタンク5の室50Sに接続する。吐出ポート402は、シリンダ本体40aの内部を径方向に貫通するように設けられており、油路(ブレーキ配管)に接続される。吐出ポート402は、油路を介して液圧制御ユニットHUに接続されることで、ホイルシリンダW/Cと連通可能に設けられている。P系統の吐出ポート402Pは前左輪FLと後右輪RRのホイルシリンダW/C(第1のホイルシリンダ群)に連通可能に接続する。S系統の吐出ポート402Sは前右輪FRと後左輪RLのホイルシリンダW/C(第2のホイルシリンダ群)に連通可能に接続する。すなわち、本実施例のブレーキシステムは所謂X配管形式を採用している。なお、他の配管形式でもよい。シール溝403,404は、ピストン収容孔400の内周壁に形成された環状の溝であり、ピストン収容孔400の軸心を取り囲んで周方向に延びる。第1シール溝403は補給ポート401のx軸負方向側に隣接して設けられている。第2シール溝404は補給ポート401のx軸正方向側に隣接して設けられている。これらの溝403,404は、補給ポート401をx軸方向で挟み込むように配置されている。第1シール溝403には第1ピストンシール421が設置され、第2シール溝404には第2ピストンシール422が設置される。
嵌合凸部405は、シリンダ本体40aのx軸負方向端部の外周面が他の部位の外周面よりも小径とされることで段差状に設けられた小径部であり、その外周には環状の溝が形成されている。この溝にはシール部材が設置される。ストッパ部40bは、シリンダ本体40aのx軸負方向側に嵌合する筒状部材である。ストッパ部40bは、ロッド収容孔406と、嵌合凹部407と、ピストンストッパ部408と、ロッドストッパ部409とを有している。ロッド収容孔406は、ストッパ部40bの内周側をx軸方向に延びる略円筒状に設けられている。ロッド収容孔406にはロッド3(フランジ部31)が収容される。ロッド収容孔406の径は、プライマリピストン収容孔400Pの径よりも小さく、かつロッド3のフランジ部31の径よりも大きく設けられている。嵌合凹部407は、ストッパ部40bのx軸正方向端部に設けられ、x軸方向に延びる有底円筒状の凹部である。嵌合凹部407の内周面の径はシリンダ本体40aの嵌合凸部405の径よりも僅かに大きく設けられている。嵌合凹部407のx軸負方向側の底部には、有底円筒状の凹部407aが設けられている。凹部407aの内周面の径はプライマリピストン収容孔400Pの径と略等しく設けられている。ピストンストッパ部408は、ロッド収容孔406を構成する内壁のx軸正方向端であって上記凹部407aの底面に設けられており、径方向(x軸に略直交する方向)に延びる平面状に形成されている。ロッドストッパ部409は、ストッパ部40bのx軸負方向端に設けられており、ロッド収容孔406のx軸負方向側の開口を狭めるように径方向に延びる。ロッドストッパ部409のx軸正方向側の面は、x軸正方向側からx軸負方向側へ向うにつれて縮径するテーパ状に形成されている。嵌合凹部407に嵌合凸部405が嵌合することで、シリンダ本体40aとストッパ部40bが一体化される。嵌合凹部407と嵌合凸部405との間の隙間は、上記シール部材によりシールされる。ロッド3は、ロッドストッパ部409の内径側の孔を通ってシリンダ40の外側へ突出するように設置される。
ピストン41は、ピストン収容孔400に(シリンダ40に対し)摺動可能に挿入されており、ブレーキペダルBPと連動する。ピストン41は、P系統のピストン(プライマリピストン)41PとS系統のピストン(セカンダリピストン)41Sを有している。プライマリピストン41Pはプライマリピストン収容孔400Pに収容され、セカンダリピストン41Sはセカンダリピストン収容孔400Sに収容される。プライマリピストン41Pは、2個の別体部品によって構成されている。具体的には、プライマリピストン41Pは、異径のピストン群として、第1ピストン41Pa及び第2ピストン41Pbを備えている。第1ピストン41Paは、比較的小径のピストンである。第1ピストン41Paの外周面の径は、セカンダリピストン収容孔400Sの径よりも若干小さく設けられている。第1ピストン41Paのx軸正方向側には軸方向に延びる有底孔411Pが形成されており、有底孔411Pは第1ピストン41Paのx軸正方向端に開口する。第1ピストン41Paのx軸負方向側には軸方向に延びる有底孔412Pが形成されており、有底孔412Pは第1ピストン41Paのx軸負方向端に開口する。第1ピストン41Paには径方向に延びる連通孔410Paが形成されており、連通孔410Paは有底孔411Pの内周面と第1ピストン41Paの外周面に開口する。有底孔412Pの底部には、凹部が形成されている。この凹部にロッド3のx軸正方向側の球状先端部30が嵌合することにより、ロッド3が第1ピストン41Paと回動可能に連結する。
第2ピストン41Pbは、比較的大径の中空円筒状ピストンである。第2ピストン41Pbの外周面の径は、プライマリピストン収容孔400Pの径よりも若干小さく設けられている。第2ピストン41Pbには、ピストン収容孔415bが形成されている。ピストン収容孔415bは、第2ピストン41Pbを軸方向に貫通して延びる略円筒状に設けられている。ピストン収容孔415bの径は、セカンダリピストン収容孔400Sの径と略等しく設けられている。ピストン収容孔415bには、第1ピストン41Paが収容される。第1ピストン41Paは、第2ピストン41Pbのストロークとは独立して、第2ピストン41Pb(ピストン収容孔415b)の内部をストローク可能に設けられている。第2ピストン41Pbには径方向に斜めに延びる連通孔410Pbが形成されており、連通孔410Pbはピストン収容孔415bの内周面と第2ピストン41Pbの外周面に開口する。ピストン収容孔415bの内周壁のx軸正方向寄りには、シール溝413b,414bが形成されている。シール溝413b,414bは、ピストン収容孔415bの軸心を取り囲んで周方向に延びる環状の溝である。第1シール溝413bは、ピストン収容孔415bの内周面における連通孔410Pbの開口部のx軸負方向側に隣接して設けられている。第2シール溝414bは連通孔410Pbの上記開口部のx軸正方向側に隣接して形成されている。これらの溝413b,414bは、上記開口部をx軸方向で挟み込むように配置されている。上記開口部は、溝413b,414bの間のx軸正方向側に位置する。第2ピストン41Pbの外周面における連通孔410Pbの開口部は、溝413b,414bの間のx軸負方向側に位置する。第1シール溝413bには第1ピストンシール421Paが設置され、第2シール溝414bには第2ピストンシール422Paが設置される。
セカンダリピストン41Sは、第1ピストン41Paと同様の構成を有している小径のピストンである。
ピストンシール421,422は、各ピストン41の外周面に摺接するシール部材である。プライマリピストン41Pを構成するピストンのうち第1ピストン41Paの外周面には、第1ピストンシール421Paと第2ピストンシール422Paが摺接する。第2ピストン41Pbの外周面には、第1ピストンシール421Pbと第2ピストンシール422Pbが摺接する。セカンダリピストン41Sの外周面には、第1ピストンシール421Sと第2ピストンシール422Sが摺接する。ピストン収容孔400の内部には、第1ピストンシール421Sと第2ピストンシール422Pa,422Pbとの間に、プライマリ液圧室44Pが画成される。プライマリ液圧室44Pは、主にプライマリピストン41P(第1,第2ピストン41Pa,41Pb)のx軸正方向端面とセカンダリピストン41Sのx軸負方向端面との間の空間により構成されている。プライマリ液圧室44Pには吐出ポート402Pが常時(ピストンストロークの大小に関わらず)開口する。第2ピストンシール422Sのx軸正方向側には、セカンダリ液圧室44Sが画成される。セカンダリ液圧室44Sは、主にセカンダリピストン41Sのx軸正方向端面とシリンダ本体40aの内周面との間の空間により構成されている。セカンダリ液圧室44Sには吐出ポート402Sが常時開口する。
第2ピストンシール422は、内径側にリップ部を備える周知の断面カップ状のシール部材(カップシール)であり、リップ部がピストン41の外周面に摺接した状態では、一方向へのブレーキ液の流れを許容し、他方向へのブレーキ液の流れを規制する。P系統についてみると、第2ピストンシール422Paは、連通孔410Pbからプライマリ液圧室44Pへ向う流れのみを許容する。第2ピストンシール422Pbは、補給ポート401Pからプライマリ液圧室44Pへ向う流れのみを許容する。S系統についてみると、第2ピストンシール422Sは、補給ポート401Sからセカンダリ液圧室44Sへ向う流れのみを許容する。
戻しばね43は、各ピストン41を初期位置に向けてx軸負方向に常時付勢する付勢部材であり、弾性体としてのコイルスプリングを用いる。プライマリピストン41Pの戻しばね43Pは、第1ピストン41Paの戻しばね43Paと、第2ピストン41Pbの戻しばね43Pbを備えている。戻しばね43Paは、第1ピストン41Paとセカンダリピストン41Sとの間に押し縮められた状態で設置される。戻しばね43Paのx軸正方向端はセカンダリピストン41Sの有底孔412Sに収容設置され、戻しばね43Paのx軸負方向端は第1ピストン41Paの有底孔411Pに収容設置される。戻しばね43Pbは、プライマリピストン収容孔400Pの内壁と第2ピストン41Pbとの間に押し縮められた状態で設置される。戻しばね43Pbのx軸正方向端はプライマリピストン収容孔400Pのx軸正方向端の段差部に設置され、戻しばね43Paのx軸負方向端は第2ピストン41Pbのx軸正方向端に設置される。セカンダリピストン41Sの戻しばね43Sは、セカンダリピストン収容孔400Sの内壁とセカンダリピストン41Sとの間に押し縮められた状態で設置される。戻しばね43sのx軸正方向端はセカンダリピストン収容孔400Sのx軸正方向端に設置され、戻しばね43Sのx軸負方向端はセカンダリピストン41Sの有底孔411Sに収容設置される。
図2に示すように、ブレーキペダルBPが踏まれる前の初期状態で、戻しばね43Pbの付勢力により、第2ピストン41Pbはx軸負方向側に最大変位しており、第2ピストン41Pbのx軸負方向端面はピストンストッパ部408に当接している。この当接により、第2ピストン41Pbがそれ以上x軸負方向側へストロークすることが規制される。戻しばね43Pa,43Sの付勢力により、ロッド3はx軸負方向側に最大変位しており、フランジ部31の当接面311はロッドストッパ部409に当接している。この当接により、ロッド3がそれ以上x軸負方向側へストロークすることが規制される。この状態で、押し出し面310とピストンストッパ部408(言換えると第2ピストン41Pbのx軸負方向端面)との間には、所定のx軸方向距離SR*が設けられている。この初期状態で、第2ピストン41Pbの外周面における連通孔410Pbの開口部は、第1ピストンシール421Pbと第2ピストンシール422Pbとの間のx軸負方向側に位置する。第1ピストン41Paの外周面における連通孔410Paの開口部は、第1ピストンシール421Paと第2ピストンシール422Paとの間のx軸正方向側に位置する。セカンダリピストン41Sの外周面における連通孔410Sの開口部は、第1ピストンシール421Sと第2ピストンシール422Sとの間のx軸正方向側に位置する。
(作用)
(倍力装置の作動)
ブレーキペダルBPが踏み込まれると、ブレーキペダルBPが支軸の周りで回転する。この回転力(踏力FP)が、倍力装置2のリンク機構20を介して、ロッド推力FRないしピストン推力に変換される。リンク機構20は、装置1の全作動領域(ペダルストロークSPの全域)で、SPよりSRを小さくするように設定されている。これにより、ストローク比SP/SRすなわち倍力比kが1より大きくなるため、踏力FPを増幅してロッド3へ伝えることとなる。すなわち、ロッド推力FRが踏力FPよりも大きくなるため、倍力機能を発揮し、FPを増幅(倍力)してマスタシリンダ4のピストン41へ伝え、高いブレーキ液圧Pを得ることができる。なお、SPの全域で、SP毎に、ブレーキペダルBPと第1リンク21との接続部位(軸210)がその初期位置から移動する量よりも、SRが小さくなるように設定することが好ましい。これにより、ブレーキペダルBPのペダル比に応じて増幅されたFPよりもFRを大きくし、より高いブレーキ液圧Pを得ることができる。また、ブレーキペダルBPの踏込み量(ペダルストロークSP)の大小に応じて、SPの単位変化量ΔSPに対するロッドストロークSRの変化量ΔSRの比率(=ΔSR/ΔSP)が変化するように、リンク機構20が配列されている。言換えると、ロッド3(第1ピストン41Pa)を同じ量だけ移動させるために必要な踏力FPが、SPに応じて所望の特性で変化するように、リンク機構20(例えば軸の配置やリンク21,22の形状、長さ等)が調整されている。具体的には、SPがゼロのときは、SRもゼロである。SPがゼロから大きくなるにつれて、SRもゼロから大きくなる。ブレーキ踏込み操作の初期(SPが比較的小さい領域)よりも後期(SPが大きい領域)の方が、ΔSR/ΔSPが小さくなるように設定されている。すなわち、ΔSR/ΔSPは、SPがゼロから大きくなるにつれて小さくなる。よって、SPに対するSRの変化を示す曲線は、右上がりかつ上に凸の曲線となる。これにより、ストローク比k(=SP/SR)、言い換えると、FPに対するFR(ピストン推力)の比(レバー比ないし倍力比)は、SPがゼロから大きくなるにつれて大きくなる(SPが比較的小さい領域よりも大きい領域のほうが倍力比kが大きくなる)。
(プライマリピストンの作動)
以下、マスタシリンダ4のプライマリピストン41Pの作動について説明する。SR*に対応するペダルストロークSPをSP*とする。図2はブレーキペダルBPが踏み込まれておらず、SPがゼロである初期状態を示す。戻しばね43Paの付勢力により、第1ピストン41Paはx軸負方向側に最大変位しており、第1ピストン41Paの初期位置からのx軸方向移動量(第1ピストンストローク)はゼロである。ロッド3のフランジ部31(当接面311)はロッドストッパ部409に当接しており、ロッドストロークSRはゼロである。戻しばね43Pbの付勢力により、第2ピストン41Pbはx軸負方向側に最大変位しており、第2ピストン41Pbの初期位置からのx軸方向移動量(第2ピストンストローク)はゼロである。プライマリ液圧室44Pは連通孔410Pa,410Pbを介して補給ポート401P(リザーバタンク5)と連通しており、プライマリ液圧室44Pに液圧(マスタシリンダ圧)が発生していない。戻しばね43Sの付勢力により、セカンダリピストン41Sはx軸負方向側に最大変位しており、セカンダリピストン41Sの初期位置からのx軸方向移動量はゼロである。セカンダリ液圧室44Sは補給ポート401S(リザーバタンク5)と連通しており、セカンダリ液圧室44Sに液圧(マスタシリンダ圧)が発生していない。
図3はブレーキペダルBPが踏み込まれ、ペダルストロークSPがSP*未満の範囲である状態を示す。踏力FP(ロッド推力FR)により、第1ピストン41Paはx軸正方向側に変位しており、それに応じて戻しばね43Paは圧縮されている。第1ピストン41Paはロッド3と一体にx軸方向に移動(ストローク)するため、第1ピストンストロークはロッドストロークSRと同じである。第1ピストンストロークはゼロより大きくSR*未満である。ロッド3のフランジ部31(押し出し面310)は第2ピストン41Pbから離間している。戻しばね43Pbの付勢力により、第2ピストン41Pbはx軸負方向側に最大変位しており、第2ピストンストロークはゼロのままである。すなわち、第1ピストン41Paのみストロークしている。以下、適宜、セカンダリピストン41Sのストロークを無視して説明する。x軸正方向側から見た第1ピストン41Paの面積と第1ピストンストロークとの積に略相当する分だけプライマリ液圧室44Pの容積が縮小する。第1ピストン41Paの外周面における連通孔410Paの開口部が第2ピストンシール422Pa(リップ部)よりもx軸正方向側へ変位することで、プライマリ液圧室44Pとリザーバタンク5との連通が遮断され、プライマリ液圧室44Pが液密にシールされている。よって、第1ピストン41Paがプライマリ液圧室44Pを加圧し、プライマリ液圧室44Pに液圧(マスタシリンダ圧)が発生する。上記容積縮小分に略相当するブレーキ液量がプライマリ液圧室44Pから吐出ポート402Pを介してホイルシリンダW/Cへ向けて供給される。なお、戻しばね43Paを介して第1ピストン41Paから伝達される力により、セカンダリピストン41Sもx軸正方向側に変位する。セカンダリピストン41Sの外周面における連通孔410Sの開口部が第2ピストンシール422Sよりもx軸正方向側へ変位することで、セカンダリ液圧室44Sとリザーバタンク5との連通が遮断される。よって、セカンダリピストン41Sはセカンダリ液圧室44Sを加圧し、セカンダリ液圧室44Sに液圧(マスタシリンダ圧)が発生する。なお、各液圧室44には略同じ液圧が発生する。セカンダリ液圧室44Sから吐出ポート402Sを介してブレーキ液がホイルシリンダW/Cへ向けて供給される。
図4はブレーキペダルBPがさらに踏み込まれ、ペダルストロークSPがSP*以上の範囲である状態を示す。第1ピストン41Paは、図3と同様、踏力FP(ロッド推力FR)によりx軸正方向側に変位している。第1ピストンストロークはSR*以上である。ロッド3が初期位置からSR*以上ストロークすると、ロッド3のフランジ部31(押し出し面310)が第2ピストン41Pbに当接する。フランジ部31(押し出し面310)が第2ピストン41Pbを押し出すことにより、第2ピストン41Pbはx軸正方向側に変位しており、その分だけ戻しばね43Pbは圧縮されている。(ロッド3に連結された)第1ピストン41Paと(フランジ部31が当接する)第2ピストン41Pbとは、一体となってx軸方向に移動(ストローク)する。言換えると、第1ピストン41Paと第2ピストン41Pbは、SRがSR*以上になると互いに係合する。これにより、プライマリピストン41Pが大径になり、受圧面積が増加する。x軸正方向側から見た第1ピストン41Paの面積と第1ピストンストロークとの積と、x軸正方向側から見た第2ピストン41Pbの面積と第2ピストンストロークとの積の和に略相当する分、言換えると、x軸正方向側から見た第1ピストン41Paの面積と第2ピストン41Pbの面積との和と、第1,第2ピストン41Pa, 41Pbのストロークとの積に略相当する分だけ、プライマリ液圧室44Pの容積が縮小する。図3と同様、プライマリ液圧室44Pとリザーバタンク5との連通が遮断され、プライマリ液圧室44Pが液密にシールされている。よって、第1,第2ピストン41Pa,41Pbがプライマリ液圧室44Pを加圧し、プライマリ液圧室44Pに液圧(マスタシリンダ圧)が発生する。上記容積縮小分に略相当するブレーキ液量がプライマリ液圧室44PからホイルシリンダW/Cへ向けて供給される。プライマリピストン41Pが大径になり、受圧面積が増加する分だけ、プライマリ液圧室44PからホイルシリンダW/Cへ向けて供給されるブレーキ液量が増加する。第1,第2ピストンストロークの増大に応じて、プライマリ液圧室44P内の液圧が上昇すると、第1,第2ピストン41Pa,41Pbに作用する液圧による反力が増加する。また、戻しばね43Pa,43Pbが圧縮されると、第1,第2ピストン41Pa,41Pbに作用するばね反力が増加する。なお、図3と同様、セカンダリピストン41Sのストロークによりセカンダリ液圧室44Sに液圧(マスタシリンダ圧)が発生し、ホイルシリンダW/Cへ向けて供給される。
ここで、ゼロからSP*未満の範囲であって比較的小さいSPの領域を第1領域といい、SP*以上かつ最大値SPmax以下の範囲であって比較的大きいSPの領域を第2領域という。上記のように、第1ピストン41Paは第1領域及び第2領域で作動(ストローク)し、第2ピストン41Pbは、第2領域で作動する。プライマリピストン41Pは、プライマリ液圧室44Pの液圧を発生するために、第1領域では第1ピストン41Paの径を有する小径ピストンとしてx軸方向に移動し、第2領域では第2ピストン41Pbの径を有する大径ピストンとしてx軸方向に移動する。プライマリピストン41Pは、プライマリ液圧室44Pの液圧を発生するためにx軸方向に移動すると共に上記液圧を受ける部分の面積(受圧面積)として、第1領域では、第1ピストン41Paのみの上記面積(第1の受圧面積)を有している。第2領域では、第1ピストン41Paの上記面積と第2ピストン41Pbの上記面積とを足し合わせた面積(第1の受圧面積よりも大きな第2の受圧面積)を有している。SP*は、プライマリピストン41Pの受圧面積(受圧径)が変化するペダルストロークSPの閾値となる。SPがSP*未満(第1領域)では受圧面積(受圧径)が小さく、SP*以上(第2領域)では受圧面積(受圧径)が大きい。
図5〜図7は、装置1の各パラメータ間の関係を示す特性図である。実線で本実施例を示し、一点鎖線で比較例を示す。比較例は、本実施例と同様のリンク式倍力装置を備えるブレーキ装置であって、本実施例のように構成されたマスタシリンダではなく通常のマスタシリンダ(プライマリピストンが第2ピストンを有さずに小径の第1ピストンのみを有するもの)を備えるものである。
図5は、ペダルストロークSPとホイルシリンダ圧Pとの関係(S-P特性)を示す。マスタシリンダ4からホイルシリンダW/Cへ向けて供給されるブレーキ液の量をQとする。Qがゼロから増加すると、ホイルシリンダW/C(キャリパ)のピストンのガタ詰めが終了した後、ホイルシリンダ圧Pが上昇する。よって、本実施例では、QとPとの関係(液圧剛性)は、Qが所定量までの範囲ではQの増加に対するPの上昇率ΔP/ΔQは小さく、Qが上記所定量を越えるとΔP/ΔQが大きくなる特性となっている。ピストン41の受圧面積が一定である場合、SRの増大に略比例してQが増加する。よって、SPが増大すると、倍力装置2(リンク機構20)によるSPとSRの上記関係特性に従ってSRが増大(Qが増加)し、これに応じて、図5に示すようにPが上昇する。SPがゼロから増大する初期には、Qはガタ詰めのために消費されるため、Pはあまり上昇しない。ガタ詰め後、SPが増大するのに応じて、Pが上昇する。倍力装置2の上記特性により、ブレーキ踏込み操作の後期にはSPの増大分ΔSPに対するSRの増大分ΔSR(すなわちピストンストロークの増加量)が小さくなる。よって、比較例では、ブレーキ踏込み操作の後期に、ΔSPに対するQの増加分ΔQが少なくなるため、SPの増大に対するPの上昇率ΔP/ΔSPが小さくなる。本実施例では、SPがSP*以上になると、プライマリピストン41Pの受圧面積が増加する。これにより、同じ第1ピストンストローク(ないしSR)の増大分に対してマスタシリンダ4(プライマリ液圧室44P)からホイルシリンダW/Cへ向けて供給されるブレーキ液量の増加分ΔQが多くなる。よって、ブレーキ踏込み操作の後期に、(同じSPにおける)ΔP/ΔSPが比較例よりも大きくなると共に、同じSPであってもPが比較例より高くなる。最大ペダルストロークSPmaxは比較例と変わらないが、最大液圧Pmaxが比較例よりも高くなる。
図6は、踏力FPとペダルストロークSPとの関係(F-S特性)を示す。踏力FP(ペダル反力)は、プライマリピストン41Pに作用する戻しばね43Pの付勢力による反力(以下、ばね反力という。)と液圧による反力(以下、液圧反力という。)とにより規定される。ばね反力は、SR(すなわち第1ピストンストローク)に比例する。液圧反力は、図5の特性に従い、SPにより規定される。よって、SPが増大すると、倍力装置2の上記特性に従ってSRが増大し、これに応じて、図6に示すようにFPが増大する。ブレーキ踏込み操作の初期には、FPの変化に関わらず、FPがゼロから少なくともばね反力以上に増大するまで、SPはゼロである。FPの増加につれて、SPがゼロよりも大きくなった後は、FPに対するSPの変化を示す曲線は、急な右上がりの曲線となる。倍力装置2の上記特性により、ブレーキ踏込み操作の後期にはSPの増大分ΔSPに対するSRの増大分ΔSR(すなわちばね反力の増大量)が小さくなる。よって、比較例では、ブレーキ踏込み操作の後期に、ΔSPに対する踏力FPの増大分ΔFPが小さくなるため、SPの増大に対するFPの増大率ΔFP/ΔSPが小さくなる。したがって、適度なペダル反力が得られず、抜け感が生じるおそれがある。本実施例では、SPがSP*以上になると、プライマリピストン41Pの受圧面積が増加し、その分、液圧反力が増大する。また、第2ピストン41Pbの戻しばね43Pbの付勢力が加わる分、ばね反力が増加する。これにより、ブレーキ踏込み操作の後期に、同じSPであってもFP(ペダル反力)が比較例より大きくなると共に、(同じSPにおける)ΔFP/ΔSPが比較例より大きくなる。言換えると、ペダルストロークSP(の増大)に必要な踏力FP (の増大分)が大きくなる。最大ペダルストロークSPmaxは比較例と変わらないが、最大踏力FPmaxが比較例よりも大きくなる。
図7は、踏力FPとホイルシリンダ圧Pとの関係(F-P特性)を示す。FPに対するSPの変化の特性は図6に従う。SPに対するPの変化の特性は図5に従う。よって、FPが増大すると、上記各特性に応じて、図7に示すようにPが増大する。踏力FPがゼロから増大するブレーキ踏込み操作の初期には、踏力FPの変化に関わらず、Pはゼロである。FPの増加につれて、Pがゼロよりも大きくなり、Pが所定値以上になると、FPに対するPの変化を示す曲線は、急な右上がりの曲線となる。ブレーキ踏込み操作の後期に、比較例では、ΔFPに対するΔPが大きく、比較的小さいFPで最大液圧Pmaxに達する。本実施例では、SPがSP*以上になると、プライマリピストン41Pの受圧面積とばね反力が増加する。これにより、FPが(SP*に対応する)FP*以上になるブレーキ踏込み操作の後期に、同じPであってもFP(ペダル反力)が比較例より大きくなると共に、(同じFPにおける)ΔP/ΔFPが比較例より小さくなる。また、最大液圧Pmaxが比較例よりも高くなると共に、最大液圧Pmaxに対応する最大踏力FPmaxが比較例よりも大きくなる。
(省エネ化、小型化、低コスト化)
通常ブレーキ(踏力ブレーキ)時、ブレーキペダルBPの操作に応じて倍力装置2が作動することで、運転者のブレーキ操作力FPを低減するための補助力が発生する(FPが倍力ないし増幅される)。この倍力装置2は、SPに対するピストンストロークを調整するメカニカルなリンク機構である。すなわち、倍力装置2は、専らブレーキ操作力FPを利用してメカ的にFPを倍力・補助する。言い換えると、倍力装置2は、電動モータやアキュムレータを用いて液圧を発生する倍力装置や、エンジンの負圧を用いたマスターバック(負圧ブースタ)等の、運転者のブレーキ操作力とは別のエネルギ源を用いて駆動され、補助力を発生するものではない。よって、本実施例の装置1は、通常ブレーキ時、ブレーキ操作力とは別のエネルギ源を用いて倍力装置を作動させる必要がない。したがって、補助力を発生するための消費エネルギを抑制することができる。また、電動モータや負圧等を用いる倍力装置を省略することが可能であるため、装置1の大型化を抑制することができる。言い換えると、昨今、車両の燃費向上の要求から、倍力装置が負圧を利用しなかったり、利用するとしても低負圧を用いるブレーキ装置が求められている。一方、電動モータやアキュムレータを用いて液圧を発生する倍力装置を備えた場合、ブレーキ装置が大型化・複雑化し、また部品点数が増加してコスト的に不利となると共に、車両への搭載性が悪化するおそれがある。さらには、車両が大型化したり重量が増大したりするため、車両のエネルギ効率が悪化するおそれがある。これに対し、本実施例の装置1は、倍力装置2としてリンク機構20を用いることで、少なくとも常用域で必要とされるブレーキ性能を満足しつつ、燃費向上が可能であり、かつブレーキシステムを小型化し、またコスト的に有利なものとすることができる。
なお、ブレーキ操作力の不足を補うエネルギ源として、液圧制御ユニットHUを利用することも考えられる。例えば、所定のブレーキ操作領域(比較的大きな減速度Gないし高いホイルシリンダ圧Pが必要な領域)では、倍力装置2に加え液圧制御ユニットHUを作動させて要求ブレーキ液圧を実現することも可能である。しかし、液圧制御ユニットHUの作動(ポンプアップ)が頻繁に行われると、消費エネルギを抑制するという上記効果が減殺されるおそれがある。また、ポンプの耐久性が低下するおそれがあると共に、ブレーキシステムの静粛性(音振性能)が低下するおそれがある。これに対し、本実施例では、通常ブレーキ時には、踏力ブレーキ(装置1)のみを用いており、液圧制御ユニットHUを利用しない。よって、上記のような問題を回避し、エネルギ効率を最大限向上する等の効果を得ることができる。また、装置1は、倍力装置2としてメカ的なリンク機構20を用いるため、電源系が失陥した場合でも、運転者のブレーキ操作力により最低限必要な車両の減速度を実現することが可能である。よって、フェールセーフ性にも優れる。
(S-F-G特性の調整作用)
本実施例の装置1は、小型車や軽自動車(以下、小型車等という)に好適である。すなわち、小型車等では、ホイルシリンダW/Cの容量が小さく、マスタシリンダ4(のピストン41)が小径で済むため、運転者のブレーキ操作力を倍力する力(倍力比k)もそれほど大きいものが必要とされない。また、小型車等はその質量が小さいため、同じ減速度Gを発生するために必要な制動力が小さくて済む。よって、小型車等にあっては、少なくとも常用域では、リンク式の倍力装置2のみによって、負圧ブースタを有する従来のブレーキ装置と同様のSPとFPとP(減速度G)との間の関係(S-F-G特性)を十分に実現可能であることを、本出願人は、解析の結果、見出した。なお、本実施例の装置1の適用対象は小型車等に限られない。ここで、S-F-G特性について、種々の要求が存在する。倍力装置2及びマスタシリンダ4により装置1の特性を調整することにより、上記要求を満足させることができる。本実施例では、以下を基本的な思想(要求ないしそれへの対応)とする。
(ア)ブレーキ踏込み操作の初期においては、ホイルシリンダW/Cへ多くのブレーキ液量Qを供給することで、ブレーキ踏込み操作に対する制動力(液圧P)の増大応答性を向上する。
(イ)頻度が高いブレーキ操作領域(常用域)では、負圧ブースタを有する従来のブレーキ装置のS-F-G特性に近づけることで、ブレーキ操作フィーリング(ペダルフィーリング)の低下を抑制する。
(ウ)ブレーキ踏込み操作の後期においては、ブレーキペダルBPに作用する反力(ペダル反力)を適度に得つつ、制動力(液圧P)を増大可能とすることで、ペダルフィーリングの低下を抑制する。
(ア)について:
倍力装置2の上記特性により、ブレーキペダルBPのストローク初期ほど、ΔSR/ΔSPが大きい(ロッド3がストロークしやすい)。このため、ブレーキ踏込み操作の初期には、比較的小さいSPで多くのブレーキ液量QをホイルシリンダW/Cへ供給することができる。よって、ブレーキ踏込み開始後の比較的早い時期に必要な液量QをホイルシリンダW/Cへ供給することが可能であり、液圧剛性が低い(Qに対するPの上昇率が小さい)非線形領域を早期に脱することができる。したがって、ブレーキ操作に対する制動力(液圧P)の増大応答性を向上することができる。また、ブレーキ踏込み操作の初期のΔP/ΔFPを大きく設定することで、ブレーキ操作(FPの増加)に対する制動力(液圧P)の増大応答性を向上することができる。なお、ブレーキペダルBPのストローク後期には、ΔSPに対するΔSRが小さいため、踏力FPの増幅率を大きくして制動力を確保しやすくすることができる。
(イ)について:
ブレーキ踏込み操作初期の比較的低Gの領域は、作動頻度が比較的高い(例えば所定のブレーキ総回数のうち略80%の回数を占める)常用域である。この領域の特性として、例えばペダルストロークSPEで液圧PE以上かつ踏力FPE以下である特性とする要求があったとする。この場合、倍力装置2の特性(リンク特性)を調整することで、SPがSPEに達するまでに必要な液量Qをマスタシリンダ4から供給できるように設定し、図5に示すように、SPEでPE以上を実現することができる。同様に、図7に示すようにPEでFPE以下となり、図6に示すようにSPEでFPE以下となるような特性を実現可能である。また、負圧ブースタを作動させるブレーキ装置では、例えばF-S特性及びF-P特性に関し、ブレーキ踏込み直後、Fがゼロから所定値Fj未満の範囲ではSP及びPが発生しない一方、FPがFj以上になると、SP及びPが発生してそれぞれ一気に所定量まで増大する、という特性(ジャンプイン特性)がある。倍力装置2の特性を調整することで、負圧ブースタを作動させるブレーキ装置の特性(ジャンプイン特性)を模擬するS-F-P特性を常用域で実現し、これによりペダルフィーリングを向上することも可能である。
(ウ)について:
倍力装置2の特性(リンク特性)を調整することでのみ上記(ア)(イ)の要求を満たした場合、ペダルストロークSPの全域では好ましい特性を発揮できないおそれがある。すなわち、装置1の車両搭載性を良くしようとすると、リンク機構20の構成や形状、配置が制限される。特に、装置1を小型車等に搭載する場合、搭載可能なスペースが狭い(ブレーキペダルBPや倍力装置2を設置するための運転者の足元のスペースが限られる)ため、上記制限が大きくなる。よって、リンク機構20の構成(リンク特性)を、車両搭載時の制約条件下で上記(ア)(イ)の要求を満たすことができるものにしようとした場合、ブレーキ踏込み操作の後期にペダルフィーリングが低下するおそれがある。例えば、ブレーキペダルBPのストローク後期に、ΔSR/ΔSPが小さくなりすぎ、同じΔSPであっても少しの液量Qしか供給することができないため、ブレーキ操作に対する制動力(液圧P)の増大応答性が低下するおそれがある。言換えると、倍力比kが非常に大きくなるため、図6の比較例(一点鎖線)に示すように、FPがあまり変化しないのにSPがどんどん大きくなる特性になる。また、図5の比較例(一点鎖線)に示すように、SPを大きく増加させているのにPがなかなか上昇しない特性になる。言換えると、図7の比較例(一点鎖線)に示すように、FPがあまり増加しないのにPが上昇して直ぐに頭打ちになる特性になる。よって、踏力FPが軽すぎて適度なペダル反力が得られず、抜け感が生じるおそれがある。一方、ブレーキ踏込み操作の後期に、適度なペダル反力を得つつ液圧Pを上昇可能な特性となるようにリンク機構20を設定した場合には、上記(ア)(イ)の要求を満たすことができないおそれがある。
これに対し、本実施例の装置1は、所定のペダルストロークSP*を閾値として、マスタシリンダ4のピストン41Pの受圧面積(受圧径)を切り替える。よって、装置1の特性の調整を容易に行うことができ、ブレーキ踏込み操作の初期と後期における相反する要求(ア)〜(ウ)を共に実現することが可能である。具体的には、ペダルストロークSPの領域を第1領域と第2領域とに分け、第1領域よりも第2領域での受圧面積が大きくなるように、マスタシリンダ4を構成した。これにより、ブレーキ踏込み操作の後期に、同じΔSPであっても、より多くのΔQを供給(より大きいΔPを発生)することができるようになる。図5に示すように、第2の領域(SP≧SP*)におけるΔP/ΔSPは、受圧面積を変化させない比較例よりも大きい。よって、ブレーキ踏込み操作の後期にも、ブレーキ操作(SPの増加)に対する制動力(液圧P)の増大応答性を向上することができる。また、倍力比kが大きくなりすぎることを抑制することができる。図6に示すように、第2の領域(SP≧SP*)におけるΔFP/ΔSPは、受圧面積を変化させない比較例よりも大きい。すなわち、第2の領域では、ペダルストロークSP(の増大)に必要な踏力FP (の増大分)が大きくなる。また、図7に示すように、第2の領域(SP≧SP*)におけるΔP/ΔFPは、受圧面積を変化させない比較例よりも小さい。すなわち、Pを上昇させるために、第2の領域では、より大きなΔFPが必要となる。これらを言換えると、ブレーキ踏込み操作の後期には、Pの上昇に必要なΔSPが過大となることを抑制しつつ、ΔFPに対してΔSPやΔPが過大となることを抑制する。よって、ブレーキ踏込み操作の後期に、ブレーキ操作(SPの増加)に対して制動力(液圧P)を増大させつつ、踏力FPが軽すぎるようになることを抑制し、適度なペダル反力を得、以てペダルフィーリングの悪化を抑制することができる。特に、ブレーキ踏込み操作の後期の高G領域では、人間は踏力FPで減速度G(液圧制動力)を制御する傾向があることから、各特性のうちでもF-P特性を理想に近づけるように特性を調整することで、ペダルフィーリングを向上することができる。
以上のように、車両の諸元や踏力ブレーキの目標特性に基づき、倍力装置2の特性に応じて、マスタシリンダ4の受圧面積の切り替えを調整することにより、上記要求されるS-F-G特性を満足させることができる。マスタシリンダ4のみを設計変更するだけで、搭載される車種に応じたS-F-G特性を実現することができるため、装置1の搭載性を向上することができる。言換えると、倍力装置2とマスタシリンダ4は、装置1のS-F-G特性を調整する特性調整部を構成する。この特性調整部は、専ら運転者のブレーキ操作力を利用してメカ的にS-F-G特性を調整する。すなわち、電動モータやアキュムレータを用いて発生する液圧等によりS-F-G特性を調整する機構ではない。よって、消費エネルギを抑制しつつ、装置1の大型化を抑制することができる。
(従来技術との対比における作用効果)
従来のブレーキ装置では、ブレーキペダルの踏込み操作の初期の特性と後期の特性とを共に良好なものとし、ペダルストロークの全域で良好な特性を得ることが困難であった。具体的には、ブレーキ踏込み操作の初期に踏力が小さいときにもマスタシリンダのピストンに大きな力を伝達して十分な制動力を確保することと、踏込み操作の後期にマスタシリンダから多くのブレーキ液をホイルシリンダへ供給して十分な制動力を確保することとを両立するのが、困難であった。例えば特許文献1に記載のブレーキ装置は、運転者のブレーキ操作力を低減するための補助力を発生する倍力装置として負圧ブースタを備える。このブレーキ装置は、倍力装置の失陥時に踏力だけでマスタシリンダ圧を十分に高めることができるよう、ブレーキペダルと倍力装置との間に、2つのクレビスを並列に設けている。一定以上の力でブレーキペダルが踏み込まれると、レバー比が増大するようにクレビスを切り替える。これにより、失陥時にも、必要な制動力を確保することを図っている。しかし、上記ブレーキ装置では、踏力が小さいときはレバー比も小さく、踏力によりマスタシリンダに伝達される力も弱い。よって、ブレーキ踏込み操作の初期の制動力が小さい。一方、踏込み操作の初期の特性を改善するために、踏込み操作の初期のレバー比を高く設定すると、踏込み操作の後期にマスタシリンダのピストンのストローク量が小さくなってしまう。この場合、マスタシリンダからホイルシリンダへ向けて供給されるブレーキ液が不足し、ホイルシリンダで十分に高い液圧を発生できなくなるおそれがある。なお、本実施例の装置のようにリンク式の可変倍力装置2を備えるものにあっては、ブレーキ踏込み操作の初期に踏力FPが小さいときにも、倍力比kをある程度高く設定することで、マスタシリンダ4に伝達される力を確保することができる。よって、制動力の低下を抑制することができる。しかし、このようにブレーキ踏込み操作の初期の倍力比kを高く設定すると、リンク式の可変倍力装置2の特性として、踏込み操作の後期のロッドストロークSR(マスタシリンダ4のピストン41のストローク量)が小さくなってしまう。よって、上記従来のブレーキ装置と同様、十分に高い液圧を発生できなくなるおそれがある。
これに対し、本実施例の装置1は、所定のペダルストロークを超えたときに、マスタシリンダ4のピストン41Pの受圧面積を増大させる。具体的には、SP*を閾値として、ピストン41Pの受圧面積(受圧径)を切り替える。これにより、ブレーキ踏込み操作の初期における倍力装置2の倍力比kを高く設定したことによって踏込み操作の後期のペダルストロークSPに対するピストンストロークが小さくなる場合でも、受圧面積を増大させる分だけ、同じピストンストロークに対してマスタシリンダ4からホイルシリンダW/Cへ向けて供給されるブレーキ液量Qが増加する。よって、上記ブレーキ液量の減少を抑制することができるため、最大液圧Pmaxを上昇させ、ブレーキ踏込み操作の後期にも十分に高い液圧を発生可能となる。図7に示すように、第2の領域(SP≧SP*)でピストン41Pの受圧面積を増大させる本実施例においては、受圧面積を変化させない比較例(一点鎖線)よりも最大液圧Pmaxが高い。よって、ブレーキ踏込み操作の後期にも、十分に大きな制動力(高い液圧P)を得ることができる。したがって、ブレーキ踏込み操作の初期の特性を良好にしつつ、踏込み操作の後期の特性をも良好にすることができる。なお、通常ブレーキ時に液圧制御ユニットHUを作動させてホイルシリンダW/Cを加圧する倍力制御を行う場合には、上記のように最大液圧Pmaxを上昇させることで、液圧制御ユニットHUの失陥時にも、踏力だけでマスタシリンダ4(ホイルシリンダW/C)の液圧を十分に高めることができる。よって、フェールセーフ性能を向上することができる。
以上から明らかなように、所定のペダルストロークSP*を超えたときにマスタシリンダ4のピストン41の受圧面積を増大させるという本実施例のマスタシリンダ4の構成は、リンク式の倍力装置2を備えた装置1に限らず、「ブレーキ踏込み操作の初期の倍力比を高く設定すると踏込み操作の後期のマスタシリンダのピストンのストローク量が小さくなる」という特性を有するブレーキ装置一般に、適用可能である。例えば、倍力装置の有無に関わらず、低踏力で必要な制動力を確保可能な程度に高い一定レバー比のブレーキペダルを用いたものにも適用可能である。この場合も、本実施例のマスタシリンダ4を適用することで、踏込み操作の初期にブレーキペダルのレバー比によって良好な特性を得る一方、踏込み操作の後期にマスタシリンダ4のピストン41の受圧面積を増大させることで高い液圧を発生可能となる。
なお、マスタシリンダ4において受圧面積(受圧径)を切り替え可能なピストン41Pを、1つの部材により構成することとしてもよい。本実施例では、ピストン41Pが、複数のピストン(第1ピストン41Paと第2ピストン41Pb)により構成されている。よって、ペダルストロークSPに応じて複数のピストン41Pa,41Pbの作動を切り替えることで、容易に、ピストン41P全体としての受圧面積を切り替えることができる。具体的には、第1領域では第1ピストン41Paを作動させ、第2領域では第1ピストン41Paと共に第2ピストン41Pbを作動させるように構成したことで、受圧面積を増減することができる。したがって、マスタシリンダ4の構成を簡素化することが可能である。本実施例では、受圧面積を切り替え可能なピストン41Pの数は2つである。よって、上記数を3以上とした場合に比べ、マスタシリンダ4の部品点数を削減し、構成を簡素化することが可能である。
なお、受圧面積を切り替え可能な複数のピストン41Pa,41Pbの配列方法は本実施例のものに限られない。本実施例では、複数のピストン41Pa,41Pbは並列に(軸直方向から見て重なるように)配置されている。よって、マスタシリンダ4の軸方向寸法が大きくなることを抑制することができる。また、プライマリピストン41Pではなく(又はプライマリピストン41Pと共に)セカンダリピストン41Sが、複数のピストンを備えることとしてもよい。しかし、プライマリピストン41Pにはロッド3が連結しており、ロッド3の推力がプライマリピストン41Pに直接入力される。よって、本実施例のようにプライマリピストン41Pの側に複数のピストン41Pa,41Pbを設ければ、セカンダリピストン41Sの側に設けた場合に比べ、複数のピストンを用いて受圧面積を切り替える構成を容易に実現することができる。
[実施例2]
まず、構成を説明する。図8は、実施例2のマスタシリンダ4の、図2と同様の断面図である。第2ピストン41Pbには、弾性体としてのばね45が付随して設置されている。ばね45はコイルスプリングであり、その軸方向一端は、第2ピストン41Pbのx軸負方向端面に設置されている。ばね45の軸方向他端は自由端であり、x軸方向で所定の距離(SP1*)をおいてロッド3のフランジ部31(押し出し面310)に対向するように配置されている。ばね45は、ロッド3のフランジ部31(押し出し面310)が第2ピストン41Pbに当接する際の衝撃を緩和するためのダンパである。他の構成は実施例1と同様であるため、共通する構成に同一の符号を付して説明を省略する。
次に、作用を説明する。図9は、図6と同様の特性図であり、二点鎖線で本実施例のF-S特性を示す。SPがSP1*未満では、ロッド3(フランジ部31)がばね45から離間した状態であるため、実線(実施例1)と同様の特性である。SPがSP1*以上になると、ロッド3(フランジ部31)がばね45に当接した状態となる。SPがSP1*以上SP2*未満では、ロッド3(フランジ部31)がばね45を圧縮変形させると共に、ロッド3がばね45から反力を受ける。このとき、ばね45の圧縮変形の分だけ、第2ピストン41Pbに推進力が付与されると共に、ロッド3からリンク機構20を介してブレーキペダルBPに反力が作用する。よって、ペダル反力が増加し、ペダルストロークSPを増加させるための踏力FPが追加的に必要となる。図9の二点鎖線に示すように、ばね45を設けない場合(実線)に比べて、(同じSPにおける)ΔFP/ΔSPが大きくなると共に、同じSPであってもFPが大きくなる。SPがSP2*以上では、ばね45が完全に圧縮されてロッド3(第1ピストン41Pa)と第2ピストン41Pbが一体に(相対変位することなく)ストロークするようになるため、実線(実施例1)と略同様の特性になる。図10は、図7と同様の特性図であり、二点鎖線で本実施例のF-P特性を示す。SPに対するPの変化の特性は図5(実線)に従う。また、図10のP1*〜P2*は図9のSP1*〜SP2*に対応する。よって、PがP1*以上P2*未満では、図10の二点鎖線に示すように、ばね45を設けない場合(実線)に比べて、(同じPにおける)ΔFP/ΔPが大きくなると共に、同じPであってもFPが大きくなる。
プライマリピストン41Pの受圧面積が変化する際、第2ピストン41Pbがストロークを開始する前に、ロッド3(フランジ部31)がばね45に当接する。ロッド3の推力により、ばね45が圧縮される(撓む)。ロッド3は、ばね45を介して、その推力FRを第2ピストン41Pbに伝達する。言い換えると、各ピストン41Pa,41Pbは、ばね45を介して係合する。これにより、ピストン41Pa,41Pbの係合を円滑化し、ピストン41Pを滑らかにストロークさせることができる。また、プライマリピストン41Pの受圧面積の切り替えの際に、ブレーキペダルBPにばね45の反力が伝わる分だけ、SPやPの増加に必要なFPが増加するため、F-S特性及びF-P特性の急変動が抑制される。このようにばね45がダンパ効果を発生することで、SPやPに対するFPの変化を滑らかにし、ペダルフィーリングを向上できる。例えば、各特性をより容易に、負圧ブースタを有する従来のブレーキ装置に近づけることができる。したがって、マスタシリンダ4のピストン41Pの受圧面積を変化させることにより装置1のS-F-G特性を調整する場合において、ペダルフィーリングをより向上することができる。言換えると、ばね45は、特性調整部の一部を構成しており、このばね45の特性を適宜変更することで、FPに関する各特性を任意に設定可能である。
なお、ばね45はピストン41Pの側でなくロッド3の側に取付けられていてもよい。また、ばねに限らず、ゴム等により、上記機能を発揮する弾性体を構成してもよく、その材質や形状や数や配置等は特に限定されない。その他、実施例1と同様の構成により実施例1と同様の作用効果を得る。
[実施例3]
まず、構成を説明する。図11は、実施例3のマスタシリンダ4の、図2と同様の断面図である。ロッド3には、フランジ部31のx軸正方向側に隣接して、略円柱状の大径部32が設けられている。大径部は、フランジ部31よりも小径であり、その外周面の径は、第1ピストン41Paの外周面の径と略等しく設けられている。フランジ部31には、その周方向における所定の複数の位置に、x軸方向に延びる溝312が設けられている。溝312は、フランジ部31のx軸方向両端に開口する。ロッド3の軸心から溝312の底部までの距離は、大径部32の半径と略等しく設けられており、溝312の底部は大径部32の外周と略同じ面をなして連続している。シリンダ40の嵌合凹部407の底部に設けられた有底円筒状の凹部407aの内周面の径は、プライマリピストン収容孔400Pの径よりも若干小さく設けられている。ピストンストッパ部408は、凹部407aではなく嵌合凹部407の底部に直接形成されている。第2ピストン41Pbのx軸負方向端面には、第2ピストン41Pbの軸心を取り囲んで周方向に延びる環状の溝416が設けられている。
マスタシリンダ4は、その内部に倍力機構46を備えている。倍力機構46は、複数の倍力ユニットからなる。各倍力ユニットはベルクランク46aとトグルジョイント46bを有しており、これらが組合わさって1つの倍力ユニットを構成している。ベルクランク46aは釘抜き状(L字状)であり、長腕部461と短腕部462を有している。これらの腕部461,462は90度弱の角度をなしている。短腕部462の一端は凹部407aのx軸負方向底面に回動可能に設置されている。長腕部461は、短腕部462との接続部位からロッド収容孔406の軸心(ロッド3)に向って延びるように設置される。トグルジョイント46bは上記短腕部462とリンク463により構成されている。長腕部461と短腕部462と接続部位である角部460には、リンク463の一端が回動可能に接続している。リンク463の他端は、第2ピストン41Pbのx軸負方向端面の溝416に回動可能に設置されている。複数の倍力ユニットは、シリンダの凹部407a内であって、周方向でフランジ部31の溝312と対応する位置に、それぞれ設置される。他の構成は実施例1と同様であるため、共通する構成に同一の符号を付して説明を省略する。
次に、作用を説明する。図11に示すように、ブレーキペダルBPが踏まれる前の初期状態で、第2ピストン41Pbはx軸負方向側に最大変位している。この状態で、溝416の底部と凹部407aのx軸負方向底面との間のx軸方向距離は、トグルジョイント46bの短腕部462の長さとリンク463の長さの合計よりも、小さく設けられている。よって、短腕部462とリンク463は互いに所定の角度をなしている。長腕部461は、ロッド収容孔406の径方向に対して所定の角度をなしており、角部460から若干x軸負方向側に向って延びている。この状態で、長腕部461の先端は、ロッド3の大径部32の外周面よりも径方向内側に位置し、大径部32のx軸正方向端面に当接するように設けられている。長腕部461は、短腕部462の(凹部407aの底面に設置された)一端を支点として回動可能に、大径部32に係合している。
図11の倍力ユニットに描いた矢印は、各部に作用する力と各部の回転方向を表す。ロッド3から長腕部461に作用するロッド推力FRは、両腕部461,462の長さの比に応じて倍力され、角部460(リンク463の一端)に入力される。この倍力された力は短腕部462を介してシリンダ40(凹部407aの底面)にx軸負方向の力FRAとして作用すると共に、この力FRAの反力がトグルジョイント46bによって凹部407aの上記底面とは反対の方向に向い、リンク463を介して第2ピストン41Pb(溝416の底部)にx軸正方向の力FRBとして作用する。ブレーキ踏込み操作初期の所定のロッドストローク領域において、短腕部462とシリンダ40(凹部407aの底面)との係合部位を支点として、ベルクランク46aが回動する。これにより、短腕部462とリンク463とがなす角度が大きくなり、リンク463が第2ピストン41Pbをx軸正方向側へ僅かにストロークさせる。他の倍力ユニットでも同様の動作が行われる。このように、第1ピストン41Paがロッド3によりストロークすると共に、第2ピストン41Pbが倍力機構46により僅かにストロークする。よって、マスタシリンダ4からホイルシリンダW/Cへ向けて供給されるブレーキ液量Qが、第2ピストン41Pbのストローク分だけ、余計に増加する。上記所定のロッドストローク領域に対応するSPの範囲は、第1領域内の第2の所定値SP**(<SP*)未満の範囲である。
図12はブレーキペダルBPが踏み込まれ、ペダルストロークSPが第2の所定値SP**以上かつSP*未満の範囲である状態を示す。ベルクランク46aが上記のように回動すると、ロッド収容孔406の径方向に対して長腕部461のなす角度が小さくなる。ロッド3に対し長腕部461がなす角度が略直角になるまでベルクランク46aが回動すると、短腕部462とリンク463とがなす角度は180度に近くなる。このとき、長腕部461の先端がロッド3の大径部32のx軸正方向端面から外周面へ回り込み、この外周面に沿ってx軸方向にスライドするようになる。このとき、短腕部462とリンク463とがなす角度はほとんど変わらず、リンク463は第2ピストン41Pbをx軸正方向側へストロークさせなくなる。なお、長腕部461はロッド3(大径部32)に対してスライドし、かつロッド3に対してなす角度が略直角であるため、ロッド3(大径部32)が倍力機構46を介して第2ピストン41Pbを押す力fRBは小さい。よって、倍力機構46を介してブレーキペダルBPに作用する反力も微小である。
図13はブレーキペダルBPがさらに踏み込まれ、ペダルストロークSPが所定値SP*以上の範囲である状態を示す。ロッド3(フランジ部31)が初期位置から一定以上ストロークすると、図4と同様、ロッド3の押し出し面310は第2ピストン41Pbに当接し、第2ピストン41Pbを押し出す。第1ピストン41Paと共に第2ピストン41Pbがx軸正方向側にストロークするようになるため、第2ピストン41Pb(溝416の底部)はリンク463から離間する。ロッド3のフランジ部31の溝312は、長腕部461のガイドとして、長腕部461の一端側を収容可能である。各倍力ユニットの長腕部461は、ロッド3のストロークに応じて、対応する溝312内に収容され、溝312によりガイドされつつロッド3に対して軸方向に移動する。
以上のように、倍力機構46は、第1領域における所定のペダルストローク(ロッドストローク)領域で、第1ピストン41Paに加えて第2ピストン41Pbを作動(ストローク)させる。上記所定のペダルストローク領域は、ブレーキ踏込み操作の初期における、SPがゼロから比較的小さい値SP**までの狭い領域である。よって、ブレーキ踏込み操作の初期に、ホイルシリンダW/Cへ向けてブレーキ液を予備的ないし追加的に供給し、ホイルシリンダW/Cのピストンのガタ詰めを行うことができる。すなわち、踏込み操作の直後からホイルシリンダW/Cへ供給する液量Qを増大し、これによりホイルシリンダ圧Pを速やかに上昇させることが可能となる。よって、ブレーキ踏込み操作の初期(ペダルストローク初期)におけるS-P特性を良好なものとすることができる。また、例えばホイルシリンダW/Cにおけるブレーキパッドとブレーキディスクとの間の距離を増やし、両者の引きずりによるエネルギ損失等を抑制した場合(言換えるとホイルシリンダW/C内のピストンのガタ詰めに必要な液量が増大した場合)であっても、速やかにガタ詰めを行ってホイルシリンダ圧Pを上昇させることができるため、エネルギ効率の向上を図ることができる。なお、上記所定のペダルストローク領域において倍力機構46が第2ピストン41Pbをストロークさせる量は、上記ガタ詰めのために必要十分な量とすることが好ましい。
本実施例では倍力機構46を介してブレーキ液の上記予備的な供給を行う構成であるため、小さい踏力FPで第2ピストン41Pbをストロークさせることができる。言換えると、ロッド3が倍力機構46を介して第2ピストン41Pbを推進させる際、若干のペダル反力が追加的に発生するが、倍力機構46を介しているため、このペダル反力の追加による影響は少ない。その他、実施例1と同様の構成により実施例1と同様の作用効果を得る。
[実施例4]
まず、構成を説明する。図14は、実施例4のマスタシリンダ4の、図2と同様の断面図である。第1ピストン41Paよりも大径の中空円筒状ピストンである第2ピストン41Pbが、複数個(本実施例では2個)に分割されて設けられている。これらの第2ピストン41Pbは、比較的小径の第2ピストン41Pb1と大径の第2ピストン41Pb2を有している。大径第2ピストン41Pb2の外周面の径は、プライマリピストン収容孔400Pの径よりも若干小さく設けられている。大径第2ピストン41Pb2のピストン収容孔415b2の径は、小径第2ピストン41Pb1の外周面の径よりも若干大きく設けられている。ピストン収容孔415b2には、小径第2ピストン41Pb1が収容される。小径第2ピストン41Pb1のピストン収容孔415b1の径は、セカンダリピストン収容孔400Sの径と略等しく設けられている。ピストン収容孔415b1には、第1ピストン41Paが収容される。小径第2ピストン41Pb1は、大径第2ピストン41Pb2のストロークとは独立して、大径第2ピストン41Pb2(のピストン収容孔415b2)の内部をストローク可能に設けられている。第1ピストン41Paは、小径第2ピストン41Pb1のストロークとは独立して、小径第2ピストン41Pb1(ピストン収容孔415b1)の内部をストローク可能に設けられている。
小径第2ピストン41Pb1には径方向に延びる連通孔410Pb1が貫通形成されており、連通孔410Pb1はピストン収容孔415b1の内周面と小径第2ピストン41Pb1の外周面に開口する。ピストン収容孔415b1には、連通孔410Pb1の開口部を挟んでシール溝413b1,414b1が形成されており、これらのシール溝413b1,414b1に、実施例1と同様の第1ピストンシール421Pa及び第2ピストンシール422Paがそれぞれ設置される。ピストン収容孔415b2のシール溝413b2,414b2には、第1ピストンシール421Pa及び第2ピストンシール422Paと同様の第1ピストンシール421Pb1及び第2ピストンシール422Pb1がそれぞれ設置される。第1ピストンシール421Pb1及び第2ピストンシール422Pb1は、小径第2ピストン41Pb1の外周面における連通孔410Pb1の開口部を挟むように配置されている。第1ピストンシール421Sと第2ピストンシール422Pa,422Pb1,422Pb2との間に、プライマリ液圧室44Pが画成される。プライマリ液圧室44Pは、主にプライマリピストン41P(第1ピストン41Pa及び第2ピストン41Pb1,41Pb2)のx軸正方向端面とセカンダリピストン41Sのx軸負方向端面との間の空間により構成されている。
大径第2ピストン41Pb2のx軸負方向端部の内周側には、嵌合凹部417が設けられている。嵌合凹部417は、ピストン収容孔415b2のx軸負方向側に隣接して、x軸方向に延びる有底円筒状に形成されており、ピストン収容孔415b2よりも大径である。嵌合凹部417は、大径第2ピストン41Pb2のx軸負方向端面に開口すると共に、そのx軸正方向側の底部に当接面418を有している。当接面418は、径方向に延び広がる平面状に形成されている。小径第2ピストン41Pb1のx軸負方向端部の外周側には、フランジ部419が設けられている。フランジ部419の外周面の径は、嵌合凹部417の内周面の径よりも若干小さく、ロッド収容孔406の径よりも大きく設けられている。フランジ部419は、そのx軸正方向側に押し出し面419aを有している。押し出し面419aは、径方向に延び広がる平面状に形成されている。フランジ部419のx軸方向寸法(厚さ)は、嵌合凹部417のx軸方向寸法(深さ)よりも小さく設けられている。小径第2ピストン41Pb1の戻しばね43Pb1は、小径第2ピストン41Pb1のx軸正方向端とプライマリピストン収容孔400Pのx軸正方向端の段差部との間に、大径第2ピストン41Pb2の戻しばね43Pb2は、大径第2ピストン41Pb2のx軸正方向端とプライマリピストン収容孔400Pの上記段差部との間に、それぞれ押し縮められた状態で設置される。
図14に示すように、ブレーキペダルBPが踏まれる前の初期状態で、戻しばね43Pb2の付勢力により、大径第2ピストン41P2はx軸負方向側に最大変位しており、その(嵌合凹部417の外周側部位の)x軸負方向端面はピストンストッパ部408に当接している。同様に、戻しばね43Pb1の付勢力により、小径第2ピストン41Pb1はx軸負方向側に最大変位しており、その(フランジ部419の)x軸負方向端面はピストンストッパ部408に当接している。戻しばね43Pa,43Sの付勢力により、ロッド3はx軸負方向側に最大変位しており、フランジ部31の当接面311はロッドストッパ部409に当接している。この状態で、押し出し面310とピストンストッパ部408(言換えると小径第2ピストン41Pb1のx軸負方向端面)との間には、所定のx軸方向距離SR1*が設けられている。また、小径第2ピストン41Pb1の当接面418と大径第2ピストン41Pb2の押し出し面419aとの間には、所定のx軸方向距離SR0*が設けられている。この初期状態で、小径第2ピストン41Pb1の外周面における連通孔410Pb1の開口部は、第1ピストンシール421Pb1と第2ピストンシール422Pb1との間のx軸正方向側に位置する。第1ピストン41Paの外周面における連通孔410Paの開口部は、第1ピストンシール421Paと第2ピストンシール422Paとの間のx軸正方向側に位置する。他の構成は実施例1と同様であるため、共通する構成に同一の符号を付して説明を省略する。
次に、作用を説明する。SR1*に対応するペダルストロークSPをSP1*とし、SR1*とSR0*との合計であるSR2*に対応するSPをSP2*とする。図14に示す初期状態で、プライマリ液圧室44Pは連通孔410Pa,410Pb21,410Pb2を介して補給ポート401P(リザーバタンク5)と連通しており、プライマリ液圧室44Pに液圧(マスタシリンダ圧)が発生していない。
図15はブレーキペダルBPが踏み込まれ、ペダルストロークSPがSP1*未満の範囲である状態を示す。第1ピストン41Paのみストロークしている。x軸正方向側から見た第1ピストン41Paの面積と第1ピストン41Paのストロークとの積に略相当する分だけプライマリ液圧室44Pの容積が縮小する。第1ピストン41Paの外周面における連通孔410Paの開口部が第2ピストンシール422Pa(リップ部)よりもx軸正方向側へ変位することで、プライマリ液圧室44Pとリザーバタンク5との連通が遮断される。よって、第1ピストン41Paがプライマリ液圧室44Pを加圧し、プライマリ液圧室44Pに液圧(マスタシリンダ圧)が発生する。上記容積縮小分に略相当するブレーキ液量がプライマリ液圧室44Pから吐出ポート402Pを介してホイルシリンダW/Cへ向けて供給される。
図16はブレーキペダルBPが踏み込まれ、ペダルストロークSPがSP1*以上かつSP2*未満の範囲である状態を示す。ロッド3が初期位置からSR1*以上ストロークすると、ロッド3のフランジ部31(押し出し面310)が小径第2ピストン41Pb1に当接し、戻しばね43Pb1を圧縮しつつ、小径第2ピストン41Pb1をx軸正方向側へ押し出す。第1ピストン41Paと小径第2ピストン41Pb1は互いに係合し、一体となってストロークする。これにより、プライマリピストン41Pが小径から中径になり、受圧面積が増加する。x軸正方向側から見た第1ピストン41Paの面積と小径第2ピストン41Pb1の面積との和と、これらのピストン41Pa,41Pb1のストロークとの積に略相当する分だけ、プライマリ液圧室44Pの容積が縮小する。これらのピストン41Pa,41Pb1がプライマリ液圧室44Pを加圧し、プライマリ液圧室44Pに液圧(マスタシリンダ圧)が発生する。上記容積縮小分に略相当するブレーキ液量がプライマリ液圧室44PからホイルシリンダW/Cへ向けて供給される。プライマリピストン41Pが中径になり、受圧面積が増加する分だけ、プライマリ液圧室44PからホイルシリンダW/Cへ向けて供給されるブレーキ液量が増加する。これらのピストン41Pa,41Pb1には、プライマリ液圧室44Pの液圧による反力と、戻しばね43Pa,43Pb1の付勢力による反力とが作用し、これらの反力がロッド3及び倍力装置2を介してブレーキペダルBPに作用する。
図17はブレーキペダルBPが踏み込まれ、ペダルストロークSPがSP2*以上の範囲である状態を示す。ロッド3が初期位置からSR2*以上ストロークすると、ロッド3のフランジ部31に押し出される小径第2ピストン41Pb1のフランジ部419(押し出し面419a)が大径第2ピストン41Pb2の当接面418に当接するようになる。フランジ部419(押し出し面419a)は、戻しばね43Pb2を圧縮しつつ、大径第2ピストン41Pb2をx軸正方向側へ押し出す。第1ピストン41Paと第2ピストン41Pb1,41Pb2とは互いに係合し、一体となってストロークする。これにより、プライマリピストン41Pが中径から大径になり、受圧面積がさらに増加する。x軸正方向側から見た第1ピストン41Paの面積と第2ピストン41Pb1,41Pb2の面積との和と、これらのピストン41Pa,41Pb1,41Pb2のストロークとの積に略相当する分だけ、プライマリ液圧室44Pの容積が縮小する。これらのピストン41Pa,41Pb1,41Pb2がプライマリ液圧室44Pを加圧し、プライマリ液圧室44Pに液圧(マスタシリンダ圧)が発生する。上記容積縮小分に略相当するブレーキ液量がプライマリ液圧室44PからホイルシリンダW/Cへ向けて供給される。プライマリピストン41Pが大径になり、受圧面積が増加する分だけ、プライマリ液圧室44PからホイルシリンダW/Cへ向けて供給されるブレーキ液量がさらに増加する。これらのピストン41Pa,41Pb1,41Pb2には、プライマリ液圧室44Pの液圧による反力と、戻しばね43Pa,43Pb1,43Pb2の付勢力による反力とが作用し、これらの反力がロッド3及び倍力装置2を介してブレーキペダルBPに作用する。
以上のように、ロッド3のストロークに応じて、複数の第2ピストン41Pb1,41Pb2が段階的に(重層的に)係合し、プライマリピストン41Pの受圧面積が段階的に変化(増加)する。これにより、S-F-G特性の急変動が抑制される。例えば、図6のF-S特性や図7のF-P特性におけるFP*を境界とする段差が2つになると共に、それぞれの段差における変動幅が小さくなるため、全体として滑らかな変化を示す特性となる。よって、実施例2と同様、SPやPに対するFPの変化を滑らかにし、ペダルフィーリングを向上できる。なお、第2ピストン41Pbは複数あればよく、2個に限られない。その他、実施例1と同様の構成により実施例1と同様の作用効果を得る。
[他の実施例]
以上、本発明を実現するための形態を、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、ブレーキペダルBPや倍力装置2の具体的な構成は本実施例のものに限られない。例えば、本実施例では、リンク機構20が、第1,第2リンク21,22を備えた例を示したが、具体的な構成はこれに限られるものではない。