JP6197509B2 - リヤサイドメンバ - Google Patents
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自動車の衝突には、前面衝突(前突),側面衝突及び後面衝突(後突)があるが、特許文献1及び2には、車体前部に設けられるフロントサイドメンバが、前突時にその前端部を変形させることによって衝撃エネルギを吸収するようにした技術が開示されている。
特許文献2に記載されているフロントサイドメンバは、特許文献1のものと同様な閉断面形状に形成され、一方の縦壁部の前端近傍に、複数のビードが前後方向に所定のピッチで設けられ、これに対して半ピッチずれるように他方の縦壁部にも複数のビードが設けられたものである。このフロントサイドメンバは、前突時に両縦壁部のビードをそれぞれ谷として部材前端部を蛇腹状に変形させることによって衝撃エネルギを吸収するとされている。
しかしながら、上記特許文献1及び2の技術を用いても、後突時にリヤサイドメンバの後端部のみが変形することによって衝撃エネルギを完全に吸収することは困難である。つまり、実際の後突時には、リヤサイドメンバの後端部だけでなく、リヤサイドメンバ全体が変形することによって衝撃エネルギが吸収される。
リヤサイドメンバ10の部材前部を形成するリヤサイドメンバフロント10Fは、その前端部10fから後方に向けて車長方向に対して上方且つ車体中心側に湾曲して傾斜した湾曲部10cを備えている。また、リヤサイドメンバフロント10Fの後方に接続され部材後部を形成するリヤサイドメンバリヤ10Rは、車長方向に沿って略水平に且つ互いに平行に延びている。
これには通常、図6(a)に二点鎖線で示すように、車幅方向に延びるリヤフロアクロスメンバ61を一対のリヤサイドメンバ10,10の後部の相互間に追加したり、リヤサイドメンバ10,10自体に補強部材を追加したりして剛性を高めることも有効であるが、このように新たな部材を追加すれば、重量増及びコスト増を招いてしまうとともにレイアウト上の制限が増えて荷室空間を縮小しなければならなくなる。
(3)前記第1の縦壁部に設けられる前記複数のビードは、給油パイプよりも後方に配置されていることが好ましい。
また、本発明のリヤサイドメンバによれば、クロスメンバ等の補強部材を用いなくても部材前端部の変形を抑制することができるので、重量増及びコスト増を抑制することができる。
[1−1.車体後部の構造]
まず、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10が備えられた自動車の車体5の後部構造について、図6(a)及び図6(b)を流用して説明する。図6(a)の下面図に示すように、車体5は強度を向上させるためのフレーム部材として、前後方向に延在する一対のリヤサイドメンバ10,10と、左右方向(車幅方向)に延在するリヤシートクロスメンバ6S及びリヤフロアクロスメンバ6Fとを有している。これらのフレーム部材は、鋼板をプレス加工することによって形成され、互いに重なり合う箇所においてスポット溶接等により接合されている。
なお、フロアサイドメンバ及びフロアサイドシル7の前方にはフロントサイドメンバ(図示略)が接続されており、これらのフロントサイドメンバ,フロアサイドメンバ,フロアサイドシル7及びリヤサイドメンバ10が前後方向に並んで接続されることによって、左右一方のフレーム部材が車体前端部から車体後端部まで延設されている。
このように構成された車体5の後部のリヤサイドメンバ10,リヤシートクロスメンバ6S及びリヤフロアクロスメンバ6Fの上方には、車体5の底面を形成するリヤフロアパネル8が略水平に配設されている。リヤフロアパネル8は、他部材と対応するように、あるいは剛性確保のために、表面に適宜凹凸がプレス成形された鋼板である。リヤフロアパネル8は、後輪(図示略)を収容する空間であるホイールハウス51,51を確保すべく、左右側縁の一部が何れも外側に向かって凹状の輪郭をなす形状に形成されている。
フロアサイドシル7は、左右一対のフロアサイドメンバの外側にそれぞれ設けられ、前輪のホイールハウス(図示略)から後輪のホイールハウス51までの間において、前後方向に延在している。図6(b)に示すように、フロアサイドシル7の後端部は、側面視で、リヤサイドメンバ10の後述するリヤサイドメンバフロント10Fの外側に位置している。
次に、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10の基本的な構造について説明する。なお、一対のリヤサイドメンバ10,10は互いに左右対称な構造であるため、ここでは車体左側に備えられるリヤサイドメンバ10について図2の斜視図を参照して説明し、車体右側に備えられるリヤサイドメンバ10については説明を省略する。また、以下の説明における前後方向,左右方向,上下方向,並びに,内側及び外側は、リヤサイドメンバ10が車体5に配設された状態におけるものにそれぞれ対応している。
なお、本発明のリヤサイドメンバは、このように二部材からなるものに限定されるものでなく、例えば、一つの部材から構成されているものであってもよいし、三つ以上の部材から構成されているものであってもよい。
リヤサイドメンバ10は、一対のフランジ部12,22を上方にして配設され、これら一対のフランジ部12,22がリヤフロアパネル8の下面とスポット溶接により接合されることで、車体5に組み付けられる。さらに、リヤサイドメンバ10の接合部13,23,33は、図6(a)に示すリヤエンドパネル9の前面とスポット溶接により接合される。なお、各部材間の結合方法は、上述したような締結及び溶接に限られない。
次に、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10の特徴的な構造について説明する。
図1は、図2に示すリヤサイドメンバ10の後部を拡大した模式的な上面図である。図1に示すように、ここではリヤサイドメンバ10の縦壁部1,2とこれに連続するフランジ部12,22との角部に、複数のビードBがそれぞれ並設されている。このうち、内側壁部1には、リヤサイドメンバ10の後端より所定距離L1だけ前方の内ビード開始点(第1の縦壁部のビード開始点)S1から、前方へ所定ピッチPで三つのビードB(後方からそれぞれ第1内ビードB11,第2内ビードB12,第3内ビードB13とする。)が並設されている。これらのビードB11,B12,B13は、何れも、給油パイプ41(図6(a)参照)よりも後方に配置されている。
内ビード開始点S1は、外ビード開始点S2よりも前方に配置されている。具体的には、内ビード開始点S1と外ビード開始点S2とは、リヤサイドメンバ10の後端からのそれぞれの所定距離L1,L2が、ビードBの所定ピッチPを用いて、以下の式に表す関係を満たすように設定されている。
L2=2P (2)
これにより、内ビード開始点S1(すなわち、第1内ビードB11の中心)は、外ビード開始点S2(すなわち、第1外ビードB21の中心)よりも所定ピッチPの2分の1だけ前方に配置されている。したがって、内側壁部1のビードB11,B12,B13とこれに対応する外側壁部のビードB21,B22,B23とは、それぞれ所定ピッチPの2分の1だけずれて配設されている。
なお、図5(a)では外側壁部2を省略しているが、外側壁部2には、上述した内側壁部1のビードB11,B12,B13に対して左右(内外)対称の形状を有するビードB21,B22,B23が並設されている。また、ビードBの大きさは、所定ピッチPに比べて十分小さく設定されている。
次に、上述した構成を備えるリヤサイドメンバ10の後突時の作用について説明する。ここでは、左側にオフセットした後突を想定している。
図3は、車体5の左側後面が衝突した場合に、図2に示すリヤサイドメンバ10の後端部10rが衝撃力を受けて変形する過程を(a)〜(e)の順に模式的に示した上面図である。左側にオフセットした後突の場合、後突による衝撃力は車体左側に設けられるリヤサイドメンバ10に集中する。
図3(a)に示すように、変形前のリヤサイドメンバ10は、後端縁が車幅方向に略平行な直線をなしており、中心線が前後方向に略平行である。後突時、リヤサイドメンバ10の後端、すなわち縦壁部1,2の後端には、まず、前方向の略均等な衝撃力F1,F2がそれぞれ入力される。換言すると、この時点で内側壁部1に入力される衝撃力F1と外側壁部2に入力される衝撃力F2とは、同程度の大きさである。
この際、外所定距離L2が内所定距離L1よりも小さく設定されていることから、外側壁部2の外ビード開始点S2の後方部分は、内側壁部1の内ビード開始点S1の後方部分に比べて曲率が大きくなる。したがって、外側壁部2には内側壁部1に比べて大きな反力が生じる。言い換えると、図3(b)に示すように縦壁部1,2の後端縁が前方向に同じ距離だけ変位した場合、外側壁部2に作用する衝撃力F2´は、内側壁部1に作用する衝撃力F1´よりも大きくなる。
次に、図3(d)に示すように、縦壁部1,2の後端縁がさらに前方向に変位すると、内側壁部1においても内ビード開始点S1の前方部分、すなわち第1内ビードB11と第2内ビードB12との間の第1内ビード前方部112が変形し始める。この時点で、これに対応する外側壁部2の第1外ビード前方部212では変形がより進行しており、第1内ビード前方部112に比べて曲率の大きい曲げが生じている。また、外側壁部2では、第2外ビードB22と第3外ビードB23との間の第2外ビード前方部223においても曲げ変形が生じ始める。
つまり、リヤサイドメンバ10は、相対的に強度の低いビードBの形成されていない部分がそれぞれ座屈によって蛇腹状に曲げ変形するとともに、後端部10r全体が内側に凸となる折れを生じる。
(1)本実施形態に係るリヤサイドメンバ10では、上述したように、後突時、外側壁部2に生じる反力が内側壁部1に生じる反力よりも大きくなるため、外側壁部2には内側壁部1に作用する衝撃力F1´比べて大きな衝撃力F2´が作用する。これによって、後端部10rでは外側壁部2が内側壁部1に比べて大きく圧縮変形しようとするため、外側壁部2が内側壁部1に比べて大きく圧縮するように後端部10r全体が内側に凸となる折れを生じる。したがって、リヤサイドメンバ10は、後端部10rが座屈によって蛇腹状に曲げ変形することと内側に凸となる折れ生じることとによって、後突時の衝撃エネルギを吸収することができる。
また、本実施形態に係るリヤサイドメンバ10によれば、図6(a)に示すようなリヤフロアクロスメンバ61等の補強部材を追加しなくても、前端部10fの変形を抑制することができる。このため、リヤフロアクロスメンバ61等の補強部材を追加することで生じる重量増及びコスト増を抑制することができる。
以上に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以上の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以上の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
また、内側壁部1のビードBとこれに対応する外側壁部2のビードBとを結んだ線αは、上記のように幅方向に対して0度よりも大きく45度以下の角度で傾斜していることが好ましく、20度以上40度以下の角度で傾斜していることがより好ましいが、これらの範囲外の角度で傾斜していても、一定の効果が得られるものと考えられる。
また、上記実施形態では、左側にオフセットした後突時におけるリヤサイドメンバ10の変形を示したが、右側にオフセットした後突時においては、車体右側に備えられるリヤサイドメンバ10について上記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。さらに、オフセットのない後突時等、一対のリヤサイドメンバ10,10の何れに対しても衝撃力が入力される場合には、一対のリヤサイドメンバ10,10の何れについても上記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
また、図3及び図4に示すリヤサイドメンバ10の変形は一例であって、リヤサイドメンバ10の具体的な変形形態は、後突時の衝撃力の大きさやビードBの形状,配置等によって異なる。
2 外側壁部(第2の縦壁部)
3 底壁部
4 燃料タンク
5 車体
6F リヤフロアクロスメンバ
6S リヤシートクロスメンバ
7 サイドシル
8 リヤフロアパネル
9 リヤエンドパネル
10 リヤサイドメンバ
10c 湾曲部
10F リヤサイドメンバフロント
10f 前端部
10R リヤサイドメンバリヤ
10r 後端部
12 内フランジ部
22 外フランジ部
41 給油パイプ
51 ホイールハウス
61 リヤフロアクロスメンバ
B(B11〜B23),B´,B´´ ビード
F1,F2,F1´,F2´ 衝撃力
L1 内所定距離(所定距離)
L2 外所定距離(所定距離)
P 所定ピッチ
S1 内ビード開始点(ビード開始点)
S2 外ビード開始点(ビード開始点)
Claims (4)
- 底壁部と、対をなす第1及び第2の縦壁部と、一対のフランジ部とを有し、前記両フランジ部を上方に、前記第1の縦壁部を車体中心側に、前記第2の縦壁部を車体外側にして車体後部に配設されるハット型断面形状のリヤサイドメンバであって、
前記第1及び第2の縦壁部には、部材後端から所定距離だけ前方のビード開始点から前方へ所定ピッチで複数のビードがそれぞれ並設され、
前記第1の縦壁部のビード開始点は、前記第2の縦壁部のビード開始点よりも前方に配置され、
前記第1の縦壁部の前記ビードとこれに対応する前記第2の縦壁部の前記ビードとは、前記所定ピッチの2分の1だけずれている
ことを特徴とする、リヤサイドメンバ。 - 底壁部と、対をなす第1及び第2の縦壁部と、一対のフランジ部とを有し、前記両フランジ部を上方に、前記第1の縦壁部を車体中心側に、前記第2の縦壁部を車体外側にして車体後部に配設されるハット型断面形状のリヤサイドメンバであって、
前記第1及び第2の縦壁部には、部材後端から所定距離だけ前方のビード開始点から前方へ所定ピッチで複数のビードがそれぞれ並設され、
前記第1の縦壁部のビード開始点は、前記第2の縦壁部のビード開始点よりも前方に配置され、
前記底壁部の正面視で、前記第1の縦壁部の前記ビードとこれに対応する前記第2の縦壁部の前記ビードとを結んだ線は、幅方向に対して0度よりも大きく45度以下の角度で傾斜している
ことを特徴とする、リヤサイドメンバ。 - 前記第1の縦壁部に設けられる前記複数のビードは、給油パイプよりも後方に配置されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のリヤサイドメンバ。 - 前記ビードは、少なくとも前記第1又は第2の縦壁部とこれに連続する前記フランジ部との角部、若しくは前記第1又は第2の縦壁部と前記底壁部との角部に形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のリヤサイドメンバ。
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