JP6195693B2 - 軟磁性合金、軟磁性合金磁心およびその製造方法 - Google Patents

軟磁性合金、軟磁性合金磁心およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、軟磁性合金を用いた軟磁性合金磁心およびその製造方法に関する。
近年の電気機器や電子機器の小型、軽量、高速化への対応はめざましく、それに伴い電気機器や電子機器に用いられる磁性材料には、より高い飽和磁束密度と、より高い透磁率が求められている。そこで、高飽和磁束密度および高透磁率を有する軟磁性合金を得るために、多様な技術が知られている。
例えば、特許文献1には、非晶質構造を有する軟磁性合金に対して熱処理を施し、非晶質中に微細な結晶を析出させる方法が開示されている。しかし、この微細結晶が析出する際には発熱が伴い、磁心が大きい場合にはより顕著な発熱がみられ、磁心の軟磁気特性を低下させてしまうという問題がある。そこで、特許文献2には、この発熱を抑制するため、炉外から炉内に雰囲気を導入する方法や炉内の雰囲気を攪拌させる方法で、結晶化熱処理炉内の雰囲気を強制的に移動させ、磁心表面温度の過度な上昇を防ぐ方法が開示されている。
特開2002−356749号公報 特開平7−320920号公報
従来技術により、軟磁性合金からなる薄帯を用いてトランスやインダクタ、モータ等に用いる磁心を形成する場合には、軟磁性合金からなる薄帯を環状に巻き込んで作製する方法や、積層して作製する方法、軟磁性合金粉末を所望の形状に成形して作製する方法等が一般的になされている。微細結晶析出に伴う発熱を抑制するために熱処理炉内の雰囲気を強制的に移動させる従来の方法では、既存の炉内に新たな設備を設ける必要がある事に加え、炉内に導入する雰囲気の使用量が増すことによりコストが大幅に増加し、製品価格を上昇させてしまうという課題があった。
そこで本発明は、寸法が大きい場合でも、コストを増加させることなく高飽和磁束密度と高透磁率を兼ね備えた、良好な軟磁気特性が得られる軟磁性合金、軟磁性合金磁心およびその製造方法の提供を目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、それぞれ異なる結晶化開始温度を有する複数の金属薄帯を厚み方向に積み重ねて軟磁性合金を構成したものである。
ここで、結晶化開始温度について説明する。本発明の軟磁性合金は主相として非結晶相を有しており、本発明の軟磁性合金をArガスのような不活性雰囲気中で昇温すると、微細結晶が析出する相変化が複数回発生する。最初に結晶化を開始した温度を第一結晶化開始温度とし、2回目に結晶化を開始した温度を第二結晶化開始温度とする。単に結晶化開始温度といった場合、第一結晶化開始温度を意味する。なお、結晶化開始温度は、例えば、示差走査熱量分析(DSC)装置を用い、40℃/分程度の昇温速度で熱分析を行うことで評価することが可能である。
すなわち、本発明によれば、組成式がFeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20である軟磁性合金であって、それぞれ異なる結晶化開始温度を有する複数の金属薄帯を厚み方向に積み重ねてなり、前記複数の金属薄帯のすべてが、平均粒径50nm以下の結晶粒を含むことを特徴とする軟磁性合金が得られる。
また、本発明の軟磁性合金は、前記Feの3at%以下を、Ti、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Au、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、N、O、白金族元素、及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換してなることが好ましい。
また、本発明によれば、前記複数の金属薄帯の結晶化開始温度が、5℃以上異なることを特徴とする上記の軟磁性合金が得られる。
また、本発明によれば、上記の軟磁性合金によりなることを特徴とする軟磁性合金磁心が得られる。
また、本発明によれば、組成式がFeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20である軟磁性合金のそれぞれ異なる結晶化開始温度を有する複数の金属薄帯を、液体急冷法により作製し、前記複数の金属薄帯を厚み方向に積み重ねて、熱処理することにより、前記複数の金属薄帯に微細結晶を析出させることを特徴とする軟磁性合金の製造方法が得られる。
また、本発明によれば、前記Feの3at%以下を、Ti、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Au、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、N、O、白金族元素、及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換してなる前記軟磁性合金の前記複数の金属薄帯を厚み方向に積み重ねて、熱処理することを特徴とする上記の軟磁性合金の製造方法が得られる。
また、本発明によれば、前記複数の金属薄帯の合計重量を5g以上で製造することを特徴とする上記の軟磁性合金の製造方法が得られる。
結晶化開始温度の異なる金属薄帯の数、積層数、金属薄帯を重ねる順番について制限はなく、また、金属薄帯間に絶縁処理を施しても良い。
本発明のように、結晶化開始温度の異なる非晶質金属薄帯を、積層または重ねて巻き回した軟磁性合金に、微細結晶が析出する熱処理を施すことにより、軟磁性体合金全体での結晶が析出する温度を分散することが可能となり、結晶析出時の発熱による急激な温度上昇を抑制し、良好な軟磁気特性を得る事ができる。
従って、軟磁性合金の寸法が大きい場合でも、従来の設備で対応できるのでコストを増加させることなく、高飽和磁束密度および高透磁率を兼ね備えた、良好な軟磁気特性が得られる。
結晶化開始温度の異なる、第一の金属薄帯と第二の金属薄帯からなる軟磁性合金を用いた磁心を示す概略図。 発熱を抑制する方法として放熱用金属管を用いた磁心を示す概略図。 発熱を抑制する方法として放熱用金属棒を用いた磁心を示す概略図。 発熱を抑制する方法として放熱用金属板を用いた磁心を示す概略図。
以下、本発明の実施の形態について、軟磁性合金よりなる磁心を用いて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、結晶化開始温度の異なる、第一の金属薄帯と第二の金属薄帯からなる軟磁性合金を用いた磁心を示す概略図である。図1に示すように、軟磁性合金を用いた磁心3は、組成により結晶化開始温度がそれぞれ異なる第一の金属薄帯1および第二の金属薄帯2を重ねて巻き回して、熱処理を行い作製する。なお、金属薄帯の重量比率、結晶化開始温度の異なる薄帯の数、薄帯を重ねる順番について制限はなく、金属薄帯間に絶縁処理を施しても良い。金属薄帯の組成を変えることにより、結晶化開始温度を変えることができる。
また、軟磁性合金の微細結晶析出のための熱処理時に、第一の金属薄帯1の結晶化開始温度と、第二の金属薄帯2の結晶化開始温度において、結晶化開始温度の温度差が小さいと微細結晶析出に伴う発熱の影響が大きくなり結晶粒径の制御が困難となるため、軟磁気特性が劣化する。そこで、本発明の軟磁性合金について、第一の金属薄帯1の結晶化開始温度と、第二の金属薄帯2の結晶化開始温度が、5℃以上の温度差がある金属薄帯により構成すれば、熱処理時の不要な発熱を抑制し、結晶粒径を制御することにより、良好な軟磁気特性を得ることができる。
本実施の形態による軟磁性合金を毎分10℃以上、特に、毎分100℃以上の昇温速度で且つ(結晶化開始温度−50℃)以上の温度で熱処理をすると、良好な軟磁気特性を有する磁心を得ることができる。
軟磁性合金を用いた金属薄帯は、微細結晶析出のための熱処理時に、微細結晶析出に伴う発熱が過大になると結晶粒が成長し過ぎて軟磁気特性が劣化する。特に、金属薄帯により磁心を作成した場合に、磁心3の重量が5g以上となると熱処理時の発熱が過大になり易く、良好な軟磁気特性を得ることが難しくなるので、磁心3の重量が5g以上の場合には、結晶化開始温度の異なる金属薄帯を積層、または重ねて巻き回して、熱処理時の結晶析出に伴う発熱を抑制するのが好ましい。
さらに、本発明の軟磁性合金について微細結晶析出の熱処理を施す際、磁心3を構成する金属薄帯のすべてにおいて、結晶粒の平均粒径を50nm以下とすることが好ましく、軟磁性合金の組成や薄帯の寸法、組合せ等に応じて、適宜熱処理条件を選定すれば良い。
本発明において優れた軟磁気特性を得るためには、熱処理後の析出結晶における平均粒径が50nm以下であることが好ましく、さらに、25nm以下であればより良好な軟磁気特性を得られる。
本発明の軟磁性合金の組成は、組成式がFeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20で構成される金属薄帯とすることで、結晶化開始温度を制御して良好な軟磁気特性を得ることができる。
上記軟磁性合金において、Feは主元素であり、磁性を担う必須元素である。飽和磁束密度の向上及び原料価格の低減のため、Feの割合が多いことが基本的には好ましい。Feの割合が79at%より少ないと、均質な微細結晶組織を得ることができず、また、望ましい飽和磁束密度が得られない。Feの割合が86at%より多いと、液体急冷凝固装置による液体急冷条件下での非晶質相の形成が困難になり、結晶粒径のばらつきや粗大化が生じてしまうため、軟磁気特性が劣化する。従って、Feの割合は、79at%以上、86at%以下であるのが望ましい。また、上記軟磁性合金を用いた磁心の小型化のため、さらに高い飽和磁束密度が必要とされる場合、Feの割合が82at%以上であることが好ましい。
また、上記軟磁性合金において、Bは非晶質相形成を担う必須元素である。Bの割合が5at%より少ないと、液体急冷凝固装置による液体急冷条件下での非晶質相の形成が困難になる。Bの割合が13at%より多いと、均質な微細結晶組織を得ることができず、軟磁性合金の軟磁気特性が劣化する。従って、Bの割合は、5at%以上、13at%以下であることが望ましい。特に量産化のため軟磁性合金が低い融点を有する必要がある場合、Bの割合が10at%以下であることが好ましい。
また、上記軟磁性合金において、Siは非晶質相形成を担う元素であり、必ずしも含まれなくても良いが、微細結晶化にあたっては微細結晶の安定化に寄与する。Siの割合が8at%よりも多いと、飽和磁束密度と非晶質相形成能が低下し、更に軟磁気特性が劣化する。従って、Siの割合は、8at%以下であることが望ましい。特にSiの割合が5at%以下であると融点が低下し連続薄帯を安定して作製できる。また、Siの割合が1at%以上であると、ΔTが増加するため、均質な微細結晶を得る事ができる。
また、上記軟磁性合金において、Pは非晶質相形成を担う必須元素である。Pの割合が1at%より少ないと、液体急冷凝固装置による液体急冷条件下での非晶質相の形成が困難になる。Pの割合が10at%より多いと、飽和磁束密度が低下し軟磁気特性が劣化する。従って、Pの割合は、1at%以上、10at%以下であることが望ましい。特にPの割合が2at%以上、5at%以下であると、非晶質相形成能が向上し、連続薄帯を安定して作製することができる事に加え、飽和磁束密度も向上する。本実施の形態においては、B、Si及びPの組み合わせを用いることで、いずれか一つしか用いない場合と比較して、非晶質相形成能や微細結晶の安定性を高めることができる。
また、上記軟磁性合金において、Cは非晶質形成を担う元素であり、必ずしも含まれなくても良い。Cは安価であるため、Cの添加により他の半金属量が低減され、総材料コストが低減される。但し、Cの割合が5at%を超えると、軟磁性合金が脆化し、軟磁気特性の劣化が生じるという問題がある。従って、Cの割合は、5at%以下が望ましい。特にCの割合が3at%以下であると、溶解時におけるCの蒸発に起因した組成のばらつきを抑えることができる。また、本実施の形態においては、B、Si、P、Cの組み合わせを用いることで、いずれか一つしか用いない場合と比較して、非晶質相形成能や微細結晶の安定性を高めることができる。
また、上記軟磁性合金において、Cuは微細結晶化に寄与する必須元素である。さらに、Cuは基本的に高価であり、Feの割合が81at%以上である場合には、軟磁性合金の脆化や酸化を生じさせやすい。なお、Cuの割合が0.4at%より少ないと、微細結晶化が困難になる。Cuの割合が1.4at%より多いと、非晶質相からなる前駆体が不均質になり、そのため微細結晶合金の形成の際に均質な微細結晶組織が得られず、軟磁気特性が劣化する。従って、Cuの割合は、0.4at%以上、1.4at%以下であることが望ましい。ここで、Si、B及びPとCuとの組み合わせ又はSi、B、P及びCとCuとの組み合わせが微細結晶化に寄与する。
また、上記軟磁性合金において、PとCuとの間には、強い原子間引力がある。従って、軟磁性合金が特定の比率のPとCuとを含んでいると、10nm以下のサイズのクラスターが形成され、この微細なクラスターによって微細結晶合金の形成の際にbccFe結晶は微細構造を有するようになる。より具体的には、本実施の形態による微細結晶合金は平均粒径が50nm以下であるbccFe結晶を含んでいる。本実施の形態において、Pの割合(x)とCuの割合(z)との特定の比率(z/x)は、0.06以上、1.20以下である。この範囲以外では、均質な微細結晶組織が得られず、従って軟磁性合金は優れた軟磁気特性を示さない。なお、特定の比率(z/x)は、軟磁性合金の脆化及び酸化を考慮すると、0.06以上0.55以下であることが好ましい。
さらに、前記軟磁性合金が、Feの3at%以下を、Ti、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Au、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、N、O、白金族元素、及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換してなる軟磁性合金からなる金属薄帯で構成することにより良好な軟磁気特性が得られる。
上記元素は、基本的に不純物元素であり、製造過程において金属薄帯に含有される可能性がある。不純物元素を多く含有した場合には、軟磁気特性が劣化すると考えられるが、Fe置換が3at%以下であれば、良好な軟磁気特性を維持できる。
また、図1では軟磁性合金を用いた巻磁心について説明しているが、結晶化開始温度が異なる金属薄帯を積層させた積層磁心への適用も同様に可能である。
なお、微細結晶析出に伴う発熱を抑制する方法について、以下の実施の形態で詳細に説明する。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態として、第1の実施の形態を用いて説明する。第1の実施の形態での第二の金属薄帯2に放熱用として結晶質の放熱用金属箔を用い、軟磁性非晶質からなる第一の金属薄帯1と放熱用金属箔を重ねて環状に巻き回して磁心3を作製し、熱処理を行う。微細結晶析出に伴う発熱は、第一の金属薄帯1間の放熱用金属箔に放熱され、磁心3の温度上昇を抑えることができる。温度上昇を抑えることで、化合物の析出を抑制し、優れた磁気特性が得られる。
また、微細結晶析出に伴う発熱は、積層の中心部である第一の金属薄帯を積層した厚みの中間部分に、最も集中しやすい。この積層の中心部に放熱用金属箔があれば良いため、放熱用金属箔の長さは第一の金属薄帯1の長さより短くても良い。つまり、第一の金属薄帯間の全体、若しくは、発熱が最も集中する箇所の一部に放熱用金属箔があればよく、環状に巻き回して磁心を作製する際に、積層の中心部に放熱用金属箔がくるように重ねて巻き回せば良い。
(第3の実施の形態)
図2は発熱を抑制する方法として放熱用金属管を用いた磁心を示す概略図である。図2に示すように、放熱用として結晶質の放熱用金属管4を用い、放熱用金属管4の内側に第一の金属薄帯5を巻き回し、放熱用金属管4の外側に第二の金属薄帯6を巻き回して磁心7を作製し、熱処理を行う。放熱用金属管4に巻きまわした第一の金属薄帯5の内側から、また第二の金属薄帯6の外側から結晶化が始まる。微細結晶析出に伴う発熱は積層の中心部に向かって伝熱し、放熱用金属管4から放熱されため、磁心7の温度上昇を抑えて化合物の析出を抑制し、優れた磁気特性が得られる。
本実施の形態においては、放熱用金属管4によって磁心7の温度上昇が抑えられるため、第一の金属薄帯5および第二の金属薄帯6の結晶化開始温度は同じであっても、また、組成式が同じであっても構わない。
(第4の実施の形態)
図3は発熱を抑制する方法として放熱用金属棒を用いた磁心を示す概略図である。図3に示すように、放熱用として結晶質の放熱用金属棒8を用い、放熱用金属棒8に金属薄帯9を巻き回して磁心10を作製し、熱処理を行う。金属薄帯9の表面から結晶化が始まり、微細結晶析出に伴う発熱は磁心10の中心部に向かって伝熱し、放熱用金属棒8から放熱されるため、磁心10の温度上昇を抑えて化合物の析出を抑制し、優れた磁気特性が得られる。
(第5の実施の形態)
図4は発熱を抑制する方法として放熱用金属板を用いた磁心を示す概略図である。図4に示すように、金属薄帯12を積層して積層体とし、結晶質の放熱用金属板11と積層体とを交互に積層して磁心13を作製し、熱処理を行う。磁心13の両主面から結晶化が始まり、磁心13の積層の中心に向かって伝熱し、放熱用金属板11から放熱されるため、磁心13の温度上昇を抑えて化合物の析出を抑制し、優れた磁気特性が得られる。
第2乃至5の実施の形態に用いられる放熱用の金属部材は、熱伝導と熱容量が高いものが望ましく、アルミニウムや銅、ニッケル、アルミニウム合金などが望ましい。また、熱伝導率は30W/mK以上であることが望ましい。
また、占積率を上げられるため、熱処理後に放熱用の金属部材を磁心から取り除くことが望ましい。放熱用の金属部材を取り除く場合、取り除く際に磁心にかかった応力を緩和させる為に、結晶化を促進させない温度範囲で再度熱処理を施しても良く、熱処理温度は第2結晶化開始温度以下が望ましい。
また、本実施の形態における軟磁性合金磁心は、薄帯形状や、粉末形状など、様々な形状の軟磁性合金を用いる事ができる。薄帯形状の軟磁性合金は、単ロール製造装置や双ロール製造装置のような従来の装置を使用して形成できる。粉末形状の軟磁性合金は水アトマイズ法やガスアトマイズ法によって作製してもよいし、薄帯の軟磁性合金を粉砕することで作製してもよい。また、薄帯や粉末などの軟磁性合金はアルゴンや窒素などの不活性雰囲気中又は真空中で製造できるが、大気中でも作製できるし、窒素やアルゴン、炭酸ガスなどの不活性、還元ガスをフローさせて製造することもできる。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて説明する。
(実施例1〜6)
本実施例では、結晶化開始温度の異なる金属薄帯として、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯と、組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯と、組成式Fe83.310SiCu0.7で表される金属薄帯を使用した。これらの金属薄帯は上記組成式で表される合金組成になるように秤量し、高周波誘導加熱装置により溶解した後、高温で溶かした合金を冷却したロールの上に噴射し、冷却速度105K/秒以上で高速冷却することにより、非結晶相を有する薄帯を得る単ロール液体急冷法にて作製した。作製した金属薄帯は幅10mm、厚さ約25μmの非晶質構造を有する金属薄帯であった。
また、上記金属薄帯の結晶化開始温度を示差走査熱量分析(DSC)装置を用いて昇温速度毎分40℃の条件で測定したところ、結晶化開始温度(Tx1)は、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯は418℃、組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯は410℃、組成式Fe83.310SiCu0.7で表される金属薄帯は421℃、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯は413℃、組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯は405℃であった。
実施例1〜3においては、結晶化開始温度の異なる2種類の組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯と、組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯を所定の5.0g、10.0g、15.0gと量り取り、磁心の重量が20gになるように組み合わせて、重ねて環状に巻き回して磁心を作製した。実施例4においては、結晶化開始温度の異なる2種類の組成式Fe83.310SiCu0.7で表される金属薄帯と、組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯を、5.0g、15.0gと量り取り、磁心の重量が20gになるように重ねて環状に巻き回して磁心を作製した。実施例5においては、結晶化開始温度の異なる2種類の組成式Fe83.3B7Si4P3C2Cu0.7で表される金属薄帯と、組成式Fe83.310SiCu0.7で表される金属薄帯を、10.0gずつ量り取り、磁心の重量が20gになるように重ねて環状に巻き回して磁心を作製した。実施例6においては、結晶化開始温度の異なる2種類の組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯と、組成式Fe83.310SiCu0.7で表される金属薄帯を、10.0gずつ量り取り、磁心の重量が20gになるように重ねて環状に巻き回して磁心を作製した。
(比較例1〜9)
比較例1〜6においては、1種類の組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯と、1種類の組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯を0.2g、5.0g、20.0gと量り取り、環状に巻き回して磁心を作製した。比較例7〜9においては、1種類の組成式Fe83.310SiCu0.7と、1種類の組成式組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯と、1種類の組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯を、それぞれ20.0g量り取り、環状に巻き回して磁心を作製した。
本実施例および比較例の熱処理は、Arガス中で、昇温速度は300℃/分、熱処理温度はそれぞれの金属薄帯の組成式や磁心形状に合せて、磁心の(結晶化開始温度−50℃)以上の最適熱処理温度である380℃〜425℃の範囲で設定し、保持時間は10分の条件で行った。
上記熱処理後の磁心の初透磁率μは、インピーダンスアナライザ(4294A、Agilent製)にて測定し、800A/mでの磁場中における磁束密度B800は、BHループトレーサ(TRF−5、東英工業製)にて測定した。また、磁心を構成する金属薄帯中における微細析出粒子の平均粒径は、X線回折法により得られた回折ピークから、シェラーの式を用いて算出した。なお、実施例1〜6においては、2つの組成式の金属薄帯を、一緒にして1つの試料として測定した。
表1に本実施例および比較例の磁心について、組成式、重量、結晶化開始温度、結晶化開始温度の温度差、熱処理後の初透磁率μと磁束密度B800、平均粒径の測定結果を示す。
Figure 0006195693
実施例1の組成式Fe83.3SiCu0.7で表される結晶化開始温度が418℃の金属薄帯と、組成式Fe83.3Cu0.7で表される結晶化開始温度が410℃の金属薄帯を10.0gずつ量り取り、重ねて巻き回した磁心では、μが5000以上と高く、B800においても1.70T以上であり、高いμと高いB800を両立できている事が分かる。また、実施例1と同じ金属薄帯の組み合わせで重量比率を変えた実施例2および実施例3でも5000以上のμと1.60T以上のB800を得ている事から、結晶化開始温度の異なる金属薄帯の重量比率を変化させても高いμと高いB800を両立できている。
実施例4の組成式Fe83.3Si10Cu0.7で表される結晶化開始温度が421℃の金属薄帯を5.0gと、組成式Fe83.3Cu0.7で表される結晶化開始温度が410℃の金属薄帯を5.0g、15.0gと量り取り、重ねて巻き回した磁心では、μが5000以上と高く、B800においても1.60T以上であり、高いμと高いB800を両立できている。
実施例5の組成式Fe83.3SiCu0.7で表される結晶化開始温度が413℃の金属薄帯を10.0gと、組成式Fe83.310SiCu0.7で表される結晶化開始温度が421℃の金属薄帯を10.0gと量り取り、重ねて巻き回した磁心では、μが5000以上と高く、B800においても1.60T以上であり、高いμと高いB800を両立できている。
実施例6の組成式Fe83.3Cu0.7で表される結晶化開始温度が405℃の金属薄帯を10.0gと、組成式Fe83.310SiCu0.7で表される結晶化開始温度が421℃の金属薄帯を10.0gと量り取り、重ねて巻き回した磁心では、μが5000以上と高く、B800においても1.60T以上であり、高いμと高いB800を両立できている。
また、実施例2、3と比較例1〜6の結果から、磁心を構成する金属薄帯のなかで最も結晶化開始温度の低い金属薄帯が磁心重量の半分以上を占める場合、よりμが高くなっている。
さらに、実施例1〜6では、微細析出粒子の平均粒径が20.8nm以下であることから、結晶化開始温度の異なる金属薄帯を用いて磁心を構成することにより、良好な軟磁気特性と平均粒径が25nm以下の微細結晶を析出させることが可能である。
実施例1〜3の組み合わせている金属薄帯の結晶化開始温度の差は8℃で、実施例4の組み合わせている金属薄帯の結晶化開始温度の差は11℃、実施例5の組み合わせている金属薄帯の結晶化開始温度の差は8℃、実施例6の組み合わせている金属薄帯の結晶化開始温度の差は16℃となり、8℃以上の温度差がある組成式の組み合せにおいて、良好な磁気特性となっている。結晶化開始温度の異なる金属薄帯を組み合わせることにより、結晶化開始温度の温度差が、5℃以上であると、良好な磁気特性を有する軟磁性合金磁心となることが可能である。
一方、比較例1〜3に示すように、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯のみで作製した磁心では、磁心の重量0.2gの時には7000のμと1.75TのB800を示していたが、磁心の重量5.0g以上ではμが5000以下に低下し、B800は1.7T以下に減少した。比較例4〜6では、組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯のみで作製した磁心におけるμとB800の結果を示しているが、比較例1〜3と同様に磁心の重量が増大するに従い、μとB800が低下していく事が分かる。また、比較例1〜6の平均粒径は磁心の重量の増加と共に増大していることから、磁心の重量が5g以上になったことで微細結晶析出熱の放熱が不十分になり、微細析出粒子の平均粒径が増大し、軟磁気特性を低下させたと考えられる。
比較例7に、組成式Fe83.3Si10Cu0.7で表される金属薄帯のみで作製した磁心におけるμとB800と平均粒径の結果を示しているが、比較例1〜6と同様に磁心重量が増大しているために、μとB800が低下し、平均粒径が他の比較例に比べて大きい事が分かる。
また、比較例8に、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯のみで作製した磁心におけるμとB800と平均粒径の結果を示しているが、比較例1〜6と同様に磁心重量が増大しているために、μとB800が低下し、平均粒径が他の比較例に比べて大きい事が分かる。
さらに、比較例9に、組成式Fe83.3Cu0.7で表される金属薄帯のみで作製した磁心におけるμとB800と平均粒径の結果を示しているが、比較例1〜6と同様に磁心重量が増大しているために、μとB800が低下し、平均粒径が他の比較例に比べて大きい事が分かる。
よって、本発明により、磁心の重量が5g以上となった場合でも、高飽和磁束密度および高透磁率を兼ね備えた、良好な軟磁気特性が、コストを増加させることなく軟磁性合金、軟磁性合金磁心およびその製造方法が得られる。
以下、微細結晶析出に伴う発熱を抑制する方法について、実施例および比較例を用いて説明する。
(実施例7〜9、比較例10、11)
本実施例では、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯と、組成式Fe84.8Cu1.2で表される金属薄帯を使用した。これらの金属薄帯は上記組成式で表される合金組成になるように秤量し、高周波誘導過熱装置により溶解した。その後、溶解した合金組成物を大気中において単ロール液体急冷法にて連続薄帯を作製した。組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯は幅約20mm、厚さ約25μm、組成式Fe84.8Cu1.2で表される金属薄帯は幅約20mm、厚さ約20μmで、それぞれ重量1kgの連続薄帯を作製した。これらの連続薄帯については、X線回折装置により非晶質単相であることを確認した。
実施例7、8は、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される連続薄帯を100gとなるよう量り取り、放熱用金属箔として幅20mm、厚さ14μm、重量5g又は20gのアルミニウム箔と重ねて環状に巻き回して磁心を作製した。その後、425℃にて15分間Ar雰囲気中で熱処理を行った。また、実施例9は、組成式Fe84.8Cu1.2で表される連続薄帯を100gとなるよう量り取り、幅20mm、厚さ14μm、重量5gのアルミニウム箔と重ねて環状に巻き回して磁心を作製した。その後、390℃にて15分間Ar雰囲気中で熱処理を行った。
比較例10は組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯を100gとなるよう量り取り、環状に巻き回して磁心を作製し、実施例7、8と同様の熱処理を行った。また、比較例11は組成式Fe84.8Cu1.2で表される金属薄帯を100gとなるよう量り取り、環状に巻き回して磁心を作製し、実施例9と同様の熱処理を行った。
実施例7〜9、比較例10、11で得られた磁心について、インピーダンスアナライザーを用いて1kHzにおける透磁率μと、直流BHトレーサーを用いて最大磁場10Oeにおける保磁力Hcと、コアロス測定装置を用いて1kHz−1.0TにおけるコアロスPcmとを測定した結果を表2に示した。また、実施例7、8及び比較例10については、積層の中心部である、薄帯とアルミニウム箔とを積層した厚みの中間に熱電対を入れて温度を測定し、熱処理の設定温度との温度差と、平均粒径の測定結果を表2に示した。
Figure 0006195693
表2の結果から、実施例はμがいずれも5000以上と高く、Hcは10A/m以下であり、Pcmにおいても5W/kg以下となっており、比較例に比べて高透磁率、低コアロス、低保持力となり、軟磁気特性が優れていた。
また、実施例7、8および比較例10について、磁心の中心の温度差は比較例が圧倒的に高くなっており、さらにX線回折装置にて結晶相を評価したところ、実施例7、8はα−Feのみ析出していたが、比較例10はFe−B化合物が析出していた。また、シェラーの式より算出した、磁心を構成する金属薄帯中における微細析出粒子の平均粒径は、実施例1が16nm、実施例2が21nmであった。
比較例は微細結晶析出の発熱によって、磁心内部の温度が上昇して化合物が析出し、軟磁気特性が劣化した。一方、実施例は微細結晶析出時の発熱を、積層の中心部に配置した放熱用金属箔で放熱し、磁心の温度上昇を抑制して化合物の析出を抑えたことによって、優れた軟磁気特性を有した軟磁性合金磁心が得られた。
ここで、α−Feが安定して析出する温度領域が狭くなり、微細結晶析出時の発熱や、熱処理炉の温度分布の誤差などにより化合物が析出されるのを抑制するため、軟磁性合金の第一結晶化開始温度と第二結晶化開始温度の差ΔTは80℃以上が望ましい。
磁心を作製した後、実施例7の磁心からアルミニウム箔を取り除き、残った金属薄帯を軽く巻き直して再度400℃で熱処理を行うことで、占積率が向上して磁束密度B10が1.08Tから1.58Tまで上昇した。このように、占積率を上げるために、熱処理後に放熱用の金属部材を取り除くことが望ましい。
(実施例10、比較例12)
本実施例では、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯を使用した。この金属薄帯は実施例7と同様に作製し、X線回折装置により非晶質単相であることを確認した。
実施例10は、内径25mm、外径30mm、高さ50mm銅管の内側に金属薄帯を40g、外側に60gを巻き回して磁心を作製し、実施例7と同様の熱処理を行った。熱処理後、磁心から銅管を取り除き、内側の磁心と外側の磁心とを軽く巻き直して合わせ、1つの磁心を作製した。また、比較例12は金属薄帯を100gとなるよう量り取り、環状に巻き回して磁心を作製し、実施例7と同様の熱処理を行った。実施例10および比較例12で得られた磁心について、実施例7と同様に透磁率μと、保磁力Hcと、コアロスPcmとを測定した結果を表3に示した。
Figure 0006195693
表3の結果から、実施例10はμが5000以上と高く、Hcは10A/m以下であり、Pcmにおいても5W/kg以下となっており、比較例12に比べて軟磁気特性が優れていた。また、X線回折装置にて結晶相を評価したところ、実施例10はα−Feのみ析出していたが、比較例12はFe−B化合物が析出していた。
放熱用として高熱伝導の銅管を積層の中心部に配置することによって、微細結晶析出時の発熱による温度上昇を抑制して化合物の析出を抑制し、優れた軟磁気特性を有した軟磁性合金磁心が得られた。
(実施例11、比較例13)
本実施例では、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯を使用した。この金属薄帯は実施例7と同様に作製し、X線回折装置により非晶質単相であることを確認した。
実施例11は、直径30mm、高さ50mmの銅棒に100gの金属薄帯を巻き回して磁心を作製し、実施例7と同様の熱処理を行った。熱処理後、磁心から銅棒を取り除いた。また、比較例13は金属薄帯を100gとなるよう量り取り、環状に巻き回して磁心を作製し、実施例7と同様の熱処理を行った。実施例11および比較例13で得られた磁心について、実施例7と同様に透磁率μと、保磁力Hcと、コアロスPcmとを測定した結果を表4に示した。
Figure 0006195693
表4の結果から、実施例11はμが5000以上と高く、Hcは10A/m以下であり、Pcmにおいても5W/kg以下となっており、比較例13に比べて軟磁気特性が優れていた。また、X線回折装置にて結晶相を評価したところ、実施例11はα−Feのみ析出していたが、比較例13はFe−B化合物が析出していた。
放熱用として高熱伝導の銅棒を磁心の中心に配置することによって、微細結晶析出時の発熱による温度上昇を抑制して化合物の析出を抑制し、優れた軟磁気特性を有した軟磁性合金磁心が得られた。
(実施例12、比較例14)
本実施例では、組成式Fe83.3SiCu0.7で表される金属薄帯を使用した。この金属薄帯は実施例7と同様に作製し、X線回折装置により非晶質単相であることを確認した。
作製した金属薄帯を長さ60mm毎に切断して10枚積層して積層体とした。実施例12は、その積層体を積層する毎に幅20mm、厚さ0.1mmの銅板を挟み、金属薄帯を60枚積層した磁心を作製した。その後、実施例7と同様の熱処理を行った。熱処理後、磁心から銅板は取り除いた。また、比較例14は60mm毎に切断された金属薄帯を60枚積層して磁心を作製し、実施例7と同様の熱処理を行った。実施例12および比較例14で得られた磁心について、直流BHトレーサーを用いて最大磁場25Oeにおける保磁力Hcを測定した結果を表5に示した。
Figure 0006195693
表5の結果から、実施例12はHcが10A/m以下となっており、比較例14に比べて軟磁気特性が優れていた。また、X線回折装置にて結晶相を評価したところ、実施例12はα−Feのみ析出していたが、比較例14はFe−B化合物が析出していた。
放熱用として高熱伝導の銅板を金属薄帯の積層体間に配置することによって、微細結晶析出時の発熱による温度上昇を抑制して化合物の析出を抑制し、優れた軟磁気特性を有した軟磁性合金磁心が得られる。
以上のことより、微細結晶析出に伴う発熱を抑制する方法として、熱処理時に非晶質薄帯の結晶析出に伴う発熱が最も集中しやすい積層の中心部や、磁心の中心部に、高い熱伝導率と大きな熱容量を有する放熱用の金属部材を配置することで、微細結晶析出に伴う発熱を吸収して磁心の温度上昇を抑制し、化合物の析出を防止できる。また、温度上昇の速い磁心の外側には非晶質薄帯が配置される構成であるため、昇温速度の低下を抑えて結晶粒の粗大化を抑制できる。これらより、高透磁率、低保磁力および低コアロスである、良好な軟磁気特性を有した軟磁性合金磁心の熱処理方法が得られる。
放熱用金属部材の熱容量を多くするために、放熱用金属部材の幅は金属薄帯の幅より広くても良く、また、放熱用金属部材の形状は本実施例に限定されるものではなく、円形に限らず、楕円や矩形であっても良い。また、本実施例ではAr雰囲気中で熱処理を行ったが、窒素などの不活性雰囲気中で行っても、真空中や酸化雰囲気中で行っても良い。また、磁気特性制御をするため、応力下又は磁場中で誘導磁気異方性を付加して熱処理を行っても良い。
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
本発明は、結晶化開始温度の異なる金属薄帯を用いた軟磁性合金磁心を広く電気機器や電子機器に利用することができる。
1、5 第一の金属薄帯
2、6 第二の金属薄帯
3、7、10、13 磁心
4 放熱用金属管
8 放熱用金属棒
9、12 金属薄帯
11 放熱用金属板

Claims (5)

  1. 組成式がFeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20である軟磁性合金であって、それぞれ5℃以上異なる結晶化開始温度を有する複数の金属薄帯を厚み方向に積み重ねてなり、前記複数の金属薄帯のそれぞれは結晶粒を含み、前記結晶粒の平均粒径50nm以下であり、前記複数の金属薄帯の合計重量は20g以上であることを特徴とする軟磁性合金。
  2. 前記Feの3at%以下を、Ti、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Au、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、N、O、白金族元素、及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換してなることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性合金。
  3. 請求項1または請求項2に記載の軟磁性合金によりなることを特徴とする軟磁性合金磁心。
  4. 組成式がFeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20である軟磁性合金のそれぞれ5℃以上異なる結晶化開始温度を有する複数の金属薄帯を、液体急冷法により作製し、前記複数の金属薄帯の合計重量が20g以上となるよう、厚み方向に積み重ねて、熱処理することにより、前記複数の金属薄帯のそれぞれに微細結晶を析出させることを特徴とする軟磁性合金の製造方法。
  5. 前記Feの3at%以下を、Ti、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Au、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、N、O、白金族元素、及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換してなる前記軟磁性合金の前記複数の金属薄帯を厚み方向に積み重ねて、熱処理することを特徴とする請求項に記載の軟磁性合金の製造方法。
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