[第1実施形態]
以下、本発明を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(電子装置の概要)
図1に示す電子装置1は、例えばエンジンECU、或いはその他の車両用ECUなどの車両用電子制御装置として構成されており、図1〜図4に示すような構造体3を図5〜図8のようにケース9の内部に収容した構成をなしている。この電子装置1は、箱状のケース9の内部に1又は複数の基板(図6等の例では1つの回路基板5)が収容されており、この基板に各種電子部品が実装される構成で電子回路が構成されている。具体的には、図6等に示すように、ケース9の内部に回路基板5が収容されており、この回路基板5の一方の端部側には、コネクタ部7が接続されている。そして、このコネクタ部7の少なくとも一部が、ケース9の周壁部に形成された開口部9cを介して当該電子装置1の外部に露出している。なお、図6では、開口部9cの一部(第1ケース9a(上ケース)の前端側においてコネクタ部7を部分的に囲むように形成された湾曲部)を示しており、この第1ケース9a側の湾曲部と、第2ケース9b(下ケース)側の前端部とによってコネクタ部7を前側に延出させるための開口が構成されている。
電子装置1の外殻をなすケース9は、図8のように、第1ケース9aと第2ケース9bとによって構成されている。これら第1ケース9a及び第2ケース9bはいずれも、例えば、アルミダイカストなどの公知の金属材料によって構成されている。本明細書では、ケース9の内部に収容される最も大きい回路基板5(図6)の板面5a,5b(図3等)と直交する方向を上下方向としており、図8等で示す第1ケース9a側を上方、第2ケース9b側を下方としている。また、ケース9に収容される回路基板5において、コネクタ部7側に設けられた端部(基板端部51)が延びる所定方向を左右方向(横方向)とし、上下方向及び左右方向と直交する方向を前後方向としている。なお、図6等に示す例では、基板端部51の直線状部51aが延びる方向が左右方向となっており、基板端部51の左右両側に設けられた端部53,54の各直線状部53a,54aが延びる方向が前後方向となっている。また、図1〜図8等に示す例では、前後方向においてコネクタ部7が延出する側を前側としており、基板端部51とは反対の端部52側を後ろ側としている。
(構造体の構成)
次に、ケース9内に収容される構造体3について説明する。
図1〜図4で示すように、構造体3は、主として、回路基板5とコネクタ部7とによって構成され、電子制御装置として機能している。なお、図1〜図12では、コネクタ部7の各端子21と回路基板5とを接合するはんだを省略して示しているが、実際には、各貫通孔5cと各端子21とがはんだ(図示略)によって接合されている。
回路基板5は、電子装置1を車両用電子制御装置として機能させるための回路基板であり、一般的な積層基板の形成方法によって製造された多層基板として構成されている。図3等で示すように、この回路基板5には、厚さ方向(板厚方向)一方側の第一板面5aと、第一板面5aの裏面側(厚さ方向他方側)の第二板面5bとが構成されており、例えば第一板面5a上に、例えばマイコンやICなどの図示しない部品が多数実装されている。回路基板5の基板内は、導体層と絶縁層とが交互に積層された多層構造となっている。回路基板5を構成する複数の導体層としては、例えば銅などの金属材料が用いられ、この導体層のパターンは様々に構成することができる。また、回路基板5を構成する複数の樹脂層としては、例えば、ガラス織布とエポキシ樹脂からなるFR−4などが挙げられる。なお、樹脂層の材質はこれに限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、セラミック、ガラス(例えばガラス布)と樹脂との複合体等の様々な公知材料を採用することができる。
回路基板5において、当該回路基板5の前後方向中心位置よりも前側(コネクタ部7側)には、複数の貫通孔5cが形成されている。これら貫通孔5cは、例えば内壁面が円筒状に構成された平面視円形状の貫通孔として構成されており、いずれも一方の板面5aと他方の板面5bとの間を貫く孔として構成されている。そして、それぞれの貫通孔5cには、後述するコネクタ部7側から延びる各端子21が挿入されるようになっている。なお、各貫通孔5cは、例えば公知のスルーホールとして構成されており、内壁部には銅めっきなどの公知の導電性材料からなる導電層が形成されている。
図1等で示すように、回路基板5は、裏面視した外形形状及び図2のように平面視した外形形状が略矩形状となっており、具体的には前後方向両端部を構成する基板端部51,52と、左右方向両端部を構成する基板端部53,54とによって外縁部が構成されている。このうちの前端側の基板端部51は、回路基板5の板面に沿った所定の横方向に直線状に延びる直線状部51aと、この直線状部51aの横方向両端側の角部にそれぞれ設けられる湾曲部51b,51cとを備えている。また、回路基板5の後端側の基板端部52は、上述の直線状部52aとほぼ平行となるように横方向に直線状に延びる直線状部52aと、この直線状部52aの横方向両端側の角部にそれぞれ設けられる湾曲部52b,52cとを備えている。また、回路基板5の左右方向一端側の基板端部53は、前後方向に直線状に延びる直線状部53aを備えており、この直線状部53aの前後方向両端側の角部に、上述の湾曲部51b,52bがそれぞれ設けられている。更に、回路基板5の左右方向他端側の基板端部54は、前後方向に直線状に延びる直線状部54aを備えており、この直線状部54aの前後方向両端側の角部に、上述の湾曲部51c,52cがそれぞれ設けられている。このように、外縁部に4つの直線状部51a,52a,53a,54aが矩形状に配置され、これらの境界部に51b,51c,52b,52cが配置されることで、平面視及び裏面視した外形が四角形状となる回路基板5が構成されている。
また、図1等で示すように、回路基板5の基板端部51側には、所定形状の孔部5dが形成されている。この孔部5dは、回路基板5の内部を厚さ方向に貫通する貫通孔として構成されており、一方側の第一板面5aと他方側の第二板面5bとの間を貫いて第一板面5a側の空間との第二板面5b側の空間とを連通させる構成となっている。図1等の例では、回路基板5の左右方向中央位置付近であって且つ前端部52寄りの位置に孔部5dが設けられており、この孔部5dよりも後方側の位置に各貫通孔5cが配置されるようになっている。
図1等で示すように、コネクタ部7は、複数の貫通孔5cにそれぞれ挿入されると共に回路基板5に電気的に接続される複数の端子21と、複数の端子21を少なくとも部分的に収容するハウジング部23とを備えており、回路基板5の一端側から延び出た構成で回路基板5に組み付けられている。
図6等で示すハウジング部23は、例えば公知の樹脂材料によって構成されており、ケース9の開口部9cに隣接して配置されたフランジ状の基端部27と、この基端部27から前方側に突出する2つの突出収容部25a,25bとを備えている。更に、基端部27(フランジ部)から後方に延び出た構成で後方延出部29が設けられている。
図6等で示すように、ハウジング部23の一部をなす基端部27は、前面及び後面が前後方向と直交する方向で配置され且つ板厚方向を前後方向とするような板状の形態となっており、全体として左右方向に長い横長の構成となっている。具体的には、基端部27は、2つの突出収容部25a,25bの後端部からこれら突出収容部25a,25bの周囲に張り出すようなフランジ構造となっている。
図6、図7等で示すように、ハウジング部23の一部をなす複数の突出収容部25a,25bは、いずれもが基端部27の前面部から前方側に突出し、且つ先端部が開口部として構成されるような中空状の構成となっている。突出収容部25aは、図7のように、上下一対の壁部及び左右一対の壁部が連結し、これらが各端子21の先端部付近を収容する空間を環状に取り囲むように配置されている。突出収容部25bも同様であり、上下一対の壁部及び左右一対の壁部が連結し、これらが各端子21の先端部付近を収容する空間を環状に取り囲むように配置されている。
図1、図2等で示すように、ハウジング部23の一部をなす後方延出部29は、後述する複数の端子21を保持しつつ部分的に収容する構成となっており、全体として横長の構造となっている。この後方延出部29は、フランジ状の基端部27の後方に隣接する連結部29bと、この連結部29bから回路基板5の上方側に延び出た構成で配置される基板上方部29aとを備えている。連結部29bは、ケース9の開口部9cと嵌り合う部分である。なお、図6では、図示を省略しているが、連結部29bと開口部9cとの間に樹脂材料等のシール材が充填されていれば、防水性を一層高めることができる。このように構成される後方延出部29は、各端子21のうちの前後方向に延びる部分(前方延出部21a)を連結部29bによって保持し、各端子21のうちの上下方向に延びる部分(下方延出部21b)を、板状の基板上方部29aによって保持している。そして、この後方延出部29は、後述する基板支持部11によって回路基板5が保持されたときに、各端子21の位置(特に各下方延出部21bの位置)が、回路基板5に形成された各貫通孔5cの位置に合うようにそれぞれの部材を位置決めしている。
図2〜図4等で示すように、複数の端子21は、コネクタ部7の一部として構成されており、いずれも公知の導電性の金属材料によって針状に構成されている。これらの端子21は、例えば、オス端子として構成され、図4、図7等で示すように、ハウジング部23の各突出収容部25a,25b内において基端部27から前方側に突出した突出構造で配置されている。図2〜図4等で示すように、いずれの端子21も、前後方向に沿って配置されると共に前方側に尖鋭に突出する前方延出部21aと、上下方向に沿って配置されると共に回路基板5の第二板面側(即ち、第2板面5b側である下方側)に尖鋭に突出する下方延出部21bとを備えている。そして、これら前方延出部21aと下方延出部21bとが互いに連結されている。
図1等で示すように、本構成では、回路基板5において前後方向中心位置C2よりも前側、且つ回路基板5における左右方向中心位置C1よりも左右方向一方側(端部53側)に、1又は複数の端子固定領域が設けられている。また、回路基板5において前後方向中心位置C2よりも前側且つ左右方向中心位置C1よりも左右方向他方側(端部54側)に、1又は複数の端子固定領域が設けられている。
具体的には、図1等で示すように、所定領域B11において、貫通孔5cが左右方向に並ぶ複数行且つ前後方向に並ぶ複数列の整列状態で配置されている。そして、領域B11の各貫通孔5cには、複数の端子21の各下方延出部21bがそれぞれ挿入され、これらの下方延出部21bが整列状態で配置されつつ図示しないはんだによって各貫通孔5cと接合されるようになっている。また、領域B11に配置される各下方延出部21bの他端側は折り曲げられており、図7で示す一方側の突出収容部25a内の所定領域B21に配置される各前方延出部21aとなっている。そして、これらの前方延出部21aは、突出収容部25a内の領域B21において左右方向に並ぶ複数行且つ上下方向に並ぶ複数列の整列状態で配置されている。
また、図1等で示す領域C11も同様であり、領域C11の各貫通孔5cには、領域B11のものとは異なる複数の下方延出部21bがそれぞれ挿入されている。これにより、領域C11においても、各貫通孔5cと各貫通孔5cに挿入される各下方延出部21bとの組が、左右方向に並ぶ複数行且つ前後方向に並ぶ複数列の整列状態で配置されている。そして、領域C11に配置される各下方延出部21bの他端側も折り曲げられており、図7で示す他方側の突出収容部25b内の所定領域C21に配置される各前方延出部21aとなっている。これらの前方延出部21aは、突出収容部25b内の領域C21において左右方向に並ぶ複数行且つ上下方向に並ぶ複数列の整列状態で配置されている。
このように、左右方向一方側に設けられた突出収容部25aに収容される各端子21は、その収容側とは反対の端部側が回路基板5の左右方向一方側に構成される各貫通孔5cにそれぞれ挿入され、その挿入状態ではんだ(図示略)により各貫通孔5cに固定される。また、左右方向他方側に設けられた突出収容部25bに収容される各端子21は、その収容側とは反対の端部側が回路基板5の左右方向一方側に構成される各貫通孔5cにそれぞれ挿入され、その挿入状態ではんだ(図示略)によって各貫通孔5cに固定される。
次に、基板支持部11について説明する。
本構成では、ハウジング部23の一部が基板支持部11として構成されている。具体的には、上述した連結部29bの下面側の一部が基板支持部11として機能しており、回路基板5におけるコネクタ部7寄りの部分(基板端部51側の部分)を支持する構成となっている。
図3(B)、図4(B)、図9で示すように、基板支持部11は、回路基板5の第一板面5aを支持する第一板面支持部35,36(図3(B)、図4(B))と、孔部5d(図9)と係合して回路基板5を保持する凸部31と、回路基板5の前端部(基板端部51)と対向する規制部33,34とを備えている。そして、図9のように孔部5dに凸部31が嵌り込んだ状態での凸部31を中心とする回路基板5の回転変位が複数の規制部33,34によって規制されることで、基板支持部11に対する回路基板5の姿勢が所定姿勢(孔部5dと凸部31とが係合しつつ、基板端部51と複数の規制部33,34とが対向した姿勢)で維持されるようになっている。なお、図9では、図1における一部領域AR1を拡大して示している。
図3、図4等で示すように、第一板面支持部35,36はいずれも、回路基板5の第一板面5aを支持する部分となっており、第一板面5aと当接する面(各支持面35a,36a)が上下方向の所定位置(所定高さ)に配置されている。そして、このように所定高さとされた支持面35a,36aによって第一板面5aを支持することで、コネクタ部7に対する回路基板5の相対的な高さを一定の高さに保つように位置決めしている。
図3、図4、図9のように、一方の第一板面支持部35は、後述する規制部33,34の後方側に隣接した平面部となっている。この第一板面支持部35は、外面(支持面35a)が下方側に面し且つ左右方向及び前後方向と平行な面として構成されると共に上下方向所定位置に配置され、回路基板5の第一板面5a(上面)における前端部(基板端部51)付近の部分と当接する構成となっている。
図3、図4のように、もう一方の第一板面支持部36は、第一板面支持部35から離れた後方位置に配置される平面部となっており、第一板面支持部36も、外面(支持面36a)が下方側に面し且つ左右方向及び前後方向と平行な面として構成されると共に上下方向所定位置(具体的には支持面35aとほぼ同じ高さ)に配置されている。そして、この第一板面支持部36も、回路基板5の第一板面5a(上面)における前端部(基板端部51)寄りの部分と当接する構成となっている。具体的には、第一板面支持部35と回路基板5とが当接する位置よりもやや後方位置で第一板面支持部36と回路基板5とが当接する構成となっている。このような構成により、上下方向におけるハウジング部23と回路基板5との位置関係が維持されている。
図3、図4、図9のように、ハウジング部23に設けられた基板支持部11には、上述した第一板面支持部35,36の各支持面35a,36aよりも下方側に突出する軸状の凸部31が形成されている。この凸部31は、保持部の一例に相当し、回路基板5に形成された孔部5d(係合部)と係合することで回路基板5を保持するように機能する部分である。図9等に示す例では、基板支持部11に設けられた凸部31を回路基板5に形成された孔部5dに嵌め込んでおり、この構成により、回路基板5の孔部5d付近が凸部31付近から離れるような相対移動が規制されている。
図9等に示すように、凸部31は、基板上方部29aに形成された壁部(第一板面支持部35と同程度の高さ、若しくは、第一板面支持部35よりもやや上位置の高さで配置され、下方側に面する壁部)から下方側に突出するように上下方向に延びた構造となっている。この凸部31の構造は、回路基板5に形成された孔部5dに挿入されて孔部5dと係合する構造であればよく、例えば、図1、図9の例では、円柱状に構成された凸部31が、円筒状の内周面を有する孔部5dと嵌合するような構造となっている。また、凸部31の構造は、この例に限られず、例えば、左右方向に対向する一対の係合爪によって構成されていてもよい。この場合、凸部31は、回路基板5への組付け時に、一対の係合爪のそれぞれが孔部5dの内周壁の左右にそれぞれ当接し、且つ各係合爪の先端部に形成された爪部が、孔部5dにおける第二板面5b側の端部に引っ掛かるように係止するようなスナップフィット構造とすればよい。
図3、図4、図9のように、規制部33,34は、基板端部51に沿った所定方向(即ち、左右方向)において凸部31の両側で基板端部51と対向するようにそれぞれ配置されている。これら規制部33,34は、いずれも上述の第一板面支持部35から下方側に立ち下がるように形成された壁部37から後方側に突出している。具体的には、図3、図4で示すように、壁部37が第一板面支持部35に連結して構成され、且つ第一板面支持部35の支持面35aと直交する下向きに延びている。そして、各規制部33,34は、図9のように、左右方向の各位置において所定幅(例えば、孔部5dの径よりも小さい幅)で構成され、壁部37の壁面から後方側に凸となるように配置されている。そして、図9のように、これら規制部33,34の後端部33b,34bと回路基板5の前端部(基板端部51)とが前後に対向するように配置されている。なお、図1、図9等で示す例では、各規制部33,34と回路基板5の基板端部51との間に、それぞれ僅かな隙間が構成されるように基板端部51から若干離れて規制部33,34が配置されている。
また、図3、図4、図9等で示す規制部33,34はいずれも、上下方向において第一板面支持部側(第一板面支持部35側)から第二板面側(第二板面5b側である下方側)に突出する構成となっている。具体的には、第一板面支持部35の下方側に連結されるように規制部33,34がそれぞれ形成されており、各規制部33,34の下端部33a,34a(第二板面5b側の端部)が第一板面支持部35の支持面35aよりも下位置となるように突出している。更に、規制部33,34において、突出側の各下端部33a,34aの上下方向の位置は、第二板面5bの位置よりも第一板面側(即ち第一板面5a側である上方側)に配置されている。つまり、規制部33,34の各下端部33a,34aが第二板面5bよりも下方側に飛び出ない構成となっている。なお、規制部33,34における支持面35aからの下方側への突出高さH1は、両規制部33,34とも同じ高さとなっている。具体的には例えば、両規制部33,34の支持面35aからの下方側への突出高さH1を、回路基板5の厚さT1(第一板面5aと第二板面5bの間隔)の1/2程度とすることが望ましい。或いは、両規制部33,34によって回路基板5の回転動作をより確実に規制するため、突出高さH1を回路基板5の厚さの1/2よりも大きくし、且つフロー工程を良好に行うために、突出高さH1を回路基板5の厚さよりも小さくしてもよい。
本構成では、上述したように、回路基板5の前端部(基板端部51)において、左右方向中心側の大部分の領域が左右方向に直線状に延びる直線状部51aとなっており、その直線状部51aの左右両側に湾曲部51b,51cがそれぞれ配置されている。このような回路基板5に対して、規制部33,34は、左右方向において、両湾曲部51b,51cよりも回路基板5の左右方向中心位置C1側に配置されており、直線状部51aに隣接して対向している。
具体的には、規制部33,34のうち、孔部5dよりも左右方向の一方側に設けられた規制部33が、左右方向における回路基板5の中央位置と回路基板5において左右方向一方側に設けられた一方側端部53との間の中心位置C3よりも、左右方向において一方側端部53寄りに設けられている。なお、本明細書では、「左右方向」が基板端部51に沿った所定方向の一例に相当する。また、「左右方向における回路基板5の中央位置」は、図1で示す左右方向中心位置C1であり、この位置C1は、図1において回路基板5の左端部である端部54まで左右方向の距離と右端部である端部53までの左右方向の距離が等しくなる中間位置となっている。また、中心位置C3は、左右方向において、端部53までの距離と中心位置C1までの距離とが等しくなる中間位置である。更に、この例では、規制部33が「一方側規制部」の一例に相当する。
更に、規制部33,34のうち、孔部5dよりも左右方向の他方側に設けられた規制部34が、左右方向における回路基板5の中央位置(左右方向中心位置C1)と回路基板5において左右方向他方側に設けられた他方側端部54との間の中心位置C4よりも、左右方向において他方側端部54寄りに設けられている。なお、中心位置C4は、左右方向において、端部54までの距離と中心位置C1までの距離とが等しくなる中間位置である。また、この例では、規制部34が「他方側規制部」の一例に相当する。
(電子装置の製造方法)
ここで、上述した電子装置1の製造方法について説明する。
電子装置1を製造する場合、まず、図1〜図4等に示す回路基板5を製造する。この回路基板5の製造は、多層基板を製造する公知の方法を用いて行われる。この工程で製造される回路基板5は、上述した形態の回路基板5であり、具体的には図1〜図4で示す構造体3からコネクタ部7を省略し、且つコネクタ部7と接合するためのはんだ(図示略)を省略したものである。従って、製造される回路基板5は、図1〜図4等で示すように、基板端部51側の所定領域B11、C11に複数の貫通孔5cが形成され、且つ基板端部51側における左右方向中心位置C1付近に所定形状の孔部5dが形成されることになる。
また、回路基板5の製造前又は製造後、若しくは回路基板5と同時期に、回路基板5を組み付けるためのコネクタ部7を製造する。コネクタ部7についても、公知のコネクタ製造方法で製造することができ、ハウジング部23なども公知の方法で成形することができる。この工程で製造されるコネクタ部7は、図1〜図4で示す構造体3から回路基板5を省略し、且つ回路基板5と接合するためのはんだ(図示略)を省略したものである。具体的には、上述した構成の複数の端子21と、これらの複数の端子21を少なくとも部分的に収容するハウジング部23とを設けた構成で上述した形態のコネクタ部7を製造する。なお、この工程で製造されるコネクタ部7は上述した形態(図1〜図4等で示す構成)であるため、ハウジング部23の一部には、上述した基板支持部11が形成されることになる。
このように、本製造方法では、コネクタ部7の製造の際に、基板支持部11をハウジング部23の一部として形成している。そして、この基板支持部11には、回路基板5に形成された孔部5dと係合して回路基板5を保持する凸部31と、基板端部51に沿った所定方向(左右方向)における凸部31の両側で基板端部51と対向するようにそれぞれ配置される複数の規制部33,34と、上述した第一板面支持部35,36とが含まれることになる。
このように回路基板5及びコネクタ部7を製造した後、コネクタ部7と回路基板5とを組み付ける工程を行う。具体的には、コネクタ部7に設けられた複数の端子21の各下方延出部21bを回路基板5に形成された複数の貫通孔5cにそれぞれ挿入させ、且つ複数の規制部33,34をそれぞれ基板端部51と対向させつつ孔部5dと凸部31とを係合させた組付状態とする。回路基板5とコネクタ部7とを組み付けたときの組付構造は、図1〜図4等で示す構造体3からはんだを省略した構成である。即ち、この組付構造は、はんだを省略した点以外は上述の構造体3と同一の構成となっており、コネクタ部7による回路基板5の保持構造(即ち、基板支持部11による回路基板5の保持構造)も、はんだ以外は電子装置1と同一となっている。従って、ここでは、図1〜図4を参照して組付構造についても説明する。
回路基板5の製造工程及びコネクタ部7の製造工程で製造される回路基板5及びコネクタ部7は、図1〜図4のような組付状態となり得るように各工程で製造される。具体的には、図9のような組付構造となるように回路基板5及びコネクタ部7が形成され、組み付け時には、基板支持部11の凸部31が回路基板5の孔部5dに嵌り込んだ状態での凸部31を中心とする回路基板5の回転変位が複数の規制部33,34によって規制されるようになっている。そして、このような係合及び規制によって基板支持部11に対する回路基板5の姿勢が所定姿勢で維持されるように回路基板5及びコネクタ部7を形成し、互いに組み付けている。
また、本製造方法では、回路基板5とコネクタ部7とが組み付けられたときに、回路基板5が相対的に変位した場合でも貫通孔5cと端子21とが接触しにくい位置関係となるように回路基板5及びコネクタ部7を形成している。具体的には、図9、図10のような組付構造では、凸部31を中心として回路基板5が僅かに回転可能となるが、このような相対的位置関係において、規制部33と基板端部51との距離が、規制部34と基板端部51との距離と等しくなるように、基板支持部11に対する回路基板5の回転位置を定めたとき(即ち、壁部37の壁面と、基板端部71の方向とを平行に配置したとき)の、各距離(規制部33と基板端部51との距離、及び規制部34と基板端部51との距離)を基準距離tとしている。一方、図10のように、全ての貫通孔5cにおいて、挿入される各端子21の中心を各貫通孔5cの中心に定めた場合の各貫通孔5cと端子21との各最小間隔のうち、最も小さい間隔を基準間隔Caとする。このように基準距離tと基準間隔Caとを定めた場合、基準間隔Caが基準距離tよりも大きくなっている。
より具体的には、図9のように、規制部33と基板端部51との距離が、規制部34と基板端部51との距離と等しくなるように、各距離をいずれも基準距離tとして位置決めした場合、例えば、いずれの貫通孔5cにおいても、図11のように、挿入される端子21の中心Z(具体的には、上下に延びる下方延出部21bの横方向及び前後方向の中心位置)が貫通孔5cの中心に定められるようになっている。そして、いずれの貫通孔5cにおいても、図11と同様、下方延出部21bの左右領域α内における下方延出部21bの前端部と貫通孔5cの内壁との前後間隔Y1と、下方延出部21bの左右領域α内における下方延出部21bの後端部と貫通孔5cの内壁との前後間隔Y2とが、いずれも上述の基準距離tよりも大きくなっている。
このように、図9のような状態から回路基板5が時計回り又は反時計回りに回転し、貫通孔5c内の下方延出部21bが距離t程度だけ貫通孔5c内で前方側又は後方側に移動しても、貫通孔5cの内壁に接触しないように、余裕をもった孔の大きさで貫通孔5cが構成されている。
なお、各規制部33,34の前後の突出長さL1,L2は、いずれも0.8mm程度であり、各規制部33,34の横方向の幅W1,W2は、いずれも2mm程度となっており、規制部33,34のいずれも、前後の突出長さの方が横幅よりも小さくなっている。そして、基準距離tは、突出長さL1,L2よりも小さくなっており、例えば0.2mm程度となっている。
なお、図9、図10の状態は、規制部33と基板端部51との距離が、規制部34と基板端部51との距離と等しくなるように、基板支持部11に対する回路基板5の回転位置が定められた状態であり、規制部33と基板端部51との距離、及び規制部34と基板端部51との距離がいずれも基準距離tとなっている。そして、図9、図10等に示す構成では、規制部33と基板端部51との距離、及び規制部34と基板端部51との距離がいずれも基準距離tに定められた状態では、全ての貫通孔5cの中心位置に、挿入される各端子21の中心位置が定められるように各端子21が各貫通孔5cに挿入されるようになっている。従って、この場合、全ての貫通孔5cにおける各貫通孔5cと端子21との各最小間隔のうち、最も小さい間隔が基準間隔Caとなる。
そして、図9のように、複数の端子21を複数の貫通孔5cにそれぞれ挿入させ、且つ複数の規制部33,34をそれぞれ基板端部51と対向させつつ孔部5dと凸部31とを係合させた状態では、例えば、図9の状態から回路基板5の第一板面5aと第一板面支持部35,36とを当接させつつ回路基板5を反時計回りに相対回転させて回路基板5の基板端部51が一方側の規制部33に当接した回転姿勢では、複数の貫通孔5cの各内壁部が、それぞれに挿入される端子21と接触しない構成となっている。つまり、このように回転させると、凸部31の左右方向一方側において基板端部51が規制部33に当接し、凸部31の左右方向他方側では、基板端部51が規制部34から離れるように変位する。そして、このように変位すると、凸部31の左右方向一方側(端部53側)では、貫通孔5cに挿入される各端子21のそれぞれが挿入される各貫通孔5cの斜め後方側の内壁部分に接近することになるが、この場合でも、各端子21は、各貫通孔5cの内壁部には接触しないようになっている。また、凸部31の左右方向他方側では、貫通孔5cに挿入される各端子21のそれぞれが貫通孔5cの斜め前方側の内壁部分に接近することになるが、この場合でも、各端子21は、貫通孔5cの内壁部には接触しないようになっている。
また、図9の状態から回路基板5の第一板面5aと第一板面支持部35,36とを当接させつつ回路基板5を時計回りに相対回転させて回路基板5の基板端部51が規制部34に当接した回転姿勢でも、複数の貫通孔5cの各内壁部が、それぞれに挿入される端子21と接触しない構成となっている。つまり、このように回転させると、凸部31の左右方向他方側において基板端部51が規制部34に当接し、凸部31の左右方向一方側では、基板端部51が規制部33から離れるように変位する。このように変位すると、凸部31の左右方向一方側(端部53側)では、貫通孔5cに挿入される各端子21のそれぞれが挿入される各貫通孔5cの斜め前方側の内壁部分に接近することになるが、この場合でも、各端子21は、各貫通孔5cの内壁部には接触しないようになっている。また、凸部31の左右方向他方側では、貫通孔5cに挿入される各端子21のそれぞれが貫通孔5cの斜め後方側の内壁部分に接近することになるが、この場合でも、各端子21は、貫通孔5cの内壁部には接触しないようになっている。
そして、このような組付構造とされた回路基板5及びコネクタ部7に対して、複数の端子21と回路基板5とを接合するように公知のフロー方式ではんだ付けを行う。例えば、図1に示す領域B11に配置された各貫通孔5cと各端子とを接合する場合、図13の二点鎖線Nで示すような開口形状のノズルを、図3(B)で示す二点鎖線の太線のように配置し、図3(B)の太線矢印のようにノズルの上端部の開口から溶融はんだを噴出させて各端子21と各貫通孔5cとの近接箇所にはんだを供給し、はんだ接合する。
このように、組付構造とされた回路基板5及びコネクタ部7に対してはんだ付けがなされることで、回路基板5とコネクタ部7とをはんだによって接合してなる上述の構造体3(図1〜図4)が形成されることになる。一方、構造体3を形成する工程とは別で、上述のケース9を構成する第1ケース9a(上ケース)及び第2ケース9b(下ケース)が公知の金属加工方法で形成されており、このように形成された第1ケース9a(上ケース)及び第2ケース9b(下ケース)によって上述の構造体3を覆うように収容して組み付けがなされることで、図5等に示す電子装置1が完成する。なお、ここでは説明を省略したが、電子装置1の製造に際しては検査工程などの他の様々な公知工程を行うことができることは勿論である。
(本構成の効果)
以下、本構成によって得られる効果の例を説明する。
本構成の電子装置1では、回路基板5おけるコネクタ部寄りの基板端部側(即ち、前後方向においてコネクタ部7側に寄った位置に配置される基板端部51の側)には所定形状の係合部(孔部5d)が形成されている。一方、コネクタ部7の一部又はコネクタ部7に組み付けられる部材である基板支持部11には、係合部(孔部5d)と係合して回路基板5を保持する保持部(凸部31)と、保持部(凸部31)の両側で基板端部51と対向するようにそれぞれ配置される複数の規制部33,34とが設けられている。この構成では、回路基板5に1つの係合部(例えば孔部5d)を形成すれば、この係合部及び基板端部51を保持位置とする構成で回路基板5が基板支持部11に保持されるようになり、回路基板5内において保持用のスペースをより削減しやすくなる。
例えば、回路基板5を保持するための専用孔を回路基板5に多数設ける必要が無いため、このような専用孔を削減し、その削減で生じたスペースを、他の用途(配線や部品の配置等)に有効利用することができる。特に、積層数や端子数がより多くなると、信号ラインの面積を大きく確保する必要があるが、回路基板内に係合孔を多数設けてしまうと、このようなスペースを確保することが極めて難しくなる。これに対し、上記構成では、回路基板5内において係合のための孔を1つのみで抑えているため、信号ライン等のスペースを確保しやすくなり、多層化、多極化の面で非常に有利になる。
但し、回路基板5に1つの係合部(例えば孔部5d)を設け、この係合部を基板支持部11の保持部(例えば凸部31)と係合させるだけでは、これらの係合位置を中心として回路基板5が基板支持部11に対して相対的に回転してしまうことが懸念される。このような回転は、特にはんだ接合前の製造工程(例えばフロー工程)などで生じる虞があり、最終製品である電子装置1においても、衝撃やその他の要因により生じる虞がある。
そこで、本構成では、このような相対移動を規制部33,34によって確実に抑えている。即ち、保持部(例えば凸部31)付近を中心として回路基板5が相対的に回転しようとしても、保持部の両側に設けられた複数の規制部33,34が回路基板5の基板端部51と当接して回転が規制されるため、回路基板5の相対変位が確実に抑えられ、回路基板5がコネクタ部7に安定的に保持され易くなる。例えば、図1のように見たときにおいて、回路基板5が時計回りに回転しようとしても、規制部34が基板端部51と当接し、それ以上の回転が規制されることになる。同様に、回路基板5が反時計回りに回転しようとしても、規制部33が基板端部51と当接し、それ以上の回転が規制されることになる。従って、回路基板5において係合部を極力少なくしても、係合部付近を中心とする回転を規制することができ、回路基板5を予定された正規位置に安定的に保持することができる。
また、本構成では、回路基板5の係合部が、孔状部の一例である孔部5dによって構成されており、基板支持部11の保持部は、係合部に嵌り込む凸部31として構成されている。そして、孔部5dに凸部31が嵌り込んだ状態での当該凸部31を中心とする回路基板5の回転変位が複数の規制部33,34によって規制されることで、基板支持部11に対する回路基板5の姿勢が所定姿勢で維持されるようになっている。この構成では、回路基板5を保持するために基板内に設けるべき構成としては、主に、簡易形状の孔部5dだけでよく、このような簡易な構造によって安定的な保持が可能となる。また、孔部5dと凸部31が嵌り合った構造となるため、組み付け時には、回路基板5の前端側において左右方向のスライドや前後方向のスライドが抑えられ、規制部33,34によって回転を規制しさえすれば、回路基板5をより安定的に保持することが可能となる。
また、本構成では、回路基板5の厚さ方向一方側に第一板面5aが構成され、厚さ方向他方側に第二板面5bが構成され、複数の端子21は、回路基板5の第二板面5b側に突出した構成となっている。そして、基板支持部11は、回路基板5の第一板面5aを支持する第一板面支持部35,36を備えている。そして、複数の規制部33,34は、第一板面支持部側(具体的には、第一板面支持部35側)から第二板面5b側に突出する構成となっており、複数の規制部33,34のいずれも、突出側端部33a,34aが第二板面5bよりも第一板面側(第一板面5a側である上方側)に配置されている。このように構成されているため、突出側端部33a,34aが飛び出ることによるスペース的なデメリットを低減することができる。
また、この構成を採用した場合、フロー方式ではんだ付けを行う場合に、規制部33,34が溶融しにくくなり、規制部33,34の溶融に起因する品質低下が抑えられる。例えば、図3(B)のような構成ではなく、突出側端部33a,33bが第二板面5bよりも下方側に突出するような構成であった場合、各貫通孔5cと各端子21とをはんだ付けする際に、端部33a,33bに近い位置ではフロー方式ではんだ付けを行うことができず、はんだ付けの位置的な制約を招いてしまうことになる。これに対し、本構成では、突出側端部33a,34aが第二板面5bよりも第一板面5a側に配置され、第二板面5bよりも下方に突出しない構成となっているため、はんだ付けの際に、溶融はんだを噴出させるノズルを前方側に近づけてもフロー工程時に端部33a,34aが溶融しにくくなり、はんだ付けでの位置的な制約を緩和して自由度を高めることができる。
また、本構成では、回路基板5の基板端部51は、回路基板5の板面に沿った所定の横方向(左右方向)に直線状に延びる直線状部51aと、直線状部51aの両端側において基板端部51の角部にそれぞれ設けられる湾曲部51b,51cとを備えている。そして、複数の規制部33,34はいずれも、直線状部51aと対向して配置されている。このように回路基板5の前端となる直線状部51aと対向するように各規制部33,34を配置すれば、回路基板5に僅かな回転変位が生じた場合でも各規制部33,34によって回転を規制できるようになり、回路基板5の変位をより早い段階で確実に規制することができる。
また、本構成では、図9のように、複数の規制部33,34のうち、基板端部51に沿った所定方向(左右方向)において孔部5d(係合部)や凸部31(保持部)よりも一方側に設けられた規制部33(一方側規制部)が、当該所定方向(左右方向)における回路基板5の中央位置(左右方向中心位置C1)と、回路基板5において所定方向(左右方向)の一方側に設けられた一方側端部(端部53)との間の中心位置C3よりも一方側端部寄り(端部53寄り)に設けられている。つまり、規制部33は、図9において、回路基板5の右半分領域における左右の中心位置C3よりも右側に設けられている。また、複数の規制部33,34のうち、孔部5d(係合部)や凸部31(保持部)よりも所定方向(左右方向)の他方側に設けられた規制部34(他方側規制部)は、所定方向(左右方向)における回路基板5の中央位置(左右方向中心位置C1)と、回路基板5において所定方向(所定方向)の他方側に設けられた他方側端部(端部54)との間の中心位置C4よりも他方側端部寄り(端部54寄り)に設けられている。つまり、規制部34は、図9において、回路基板5の左半分領域における左右の中心位置C4よりも左側に設けられている。このように規制部33,34を配置すれば、回路基板5が相対的に回転した際に、回転中心となる凸部31付近よりも極力遠い位置でその回転変位を規制することができる。従って、回路基板5の回転をより安定的に抑えることができ、回転変位を規制する際に、回路基板5から規制部33,34に加わる力もより低減されることになる。
なお、図1〜図11の例では、規制部33,34の配置の一例を示したが、規制部33,34の位置は、例えば直線状部51aに向かい合う位置であれば、いずれも図9等で示す位置から左右にずらしてもよい。この場合、図12で示すような考え方で、規制部33,34の位置を決めればよい。この図12は、図9で示す構成を模式的に示しており、規制部33,34が存在しない場合に、図9の状態から反時計回りに回転可能となる最大角度をθとしている。つまり、規制部33,34が存在しない場合において、回路基板5が反時計回りに回転して前端部(基板端部51)が壁部37に接触する角度をθとしている。図12では、このような角度θとなったときの前端部(基板端部51)の仮想的な位置を一点鎖線151で示しており、規制部33の後端部33bがこの一点鎖線151よりも後方側に突出していれば、(即ち、規制部33と仮想位置151とが交わる関係であれば)、回路基板5が反時計回りに回転したときに壁部37に当てることなく規制部33によって規制することが可能となる。同様に、規制部33,34が存在しない場合において、回路基板5が時計回りに回転して前端部(基板端部51)が壁部37に接触したときの前端部(基板端部51)の位置(仮想位置)よりも規制部34の後端部34bが後方側に突出していれば(即ち、この仮想位置と規制部34とが交わる関係であれば)、回路基板5が時計回りに回転したときに壁部37に当てることなく規制部34によって規制することが可能となる。
なお、図12の説明図では、図9で示す構成において、孔部5dの中心位置(回路基板5の回転中心G)を原点とし、コネクタ部7の左右方向(壁部37が延びる方向)をX軸方向とし、コネクタ部7の前後方向(X軸方向と直交し、且つ回路基板5の厚さ方向と直交する方向)をY軸方向としている。この場合において、図9の状態での、回転中心Gと基板端部51との前後の距離をbとし、且つ、上述の基準距離を図10等と同様にtとした場合、図12のように回路基板5が角度θ回転したときの基板端部51の直線151は、以下の数1の式で表すことができる。
そして、規制部33による規制効果を得るためには、X軸方向の位置を以下の数2の式で表されるXaの位置とすればよい。また、規制部34は、規制部33と左右逆であるが、規制部33と同様の考え方でX軸方向の位置を定めればよい。
また、本構成では、回路基板5の回転変位時に規制部33,34に加わる力が抑えられるため、規制部33,34の各幅W1,W2を小さくしやすくなっている。この点を生かし、各規制部33,34の各幅W1,W2をいずれも凸部31(保持部)の幅W3よりも小さくしており、例えば、各幅W1,W2をいずれも2mm程度としている。このように、各幅W1,W2を小さくすれば、左右方向の広い領域で、壁部37と基板端部51との間に隙間を構成することができる。そして、このように広い領域で隙間を設けるようにすれば、ハウジング部23の成型条件等に起因して壁部37に反りやうねりなどが生じたとしても、回路基板5を保持する上でその影響を小さくすることができる。なお、本構成では、複数の規制部33,34が並ぶ方向がコネクタ部7の「横方向」であり、この「横方向」が規制部33,34及び凸部31の幅方向である。また、回路基板5の基板端部51に沿って壁部37が延びる方向もコネクタ部7の「横方向」であり、図7のように正面視したときのコネクタ部7の長手方向も「横方向」である。
例えば、図9のような構成ではなく、図9で示す規制部33,34の間が、規制部33,34と同程度に突出する樹脂部で埋まっている場合、壁部37付近に反りやうねりが生じたときに、埋まっている樹脂部の一部に突出、湾曲、傾きなどが生じやすく、このような変形部分が基板端部51に干渉しやすくなる。回路基板5を組み付ける前にこのような現象が生じると、組み付けを安定的且つ正確に行うことができない虞がある。また、このような構成では、回路基板5の回転を防ぐためだけに長い幅の狭空間を構成しなければならない。この場合、コネクタ部7を回路基板5に実装する際に冶具等による正確な位置決めが必要となってしまい、製造性の悪化を招き易くなる。これに対し、本構成では、図9のように、狭い幅の規制部33,34を離間させて配置し、左右方向の広い範囲で壁部37と基板端部51との間に隙間が構成されるようにしているため、これらの問題が確実に抑えられる。
また、電子装置1を製造する際には、組み付け状態で貫通孔5cの内壁部が損傷しにくくなるように、回路基板5及びコネクタ部7をそれぞれ形成している。具体的には、はんだ接合を行う前に回路基板5とコネクタ部7を組み付けた状態において、回路基板5が反時計回りに相対回転して一方側の規制部33に当接した回転姿勢でも、回路基板5が時計回りに相対回転して他方側の規制部34に当接した回転姿勢でも、複数の貫通孔5cの各内壁部が、それぞれに挿入される端子21と接触しない構成となっている。回路基板5及びコネクタ部7を形成する各工程では、このような位置関係となるように回路基板5及びコネクタ部7がそれぞれ形成されるため、形成された回路基板5及びコネクタ部7を組み付けてはんだ接合を行う際に回路基板5が回転可能な範囲で若干回転したとしても、各端子21が貫通孔5cの内壁部に接触しにくくなり、はんだ接合前に貫通孔5cの内壁部の損傷(例えば、メッキ削れ等)が確実に抑制される。
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態では、電子装置1がエンジンECUとして構成される例を示したが、ボディ制御ECUや、ブレーキ制御ECU,エアバック制御ECUなど、他の車載用電子装置として構成されていてもよい。
上記実施形態では、基板支持部11がハウジング部23の一部として構成される例を示したが、基板支持部がハウジング部とは別の部材によって構成されていてもよい。この場合、基板支持部は、ハウジング部に組み付けられる構成であればよく、ハウジング部に接触する形で固定されていてもよく、他部材を介してハウジング部に固定されていてもよい。
上記実施形態では、係合部の例として、貫通孔として構成される孔部5dを例示したが、基板支持部11に形成された凸部と係合可能な孔状の構造(孔状部)であれば完全な貫通孔でなくてもよい。例えば、孔部5dの一部が基板端部51と連通するような切欠き状の構造などであってもよい。即ち、基板端部51において、後方側に窪むような切欠き構造で係合部が形成されていてもよい。また、係合部を貫通孔として構成する場合、孔の形状は、内壁面が円筒状の構成に限られず、開口部が多角形状である孔構造であってもよい。
上記実施形態では、保持部となる凸部31の両側に規制部33,34がそれぞれ1つずつ設けられた構成を例示したが、保持部の横方向両側に規制部が設けられる構成であれば、各側の規制部の数は1つに限定されない。例えば、保持部の横方向両側にそれぞれ2つずつ規制部が設けられる構成であってもよく、或いは、保持部に対して横方向一方側に1つの規制部が設けられ、横方向他方側に2つの規制部が設けられるような構成などであってもよい。
上記実施形態では、保持部を例示したが、回路基板5に形成された係合部と係合可能な構成であればこの例に限定されない。例えば、1つの爪部によって構成されるような保持部などであってもよい。