まず、実施例の詳細な説明に先立って、本発明に係る紙幣処理手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る紙幣処理手法の概要を示す図である。なお、同図の(A)には、紙幣処理装置の処理概要を示し、同図の(B)には、リジェクト原因の具体例を示し、同図の(C)には、リジェクト紙幣に対する出金処理の動作例を示している。
具体的には、同図の(A)に示したように、本発明に係る紙幣処理手法では、まず、紙幣処理装置に対して投入された紙幣を識別部を用いて識別する。ここで、識別部では、紙幣の金種や真偽、正損あるいは表裏等を識別する。
つづいて、本発明に係る紙幣処理手法では、入金可否判定部が、識別部による識別結果に基づいて紙幣の入金可能か否かを判定し、入金可と判定された紙幣を金種ごとの収納部へと収納する。また、本発明に係る紙幣処理手法では、入金可否判定部によって入金不可と判定された紙幣をリジェクト紙幣として所定の出金口から出金する。すなわち、紙幣処理装置は、識別部による識別結果に基づき、リジェクト紙幣については投出しつつ、その他の正常な紙幣を金種ごとに収納することができる。
しかしながら、リジェクト紙幣の中には、適正紙幣であるにもかかわらず識別部によって不適正と識別された結果、入金可否判定部によって入金不可と判定されたリジェクト紙幣が含まれる場合がある(同図の(A−1)参照)。また、リジェクト紙幣の中には、識別部によって適正と識別されたにもかかわらず、入金可否判定部によって入金不可と判定されたリジェクト紙幣が含まれる場合もある(同図の(A−2)参照)。
具体的には、同図の(B)に示したように、リジェクト紙幣は、識別部によって偽券あるいは損券と識別されたことがリジェクト原因となる以外にも、斜行や連鎖といった搬送異常によってたまたま識別できなかったことがリジェクト原因となる場合もある。
また、リジェクト紙幣は、識別部によって適正と識別された場合であっても、収納部が満杯または故障のため収納できなかったことがリジェクト原因となる場合や、紙幣処理装置の取り扱い対象外であることがリジェクト原因となる場合もある。
ここで、これらのリジェクト原因のうち、偽券や損券と識別されたこと、あるいは、取り扱い対象外であることをリジェクト原因とするリジェクト紙幣は、紙幣処理装置に対して再度投入したとしても適性に処理されることがない。しかし、斜行や連鎖といった搬送異常、あるいは、収納部の満杯または故障といった収納異常をリジェクト原因とするリジェクト紙幣は、本来的には適正な紙幣であるため、紙幣処理装置に対して再度投入することによって適正に処理される(すなわち、紙幣処理装置内へ収納される)可能性がある。
そこで、本発明に係る紙幣処理手法では、リジェクト紙幣を出金する場合に、リジェクト原因を特定し、特定したリジェクト原因に応じてリジェクト紙幣を区分けして出金することとした。具体的には、本発明に係る紙幣処理手法では、再投入しても適正に処理されることのない不適正リジェクト紙幣(同図の(B−1)参照)と、再投入によって適正に処理される可能性のある適正リジェクト紙幣(同図の(B−2)参照)とを区分けして出金することとした(同図の(B−3)参照)。
たとえば、同図の(C)に示したように、本発明に係る紙幣処理手法では、適正リジェクト紙幣を第1の出金口へ出金し(同図の(C−1)参照)、不適正リジェクト紙幣を第2の出金口へ出金することができる(同図の(C−2)参照)。このように、適正リジェクト紙幣および不適正リジェクト紙幣の出金先を異ならせることによって、オペレータが、適正リジェクト紙幣のみを容易に取り出すことができるため、再入金作業を効率的に行うことが可能となる。
なお、適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とを1つの出金口を用いて区分けすることも可能である。たとえば、紙幣処理装置に対して紙幣の表裏を反転させる機能を設けることとすれば、適正リジェクト紙幣を表向きで出金し、不適正リジェクト紙幣を裏向きで出金することによってこれらを区分けすることも可能である。また、適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とを左右方向にずらして出金したり、適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とで縦横の向きを変えて出金したりすることによってもこれらを区分けすることができる。
このように、本発明に係る紙幣処理手法では、リジェクト原因に基づいてリジェクト紙幣を区分けして出金することとした。特に、本発明に係る紙幣処理手法では、再投入によって適正に処理される可能性のある適正リジェクト紙幣と、再投入しても入金される可能性のない不適正リジェクト紙幣とに区分けして出金することとしたため、オペレータによるリジェクト紙幣の再入金作業を効率化することができる。
ところで、搬送異常をリジェクト原因とするリジェクト紙幣は、出金口から取り出して再投入しさえすれば適正に処理されることとなるが、収納異常をリジェクト原因とするリジェクト紙幣は、収納部の異常を解消したうえで再投入する必要がある。また、たとえば適正リジェクト紙幣が千円札であり、不適正リジェクト紙幣が千円札の偽券である場合のように、どのリジェクト紙幣が適正リジェクト紙幣であるかが一見しただけではわからない場合もある。
そこで、本発明に係る紙幣処理手法では、各リジェクト紙幣のリジェクト原因および各リジェクト紙幣の出金態様(たとえば、出金先など)を含んだリジェクト情報を表示部やスピーカといった報知手段を用いて報知することとしている。これによって、再入金作業を行うオペレータは、再投入の前に収納部の異常を解消する必要があることや、再投入すべき適正リジェクト紙幣がどこに出金されたか等を把握することができるため、再入金作業をより効率的に行うことが可能となる。
なお、リジェクト情報は、紙幣処理装置に設けられた表示部やスピーカを用いて報知してもよいし、紙幣処理装置と接続される操作用端末から報知させてもよい。ここで、操作用端末としては、主に紙幣処理装置の操作制御や状態確認のみを行う端末装置(たとえば、パーソナルコンピュータ)であってもよいし、紙幣処理装置を含む複数の装置と接続し、各装置の管理を行ったり各装置からデータを収集したりする上位端末(たとえば、サーバや専用装置)であってもよい。なお、以下の実施例では、操作用端末の一例として、上位端末を用いて説明することとする。
また、ここでは、適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とを区分けする場合について説明したが、これに限ったものではない。すなわち、どのリジェクト紙幣をどのリジェクト紙幣と区分けするか、あるいは、どのリジェクト紙幣をどの出金口へ出金させるかといったリジェクト紙幣の区分け方は、オペレータ等の利用者が任意に設定可能である。
たとえば、適正リジェクト紙幣をさらに区分けし出金させてもよい。すなわち、搬送異常をリジェクト原因とする適正リジェクト紙幣を第1の出金口へ出金し、収納異常を原因とするリジェクト紙幣を第2の出金口へ出金するといったことも可能である。同様に、不適正リジェクト紙幣をさらに区分けして出金させてもよい。すなわち、偽券や損券等の不適正リジェクト紙幣を第1の出金口へ出金し、取り扱い対象外の不適正リジェクト紙幣を第2の出金口へ出金するといったことも可能である。
以下では、図1を用いて説明した紙幣処理手法を適用した紙幣処理装置および紙幣処理方法についての実施例を詳細に説明する。なお、以下では、紙幣処理装置の一例として、紙幣の入出金処理を行う紙幣処理装置を用いて説明する。ただし、本発明に係る紙幣処理装置は、紙幣の入金処理のみを行う紙幣処理装置に対しても適用することができる。
図2は、本実施例に係る紙幣処理装置の全体構成を示す図である。同図に示すように、本実施例に係る紙幣処理装置1は、識別計数部11と、入金口12と、出金口13と、入金リジェクト口14と、一時保留部15と、搬送部16と、搬送異常検知センサ17、収納部18および集積部19等を備えている。
識別計数部11は、搬送部16によって搬送される紙幣を識別する紙幣識別ユニットである。具体的には、識別計数部11は、搬送部16によって搬送される紙幣に対して金種判定、真偽判定、正損判定、表裏判定といった各種の鑑別を行う。また、識別計数部11は、識別した紙幣を金種ごとに計数する処理も併せて行う。なお、真偽判定とは、紙幣が本物か偽物かを判定することを示し、正損判定とは、本物の紙幣のうち状態のよい紙幣(正券)か汚れや損傷がある紙幣(損券)かを判定することを示す。
入金口12は、装置の天面を凹状に窪ませて開口を形成したボックスであり、ボックス内またはその近傍に設けられたローラ等の繰り込み部によって入金紙幣を1枚ずつ装置内部の搬送部16へと繰り込む。なお、入金紙幣の繰り込み開始は、手動で行ってもよいし自動で行ってもよい。
出金口13は、入金口12と同様に開口が形成されたボックスであり、オペレータからの出金指示に応じて装置内部から投出される出金紙幣を集積する。また、本実施例において、出金口13は、リジェクト紙幣の出金先の1つとしても利用される。
入金リジェクト口14は、リジェクト紙幣を集積する出金口である。このように、本実施例に係る紙幣処理装置1では、リジェクト紙幣の出金先として、出金口13および入金リジェクト口14の2つの出金口を利用することとしている。そして、本実施例に係る紙幣処理装置1は、適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とをこれら2つの出金口へ区分けして出金する。かかる点の詳細については、後述する。
一時保留部15は、入金口12や出金口13と同様に開口が形成されたボックスであり、搬送部16によって搬送される紙幣を繰り入れて一時的に保留するとともに保留した紙幣を繰り出し可能な収納繰出部である。また、一時保留部15は、搬送部16によって搬送される紙幣をスイッチバックさせて搬送部16へ戻すことによって紙幣の表裏を反転させることができる。なお、一時保留部15の具体的な構成および動作については、図6を用いて後述する。
搬送部16は、紙幣を表裏両側から挟持して一枚ずつ搬送するベルトコンベアおよびかかるベルトコンベアの駆動部を含んだ搬送部である。具体的には、搬送部16は、識別計数部11、入金口12、出金口13、入金リジェクト口14、一時保留部15、後述するスタッカ18a〜18e、精査カセット18fおよび集積部19をベルトコンベアによって相互に接続し、これら各部の間で紙幣の搬送を行う。
また、ベルトコンベアの駆動部は、ベルトコンベアを駆動させるためのローラや搬送部16の各分岐点に設けられる経路切替部等を含んでいる。ここで、経路切替部は、搬送部16によって搬送される紙幣をそのまま搬送部16の下流側へ搬送させる位置と、搬送部16に接続される各部(たとえば、出金口13や入金リジェクト口14)へ搬送させる位置との間で揺動することで、紙幣を所望の場所へ投出させることができる。
搬送異常検知センサ17は、斜行や連鎖といった紙幣の搬送異常を検知するセンサであり、搬送部16に沿って複数設けられている。かかる搬送異常検知センサ17は、紙幣が搬送方向に対して所定量以上傾いている場合に紙幣が斜行状態であることを検知し、他の紙幣との間隔が所定間隔以下である場合に紙幣が連鎖状態であることを検知する。かかる搬送異常検知センサ17の具体的な検知手法については、図5を用いて後述する。
収納部18は、搬送部16によって搬送される紙幣を金種ごとに収納する複数のスタッカ18a〜18eと精査カセット18fとを有している。スタッカ18a〜18eは、紙幣を金種ごとに収納するカセット式の収納部である。また、スタッカ18a〜18eは、収納した紙幣を搬送部16へ繰り出すための繰出機構を備えている。また、各スタッカ18a〜18eには、満杯や故障といった収納異常を報知するランプ等のインジケータが設けられている。
ここで、本実施例では、スタッカ18aに千円札、スタッカ18bに二千円札、スタッカ18cに五千円札、スタッカ18dに一万円札がそれぞれ収納されるものとする。ただし、どのスタッカにどの金種の紙幣を収納するかは、オペレータによって任意に設定可能である。
精査カセット18fは、紙幣処理装置1に対して脱着可能な現金カセットであり、紙幣詰まりなどが原因でスタッカ18a〜18eの収納枚数が不確定となった場合にそのスタッカ18a〜18eの収納枚数を精査する際に利用される。なお、精査カセット18fは、スタッカ18a〜18eと同様に紙幣を収納するとともに収納した紙幣を搬送部16へ繰り出すこともできる。
集積部19は、収納部18とは異なり、紙幣の収納のみを行う収納部である。この集積部19には、たとえば、営業終了後において売上金等が収納されることとなる。
また、本実施例に係る紙幣処理装置1は、WAN(Wide Area Network)等のネットワーク3を介して上位端末2と相互に接続されている。上位端末2は、サーバや専用装置といった端末装置であり、紙幣処理装置1の管理を行う。たとえば、上位端末2は、識別計数部11による識別結果や計数結果をネットワーク3を介して受信し記憶する。また、上位端末2は、表示部を備えており、紙幣処理装置1からリジェクト情報を受信して表示部へ表示させることもできる。
次に、本実施例に係る紙幣処理装置1の機能構成について図3を用いて説明する。図3は、本実施例に係る紙幣処理装置1の機能構成を示すブロック図である。ここで、同図に示した鎖線は、搬送部16によって搬送される紙幣の流れを示している。なお、同図には、紙幣処理装置1の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
同図に示すように、本実施例に係る紙幣処理装置1は、識別計数部11と、出金口13と、入金リジェクト口14と、一時保留部15と、搬送部16と、搬送異常検知センサ17と、収納部18と、表示部20と、収納異常検知センサ21と、制御部22とを備えている。また、制御部22は、入金可否判定部22aと、入金処理部22bと、リジェクト原因特定部22cと、出金処理部22dとを備えている。
ここで、識別計数部11、出金口13、入金リジェクト口14、一時保留部15、搬送部16、搬送異常検知センサ17および収納部18については、図2において既に説明したため、ここでの説明は省略する。
表示部20は、各種情報を提示する表示デバイスである。たとえば、表示部20には、各リジェクト紙幣のリジェクト原因および各リジェクト紙幣の出金態様を含んだリジェクト情報が表示される。ここで、リジェクト紙幣の出金態様とは、リジェクト紙幣の出金先(たとえば、出金口13、入金リジェクト口14)や出金されるリジェクト紙幣の向き(たとえば、縦向き、横向き)などを示す。
なお、リジェクト情報は、紙幣処理装置1の表示部20に限らず、紙幣処理装置1と接続する上位端末2の表示部へ表示させてもよい。また、紙幣処理装置1の表示部20や上位端末2の表示部には、識別計数部11による識別結果や計数結果を表示させてもよい。
収納異常検知センサ21は、収納部18の収納異常を検知するセンサであり、各スタッカ18a〜18eにそれぞれ設けられている。具体的には、収納異常検知センサ21は、スタッカ18a〜18eが満杯となったことを収納異常として検知する。また、収納異常検知センサ21は、対応するスタッカが紙幣詰まり等によって紙幣を収納可能な状態ではなくなったことを収納異常として検知する。
制御部22は、入金可否判定、入金処理、リジェクト原因特定処理および出金処理等の処理を実行する処理部である。なお、制御部22は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、または、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
入金可否判定部22aは、識別計数部11による識別結果に基づいて紙幣の入金の可否を判定する処理部である。
たとえば、入金可否判定部22aは、識別計数部11によって紙幣が適正と識別された場合に、かかる紙幣の金種に対応するスタッカ18a〜18eの収納異常が収納異常検知センサ21によって検知されていなければ、かかる紙幣を入金可と判定する。そして、入金可否判定部22aは、紙幣を入金可と判定した場合には、入金処理の実行指示を識別計数部11によって識別された紙幣の金種に関する情報とともに入金処理部22bへ通知する。
一方、入金可否判定部22aは、識別計数部11によって紙幣が適正と識別された場合に、かかる紙幣の金種に対応するスタッカ18a〜18eの収納異常が収納異常検知センサ21によって検知されているならば、かかる紙幣を入金不可と判定する。かかる紙幣を収納すべきスタッカ18a〜18eが紙幣を収納可能な状態にないためである。
そして、入金可否判定部22aは、かかるリジェクト紙幣に関する識別計数部11の識別結果および収納異常検知センサ21の検知結果をリジェクト原因特定部22cに対して通知する。
また、入金可否判定部22aは、識別計数部11によって紙幣が適正と識別された場合であっても、かかる紙幣の金種が取り扱い対象外の金種である場合には、かかる紙幣を入金不可と判定する。そして、入金可否判定部22aは、かかるリジェクト紙幣に関する識別計数部11の識別結果をリジェクト原因特定部22cに対して通知する。なお、取り扱い対象外の金種としては、たとえば、自装置がUSドルのみを取り扱う場合には、USドル以外の金種が取り扱い対象外の金種となる。
また、入金可否判定部22aは、識別計数部11によって紙幣が偽券や損券あるいは識別不能券と識別された場合には、かかる紙幣を入金不可と判定する。そして、入金可否判定部22aは、かかるリジェクト紙幣に関する識別計数部11の識別結果および搬送異常検知センサ17の検知結果をリジェクト原因特定部22cに対して通知する。これは、識別不能券と識別された紙幣の中に、斜行や連鎖といった搬送異常によって識別不能とされた紙幣も含まれる場合があるためである。
入金処理部22bは、入金可否判定部22aからの指示に従って紙幣の入金処理を実行する処理部である。具体的には、入金処理部22bは、入金可否判定部22aから入金処理の実行指示を受け取ると、搬送部16の経路切替部を駆動させることによって紙幣を識別計数部11によって識別された金種に応じたスタッカ18a〜18eへ収納する。
リジェクト原因特定部22cは、入金可否判定部22aによって入金不可と判定されたリジェクト紙幣のリジェクト原因を特定する処理部である。
具体的には、リジェクト原因特定部22cは、入金可否判定部22aからリジェクト紙幣に関する識別計数部11の識別結果および収納異常検知センサ21の検知結果を受け取る。そして、リジェクト原因特定部22cは、受け取った情報において、リジェクト紙幣が適正な紙幣であり、かつ、リジェクト紙幣の金種に対応するスタッカ18a〜18eが収納異常状態であることが示されている場合に、かかるリジェクト紙幣のリジェクト原因が収納異常であると特定する。
また、リジェクト原因特定部22cは、入金可否判定部22aからリジェクト紙幣に関する識別計数部11の識別結果および搬送異常検知センサ17の検知結果を受け取る。そして、リジェクト原因特定部22cは、受け取った情報において、リジェクト紙幣が識別不能券であり、かつ、リジェクト紙幣の搬送状態が異常であったことが示されている場合に、かかるリジェクト紙幣のリジェクト原因が搬送異常であると特定する。
また、リジェクト原因特定部22cは、入金可否判定部22aからリジェクト紙幣に関する識別計数部11の識別結果を受け取る。そして、リジェクト原因特定部22cは、受け取った情報によって、リジェクト紙幣の金種が取り扱い対象外の金種であることが示されている場合に、かかるリジェクト紙幣のリジェクト原因が取り扱い対象外であると特定する。
そして、リジェクト原因特定部22cは、特定したリジェクト原因およびリジェクト紙幣の出金指示を出金処理部22dに対して通知する。
出金処理部22dは、リジェクト原因特定部22cから出金指示を受け取った場合に、リジェクト原因特定部22cによって特定されたリジェクト原因に基づいてリジェクト紙幣を区分けして出金する処理部である。
ここで、出金処理部22dによる出金処理の動作例について説明する。まず、収納異常によるリジェクト紙幣の出金先を区分けする場合の動作例について図4を用いて説明する。図4は、収納異常によるリジェクト紙幣の出金先を区分けする場合の動作例を示す図である。
なお、同図では、千円札用のスタッカ18aに収納異常が生じた場合を例に挙げて説明する。すなわち、同図では、収納異常によるリジェクト紙幣が千円札である場合について示している。また、同図の(A)には、出金処理部22dの動作例を示し、同図の(B)には、リジェクト情報の表示例を示し、同図の(C)には、収納異常によるリジェクト紙幣が再投入される様子を示している。
同図の(A)に示したように、入金口12に対して千円札を含む複数の紙幣が受け付けられたとする(同図の(A−1)参照)。かかる場合、紙幣処理装置1では、識別計数部11が、入金口12に投入された紙幣を1枚ずつ識別計数し(同図の(A−2)参照)、入金可否判定部22aが識別結果に基づいて紙幣の入金可否を判定する。
ここで、紙幣処理装置1では、入金可否判定部22aによって紙幣が入金可と判定された場合には、入金処理部22bが、かかる紙幣を金種に応じてスタッカ18a〜18eの何れかへ収納する(図示せず)。
一方、紙幣処理装置1では、入金可否判定部22aによって紙幣が入金不可と判定された場合に、リジェクト原因特定部22cが、かかるリジェクト紙幣のリジェクト原因を特定する。ここで、リジェクト原因特定部22cは、識別計数部11によって識別された紙幣が千円札であり、かつ、千円札用のスタッカ18aが満杯であることが収納異常検知センサ21によって検知されている場合には(同図の(A−3)参照)、かかる千円札のリジェクト原因が収納異常であると特定する。
そして、紙幣処理装置1では、リジェクト原因特定部22cによって特定されたリジェクト原因が収納異常であるリジェクト紙幣(すなわち、千円札)を入金リジェクト口14へ出金する(同図の(A−4)参照)。また、紙幣処理装置1では、収納異常以外のリジェクト原因によるリジェクト紙幣(たとえば、損券)を出金口13へ出金する(同図の(A−5)参照)。
これによって、収納異常によるリジェクト紙幣である千円札は、他のリジェクト原因によるリジェクト紙幣とは異なる出金先へ出金されることとなる。
つづいて、出金処理部22dは、同図の(B)に示したように、表示部20に対してリジェクト情報を表示させる。たとえば、出金処理部22dは、「千円札のスタッカが満杯です。回収してください。」といった情報や「回収後、入金リジェクト口の紙幣を再投入してください。」といった情報をリジェクト情報として表示部20に対して表示させる。このように、リジェクト情報には、リジェクト原因特定部22cによって特定されたリジェクト原因、リジェクト紙幣の出金先情報を含んだ出金態様等が含まれる。
そして、オペレータは、表示部20に対して表示されたリジェクト情報に従って、リジェクト紙幣の再入金作業を行うこととなる。具体的には、同図の(C)に示したように、オペレータは、千円札に対応するスタッカ18aから紙幣を回収したのち(同図の(C−1)参照)、入金リジェクト口14に出金された千円札を取り出して入金口12へ再投入する(同図の(C−2)参照)。この結果、入金口12へ再投入された千円札は、入金可否判定部22aによって入金可と判定されて千円札用のスタッカ18aへ収納されることとなる(同図の(C−3)参照)。
なお、オペレータは、満杯となったスタッカ18a〜18eから紙幣を回収する際、あるいは、故障したスタッカ18a〜18eを交換する場合には、各スタッカ18a〜18eに設けられたインジケータを確認することで、どのスタッカ18a〜18eが収納異常となっているかを容易に把握することができる。また、スタッカ18a〜18eの収納異常は、インジケータで報知する場合に限らず、紙幣処理装置1と接続する上位端末2から報知してもよい。
このように、リジェクト原因特定部22cが、リジェクト紙幣が識別計数部11によって適正と識別されており、かつ、リジェクト紙幣の金種に対応する収納部18の異常が収納異常検知センサ21によって検知されている場合に、リジェクト紙幣のリジェクト原因が収納異常であると特定し、出金処理部22dが、リジェクト原因が収納異常であると特定されたリジェクト紙幣を他のリジェクト原因のリジェクト紙幣と区分けして出金することとした。したがって、適正な紙幣であるにもかかわらず収納部の異常によって入金不可とされてしまったリジェクト紙幣の再入金作業を効率的に行うことができる。
また、出金処理部22dが、リジェクト原因特定部22cによって特定されたリジェクト原因をリジェクト紙幣の出金先を示す情報を含んだ出金態様とともに所定の報知手段を用いて報知することとしたため、リジェクト紙幣の再入金作業をより効率的に行うことができる。
なお、同図の(B)では、収納異常によるリジェクト紙幣のリジェクト情報のみを表示する場合について説明したが、出金処理部22dは、他のリジェクト紙幣に関するリジェクト情報も表示させてもよい。また、出金処理部22dは、かかるリジェクト情報をネットワーク3を介して接続される上位端末の表示部に対して表示させてもよい。
つづいて、搬送異常によるリジェクト紙幣の出金先を区分けする場合の動作例について図5を用いて説明する。図5は、搬送異常によるリジェクト紙幣の出金先を区分けする場合の動作例を示す図である。なお、同図の(A)には、搬送異常検知センサ17の検知手法について示し、同図の(B)には、出金処理部22dの動作例について示している。
同図の(A)に示すように、搬送異常検知センサ17は、搬送部16の搬送方向と直行する向きに配置された複数のセンサ17a〜17cを含んで構成され、これらのセンサ17a〜17cを用いて紙幣の斜行や連鎖といった搬送異常を検知する。
たとえば、同図の(A−1)に示したように、搬送異常検知センサ17は、紙幣通過時におけるセンサ17a〜17cの検知結果の時間変化を観察することによって紙幣の傾きを割り出すことができる。そして、搬送異常検知センサ17は、割り出した紙幣の傾きが所定量以上である場合に、かかる紙幣が斜行状態であることを検知する。
また、同図の(A−2)に示したように、搬送異常検知センサ17は、センサ17a〜17cが紙幣を検知してから次の紙幣を検知するまでの時間から紙幣同士の間隔を割り出す。そして、搬送異常検知センサ17は、割り出した間隔が所定間隔以下である場合に、かかる紙幣が連鎖状態であることを検知する。たとえば、搬送異常検知センサ17は、紙幣間隔が60mm以下である場合に、連鎖状態であることを検知する。
このように、搬送異常検知センサ17は、紙幣が搬送方向に対して所定量以上傾いている場合に紙幣が斜行状態であることを検知し、他の紙幣との間隔が所定間隔以下である場合に紙幣が連鎖状態であることを検知する。
一方、リジェクト原因特定部22cは、リジェクト紙幣が識別計数部11によって識別不能券と識別されており、かつ、かかるリジェクト紙幣の搬送異常が搬送異常検知センサ17によって検知されている場合に、かかるリジェクト紙幣のリジェクト原因が搬送異常であると特定する。
そして、出金処理部22dは、同図の(B)に示したように、リジェクト原因特定部22cによってリジェクト原因が搬送異常であると特定されたリジェクト紙幣を入金リジェクト口14へ出金する(同図の(B−1)参照)。また、紙幣処理装置1では、リジェクト原因が搬送異常以外であるその他のリジェクト紙幣を出金口13へ出金する(同図の(B−2)参照)。
このように、リジェクト原因特定部22cが、リジェクト紙幣が識別計数部11によって不適正と識別されており、かつ、かかるリジェクト紙幣の搬送異常が搬送異常検知センサ17によって検知されている場合に、リジェクト原因を搬送異常と特定し、出金処理部22dが、前記リジェクト原因が搬送異常であると特定されたリジェクト紙幣を他のリジェクト原因のリジェクト紙幣と区分けして出金することとした。したがって、斜行や連鎖といった搬送異常が原因でたまたま入金不可とされてしまったリジェクト紙幣の再入金作業を効率的に行うことができるという効果を奏する。
また、図4および図5を用いて説明してきたように、出金処理部22dが、リジェクト原因が所定のリジェクト原因に該当する第1のリジェクト紙幣(たとえば、適正リジェクト紙幣)を一の出金口へ出金し、所定のリジェクト原因に該当しない第2のリジェクト紙幣(たとえば、不適正リジェクト紙幣)を他の出金口へ出金することとした。したがって、再度の投入によって入金可能な適正リジェクト紙幣と何度投入しても入金される可能性のない不適正リジェクト紙幣とが異なる出金口へ出金されるため、適正リジェクト紙幣の再入金作業を効率的に行うことができる。
ところで、これまでは、出金口を複数設定し、リジェクト紙幣を何れかの出金口に振り分けて出金させることで、リジェクト紙幣を区分けする場合ついて説明してきたが、これに限ったものではない。たとえば、出金処理部22dは、出金口が1つであってもリジェクト紙幣を区分けして出金することができる。以下では、かかる点について説明する。
まず、リジェクト紙幣の表裏の向きを変えて出金させることによって、リジェクト紙幣を区分けする場合について説明する。かかる場合、出金処理部22dは、一時保留部15を利用してリジェクト紙幣の表裏の向きを適宜変えながら出金処理を行うこととなる。
ここで、一時保留部15による表裏反転処理の動作例について図6を用いて説明しておく。図6は、一時保留部による表裏反転処理の動作例を示す図である。なお、同図の(A)には、紙幣を一時保留部15へ繰り入れる場合の動作例を示し、同図の(B)には、一時保留部15から紙幣を繰り出す場合の動作例を示している。
同図の(A)に示したように、一時保留部15は、スイッチバック経路15aと、テープ式巻取部15bとを備える。スイッチバック経路15aは、搬送部16から分岐する経路であり、搬送部16とテープ式巻取部15bとを接続している。ここで、搬送部16を搬送される紙幣は、スイッチバック経路15aへ一旦引き込まれたのち再度搬送部16へ繰り出される(すなわち、スイッチバックされる)ことによって、表裏が反転した状態で搬送部16へ戻されることとなる。なお、スイッチバック経路15aは、搬送部16と入金リジェクト口14とを接続する経路でもある。
テープ式巻取部15bは、回転ドラム151と、上部プーリ152と、下部プーリ153と、テープ154,155とを含んで構成される。回転ドラム151は、正逆回転自在に軸支された回転部材であり、周縁には2つのテープ154,155が巻き付けられている。また、上部プーリ152は、2つのテープ154,155のうち、テープ154を巻き取る部材であり、下部プーリ153は、テープ155を巻き取る部材である。
テープ式巻取部15bに紙幣を保留させる場合には、回転ドラム151が正方向(同図の(A)に示した矢印方向)に回転し、スイッチバック経路15aを介して繰り込まれる紙幣をテープ154,155間に挟み込んだ状態で回転ドラム151の周面に巻き付けて保持する(同図の(A−1)〜(A−3)参照)。
一方、テープ式巻取部15bから紙幣を繰り出す場合には、同図の(B)に示したように、回転ドラム151が逆方向(同図の(B)に示した矢印方向)に回転し、テープ154,155間に挟持されていた紙幣をスイッチバック経路15aへ繰り出す。そして、テープ式巻取部15bによってスイッチバック経路15aへ繰り出された紙幣は、搬送部16から繰り入れられたときと表裏が反転した状態で搬送部16へと戻される(同図の(B−1)〜(B−3)参照)。
このように、一時保留部15は、スイッチバック経路15aへ引き入れられた紙幣をテープ式巻取部15bを用いて一時的に保留することができる。また、一時保留部15は、一時的に保留した紙幣をスイッチバックさせて再び搬送部16へと戻すことによって紙幣の表裏を反転させることができる。
つづいて、かかる一時保留部15を利用してリジェクト紙幣を区分けする場合の動作を図7を用いて説明する。図7は、一時保留部15を利用してリジェクト紙幣を区分けする場合の動作例を示す図である。
ここで、同図では、リジェクト原因特定部22cによってリジェクト原因が搬送異常や収納異常であると特定された適正リジェクト紙幣を表向きで、その他の不適正リジェクト紙幣を裏向きで入金リジェクト口へ出金させる場合を例に挙げて説明する。なお、同図の(A)には、出金処理部22dの動作例を示し、同図の(B)には、一時保留部15の動作例を示している。
同図の(A)に示したように、出金処理部22dは、適正リジェクト紙幣のうち、識別計数部11によって表向きと判定された適正リジェクト紙幣を入金リジェクト口14へ出金する。同様に、出金処理部22dは、不適正リジェクト紙幣のうち、識別計数部11によって裏向きと判定された不適正リジェクト紙幣も入金リジェクト口14へ出金する(同図の(A−1)参照)。
また、出金処理部22dは、適正リジェクト紙幣のうち、識別計数部11によって裏向きと判定された適正リジェクト紙幣を一時保留部15を用いて一時保留する。同様に、出金処理部22dは、不適正リジェクト紙幣のうち、識別計数部11によって表向きと判定された不適正リジェクト紙幣も一時保留部15を用いて一時保留する(同図の(A−2)参照)。
つづいて、紙幣処理装置1では、一時保留部15が、一時保留していた適正リジェクトおよび不適正リジェクト紙幣を表裏を反転させたうえで入金リジェクト口14へ繰り出す(同図の(B−1)参照)。これによって、一時保留部15によって一時保留されていた適正リジェクト紙幣は、表向きに反転されて入金リジェクト口14へ出金されることとなる。同様に、一時保留部15によって一時保留されていた不適正リジェクト紙幣も、裏向きに反転されて入金リジェクト口14へ出金されることとなる(同図の(B−2)参照)。
この結果、入金リジェクト口14には、適正リジェクト紙幣が表向きで、不適正リジェクト紙幣が裏向きで集積される。
このように、出金処理部22dが、第1のリジェクト紙幣(たとえば、適正リジェクト紙幣)を表向きまたは裏向きの何れかの向きで出金することを決定するとともに、第2のリジェクト紙幣(たとえば、不適正リジェクト紙幣)を第1のリジェクト紙幣とは逆向きで出金することを決定する。また、一時保留部15が、識別計数部11によって識別された表裏の向きと出金処理部22dによって決定された表裏の向きとが異なる場合に、リジェクト紙幣の表裏を反転させたうえでかかるリジェクト紙幣を出金することとした。
したがって、再度の投入によって入金可能な適正リジェクト紙幣と何度投入しても入金されることのない不適正リジェクト紙幣とを異なる向きで出金させることができる結果、適正リジェクト紙幣の再入金作業を効率的に行うことができる。
なお、ここでは、一時保留部15を表裏反転のために利用する場合について説明したが、一時保留部15をリジェクト紙幣を一時保留する用途で利用してもよい。たとえば、全ての適正リジェクト紙幣を一時保留部15に一時保留させるとともに、全ての不適正リジェクト紙幣を入金リジェクト口14へ出金させる。そして、その後、一時保留部15に一時保留させた適正リジェクト紙幣を入金リジェクト口14へ出金させることとしてもよい。これによって、適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とを並び替えによって区分けして出金することができる。
また、ここでは、リジェクト紙幣を入金リジェクト口14へ出金することとしたが、これに限らず、リジェクト紙幣を出金口13へ出金することとしてもよいし、入金リジェクト口14および出金口13の両方へ出金することとしてもよい。また、一時保留部15を用いてリジェクト紙幣を一時保留し、入金口12内の全ての紙幣を投出し終えた後に、一時保留部15に一時保留していたリジェクト紙幣を入金口12へ出金してもよい。
つづいて、リジェクト紙幣を左右方向にずらして出金したり、縦横の向きを変えて出金したりすることによってリジェクト紙幣を区分けする場合について図8を用いて説明する。図8は、出金処理部22dの他の動作例を示す図である。なお、同図の(A)には、リジェクト紙幣を左右方向にずらして出金する場合の動作例を示し、同図の(B)には、リジェクト紙幣の縦横の方向を変えて出金する場合の動作例を示している。
同図の(A)に示したように、入金リジェクト口14近傍の搬送部16上には、経路切替部23が設けられている。かかる経路切替部23は、搬送される紙幣を搬送部16に対して直進させる直進経路と、搬送される紙幣を直進経路と直行する方向(左右方向)にずらしたうえで直進させるずらし経路との間で経路の切り替えを行う。
そして、出金処理部22dは、不適正リジェクト紙幣を出金させる場合には、かかる不適正リジェクト紙幣を直進経路で搬送させるよう経路切替部23に対して指示する。この結果、不適正リジェクト紙幣は、搬送部16に沿って直進して入金リジェクト口14へ出金される(同図の(A−1)参照)。
一方、出金処理部22dは、適正リジェクト紙幣を出金させる場合には、かかる適正リジェクト紙幣をずらし経路で搬送させるよう経路切替部23に対して指示する。この結果、経路切替部23によってずらし経路への切り替えが行われ、適正リジェクト紙幣は、ずらし経路に沿って左右方向にずらされて入金リジェクト口14へ出金される(同図の(A−2)参照)。
この結果、適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とは、入金リジェクト口14に左右方向がずれた状態で集積されることとなる(同図の(A−3)参照)。
また、同図の(B)に示したように、入金リジェクト口14近傍の搬送部16上には、ピンチローラ24を設けてもよい。具体的には、ピンチローラ24は、搬送方向と直行する方向に沿って2つのローラを備えており、紙幣の通過時に一方のローラを用いて紙幣を挟持することによって斜行状態の矯正等を行うことができる。
そして、出金処理部22dは、不適正リジェクト紙幣を出金させる場合には、これら2つのローラを何れも非挟持状態とするようピンチローラ24に対して指示する。この結果、不適正リジェクト紙幣は、長手方向と搬送方向とが直行した状態で入金リジェクト口14へ出金される(同図の(B−1)参照)。
一方、出金処理部22dは、適正リジェクト紙幣を出金させる場合には、これら2つのローラの何れか一方を所定時間だけ所定の力で挟持状態とするようピンチローラ24に対して指示する。この結果、適正リジェクト紙幣は、ローラに挟持された部分を始点として90度回転したのち、短手方向と搬送方向とが直行した状態で入金リジェクト口14へ出金される(同図の(B−2)参照)。なお、ここで言う「所定時間」とは、たとえば、紙幣が90度回転するまでの時間であり、「所定の力」とは、たとえば、紙幣を破ることなく回転させることができる程度の力である。
この結果、適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とは、入金リジェクト口14に縦横の方向が異なった状態で集積されることとなる(同図の(B−3)参照)。
このように、リジェクト紙幣を左右方向にずらしたり縦横の向きを変えたりすることによってもリジェクト紙幣を区分けすることができる。
この他、紙幣処理装置1では、搬送部16上に印字部を設け、不適正リジェクト紙幣に対してのみ所定の印字を行ったうえで出金させるようにしてもよい。これによっても適正リジェクト紙幣と不適正リジェクト紙幣とを区分けして出金することができる。かかる場合に、不適正リジェクト紙幣に対してリジェクト原因を印字することとすれば、不適正リジェクト紙幣が偽券であるか損券であるかといったことを容易に把握することができる。
次に、本実施例に係る紙幣処理装置1の具体的動作について図9を用いて説明する。図9は、本実施例に係る紙幣処理装置1の処理手順を示すフローチャートである。なお、同図では、一例として、収納異常によるリジェクト紙幣を他のリジェクト紙幣と区分けして出金する場合について示している。
同図に示すように、本実施例に係る紙幣処理装置1では、識別計数部11が紙幣の識別処理を行うと(ステップS101)、入金可否判定部22aが、入金の可否を判定する(ステップS102)。つづいて、紙幣処理装置1では、入金可否判定部22aが、紙幣を入金可と判定した場合に(ステップS103、Yes)、入金処理部22bが、識別結果に応じて紙幣を金種ごとのスタッカ18a〜18eへ収納する(ステップS104)。
一方、紙幣処理装置1では、入金可否判定部22aが、紙幣を入金不可と判定した場合には(ステップS103、No)、リジェクト原因特定部22cが、かかるリジェクト紙幣のリジェクト原因を特定する(ステップS105)。
つづいて、紙幣処理装置1では、リジェクト原因特定部22cが、リジェクト原因が収納異常であるか否かを判定し(ステップS106)、リジェクト原因が収納異常であると判定した場合には(ステップS106、Yes)、出金処理部22dが、かかるリジェクト紙幣を入金リジェクト口14へ出金する(ステップS107)。
一方、リジェクト原因が収納異常ではない場合には(ステップS106、No)、出金処理部22dは、かかるリジェクト紙幣を出金口13へ出金する(ステップS108)。
ステップS104、S107またはステップS108の処理を終えると、紙幣処理装置1では、入金口12へ投入された全ての紙幣を識別済みか否かを判定し(ステップS109)、識別済みでない場合には(ステップS109、No)、ステップS101〜S109までの処理を繰り返す。
一方、紙幣処理装置1では、入金口12へ投入された全ての紙幣を識別済みであると判定した場合には(ステップS109、Yes)、投入された紙幣の中に収納異常によるリジェクト紙幣が含まれていたか否かを判定する(ステップS110)。そして、紙幣処理装置1では、収納異常によるリジェクト紙幣が含まれていると判定した場合には(ステップS110、Yes)、リジェクト情報を表示部20に対して表示させて(ステップS111)、処理を終了する。また、紙幣処理装置1では、収納異常によるリジェクト紙幣が含まれていない場合には(ステップS110、No)、そのまま処理を終了する。
上述してきたように、本実施例では、識別計数部が、投入された紙幣を識別し、入金可否判定部が、識別計数部による紙幣の識別結果に基づいて紙幣の入金の可否を判定し、リジェクト原因特定部が、入金可否判定部によって入金不可と判定されたリジェクト紙幣のリジェクト原因を特定し、出金処理部が、リジェクト原因特定部によって特定されたリジェクト原因に基づいてリジェクト紙幣を区分けして出金することとしたため、リジェクト紙幣の再入金作業を効率的に行うことができる。
なお、図9では、収納異常によるリジェクト紙幣が存在する場合にのみリジェクト情報を表示することとしたが、これに限ったものではなく、リジェクト紙幣が存在する場合には、常にリジェクト情報を表示することとしてもよい。
また、上述してきた実施例では、表裏判定手段の一例として一時保留部15を用いて説明したが、これに限ったものではなく、スタッカ18a〜18eの何れかを表裏反転手段として利用してもよい。
また、上述してきた実施例では、いわゆるテープ式の収納部であるテープ式巻取部15bを用いて紙幣を一時的に保留するとともに再度搬送部16へ繰り出す場合について説明したが、保留した紙幣を再度繰り出し可能であればよく、たとえば、スタッカ18a〜18eと同様にスタッカ式の収納部を用いてもよい。
ところで、搬送部16のジャムや破損といった障害から紙幣処理装置1を復旧させた場合や、搬送部16の保守点検等を行う場合に、紙幣またはダミー紙幣を投入し搬送部16上を一巡させることによって、搬送部16に残留紙幣等の有無や破損といった不具合が存在するか否かを判定する技術が知られている。
一方、図2に示したように、本実施例に係る紙幣処理装置1は、搬送部16がループ状となっている。そこで、本実施例に係る紙幣処理装置1では、紙幣またはダミー紙幣を単に一巡させるのではなく、搬送部16を複数回周回させることによって、搬送部16の搬送状態等を統計的に判断することができる。
たとえば、保守点検時においてオペレータが紙幣またはダミー紙幣を入金口12から1枚投入すると、紙幣処理装置1は、投入された紙幣またはダミー紙幣を搬送部16上で複数回周回させる。また、紙幣処理装置1は、搬送部16上の各点に設けられた搬送異常検知センサ17を用いて1周ごとの蛇行や斜行、周回時間等を測定する。
そして、紙幣処理装置1は、1週ごとの測定結果の平均値等を算出し、算出した平均値等を用いて搬送部16の不具合等を特定して、特定した不具合等をアラート情報として表示部20等に対して表示させる。たとえば、紙幣処理装置1では、アラート情報として、ベルトやプーリの磨耗・破損、異物混入あるいは紙幣ガイドの破損等を表示部20等に対して表示させる。
このように、紙幣またはダミー紙幣を搬送させて搬送部16の不具合等を特定する場合に、紙幣またはダミー紙幣を複数回周回させてその統計値を利用することとしたため、搬送部16の不具合等をより精度良く特定することができる。
なお、紙幣処理装置1は、使用されていないスタッカにダミー紙幣を収納しておき、所定期間ごとにかかるスタッカからダミー紙幣を繰り出して上記のような保守点検処理を行うこととしてもよい。これによって、オペレータの手を煩わせることなく保守点検処理を実行することができる。
ところで、識別計数部11のような紙幣識別ユニットは、汎用性を持たせるため、紙幣処理装置とは別体で製造されることが一般的である。ここで、紙幣識別ユニットでは、たとえば「US,シリーズ0,$10」のように、「国」と「シリーズ」と「金種」とを含んだ識別機コードを紙幣の識別結果として生成して紙幣処理装置の制御部へ出力する。また、紙幣処理装置側でも、紙幣識別ユニットから入力された識別機コードをそのまま用いて入金処理等の各種処理を実行する場合が多い。
しかしながら、紙幣処理装置1では、処理時間に制約があり、識別機コードのように多くの情報を含んだコードを取り扱うこととすると、既定時間内に処理が完了しないおそれがある。
そこで、本実施例では、識別計数部11が識別機コードよりも単純でデータ容量の小さい他のコードを用いて制御部22へ出力することとしてもよい。以下では、かかる点について図10を用いて説明する。図10は、処理機コードに基づいて入出金処理を行う場合について説明するための図である。
なお、同図の(A)には、処理機コードに基づく入出金処理の概要を示し、同図の(B)には、処理機コードと識別機コードとの対応テーブルの一例を示し、同図の(C)には、処理機コードに基づく入金処理の動作例を示している。
同図の(A)に示したように、識別計数部11は、紙幣の識別処理を行うと、識別結果を識別機コードではなく処理機コードで紙幣処理装置1の制御部22へ出力する(同図の(A−1)参照)。そして、制御部22は、識別計数部11から入力された処理機コードに基づいて入金処理を行う。また、制御部22は、上位端末2等からの出金指示を処理機コードで受けた場合には、処理機コードに基づいて出金処理を行う(同図の(A−2)参照)。
ここで、紙幣処理装置1は、処理機コードと識別機コードとの対応関係を示した対応テーブルを記憶している。たとえば、同図の(B)に示したように、対応テーブルには、識別機コード「US,シリーズ0,$1」が、処理機コード「1」と対応づけられ、識別機コード「US,シリーズ0,$5」が、処理機コード「2」と対応づけられている。なお、かかる対応テーブルは、たとえば上位端末2によって作成され、紙幣処理装置1にダウンロードされるものとする。
また、識別計数部11は、識別コード「US,シリーズ0,$1」と識別コード「US,シリーズ1,$1」のように、国および金種が同一でシリーズのみが異なる紙幣も区別して識別する。かかる場合、処理機コードは、シリーズのみが異なる同一金種の紙幣(たとえば、新1ドル札と旧1ドル札)のそれぞれに対して割り当てられることとなる。すなわち、ここでは、紙幣処理装置1が、新旧紙幣を区別して処理することとなる。
たとえば、同図の(C)に示したように、識別計数部11が「US,シリーズ0,$1」の紙幣を識別すると、処理機コード「1」が識別計数部11から制御部22へ出力され、制御部22が、かかる紙幣を処理機コード「1」に対応するスタッカAへ収納させる(同図の(C−1)参照)。一方、識別計数部11が「US,シリーズ1,$1」の紙幣を識別した場合には、処理機コード「7」が識別計数部11から制御部22へ出力され、制御部22が、かかる紙幣を処理機コード「7」に対応するスタッカBへ収納させる(同図の(C−1)参照)。
このように、識別計数部11が、識別機コードと比較してデータ容量の小さい処理機コードで識別結果を制御部22へ出力し、制御部22が、処理機コードを用いて入出金処理を行うこととした。これによって、紙幣処理装置1内部で処理するデータや、紙幣処理装置1と上位端末2との間で送受信されるデータの容量が小さくなる結果、処理速度を高めることができる。したがって、処理時間に厳しい制約がある場合であっても、既定時間内に処理が完了させることができる。
また、対応テーブルを変更するだけで、紙幣の改札や識別計数部11の変更等にも容易に対応することが可能となる。
なお、シリーズの古い旧紙幣(ここでは、シリーズ0の紙幣)を出金用の紙幣として使用せずに回収しておきたい場合には、図10の(C)に示したように、シリーズの古い紙幣を収納するスタッカAを入金専用のスタッカとすればよい。
また、同図では、新旧紙幣を区別して処理する場合について説明したが、これらは紙幣の価値としては同等であるため、これら新旧紙幣を区別せずに処理することとしてもよい。以下では、かかる点について図11を用いて説明する。図11は、新旧紙幣を区別せずに処理する場合について説明するための図である。なお、同図の(A)には、旧紙幣の処理機コードを新紙幣の処理機コードへ置換するための置換テーブルの一例を示し、同図の(B)には、置換後の処理機コードに基づく入金処理の動作例を示している。
同図の(A)に示したように、紙幣処理装置1は、置換テーブルを記憶している。かかる置換テーブルは、旧紙幣の処理機コード(置換前処理機コード)と新紙幣の処理機コード(置換後処理機コード)とを対応付ける情報である。たとえば、置換テーブルには、旧紙幣の処理機コード「1」と新紙幣の処理機コード「7」とが対応付けられている。
なお、同図の(A)に示した置換テーブルも図10の(B)に示した対応テーブルと同様、上位端末2によって作成され、紙幣処理装置1へダウンロードされるものである。このように、紙幣処理装置1および上位端末2間で対応テーブルや置換テーブルを共通化することによって、紙幣処理装置1が入金結果を上位端末2へ通知する場合の情報変換や上位端末2から紙幣処理装置1への出金指示情報の情報変換が容易となる。また、入金結果や出金指示の内容の妥当性確認も容易に行うことができる。
紙幣処理装置1では、同図の(B)に示したように、識別計数部11が、旧紙幣である「US,シリーズ0,$1」の紙幣を識別すると(同図の(B−1)参照)、処理機コード「1」が識別計数部11から制御部22へ出力される。また、紙幣処理装置1では、制御部22が、処理機コード「1」を置換テーブルに従って処理機コード「7」へ置換する(同図の(B−2)参照)。そして、紙幣処理装置1では、制御部22が、旧紙幣「US,シリーズ0,$1」を置換後の処理機コード「7」に対応するスタッカBへ収納させる(同図の(B−3)参照)。
また、紙幣処理装置1では、受け付けた紙幣が新紙幣「US,シリーズ1,$1」である場合には、図10の(C)に示した場合と同様に、かかる新紙幣を処理機コード「7」に対応するスタッカBへ収納させる。この結果、スタッカBには、新旧紙幣が区別されることなく収納されることとなる(同図の(B−4)参照)。