以下に添付図面を参照して、この発明に係る紙幣処理装置について詳細に説明する。本発明は、紙幣及び硬貨のいずれにも適用可能な技術であるが、本実施形態では紙幣を対象に説明を行う。また、紙幣処理装置には、複数の一時保留部を備えるものと単一の一時保留部を備えるものがあるが、本発明はいずれの紙幣処理装置によっても実現することができる。以下では、実施例1で複数の一時保留部を備える場合について説明し、実施例2で単一の一時保留部を備える場合について説明する。
図1は、本実施例に係る紙幣処理装置1の構成概略を示す断面模式図である。紙幣処理装置1は、装置内に紙幣を投入するための入金部11と、装置内から紙幣を投出するための出金部12と、リジェクト紙幣を収納するためのリジェクト部13と、紙幣の金種、真偽、正損及び表裏を識別するための識別部30と、識別部30による識別結果に基づいて紙幣を分類収納するためのスタッカ21a〜21cと、同様に識別結果に基づいて紙幣を分類収納したりスタッカ21a〜21cへの紙幣の補充やスタッカ21a〜21cからの紙幣の回収に利用するための着脱式のカセット20a及び20bと、反転ルート及び非反転ルートから成り紙幣の表裏を揃えるための表裏反転部40と、これら各部の間で紙幣を搬送するための搬送部50とを備える。
また、カセット20a及び20bと、スタッカ21a〜21cとは、上部に専用の一時保留部60a〜60eを有している。カセット20a及び20bと、スタッカ21a〜21cと、一時保留部60a〜60eとは、搬送部50によって搬送される紙幣の内部への収納と、内部に収納されている紙幣の搬送部50への繰り出しとが可能な紙幣収納・繰出部として動作する。
図2は、紙幣処理装置1の概要を示す機能ブロック図である。紙幣処理装置1は、図1に示した構成に加えて、各部の動作を制御する制御部10と、各部の制御に必要な情報を保存するための記憶部70と、各部の状態、処理内容及び処理結果等に係る情報を表示したり該表示を確認しながら各処理に係る設定操作や指示操作を行うための表示操作部80とを備える。
制御部10は、表示操作部80による設定操作や指示操作を受けることに加えて、上位端末90からの設定命令や指示命令を受信することもできる。以下に説明する紙幣処理は、制御部10が、表示操作部80や上位端末90から受信した命令に基づいて、各部11〜70の動作を制御することによって実現される。
また、制御部10は、識別部30による各紙幣の識別結果を記憶部70に保存する。例えば、カセット20a及び20b、スタッカ21a〜21c及び各一時保留部60a〜60eに収納された紙幣の金種、正損、表裏及び枚数に関する情報が、記憶部70に保存される。制御部10は、必要に応じて、処理中の紙幣に関する情報、出金部12へ投出された紙幣に関する情報、装置に投入された全ての処理対象紙幣に関する情報等を表示操作部80に表示する。これにより、紙幣処理装置1の利用者は、紙幣処理装置1における紙幣処理の状況や、処理中の紙幣に関する情報、出金部に投出された紙幣の情報等を容易に確認することができる。
紙幣処理装置1は、図1及び図2に示す構成を有することにより、紙幣の入金処理や出金処理を行うことができる。入出金処理に係る装置各部の機能及び動作については、例えば、特開2009−151354号公報に開示された従来装置と同様であるため、詳細な説明は省略することとし、以下では、本実施例に係る紙幣の整理計数処理について説明を続ける。
紙幣処理装置1は、複数金種モード及び単金種モードの2つの動作モードのうち、表示操作部80又は上位端末90から受けた指示に基づいて、選択された動作モードで整理計数処理を行うことができる。ここで、単金種モードとは、従来装置と同様に、単一金種の紙幣の整理計数処理を行う動作モードである。また、複数金種モードとは、複数金種の紙幣の整理計数処理を行うモードである。
まず、複数金種モードでの整理計数処理について説明する。図3は、表裏反転部40を利用して、複数金種モードで整理計数処理を行う場合の紙幣処理について説明する図である。なお、整理計数処理は、カセット20a及び20bと、スタッカ21a〜21cとを利用することなく行われる処理であるため、図3ではこれらの図示を省略している。
入金部11に、複数金種の紙幣が混在する紙幣束が載置されると、紙幣束の紙幣が1枚ずつ装置内へ繰り出される。入金部11から繰り出された紙幣は、搬送部50によって、図3(a)に示すように搬送される。各紙幣は、表裏反転部40の非反転ルートを経て識別部30に搬送され、ここで金種、真偽、正損及び表裏の識別処理が行われる。そして、各紙幣は、識別結果に基づいて、対応する一時保留部60b〜60eに収納される。具体的には、紙幣の表裏によらず金種のみに基づいて、二千円券は一時保留部60bに、千円券は一時保留部60cに、五千円券は一時保留部60dに、万円券は一時保留部60eに分類して収納される。
なお、一時保留部60a〜60eに収納される紙幣の金種や表裏等の情報は、予め設定され記憶部70に保存されているが、表示操作部80や上位端末90を利用して設定を変更することもできる。また、整理計数処理時に各一時保留部60a〜60eに収納する紙幣の種類の設定は、整理計数処理用の専用設定とすることもできるし、カセット20a及び20bとスタッカ21a〜21cに入出金処理時に収納される紙幣の金種等が設定され、これを整理計数処理にも利用できる場合には、この入出金処理用の設定を利用してもよい。このように、複数金種モードで処理対象とする紙幣の金種等が設定されると、この設定に含まれない紙幣は、処理対象外紙幣として出金部12へ搬送される。
識別部30によって偽券と識別された紙幣や識別できなかった紙幣等、所定条件に合致する紙幣はリジェクト部13に搬送されて収納されるが、該所定条件についても、予め設定され記憶部70に保存されている。例えば、市場で再利用できない損券はリジェクトしながら正券のみを整理計数処理の対象としたい場合には、リジェクト条件をそのように設定することで損券をリジェクト部13に搬送して収納することができる。
こうして、入金部11に載置された全ての紙幣が、対応する一時保留部60b〜60eに金種別に分類して収納されると、図3(b)に示すように、各一時保留部60b〜60eに収納された紙幣を出金部12に投出する処理が開始される。
例えば、表示操作部80に紙幣の識別計数処理が完了した旨の情報が表示され、該表示を確認した利用者が表示操作部80を操作すると、出金部12及び搬送部50に紙幣が残存しないことが確認された後、所定枚数の万円券が、一時保留部60eから繰り出されて出金部12へ投出される。
このとき、図3(b)に実線で示したように、表券は表裏反転部40の非反転ルートを経てそのままの状態で出金部12へ搬送される。これに対して、裏券は、図3(b)に一点鎖線で示したように、表裏反転部40の反転ルートを経て表裏が反転され、表券の状態にしてから出金部12へ搬送される。これにより、表裏が揃った状態で万円券を出金部12に投出することができる。なお、表券とは紙幣の表面を上方に向けた状態を言い、裏券とは紙幣の裏面を上方に向けた状態を言う。
例えば、紙幣を金種別に100枚ずつ投出するように設定されている場合には、一時保留部60eから繰り出された100枚の万円券が出金部12へ投出された時点で紙幣の投出が停止される。そして、利用者が、出金部12から紙幣を取り除き、表示操作部80を操作すると、一時保留部60eからの万円券の投出が再開される。万円券を100枚ずつ投出する処理を繰り返して、一時保留部60eに残った万円券の枚数が100枚に満たない状態になると、端数の万円券が全て出金部12へ投出されると共に、表示操作部80には投出された端数の万円券の枚数が表示される。この表示によって、利用者は、投出された万円券が100枚に満たないことを認識することができる。
こうして全ての万円券の投出が完了すると、これを示す情報が表示操作部80に表示される。利用者が該表示を確認して出金部12から端数の万円券を取り除き、表示操作部80を操作すると、次に、一時保留部60dから五千円券が繰り出され、万円券の場合と同様に表裏を揃えた状態で出金部12へ投出される。各金種の紙幣について、このような処理を繰り返すことにより、一時保留部60b〜60eに収納された全ての紙幣を、金種別に所定枚数ずつ、出金部12に投出させることができる。
なお、入金部11に載置された紙幣束の全てを一時保留部60b〜60eに収納した後に出金部12への投出を開始する他、一時保留部60b〜60eへ収納された紙幣枚数が100枚に達する度に、該紙幣を出金部12へ投出する態様であっても構わない。この場合には、いずれかの金種の紙幣の収納枚数が100枚に達した時点で、入金部11からの紙幣の繰り出しを一旦停止して、100枚の紙幣を出金部12へ投出する。そして、投出された紙幣が出金部12から取り除かれた後、入金部11からの紙幣の操り出しを再開する。このような処理を繰り返すことにより、入金部11へ載置された全紙幣の整理計数を行うことができる。このような処理の流れについては、実施例1及び実施例2に共通するものであるため、実施例2を説明した後に、図13を参照しながら説明する。
また、入金部11から装置内への各紙幣の繰り出しや一時保留部60b〜60eからの紙幣の繰り出しは、表示操作部80による操作を受けて開始される態様の他、入金部11及び出金部12が紙幣検知センサを備え、該検知センサによる検知結果に基づいて自動的に開始される態様であってもよい。具体的には、入金部11へ載置された紙幣束を検知して装置内への紙幣の繰り出しを開始したり、出金部12に紙幣が存在しないこと又は出金部12から紙幣が取り除かれたことを検知して一時保留部60a〜60eから出金部12への投出処理が自動的に開始される態様であっても構わない。
さらに、各金種の紙幣を出金部12へ投出する順序についても、予め設定された金種の順に従って投出される態様の他、投出前に利用者が投出の順序を設定する態様であってもよいし、利用者が投出処理毎に投出させたい金種を指定する態様であっても構わない。
複数金種モードを実現するための紙幣処理の方法は、図3に示す態様に限定されるものではない。図4は、図3とは異なる態様で複数金種モードを実現する方法を説明する図である。図3の場合と同様に、入金部11に載置された複数金種の紙幣は、1枚ずつ装置内に繰り出されて、図4(a)に示すように搬送される。具体的には、紙幣の表裏及び金種に基づいて、二千円券の裏券は一時保留部60bに、千円券の表券は一時保留部60cに、五千円券の表券は一時保留部60dに、万円券の表券は一時保留部60eに分類して収納される。また、二千円券の表券と、千円券、五千円券及び万円券の裏券とは、一時保留部60aに混在した状態で収納される。
なお、二千円券については裏券のみを集めて一時保留部60bに収納するのに対して、他金種については表券のみを集めて一時保留部60c〜60eに集めて収納しているが、これは、図1に示す紙幣処理装置1の構造によるものである。具体的には、一時保留部60bについてのみ図1の右側から紙幣が収納されるのに対して、他の一時保留部60a及び60c〜60eでは左側から紙幣が収納されるため、一時保留部60bに収納される二千円券のみが、他の一時保留部60a及び60c〜60eに収納される金種の紙幣と異なる面を上にして収納される。なお、収納する紙幣の表裏設定は、一時保留部60a〜60eから繰り出されて右方向へ搬送された紙幣が、識別部30及び表裏反転部40の非反転ルートを経て出金部12へ投出された際に、表券の状態で投出されるように設定されている。
入金部11に載置された全ての紙幣が、対応する一時保留部60a〜60eに分類して収納されると、図4(b)に示すように、各一時保留部60a〜60eに収納された紙幣を出金部12に投出する処理が開始される。
例えば、一時保留部60eから万円券の表券が繰り出されて、識別部30及び表裏反転部の非反転ルートを経て搬送され、表券の状態で出金部12へ投出される。続いて、一時保留部60aに他金種と混在した状態で収納されている万円券裏券の出金部12への投出処理が開始される。
一時保留部60aから繰り出された各紙幣は、搬送部によって識別部30に搬送されて識別される。そして、識別された紙幣が万円券の裏券であった場合には、表裏反転部40の反転ルートを経て表裏が反転された後、表券の状態で出金部12に投出される。これにより、出金部12には、万円券の表券のみを投出することができる。
識別の結果、一時保留部60aから繰り出された紙幣が万円券裏券以外の紙幣であった場合には、表裏反転部40の非反転ルートを経て搬送された後、図4(b)に破線で示したように、対応する一時保留部60b〜60eに収納される。
一時保留部60aから繰り出された紙幣は、識別部30及び表裏反転部40の非反転ルートを経て、再び一時保留部60c〜60eへ収納されるときには、一時保留部60aに収納されていたときとは表裏が反転された状態で収納される。これにより、一時保留部60aから繰り出された千円券及び五千円券の裏券は、各々表券の状態で一時保留部60c及び60dに収納される。
このとき、二千円券については、一時保留部60aから繰り出された表券を搬送して一時保留部60bの右側から収納すると再び表券として収納されることになる。このため、二千円券については、一旦一時保留部60bを通り過ぎるように搬送した後、逆方向へ戻すように搬送することにより裏券として収納する。または、表裏反転部40の反転ルートを経て表裏反転してから、一時保留部60bを通り過ぎることなくそのまま収納するようにしてもよい。このように、二千円券については他金種と異なる搬送を行う必要があるが、市場での二千円券の流通量は他金種に比べて少ないため、このような搬送をする回数を抑えることができる。
万円券の裏券を出金部12へ投出しながら、他金種の紙幣は出金部12へ投出することなく退避させて対応する一時保留部60b〜60dに収納させる処理を続けて、一時保留部60aに収納された紙幣が全て繰り出されると、一時保留部60b〜60dに、予め設定された金種の紙幣が表裏を揃えて収納された状態となる。よって、以降は、各一時保留部60b〜60dから、金種別に順に紙幣を繰り出すことにより、所定金種の紙幣を、表裏を揃えた状態で出金部12に投出することができる。
なお、100枚ずつ紙幣を投出するように設定されている場合には、図3を参照しながら説明した場合と同様に、100枚の万円券が出金部12へ投出された時点で紙幣の投出が停止される。そして、出金部12から紙幣を取り除かれた後に投出が再開される。
また、図3を参照しながら説明した場合と同様に、入金部11に載置された紙幣束の全てを一時保留部60b〜60eに収納した後に出金部12への紙幣投出を開始する他、一時保留部60b〜60eへ収納された紙幣枚数が100枚に達する度に、該紙幣を出金部12へ投出する態様であっても構わない。
図4(a)に示す方法では、同一金種の紙幣が表裏によって2つの異なる一時保留部へ収納される。例えば、同じ万円券であっても、表券は一時保留部60eへ収納され、裏券は一時保留部60aへ収納される。このため、紙幣枚数が100枚に達したか否かを判定する判定条件については、一時保留部60a又は60eのいずれかで万円券の収納枚数が100枚に達した場合に条件を満たすと判定する態様の他、一時保留部60a及び60eの収納枚数の合計が100枚に達した場合に条件を満たすと判定する態様であっても構わない。
例えば、図4(c)に示したように、一時保留部60eに収納された万円券の表券の収納枚数が92枚に達したときに、一時保留部60aに金種混合状態で収納された15枚の紙幣の中に万円券の裏券が8枚含まれている場合には、万円券の合計枚数が100枚となるので判定条件を満たすと判定される。判定条件が満たされると、入金部11からの紙幣の繰り出しを一旦停止して、搬送部50を搬送中の紙幣が全て対応する収納部に収納されるのを待って、図4(b)に示すように、万円券の投出が開始される。
まず、一時保留部60eに収納された92枚の万円券の表券が全て出金部12に投出される。続いて、一時保留部60aの8枚の万円券の裏券が表裏反転部40によって表裏反転された後、万円券の表券として出金部12に投出される。これにより100枚の万円券の表券を出金部12へ投出することができる。
このとき、一時保留部60aの15枚の紙幣の中に、8枚の万円券の裏券の他に、例えば、5枚の千円券の裏券と、2枚の五千円券の裏券とが含まれていた場合には、これらの紙幣を出金部12へ投出することなく退避する処理が行われる。具体的には、搬送部50のループ状の搬送路部分を反時計回りに、識別部30及び表裏反転部40の非反転ルートを経て搬送された後、千円券の表券及び五千円券の表券は、各々対応する一時保留60c及び60dに収納される。こうして、万円券の表券の出金部12への投出と、投出対象外紙幣である千円券及び五千円券を退避して収納する処理が完了すると、入金部11に残っている紙幣の繰り出しが再開される。
なお、複数金種の紙幣が混在する一時保留部60aからの紙幣の繰り出しについては、投出対象紙幣の全てを繰り出すことができれば、全ての投出対象外紙幣を退避収納することなく、その一部を一時保留部60aに収納した状態のままとしてもよい。具体的には、例えば、図4(c)の例では、投出対象である8枚の万円券の裏券が一時保留部60aから繰り出された後、一時保留部60aに千円券や五千円券の裏券が残っている場合でも、そのままの状態で、万円券裏券の投出処理と千円券及び五千円券の退避収納処理とを完了して、入金部11に残っている紙幣の処理を再開してもよい。
このように、複数金種の紙幣が混在する一時保留部60aと、金種別に収納された一時保留部60b〜60eとの収納枚数の合計が100枚に達した金種の紙幣を、順次、出金部12へ投出しながら、入金部11に載置された紙幣の処理を続けることにより、入金部11へ載置された全紙幣の整理計数を行うことができる。
図3及び図4では、表裏反転部40を利用して紙幣の表裏を揃えながら紙幣を投出する態様を示したが、表裏反転部40を利用することなく整理計数処理を行うこともできる。図5は、表裏反転部40を利用することなく紙幣の表裏を揃えながら整理計数処理を行う方法を説明する図である。この方法によれば、表裏反転部40を有さない装置を利用する場合でも、紙幣の表裏を揃えて出金部12に投出することができる。
まず、図4の場合と同様に、入金部11に載置された複数金種の紙幣は、1枚ずつ装置内に繰り出されて、図5(a)に示すように搬送される。こうして、入金部11に載置された全ての紙幣が、対応する一時保留部60a〜60eに分類して収納されると、次に、図5(b)に示すように、一時保留部60aに収納された紙幣が繰り出されて、対応する各一時保留部60b〜60eに金種別に収納される。
具体的には、一時保留部60aから繰り出された紙幣は、識別部30によって識別されて、表裏反転部40の非反転ルートを表裏反転されることなく搬送された後、対応する一時保留部60b〜60eに収納される。このとき、図4(b)を参照しながら説明したように、搬送部50のループ状搬送路を搬送された紙幣は、表裏を反転した状態で各一時保留部60b〜60eに収納される。
このため、一時保留部60aに収納された紙幣が全て繰り出されると、図5(c)に示すように、一時保留部60b〜60eには予め設定された金種及び表裏の紙幣が収納された状態となる。よって、以降は、同図に示したように、各一時保留部60b〜60dから紙幣を繰り出して、表裏を揃えた状態で各金種の紙幣を出金部12に投出することができる。
なお、紙幣を100枚ずつ整理計数するように設定されている場合の処理や、複数の一時保留部60a〜60eの同一金種の紙幣の合計枚数が100枚に達する度に紙幣を投出する処理方法は、図4を参照しながら説明した処理と同様であるため説明を省略する。
次に、単金種モードでの整理計数処理について説明する。図6は、単金種モードで整理計数処理を行う場合の紙幣処理について説明する図である。単金種モードで整理計数処理の対象とする金種は、利用者によって選択される。金種の選択は、表示操作部80を操作して行うこともできるし、上位端末90から行うこともできる。また、予め金種を選択する操作を行うことなく、入金部11に載置された紙幣束の処理を開始して、最初に識別された紙幣の金種を処理対象金種として整理計数処理を進めることもできる。
例えば、整理計数処理の対象金種として万円券が選択された場合には、図6(a)に示すように、入金部11から繰り出された紙幣を識別部30によって識別して、万円券であれば、表裏によらず一時保留部60b〜60eに収納して、万円券でなければ破線で示したように一時保留部60a〜60eに収納することなく出金部12へ投出する。ただし、一時保留部60a〜60eのいずれか1つのみを万円券の収納に利用してもよいし、全ての一時保留部60a〜60eを利用しても構わない。整理計数処理時に各一時保留部60a〜60eに収納する紙幣の種類は設定変更することができる。
各一時保留部60b〜60eに紙幣が収納された後は、図6(b)に示すように、各一時保留部60b〜60eから、表裏反転部40を利用して、表裏を揃えた状態で万円券を出金部12に投出することができる。
また、単金種モードについても、表裏反転部40を利用することなく整理計数処理を実現することができる。具体的には、まず、図7(a)に示すように、整理計数処理の対象金種である万円券を表券と裏券とに分けて一時保留部60a、60c〜60eに収納する。そして、図7(b)に示すように、一時保留部60a及び60dから万円券裏券を繰り出して、識別部30及び表裏反転部40の非反転ルートを経て、搬送部50のループ状搬送路を反時計回りに搬送して、一時保留部60c及び60eに表券の状態で収納する。そして、図7(c)に示すように、一時保留部60c及び60eから万円券表券を繰り出して、識別部30及び表裏反転部40の非反転ルートを経て搬送して、表裏を揃えた状態で出金部12へ投出すればよい。
上述してきたように、本実施例によれば、紙幣処理装置1が備える複数の一時保留部60a〜60bを利用して、入金部11から投入された紙幣束の整理計数処理を行うことができる。整理計数処理として、従来装置と同様に単一金種の紙幣のみを処理対象とした単一金種モードを実行することもできるし、複数金種の紙幣を処理対象として各金種の紙幣を所定枚数ずつ順次出金部12へ投出する複数金種モードを実行することもできる。
また、複数金種モードでは、入金部11から複数金種の紙幣が混在する紙幣束を投入するだけで、出金部12に、枚数計数された紙幣が表裏を揃えた状態で金種別に順次投出されるので、容易かつ短時間に整理計数処理を行うことができる。
また、表裏反転部40を利用して表裏を揃えた状態で出金部12へ紙幣を投出することもできるし、表裏反転部40を利用することなく紙幣の収納先を変更することによって表裏反転させて、表裏を揃えてから出金部12へ紙幣を投出することもできる。表裏反転部40の反転ルートでは紙幣の表裏を変更するように搬送するため、非反転ルートに比べると紙幣のジャムが発生する可能性が高くなる。表裏反転部40を利用することなく紙幣の表裏を反転することで、ジャムの発生を抑制するという効果も得られる。
図8は、本実施例に係る紙幣処理装置100の構成概略を示す断面模式図である。紙幣処理装置100は、装置内に紙幣を投入するための入金部111と、装置内から紙幣を投出するための出金部112と、リジェクト紙幣を収納するためのリジェクト部113と、紙幣の金種、真偽、正損及び表裏を識別するための識別部130と、識別部130による識別結果に基づいて紙幣を分類収納するための着脱式の紙幣カセット120a〜120eと、反転ルート及び非反転ルートから成り紙幣の表裏を揃えるための表裏反転部140と、これらの各部の間で紙幣を搬送するための搬送部150とを備える。
また、紙幣処理装置100は、テープ式の一時保留部160を備えている。本実施例の紙幣処理装置100には、一時保留部160が1つしかない点が、実施例1と異なっている。紙幣処理装置100は、この単一の一時保留部160を利用して、実施例1の紙幣処理装置1と同様に、複数金種モード及び単金種モードの2つの動作モードで整理計数処理を行うことができる。
なお、本実施例の紙幣処理装置100は、一時保留部160が1つである点や紙幣の収納先が全て着脱式の紙幣カセット120a〜120eである点を除いて、実施例1に示した紙幣処理装置1と同様の構成を有している。紙幣処理装置100についても、図2に示したように、制御部10、記憶部70及び表示操作部80を備え、上位端末90と通信可能になっている。
また、本実施例に係る紙幣処理装置100の機能及び動作については、例えば、特開2011−159075号公報に開示された従来装置と同様であるため、詳細な説明は省略することとし、以下では、本実施例に係る整理計数処理について説明を続ける。
まず、複数金種モードでの整理計数処理について説明する。図9は、紙幣処理装置100によって複数金種モードで整理計数処理を行う場合の紙幣処理について説明する図である。
入金部111に、複数金種の紙幣が混在する紙幣束が載置されると、各紙幣が1枚ずつ装置内へ繰り出される。入金部111から繰り出された紙幣は、搬送部150によって、図9(a)に示すように搬送される。具体的には、表裏反転部140の非反転ルートを経て搬送された各紙幣は、識別部130によって金種、真偽、正損及び表裏が識別される。そして、識別された全ての紙幣が一時保留部160に収納される。
このとき、識別部130によって偽券と識別された紙幣や識別できなかった紙幣等、所定条件に合致する紙幣はリジェクト部113に搬送されて収納される。また、一時保留部160に収納された各紙幣の金種や表裏等の情報は、制御部10によって記憶部70に保存される。
こうして、入金部111に載置された全ての紙幣が繰り出されて一時保留部160に収納されると、図9(b)に示すように、出金部112への紙幣の投出が開始される。例えば、まず最初に万円券の投出が開始される。
一時保留部160から繰り出された紙幣は、搬送部150によって識別部130へ搬送されて識別される。識別の結果、紙幣が万円券の表券であった場合には、表裏反転部140の非反転ルートを経て表券のまま出金部112に投出される。紙幣が万円券の裏券であった場合には、表裏反転部140の反転ルートを経て表裏が反転され、表券として出金部112に投出される。また、万円券以外の紙幣、すなわち投出対象外紙幣であった場合には、出金部112へ投出することなく退避させて、紙幣カセット120aに収納される。これにより、表裏が揃った状態で万円券のみを出金部112に投出することができる。
なお、紙幣処理装置100の一時保留部160は、テープ式の収納部であるため、紙幣を1枚ずつ確実に収納し、収納した順と逆の順で紙幣を確実に繰り出すことができる。このため、一時保留部160から繰り出した紙幣を、識別部130によって再識別することなく、収納時の識別結果に基づいて、万円券表券の投出、万円券裏券の表裏反転及び投出、投出対象外紙幣の退避及び収納の各処理を行っても構わない。
万円券の投出が完了した後、これを示す情報が表示操作部80に表示される。利用者が該表示を確認して出金部112から紙幣を取り除き、表示操作部80を操作すると、次に、万円券の場合と同様に、五千円券の投出が開始される。
紙幣カセット120aから繰り出された紙幣は、図9(c)に示すように搬送される。まず、紙幣カセット120aから繰り出された紙幣は、搬送部150によって識別部130へ搬送されて識別される。識別の結果、紙幣が五千円券の表券であった場合には、表裏反転部140の非反転ルートを経て表券のまま出金部112に投出される。紙幣が五千円券の裏券であった場合には、表裏反転部140の反転ルートを経て表裏が反転され、表券として出金部112に投出される。また、五千円券以外の紙幣、すなわち投出対象外紙幣であった場合には、出金部112へ投出することなく退避させて、一時保留部160に収納される。これにより、表裏が揃った状態で五千円券のみを出金部112に投出することができる。
このように、図9(b)及び(c)に示した処理を繰り返すことにより、全ての紙幣を、金種別に整理して出金部112に投出することができる。
なお、紙幣を100枚ずつ投出するように設定されている場合には、一時保留部160から100枚の所定金種の紙幣が繰り出されて出金部112へ投出された時点で、紙幣の投出が停止される。そして、利用者が、出金部112から紙幣を取り除き、表示操作部80を操作すると、一時保留部160からの紙幣の投出が再開される。100枚ずつ紙幣を投出する処理が繰り返されて、一時保留部160に残った所定金種の紙幣の枚数が100枚に満たない状態になると、端数紙幣の全てが出金部112へ投出されると共に、表示操作部80には投出された端数紙幣の枚数が表示される。この表示によって、利用者は、投出された紙幣が100枚に満たないことを認識することができる。各金種について同様の処理が行われ、一時保留部160に収納された全ての紙幣が、金種別に表裏を揃えた状態で所定枚数ずつ出金部112へ投出される。
実施例1の場合と同様に、入金部111からの紙幣の繰り出し及び出金部112への紙幣の投出は、利用者による操作を受けて行う態様の他、入金部111及び出金部112の備えるセンサによって紙幣の有無を検知して自動的に開始される態様であってもよい。
複数金種モードを実現するための方法は、図9に示す態様に限定されるものではない。図9では表裏反転部140を利用して紙幣の表裏を揃えながら出金部112に投出する態様を示したが、表裏反転部140を利用することなく整理計数処理を行うこともできる。
図10は、表裏反転部140を利用することなく紙幣の表裏を揃えながら整理計数処理を行う方法について説明する図である。この方法によれば、表裏反転部140を有さない装置を利用する場合でも、出金部112に表裏を揃えた紙幣を投出することができる。
まず、図9の場合と同様に、入金部111に載置された全ての紙幣が、1枚ずつ装置内へ繰り出されて識別された後、図10(a)に示すように一時保留部160に収納される。入金部111に載置された全ての紙幣が繰り出されて、一時保留部160に収納されると、図10(b)に示すように、出金部112への紙幣の投出が開始される。例えば、まず最初に万円券の投出が開始される。
一時保留部160から繰り出された紙幣は、搬送部150によって識別部130へ搬送されて識別される。識別の結果、紙幣が万円券の表券であった場合には、表裏反転部140の非反転ルートを経て表券のまま出金部112に投出される。紙幣が万円券の裏券であった場合や、万円券以外の紙幣、すなわち投出対象外紙幣であった場合には、表裏反転部140の非反転ルートを経て搬送して、出金部112へ投出することなく退避させて紙幣カセット120aに収納する。これにより、出金部112には万円券の表券のみが投出される。
一時保留部160から繰り出された紙幣は、ループ状の搬送部150を搬送される間に表裏が反転される。具体的には、図10(b)に示したように、一時保留部160に収納されていた万円券裏券200は万円券表券201として出金部112へ投出され、一時保留部160の万円券表券210は万円券裏券211として紙幣カセット120aへ収納される。また、万円券以外の投出対象外紙幣については、一時保留部160の裏券300及び表券310が、各々反転されて、表券301及び裏券311として紙幣カセット120aへ収納される。
次に、図10(c)に示したように、紙幣カセット120aからの紙幣の繰り出しが開始され、万円券裏券211が、万円券表券212として出金部112に投出される。そして、万円券以外の投出対象外紙幣については、紙幣カセット120aの表券301及び裏券311が、各々反転されて、裏券302及び表券312として一時保留部160へ収納される。
このように、一時保留部160と紙幣カセット120aとの間で、紙幣を移動させることによって、表裏反転部140を利用することなく、万円券の表券のみを出金部112へ投出することができる。
万円券の投出が完了すると、同様に、図10(b)及び(c)に示した搬送処理を交互に繰り返しながら他金種の紙幣を出金部112へ投出する。こうして、一時保留部160及び紙幣カセット120aを利用して、一金種ずつ、紙幣を投出することにより、全ての紙幣を、金種別に表裏を揃えた状態で所定枚数ずつ出金部112に投出することができる。
表裏反転部140を利用することなく整理計数処理を行う態様は図10に示す方法に限定されるものではない。図11は、表裏反転部140を利用することなく紙幣の表裏を揃えながら整理計数処理を行う他の方法を説明する図である。
まず、図10の場合と同様に、入金部111に載置された全ての紙幣が、1枚ずつ装置内へ繰り出されて識別される。そして、識別結果に基づいて、図11(a)に示すように、全ての裏券が一時保留部160に収納され、全ての表券が紙幣カセット120aに収納される。
こうして、入金部111に載置された全ての紙幣が繰り出されて、一時保留部160又は紙幣カセット120aに収納されると、図11(b)に示すように、紙幣カセット120aからの紙幣の繰り出しが開始される。紙幣カセット120aから繰り出された紙幣は、識別部130を経て搬送され、一時保留部160へ収納される。このとき、紙幣カセット120aに収納されていた表券400が、一時保留部160に裏券401として収納される。
紙幣カセット120aから全ての紙幣が繰り出されて、裏券401の状態で一時保留部160に収納された後、出金部112への紙幣の投出が開始される。例えば、まず最初に万円券の投出が開始される。
具体的には、図11(c)に示すように、一時保留部160から繰り出された万円券裏券401が、識別部130を経て、万円券表券402として出金部112へ投出される。そして、万円券以外の紙幣、すなわち投出対象外紙幣は、出金部112へ投出することなく退避させて、表券403の状態で紙幣カセット120aに収納する。これにより、出金部112には万円券の表券402のみを投出することができる。
一時保留部160から出金部112への万円券の投出が完了すると、再び、図11(b)と同様に、紙幣カセット120aの表券を繰り出して、裏券として一時保留部160へ収納する処理が行われる。そして、次に、同図(c)と同様に、例えば五千円券の表券が出金部112へ投出する処理が行われる。すなわち、図11(b)及び(c)に示した搬送を繰り返すことにより、全金種の紙幣を出金部112へ投出する。
こうして、一時保留部160及び紙幣カセット120aを利用して一金種ずつ紙幣を投出することにより、全ての紙幣を、金種別に整理して表裏を揃えた状態で所定枚数ずつ出金部112に投出することができる。
なお、図11では、同図(a)に示すように入金部111からの収納を終えた後、同図(b)に示すように最初に紙幣カセット120aから一時保留部160へ紙幣を移動する例を示したが、最初に一時保留部160から紙幣カセット102aに紙幣を移動させる態様であっても構わない。その後、図11(b)及び(c)に示す処理を繰り返すことで、全金種の紙幣を整理計数することができる。
また、同様の処理内容となるため詳細な説明は省略するが、図11に示す処理方法においても、他の方法と同様に、各金種の紙幣を100枚ずつ投出したり、入金部111から全ての紙幣を繰り出すことなく装置内部での収納枚数が100枚に到達した時点で、入金部111からの紙幣の繰り出しを停止して、出金部112への紙幣の投出を開始するように処理することもできる。
整理計数処理の処理対象紙幣は、装置内部の収納部に収納した状態を維持されることなく装置外へ投出される。このため、ジャム等のトラブル発生時に、収納部内に収納済みの紙幣と整理計数処理の処理対象紙幣とが混在しないよう、整理計数処理には、紙幣が収納されていない収納部を利用することが望ましい。
一時保留部は、入出金処理時にのみ一時的に紙幣が収納され、それ以外のときには空の状態であるため、整理計数処理への利用に適している。図9〜図11に示した整理計数処理では、紙幣カセット120aを利用するが、これについても、整理計数処理開始時に、内部に紙幣が収納されていない空の状態であることが望ましい。例えば、装置内への紙幣の補充や装置内からの紙幣の回収に利用され、通常は空の状態の紙幣カセットがあれば、この紙幣カセットを利用する。
ただし、本実施例の紙幣処理装置100のように、一時保留部160を1つしか有さない場合でも、複数の紙幣カセット120a〜120eを利用して、整理計数処理を実現することもできる。
図12は、一時保留部160と、複数の紙幣カセット120b〜120eとを利用して、整理計数処理を実現する方法を説明する図である。まず、入金部111に載置された複数金種の紙幣が1枚ずつ装置内へ繰り出されて、識別部130によって識別された後、図12(a)に示すように搬送される。具体的には、紙幣の表裏及び金種に基づいて、二千円券の表券は紙幣カセット120bに、千円券の表券は紙幣カセット120cに、五千円券の表券は紙幣カセット120dに、万円券の表券は紙幣カセット120eに分類して収納される。また、金種によらず、表券は全て、一時保留部160収納される。
こうして、入金部111に載置された全ての紙幣が、一時保留部160及び紙幣カセット120b〜120eに分類して収納されると、図12(b)に示すように、各紙幣カセット120b〜120eに収納された紙幣の繰り出しが開始される。各紙幣カセット120b〜120eに収納された表券の紙幣は、搬送部150を搬送される間に表裏反転されて、裏券の状態で一時保留部160へ収納される。
各紙幣カセット120b〜120eから全ての紙幣が繰り出され、表裏反転されて一時保留部160に収納されると、全ての紙幣が裏券として一時保留部160に収納された状態となる。すなわち、図11(b)に示したように、紙幣カセット120aから全ての紙幣を繰り出して一時保留部160へ収納した場合と同じ収納状態となる。
よって、これ以降は、図11(b)及び(c)を参照しながら説明したのと同様に、一時保留部160及び紙幣カセット120aを利用して、各金種の紙幣を、表裏を揃えた状態で出金部112へ投出することができる。
次に、紙幣処理装置100を利用して行う単金種モードについて説明する。単金種モードでは、単一金種の紙幣のみが整理計数される。
図9〜図12の各図(a)に示した入金部111からの紙幣の繰り出し工程で、処理対象となる単一金種のみを、各図に図示したように収納部へ収納して、対象外金種の紙幣全てを出金部112へ投出すれば、紙幣処理装置100内部には、処理対象金種の紙幣のみが収納された状態となる。この状態で、図9〜図12の各図を参照しながら説明した方法で処理を行えば、各処理が処理対象金種の紙幣のみについて行われることになり、単一金種モードを実現することができる。
すなわち、図9〜図12の投出対象の各金種を、単金種モードの処理対象金種に置き換えることで、単金種モードを実現することができる。処理内容については、各図を参照しながら処理と同様であるため説明を省略する。
上述してきたように、本実施例によれば、紙幣処理装置100が備える一時保留部160を利用して、整理計数処理として、従来装置と同様に単一金種の紙幣のみを処理対象とした単一金種モードを実行することもできるし、複数金種の紙幣を処理対象として各金種の紙幣を順次出金部112へ投出する複数金種モードを実行することもできる。
また、複数金種モードでは、入金部111から複数金種の紙幣が混在する紙幣束を投入するだけで、出金部112に、枚数計数された紙幣が表裏を揃えた状態で金種別に順次投出されるので、容易かつ短時間に整理計数処理を行うことができる。
また、表裏反転部140を利用して表裏を揃えた状態で出金部112へ紙幣を投出することもできるし、表裏反転部140を利用することなく紙幣の収納先を変更することにより表裏反転して表裏を揃えた状態で出金部112へ紙幣を投出することもできる。表裏反転部140の反転ルートでは紙幣の表裏を変更するように搬送するため、非反転ルートに比べると紙幣のジャムが発生する可能性が高くなる。表裏反転部140を利用することなく紙幣の表裏を反転することで、ジャムの発生を抑制するという効果も得られる。
入金部に載置された全ての紙幣を装置内に収納した後に、金種別に所定枚数の紙幣を投出させることもできるが、処理対象紙幣の枚数が入金部に載置可能な容量を超えている場合や、出金部への投出を優先して所定枚数に達した金種の紙幣をすぐに投出させたい場合には、装置内の投出対象金種の紙幣収納枚数が100枚に到達した時点で出金部へ投出させる処理方法が有効である。図13は、実施例1及び実施例2の複数金種モードに関し、装置内の収納枚数が100枚に到達した時点で紙幣の投出を開始する場合の処理概要を示すフローチャートである。
まず、入金部に載置された紙幣が一枚ずつ装置内に繰り出される(ステップS1)。そして、識別部によって紙幣の識別計数処理が行われた後、各紙幣は、識別結果に基づいて対応する収納部へ収納される(ステップS2)。収納部として、実施例1では複数の一時保留部のみが利用され、実施例2では一時保留部及び紙幣カセットが利用される例を示した。
整理計数処理の処理対象となる同一金種の紙幣の収納枚数が100枚に到達せず(ステップS3;No)かつ装置内に投入されるべき紙幣が入金部に残っている間は(ステップS5;No)、紙幣を繰り出して(ステップS1)、識別して収納する処理(ステップS2)が繰り返される。
例えば、装置内の所定収納部に収納された所定金種の合計枚数が100枚に到達すると(ステップS3;Yes)、入金部から装置内への紙幣の繰り出しを停止して、搬送部を搬送中の紙幣を全て搬送した後、収納枚数が100枚に到達した紙幣を出金部へ投出するための処理が開始される(ステップS4)。
ここで、紙幣を出金部へ投出する処理は、例えば、実施例1の図3に示した方法では、一時保留部から万円券の表券をそのままの状態で出金部へ投出する処理(ステップS41)と、万円券の裏券を表裏反転部によって表裏反転する処理(ステップS42)を行ってから出金部へ投出する処理(ステップS41)とが含まれる。
また、実施例1の図4、実施例2の図9に示した方法では、万円券の表券を出金部へ投出する処理(ステップS41)と、万円券の裏券を表裏反転部によって表裏反転する処理(ステップS42)を行ってから出金部へ投出する処理(ステップS41)と、万円券以外の投出対象外紙幣を対応する所定収納部へ退避収納する処理(ステップS43)とが含まれる。
また、実施例2の図10に示した方法では、万円券の表券を出金部へ投出する処理(ステップS41)と、それ以外の投出対象外紙幣を退避収納する処理(ステップS43)とが行われるが、収納先が変更される退避収納を行うと同時に紙幣の表裏反転(ステップS42)が行われることになる。
また、実施例1の図5に示した方法では、先に表裏反転する必要がある全ての紙幣を、収納先を変更することによって表裏反転した後(ステップS42)、出金部12への投出が行われる(ステップS41)。
また、実施例2の図11及び、図12に示した方法では、先に表裏反転する必要がある全ての紙幣を、収納先を変更することによって表裏反転した後(ステップS42)、万円券のみを出金部112へ投出しながら(ステップS41)、万円券以外の投出対象外紙幣を退避させる処理(ステップS43)が行われるが、収納先が変更される退避収納を行うと同時に紙幣の表裏反転(ステップS42)が行われることになる。
このように、装置内に収納された100枚の紙幣を投出する際に行われる処理内容及び処理順序は、複数金種モードを実現する各方法によって異なる。
100枚の万円券の投出が完了した後、まだ入金部に載置された紙幣が残っている場合には(ステップS5;No)、ステップS1〜S4の処理が繰り返される。こうして、装置内に収納された同一金種の紙幣枚数が100枚に達する度に、表裏を揃えて出金部に投出する。
各金種の紙幣を100枚ずつ投出して、装置内部に収納された同一金種の紙幣枚数が100枚に達していないが(ステップS3;No)、投入紙幣の全てが入金部から装置内に繰り出された状態となった場合には(ステップS5;Yes)、これらの紙幣を、金種別に、表裏を揃えた状態で出金部へ投出する(ステップS6)。すなわち、整理計数処理の対象紙幣を金種別に100枚ずつ表裏を揃えて投出する処理を繰り返して、装置内に100枚に満たない各金種の端数紙幣のみが収納された状態となった場合には、これらの端数紙幣を金種別に表裏を揃えて投出して、処理を完了する。
なお、単一金種モードの場合には、入金部から装置内に紙幣を繰り出して対応する収納部に収納するステップ(ステップS2)で、処理対象となる金種の紙幣のみを装置内に収納して、処理対象外の金種の紙幣は装置内に収納することなく出金部に投出される点のみが異なる。その他については、複数金種モードの場合と同様の処理であるため説明を省略する。
このように、整理計数処理が開始されると、入金部に載置された紙幣が装置内に繰り出され、装置内で各金種の紙幣枚数が100枚に到達する度に、紙幣の繰り出しが一旦停止され、100枚の紙幣が表裏を揃えた状態で出金部に投出される。そして、出金部への紙幣の投出が完了すると、入金部からの紙幣の繰り出しが自動的に再開される。これにより、利用者は、入金部に紙幣を載置するだけで、全ての紙幣を、金種別に100枚ずつの紙幣に整理することができる。