JP6191636B2 - 電子線を用いた試料観察方法、および、電子顕微鏡 - Google Patents

電子線を用いた試料観察方法、および、電子顕微鏡 Download PDF

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Description

本発明は、電子線を用いた試料観察方法、並びに、電子顕微鏡用アタッチメントおよび電子顕微鏡に関し、特には、試料の走査透過電子像を形成して試料を観察する方法、並びに、走査透過電子像を用いた試料の観察に適した電子顕微鏡用アタッチメントおよび電子顕微鏡に関するものである。
従来、電子顕微鏡として、バルク状の試料の表面観察に用いられる走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)や、薄膜状の試料の透過像観察に用いられる透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)が知られている。そして、近年では、走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡のそれぞれの特徴を併せ持った電子顕微鏡として、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)が注目されている。
ここで、STEMは、薄膜状の試料上で電子線を走査し、試料を透過した電子の強度を信号として走査透過電子像を結像するものであり、各種材料や生体組織などの様々な試料について微小部分の構造観察や元素分布の分析をする際などに利用されている。そして、近年、STEMとしては、広く普及しており、且つ、操作性に優れていると共に比較的低い加速電圧での観察が可能なSEMに対して走査透過電子像観察用の試料ホルダや透過電子検出器を取り付けることにより走査透過電子像の観察を可能にした低加速STEMなどの様々なSTEMが提案されている。
具体的には、例えば非特許文献1では、試料を支持する支持部と、試料を透過した電子を絞る絞り部および当該絞り部を駆動する駆動機構を備える可動絞りと、絞り部を通過した電子線が照射されることで二次電子を発生する二次電子発生部とを備える試料ホルダをSEMに取り付けて構成したSTEMが提案されている。
また、例えば特許文献1では、電子銃と、試料を透過した電子を絞る散乱角制限絞りおよび当該散乱角制限絞りを通過した電子を光に変換するシンチレーターを備える試料ホルダと、シンチレーターが発した光をシンチレーターの裏面側(シンチレーターに電子が入射する側とは反対側)で検出して電気信号に変換する光電子増倍管とを有するSTEMが提案されている。
特開2008−311214号公報
村中祥悟、"走査電子顕微鏡で薄膜試料の透過二次電子像を観察する試料ホルダの改良"、[online]、[平成26年1月30日検索]、インターネット<URL:http://www.tech.eng.kumamoto-u.ac.jp/kumamoto2011/report_pdf/data/program_pdf/E/E-2.pdf>
しかし、非特許文献1に記載のSTEMでは、二次電子発生部で発生した二次電子をSEMの二次電子検出器で検出することにより走査透過電子像を得ているため、試料を透過した電子によって二次電子発生部で発生した二次電子以外の電子、例えば試料の表面から発生した二次電子なども検出してしまい、良好な走査透過電子像が得られない虞があった。特に、非特許文献1に記載のSTEMでは、走査透過電子像の観察とエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いた元素分析とを同時に実施しようとした場合など、SEMのレンズと試料との間の距離(WD:ワーキングディスタンス)を大きくした場合に、試料の表面から発生した二次電子も検出してしまい、走査透過電子像がぼやける虞があった。
一方、特許文献1に記載のSTEMによれば、シンチレーターが発した光を光電子増倍管で検出しているので、上述した、試料の表面から発生した二次電子の検出の問題が発生するのを防止することはできる。しかしながら、特許文献1に記載のSTEMには、シンチレーターが発した光をシンチレーターの裏面側(シンチレーターに電子が入射する側とは反対側)で検出しているため、シンチレーターの配設位置および形状が制限され、自由度が低いと共に、シンチレーターの裏面側に光検出用のスペースが必要になり、装置が大型化および複雑化するという問題があった。
そこで、本発明は、上述した課題を解決し、自由度が高く、且つ、簡素な装置構成で良好な走査透過電子像を観察することができる試料観察方法、電子顕微鏡用アタッチメントおよび電子顕微鏡を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、試料上で電子線を走査し、電子のエネルギーを光に変換可能な発光体に対して試料を透過した電子を当て、発光体から放射される光を検出することにより走査透過電子像を得る際に、発光体が当該発光体の表面側(発光体に電子が入射する側)に放射した光を検出することにより、自由度が高く、且つ、簡素な装置構成で良好な走査透過電子像を観察することができることを見出した。また、本発明者らは、上述のようにして試料の走査透過電子像を観察する際に、試料の位置に対する発光体の配設位置を変更して走査透過電子像を得ることにより、明視野像(試料を透過した電子のうち、散乱されずに透過した電子および小さい角度で前方散乱した電子を検出して得られる像)と、暗視野像(試料を透過した電子のうち、前方散乱・回折した電子を検出して得られる像)との双方を容易に得ることができることも見出した。
そして、本発明者らは、上述した新たな知見に基づき、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電子線を用いた試料観察方法は、試料上で電子線を走査し、電子の入射により発光する発光体に対して前記試料を透過した電子を入射させる走査工程と、前記発光体が、前記試料を透過した電子が入射する側に放射した光を検出する検出工程と、前記電子線の走査位置と、検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を得る結像工程とを含み、前記発光体の少なくとも一部を前記電子線の光軸上に位置させた状態で前記走査工程および前記検出工程を実施し、前記結像工程において明視野像を得る第一の走査透過電子像の取得工程と、前記発光体の少なくとも一部を前記電子線の光軸上からオフセットさせた状態で前記走査工程および前記検出工程を実施し、前記結像工程において暗視野像を得る第二の走査透過電子像の取得工程とを更に含み、前記第一の走査透過電子像の取得工程と、前記第二の走査透過電子像の取得工程との間で、前記試料の位置に対する前記発光体の位置を相対的に変化させることを特徴とする。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電子線を用いた試料観察方法は、試料上で電子線を走査し、電子の入射により発光する発光体に対して前記試料を透過した電子を入射させる走査工程と、前記発光体が、前記試料を透過した電子が入射する側に放射した光を検出する検出工程と、前記電子線の走査位置と、検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を得る結像工程とを含み、前記走査工程において、少なくとも一部が前記電子線の光軸上に位置する第一の発光体と、少なくとも一部が前記電子線の光軸上からオフセットした位置にあり、且つ、前記第一の発光体とは異なる波長の光を放射する第二の発光体とに対して前記試料を透過した電子を当て、前記検出工程において、前記第一の発光体が放射した光と、前記第二の発光体が放射した光とを分けて検出し、前記結像工程において、前記第一の発光体が放射した光の情報を用いて明視野像を結像し、前記第二の発光体が放射した光の情報を用いて暗視野像を結像することを特徴とする
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電子顕微鏡は、試料を設置する試料台と、前記試料台に形成された電子通過孔と、前記試料上で電子線を走査する電子線走査機構と、電子の入射により発光する発光体と、前記発光体が放射した光を検出する光検出器と、前記電子線の走査位置と、前記光検出器で検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を形成する結像機構と、前記試料の位置に対する前記発光体の位置を相対的に変化させる相対変位機構とを備え、前記発光体は、前記試料を透過した電子が入射する位置に設けられ、前記光検出器は、前記発光体が、前記試料を透過した電子が入射する側に放射した光を検出することを特徴とする。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電子顕微鏡は、試料を設置する試料台と、前記試料台に形成された電子通過孔と、前記試料上で電子線を走査する電子線走査機構と、電子の入射により発光する発光体と、前記発光体が放射した光を検出する光検出器と、前記電子線の走査位置と、前記光検出器で検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を形成する結像機構とを備え、前記発光体は、前記試料を透過した電子が入射する位置に設けられ、前記光検出器は、前記発光体が、前記試料を透過した電子が入射する側に放射した光を検出し、前記発光体が、表面の少なくとも一部が前記電子通過孔に対向する位置に設けられた第一の発光体と、表面の少なくとも一部が前記電子通過孔に対向する位置からオフセットする位置に設けられ、且つ、前記第一の発光体とは異なる波長の光を放射する第二の発光体とを含み、前記光検出器が、前記第一の発光体が放射した光と、前記第二の発光体が放射した光とを分けて検出することを特徴とする
本発明の電子線を用いた試料観察方法によれば、簡素な装置を使用し、高い自由度で良好な走査透過電子像を観察することができる。
また、本発明の電子顕微鏡用アタッチメントによれば、簡素な構成のアタッチメントを用いて、良好な走査透過電子像を高い自由度で観察することができる。
更に、本発明の電子顕微鏡は、構成が簡素であり、且つ、良好な走査透過電子像を高い自由度で観察することができる。
本発明に従う電子線を用いた試料観察方法の一例に従って試料の走査透過電子像を観察する様子を示す説明図である。 本発明に従う代表的な電子顕微鏡の構造を示す模式図である。 本発明に従う代表的な電子顕微鏡用アタッチメントを示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。 図2に示す電子顕微鏡を用いて観察した走査透過電子像であり、(a)は明視野像を示し、(b)は暗視野像を示す。 (a)および(b)は、図2に示す電子顕微鏡を用いて観察したフェライト系ステンレス鋼の走査透過電子像(明視野像および暗視野像)であり、(c)および(d)は、透過型電子顕微鏡を用いて観察したフェライト系ステンレス鋼の透過型電子顕微鏡像である。 (a)は、図2に示す電子顕微鏡を用いて観察したフェライト系ステンレス鋼の走査透過電子像(明視野像)であり、(b)は、インレンズ検出器を用いて作成したフェライト系ステンレス鋼の二次電子像であり、(c)は、チャンバー検出器を用いて作成したフェライト系ステンレス鋼の二次電子像である。 (a)は、図2に示す電子顕微鏡を用いて観察したフェライト系ステンレス鋼の走査透過電子像(暗視野像)であり、(b)は、図7(a)に示されるフェライト系ステンレス鋼の一部に対して行なったEDS分析の結果を示す図である。 (a)は、図2に示す電子顕微鏡を用いて倍率200倍、ワーキングディスタンス8.0mmで観察したCuグリッド上のカーボン薄膜の走査透過電子像(明視野像)であり、(b)は、市販の薄膜観察用SEMホルダを取り付けた走査型電子顕微鏡を用いて倍率200倍、ワーキングディスタンス2.7mmで観察したCuグリッド上のカーボン薄膜の走査透過電子像(明視野像)であり、(c)は、市販の薄膜観察用SEMホルダを取り付けた走査型電子顕微鏡を用いて倍率200倍、ワーキングディスタンス15mmで観察したCuグリッド上のカーボン薄膜の二次電子像である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
ここで、本発明の電子線を用いた試料観察方法は、各種材料や生体組織などの様々な試料について走査透過電子像を観察する際に用いることができる。そして、本発明の電子顕微鏡および電子顕微鏡用アタッチメントは、本発明の電子線を用いた試料観察方法により試料を観察する際に特に好適に用いることができる。
(電子線を用いた試料観察方法)
以下、本発明の試料観察方法の一例を用いて試料の走査透過電子像を観察する方法について、図1を参照しつつ説明する。
本発明に従う電子線を用いた試料観察方法の一例では、試料S上で電子線EBを走査し、電子の入射により発光する発光体Lに対して試料Sを透過した電子TE,SEを入射させる走査工程と、発光体Lが、試料Sを透過した電子TE,SEが入射する側に放射した光ELを検出する検出工程と、電子線EBの走査位置と、検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を得る結像工程とを実施して、試料の走査透過電子像を観察する。以下、各工程について詳細に説明する。
<走査工程>
走査工程では、試料S上で電子線EBを走査し、試料Sに照射した電子線EBの一部を発光体L側(試料Sに電子線EBを照射する側とは反対側)に透過させる。そして、走査工程では、試料Sを透過した電子TE,SEを、図1では試料Sの下側に位置する発光体Lに対して入射させる。
ここで、試料Sとしては、各種材料や生体組織などの薄片試料を用いることができる。そして、試料Sは、例えば電解研磨などの既知の手法を用いて調製することができ、試料Sの形状およびサイズは、電子線EBの一部を透過させて走査透過電子像を観察することが可能であれば、任意の形状およびサイズとすることができる。
また、電子線EBを試料S上で走査する手段としては、特に限定されることなく、電子銃、集束レンズおよび走査コイルなどの既知の電子線走査機構を用いることができる。
更に、発光体Lとしては、電子の入射により発光する既知の発光体、例えば、硫化亜鉛(ZnS)などの発光物質を含む既知の蛍光塗料を用いて形成したフィルムや板を用いることができる。
そして、走査工程では、試料Sを透過した電子、具体的には、散乱されずに透過した電子(透過電子TE)および前方散乱した電子(SE)の少なくとも一方が、発光体Lに入射し、発光体Lが発光する。なお、通常、発光体Lが放射した光ELの強度は、発光体Lに入射した電子の強度に比例する。
<検出工程>
次に、検出工程では、光検出器Dを使用して、発光体Lが、試料Sを透過した電子TE,SEが入射する側(図1では上側)に放射した光ELを検出する。具体的には、検出工程では、発光体Lが放射した光について、光検出器Dを使用し、光の強度を含む情報を取得する。
ここで、光検出器Dとしては、光電子増倍管などの既知の光検出器を用いることができる。なお、光検出器Dを用いた光ELの検出に際しては、図示しない反射ミラーなどを使用して光ELを集光してもよい。反射ミラーを使用して光ELを集光すれば、検出される光の強度を高め、光の強度を含む情報を高感度で取得することができる。
<結像工程>
そして、結像工程では、電子線EBの走査位置と、検出工程において検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を作成する。具体的には、結像工程では、光検出器Dで光が検出された際に電子線EBが走査していた位置(走査位置)と、光検出器Dで検出した光の強度とを対応付けると共に、各走査位置に対応付けられた光の強度を既知の手法で輝度変調することにより、走査透過電子像を作成する。
なお、この結像工程で得られる走査透過電子像は、前述した走査工程および検出工程を実施する際の試料Sの配置位置と発光体Lの配置位置とが図1に実線で示すような位置関係、即ち、試料Sを透過した電子TE,SEのうち、散乱されずに透過した電子TEおよび小さい角度で前方散乱した電子SEが発光体Lに入射するような位置関係にある場合には、明視野像となる。一方、前述した走査工程および検出工程を実施する際の試料Sの配置位置と発光体Lの配置位置とが図1に破線で示すような位置関係、即ち、試料Sを透過した電子TE,SEのうち、前方散乱・回折した電子SEが発光体Lに入射するような位置関係にある場合には、この結像工程で得られる走査透過電子像は、暗視野像となる。
そして、上述した試料観察方法の一例によれば、試料Sを透過した電子TE,SEを発光体Lに入射させ、発光体Lが放射した光を検出して走査透過電子像を得ているので、二次電子検出器などを用いて走査透過電子像を作成する場合とは異なり、試料の表面や裏面から発生した二次電子などを検出する虞がない。従って、例えば走査透過電子像の観察とエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いた元素分析とを同時に実施しようとした場合など、レンズと試料との間の距離(WD:ワーキングディスタンス)を大きくした場合であっても、良好な走査透過電子像を観察することができる。
また、上述した試料観察方法の一例によれば、試料Sを透過した電子TE,SEが入射する側(図1では上側)に対して発光体Lが放射した光ELを検出しているので、発光体が放射した光を検出するためのスペース(例えば、検出器などを設置するスペース)を発光体Lの図1では下側に設ける必要が無い。従って、観察に使用する装置が大型化および複雑化するのを抑制することができる。
更に、上述した試料観察方法の一例によれば、試料Sを透過した電子TE,SEが発光体Lに入射し得る位置に試料Sおよび発光体Lを配置すれば、任意の透過位置または散乱位置において電子TE,SEを発光体Lに入射させ、明視野像または暗視野像を得ることができる。従って、試料を透過した電子を絞る絞りを使用しなくても、良好な走査透過電子像を観察することができる。また、大きな角度で散乱した電子など、所望の位置に透過または散乱した電子を利用して走査透過電子像を観察することができる。更に、発光体Lのサイズおよび形状を任意に選択することができ、また、それらの変更も容易である。例えば、明視野像を得る際には、円盤状の発光体Lを使用することができ、暗視野像を得る際には、円環状の発光体Lを使用することができる。よって、高い自由度での試料の観察が可能になる。
<試料観察方法の応用例>
ここで、上述した通り、本発明に従う試料観察方法では、走査工程および検出工程を実施する際の試料Sの配置位置と発光体Lの配置位置とに応じて、明視野像または暗視野像が得られる。従って、本発明に従う試料観察方法によれば、試料を透過した電子を絞る絞り等を使用しなくても、試料Sと発光体Lとの相対的な位置関係の違いを利用することにより、同一の試料Sについて明視野像と暗視野像との双方を得ることができる。
具体的には、本発明に従う試料観察方法の一応用例では、例えば、第一の走査透過電子像の取得工程として、発光体Lの少なくとも一部を電子線EBの光軸上に位置させた状態で走査工程および検出工程を実施し、結像工程において明視野像を得た後、試料Sの位置に対する発光体Lの位置を相対的に変化させ、第二の走査透過電子像の取得工程として、発光体Lの少なくとも一部を電子線EBの光軸上からオフセットさせた状態で走査工程および検出工程を実施し、結像工程において暗視野像を得ることにより、同一の試料Sについて明視野像と暗視野像との双方を得ることができる。
ここで、第一の走査透過電子像の取得工程および第二の走査透過電子像の取得工程の実施順序は逆であってもよい。
また、第一の走査透過電子像の取得工程における、「発光体Lの少なくとも一部を電子線EBの光軸上に位置させた状態」とは、図1に実線で示すような状態、即ち、試料Sの直下に発光体Lが位置し、試料Sを透過した電子TE,SEのうち、少なくとも電子TE(散乱されずに透過した電子)が発光体Lに入射して明視野像が得られるような状態を指す。
更に、第二の走査透過電子像の取得工程における、「発光体Lの少なくとも一部を電子線EBの光軸上からオフセットさせた状態」とは、図1に破線で示すような状態、即ち、試料Sの直下からずれた位置に発光体Lが位置し、試料Sを透過した電子TE,SEのうち、少なくとも電子SE(前方散乱・回折した電子)が発光体Lに入射して暗視野像が得られるような状態を指す。なお、図1の破線では、電子SEのみが入射する位置に発光体Lを設置した場合を示している。
そして、上述した一応用例の試料観察方法によれば、試料Sの位置と発光体Lの位置との少なくとも一方を変更して走査工程、検出工程および結像工程を実施するだけで、発光体Lに入射する電子を変更し、同一の試料について明視野像と暗視野像との双方を簡便かつ容易に得ることができる。
なお、上記一応用例では、試料Sの位置と発光体Lの位置との少なくとも一方を変更することで明視野像と暗視野像とを切り替えたが、本発明に従う試料観察方法の他の応用例では、例えば、電子が入射した際に互いに異なる波長の光を放射する二種類の発光体を利用し、各発光体が放射する光を分けて検出することによっても、同一の試料について明視野像と暗視野像との双方を簡便かつ容易に得ることができる。
具体的には、本発明に従う試料観察方法の他の応用例では、少なくとも一部が電子線の光軸上に位置するように第一の発光体を配置し、且つ、第一の発光体とは異なる波長の光を放射する第二の発光体を少なくとも一部が電子線の光軸上からオフセットした位置に配置した状態で走査工程を実施する。より具体的には、図1に実線で示すような位置、即ち試料Sを透過した電子TE,SEのうち、少なくとも電子TE(散乱されずに透過した電子)が入射するような位置に第一の発光体Lを配置すると共に、図1に破線で示すような位置、即ち試料Sを透過した電子TE,SEのうち、少なくとも電子SE(前方散乱・回折した電子)が入射するような位置に第二の発光体Lを配置した状態で走査工程を実施する。
次に、検出工程において、第一の発光体Lが放射した光EL(図1中、実線で示す光EL)と、第二の発光体が放射した光EL(図1中、破線で示す光EL)とを分けて検出する。なお、2種類の光の検出は、2台の検出器の使用や、分光器の使用などの既知の手法を用いて行なうことができる。
そして、結像工程において、第一の発光体Lが放射した光ELの情報を用いて明視野像を結像し、第二の発光体Lが放射した光ELの情報を用いて暗視野像を結像する。より具体的には、第一の発光体Lが放射した光ELが検出された際に電子線EBが走査していた位置(走査位置)と、検出された光の強度とを対応付けると共に、各走査位置に対応付けられた光の強度を既知の手法で輝度変調することにより、明視野像を作成する。また、第二の発光体Lが放射した光ELが検出された際に電子線EBが走査していた位置(走査位置)と、検出された光の強度とを対応付けると共に、各走査位置に対応付けられた光の強度を既知の手法で輝度変調することにより、暗視野像を作成する。
このように、本発明に従う試料観察方法の他の応用例によれば、発光する光の波長が互いに異なる2種類の発光体を異なる位置に配置して使用することで、同一の試料について明視野像と暗視野像との双方を簡便かつ容易に得ることができる。特に、この他の応用例によれば、試料や発光体の位置を変更しなくても明視野像と暗視野像との双方を得ることができるので、より簡便かつ容易に明視野像と暗視野像との双方を観察することができる。
(電子顕微鏡)
次に、上述した本発明の試料観察方法の一例および応用例を用いて試料の走査透過電子像を観察する際に好適に使用し得る本発明の電子顕微鏡の一例について、図2および図3を参照しつつ説明する。なお、以下では、電子顕微鏡のなかでも最も普及している走査型電子顕微鏡(SEM)の試料ステージに対して本発明に従う電子顕微鏡用アタッチメントを取り付けることにより構成した電子顕微鏡について説明するが、本発明の電子顕微鏡は、本発明に従う電子顕微鏡用アタッチメントを使用したものには限定されず、以下に説明する電子顕微鏡用アタッチメントと試料ステージとを一体化したものであってもよい。但し、SEMに組み合わされている各種装置(例えば、集束イオン加工装置(FIB)など)との併用が可能であるという観点からは、SEMの試料ステージに対して本発明に従う電子顕微鏡用アタッチメントを取り付けることにより電子顕微鏡を構成することが好ましい。
ここで、図2に示す電子顕微鏡10は、光検出器Dを備える市販のSEMの試料ステージ5に対して電子顕微鏡用アタッチメント6を取り付けた例である。そして、電子顕微鏡10は、電子銃1と、電子銃1から放出された電子線EBを試料S上に集束させるための集束レンズ2と、電子線EBを試料S上で走査するための走査コイル3,4と、試料ステージ5と、試料ステージ5上に着脱自在に取り付けられた電子顕微鏡用アタッチメント6と、光検出器Dとを備えている。また、電子顕微鏡10は、電子線EBの走査位置と、光検出器Dで検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を形成する結像機構(図示せず)を更に備えている。
そして、図2に示す電子顕微鏡10では、電子源としての電子銃1と、電子銃1の下側に設けられた集束レンズ2と、集束レンズ2の下側に設けられた走査コイル3,4とが試料S上で電子線EBを走査する電子線走査機構として機能する。なお、電子線走査機構の構成は上記構成には限定されない。
また、電子顕微鏡用アタッチメント6は、試料Sを設置する試料台61と、電子の入射により発光する発光体Lが一方(図2では上側)の表面に配置された支持台64と、試料台61と支持台64とを接続する支柱63とを備えている。そして、支持台64は、発光体Lの裏面(図2では下側の面)全体を支持すると共に、ボルト等の既知の固定手段を用いてSEMの試料ステージ5に着脱自在に固定されている。なお、図示例では試料台61と支持台64とが支柱63を介して接続されているが、試料台61と支持台64とは別体で構成されていてもよい。
ここで、電子顕微鏡用アタッチメント6の平面図を図3(b)に示し、図3(b)のA−A線に沿う断面図を図3(a)に示すように、円盤状の試料台61および円柱状の支柱63は、支持台64の一方の表面に立設されている。そして、円盤状の試料台61には、図示例では4つの電子通過孔62が形成されており、試料台61の電子銃1側の表面には、当該電子通過孔62の何れか一つ(図3(b)では左下に位置する電子通過孔62)を覆うように観察対象の試料Sが設置されている。また、支柱63は、モーターなどの既知の手法を用いて、支持台64上で回転可能に、および/または、試料台61と支持台64とを図3(a)では上下方向に近接離間可能に構成されている。
なお、試料台61の電子通過孔62上および電子通過孔62の周囲の電子銃1側の表面は、試料Sが設置される試料設置位置となる。そこで、試料台61の電子通過孔62の周囲の電子銃1側の表面には、試料Sを載置するための凹部(試料設置部)を形成してもよい。また、試料台61には、試料台61に設置した試料Sを固定することで試料Sの良好な観察を可能にするための既知の固定機構(例えば、試料Sの外周縁を保持する押さえ枠など)が設けられていてもよい。
また、電子顕微鏡用アタッチメント6の支持台64は、例えば金属などの光不透過性の材料よりなり、その試料台61側の表面には、発光体Lが配置されている。具体的には、発光体Lは、支持台64の試料台61側の表面のうち、試料S上で電子線を走査した際に、試料Sを透過し、電子通過孔62を通った電子が入射し得る位置に配置されている。換言すれば、発光体Lは、試料台61側に位置する表面の少なくとも一部が電子通過孔62を望む位置に設けられている。
なお、以下に詳細に説明するように、この電子顕微鏡10では、試料Sを透過した電子が入射する側に対して発光体Lが放射した光を光検出器Dで検出して走査透過電子像を得る。そして、この一例の電子顕微鏡10では、発光体Lが裏面側に放射した光を検出する必要がないので、支持体64を光不透過性の材料で構成したり、発光体Lの裏面全体を支持体64で支持したりしているが、これらの構成は必須の構成ではなく、本発明の電子顕微鏡に使用するアタッチメントの支持体は、光透過性の材料で構成してもよいし、発光体Lの裏面の一部のみを支持してもよい。
なお、発光体Lとしては、蛍光塗料を乾燥させて得た粉体を加圧成形してなるものや、蛍光塗料を乾燥させて得た粉体を両面テープの一方の面に貼り付けたものなど、既知の発光体を使用することができる。なお、発光体Lの形状やサイズは図示例には限定されない。
電子顕微鏡10の光検出器Dは、光電子増倍管などの既知の光検出器よりなり、試料Sを透過した電子が入射する側に対して発光体Lが放射した光を検出し得る位置に設置されている。即ち、光検出器Dは、支持台64上の発光体Lを望む位置に設けられている。なお、光検出器Dは、電子顕微鏡用アタッチメント6と同様にSEMに別途取り付けても良いが、コストの観点からは、SEMに予め備え付けられている光検出器が存在する場合には、当該光検出器を光検出器Dとして使用することが好ましい。また、電子顕微鏡10は、光検出器Dを用いた光の検出に際して発光体Lが放射した光を光検出器Dに向けて集光するための反射ミラー(図示せず)を備えていてもよい。
光検出器Dで検出された光の情報を用いて走査透過電子像を形成する結像機構(図示せず)は、光検出器Dで光が検出された際に電子線EBが走査していた位置(走査位置)と、光検出器Dで検出した光の強度とを対応付けて記憶すると共に、各走査位置に対応付けられた光の強度を既知の手法で輝度変調することにより、走査透過電子像を作成する機構である。そして、結像機構としては、SEMに通常備えられている走査電子像の結像機構を利用することができる。
そして、上述した構成を有する電子顕微鏡10によれば、上述した試料観察方法の一例を用いて、良好な走査透過電子像を観察することができる。特に、電子顕微鏡10によれば、例えば走査透過電子像の観察とエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いた元素分析とを同時に実施しようとした場合など、対物レンズ(図示せず)の下面と試料Sとの間の距離(WD:ワーキングディスタンス)を大きくした場合であっても、良好な走査透過電子像を観察することができる。
また、電子顕微鏡10は、発光体Lが放射した光を検出するためのスペースを発光体Lの下側に設ける必要が無いので、構造が簡素である。
更に、電子顕微鏡10によれば、試料を透過した電子を絞る絞りを使用しなくても、良好な走査透過電子像を観察することができる。また、所望の位置に透過または散乱した電子を利用して走査透過電子像を観察することができる。更に、発光体Lのサイズおよび形状を任意に選択することができ、また、それらの変更も容易である。
また、上述した構成を有する電子顕微鏡10によれば、上述した試料観察方法の一応用例を用いて、同一の試料Sについて明視野像と暗視野像との双方を得ることができる。
ここで、電子顕微鏡10において上述した試料観察方法の一応用例を用いて明視野像および暗視野像を観察する場合、試料Sの位置に対する発光体Lの位置を相対的に変化させる手段(相対変位機構)としては、特に限定されることなく、以下の(1)〜(3)を例示することができる。
(1)支持台64上で試料台61を回転させる支柱63、および/または、試料台61と支持台64とを近接離間させる支柱63。
(2)試料台61に設けられた複数の電子通過孔62よりなる複数の試料設置位置。
(3)支持台64に対して着脱自在な発光体L。
上記(1)の手段によれば、例えば、発光体Lの少なくとも一部が電子線EBの光軸O上(即ち、電子通過孔62に対向する位置)に位置した状態で明視野像を観察した後、試料台61上の試料Sの位置および支持台64上の発光体Lの位置を固定した状態で、支柱63により試料台61と支持台64との相対的な位置関係を変更する(例えば、試料台61を回転させる、或いは、試料台61と支持台64とを近接させる)ことにより、発光体Lの少なくとも一部が電子線EBの光軸O上からオフセットした状態とし、暗視野像を観察することができる。
また、上記(2)または(3)の手段によれば、例えば、発光体Lの少なくとも一部が電子線EBの光軸O上に位置した状態で明視野像を観察した後、試料Sまたは発光体Lの設置位置を変更する(例えば、試料Sを別の電子通過孔62の上に設置する、或いは、発光体Lの設置位置をずらす)ことにより、発光体Lの少なくとも一部が電子線EBの光軸O上からオフセットした状態とし、暗視野像を観察することができる。
なお、試料Sおよび発光体Lの位置の変更の容易性の観点からは、上記(1)を採用することが好ましく、コスト削減および装置の簡素化の観点からは、上記(2)または(3)を採用することが好ましい。
更に、上述した構成を有する電子顕微鏡10によれば、上述した試料観察方法の他の応用例を用いて、同一の試料Sについて明視野像と暗視野像との双方を簡便かつ容易に得ることができる。
なお、上述した試料観察方法の他の応用例を用いて試料Sの明視野像と暗視野像との双方を観察する場合には、例えば、図3(a),(b)のL1に示す位置に第一の発光体を配置し、図3(a),(b)のL2に示す位置に第二の発光体を配置するなど、表面の少なくとも一部が電子通過孔62に対向するように第一の発光体を配置すると共に、表面の少なくとも一部が電子通過孔62に対向する位置からオフセットした場所に位置するように第二の発光体を配置すればよい。また、光検出器Dとしては、第一の発光体L1が放射した光ELと、第二の発光体L2が放射した光ELとを分けて検出可能な既知の検出器を使用すればよい。なお、第一の発光体および第二の発光体の形状および配置は図3(a),(b)に示す位置には限定されず、例えば、電子通過孔62の直下に円盤状の第一の発光体を配置し、当該第一の発光体を囲繞するように円環状の第二の発光体を配置することなどもできる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss製、SUPRA 55-VP)の試料ステージに対して図3に示す電子顕微鏡用アタッチメントを取り付けることにより、図2に示すような構成を有し、走査透過電子像の観察が可能な電子顕微鏡を作製した。なお、光検出器としては、走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss製、SUPRA 55-VP)が予め備えている光検出器(光電子増倍管)を用いた。
次に、1.5質量%のCuを含むフェライト系ステンレス鋼を熱処理し、Cu粒子を析出させた後、直径3mmの薄片にし、電解研磨により中央部に小さい孔があくまで薄くして観察用試料とした。
また、ZnSを含む蛍光塗料を乾燥させて得た粉体を両面テープの一方の面に貼り付け、発光体を作製した。
そして、電子顕微鏡用アタッチメントの試料台の電子通過孔の上に観察用試料を設置すると共に、図3に示すL1の位置に発光体を設置して、観察用試料の孔の周囲を観察した。なお、観察条件は、加速電圧:20kV、ワーキングディスタンスWD:2.7mm、倍率:500倍であった。その結果、図4(a)に示すような明視野像が得られた。
次に、発光体を支持台から剥離し、発光体の設置位置を図3に示すL2の位置に変更して、再び観察用試料の孔の周囲を観察した。その結果、試料と孔のコントラストが逆転した、図4(b)に示すような暗視野像が得られた。
この結果より、本発明に係る電子顕微鏡によれば、試料の位置と発光体の位置とを相対的に変化させることにより、明視野像と暗視野像との双方が得られることが分かる。
(実施例2)
次に、倍率を50,000倍に変更した以外は実施例1と同様にして、観察用試料について明視野像および暗視野像を観察した。得られた明視野像を図5(a)に示し、得られた暗視野像を図5(b)に示す。
また、同一の観察用試料について、透過型電子顕微鏡(日本電子製、JEM2010F)を使用し、加速電圧:200kV、倍率:100,000倍の条件で観察を行なった。得られた明視野像を図5(c)に示し、分析視野を図5(d)に示す。
図5(a)〜(d)より、本発明に係る電子顕微鏡によれば、透過型電子顕微鏡と殆ど同じレベルで、50nm程度以下の大きさのCu粒子およびCu粒子が抜け落ちた穴(Cu粒子脱落部)が観察できることが分かる。従って、本発明に係る電子顕微鏡によれば、良好な走査透過電子像が得られることが分かる。
また、図5(a),(b)より、Cu粒子およびCu粒子脱落部のコントラストが、発光体の位置を変更することにより逆転していることから、ナノレベルの高倍率観察でも、明視野像と暗視野像との双方が得られることが分かる。
(実施例3)
倍率を50,000倍に変更した以外は実施例1と同様にして、観察用試料の明視野像を観察した。得られた明視野像を図6(a)に示す。
また、同時に、インレンズ検出器およびチャンバー検出器を使用して、観察用試料の二次電子像を得た。インレンズ検出器を用いて得た二次電子像を図6(b)に示し、チャンバー検出器を用いて得た二次電子像を図6(c)に示す。
図6(a)〜(c)より、図6(a)に示す明視野像では全てのCu粒子およびCu粒子脱落部が観察され、インレンズ検出器を用いた二次電子像では観察用試料の表面側のCu粒子脱落部が観察され、チャンバー検出器を用いた二次電子像ではCu粒子と観察用試料の両面のCu粒子脱落部が観察されることが分かる。従って、本発明に係る電子顕微鏡によれば、走査透過電子像と、インレンズ検出器およびチャンバー検出器を使用した二次電子像などの異なる像とを組み合わせて同時に観察することにより、Cu粒子、試料の表面側の粒子脱落部および試料の裏面側の粒子脱落部のそれぞれの位置を特定することが可能となることが分かる。
(実施例4)
ワーキングディスタンスを8.0mmにし、倍率を50,000倍に変更した以外は実施例1と同様にして、観察用試料の暗視野像を観察した。得られた暗視野像を図7(a)に示す。
また、同時に、図7(a)に示す暗視野像の微小な領域について、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いた元素分析を行なった。なお、EDSを用いた元素分布は、ブルカー社製のシリコンドリフト検出器を用いてスペクトラルマッピングモードで測定した。EDS分析の結果を図7(b)に示す。
図7(a)および(b)より、暗視野像の明るい粒子状部分に対応するCu粒子の分布が明瞭に検出されていること、および、20nm程度の粒子からもCuの信号が検出されていることが分かる。一方、図7(a)および(b)より、暗視野像の暗い粒子状部分は、Fe、CrおよびCuなどの試料に起因する元素の信号が弱いことから、粒子が脱落した穴であることが判定できる。
これらのことから、走査透過電子像とEDS分析とを併用して、高い空間分解能での観察および元素分析が同時にできることがわかる。
(実施例5)
電子を透過する厚さのカーボン薄膜をCuグリッドの上に載せてなる観察用試料について、実施例1と同様の装置構成を有する電子顕微鏡(図3に示す電子顕微鏡用アタッチメントを取り付けた走査型電子顕微鏡)と、市販の薄膜観察用SEMホルダを取り付けた走査型電子顕微鏡とを用いて観察を行った。
具体的には、実施例1と同様の装置構成を有する電子顕微鏡を使用し、加速電圧:30kV、ワーキングディスタンスWD:8.0mm、倍率:200倍の観察条件で観察用試料の走査透過電子像(明視野像)を観察した。得られた明視野像を図8(a)に示す。
また、走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM7001F)に市販の薄膜観察用SEMホルダを取り付けてなる比較例電子顕微鏡を使用し、加速電圧:30kV、ワーキングディスタンスWD:2.7mm、倍率:200倍の観察条件で観察用試料の走査透過電子像(明視野像)を観察した。得られた明視野像を図8(b)に示す。なお、市販の薄膜観察用SEMホルダは、試料を支持する支持部と、試料を透過した電子を絞る固定型の絞り部と、絞り部を通過した電子線が照射されることで二次電子を発生する二次電子発生部とを備える試料ホルダである。そして、比較例電子顕微鏡では、走査型電子顕微鏡に備わっているチャンバー検出器(Everhart-Thornley検出器)を使用し、薄膜観察用SEMホルダの二次電子発生部から発生した二次電子を検出することにより走査透過電子像を得た。
更に、比較例電子顕微鏡を使用し、ワーキングディスタンスを、この比較例電子顕微鏡のEDS分析時の条件である15mmに変更して観察用試料の観察を行ったところ、走査透過電子像の観察はできず、試料の上面からの二次電子像が観察された。得られた二次電子像を図8(c)に示す。
図8(a)および(b)より、本発明に係る電子顕微鏡では全視野でグリッド孔(約70μm×70μm)を観察できるのに対し(図8(a)参照)、比較例電子顕微鏡では円形の範囲(電子線が絞り部を通過した部分)でしかグリッド孔を観察できないことが分かる(図8(b)参照)。よって、本発明に係る電子顕微鏡によれば、観察用試料の広い範囲を観察可能であることが分かる。また、比較例電子顕微鏡では固定型の絞り部を有する薄膜観察用SEMホルダを使用しているために固定された円形の範囲しか観察できないが、本発明に係る電子顕微鏡によれば、蛍光体の設置範囲を調整し、試料台を動かすことで、図8(a)に示す視野の更に外側も容易に観察することができる。
また、図8(b)および(c)より、比較例電子顕微鏡では、ワーキングディスタンスを大きくすると、試料の上面から発生した二次電子も多量に検出してしまうため、走査透過電子像の観察ができなくなり、試料の上面からの二次電子像のみが観察できることが分かる。よって、比較例電子顕微鏡では、走査透過電子像を観察しながらEDSによる分析を行うことができないことが分かる。一方、前述のとおり本発明に係る電子顕微鏡ではワーキングディスタンスの大きさにかかわらず走査透過電子像を観察できる。
以上より、本発明に係る電子顕微鏡によれば、広範囲かつ幅広い分析条件で走査透過電子像を観察し得ることが分かる。
なお、上記では、本発明に係る電子顕微鏡と比較例電子顕微鏡とで異なる走査型電子顕微鏡を用いているが、観察結果には本質的な差は生じない。また、図8(a)と図8(b)とでワーキングディスタンスの大きさが異なるが、観察結果には本質的な差は生じない。
本発明の電子線を用いた試料観察方法によれば、簡素な装置を使用し、高い自由度で良好な走査透過電子像を観察することができる。
また、本発明の電子顕微鏡用アタッチメントによれば、簡素な構成のアタッチメントを用いて、良好な走査透過電子像を高い自由度で観察することができる。
更に、本発明の電子顕微鏡は、構成が簡素であり、且つ、良好な走査透過電子像を高い自由度で観察することができる。
1 電子銃
2 集束レンズ
3,4 走査コイル
5 試料ステージ
6 電子顕微鏡用アタッチメント
10 電子顕微鏡
61 試料台
62 電子通過孔
64 支持台
63 支柱
S 試料
L 発光体
EB 電子線
TE,SE 電子
D 光検出器
O 光軸

Claims (4)

  1. 試料上で電子線を走査し、電子の入射により発光する発光体に対して前記試料を透過した電子を入射させる走査工程と、
    前記発光体が、前記試料を透過した電子が入射する側に放射した光を検出する検出工程と、
    前記電子線の走査位置と、検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を得る結像工程と、
    を含み、
    前記発光体の少なくとも一部を前記電子線の光軸上に位置させた状態で前記走査工程および前記検出工程を実施し、前記結像工程において明視野像を得る第一の走査透過電子像の取得工程と、
    前記発光体の少なくとも一部を前記電子線の光軸上からオフセットさせた状態で前記走査工程および前記検出工程を実施し、前記結像工程において暗視野像を得る第二の走査透過電子像の取得工程と、
    を更に含み、
    前記第一の走査透過電子像の取得工程と、前記第二の走査透過電子像の取得工程との間で、前記試料の位置に対する前記発光体の位置を相対的に変化させる、電子線を用いた試料観察方法。
  2. 試料上で電子線を走査し、電子の入射により発光する発光体に対して前記試料を透過した電子を入射させる走査工程と、
    前記発光体が、前記試料を透過した電子が入射する側に放射した光を検出する検出工程と、
    前記電子線の走査位置と、検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を得る結像工程と、
    を含み、
    前記走査工程において、少なくとも一部が前記電子線の光軸上に位置する第一の発光体と、少なくとも一部が前記電子線の光軸上からオフセットした位置にあり、且つ、前記第一の発光体とは異なる波長の光を放射する第二の発光体とに対して前記試料を透過した電子を当て、
    前記検出工程において、前記第一の発光体が放射した光と、前記第二の発光体が放射した光とを分けて検出し、
    前記結像工程において、前記第一の発光体が放射した光の情報を用いて明視野像を結像し、前記第二の発光体が放射した光の情報を用いて暗視野像を結像する、電子線を用いた試料観察方法。
  3. 試料を設置する試料台と、
    前記試料台に形成された電子通過孔と、
    前記試料上で電子線を走査する電子線走査機構と、
    電子の入射により発光する発光体と、
    前記発光体が放射した光を検出する光検出器と、
    前記電子線の走査位置と、前記光検出器で検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を形成する結像機構と、
    前記試料の位置に対する前記発光体の位置を相対的に変化させる相対変位機構と、
    を備え、
    前記発光体は、前記試料を透過した電子が入射する位置に設けられ、
    前記光検出器は、前記発光体が、前記試料を透過した電子が入射する側に放射した光を検出する、電子顕微鏡。
  4. 試料を設置する試料台と、
    前記試料台に形成された電子通過孔と、
    前記試料上で電子線を走査する電子線走査機構と、
    電子の入射により発光する発光体と、
    前記発光体が放射した光を検出する光検出器と、
    前記電子線の走査位置と、前記光検出器で検出された光の情報とを用いて走査透過電子像を形成する結像機構と、
    を備え、
    前記発光体は、前記試料を透過した電子が入射する位置に設けられ、
    前記光検出器は、前記発光体が、前記試料を透過した電子が入射する側に放射した光を検出し、
    前記発光体が、表面の少なくとも一部が前記電子通過孔に対向する位置に設けられた第一の発光体と、表面の少なくとも一部が前記電子通過孔に対向する位置からオフセットする位置に設けられ、且つ、前記第一の発光体とは異なる波長の光を放射する第二の発光体とを含み、
    前記光検出器が、前記第一の発光体が放射した光と、前記第二の発光体が放射した光とを分けて検出する、電子顕微鏡。
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