JP6191181B2 - 熱交換器及び吸着式ヒートポンプ - Google Patents
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Description
また、蒸発器及び凝縮器の機能を兼ね備えた蒸発凝縮器として、一つの容器内で作動流体の蒸発及び凝縮を行う蒸発凝縮器も知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、気液分離室の一部に液相出口管に向かう溝付き部を設け、気液分離室で気液二相流を気相と液相とに分離し、液相を上記溝付き部によって液相出口管に導くように構成された気液分離装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、この構成では、作動流体が伝熱面で凝縮した後、凝縮した(即ち、液体状態の)作動流体がこの伝熱面の少なくとも一部から重力の作用によって垂れ落ちるため、作動流体を蒸発させるための有効伝熱面積が小さくなる。即ち、伝熱面のうち、作動流体を凝縮させるための熱伝達は行うが作動流体を蒸発させるための熱伝達は行わない領域が大きくなる。このため、作動流体を蒸発させる際の伝熱面積のロスが大きく、蒸発の効率が低いという問題がある。
また、上記特許文献3に記載の気液分離装置では、気液分離室の一部に溝付き部が設けられてはいるものの、かかる溝付き部は液相の流れを方向付けして排出するための手段であり、壁面に液体を保持する(留める)手段ではない。
即ち、第1の発明である熱交換器は、作動流体の蒸発及び凝縮を行うとともに、凝縮した作動流体を保持する保持構造を有する伝熱面と、前記保持構造に保持された作動流体との間で熱交換する熱交換流体が流通する流路と、を備える。
従って、第1の発明に係る熱交換器によれば、作動流体を蒸発させる際の伝熱面積のロスを低減でき、作動流体を効率よく蒸発させることができる。
また、「体積力によって伝熱面の少なくとも一部から作動流体が脱離する現象」の概念には、重力によって伝熱面の少なくとも一部から作動流体が垂れ落ちる現象が含まれる。
ここでいう「毛管現象」とは、液体状態の作動流体に対し伝熱面の方向への引きつける力が働く現象を指す。ここでいう「毛管現象」の原理は、一般的な毛管現象(液体中に毛管を立てたときに、毛管内の液面が毛管外の液面よりも上がる現象)の原理と同様である。
ここで、凹部又は複数の突起物は、液体状態の作動流体に毛管現象を生じさせる凹部又は複数(好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上)の突起物であることが好ましい。この場合、凹部、又は、突起物同士の間隙が、毛管現象を生じさせる「毛管」に相当する。
上記凹部の数については、毛管現象を生じさせる観点からは特に制限はなく、単数であっても複数であってもよい。但し、より多くの量の作動流体を保持する観点からは、凹部の数は複数であることが好ましい。
上記突起物の形状には特に制限はないが、少なくとも一部が、角柱形状、円柱形状、楕円柱形状、角錐形状、円錐形状、又は楕円錐状である形状が挙げられる。
ここで、体積力の具体例については前述のとおりである。
Lc1・σcosθ1 > ρaV1 ・・・式(2)
〔式(2)において、Lc1は、前記凹部の周長さ(m)を表し、σは、前記凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、θ1は、前記凝縮した作動流体と前記凹部の壁面との接触角(°)を表し、ρは、前記凝縮した作動流体の密度(kg/m3)を表し、aは、前記凝縮した作動流体に働く加速度(m/s2)を表し、V1は、前記凹部に保持される作動流体の体積(m3)を表す。〕
σ、θ1、ρ、及びaが固定された条件下では、式(2)は、実質的にLc1とV1との関係、ひいては凹部の周長さと凹部の深さとの関係を示している。
κ−1 = (σ/ρg)1/2 ・・・ 式(1)
〔式(1)において、κ−1は、毛管長(m)を表し、σは、前記凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、ρは、前記凝縮した作動流体の密度(kg/m3)を表し、gは重力加速度(m/s2)を表す。〕
また、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さは、開口部が偶数角形状(例えば、矩形状又は六角形状)である場合には、開口部の対辺間距離の最小値に相当する(以下、同様である)。
また、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さは、開口部が長尺形状である場合にはこの長尺形状の幅方向長さに相当する(以下、同様である)。
また、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さは、開口部が円形状である場合にはこの円形状の直径を指し、開口部が楕円形状である場合にはこの楕円形状の短軸長さを指す(以下、同様である)。
また、重力加速度gは9.8(m/s2)とする(以下、同様である)。
この態様では、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが毛管長κ−1よりも小さくなり、保持構造に保持された作動流体(水)に働く毛管力が作動流体(水)に働く重力よりも大きくなるので、毛管現象をより効果的に利用することができ、凹部(保持構造)で作動流体をより効果的に保持できる。
この態様では、上記比率〔長軸長さ/短軸長さ〕が3.0を超える場合と比較して、凹部の壁面(底面及び側壁面)と熱交換流体との間での熱伝達の効率が向上するので、作動流体の蒸発及び凝縮をより効率よく行うことができる。例えば、作動流体を蒸発させる際には、作動流体を取り囲む凹部の壁面(底面及び側壁面)全体を通じてこの作動流体を効率よく加熱することができるので、作動流体をより効率よく蒸発させることができる。
図1は、第1実施形態に係る熱交換器10の概略斜視図であり、図2は、この熱交換器10を図1のA−A線及び作動流体F1の流通方向に沿って切断したときの概略断面図であり、図3は、熱交換器10を図1のB−B線及び作動流体F1の流通方向に沿って切断したときの概略断面図である。
蒸発凝縮室20と流路30とは隔壁を隔てて互いに分離されており、これにより、流路30の一端から供給され他端から排出される熱交換流体F2と、蒸発凝縮室20内の作動流体F1と、の間で熱交換を行えるようになっている。
即ち、蒸発凝縮室20の壁面の一部は、熱交換流体F2と作動流体F1とが熱交換するための伝熱面となっている。詳細には、本実施形態における伝熱面は、蒸発凝縮室20内の二対の側壁面のうち、面積が広い方の一対の側壁面である。また、伝熱面には、後述する複数の凹部24の壁面(側壁面及び底面)も含まれる。
直交流型の熱交換器の構成としては、例えば、特開2012−172902号公報や特開2012−163264公報に記載の熱交換型反応器の構成を参照することができる。
また、図1では、蒸発凝縮室20間に一つの流路30が配置された構成となっているが、蒸発凝縮室20間に二つ以上の流路30が配置された構成であってもよい。
本実施形態では、これらの凹部24によって、凝縮した作動流体F1(液体)が保持される。
図4は、凹部24に凝縮した作動流体F1(液体)が保持されている様子を示す概略断面図であり、図2の一部の拡大に相当する図である。
図4に示すように、本実施形態では、蒸発凝縮室20内で凝縮した作動流体F1は、毛管現象により、凹部24内に液体状態で保持される。
なお、凹部24の数は、図3に示す数に限定されないことはもちろんであり、蒸発凝縮室内に保持される作動流体F1の体積や、熱交換器10に入出力される熱量等を考慮して適宜設定される。
作動流体F1は、単一物質を用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
このうち、熱交換器10を吸着器と組み合わせて吸着式ヒートポンプを構成する場合、即ち、熱交換器10を吸着式ヒートポンプ用の熱交換器(蒸発凝縮器)として用いる場合には、吸着器内の吸着材(例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等)への吸脱着特性に優れる観点から、水、アンモニア、メタノール、エタノールが好適である。
熱交換流体F2としては、エタノール等のアルコール、水、油類、これらの混合物等、熱交換流体として通常用いられる流体(好ましくは液体)を用いることができる。熱交換流体F2としては、単一物質を用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
熱交換流体F2の温度(即ち、熱交換器10の作動温度)には特に制限はないが、5℃以上90℃以下が好ましく、5℃以上80℃以下がより好ましく、5℃以上70℃以下が更に好ましく、5℃以上50℃以下が特に好ましい。
なお、凹部24の壁面(側壁面及び底面)には、公知の方法により表面処理(例えば親水化処理)が施されていてもよい。
熱交換器10では、作動流体F1の凝縮を行う際には、流路30に供給された熱交換流体F2の熱に基づき、伝熱面及び伝熱面の近傍に存在する気体状態の作動流体F1が冷却されて凝縮する。凝縮した作動流体F1は、凹部24内に液体状態で保持される(図4参照)。
一方、作動流体F1の蒸発を行う際には、流路30に供給された熱交換流体F2の熱に基づき、凹部24内に保持されている液体状態の作動流体F1が加熱されて蒸発する。
このため、熱交換器10によれば、作動流体F1を蒸発させる際の伝熱面積のロスを低減できる(即ち、作動流体の蒸発及び凝縮を行うための有効伝熱面積を高くすることができる)。
よって、熱交換器10によれば、作動流体F1を効率よく蒸発させることができる。
熱交換器10の姿勢の一例としては、作動流体F1の流通方向(例えば蒸発凝縮室20外から蒸発凝縮室20内に向かう方向)を重力方向とする例が挙げられる。
なお、凹部24の開口部の幅方向長さWは、凹部24の開口部の内接楕円の短軸長さに相当する。
〔式(1)において、κ−1は、毛管長(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m3)を表し、gは重力加速度(m/s2)を表す。〕
下記表1〜表4において、「温度」は、液体状態の作動流体の温度を示している。
例えば、熱交換流体F2の温度(熱交換器10の作動温度)が5℃以上90℃以下である場合であって、作動流体F1が水であるときは、凹部24の開口部の幅方向長さWは、2.48×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上2.48×10−3m以下)であることが好ましい(表1参照)。また、熱交換流体F2の温度が5℃以上80℃以下である場合であって、第2流体F2が水であるときは、幅方向長さWは、2.55×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上2.55×10−3m以下)であることが好ましい(表1参照)。
また、熱交換流体F2の温度が5℃以上90℃以下である場合であって、作動流体F1がアンモニアであるときは、凹部24の開口部の幅方向長さWは、0.96×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上0.96×10−3m以下)であることが好ましい(表2参照)。また、熱交換流体F2の温度が5℃以上80℃以下である場合であって、第2流体F2がアンモニアであるときは、幅方向長さWは、1.26×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.26×10−3m以下)であることが好ましい(表2参照)。
また、熱交換流体F2の温度が5℃以上90℃以下である場合であって、作動流体F1がメタノールであるときは、凹部24の開口部の幅方向長さWは、1.47×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.47×10−3m以下)であることが好ましい(表3参照)。また、熱交換流体F2の温度が5℃以上80℃以下である場合であって、第2流体F2がメタノールであるときは、幅方向長さWは、1.53×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.53×10−3m以下)であることが好ましい(表3参照)。
また、熱交換流体F2の温度が5℃以上90℃以下である場合であって、作動流体F1がエタノールであるときは、凹部24の開口部の幅方向長さWは、1.46×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.46×10−3m以下)であることが好ましい(表4参照)。また、熱交換流体F2の温度が5℃以上80℃以下である場合であって、第2流体F2がエタノールであるときは、幅方向長さWは、1.53×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.53×10−3m以下)であることが好ましい(表4参照)。
なお、ここでいう体積力としては、重力以外にも、慣性力(例えば遠心力)等の、伝熱面の少なくとも一部から作動流体F1を脱離させる方向の力も挙げられる。
Lc1・σcosθ1 > ρaV1 ・・・式(2)
〔式(2)において、Lc1は、前記凹部の周長さ(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、θ1は、凝縮した作動流体と前記凹部の壁面との接触角(°)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m3)を表し、aは、凝縮した作動流体に働く加速度(m/s2)を表し、V1は、前記凹部に保持される作動流体の体積(m3)を表す。〕
ここでいう体積力が重力である場合、aで表される加速度は、重力加速度gである。
また、作動流体F1と、凹部の側壁の材質及び凹部の側壁の表面性状と、が特定されれば、θ1が特定される。
また、熱交換器10に慣性力が加わらない条件下では、aは重力加速度gと定まる。
以上の点を考慮すると、σ、θ1、ρ、及びaが特定された条件下では、式(2)は、実質的にはLc1とV1との関係、即ち凹部24の周長さ(2×幅方向長さW+2×長手方向長さL)と凹部24の深さDとの関係を示している。
矩形状以外の形状としては、矩形状以外の四角形状(矩形状以外の平行四辺形状、台形状など)を含む多角形状、円形状、楕円形状、長尺形状等が挙げられる。
開口部の形状としては、伝熱面に凹部を配列させる際の配列密度(即ち、伝熱面の単位面積当たりの液保持量)や加工性等の観点から、平行四辺形状(例えば図3参照)、台形状、又は六角形状(例えば図5参照)が好ましい。
例えば、流路30の両端側には、熱交換流体F2用の配管等との接続部が設けられていてもよい。また、蒸発凝縮室20の開口部側には、他の熱交換器や作動流体F1の蒸気管等との接続部(例えば、後述の接続部16)が設けられていてもよい。また、これらの接続部は、熱交換器筐体12と一体となっていてもよい。
図5は、第2実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図であり、熱交換器10のB−B線断面図(図3)に対応する図である。
図5に示すように、第2実施形態に係る熱交換器の構成は、伝熱面に設けられた凹部を、開口部が矩形状である凹部24から、開口部が正六角形状である凹部34に変更したこと以外は第1実施形態に係る熱交換器10の構成と基本的に同様であり、好ましい態様や変形例も同様である。詳細には、各凹部34は、一端に正六角形状の開口部を有する正六角柱状空間となっている。
凹部34によっても凹部24と同様にして作動流体F1を保持することができる。このため、第2実施形態に係る熱交換器によれば、第1実施形態に係る熱交換器10と同様の効果が奏される。
また、この第2実施形態では、複数の凹部34の配列は、ハニカム状の配列となっている。これにより、第1実施形態(マトリックス状の配列)と同様に、伝熱面における複数の凹部34の配列密度が高く、即ち、伝熱面の単位面積当たりの液保持量が高くなっている。
図6は、第3実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図であり、熱交換器10のB−B線断面図(図3)に対応する図である。
図6に示すように、第3実施形態に係る熱交換器の構成は、伝熱面に設けられた凹部を、開口部が矩形状である凹部24から、開口部が長尺形状である凹部44に変更したこと以外は第1実施形態に係る熱交換器10の構成と基本的に同様であり、好ましい態様や変形例も同様である。
ここで、開口部が長尺形状である凹部とは、溝(groove)状の凹部を指す。
凹部44(溝状の凹部)によっても凹部24と同様にして作動流体F1を保持することができる。このため、第2実施形態に係る熱交換器によれば、第1実施形態に係る熱交換器10と同様の効果が奏される。
特に、凹部44の開口部(長尺形状)の長手方向を、重力方向に対して交差(好ましくは直交)させた場合には、伝熱面の少なくとも一部から作動流体F1が垂れ落ちる現象をより抑制できる。
図7は、第4実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図であり、熱交換器10のB−B線断面図(図3)に対応する図である。
図7に示すように、第3実施形態に係る熱交換器の構成は、伝熱面に設けられた保持構造としての凹部24が、保持構造としての複数の突起物(ピン54)に変更したこと以外は第1実施形態に係る熱交換器10の構成と基本的に同様であり、好ましい態様や変形例も同様である。
複数のピン54によっても凹部24と同様にして作動流体F1を保持することができる。このため、第4実施形態に係る熱交換器によれば、第1実施形態に係る熱交換器10と同様の効果が奏される。第4実施形態では、液体状態の作動流体F1が、ピン54同士の間隙に、毛管現象によって保持される。
複数のピン54が設けられた伝熱面の構成については、公知のピンフィンの構成を適宜参照することができる。
ピン54とピン54との最近接距離の好ましい範囲は、第1実施形態における凹部24の開口部の幅方向長さWの好ましい範囲と同様である。
また、ピン54の材質の好ましい範囲は、第1実施形態における熱交換器筐体12の材質の好ましい範囲と同様である。
また、ピン54は、柱形状以外の部分を有していてもよく、例えば、頭部と柱形状の胴部とからなる釘形状等であってもよい。
また、保持構造としての突起物の形状は、柱形状以外にも、錐形状(例えば、角錐形状、円錐形状、楕円錐形状等)や、後述する第5実施形態における十字型突起物のようなその他の形状の突起物が挙げられる。
この第4実施形態のように、保持構造として複数の突起物を備えた態様の熱交換器でも、毛管力と体積力との関係について、近似的に、第1実施形態で説明した式(2)を適用することができる。
より具体的には、保持構造として複数の突起物を備えた態様の熱交換器では、下記式(3)で表される関係が満たされることが好ましい。
〔式(3)において、Lc2は、4つの突起物から構成される最小面積の格子(図7中の最小面積の格子56)の周長さ(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、θ2は、凝縮した作動流体と突起物の表面との接触角(°)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m3)を表し、aは、凝縮した作動流体に働く加速度(m/s2)を表し、V2は、前記最小面積の格子に保持された作動流体の体積(m3)を表す。〕
図8は、第5実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図であり、熱交換器10のB−B線断面図(図3)に対応する図である。
図8に示すように、第3実施形態に係る熱交換器の構成は、伝熱面に設けられた保持構造としての凹部24を、保持構造としての複数の十字型突起物64に変更したこと以外は第1実施形態に係る熱交換器10の構成と基本的に同様であり、好ましい態様や変形例も同様である。
ここで、複数の十字型突起物64全体の形状は、第1の実施形態に係る熱交換器10において、複数の凹部24を確定する隔壁の一部(詳細には、凹部24の四辺に相当する位置)に切れ込みが設けられた形状に相当する。
この第5実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が奏され、しかも、切れ込みを設けた分、熱交換器の軽量化が図られる。
例えば第1〜第5の実施形態以外にも、伝熱面に、保持構造として金属繊維構造体(ナスロン(登録商標)など)や多孔体などを貼り付けた形態も挙げられる。
以下、吸着式ヒートポンプについて説明する。
本発明の吸着式ヒートポンプは、本発明の熱交換器と、前記作動流体の吸着及び脱着を行う吸着材を含む吸着器と、を備え、前記熱交換器と前記吸着器との間で前記作動流体の授受を行うことにより作動する。
吸着器としては公知の吸着器を用いることができるが、例えば、特開2012−172902号公報や特開2012−163264公報に記載の熱交換型反応器の構成などを適宜参照することができる。
図9に示すように、吸着式ヒートポンプ100は、上記第1実施形態に係る熱交換器10、作動流体F1の吸着及び脱着を行う吸着材122を含む吸着器110、並びに、熱交換器10と吸着器110とを接続する接続部16及び接続部116を備えて構成されている。
吸着器110の吸着室120の構成は、熱交換器10の蒸発凝縮室20において、伝熱面に設けられた保持構造(凹部24)が、伝熱面に設けられた吸着材122に変更されたこと以外は熱交換器10の蒸発凝縮室20の構成と基本的に同様である。
このうち、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲルが好ましく、活性炭、ゼオライト、シリカゲルが更に好ましく、ゼオライト、シリカゲルが特に好ましい。
作動流体F1として水を用いる場合には、吸着材としては、ゼオライト、シリカゲルが特に好ましく、ゼオライトが最も好ましい。
吸着材122は、吸着材(及び必要に応じバインダー等のその他の成分)を含む吸着材層の形態となっていてもよい。
また、熱交換器10と吸着器110とを接続する接続部16及び接続部116としては、それぞれ、フランジ部材等の熱交換器10と吸着器110とを気密状態で接続し得る部材を用いることができる。また、熱交換器10及び接続部16、吸着器110及び接続部116、並びに、接続部16及び接続部116のうちの少なくとも一つは、一体に成形されていてもよい。
しかし、熱交換器10は保持構造としての凹部24を備えており、姿勢に依らず、液体状態の作動流体F1を保持できるものである。
従って、この吸着式ヒートポンプ100の姿勢は上記の一例以外にも、吸着器110を重力方向側に、熱交換器10を重力方向とは反対側に、それぞれ配置させた姿勢、作動流体F1の流通方向が重力方向に対し交差(例えば直交)する姿勢等、その他の姿勢であってもよい。
脱着モードでは、吸着器110の流路130に供給された熱交換流体の熱により、吸着室120内の吸着材122(例えばゼオライト)が加熱され、吸着材122から作動流体F1(例えば水)が脱着する。吸着材122から脱着された気体状態の作動流体F1は、熱交換器10の蒸発凝縮室20に供給され、蒸発凝縮室20内で凝縮する。凝縮した作動流体F1は、蒸発凝縮室20の壁面(伝熱面)に設けられた凹部に、毛管現象によって保持される。
吸着モードでは、蒸発凝縮室20内の凹部に保持された液体状態の作動流体F1が、流路30を流通する熱交換流体F2の熱によって加熱されて蒸発する。蒸発した作動流体F1は蒸発凝縮室20から放出され、吸着器110の吸着室120に供給され、吸着室120内の吸着材122に吸着する。
その他、吸着式ヒートポンプの作動原理の詳細については、例えば、「伝熱 Journal of the Heat Transfer Society of Japan Vol.45,No.192」(社団法人日本伝熱学会、2006年7月)の第20ページ〜第21ページを参照することができる。
このために、熱交換器10に設けられた全ての凹部24が保持できる最大量の液体の質量Aと、吸着器110内の吸着材122が吸着できる最大量の作動流体F1を凝縮させたときの質量Bとが、質量A≧質量Bの関係を満たすことが好ましい。
これにより、脱着モード時に、吸着材122から脱着した作動流体F1の全て(全質量)を熱交換器10における保持構造(凹部24)で保持できるので、吸着モード時に熱交換器10で作動流体F1を蒸発させる際の効率が向上する(即ち、作動流体F1を蒸発させる際の顕熱ロスが低減される)。従って、熱の利用効率がより向上する。
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプ100の具体例(試算例)について説明する。
この具体例では、複数の凹部24が全て同じサイズであり、かつ、複数の凹部24が縦方向及び横方向とも同じ間隔(以下、この間隔をWc(m)とする)で、マトリクス状に配列されているものとする。また、凹部24の幅方向長さをW(m)、凹部24の長手方向長さをL(m)、凹部24の深さをD(m)とする。
この場合、凹部24ひとつの容積はW×L×D(m3)であり、伝熱面の単位面積当たりの容積は(W×L×D)/((W+Wc)×(L+Wc))(m3/m2)となる。
この条件では、表1より、密度ρは997(kg/m3)であり、表面張力係数σは72×10−3(N/m)であり、毛管長κ−1は2.71×10−3(m)である。
また、M=2.00×10−3(kg)、S=4.00×10−2(m2)と設定すると、凹部24の深さDの好ましい範囲として、上記式(a)を変形することにより、以下の範囲が導かれる。
Lc1・σcosθ1 = (2×W+2×L)・σcosθ1 = (2×1.00×10−3+2×2.00×10−3)×72×10−3×cos60° = 2.16×10−4(N)
ρgV1 = ρg(W×L×D) = 997×9.8×(1.00×10−3×2.00×10−3×0.20×10−3) = 0.04×10−4(N)
12 熱交換器筐体
16、116 接続部
20 蒸発凝縮室
24、34、44 凹部
30、130 流路
54 ピン(突起物)
64 十字型突起物
56 最小面積の格子
100 吸着式ヒートポンプ
110 吸着器
120 吸着室
F1 作動流体
F2 熱交換流体
W 幅方向長さ
L 長手方向長さ
Lb 対辺距離
Lc 幅方向長さ
Claims (11)
- 壁面の少なくとも一部が、作動流体の蒸発及び凝縮を行うとともに、凝縮した作動流体を保持する保持構造を有する伝熱面である蒸発凝縮室と、
前記保持構造に保持された作動流体との間で熱交換する熱交換流体が流通する流路と、
を備え、
前記保持構造が、毛管現象を利用して前記作動流体を保持する、凹部又は複数の突起物であり、
前記蒸発凝縮室と、前記流路と、が交互に配置されており、
前記蒸発凝縮室は、一端が扁平矩形状の開口端である四角柱状空間であり、
前記四角柱状空間の二対の側壁面のうち面積が広い方の一対の側壁面が、前記保持構造を有する伝熱面である熱交換器。 - 前記保持構造に保持される作動流体に働く毛管力が、該作動流体に働く体積力よりも大きい請求項1に記載の熱交換器。
- 前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが下記式(1)で定義される毛管長κ−1以下の凹部である請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
κ−1 = (σ/ρg)1/2 ・・・ 式(1)
〔式(1)において、κ−1は、毛管長(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m3)を表し、gは重力加速度(m/s2)を表す。〕 - 前記作動流体が、水、アンモニア、メタノール、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱交換器。
- 前記作動流体が水であり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円若しくは内接楕円の短軸長さが2.48×10−3m以下の凹部であるか、
前記作動流体がアンモニアであり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円若しくは内接楕円の短軸長さが0.96×10−3m以下の凹部であるか、
前記作動流体がメタノールであり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円若しくは内接楕円の短軸長さが1.47×10−3m以下の凹部であるか、又は、
前記作動流体がエタノールであり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円若しくは内接楕円の短軸長さが1.46×10−3m以下の凹部である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱交換器。 - 前記作動流体が水であり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが2.48×10−3m以下の凹部である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の熱交換器。
- 前記開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが、0.01×10−3m以上である請求項5又は請求項6に記載の熱交換器。
- 前記保持構造が凹部であり、下記式(2)で表される関係を満たす請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱交換器。
Lc1・σcosθ1 > ρaV1 ・・・式(2)
〔式(2)において、Lc1は、前記凹部の周長さ(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、θ1は、凝縮した作動流体と前記凹部の壁面との接触角(°)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m3)を表し、aは、凝縮した作動流体に働く加速度(m/s2)を表し、V1は、前記凹部に保持される作動流体の体積(m3)を表す。〕 - 前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円における比率〔長軸長さ/短軸長さ〕が1.0以上3.0以下の凹部である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の熱交換器。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の熱交換器と、前記作動流体の吸着及び脱着を行う吸着材を含む吸着器と、を備え、前記熱交換器と前記吸着器との間で前記作動流体の授受を行う吸着式ヒートポンプ。
- 前記熱交換器の前記保持構造が保持できる最大量の液体の質量Aと、前記吸着器の前記吸着材が吸着できる最大量の作動流体を凝縮させたときの質量Bとが、質量A≧質量Bの関係を満たす請求項10に記載の吸着式ヒートポンプ。
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