以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の模式的な平面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1に備えられたチャンバー4の内部を水平に見た模式図である。図3は、スピンベース7およびこれに関連する構成の模式的な平面図である。図4は、赤外線ヒータ58の縦断面図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液や処理ガスによって基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、各処理ユニット2のチャンバー4に対して基板Wの搬入および搬出を行う基板搬送ロボットCRと、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉などを制御する制御装置3とを含む。
図2に示すように、各処理ユニット2は、枚葉式のユニットである。各処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバー4と、チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な基板回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、薬液やリンス液などの処理液をスピンチャック5に保持されている基板Wに供給する処理液供給装置と、スピンチャック5に保持されている基板Wを基板Wの上方から加熱する加熱装置と、基板回転軸線A1まわりにスピンチャック5を取り囲む筒状のカップ6とを含む。
図2に示すように、スピンチャック5は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース7と、スピンベース7の上面外周部から上方に突出する複数のチャックピン8と、複数のチャックピン8を開閉させる図示しないチャック開閉機構とを含む。スピンチャック5は、さらに、スピンベース7の中央部から基板回転軸線A1に沿って下方に延びるスピン軸9と、スピン軸9を回転させることによりスピンベース7およびチャックピン8を基板回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ10とを含む。
図2に示すように、スピンベース7の外径は、基板Wの直径よりも大きい。スピンベース7の中心線は、基板回転軸線A1上に配置されている。複数のチャックピン8は、スピンベース7の外周部でスピンベース7に保持されている。複数のチャックピン8は、周方向(基板回転軸線A1まわりの方向)に間隔を空けて配置されている。チャックピン8は、チャックピン8が基板Wの周端面に押し付けられる閉位置と、チャックピン8が基板Wの周端面から離れる開位置との間で、鉛直なピン回動軸線まわりにスピンベース7に対して回転可能である。チャック開閉機構は、ピン回動軸線まわりにチャックピン8を回動させる。
制御装置3は、チャック開閉機構を制御することにより、複数のチャックピン8が基板Wを把持する閉状態と、複数のチャックピン8による基板Wの把持が解除される開状態との間で、複数のチャックピン8の状態を切り替える。基板Wがスピンチャック5に搬送されるときには、制御装置3は、各チャックピン8を開位置に退避させる。この状態で制御装置3は、基板搬送ロボットCRを動作させることにより、基板Wを複数のチャックピン8に載置する。その後、制御装置3は、各チャックピン8を閉位置に移動させる。これにより、基板Wの下面とスピンベース7の上面とが上下方向に離れた状態で、基板Wが複数のチャックピン8に把持される。この状態で、制御装置3がスピンモータ10を回転させると、基板Wは、スピンベース7およびチャックピン8と共に基板回転軸線A1まわりに回転する。
図2に示すように、処理ユニット2は、SPM(H2SO4とH2O2とを含む混合液)などの薬液を基板Wの上面に向けて吐出する第1薬液ノズル11と、第1薬液ノズル11が先端部に取り付けられた第1ノズルアーム12と、第1ノズルアーム12を移動させることにより、第1薬液ノズル11を移動させる第1ノズル移動装置13とを含む。
図2に示すように、反応液ノズルを兼ねる第1薬液ノズル11は、内向き姿勢で第1ノズルアーム12に保持されている。内向き姿勢は、処理液吐出口よりも内方(基板回転軸線A1側)の位置に処理液が着液するように基板Wの上面に対して傾いた吐出方向に処理液が吐出される姿勢である。第1薬液ノズル11は、内向き姿勢に限らず、基板Wの上面に垂直な方向に処理液を吐出する垂直姿勢で第1ノズルアーム12に保持されていてもよいし、処理液吐出口よりも外方(基板回転軸線A1とは反対側)の位置に処理液が着液するように基板Wの上面に対して傾いた吐出方向に処理液を吐出する外向き姿勢で第1ノズルアーム12に保持されていてもよい。
図3に示すように、第1ノズル移動装置13は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びる第1ノズル回動軸線A2まわりに第1ノズルアーム12を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿って第1薬液ノズル11を水平に移動させる。第1ノズル移動装置13は、第1薬液ノズル11から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、第1薬液ノズル11が平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置(図3に示す位置)との間で、第1薬液ノズル11を水平に移動させる。さらに、第1ノズル移動装置13は、第1薬液ノズル11から吐出された薬液が基板Wの上面中央部に着液する中央位置と、第1薬液ノズル11から吐出された薬液が基板Wの上面中間部に着液する中間位置と、第1薬液ノズル11から吐出された薬液が基板Wの上面周縁部に着液する周縁位置との間で、第1薬液ノズル11を水平に移動させる。中央位置、中間位置、および周縁位置は、いずれも処理位置である。
基板Wの上面中央部は、上面の中心を含む円形の領域であり、基板Wの上面周縁部は、上面の外縁を含む環状の領域である。基板Wの上面中間部は、上面中央部の外縁と上面周縁部の内縁との間の環状の領域である。基板Wの上面中央部、上面中間部、および上面周縁部の幅の一例は、次の通りである。中央部の幅(基板Wの中心から中央部の外縁までの径方向の距離):基板Wの半径の5/15。中間部の幅(中間部の内縁から中間部の外縁までの径方向の距離):基板Wの半径の9/15。周縁部の幅(周縁部の内縁から周縁部の外縁までの径方向の距離):基板Wの半径の1/15。これら割合は一例であって、他の割合の適用を妨げるものではない。
図2に示すように、処理ユニット2は、SPMなどの薬液を第1薬液ノズル11に案内する第1薬液配管14と、第1薬液配管14内の硫酸および過酸化水素水を撹拌する撹拌配管15と、第1薬液配管14に供給される硫酸および過酸化水素水を撹拌配管15の上流で混合する混合バルブ16とを含む。
図2に示すように、処理ユニット2は、発熱薬液の一例である硫酸(液体)を収容する硫酸タンク17と、硫酸を加熱することにより硫酸タンク17内の硫酸の温度を室温よりも高い温度(60〜90℃の範囲内の一定温度。たとえば、80℃)に維持する第1ヒータ21と、硫酸タンク17内の硫酸を混合バルブ16に案内する硫酸配管18と、硫酸配管18の内部を開閉する硫酸バルブ19と、硫酸配管18から混合バルブ16に供給される硫酸の流量を増減させる硫酸流量調整バルブ20とを含む。図示はしないが、硫酸流量調整バルブ20は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他の流量調整バルブについても同様である。
図2に示すように、処理ユニット2は、反応薬液の一例である過酸化水素水を収容する過酸化水素水タンク22と、過酸化水素水タンク22内の室温(20〜30℃の範囲内で、たとえば25℃)の過酸化水素水を混合バルブ16に案内する第1過酸化水素水配管23と、第1過酸化水素水配管23の内部を開閉する第1過酸化水素水バルブ24と、第1過酸化水素水配管23から混合バルブ16に供給される過酸化水素水の流量を増減させる第1過酸化水素水流量調整バルブ25とを含む。
図2に示すように、処理ユニット2は、さらに、過酸化水素水タンク22内の過酸化水素水を第1薬液配管14内に案内する第2過酸化水素水配管26と、第2過酸化水素水配管26の内部を開閉する第2過酸化水素水バルブ27と、第2過酸化水素水配管26から第1薬液配管14に供給される過酸化水素水の流量を増減させる第2過酸化水素水流量調整バルブ28とを含む。第2過酸化水素水配管26の上流端は、第1過酸化水素水バルブ24および第1過酸化水素水流量調整バルブ25よりも上流側の位置で第1過酸化水素水配管23に接続されており、第2過酸化水素水配管26の下流端は、撹拌配管15よりも上流側の位置で第1薬液配管14に接続されている。
硫酸バルブ19が開かれると、高温の硫酸が、硫酸流量調整バルブ20の開度に対応する流量で、硫酸配管18から混合バルブ16に供給される。また、第1過酸化水素水バルブ24が開かれると、過酸化水素水タンク22内の室温の過酸化水素水が、第1過酸化水素水流量調整バルブ25の開度に対応する流量で、第1過酸化水素水配管23から混合バルブ16に供給される。これにより、硫酸および過酸化水素水が、所定の割合(硫酸の割合を「X1」とし、過酸化水素水の割合を「Y1」とすると、たとえば、X1>Y1)で混合バルブ16に供給される。
混合バルブ16に供給された硫酸および過酸化水素水は、撹拌配管15を経て第1薬液配管14から第1薬液ノズル11に供給される。その過程で、硫酸および過酸化水素水が、混合バルブ16で混合され、撹拌配管15で撹拌される。これにより、硫酸および過酸化水素水が均一に混ざり合い、硫酸および過酸化水素水の反応によって硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM)が混合前の硫酸および過酸化水素水の温度よりも高い第1温度(100℃以上。たとえば、160℃)まで加熱される。そのため、硫酸および過酸化水素水の混合によって生成された高温(第1温度)のSPMが第1薬液ノズル11から吐出される。SPMは、酸化力が強いペルオキソ一硫酸(Peroxymonosulfuric acid)を含む混合薬液である。
また、硫酸バルブ19および第1過酸化水素水バルブ24が閉じられており、第2過酸化水素水バルブ27が開かれているとき、過酸化水素水タンク22内の室温の過酸化水素水が、混合バルブ16を迂回して第2過酸化水素水配管26から第1薬液配管14に流れる。これにより、室温の過酸化水素水が、第2過酸化水素水流量調整バルブ28の開度に対応する流量で、第2過酸化水素水配管26から第1薬液配管14に供給される。そして、第1薬液配管14に供給された室温の過酸化水素水は、第1薬液ノズル11から吐出される。
図2に示すように、処理ユニット2は、SC1(NH4OHとH2O2とを含む混合液)などの薬液を基板Wの上面に向けて吐出する第2薬液ノズル29と、第2薬液ノズル29が先端部に取り付けられた第2ノズルアーム30と、第2ノズルアーム30を移動させることにより、第2薬液ノズル29を移動させる第2ノズル移動装置31とを含む。図2は、第2薬液ノズル29が内向き姿勢で第2ノズルアーム30に保持されている例を示している。第2薬液ノズル29は、内向き姿勢に限らず、垂直姿勢または外向き姿勢で第2ノズルアーム30に保持されていてもよい。
図3に示すように、第2ノズル移動装置31は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びる第2ノズル回動軸線A3まわりに第2ノズルアーム30を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿って第2薬液ノズル29を水平に移動させる。第2ノズル移動装置31は、第2薬液ノズル29から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、第2薬液ノズル29が平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で、第2薬液ノズル29を水平に移動させる。さらに、第2ノズル移動装置31は、中央位置と中間位置と周縁位置との間で、第2薬液ノズル29を水平に移動させる。
図2に示すように、処理ユニット2は、SPMの温度(第1温度)よりも低く室温よりも高い温度(たとえば、30〜50℃)のSC1を第2薬液ノズル29に案内する第2薬液配管33と、第2薬液配管33の内部を開閉する第2薬液バルブ34とを含む。第2薬液バルブ34が開かれると、第2薬液供給源からのSC1が、第2薬液配管33から第2薬液ノズル29に供給される。これにより、たとえば40℃のSC1(液体)が、第2薬液ノズル29から吐出される。
図2に示すように、処理ユニット2は、リンス液を基板Wの上面に向けて吐出するリンス液ノズル36と、リンス液ノズル36が先端部に取り付けられた第3ノズルアーム37と、第3ノズルアーム37を移動させることにより、リンス液ノズル36を移動させる第3ノズル移動装置38とを含む。図2は、リンス液ノズル36が内向き姿勢で第3ノズルアーム37に保持されている例を示している。リンス液ノズル36は、内向き姿勢に限らず、垂直姿勢または外向き姿勢で第3ノズルアーム37に保持されていてもよい。
図示はしないが、第3ノズル移動装置38は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びる第3ノズル回動軸線まわりに第3ノズルアーム37を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿ってリンス液ノズル36を水平に移動させる。第3ノズル移動装置38は、リンス液ノズル36から吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する処理位置と、リンス液ノズル36が平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で、リンス液ノズル36を水平に移動させる。さらに、第3ノズル移動装置38は、中央位置と中間位置と周縁位置との間で、リンス液ノズル36を水平に移動させる。
図2に示すように、処理ユニット2は、リンス液供給源からのリンス液をリンス液ノズル36に案内する第1リンス液配管39と、第1リンス液配管39の内部を開閉する第1リンス液バルブ40と、第1リンス液配管39からリンス液ノズル36に供給されるリンス液の流量を増減させる第1リンス液流量調整バルブ41とを含む。処理ユニット2は、さらに、リンス液供給源からのリンス液をリンス液ノズル36に案内する第2リンス液配管42と、第2リンス液配管42の内部を開閉する第2リンス液バルブ43と、第2リンス液配管42からリンス液ノズル36に供給されるリンス液の流量を増減させる第2リンス液流量調整バルブ44とを含む。
第1リンス液バルブ40が開かれると、室温(たとえば、25℃)のリンス液が、第1リンス液流量調整バルブ41の開度に対応する流量で、リンス液ノズル36から吐出される。同様に、第2リンス液バルブ43が開かれると、室温(たとえば、25℃)のリンス液が、第2リンス液流量調整バルブ44の開度に対応する流量で、リンス液ノズル36から吐出される。リンス液ノズル36から吐出されるリンス液は、純水(脱イオン水:Deionzied water)である。リンス液ノズル36に供給されるリンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA(イソプロピルアルコール、)または希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、などであってもよい。
第1リンス液流量調整バルブ41の開度は、第2リンス液流量調整バルブ44の開度より大きい又は小さくてもよいし、第2リンス液流量調整バルブ44の開度と等しくてもよい。第1リンス液流量調整バルブ41および第2リンス液流量調整バルブ44の開度が異なる場合には、第1リンス液バルブ40および第2リンス液バルブ43の切り替えにより、第1リンス液流量調整バルブ41および第2リンス液流量調整バルブ44の開度を変更することなく、リンス液ノズル36から吐出されるリンス液の流量を変更することができる。
図2に示すように、処理ユニット2は、加熱液を基板Wの下面中央部に向けて吐出する下面ノズル45と、加熱液を下面ノズル45に案内する加熱液配管46と、加熱液配管46の内部を開閉する加熱液バルブ47と、加熱液配管46から下面ノズル45に供給される加熱液の流量を増減させる加熱液流量調整バルブ48と、加熱液配管46から下面ノズル45に供給される加熱液をSPMの温度(第1温度)よりも低く室温よりも高い温度(たとえば、50〜90℃)で加熱する加熱液ヒータ49とを含む。
加熱液バルブ47が開かれると、加熱液供給源からの加熱液が、加熱液流量調整バルブ48の開度に対応する流量で、加熱液配管46から下面ノズル45に供給される。これにより、加熱流体(加熱液)の一例である高温(たとえば、60℃)の加熱液が、下面ノズル45から吐出される。図2に示すように、下面ノズル45に供給される加熱液は、加熱された純水である。下面ノズル45に供給される加熱液の種類は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA(イソプロピルアルコール、)または希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、などであってもよい。
図2および図3に示すように、下面ノズル45は、スピンベース7の上面中央部と基板Wの下面中央部との間の高さに水平な姿勢で配置された円板部50と、円板部50から下方に延びる筒状部51とを含む。加熱液配管46からの加熱液は、筒状部51の内部に供給され、円板部50の上面で開口する吐出口45aから上向きに吐出される。円板部50および筒状部51は、スピン軸9などの回転部に非接触であり、下面ノズル45は、一定の位置に固定されている。筒状部51は、筒状のスピン軸9内に配置されている。スピン軸9の内周面は、径方向に間隔を空けて筒状部51の外周面を全周にわたって取り囲んでいる。図2に示すように、スピン軸9の内周面と筒状部51の外周面とは、基板回転軸線A1に沿って延びる筒状の気体流路52を形成している。気体吐出口53としての気体流路52の上端は、スピンベース7の上面中央部で開口している。
図2に示すように、処理ユニット2は、気体供給源からの気体を気体流路52に案内する気体配管54と、気体配管54の内部を開閉する気体バルブ55と、気体配管54から気体流路52に供給される気体の流量を増減させる気体流量調整バルブ56と、気体配管54から気体流路52に供給される気体をSPMの温度(第1温度)よりも低く室温よりも高い温度(たとえば、50〜90℃)で加熱する気体ヒータ57とを含む。
気体バルブ55が開かれると、気体供給源からの気体が、気体流量調整バルブ56の開度に対応する流量で、気体配管54から気体流路52に供給される。気体流路52に供給された気体は、気体流路52内を上方に流れ、気体吐出口53から上方に吐出される。そして、気体吐出口53から吐出された気体は、基板Wの下面とスピンベース7の上面との間を放射状に広がる。これにより、基板Wの下面とスピンベース7の上面との間の空間が、加熱流体(加熱ガス)の一例である高温(たとえば、80℃)の気体で満たされる。気体吐出口53から吐出される気体は、不活性ガスの一例である窒素ガスである。気体は、窒素ガスに限らず、窒素ガス以外の不活性ガスであってもよいし、水蒸気などの他の気体であってもよい。
図2に示すように、カップ6は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方に配置されている。カップ6は、スピンベース7を取り囲んでいる。スピンチャック5が基板Wを回転させている状態で処理液が基板Wに供給されると、処理液が基板Wから基板Wの周囲に飛散する。処理液が基板Wに供給されるとき、上向きに開いたカップ6の上端部は、スピンベース7よりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された薬液やリンス液などの処理液は、カップ6によって受け止められる。そして、カップ6に受け止められた処理液は、図示しない回収装置または排液装置に送られる。
図2に示すように、加熱装置は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上方に配置された赤外線ヒータ58と、赤外線ヒータ58が先端部に取り付けられたヒータアーム59と、ヒータアーム59を移動させることにより、赤外線ヒータ58を移動させるヒータ移動装置60とを含む。
図2に示すように、赤外線ヒータ58は、赤外線を含む光を発する赤外線ランプ61と、赤外線ランプ61を収容するランプハウジング62とを含む。赤外線ランプ61は、ランプハウジング62内に配置されている。図3に示すように、ランプハウジング62は、平面視で基板Wよりも小さい。したがって、赤外線ヒータ58は、平面視で基板Wよりも小さい。赤外線ランプ61およびランプハウジング62は、ヒータアーム59に取り付けられている。したがって、赤外線ランプ61およびランプハウジング62は、ヒータアーム59と共に移動する。
図4に示すように、赤外線ランプ61は、制御装置3に接続されている。赤外線ランプ61に供給される電力は、制御装置3によって調整される。赤外線ランプ61は、たとえばハロゲンランプである。赤外線ランプ61は、ハロゲンランプの代わりに、カーボンヒータ等の他の発熱体であってもよい。赤外線ランプ61は、フィラメントと、フィラメントを収容する石英管とを含む。ランプハウジング62の少なくとも一部は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。したがって、赤外線ランプ61が光を発すると、赤外線ランプ61からの光が、ランプハウジング62を透過してランプハウジング62の外面から外方に放出される。
図4に示すように、ランプハウジング62は、基板Wの上面と平行な底壁を有している。赤外線ランプ61は、底壁の上方に配置されている。底壁の下面は、基板Wの上面と平行でかつ平坦な基板対向面58aを含む。赤外線ヒータ58が基板Wの上方に配置されている状態では、赤外線ヒータ58の基板対向面58aが、間隔を空けて基板Wの上面に上下方向に対向する。この状態で赤外線ランプ61が光を発すると、赤外線を含む光が、基板対向面58aから基板Wの上面に向かい、基板Wの上面に照射される。基板対向面58aは、たとえば、直径が基板Wの半径よりも小さい円形である。基板対向面58aは、円形に限らず、長手方向の長さが基板Wの半径以上で基板Wの直径未満である矩形状であってもよいし、円形および矩形以外の形状であってもよい。
図4に示すように、赤外線ランプ61は、水平面に沿って配置された有端の円環部63と、円環部63の一端部および他端部から上方に延びる一対の鉛直部64とを含む。ランプハウジング62は、赤外線を透過させる透過部材を含む。透過部材は、上下方向に延びる筒状の収容部65と、収容部65の下端を塞ぐ円板状の底板部66とを含む。ランプハウジング62は、さらに、収容部65の上端を塞ぐ蓋部材67と、赤外線ランプ61の一対の鉛直部64を支持する支持部材68とを含む。赤外線ランプ61は、支持部材68を介して蓋部材67に支持されている。赤外線ランプ61の円環部63は、収容部65と底板部66と蓋部材67とによって区画された空間に配置されている。底板部66は、赤外線ランプ61の下方に配置されており、間隔を空けて赤外線ランプ61に上下方向に対向している。
図2に示すように、ヒータ移動装置60は、赤外線ヒータ58を所定の高さで保持している。図3に示すように、ヒータ移動装置60は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びるヒータ回動軸線A4まわりにヒータアーム59を回動させることにより、赤外線ヒータ58を水平に移動させる。これにより、赤外線が照射される照射位置(基板Wの上面内の一部の領域)が基板Wの上面内で移動する。ヒータ移動装置60は、平面視で基板Wの中心を通る軌跡に沿って赤外線ヒータ58を水平に移動させる。したがって、赤外線ヒータ58は、スピンチャック5の上方を含む水平面内で移動する。また、ヒータ移動装置60は、赤外線ヒータ58を鉛直方向に移動させることにより、基板対向面58aと基板Wとの距離を変化させる。
図4に示すように、赤外線ヒータ58からの光は、基板Wの上面内の照射位置に照射される。制御装置3は、赤外線ヒータ58が赤外線を発している状態で、スピンチャック5によって基板Wを回転させながら、ヒータ移動装置60によって赤外線ヒータ58をヒータ回動軸線A4まわりに回動させる。これにより、基板Wの上面が、加熱位置としての照射位置によって走査される。そのため、処理液などの液体が基板W上に保持されている状態で赤外線ランプ61が赤外線を発すると、基板Wおよび処理液の温度が上昇する。
「第1処理例」
図5は、処理ユニット2によって行われる第1処理例の概略を示すタイムチャートである。図6は、第1処理例の一部の具体的なタイムチャートである。以下では、図2および図5を参照して、不要になったレジストパターンを基板Wから除去するレジスト除去工程について説明する。図6については適宜参照する。
処理ユニット2によって基板Wが処理されるときには、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(図5のステップS1)が行われる。具体的には、制御装置3は、全てのノズル等がスピンチャック5の上方から退避している状態で、基板Wを保持している基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内に進入させる。そして、制御装置3は、基板搬送ロボットCRに基板Wを複数のチャックピン8上に載置させる。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内から退避させる。また、制御装置3は、基板Wが複数のチャックピン8上に載置された後、各チャックピン8を開位置から閉位置に移動させる。その後、制御装置3は、スピンモータ10によって基板Wの回転を開始させる。
次に、第1薬液の一例である高温(第1温度)のSPMを基板Wに供給する第1薬液供給工程(図5のステップS2)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、第1薬液回転速度V1(図6参照)まで基板Wを加速させ、第1薬液回転速度V1で基板Wを回転させる。すなわち、制御装置3は、基板Wの回転速度を第1薬液回転速度V1に維持する。さらに、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1薬液ノズル11を退避位置から処理位置に移動させる。これにより、第1薬液ノズル11が基板Wの上方に配置される。その後、制御装置3は、硫酸バルブ19および第1過酸化水素水バルブ24を開いて、第1温度(たとえば、160℃)のSPMを第1薬液回転速度V1で回転している基板Wの上面に向けて第1薬液ノズル11に吐出させる。制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、この状態で基板Wの上面に対するSPMの着液位置を中央部と周縁部との間で移動させる。
第1薬液ノズル11から吐出されたSPMは、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、SPMが基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜が基板W上に形成される。これにより、レジスト膜とSPMとが化学反応し、基板W上のレジスト膜がSPMによって基板Wから除去される。さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対するSPMの着液位置を中央部と周縁部との間で移動させるので、SPMの着液位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査される。そのため、第1薬液ノズル11から吐出されたSPMが、基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域が均一に処理される。
次に、SPMの吐出を停止させた状態でSPMの液膜を基板W上に保持するパドル工程(図5のステップS3)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、基板Wの上面全域がSPMの液膜に覆われている状態で、第1薬液供給工程での基板Wの回転速度(第1薬液回転速度V1)よりも小さい第2薬液回転速度V2(図6参照)まで基板Wを減速させ、第2薬液回転速度V2で基板Wを回転させる。そのため、基板W上のSPMに加わる遠心力が弱まり、基板W上から排出されるSPMの流量が減少する。制御装置3は、基板Wが第2薬液回転速度V2で回転している状態で、硫酸バルブ19および第1過酸化水素水バルブ24を閉じて、第1薬液ノズル11からのSPMの吐出を停止させる。これにより、SPMの吐出が停止された状態で、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜が基板W上に保持される。制御装置3は、SPMの吐出を停止した後、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1薬液ノズル11を基板Wの上方で待機させる。
また、赤外線ヒータ58によって基板Wおよび基板W上のSPMを基板Wに供給される前のSPMの温度(第1温度)よりも高温の加熱温度で加熱する加熱工程(図5のステップS4)が、第1薬液供給工程(図5のステップS2)およびパドル工程(図5のステップS3)と並行して行われる。具体的には、制御装置3は、ヒータ移動装置60を制御することにより、赤外線ヒータ58を退避位置から処理位置に移動させる。これにより、赤外線ヒータ58が基板Wの上方に配置される。その後、制御装置3は、赤外線ヒータ58に発光を開始させる。これにより、赤外線ヒータ58の温度が、SPMのその濃度における沸点以上の加熱温度(たとえば、200℃以上)まで上昇し、加熱温度に維持される。
赤外線ヒータ58が基板Wの上方で発光を開始した後、制御装置3は、ヒータ移動装置60によって赤外線ヒータ58を移動させることにより、基板Wの上面に対する赤外線の照射位置を基板Wの上面内で移動させる。そして、制御装置3は、赤外線ヒータ58による基板Wの加熱が所定時間にわたって行われた後、基板Wが第2薬液回転速度V2で回転しており、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜が基板W上に保持されている状態で、赤外線ヒータ58の発光を停止させる。その後、制御装置3は、ヒータ移動装置60を制御することにより、赤外線ヒータ58を基板Wの上方から退避させる。なお、赤外線ヒータ58の発光と移動は、同時に行われてもよいし、発光してから移動を開始してもよい。
このように、制御装置3は、基板Wを回転させている状態で、基板Wの上面に対する赤外線の照射位置を基板Wの上面内で移動させるので、基板Wが均一に加熱される。したがって、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜も均一に加熱される。赤外線ヒータ58による基板Wの加熱温度は、SPMのその濃度における沸点以上の温度に設定されている。そのため、基板W上のSPMが、その濃度における沸点まで加熱される。特に、赤外線ヒータ58による基板Wの加熱温度が、SPMのその濃度における沸点よりも高温に設定されている場合には、基板WとSPMとの界面の温度が、沸点よりも高温に維持され、基板Wからの異物(レジスト膜)の除去が促進される。
次に、基板Wに供給される前の温度がSPMの温度(第1温度)よりも低く、かつ後述する第1リンス液供給工程(図5のステップS7)で基板Wに供給されるリンス液の温度(第2温度)以上で、硫酸と混ざり合うことにより発熱反応を発生させる反応液の一例である過酸化水素水を基板Wに供給する反応液供給工程(図5のステップS5)と、基板Wに供給される前の温度がSPMの温度(第1温度)よりも低く、かつリンス液の温度(第2温度)よりも高い第1中間温度の加熱流体の一例である純水を基板Wの下面に供給する第1温度低下抑制工程(図5のステップS6)とが、並行して行われる。
反応液供給工程に関しては、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1薬液ノズル11から吐出された処理液が基板Wの上面中間部に着液する中間位置に第1薬液ノズル11を位置させる。その後、制御装置3は、第2過酸化水素水バルブ27を開いて、室温の過酸化水素水を、第2薬液回転速度V2で回転している基板Wの上面に向けて第1薬液ノズル11に吐出させる。これにより、基板WおよびSPMよりも低温の過酸化水素水の供給が基板Wの上面中間部で開始される。
図6に示すように、過酸化水素水の供給が基板Wの上面中間部で開始された後、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、基板Wが第2薬液回転速度V2で回転している状態で、第1薬液ノズル11を中間位置から中央位置に移動させる。これにより、過酸化水素水の着液位置が基板Wの上面中間部から上面中央部に移動する。その後、制御装置3は、第2過酸化水素水バルブ27を閉じて、第1薬液ノズル11からの過酸化水素水の吐出を停止させる。続いて、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1薬液ノズル11を基板Wの上方から退避させる。
第1温度低下抑制工程に関しては、制御装置3は、第1中間温度(たとえば、室温よりも高い温度)の純水を、第2薬液回転速度V2で回転している基板Wの下面に向けて下面ノズル45に吐出させる。下面ノズル45から吐出された純水は、基板Wの下面中央部に着液した後、遠心力によって基板Wの周縁まで基板Wの下面に沿って外方に流れる。これにより、純水が基板Wの下面全域に供給される。そのため、基板WおよびSPMの温度低下が抑制される。制御装置3は、加熱液バルブ47が開かれてから所定時間が経過すると、加熱液バルブ47を閉じて下面ノズル45からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、気体バルブ55を開閉することより、窒素ガスを気体吐出口53から一時的に吐出させる。これにより、基板Wとスピンベース7との間から純水が排出される。
反応液供給工程では、基板Wに供給されるSPMよりも低温の過酸化水素水が、基板Wの上面中央部に向けて第1薬液ノズル11から吐出される。基板Wの上面中央部に着液した過酸化水素水は、着液位置から着液位置の周囲に基板W上を広がる。さらに、基板W上の過酸化水素水は、基板W上を回転方向の下流側に周方向に流れながら、基板Wの周縁に向かって基板W上を外方に流れる。これにより、SPMの液膜で覆われた基板Wの上面全域に過酸化水素水が供給される。そのため、第1薬液ノズル11から吐出された過酸化水素水は、過酸化水素水よりも高温の基板WおよびSPMの熱を奪いながら基板W上を流れる。
基板W上のSPMの一部は、過酸化水素水の供給によって基板Wの周縁からその周囲に排出され、カップ6によって受け止められる。また、基板W上の残りのSPMは、過酸化水素水によって希釈され、次第に濃度が低下していく。したがって、基板Wの上面全域が、SPMと過酸化水素水とを含む液膜によって覆われ、当該液膜中の過酸化水素水の割合が次第に増加していく。そのため、SPM中の硫酸濃度が次第に低下していく。
基板WおよびSPMよりも低温の過酸化水素水が基板Wに供給されるので、基板WおよびSPMの温度(特に着液位置およびその近傍での温度)が低下する。しかし、SPMに含まれる硫酸が、過酸化水素水との反応によって発熱するので、着液位置での基板WおよびSPMの大幅な温度低下が抑制または防止される。さらに、反応液供給工程と並行して第1温度低下抑制工程が行われるので、着液位置での基板WおよびSPMの温度低下量が低減される。そのため、着液位置とその他の位置との間での基板Wの温度差の増加を抑えることができる。これにより、温度差に起因する基板Wの変形を抑えることができ、基板Wの歪み量を低減できる。
反応液供給工程では、基板WおよびSPMの温度が、反応液としての過酸化水素水の供給によって次第に低下していく。したがって、基板WおよびSPMと過酸化水素水との温度差は、過酸化水素水の供給開始時が最も大きい。過酸化水素水の供給は、基板Wの上面中央部よりも周速が大きい基板Wの上面中間部で開始される。そのため、過酸化水素水の供給が基板Wの上面中央部で開始される場合よりも、単位面積当たりの過酸化水素水の供給流量が少ない。よって、着液位置での基板WおよびSPMの温度が、多量の過酸化水素水の供給によって急激かつ急速に低下することを抑制または防止できる。さらに、基板Wの上面中央部に着液した過酸化水素水は、基板Wの上面周縁部を経て基板Wの周囲に排出されるので、過酸化水素水の供給が基板Wの上面周縁部で開始される場合よりも、基板W上での過酸化水素水の滞在時間が長い。そのため、過酸化水素水を効率的に利用できる。
また、図2に示すように、第1薬液ノズル11は、内向きに過酸化水素水を吐出する。したがって、第1薬液ノズル11から吐出された過酸化水素水は、基板W上を主として着液位置から内方に流れる。そのため、第1薬液ノズル11が基板Wの上面に垂直な方向に過酸化水素水を吐出する場合や、第1薬液ノズル11が外向きに過酸化水素水を吐出する場合よりも短時間で着液位置よりも内方の領域に過酸化水素水を広げることができる。さらに、これらの場合よりも着液位置から内方に流れる過酸化水素水の流量が増加するので、基板W上での過酸化水素水の滞在時間が増加する。そのため、過酸化水素水を効率的に利用できる。
次に、第2温度のリンス液の一例である室温の純水を基板Wに供給する第1リンス液供給工程(図5のステップS7)が行われる。具体的には、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、リンス液ノズル36を退避位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3は、第1リンス液バルブ40を開いて、室温の純水を基板Wの上面中央部に向けてリンス液ノズル36に吐出させる。さらに、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、第1薬液回転速度V1および第2薬液回転速度V2よりも大きいリンス回転速度V3(図6参照)まで基板Wを加速させ、リンス回転速度V3で基板Wを回転させる。そして、第1リンス液バルブ40が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、第1リンス液バルブ40を閉じて、リンス液ノズル36からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、リンス液ノズル36を基板Wの上方から退避させる。
リンス液ノズル36から吐出された純水は、薬液または反応液によって覆われている基板Wの上面中央部に着液する。そのため、基板W上の薬液が中央部からその周囲に押し流される。基板Wの上面中央部に着液した純水は、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。同様に、基板W上の薬液は、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。さらに、第1薬液回転速度V1および第2薬液回転速度V2よりも大きいリンス回転速度V3で基板Wが回転しているので、第1薬液供給工程および反応液供給工程のときよりも大きな遠心力が基板W上の液体に加わる。そのため、純水の液膜が基板Wの中央部から基板Wの周縁まで瞬時に広がり、基板W上の薬液が短時間で純水に置換される。これにより、基板W上の薬液が純水によって洗い流される。
次に、基板Wに供給される前の温度がSPMの温度(第1温度)より低く、リンス液の温度(第2温度)よりも高い第2薬液の一例であるSC1を基板Wに供給する第2薬液供給工程(図5のステップS8)と、基板Wに供給される前の温度がSPMの温度(第1温度)より低く、リンス液の温度(第2温度)よりも高い第2中間温度の加熱流体の一例である純水を基板Wの下面に供給する第2温度低下抑制工程(図5のステップS9)とが、並行して行われる。
第2薬液供給工程に関しては、制御装置3は、第2ノズル移動装置31を制御することにより、第2薬液ノズル29を退避位置から処理位置に移動させる。制御装置3は、第2薬液ノズル29が基板Wの上方に配置された後、第2薬液バルブ34を開いて、回転状態の基板Wの上面に向けてSC1を第2薬液ノズル29に吐出させる。制御装置3は、この状態で第2ノズル移動装置31を制御することにより、基板Wの上面に対するSC1の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させる。そして、第2薬液バルブ34が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、第2薬液バルブ34を閉じてSC1の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第2ノズル移動装置31を制御することにより、第2薬液ノズル29を基板Wの上方から退避させる。
第2薬液ノズル29から吐出されたSC1は、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、基板W上の純水は、SC1によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。これにより、基板W上の純水の液膜が、基板Wの上面全域を覆うSC1の液膜に置換される。さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対するSC1の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させるので、SC1の着液位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査される。そのため、第2薬液ノズル29から吐出されたSC1が、基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域が均一に処理される。
第2温度低下抑制工程に関しては、制御装置3は、第2中間温度の純水を、回転している基板Wの下面に向けて下面ノズル45に吐出させる。これにより、高温の純水が基板Wの下面全域に供給される。そのため、第2温度のリンス液の供給によって第2温度まで温度が低下した基板Wの温度が、第2温度よりも高温のSC1の供給によって局所的に変化することを防止できる。制御装置3は、加熱液バルブ47が開かれてから所定時間が経過すると、加熱液バルブ47を閉じて下面ノズル45からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、気体バルブ55を開閉することより、窒素ガスを気体吐出口53から一時的に吐出させる。これにより、基板Wとスピンベース7との間から純水が排出される。
次に、リンス液の一例である室温の純水を基板Wに供給する第2リンス液供給工程(図5のステップS10)が行われる。具体的には、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、リンス液ノズル36を退避位置から処理位置に移動させる。制御装置3は、リンス液ノズル36が基板Wの上方に配置された後、第1リンス液バルブ40を開いて、回転状態の基板Wの上面に向けてリンス液ノズル36に純水を吐出させる。これにより、基板W上のSC1が、純水によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。そのため、基板W上のSC1の液膜が、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜に置換される。そして、第1リンス液バルブ40が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、第1リンス液バルブ40を閉じて純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、リンス液ノズル36を基板Wの上方から退避させる。
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(図5のステップS11)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、第1薬液供給工程(図5のステップS2)から第2リンス液供給工程(図5のステップS10)までの回転速度よりも大きい乾燥回転速度(たとえば数千rpm)まで基板Wを加速させ、乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。そして、基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、スピンチャック5による基板Wの回転を停止させる。
次に、基板Wをチャンバー4内から搬出する搬出工程(図5のステップS12)が行われる。具体的には、制御装置3は、各チャックピン8を閉位置から開位置に移動させて、スピンチャック5による基板Wの把持を解除させる。その後、制御装置3は、全てのノズル等がスピンチャック5の上方から退避している状態で、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内に進入させる。そして、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドにスピンチャック5上の基板Wを保持させる。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
なお、前述の第1処理例の説明では、反応液の一例である室温の過酸化水素水が、反応液供給工程で基板Wの上面に供給される場合について説明したが、反応液の一例である室温の純水が、過酸化水素水の代わりに、SPMで覆われている基板Wの上面に供給されてもよい。具体的には、図6に示すように、室温の純水を基板Wに供給する反応液供給工程(ステップS5a)が、室温の過酸化水素水を基板Wに供給する反応液供給工程(ステップS5)の代わりに、第1温度低下抑制工程(図5のステップS6)と並行して実行されてもよい。
この場合、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、リンス液ノズル36から吐出されたリンス液が基板Wの上面中間部に着液する中間位置にリンス液ノズル36を位置させる。その後、制御装置3は、第2リンス液バルブ43を開いて、SPMの温度(第1温度)よりも温度が低く、硫酸と混ざり合うことにより発熱反応を発生させる室温の純水を、第2薬液回転速度V2で回転しており、SPMの液膜によって覆われている基板Wの上面に向けてリンス液ノズル36に吐出させる。これにより、基板WおよびSPMよりも低温の純水の供給が基板Wの上面中間部で開始される。
図6に示すように、純水の供給が基板Wの上面中間部で開始された後、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、基板Wが第2薬液回転速度V2で回転している状態で、リンス液ノズル36を中間位置から中央位置に移動させる。これにより、純水の着液位置が基板Wの上面中間部から上面中央部に移動する。さらに、過酸化水素水が供給される場合と同様に、基板W上のSPMが、純水の供給によって発熱しながら、純水によって希釈されていく。第2リンス液バルブ43が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、第2リンス液バルブ43を閉じて、リンス液ノズル36が中央位置に位置する状態で、リンス液ノズル36からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第1リンス液供給工程(図5のステップS7)を開始する。すなわち、制御装置3は、第1リンス液バルブ40を開いた状態で、リンス回転速度V3で基板Wを回転させる。
「第2処理例」
図7は、処理ユニット2によって行われる第2処理例の一部の具体的なタイムチャートである。以下では、図2および図7を参照する。
第2処理例は、反応液供給工程において基板Wの上面に対する反応液の着液位置を周縁部から中央部に移動させる点で第1処理例と異なる。言い換えると、反応液供給工程以外の工程については、第1処理例と同様である。したがって、以下では、反応液が過酸化水素水である場合の反応液供給工程(図7のステップS5)と、反応液が純水である場合の反応液供給工程(図7のステップS5a)とについて説明する。
反応液が過酸化水素水である場合、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1薬液ノズル11から吐出された処理液が基板Wの上面周縁部に着液する周縁位置に第1薬液ノズル11を位置させる。その後、制御装置3は、第2過酸化水素水バルブ27を開いて、室温の過酸化水素水を、第2薬液回転速度V2で回転している基板Wの上面に向けて第1薬液ノズル11に吐出させる。これにより、基板WおよびSPMよりも低温の過酸化水素水の供給が基板Wの上面周縁部で開始される。
過酸化水素水の供給が基板Wの上面周縁部で開始された後、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、基板Wが第2薬液回転速度V2で回転している状態で、第1薬液ノズル11を周縁位置から中央位置に移動させる。これにより、過酸化水素水の着液位置が基板Wの上面周縁部から上面中央部に移動する。その後、制御装置3は、第2過酸化水素水バルブ27を閉じて、第1薬液ノズル11からの過酸化水素水の吐出を停止させる。続いて、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1薬液ノズル11を基板Wの上方から退避させる。
一方、反応液が純水である場合、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、リンス液ノズル36から吐出されたリンス液が基板Wの上面周縁部に着液する周縁位置にリンス液ノズル36を位置させる。その後、制御装置3は、第2リンス液バルブ43を開いて、室温の純水を、第2薬液回転速度V2で回転している基板Wの上面に向けてリンス液ノズル36に吐出させる。これにより、基板WおよびSPMよりも低温の純水の供給が基板Wの上面周縁部で開始される。
純水の供給が基板Wの上面周縁部で開始された後、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、基板Wが第2薬液回転速度V2で回転している状態で、リンス液ノズル36を周縁位置から中央位置に移動させる。これにより、純水の着液位置が基板Wの上面周縁部から上面中央部に移動する。したがって、過酸化水素水が供給される場合と同様に、基板W上のSPMが、純水の供給によって発熱しながら、純水によって希釈されていく。そして、制御装置3は、第2リンス液バルブ43を閉じて、リンス液ノズル36が中央位置に位置する状態で、リンス液ノズル36からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第1リンス液供給工程(図5のステップS7)を開始する。
このように、第2処理例では、反応液の供給が基板Wの上面周縁部で開始されるので、基板Wの周縁部から温度が徐々に低下する。したがって、チャックピン8の把持力が加わる基板Wの周縁部の変形を基板Wの中央部および中間部よりも先に防止することができる。これにより、回転する基板Wの振れを抑制または防止することができる。さらに、基板Wの上面に対する反応液の着液位置を基板Wの中央部に向けて移動させることにより、基板Wの上面全域に短時間で反応液を広げることができる。これにより、SPMと反応液との発熱反応により基板Wの局所的な温度低下を抑制しつつ、基板Wの変形量を低減できる。
「第3処理例」
図8は、処理ユニット2によって行われる第3処理例の一部の具体的なタイムチャートである。以下では、図2および図8を参照する。
第3処理例は、反応液供給工程での基板Wの回転速度が、パドル工程での基板Wの回転速度V2よりも大きく、第1リンス液処理工程での基板Wの回転速度V3よりも小さい第3薬液回転速度V4である点で第1処理例と異なる。言い換えると、反応液供給工程以外の工程については、第1処理例と同様である。したがって、以下では、反応液が過酸化水素水である場合の反応液供給工程(図8のステップS5)と、反応液が純水である場合の反応液供給工程(図8のステップS5a)とについて説明する。
反応液が過酸化水素水である場合、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、中間位置または周縁位置に第1薬液ノズル11を位置させる。その後、制御装置3は、第2過酸化水素水バルブ27を開いて、室温の過酸化水素水を、第2薬液回転速度V2で回転している基板Wの上面に向けて第1薬液ノズル11に吐出させる。これにより、基板WおよびSPMよりも低温の過酸化水素水の供給が基板Wの上面中間部または上面周縁部で開始される。
過酸化水素水の供給が開始された後もしくは供給が開始されるのと同時に、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、第2薬液回転速度V2よりも大きい第3薬液回転速度V4まで基板Wを加速させ、第3薬液回転速度V4で基板Wを回転させる。その後、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、基板Wが第3薬液回転速度V4で回転している状態で、第1薬液ノズル11を中間位置または周縁位置から中央位置に移動させる。これにより、過酸化水素水の着液位置が基板Wの上面中間部または上面周縁部から上面中央部に移動する。その後、制御装置3は、第2過酸化水素水バルブ27を閉じて、第1薬液ノズル11からの過酸化水素水の吐出を停止させる。続いて、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1薬液ノズル11を基板Wの上方から退避させる。
一方、反応液が純水である場合、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、中間位置または周縁位置にリンス液ノズル36を位置させる。その後、制御装置3は、第2リンス液バルブ43を開いて、室温の純水を、第2薬液回転速度V2で回転している基板Wの上面に向けてリンス液ノズル36に吐出させる。これにより、基板WおよびSPMよりも低温の純水の供給が基板Wの上面中間部または上面周縁部で開始される。
純水の供給が開始された後もしくは供給が開始されるのと同時に、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、第2薬液回転速度V2よりも大きい第3薬液回転速度V4aまで基板Wを加速させ、第3薬液回転速度V4aで基板Wを回転させる。その後、制御装置3は、第3ノズル移動装置38を制御することにより、基板Wが第3薬液回転速度V4aで回転している状態で、リンス液ノズル36を中間位置または周縁位置から中央位置に移動させる。これにより、純水の着液位置が基板Wの上面周縁部から上面中央部に移動する。したがって、過酸化水素水が供給される場合と同様に、基板W上のSPMが、純水の供給によって発熱しながら、純水によって希釈されていく。そして、制御装置3は、第2リンス液バルブ43を閉じて、リンス液ノズル36が中央位置に位置する状態で、リンス液ノズル36からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第1リンス液供給工程(図5のステップS7)を開始する。
図8は、反応液が過酸化水素水および純水の何れであるときも、反応液が吐出されているときの基板Wの回転速度(第3薬液回転速度V4、V4a)が一定である例を示している。しかし、第3薬液回転速度V4、V4aは一定でなくてもよい。
また、図8は、反応液が純水である場合の第3薬液回転速度V4aが、反応液が過酸化水素水である場合の第3薬液回転速度V4よりも小さい例を示している。これは、反応液の種類以外の条件が同じであれば、SPMの発熱量は、反応液が過酸化水素水である場合よりも純水である場合の方が小さいためである。反応液が純水である場合の第3薬液回転速度V4aを、反応液が過酸化水素水である場合の第3薬液回転速度V4よりも小さくすることによって、基板W上での純水の滞在時間を増加させることにより、SPMの発熱量を増加させて、基板WおよびSPMの急激な温度変化を好適に抑制することができる。
しかし、上記には限定されず、反応液が純水である場合の第3薬液回転速度V4aを、反応液が過酸化水素水である場合の第3薬液回転速度V4と等しくしてもよいし、大きくしてもよい。
「第4処理例」
図9は、処理ユニット2によって行われる第4処理例の一部の具体的なタイムチャートである。以下では、図2および図9を参照する。
第4処理例は、図9のステップS13において、赤外線ヒータ58によって第1薬液供給工程(図9のステップS2)およびパドル工程(図9のステップS3)での基板Wの加熱温度よりも低い温度で基板Wを加熱しながら基板Wに反応液を供給する点で第1処理例と異なる。言い換えると、加熱工程(図9のステップS4)での基板Wの加熱温度よりも低い後加熱温度で基板Wを赤外線ヒータ58で加熱する後加熱工程(図9のステップS13)が、反応液供給工程(図9のステップS5)と並行して行われること以外は、第1処理例と同様である。したがって、以下では、第1処理例と異なる点について主として説明する。
基板Wの上方に配置された赤外線ヒータ58によって基板Wおよび基板W上のSPMを所定の加熱温度で加熱する加熱工程(図9のステップS4)が行われた後は、赤外線ヒータ58によって加熱工程での基板Wの加熱温度よりも低い後加熱温度で基板Wおよび基板W上の液体(SPM、過酸化水素水、および純水の少なくとも一つを含む液体)を加熱する後加熱工程(図9のステップS13)が、反応液供給工程(図9のステップS5)と並行して行われる。
具体的には、制御装置3は、赤外線ヒータ58が加熱工程において基板Wを加熱温度で加熱した後、反応液としての過酸化水素水が基板Wの上面に向けて吐出されており、赤外線ヒータ58が基板Wの上方に位置する状態で、制御装置3は、赤外線ヒータ58に供給される電力を加熱工程での電力(第1電力)よりも小さい第2電力に低下させる。第2電力は、第1電力よりも小さい零以上の値である。したがって、制御装置3は、赤外線ヒータ58を発光させながら、もしくは赤外線ヒータ58の発光を停止させながら、赤外線ヒータ58から放出される熱エネルギーもしくは赤外線ヒータ58の余熱によって基板Wおよび基板W上の液体を後加熱温度で加熱する。図9は、第2電力が零よりも大きい値であり、赤外線ヒータ58の発光が継続される場合を示している。
赤外線ヒータ58による後加熱温度での基板Wおよび基板W上の液体の加熱が所定時間にわたって行われると、制御装置3は、ヒータ移動装置60を制御することにより、赤外線ヒータ58の発光が停止されている状態で、赤外線ヒータ58を基板Wの上方から退避させる。基板Wおよび基板W上の液体が赤外線ヒータ58によって後加熱温度で加熱されているとき、制御装置3は、ヒータ移動装置60によって赤外線ヒータ58を基板Wの上方で移動させることにより、赤外線ヒータ58による加熱位置を移動させてもよいし、赤外線ヒータ58を基板Wの上方で静止させてもよい。また、制御装置3は、赤外線ヒータ58に供給される電力を第1電力から第2電力に連続的または段階的に低下させてもよい。制御装置3は、赤外線ヒータ58への電力供給を停止して、赤外線ヒータ58の余熱によって基板Wおよび基板W上の液体を加熱してもよい。
また、後加熱工程において赤外線ヒータ58に供給される電力(第2電力)は、加熱工程において赤外線ヒータ58に供給される電力(第1電力)よりも小さく零よりも大きい初期電力と、初期電力よりも小さい零以上の終期電力とを含んでいてもよい。すなわち、赤外線ヒータ58に供給される電力が、初期電力から終期電力に連続的または段階的に低下され、後加熱工程において基板Wおよび基板W上の液体に伝達される熱エネルギーが、時間経過と共に低下されてもよい。この場合、基板Wの局所的な温度変化を防止しながら、基板Wおよび基板W上の液体の温度を徐々に低下させることができる。
以上のように本実施形態では、第1温度の薬液(高温のSPM)が基板Wの上面に供給される。そして、薬液が基板Wに残留している状態で、反応液(室温の過酸化水素水または純水)が基板Wの上面に供給される。基板Wに供給された反応液は、基板Wに残留している薬液と混ざり合う。そのため、基板Wに残留している液体(薬液および反応液を含む液体)における反応液の割合が高まり、薬液の濃度が低下する。第1温度よりも低い第2温度のリンス液(室温の純水)は、反応液が基板Wに供給された後に、基板Wの上面に供給される。これにより、基板Wに残留している液体が洗い流される。
反応液の供給が開始されると、基板Wの温度は反応液の温度に近づいていく。基板Wに供給される前の反応液の温度は、薬液の温度(第1温度)よりも低く、リンス液の温度(第2温度)以上である。反応液は、薬液と混ざり合うことにより発熱反応を薬液に発生させる。したがって、薬液が基板Wに残留している状態で反応液が基板Wの上面に供給されると、反応液の着液位置およびその近傍の位置で発熱反応が発生し、着液位置近傍領域での基板Wの温度低下量が低減される。そのため、基板Wの温度は徐々に反応液の温度に近づいていく。よって、薬液の供給に引き続いてリンス液が供給される場合よりも、基板Wの急激かつ急速な温度低下を抑制でき、基板Wの変形量を低減できる。
さらに、基板Wの上面に対する反応液の供給と並行して、高温の加熱流体(高温の純水または窒素ガス)が、基板Wの下面に供給される。基板Wに供給される前の加熱流体の温度は、薬液の温度(第1温度)よりも低く、基板Wに供給される前の反応液の液温よりも高い。したがって、反応液の供給と並行して、加熱流体が基板Wに供給されることにより、反応液の供給による基板Wの局所的な温度低下が抑制される。さらに、加熱流体は、薬液および反応液が供給される面とは反対側の基板Wの下面に供給されるので、薬液と基板Wとの反応を妨げることなく基板Wの温度低下を抑制できる。
また本実施形態では、基板Wが回転しており、基板Wの上面全域が薬液で覆われている状態で、基板Wの上面に対する反応液の供給が、中央部と周縁部との間の中間部で開始される。それに続いて、基板Wの上面に対する反応液の着液位置が、中間部から中央部に移動される。基板Wの回転による遠心力が反応液に加わるので、基板Wに供給された反応液は、基板Wの上面に沿って周縁部まで外方に流れる。これにより、基板Wの上面全域に反応液が供給される。そのため、基板Wの上面全域を覆う液膜における反応液の割合が徐々に高まり、基板Wの各部の温度が反応液の温度に近づいていく。
基板Wと反応液との温度差は、反応液の供給開始時が最も大きい。基板Wの上面中間部の周速(回転方向への速度)が、基板Wの上面中央部の周速よりも大きいので、反応液の供給が基板Wの上面中央部で開始される場合よりも、単位面積当たりの反応液の供給流量が少ない。そのため、着液位置での基板Wおよび薬液の温度が、多量の反応液の供給によって急激かつ急速に低下することを抑制または防止できる。さらに、基板Wの上面中央部に着液した反応液は、基板Wの上面周縁部を経て基板Wの周囲に排出されるので、反応液の供給が基板Wの上面周縁部で開始される場合よりも、基板W上での反応液の滞在時間が長い。そのため、反応液を効率的に利用できる。
また本実施形態では、反応液は、基板Wの上面に対して傾いた方向に基板Wの上面に向けて吐出される。したがって、反応液は、基板Wの上面に対して斜めに吐出される。そのため、反応液が基板Wの上面に垂直に入射する場合よりも、反応液が基板Wに着液したときの衝撃が小さい。基板Wの上面にパターンが形成されている場合、基板Wに加わる衝撃が低減されると、パターンに加わる衝撃も低減される。したがって、パターン倒壊などの損傷の発生を抑制または防止できる。
また本実施形態では、反応液は、基板Wの上面に近づくに従って基板Wの中心側に位置するように基板Wの上面に対して傾いた方向に基板Wの上面に向けて吐出される。したがって、反応液は、基板W上を主として着液位置から内方(基板Wの中心側)に流れる。そのため、反応液が基板Wの上面に垂直な方向に吐出される場合や、基板Wの上面に対して外向きに傾いた方向に吐出される場合よりも短時間で着液位置よりも内方の領域に反応液を広げることができる。さらに、これらの場合よりも着液位置から内方に流れる反応液の流量が増加するので、基板W上での反応液の滞在時間が増加する。そのため、反応液を効率的に利用できる。
また本実施形態では、液温が第1温度よりも低く第2温度以上である反応薬液(過酸化水素水)と、反応薬液と混ざり合うことにより発熱する発熱薬液(硫酸)とが混合される。これにより、発熱薬液および反応薬液が、発熱薬液の発熱によって第1温度まで温度上昇し、第1温度の薬液(SPM)が生成される。そして、薬液が基板Wに残留している状態で、反応液としての反応薬液が基板Wの上面に供給される。したがって、反応液としての反応薬液が、基板W上の薬液に含まれる発熱薬液と混ざり合い、反応液の着液位置およびその近傍の位置で発熱反応が発生する。そのため、着液位置近傍領域での基板Wの温度低下量が低減される。さらに、薬液に含まれる成分薬液(ここでは、反応薬液)と同種の薬液、つまり薬液と親和性の高い液体が、反応液として用いられるので、薬液と反応液とを効率的に混合させることができる。
また第3処理例では、反応液は、相対的に大きい回転速度V4、すなわち基板Wへの薬液の供給が開始されてから基板Wへの反応液の供給が開始される前までの少なくとも一部の期間における基板Wの回転速度V2よりも大きい回転速度V4で基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に向けて吐出される。したがって、基板Wに付着している液体に加わる遠心力が増加する。そのため、基板Wに残留している薬液が基板Wの周囲に速やかに振り切られると共に、基板Wに供給された反応液が速やかに基板Wの上面全域に行き渡る。これにより、基板Wの上面全域の温度が均一に低下するので、温度差に起因する基板Wの変形を抑制または防止できる。
また本実施形態では、基板Wへの薬液(SPM)の吐出が停止された後に、基板Wに対する加熱流体(高温の純水)の供給が開始される。薬液が基板Wに向けて吐出されているときには、先に供給された薬液が基板Wの周囲に排出される。したがって、薬液の吐出と並行して加熱流体が基板Wに向けて吐出されると、多量の薬液が基板Wの周囲で加熱流体と混ざり合う場合がある。具体的には、多量のSPMが基板Wの周囲で純水と混ざり合う場合がある。そのため、基板Wから排出された薬液が大幅に温度上昇し、それに伴ってカップ6が大幅に温度上昇する場合がある。
これに対して、薬液の吐出が停止されているときには、基板Wから排出される薬液が少量もしくは零であるので、多量の薬液が基板Wの周囲で加熱流体と混ざり合うことはない。したがって、多量のSPMが基板Wの周囲で純水と混ざり合うことはない。そのため、加熱流体と混ざり合うことにより薬液が発熱する場合(たとえば、薬液が硫酸を含む液体であり、加熱流体が水を含む気体または液体である場合)でも、基板Wから排出された薬液が大幅に温度上昇することを防止できる。そのため、カップ6などの基板Wから排出された液体を捕獲する筒状の捕獲部材の温度上昇を抑えることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の図10〜図14において、前述の図1〜図9に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図10は、本発明の第2実施形態に係るスピンチャック5の平面図である。図11は、本発明の第2実施形態に係るスピンチャック5の正面図である。図12は、下面ノズル245を示す模式的な平面図である。図13は、下面ノズル245の内部構造を示す模式的な断面図である。
図10および図11に示すように、処理ユニット2は、第1実施形態に係る下面ノズル45に代えて、基板回転軸線A1から処理液の着液位置までの距離を変更可能な下面ノズル245を含む。図11および図12に示すように、下面ノズル245は、基板Wの下面に沿って伸縮可能な伸縮アーム271と、伸縮アーム271の内部に配置された伸縮配管272とを含む。
図13に示すように、伸縮アーム271は、スピンベース7の上方に配置された中空の複数のアーム部(第1アーム部273および第2アーム部274)と、第1アーム部273の根元部と第2アーム部274の先端部とを鉛直な屈伸軸線A5まわりに相対回転可能に連結する第1関節部275と、第2アーム部274の根元部をスピンベース7に対して基板回転軸線A1まわりに回転可能に支持する第2関節部276とを含む。伸縮アーム271は、さらに、屈伸軸線A5まわりの第1アーム部273および第2アーム部274の相対回転量に応じた付勢力で第1アーム部273および第2アーム部274を屈伸軸線A5まわりに付勢する第1バネ277と、基板回転軸線A1まわりの第2アーム部274およびスピンベース7の相対回転量に応じた付勢力で第2アーム部274およびスピンベース7を基板回転軸線A1まわりに付勢する第2バネ278とを含む。
図13に示すように、第1関節部275は、屈伸軸線A5に沿って上下方向に延びる第1スリーブ279と、屈伸軸線A5まわりに回転可能に第1スリーブ279を支持する第1軸受280とを含む。第1スリーブ279は、第2アーム部274の先端部に固定されており、第2アーム部274から第1アーム部273の内部まで上方に延びている。第1軸受280は、第1アーム部273の内部に配置されており、第1アーム部273に保持されている。第1バネ277は、第1スリーブ279に巻き付けられている。第1バネ277の一端部は、第1スリーブ279に取り付けられており、第1バネ277の他端部は、第1アーム部273に取り付けられている。第1バネ277は、屈伸軸線A5まわりに弾性的に伸縮可能である。第1関節部275が屈曲位置(図12に示す位置)から伸ばされると、第1アーム部273および第2アーム部274は、第1関節部275の変位量に応じた大きさの第1バネ277からの付勢力で屈曲位置に向けて引っ張られる。
図13に示すように、第2関節部276は、基板回転軸線A1に沿って上下方向に延びる第2スリーブ281と、基板回転軸線A1まわりに回転可能に第2スリーブ281を支持する第2軸受282とを含む。第2スリーブ281は、基板回転軸線A1まわりに回転できないようにチャンバー4に固定されており、スピンベース7の内部から第2アーム部274の内部まで基板回転軸線A1に沿って上方に延びている。第2軸受282は、第2アーム部274の内部に配置されており、第2アーム部274に保持されている。第2バネ278は、第2スリーブ281に巻き付けられている。第2バネ278の一端部は、第2スリーブ281に取り付けられており、第2バネ278の他端部は、第2アーム部274に取り付けられている。第2バネ278は、基板回転軸線A1まわりに弾性的に伸縮可能である。第2関節部276が屈曲位置(図12に示す位置)から右回りに回動されると、第2アーム部274およびスピンベース7は、第2関節部276の変位量に応じた大きさの第2バネ278からの付勢力で屈曲位置に向けて引っ張られる。
図13に示すように、伸縮配管272は、第2スリーブ281内を通って第2アーム部274の内部に進入しており、さらに、第1スリーブ279内を通って第1アーム部273の内部に進入している。伸縮配管272の上端部は、第1アーム部273の先端部に固定されている。基板Wの下面に向けて処理液または処理ガスを吐出する流体吐出口283は、第1アーム部273の先端部に設けられている。伸縮配管272は、加熱液配管46または気体配管54に接続されている。図11は、伸縮配管272が加熱液配管46に接続されている例を示している。したがって、加熱液バルブ47が開かれると、加熱液ヒータ49によって室温よりも高い温度に加熱されたリンス液(加熱流体の一例)が、加熱液流量調整バルブ48の開度に対応する流量で、加熱液配管46から伸縮配管272に供給され、流体吐出口283から基板Wの下面に向けて上方に吐出される。
加熱液配管46から伸縮配管272に供給される処理液の供給流量は、制御装置3が加熱液流量調整バルブ48の開度を変更することにより増減される。伸縮配管272内への処理液の供給流量が零または小さい場合、図13に示すように、伸縮配管272は、伸縮アーム271に沿って折れ曲がった屈曲状態で縮んでいる。伸縮配管272内への処理液の供給流量が増加すると、伸縮配管272が直線状に延びる直線状態に近づける力(液圧)が伸縮配管272の内部に発生し、伸縮配管272が直線状態に向かって伸長する。また、伸縮配管272が延びている状態(屈曲状態以外の状態)で伸縮配管272内への処理液の供給流量が減少されると、伸縮配管272内の液圧が低下するので、伸縮配管272は、伸縮配管272の復元力によって屈曲状態に向かって収縮する。したがって、伸縮配管272は、処理液の供給流量に応じて伸縮する。
図10において実線で示すように、伸縮配管272内への処理液の供給流量が零または小さい場合、伸縮アーム271は、第1バネ277および第2バネ278によって、流体吐出口283から上方に吐出された処理液が基板Wの下面中央部に着液する屈伸状態に維持されている。伸縮配管272内への処理液の供給流量が増加すると、伸縮配管272が直線状態に近づこうとするので、流体吐出口283から上方に吐出された処理液が基板Wの下面周縁部に着液する伸長状態に近づける力が、伸縮配管272から伸縮アーム271に加わる。したがって、図10において二点鎖線で示すように、伸縮アーム271の第1関節部275および第2関節部276の少なくとも一方が第1バネ277および第2バネ278の少なくとも一方に抗して回転し、流体吐出口283が外方に移動する。また、伸縮配管272内への処理液の供給が停止されると、第1バネ277および第2バネ278の復元力によって伸縮アーム271が屈曲状態に戻り、流体吐出口283が内方に移動する。
基板Wの下面に対する処理液の着液位置は、基板回転軸線A1から流体吐出口283までの距離に応じて基板Wの径方向に移動する。伸縮配管272内への処理液の供給流量と基板回転軸線A1から流体吐出口283までの距離との関係は、たとえば、第1バネ277および第2バネ278のバネ定数によって調整される。図10に示すように、第1バネ277および第2バネ278のバネ定数は、流体吐出口283が基板Wの半径に沿って水平に移動するように設定されている。したがって、基板Wの下面に対する処理液の着液位置は、基板Wの半径に沿って直線状に移動する。第1バネ277のバネ定数は、たとえば、第2バネ278のバネ定数よりも小さい。したがって、第1関節部275は、第2関節部276よりも小さな力で伸長する。そのため、流体吐出口283は、処理液の供給流量が小さいときでも、供給流量に応じて基板Wの径方向に移動する。さらに、処理液の供給流量が増加するのにしたがって、基板Wの下面に対する処理液の着液位置が外方に移動するので、単位面積あたりの処理液の供給流量の差を低減することができる。
「第5処理例」
図14は、処理ユニット2によって行われる第5処理例の一部の具体的なタイムチャートである。以下では、図10、図11、および図14を参照する。
第5処理例は、第1温度低下抑制工程(図14のステップS6)において基板Wの下面に対する加熱液の着液位置を基板Wの半径方向に移動させる点で第1処理例と異なる。言い換えると、第1温度低下抑制工程以外の工程については、第1処理例と同様である。したがって、以下では、第1処理例と異なる点について主として説明する。また、以下では、第1薬液供給工程と並行して行われる第1温度低下抑制工程について主として説明するが、第2薬液供給工程と並行して行われる第2温度低下抑制工程についても第1温度低下抑制工程と同様の制御が行われてもよい。
第1温度低下抑制工程(図14のステップS6)では、制御装置3は、加熱流体(加熱液)の一例である純水を、第2薬液回転速度V2で回転している基板Wの下面に向けて下面ノズル245に吐出させる。これにより、基板WおよびSPMの温度低下が抑制される。
反応液供給工程(図14のステップS5)では、図14に示すように、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、基板Wが第2薬液回転速度V2で回転している状態で、基板Wの上面に対する過酸化水素水(反応液の一例)の着液位置を中間部から中央部に移動させる。第1温度低下抑制工程(図14のステップS6)では、図14に示すように、制御装置3は、加熱液流量調整バルブ48の開度を変更することにより、すなわち、伸縮アーム271の伸縮量を変更することにより、基板Wの上面中間部から上面中央部への過酸化水素水の着液位置の移動と同期するように、基板Wの下面に対する純水(加熱液の一例)の着液位置を中間部から中央部に移動させる。そして、制御装置3は、第2過酸化水素水バルブ27および加熱液バルブ47を閉じて、第1薬液ノズル11および下面ノズル245からの過酸化水素水および純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、気体バルブ55を開閉することより、窒素ガスを気体吐出口53から一時的に吐出させる。これにより、基板Wとスピンベース7との間から純水が排出される。
このように、制御装置3は、基板回転軸線A1から純水の着液位置までの距離が、基板回転軸線A1から過酸化水素水の着液位置までの距離と等しくなるように、第1ノズル移動装置13および加熱液流量調整バルブ48を制御する。基板回転軸線A1からの距離が等しければ、過酸化水素水の着液位置と純水の着液位置とは、基板Wの周方向に離れた位置であってもよい。この処理例では、過酸化水素水の着液位置と純水の着液位置とは、基板Wに対して互いに反対側の位置である。したがって、純水の着液位置が基板Wの下面中央部に固定されている場合よりも、過酸化水素水の着液位置での基板Wの温度低下をさらに減少させることができる。さらに、基板Wの下面全域を覆う純水の液膜を形成しなくても、基板Wの局所的な温度低下を抑制できるので、純水の消費量を低減できる。
以上のように本実施形態では、制御装置3は、基板Wの上面に対する反応液の着液位置を移動させるのと並行して、基板Wの中心から反応液の着液位置までの距離と基板Wの中心から加熱流体の吐出位置までの距離との差が減少するように、基板Wの下面に対する加熱流体の吐出位置を移動させる。これにより、反応液の着液位置に近い位置に加熱流体が吹き付けられる。具体的には、反応液の着液位置とは反対側の位置に加熱流体が吹き付けられる。そのため、加熱流体の熱が、反応液の着液位置の反対側の位置から基板Wに伝達され、反応液の着液位置およびその近傍の位置の温度低下量がさらに低減される。これにより、温度差に起因する基板Wの変形を抑制または防止できる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の図15〜図16において、前述の図1〜図14に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図15は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置1に備えられたチャンバー4の内部を水平に見た模式図である。
処理ユニット2は、第1実施形態に係る構成に加えて、基板Wの上面中央部に向けて反応液を吐出する中央吐出口311aを有する中央ノズル311Aと、基板Wの上面中間部に向けて反応液を吐出する中間吐出口311bを有する中間ノズル311Bと、基板Wの上面周縁部に向けて反応液を吐出する周縁吐出口311cを有する周縁ノズル311Cとを含む。中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cは、いずれも、基板Wに向けて反応液を吐出する反応液ノズルの一例である。
処理ユニット2は、さらに、中央吐出口311aに反応液を案内する中央配管384と、中央配管384から中央吐出口311aに供給される反応液の流量を増減させる中央流量調整バルブ385と、中間吐出口311bに反応液を案内する中間配管386と、中間配管386から中間吐出口311bに供給される反応液の流量を増減させる中間流量調整バルブ387と、周縁吐出口311cに反応液を案内する周縁配管388と、周縁配管388から周縁吐出口311cに供給される反応液の流量を増減させる周縁流量調整バルブ389とを含む。処理ユニット2は、さらに、中央配管384、中間配管386、および周縁配管388のそれぞれに室温の過酸化水素水を供給する過酸化水素水配管390と、過酸化水素水配管390の内部を開閉する過酸化水素水バルブ391と、中央配管384、中間配管386、および周縁配管388のそれぞれに室温の純水を供給する純水配管392と、純水配管392の内部を開閉する純水バルブ393とを含む。
処理ユニット2は、さらに、中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cを保持する第4ノズルアーム394と、第4ノズルアーム394を移動させることにより、中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cを水平に移動させる第4ノズル移動装置395とを含む。第4ノズル移動装置395は、中央吐出口311a、中間吐出口311b、および周縁吐出口311cから吐出された反応液がそれぞれ基板Wの上面中央部、上面中間部、および上面周縁部に着液する処理位置と、中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cが平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で、中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cを水平に移動させる。
中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cは、いずれも内向き姿勢で反応液アームに保持されている。中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cの一つ以上は、垂直姿勢または外向き姿勢で保持されていてもよい。中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cが処理位置に配置されているとき、中央吐出口311a、中間吐出口311b、および周縁吐出口311cは、基板回転軸線A1からの直線距離がそれぞれ異なる3つの位置にそれぞれ配置される。中央吐出口311a、中間吐出口311b、および周縁吐出口311cは、等しい高さに配置されている。中央吐出口311a、中間吐出口311b、および周縁吐出口311cの一つ以上は、異なる高さに配置されていてもよい。
「第6処理例」
図16は、処理ユニット2によって行われる第6処理例の一部の具体的なタイムチャートである。以下では、図15および図16を参照する。
第6処理例は、反応液供給工程において複数の反応液ノズルを静止させた状態で基板Wの上面内の複数の位置に向けて反応液を吐出する点で第1処理例と異なる。言い換えると、反応液供給工程以外の工程については、第1処理例と同様である。したがって、以下では、反応液が過酸化水素水である場合の反応液供給工程(図16のステップS5)と、反応液が純水である場合の反応液供給工程(図16のステップS5a)とについて説明する。
反応液供給工程では、制御装置3は、第4ノズル移動装置395を制御することにより、第1薬液ノズル11を基板Wの上方から退避させた状態で、中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cを退避位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3は、過酸化水素水バルブ391および純水バルブ393のいずれか一方を開いて、反応液としての過酸化水素水または純水を、第2薬液回転速度V2で回転している基板Wの上面に向けて中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cに吐出させる。これにより、基板WおよびSPMよりも低温の反応液の供給が基板Wの上面中央部、上面中間部、および上面周縁部で開始される。
反応液供給工程での中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cからの反応液の吐出流量は、等しくてもよいし、異なっていてもよい。たとえば、中央ノズル311A、中間ノズル311B、周縁ノズル311Cの順番で吐出流量が大きくなるように、中央流量調整バルブ385、中間流量調整バルブ387、および周縁流量調整バルブ389の開度が制御装置3によって調整されてもよい。この場合、中央部、中間部、周縁部の順番で基板Wの上面に対する処理液の供給流量が増加するので、単位面積あたりの処理液の供給流量の差を低減することができる。これにより、局所的な基板Wの温度低下を抑制できる。
制御装置3は、中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cを基板Wの上方で静止させた状態で、基板Wの上面に対する反応液の供給を所定時間継続させる。その後、制御装置3は、過酸化水素水バルブ391および純水バルブ393のうち開いている方のバルブを閉じて、中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cからの反応液の吐出を停止させる。続いて、制御装置3は、第1リンス液供給工程(図5のステップS7)を開始する。中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cが純水供給源に接続されているので、制御装置3は、リンス液ノズル36を用いて第1リンス液供給工程を行う代わりに、中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311Cを用いて第1リンス液供給工程を行ってもよい。
以上のように本実施形態では、反応液は、基板Wが回転している状態で、基板Wの中心からの距離がそれぞれ異なる基板Wの上面内の複数の位置に向けて同時に吐出される。より具体的には、基板Wの上面中央部、上面中間部、および上面周縁部に向けて、反応液が同時に吐出される。したがって、基板Wが1回転以上回転すると、反応液が基板Wの上面全域に行き渡る。そのため、反応液が短時間で基板Wの上面全域に行き渡り、基板Wの上面全域の温度が均一に低下する。これにより、温度差に起因する基板Wの変形を抑制または防止できる。
なお、図15では、複数の反応液ノズル(中央ノズル311A、中間ノズル311B、および周縁ノズル311C)が処理ユニット2に備えられている例について説明したが、処理ユニット2は、基板Wの中心からの距離がそれぞれ異なる基板Wの上面内の複数の位置に向けて同時に反応液を吐出する単一の反応液ノズルを備えていてもよい。この場合、処理ユニット2は、図17に示すように、平面視で基板Wの上面中央部から基板Wの上面周縁部まで基板Wの径方向に延びるスリット状の吐出口311xを有する反応液ノズル311Xを備えていてもよい。また、処理ユニット2は、図18に示すように、平面視で基板Wの上面中央部から基板Wの上面周縁部まで基板Wの径方向に並んだ複数の吐出口311yを有する反応液ノズル311Yを備えていてもよい。
図17および図18に示す構成では、反応液は、基板Wが回転している状態で、基板Wの半径を含む基板Wの上面内の領域全体に向けて同時に吐出され、この領域全体に同時に着液する。すなわち、反応液は、基板Wの中心から基板Wの周縁まで基板Wの径方向に連続した領域全体に同時に供給される。したがって、基板Wが1回転以上回転すると、反応液が基板Wの上面全域に行き渡る。そのため、反応液が短時間で基板Wの上面全域に行き渡り、基板Wの上面全域の温度が均一に低下する。これにより、温度差に起因する基板Wの変形を抑制または防止できる。
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の各処理例では、第1薬液ノズル11からのSPMの吐出を停止させた状態で基板WとSPMとを反応させるパドル工程が行われる場合について説明したが、パドル工程が省略され、第1薬液供給工程の終了に引き続いて反応液供給工程が開始されてもよい。
また、前述の各処理例では、基板WおよびSPMを赤外線ヒータ58で加熱する場合について説明したが、赤外線ヒータ58によって基板WおよびSPMを加熱する加熱工程(図5のステップS4)が省略されてもよい。同様に、第1温度低下抑制工程(図5のステップS6)および第2温度低下抑制工程(図5のステップS9)の少なくとも一方が省略されてもよい。
また、前述の各処理例では、反応液供給工程(図5のステップS5)と同時に、第1温度低下抑制工程が開始される場合について説明したが、第1温度低下抑制工程(図5のステップS6)は、反応液供給工程の開始前または開始後に開始されてもよい。同様に、第2温度低下抑制工程(図5のステップS9)は、第2薬液供給工程(図5のステップS8)の開始前または開始後に開始されてもよい。
また、前述の各処理例では、第1温度低下抑制工程(図5のステップS6)が終了した後に、すなわち、加熱流体の吐出が停止された後に、第2温度低下抑制工程(図5のステップS9)が開始される場合について説明したが、反応液供給工程(図5のステップS5)の開始から第2薬液供給工程(図5のステップS8)の終了まで、加熱流体の吐出が継続されてもよい。
また、前述の各処理例では、処理ユニット2がレジスト除去工程を行う場合について説明したが、処理ユニット2で行われる処理は、レジスト除去工程に限らず、洗浄工程やエッチング工程などの他の工程であってもよい。
また、前述の実施形態では、スピンチャック5が、複数のチャックピン8を備える挟持式のチャックである場合について説明したが、スピンチャック5は、スピンベース(吸着ベース)の上面に基板Wの下面(裏面)を吸着させるバキューム式のチャックであってもよい。
また、前述の実施形態では、第1薬液ノズル11、第2薬液ノズル29、およびリンス液ノズル36が、別々のノズルアームに取り付けられている場合について説明したが、これらのノズルのうちの2つ以上が共通のノズルアームに取り付けられていてもよい。同様に、赤外線ヒータ58は、第1薬液ノズル11などの処理液を吐出する処理液ノズルと共通のアームに取り付けられていてもよい。
また、前述の実施形態では、第1薬液ノズル11に過酸化水素水を供給する2つの配管(第1過酸化水素水配管23および第2過酸化水素水配管26)が設けられている場合について説明したが、一方の配管が省略されてもよい。同様に、リンス液ノズル36にリンス液を供給する2つの配管(第1リンス液配管39および第2リンス液配管42)が設けられている場合について説明したが、一方の配管が省略されてもよい。
また、前述の実施形態では、基板に供給される前の反応液(過酸化水素水または純水)の温度が室温である場合について説明したが、基板に供給される前のSPMの温度(第1温度)よりも低ければ、基板に供給される前の反応液の温度は室温より高くてもよい。
また、前述の実施形態では、加熱液の一例である温水(第1中間温度に加熱された純水)を基板Wの下面に供給する場合について説明したが、加熱液に代わりに加熱ガスを基板Wの下面に供給してもよい。
具体的には、制御装置3は、第1温度低下抑制工程(図5のステップS6)および第2温度低下抑制工程(図5のステップS9)の少なくとも一方において、気体バルブ55を開いて、第1中間温度(たとえば、室温よりも高い温度)の窒素ガスをスピンベース7の上面中央部で開口する気体吐出口53に吐出させてもよい。この場合、気体吐出口53から吐出された窒素ガスは、基板Wの下面とスピンベース7の上面との間の空間をスピンベース7の上面中央部から放射状に広がる。これにより、基板Wの下面とスピンベース7の上面との間の空間が第1中間温度の窒素ガスで満たされ、基板Wの温度低下が加熱ガスの一例である窒素ガスによって抑制される。
また、前述の実施形態では、基板処理装置1が、円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。