本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置の構成の一例を示す概略構成図である。図1に示す定着装置60は、例えば、回転部材の一例としての定着ロール61と、管状体の一例としての加圧ベルト62と、加圧ベルト62を介して定着ロール61を押圧する押圧部材の一例としての押圧パッド64と、摺動部材68と、により主要部が構成されている。なお、加圧ベルト62と定着ロール61とは、相対的に加圧されていればよいため、加圧ベルト62側が定着ロール61に加圧されてもよく、定着ロール61側が加圧ベルト62に加圧されてもよい。
図1に示す定着ロール61は、例えば、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に弾性体層612及び離型層613を積層して構成されたものであり、回転自在に支持されている。定着ロール61の内部には、加熱手段の一例としてのハロゲンランプ66が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
定着ロール61の表面には、例えば、感温素子69が接触して配置されている。この感温素子69による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ66の点灯が制御され、定着ロール61の表面温度が予め定められた設定温度(例えば、150℃)に維持される。
定着ロール61の周辺には、定着後の記録媒体56を剥離するための剥離部材70が設けられている。剥離部材70は、定着ロール61の回転方向Cと対向する向き(カウンタ方向)に、定着ロール61と近接する状態で配置される剥離バッフル71と、剥離バッフル71を保持するホルダ72とで構成されている。
加圧ベルト62は、例えば、内部に配置された押圧パッド64とベルト走行ガイド63とによって回転自在に支持され、定着ロール61からの駆動力を受けることで従動回転される。加圧ベルト62は、原形が円筒形状に形成された継ぎ目がない無端ベルト、継ぎ目(シーム)があるベルト等のベルト部材等が挙げられる。
図1に示す押圧パッド64は、加圧ベルト62の内側において金属製等のホルダ65に支持されている。そして、押圧パッド64は加圧ベルト62を介して定着ロール61と対向するように配置され、加圧ベルト62の内周面から加圧ベルト62を定着ロール61へ押圧して、加圧ベルト62と定着ロール61との間に記録媒体56が通過するニップ部Nを形成している。図1に示す押圧パッド64では、幅の広いニップ部Nを確保するための第1押圧パッド64aをニップ部Nの記録媒体入口側に配置し、定着ロール61に歪みを与えるための第2押圧パッド64bをニップ部Nの記録媒体出口側に配置している。図1に示す押圧パッド64は、一例であって、必ずしも第1押圧パッド64aと、第2押圧パッド64bとを備える必要はなく、押圧パッド64の加圧ベルト62側の面(摺動部材68と接触する面)が、形成したニップ部Nの形状に対応する形状に加工されていればよい。
ホルダ65には、潤滑剤塗布部材67が配置されている。潤滑剤塗布部材67は、加圧ベルト62の内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤塗布部材67から加圧ベルト62の内周面に潤滑剤が供給される。
図1に示す摺動部材68は、押圧パッド64と加圧ベルト62との間に介在され、加圧ベルト62の内周面に接触する摺動面と、摺動部材68における摺動面と反対側の面である非摺動面とを有し、非摺動面は、押圧パッド64に接触している。本実施形態では、ニップ部Nより上流側の摺動部材68の少なくとも一部を不図示の固定部材等によってホルダ65に固定している。
図1に示す定着装置60の動作を説明する。まず、定着ロール61が図示しない駆動モータに連結されて矢印C方向に回転し、この回転に従動して加圧ベルト62も回転する。そして記録媒体56が、不図示の搬送手段によって、定着ロール61と加圧ベルト62とが圧接して形成されたニップ部Nに搬送される。そして、記録媒体56がニップ部Nを通過した際に、ニップ部Nに作用する圧力、定着ロール61から供給される熱等が記録媒体56に加えられ、未定着トナー像Kが記録媒体56上に定着される。定着後の記録媒体56は、ニップ部Nを通過後、剥離部材70により定着ロール61から剥離され、定着装置60から排出される。このような定着処理の際に、回転する加圧ベルト62と押圧パッド64間の摺動部材68、潤滑剤塗布部材67から摺動部材68と加圧ベルト62との間に供給される潤滑剤により、例えば、加圧ベルト62の回転により発生する摺動抵抗等が緩和される。
図2(A)は、本発明の実施形態に係る摺動部材の一例を示す模式断面図であり、図2(B)は、本発明の実施形態に係る摺動部材の一例を示す模式平面図であり、摺動面を平面視した図面である。図2(A)に示すように、摺動部材68は、例えば、第1フッ素樹脂層681a、第2樹脂層681b、第1フッ素樹脂層681aと第2樹脂層681bとの間に設けられる基材682と、を備える。図2(A)に示す摺動部材68は、例えば、第1フッ素樹脂層681aの外表面Aが、加圧ベルト62と接触する摺動面を成し、第2樹脂層681bの外表面Bが、樹脂層681における摺動面と反対側の面を成し、押圧パッド64と接触する非摺動面となる。なお、本実施形態の摺動部材68は、第1フッ素樹脂層681a、第2樹脂層681b及び基材682を備える3層構造であるが、これに制限されるものではなく、第1フッ素樹脂層681aと、第1フッ素樹脂層681aにおける摺動面と反対側の面に配置される基材682又は第2樹脂層681bとを備える2層構造、第1フッ素樹脂層681aから構成される単層構造、さらに、基材682と第1フッ素樹脂層681aとの間、基材682と第2樹脂層681bとの間に耐熱性樹脂層や弾性体層等の層を含む4層以上の構造等であってもよい。
本実施形態では、図2(B)に示すように、第1フッ素樹脂層681aの摺動面は、加圧ベルト62を介して定着ロール61と加圧ベルト62との間に形成されるニップ部Nに対向するニップ部対向領域683と、ニップ部対向領域683の外側に配置される、すなわちニップ部対向領域683の外周を囲むように配置されるニップ部非対向領域684と、を有する。ニップ部非対向領域684は、ニップ部Nと対向していない。そして、本実施形態では、ニップ部非対向領域684は、ニップ部対向領域683より平坦な面となっている。
通常、摺動部材68の摺動面上の潤滑剤の保持量を向上させる等の点から、摺動面に凹凸を形成することが望ましい。そこで、本実施形態では、ニップ部対向領域683が凹凸部を有することが好ましい。ニップ部対向領域683に形成される凹凸の高さの平均(凹部の底から凸部の頂点までの高さ)は、10μm以上が好ましく、10μm以上50μm以下であることが好ましい。ニップ部対向領域683の凹凸の高さの平均が、10μm未満であると、ニップ部対向領域683上に保持される潤滑剤の量が低下する場合がある。
摺動面に形成される凹凸は、潤滑剤の保持量を向上させる反面、摺動面全体に凹凸を形成すると、摺動面に形成された凹凸による毛管現象等によって摺動面の端部から潤滑剤が流出すると考えられる。しかし、本実施形態では、ニップ部非対向領域684をニップ部対向領域683より平坦にしているため、摺動面の凹凸による毛管現象の発生が抑えられ、摺動面の端部から潤滑剤が流出することが抑制されると考えられる。ここで、ニップ部非対向領域684の平坦性は、ニップ部非対向領域684が有する凹凸部の凹凸高さの平均で定義される。すなわち、ニップ部非対向領域684が、ニップ部対向領域683より平坦であるとは、ニップ部非対向領域684の表面粗さ(凹凸高さの平均)が、ニップ部対向領域683の凹凸高さの平均より低いことを言う。ニップ部非対向領域684の表面粗さは、摺動面の凹凸による毛管現象の発生を抑え、摺動面の端部から潤滑剤が流出することを抑制する点等から、例えば、10μm未満であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。ニップ部非対向領域684の凹凸高さの平均が10μm以上であると、毛管現象により、摺動面の端部から潤滑剤が流出する場合がある。各領域の凹凸高さの平均は、東京精密社製のサーフコムを用いて、基材の網目に平行に凹凸の頂点を結ぶ線上を、JIS‘94規格のろ波中心線うねり測定で走査し、その表面プロファイルから凸部の高さを測定し、面内のランダムな個所(たとえば5か所)のデータから平均値を算出する。ここでいう「表面粗さ」も同様である。
第1フッ素樹脂層681aは、主成分としてフッ素樹脂を含む層であればよく、必要に応じて、充填材等の添加物を含んで構成されていてもよい。第1フッ素樹脂層681aのニップ部対向領域683及びニップ部非対向領域684は、単一のフッ素樹脂層で構成されることが好ましいが、フッ素樹脂層の基体と、基体のニップ部非対向領域に、基体より平滑なフッ素樹脂層と、から構成されてもよい。なお、第1フッ素樹脂層681aの好ましい作製方法については、後述する。
第1フッ素樹脂層681aを構成する樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー等が挙げられる。第1フッ素樹脂層681aは、摺動部材の耐久性の点から、主成分として架橋されたフッ素樹脂を含む層であることが好ましく、特に、架橋されたポリテトラフルオロエチレン(以下、「架橋PTFE」と称する)を含む層であることがより好ましい。架橋PTFEは、例えば、酸素不在の環境下で、未架橋PTFEに対して、照射線量1KGy以上10MGy以下の電離性放射線(例えば、γ線、電子線、X線、中性子線、或いは高エネルギーイオン等)を照射することにより得られる。なお、PTFEには、テトラフルオロエチレン以外の他の共重合成分(パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、(パーフルオロアルキル)エチレン、或いはクロロトリフルオロエチレン等)を含んでいてもよい。なお、主成分としてフッ素樹脂を含むとは、第1フッ素樹脂層681aを構成する樹脂のうち50質量%以上のことをいう。
充填材としては、導電性付与、耐久性、熱伝導性を向上させる点等から、例えば、金属酸化物粒子、ケイ酸塩鉱物、カーボンブラック、及び窒素化合物等が好ましい。
第1フッ素樹脂層681aの厚みとしては、特に制限されるものではないが、摺動部材68の機械的強度の点等から、例えば、5μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。第1フッ素樹脂層681aの厚みが5μm未満であると、摩耗による摺動部材68の交換時期が早くなる場合がある。100μmを超えると表面の凹凸が役割を果たさなくなる場合がある。具体的には、表層材料の融点付近で表面層を基材に熱融着するため、100μmを超えると接着面側で表層が基材形状に溶けて追従してしまい、摺動面側に影響が伝わらず、凹凸が現れなくなる虞がある。
基材682としては、潤滑剤保持の点等から、表面に凹凸を有する基材を用いることが好ましい。また、基材682は、摺動部材68の強度の点等から、第1フッ素樹脂層681aの摺動面と反対側の面の全面に亘って設けられることが好ましいが、第1フッ素樹脂層681aの摺動面におけるニップ部対向領域683に凹凸を形成する点等から、摺動面と反対側の面のうちニップ部対向領域683と対向する面にのみ設けられていても良い。基材682は、表面凹凸の制御の点等から、例えば、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等を織ることによって得られる織布を含んで構成されることが好ましく、さらに強度の点等から、ガラス繊維を含む織布がより好ましい。
基材682の凹凸の高さは、特に制限されるものではないが、ニップ部対向領域683に凹凸を形成しやすい等の点から、例えば、20以上100μm以下が好ましく、50μmがより好ましい。基材682の凹凸の高さが20未満であると、後述するような摺動部材68のプレス成型の際に、ニップ部対向領域683に十分な凹凸が形成されない場合がある。100を超えると摩耗による摺動部材68の交換時期が早くなる場合がある。
第2樹脂層681bとしては、例えば、第1フッ素樹脂層681aと同様にフッ素樹脂を含む層であってもよいが、これに制限されるものではなく、例えば、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、シリコーンエラストマー(シリコーン樹脂)等を含む層等が挙げられる。
第2樹脂層681bの厚みとしては、特に制限されるものではないが、摺動部材68の機械的強度の点等から、第一層と同じ範囲が適用される。
本実施形態の摺動部材68の製造方法の一例を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る摺動部材の製造方法の一例を説明するための図である。まず、例えば、凹凸を有する基材682の一方の面及び反対側の面に熱可塑性樹脂等の接着剤を塗布し、基材682の一方の面に、第1フッ素樹脂層681aを配置し、反対側の面に、第2樹脂層681bを配置して、積層物を得る。この積層物の第1フッ素樹脂層681aにおいて、ニップ部対向領域となる面にシリコーンエラストマー等の平滑な弾性板685を載せ、ニップ部非対向領域となる面に平滑な金属板686を載せる。弾性板685及び金属板686を載せた積層物をSUS板等のステンレス板687で挟んだ後、プレス機688に投入し、予め定めた圧力で積層物をプレスする(必要であれば予め定めた温度で加熱する)。このように積層物をプレスすることにより、弾性板685を介してプレスされたニップ部対向領域では、弾性板685の変形により基材682の凹凸がニップ部対向領域に反映されて、凹凸が形成される。一方、金属板686を介してプレスされたニップ部非対向領域では、金属板686により基材682の凹凸が潰される等して、ニップ部対向領域より凹凸高さの小さい平滑な面が形成される。プレス機688によるプレス圧力は、特に制限されるものではないが、例えば、10kg/cm2以上100kg/cm2以下の範囲が好ましい。プレス圧力が、10kg/cm2未満では、ニップ部非対向領域の凹凸高さが、ニップ部対向領域の凹凸高さより低くならない場合があり、100kg/cm2を超える場合には、ニップ部対向領域に十分な凹凸が形成されない場合がある。
本実施形態の摺動部材68の製造方法の一例としては、例えば、第1フッ素樹脂層681aにおけるニップ部対向領域と同程度の面積を有する凹凸基材682を準備し、基材682の一方の面及び反対側の面に接着剤を塗布する。そして、基材682と、第1フッ素樹脂層681aのニップ部対応領域とを合わせて、基材682の一方の面に、第1フッ素樹脂層681aを配置し、反対側の面に、第2樹脂層681bを配置して積層物を得る。この積層物を平滑な弾性板685、平滑なステンレス板687で挟んだ後、プレス機688に投入し、予め定めた圧力で積層物をプレスする(必要であれば予め定めた温度で加熱する)。このように積層物をプレスすることにより、ニップ部対向領域では、基材682の凹凸が反映されて凹凸が形成され、ニップ部非対向領域では、基材682が存在しないため、ニップ部対向領域より凹凸高さの小さい平滑な面が形成される。
凹凸を有する基材682を備えていない摺動部材68の場合には、例えば、第1フッ素樹脂層681aのニップ部対向領域に凹凸を有する金属板を載せ、ニップ部非対向領域に平滑な金属板を載せ、これらをプレス機に投入し、予め定めた圧力で積層物をプレスすることにより、ニップ部非対向領域がニップ部対向領域より凹凸高さの小さい平滑な摺動部材が得られる。
以下に、定着装置60を構成するその他の部材について説明する。
まず、定着ロール61のコア611は、機械的強度、伝熱性の点で、例えば、鉄、アルミニウム(例えば、A−5052材)、SUS、銅等の金属または合金、セラミックス、FRM等が挙げられる。
また、定着ロール61の弾性体層612の材質は、従来公知のものの中から適宜選択されればよいが、例えば、シリコーンエラストマー(以下、シリコーンゴムと呼ぶ場合がある)、フッ素含有エラストマー(以下、フッ素含有ゴムと呼ぶ場合がある)等が挙げられ、表面張力が小さく、高弾性を示す点等から、シリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、RTV(室温硬化型)シリコーンゴム、HTV(熱加硫型)シリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
弾性体層612の厚みとしては、例えば、3mm以下であり、好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。弾性体層612をコア611の表面に形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、それ自体公知のコーティング法などが採用され、例えば、ニーダーコーティング、バーコーティング、カーテンコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等が挙げられる。
また、定着ロール61の離型層613の材質としては、トナー像Kに対し適度な離型性を示すものが望ましく、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの材質の中でも、離型性の点等から、フッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂挙げられ、耐熱性、機械特性の点等から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル(EFA)共重合体が好ましい。
離型層613の厚みとしては、例えば、10μm以上100μm以下であり、好ましくは20μm以上30μm以下である。離型層613をコア611の表面に形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、上述したコーティング法などが挙げられる。また、押出し成型によって形成されたチューブを被覆する方法等でもよい。
本実施形態では、ハロゲンランプ66を加熱手段として用いているが、加熱手段としては、ニップ部を加熱するものであれば、定着ロール61を内部加熱するタイプに限られず、例えば、定着ロール61を外部加熱するもの等が挙げられる。
加圧ベルト62としては、その形状、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて従来公知のものの中から適宜選択される。加圧ベルト62の構造としては、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造の加圧ベルト62としては、ベース層と離型層とを有するもの等が挙げられる。
加圧ベルト62のベース層の材質としては、例えば、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性の点等から、熱硬化性ポリイミドが好ましい。加圧ベルト62の離型層の材質としては、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)等のシリコーンゴム、フッ化ビニリデン系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、フルオロホスファゼン系ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系ゴム等のフッ素ゴムなどが挙げられる。
押圧パッド64の第1押圧パッド64aは、例えば、シリコーンゴムやフッ素含有ゴム等の弾性体や板バネ等が用いられる。また、押圧パッド64の第2押圧パッド64bは、例えば、PPS、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属等で形成される。押圧パッド64の構造等については特に制限はなく、例えば、第1押圧パッド64a、第2押圧パッド64b等の複数の部材から構成されてもよいし、単一の部材から構成されるものであってもよい。
潤滑剤は、潤滑性、潤滑性の指標となる動粘度、耐熱性、揮発性の点等から、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、酸化防止剤入りのアミノ変性シリコーンオイルであるヒンダードアミンオイル等のシリコーンオイル等が好ましく、更に濡れ性の点等から、アミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。また、耐熱性により優れた性能を有する点等から、メチルフェニルシリコーンオイルも好ましい。なお、耐熱性の点等から、ヒンダードアミンオイルが好ましい。
シリコーンオイルの動粘度は、常温で50cs以上3000cs以下であることが好ましい。動粘度が50cs未満であると、シートが平坦であってもオイルがシート上から流動して無くなってしまう場合があり、3000csを超えると、摺動部材68と加圧ベルト62との間の摺動抵抗を増加させる場合がある。さらに高温下(例えば、230℃以上)において使用する場合には、耐熱安定性の点等から、パーフルオロポリエーテルオイルを使用することも望ましい。
また、潤滑剤としては、その他に、例えば、グリース(例えば、フッ素オイルを基油としたフッ素グリース(例えばスミテックF950(住鉱潤滑社製))、ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩及びヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、パーフルオロポリエーテルオイルなどが挙げられる。
図4は、本発明の実施形態に係る定着装置の構成の他の一例を示す概略構成図である。図4に示す定着装置80は、管状体の一例として定着ベルト84を備える定着ベルトモジュール86と、定着ベルト84に押圧して配置された回転部材の一例としての加圧ロール88とを含んで構成されている。そして、定着ベルト84と加圧ロール88との間にはニップ部Nが形成されている。ニップ部Nでは、記録媒体56が加圧及び加熱され、トナー像が定着される。
図4に示す定着ベルトモジュール86は、例えば無端状の定着ベルト84と、加圧ロール88側で定着ベルト84が巻き掛けられ、定着ベルト84をその内面から加圧ロール88側へ押し付けて、ニップ部Nを形成する加熱押圧ロール89と、加熱押圧ロール89と異なる位置で内側から定着ベルト84を支持する支持ロール90とを備えている。なお、本実施形態の加熱押圧ロール89は、不図示のモータの回転力で回転駆動するように構成されている。また、定着ベルトモジュール86は、例えば、定着ベルト84の外側に配置されてその周回経路を規定する支持ロール92と、加熱押圧ロール89から支持ロール90までの定着ベルト84の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール94と、定着ベルト84と加圧ロール88とが接触する領域であるニップ部Nの下流側において定着ベルト84を内面から張力を付与する支持ロール98とが設けられている。
図4に示す定着装置80は、定着ベルト84と加熱押圧ロール89との間に介在する摺動部材82を備えている。摺動部材82は、その両端が支持部材96により支持された状態で設けられている。摺動部材82の摺動面は、定着ベルト84の内周面と接しており、定着ベルト84との間に潤滑剤が供給される。
摺動部材82は、前述した図2の摺動部材68と同様の構成を有している。すなわち、摺動部材82の摺動面のニップ部非対向領域は、ニップ部対向領域より平坦な面となっている。具体的には、ニップ部対向領域の凹凸の高さの平均(凹部の底辺から凸部の頂点までの高さ)は、10μm以上が好ましく、30μmであることが好ましい。ニップ部対向領域の凹凸の高さが、10μm未満であると、ニップ部対向領域上に保持される潤滑剤の量が低下する場合がある。また、ニップ部非対向領域は、ニップ部対向領域より平坦であればよいが、摺動面の凹凸における毛管現象の発生を抑え、摺動面の端部から潤滑剤が流出することを抑制する点等から、例えば、10μm未満であることが好ましく、5μmであることがより好ましい。ニップ部非対向領域の凹凸高さの平均が10μm以上であると、毛管現象により、摺動面の端部から潤滑剤が流出する場合がある。
加熱押圧ロール89は、例えば、アルミニウム等で形成された円筒状の芯金と、芯金の表面の金属磨耗を防止する保護層として、芯金表面に形成されたフッ素樹脂皮膜等の樹脂層と、を備える円筒状ロールである。加熱押圧ロール89の内部には、例えば、加熱源の一例としてハロゲンヒータ89Aが設けられている。
支持ロール90は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールである。支持ロール90の内部には、例えば、加熱源の一例としてハロゲンヒータ90Aが配設されており、定着ベルト84を内面側から加熱するようになっている。支持ロール90の両端部には、例えば、定着ベルト84を外側に押圧するバネ部材(図示省略)が配設されている。
支持ロール92は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状の芯金と、芯金の表面に形成された厚み20μmのフッ素樹脂等の離型層と、を備える円筒状ロールである。支持ロール92の離型層は、例えば、定着ベルト84の外周面からのトナーや紙粉が支持ロール92に堆積するのを防止するためのものである。支持ロール92の内部には、例えば、加熱源の一例としてハロゲンヒータ92Aが配設されており、定着ベルト84を外周面側から加熱するようになっている。
姿勢矯正ロール94は、例えば、アルミニウムで形成された円柱状ロールであり、姿勢矯正ロール94の近傍には、定着ベルト84の端部位置を測定する端部位置測定機構(図示省略)が配置されている。姿勢矯正ロール94には、例えば、端部位置測定機構の測定結果に応じて定着ベルト84の軸方向における当り位置を変位させる軸変位機構(図示省略)が配設され、定着ベルト84の蛇行を制御するように構成されている。
加圧ロール88は、例えば、アルミニウムからなる円柱状ロール88Aを基体として、基体側から順に、シリコーンゴム等を含む弾性層88Bと、フッ素樹脂等を含む剥離層(不図示)とが積層された構成となっている。また、加圧ロール88は、回転自在に支持されると共に、図示しないスプリング等の付勢手段によって定着ベルト84が加熱押圧ロール89に巻き回された部位に押圧されて設けられている。これにより、加圧ロール88は、定着ベルトモジュール86の定着ベルト84が矢印E方向へ回転移動するのに伴って、定着ベルト84に従動して矢印F方向に回転移動するようになっている。
そして、未定着トナー像を有する記録媒体56は、定着装置80のニップ部Nに導かれ、ニップ部Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
<画像形成装置>
図5は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略構成図である。ここでは、一般にタンデム型と呼ぶ中間転写方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。なお、図5に示す画像形成装置100は、図1に示す定着装置60を搭載している。
図5に示す画像形成装置100は、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙56に一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙56上に定着させる定着装置60とを備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。また、定着装置60は、前述の定着装置である。
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体ドラム11を備えている。
感光体ドラム11の周囲には、前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段の一例として、感光体ドラム11を帯電させる帯電器12が設けられ、前記帯電器12により帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段の一例として、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
また、感光体ドラム11の周囲には、前記潜像形成手段により前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
さらに、感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及びドラムクリーナ17の電子写真用デバイスが感光体ドラム11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂をベース層としてカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の加圧ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は106Ωcm以上1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚みは、例えば、0.1mm程度に構成されている。
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図5に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、バックアップロール25と、前記現像手段により形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段の一例としての、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
バックアップロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が107以上Ω/□1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5以上Ωcm108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙56上にトナー像を二次転写する。
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
更に、本実施形態の画像形成装置では、用紙56を搬送する搬送手段として、用紙56を収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙56を所定のタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙56を搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙56を二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙56を定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙56を定着装置60に導く定着入口ガイド57を備えている。
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図5に示す画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から所定サイズの用紙56が供給される。給紙ロール51により供給された用紙56は、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙56は一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙56の位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙56は、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙56上に一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙56は、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙56を定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙56上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙56上に定着される。そして定着画像が形成された用紙56は、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
一方、用紙56への転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能であり、本発明の要件を満足する範囲内で実現可能であることは言うまでもない。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
摺動部材を以下のようにして作製した。まず、ガラスクロス基材の一方の面(摺動面側)に架橋PTFE樹脂シート(商品名;エクセロンXF−1B(日立電線社製)を被覆し、ガラスクロス基材の一方の面と反対側の面(非摺動面側)にPTFE樹脂シート(商品名:ポリフロン(ダイキン工業社製))を被覆した積層物を作製した。そして、架橋PTFE樹脂シートのニップ部対向領域にシリコーンゴムの弾性体を載せ、ニップ部非対向領域にSUS304の金属板を載せた上で、該積層物をSUS板で挟み、プレス機(68−041(大竹機械工業社製))により、プレス圧50kg/cm2、温度320℃で、該積層物をプレスした。これを実施例1の摺動部材とした。実施例1の摺動部材において、架橋PTFE樹脂シートのニップ部対向領域及びニップ部非対向領域の凹凸高さの平均を、東京精密社製のサーフコムを用いて0030段落に記載の方法(5か所の測定で平均値を算出)で読み取った。その結果、ニップ部対向領域の凹凸高さの平均は25μmであり、ニップ部非対向領域の凹凸高さの平均は5μmであった。
(実施例2)
ニップ部対向領域と同じ大きさのガラスクロス基材の一方の面に、ガラスクロス基材より大きい架橋PTFE樹脂シート(商品名;エクセロンXF−1B(日立電線社製)を被覆し、ガラスクロス基材の一方の面と反対側の面(非摺動面側)に、ガラスクロス基材より大きいPTFE樹脂シート(商品名:ポリフロン(ダイキン工業社製))を被覆した積層物を作製した。該積層物では、架橋PTFE樹脂シートにおけるニップ部対向領域の反対側にはガラスクロス基材が配置され、ニップ部非対向領域の反対側にはガラスクロス基材が配置されておらず、PTFE樹脂シートが配置されている。次に、このような積層物をSUS板で挟み、プレス機(68−041(大竹機械工業社製))により、プレス圧50kg/cm2、温度320℃で、該積層物をプレスした。これを実施例2の摺動部材とした。実施例2の摺動部材において、架橋PTFE樹脂シートのニップ部対向領域及びニップ部非対向領域の凹凸高さの平均を実施例1と同じ方法で読み取った。その結果、ニップ部対向領域の凹凸高さの平均は25μmであり、ニップ部非対向領域の凹凸高さの平均は2μmであった。
(実施例3)
実施例1のガラス繊維クロスをSUSメッシュ(50メッシュ)に変更し、実施例2と同様に上下のシートを基材より大きくしたこと以外は、実施例1と同様の条件で摺動部材を作製した。実施例3の摺動部材において、架橋PTFE樹脂シートのニップ部対向領域及びニップ部非対向領域の凹凸高さの平均を実施例1と同じ方法で読み取った。その結果、ニップ部対向領域の凹凸高さの平均は25μmであり、ニップ部非対向領域の凹凸高さの平均は2μmであった。
(実施例4)
実施例1のプレス荷重を25kg/cm2に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で摺動部材を作製した。実施例4の摺動部材において、架橋PTFE樹脂シートのニップ部対向領域及びニップ部非対向領域の凹凸高さの平均を実施例1と同じ方法で読み取った。その結果、ニップ部対向領域の凹凸高さの平均は35μmであり、ニップ部非対向領域の凹凸高さの平均は15μm未満であった。
(実施例5)
実施例1のプレス荷重を40kg/cm2に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で摺動部材を作製した。実施例5の摺動部材において、架橋PTFE樹脂シートのニップ部対向領域及びニップ部非対向領域の凹凸高さの平均を実施例1と同じ方法で読み取った。その結果、ニップ部対向領域の凹凸高さの平均は30μmであり、ニップ部非対向領域の凹凸高さの平均は2μmであった。
(比較例)
架橋PTFE樹脂シートのニップ部対向領域及びニップ部非対向領域にシリコーンゴムの弾性体を載せたこと以外は、実施例1と同様の条件で摺動部材を作成した。比較例の摺動部材において、架橋PTFE樹脂シートのニップ部対向領域及びニップ部非対向領域の凹凸高さの平均を実施例1と同じ方法で読み取った。その結果、ニップ部対向領域の凹凸高さの平均は25μmであり、ニップ部非対向領域の凹凸高さの平均も同様に25μmであった。
上記実施例1〜5及び比較例の摺動部材を富士ゼロックス社製の画像形成装置Color 1000 Pressの定着装置に取り付け、潤滑剤としてアミン変性シリコーンオイル(X22−9446、信越化学社製)を用い、定着温度190℃、プロセススピード180ppmで、普通紙(C2紙)1,000,000枚出力した。そして、普通紙1,000,000出力中の加圧ベルトの駆動トルクを計測した。その結果、ニップ部非対向領域がニップ部対向領域より平坦な実施例1〜5では、普通紙1,000,000出力中において、駆動トルクの上昇が5%未満に抑えられた。特に、ニップ部対向領域の凹凸高さが30μmであり、ニップ部非対向領域の凹凸高さが3μmである実施例5では、駆動トルクの上昇が3%未満に抑えられた。また、普通紙1,000,000出力後の実施例1〜5の摺動部材を目視により観察したところ、摺動部材上に潤滑剤が存在していることを確認した。一方、ニップ部非対向領域の凹凸高さがニップ部対向領域の凹凸高さと同じである比較例では、普通紙1,000,000出力中において、駆動トルクは5%以上上昇した。また、普通紙1,000,000出力後の比較例の摺動部材を目視により観察したところ、摺動部材上に潤滑剤が枯渇しており、摺動部材の非摺動面(裏面)や押圧パッドに流出していることを確認した。これらの結果から、実施例1〜5の摺動部材により、定着処理の際における、摺動部材からの潤滑剤の流出が抑制されたと言える。