以下、本発明における好ましい実施形態を示す。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、形態が本発明の技術的思想を有するものである限り、本発明の範囲に含まれる。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る電子部品である発振器100を示す図である。実施形態1の発振器100は、第1の発振ユニットである発振ユニット100aと、第2の発振ユニットである発振ユニット100bと、アンテナ108とを有する。
発振ユニット100aは、第1の自励発振部である自励発振部101aと、自励発振部101aに直流電流を供給する第1の電極部である、上部電極102aと下部電極103aとを有する。ここで自励発振とは、振動的でない直流電流により電気的振動が誘起される現象である。さらに「供給する」とは電流を流入させることだけではなく、電流を流出させることも意味し、たとえば上部電極102aを介して電流を自励発振部101aに流入させ、下部電極103aを介して電流を自励発振部101aから流出させることを意味する。
発振ユニット100bは、第2の自励発振部である自励発振部101bと、自励発振部101bに直流電流を供給する第2の電極部である、上部電極102bと下部電極103bとを有する。
アンテナ108は、一部が断絶された環状の4角形状を有している。本実施形態においては断絶は一部分であるが、断絶は一部分に限らず複数部分でもよく、あるいは断絶を設けずに連続状でも良い。さらにアンテナ108は、本実施形態においては、4角形状を有しているが、形状は環状の4角形状に限ったものではなく、例えば円形の平面状などを用いることができる。発振器100を断面109で見た場合を、図2に示す。
上部電極102aは、結合部106において、アンテナ108とは直流的には絶縁されているが、交流的に接続されるように結合部における上部電極とアンテナとの間隔が自励発振部の発振周波数の波長より近い距離になるように配置する。この配置によって、発振出力は上部電極102aから、アンテナ108へ伝播することができる。
上部電極102bはアンテナ108と直流的に接続されるように配置する。この配置によって、発振出力は上部電極102bから、アンテナ108へ伝播することができる。
本実施形態において、各自励発振部は環状の4角形状の一辺に配置しているが、自励発振部の位置は特に限定されず、環状の4角形状の他の辺にも配置することができる。
上部電極102aから直流電流Iaを自励発振部101aに供給すると、自励発振部101aを通過した直流電流Iaは、下部電極103aを流れる。発振ユニット100aは結合部106により、発振ユニット100bとは直流的に絶縁されているので、直流電流Iaは自励発振部101bには流入しない。つまり、直流電流Iaは自励発振部101aのみを発振させ、他の自励発振部101bを発振させない。
同様に、上部電極102bから直流電流Ibを自励発振部101bに供給すると、自励発振部101bを通過した直流電流Ibは、下部電極103bを流れる。発振ユニット100bは結合部106により、発振ユニット100aとは直流的に絶縁されているので、直流電流Ibは自励発振部101aには流入しない。つまり、直流電流Ibは自励発振部101bのみを発振させ、他の自励発振部101aを発振させない。
したがって本実施形態は、結合部106の直流的な絶縁性により、自励発振部を駆動するための直流電流は他方の自励発振部に流入しないため、自励発振部を独立に駆動することが可能である。つまり本発明により、1つのアンテナに複数の磁気抵抗効果素子を接続した場合、磁気抵抗効果素子を駆動するための直流電流が、他の磁気抵抗効果素子に流入してしまい、他の磁気抵抗効果素子も発振させてしまうといった課題を解決できる。
直流電流Iaにより自励発振部101aが発振すると、発振出力は振動的なので、発振出力は上部電極102aから結合部106を介してアンテナ108へ伝播する。つまり、自励発振部101aの発振出力を、アンテナ108により外部へ放出することができる。ここでアンテナとは、波長より十分大きい距離へ電磁波を伝送させるためのアンテナだけでなく、波長と同程度、または波長より小さい距離へ電磁信号や電磁エネルギーを伝送させるアンテナや共振器やコイルなどを意味する。さらに、電磁エネルギーとは、波長に比較して大きい距離へ電磁波が伝送する電磁エネルギーの形態だけでなく、波長に比較して小さい距離へ電磁場が伝送する電磁エネルギーの形態も意味する。
同様に、直流電流Ibにより自励発振部101bが発振した場合も、発振出力は上部電極102bからアンテナ108へ伝播する。つまり、自励発振部101bの発振出力を、アンテナ108により外部へ放出することができる。こうして発振器100はアンテナ108を共有して、自励発振部101aと自励発振部101bの発振出力を外部へ送信することができる。つまり本発明により、1つのアンテナに複数の磁気抵抗効果素子を接続した場合、磁気抵抗効果素子を駆動するための直流電流が、他の磁気抵抗効果素子に流入してしまい、他の磁気抵抗効果素子も発振させてしまうといった課題を解決し、自励発振部は独立に電磁エネルギーを外部へ発振する発振器を構成できる。
本実施形態において、自励発振部101aと自励発振部101bとに、それぞれ同時に直流電流を供給してもよく、どちらか一方だけに供給してもよい。また、自励発振部101aと自励発振部101bとは、それぞれ同じ周波数で発振してもよいし、異なる周波数で発振してもよい。
図1における上部電極102aは矩形の形状を有しているが、その形状は1例であって、この形状に限らない。結合部106において、結合強度を調整するために、例えば図3aのように電極部を拡げた形状や、図3bのように結合部を狭めた形状や、図3cのように結合部を半円状にした形状を用いることができる。
従来技術では、2チャンネルの発振を実施する場合、発振部とアンテナで構成する発振器が2つ必要であった。つまり、2チャンネルの場合は1チャンネルの場合に比較して、2倍の面積が必要であった。この従来技術に対して本実施形態では、自励発振部101aと自励発振部101bは、それぞれ結合部106と上部電極102bを介して、1つのアンテナ108を共有し、2チャンネル発振を1つのアンテナで実現する。また結合部106の直流的な絶縁性により、自励発振部を駆動するための直流電流は他方の自励発振部に流入しないため、自励発振部を独立に駆動することが可能である。つまり、従来技術で必要であったアンテナ面積に比較して、本実施形態では約1/2の面積で2チャンネルの発振を実現できる。
あるいは従来技術では、2チャンネルの発振を実施する場合、1つのアンテナと2つの発振部とを切り替えスイッチによって接続する構成も用いることができる。しかしその構成では、スイッチによる切り替えで発振部を選択する必要があるため、同時に2チャンネルの発振を行うことはできなかった。この従来技術に対して本実施形態では、自励発振部101aと自励発振部101bを発振させるために必要な直流電流Iaと直流電流Ibは、結合部106により他方の自励発振部に流入しないため、発振部を選択する切り替えスイッチを使用せずに、自励発振部101aと自励発振部101bは独立かつ同時に発振させることができる。したがって、本実施形態は2チャンネルの発振を、独立かつ同時に実施できる。
自励発振部は、特に限定されないが、例えば磁気抵抗効果素子や、ジョセフソン素子を用いることができる。
図4は磁気抵抗効果素子の構成例である。磁気抵抗効果素子205は磁性層であるピン層206aと、磁性層であるフリー層206bと、その間に配置されたスペーサ層207とを有する。ここでのピン層206aの磁化方向は固定されており、矢印209aはピン層206aの磁化の固定方向を示す。フリー層206bの磁化方向は、電流を印加する前の状態では、有効磁場の方向を向いており、矢印209bは有効磁場の方向を示す。有効磁場は、フリー層206b内で生じる異方性磁場、交換磁場、外部磁場、反磁場の和である。図4では、ピン層206aの磁化の方向と、フリー層206bの有効磁場の方向が、互いに反対方向を向いているが、互いの方向はこれに限らない。
磁気抵抗効果素子205は特に限定されないが、例えばGMR素子、またはTMR素子、またはスペーサ層207の絶縁層中に電流狭窄パスが存在する磁気抵抗効果素子などを用いることができる。
磁気抵抗効果素子205にGMR素子を用いる場合、スペーサ層207は、例えば、銅など非磁性金属を用いることができる。GMR素子のフリー層206bおよびピン層206aの材料は、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、クロムなどの磁性金属とその合金、又は、磁性合金にボロンを混入した合金を用いることができる。ピン層206aの磁化を固定するには、イリジウム、鉄、白金、マンガンなどの合金による反強磁性層との交換結合や、磁性金属多層膜(例えばコバルト鉄−ルテニウム−コバルト鉄の多層膜)による反強磁性結合を用いることができる。そして各層の厚さは0.1〜50nm程度が好ましい。GMR素子は、スペーサ層207が金属からなるため、他の磁気抵抗効果素子に比較して抵抗値が低い。このため、磁気抵抗効果素子205を低インピーダンスの回路に接続する際に、インピーダンス整合の観点で好ましい。
磁気抵抗効果素子205にTMR素子を用いる場合、スペーサ層207は、例えば、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム(MgO)の絶縁層を用いることができる。TMR素子のフリー層206bおよびピン層206aの材料は、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、クロムなどの磁性金属とその合金、又は、磁性合金としてボロンを混入した合金を用いることができる。ピン層206aの磁化を固定するには、イリジウム、鉄、白金、マンガンなどの合金による反強磁性層との交換結合や、磁性金属多層膜(例えばコバルト鉄−ルテニウム−コバルト鉄の多層膜)による反強磁性結合を用いることができる。そして各層の厚さは0.1〜50nm程度が好ましい。TMR素子はスペーサ層207が絶縁層からなるため、他の磁気抵抗効果素子に比較して抵抗値が高い。このため、磁気抵抗効果素子205を高インピーダンスの回路に接続する際に、インピーダンス整合の観点で好ましい。
さらに磁気抵抗効果素子205に、スペーサ層207の絶縁層中に電流狭窄パスを有する磁気抵抗効果素子を用いる場合、そのスペーサ層207の絶縁層は酸化アルミニウム等からなる。スペーサ層207の電流狭窄パスは、例えば銅などの非磁性金属や、コバルト、鉄、ニッケル、クロムなどの磁性金属とその合金、又は、磁性合金にボロンを混入した磁性金属を用いることができる。この磁気抵抗効果素子205の磁化自由層および磁化固定層には、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、クロムなどの磁性金属とその合金、又は、磁性合金にボロンを混入した合金を用いることができる。ピン層206aの磁化を固定するには、イリジウム、鉄、白金、マンガンなどの合金による反強磁性層との交換結合や、磁性金属多層膜(例えばコバルト鉄−ルテニウム−コバルト鉄の多層膜)による反強磁性結合を用いることができる。そして、各層の厚さは0.1〜50nm程度が好ましい。この磁気抵抗効果素子205は、電流狭窄パスを有し、その電流狭窄パスによって電流密度を上げられる。このため、素子への投入電流を他の磁気抵抗効果素子に比較して小さくすることができる。この磁気抵抗効果素子205を発振部101に使用することによって、消費電力を抑えた回路とすることができる。
本実施形態に係る磁気抵抗効果素子205の自励発振について説明する。ここで自励発振とは、振動的でない直流電流により電気的振動が誘起される現象である。磁気抵抗効果素子205に直流電流Iを流すと、伝導電子208が直流電流Iとその逆方向、すなわちピン層206aからスペーサ層207を介してフリー層206bに流れる。矢印209aの方向に磁化したピン層206aにおいて、伝導電子208のスピンは矢印209aの方向に偏極する。矢印209cは伝導電子208のスピンの方向を表す。スピン偏極した電子208はスペーサ層207を介してフリー層206bに流れこむことで、フリー層206bの磁化と角運動量の受け渡しを行う。これによって、フリー層206bの磁化の方向を、有効磁場の方向を示す矢印209bの方向から傾かせようとする作用が働く。一方で、フリー層206bの磁化の方向を、有効磁場の方向を示す矢印209bの方向に安定させようとするダンピングの作用がはたらく。したがって、これら2つの作用がつりあって、フリー層の磁化方向は有効磁場の方向の周りを歳差運動する。この歳差運動を、フリー層の磁化方向を示す矢印209dの、有効磁場の方向を示す矢印209bのまわりの運動として表わし、一点鎖線209eによって矢印209dの歳差運動の軌跡を示す。フリー層の磁化方向がピン層の磁化方向に対して高周波で変化するため、フリー層の磁化方向とピン層の磁化方向の相対角度に依存して抵抗が変化する磁気抵抗効果によって、抵抗値も高周波で変化する。直流電流Iに対して抵抗値が高周波で変化するので、およそ100MHzから1THzの高周波数で振動する電圧が発生する。有効磁場の方向は、ピン層206aの磁化方向に対して反対方向に限られず、同じ方向や、その間の任意の方向を有することができる。
印加磁場と発振周波数は、おおよそ比例関係にある。したがって、高周波の発振を生じさせるためには、外部磁場は大きい方が望ましい。
自励発振部に、交流ジョセフソン効果を用いた発振素子を用いることもできる。交流ジョセフソン効果は、2つの超伝導体を接続したジョセフソン接合部に閾値以上の直流電流を供給すると、接合部に交流電流が流れる効果である。さらに、外部磁場をジョセフソン接合部に印加することで、交流の周波数を変化できることが知られている。
図5は実施形態1に係る発振ユニット100aを使用するための周辺回路の一例を示す図である。周辺回路300は、直流電流源301と、インダクタL1とを有する。直流電流源301から直流電流を発振ユニット100aに供給すると、発振ユニット100aは発振する。インダクタL1は発振ユニット100aの発振出力の直流電流源301への流入を防ぐことができる。発振ユニット100bにも周辺回路300と同様の周辺回路を使用することができる。以後の実施形態の説明においては、周辺回路は省略する。
(実施形態2)
図6は実施形態2に係る電子部品である発振器400を示す図である。実施形態2の発振器400は、第1の発振ユニットである発振ユニット400aと、第2の発振ユニットである発振ユニット400bと、アンテナ408とを有する。発振ユニット400aは、第1の自励発振部である自励発振部401aと、自励発振部401aに直流電流を供給する第1の電極部である、上部電極402aと下部電極403aとを有する。ここで自励発振とは、振動的でない直流電流により電気的振動が誘起される現象である。さらに「供給する」とは電流を流入させることだけではなく、電流を流出させることも意味し、たとえば上部電極402aを介して電流を自励発振部401aに流入させ、下部電極403aを介して電流を自励発振部401aから流出させることを意味する。発振ユニット400bは、第2の自励発振部である自励発振部401bと、自励発振部401bに直流電流を供給する第2の電極部である、上部電極402bと下部電極403bとを有する。アンテナ408は、一部が断絶された環状の4角形状を有している。本実施形態においては断絶は一部分であるが、断絶は一部分に限らず複数部分でもよく、あるいは断絶を設けずに連続状でも良い。さらにアンテナ408は、本実施形態においては、4角形状を有しているが、形状は環状の4角形状に限ったものではなく、例えば円形の平面状などを用いることができる。発振器400を断面409で見た場合を、図7に示す。
上部電極402aと上部電極402bとは、第1の結合部406と第2の結合部407において、アンテナ408とは直流的には絶縁されているが、交流的に接続されるように各結合部における上部電極とアンテナとの間隔が自励発振部の発振周波数の波長より近い距離になるように配置する。この配置によって、発振出力は上部電極402aまたは上部電極402bから、アンテナ408へ伝播することができる。本実施形態において、各自励発振部は環状の4角形状の一辺に配置しているが、自励発振部の位置は特に限定されず、環状の4角形状の他の辺にも配置することができる。
上部電極402aから直流電流Iaを自励発振部401aに供給すると、自励発振部401aを通過した直流電流Iaは、下部電極403aを流れる。発振ユニット400aは結合部406により、発振ユニット400bとは直流的に絶縁されているので、直流電流Iaは自励発振部401bには流入しない。つまり、直流電流Iaは自励発振部401aのみを発振させ、他の自励発振部401bを発振させない。同様に、上部電極402bから直流電流Ibを自励発振部401bに供給すると、自励発振部401bを通過した直流電流Ibは、下部電極403bを流れる。発振ユニット400bは結合部407により、発振ユニット400aとは直流的に絶縁されているので、直流電流Ibは自励発振部401aには流入しない。つまり、直流電流Ibは自励発振部401bのみを発振させ、他の自励発振部401aを発振させない。
直流電流Iaにより自励発振部401aが発振すると、発振出力は振動的なので、発振出力は上部電極402aから結合部406を介してアンテナ408へ伝播する。つまり、自励発振部401aの発振出力を、アンテナ408により外部へ放出することができる。また、ここでアンテナとは、波長より十分大きい距離へ電磁波を伝送させるためのアンテナだけでなく、波長と同程度、または波長より小さい距離へ電磁信号や電磁エネルギーを伝送させるアンテナや共振器やコイルなどを意味する。同様に、直流電流Ibにより自励発振部401bが発振した場合も、発振出力は上部電極402bから結合部407を介してアンテナ408へ伝播する。つまり、自励発振部401bの発振出力を、アンテナ408により外部へ放出することができる。こうして自励発振部401aと自励発振部401bはアンテナ408を共有して、電磁エネルギーを外部へ発振することができる。
本実施形態において、自励発振部401aと自励発振部401bとに、それぞれ同時に直流電流を供給してもよく、どちらか一方だけに供給してもよい。また、自励発振部401aと自励発振部401bとは、それぞれ同じ周波数で発振してもよいし、異なる周波数で発振してもよい。
図6における上部電極は矩形の形状を有しているが、その形状は1例であって、この形状に限らない。結合部406と結合部407において、結合強度を調整するために、例えば図3aのように電極部を拡げた形状や、図3bのように結合部を狭めた形状や、図3cのように結合部を半円状にした形状を用いることができる。
従来技術では、2チャンネルの発振を実施する場合、発振部とアンテナで構成する発振器が2つ必要であった。つまり、2チャンネルの場合は1チャンネルの場合に比較して、2倍の面積が必要であった。あるいは従来技術では、2チャンネルの発振を実施する場合、1つのアンテナと2つの発振部とを切り替えスイッチによって接続する構成も用いることができる。しかしその構成では、スイッチによる切り替えで発振部を選択する必要があるため、同時に2チャンネルの発振を行うことはできなかった。一方で本実施形態では、自励発振部401aと自励発振部401bは、それぞれ結合部406と結合部407を介して、1つのアンテナ408を共有し、2チャンネル発振を1つのアンテナで実現する。つまり、従来技術で必要であったアンテナ面積を約1/2にできる。さらに、自励発振部401aと自励発振部401bを発振させるために必要な直流電流Iaと直流電流Ibは、結合部406と結合部407により他方の自励発振部に流入しないため、発振部を選択する切り替えスイッチを使用せずに、自励発振部401aと自励発振部401bは独立かつ同時に発振させることができる。したがって、本実施形態は2チャンネルの発振を、小型で省面積な構成で、独立かつ同時に実施できる。
(実施形態3)
実施形態1と2では、二つの自励発振部と環状の4角形状のアンテナで発振器を構成する例を示したが、自励発振部の数とアンテナ形状はそれに限定されない。実施形態3では、三つの自励発振部と矩形状のアンテナによる発振器の構成例を示す。
図8は実施形態3に係る電子部品である発振器500を示す図である。実施形態3に係る発振器500は、第1の発振ユニットである発振ユニット500aと、第2の発振ユニットである発振ユニット500bと、第3の発振ユニットである発振ユニット500cと、アンテナ508とを有する。発振ユニット500aは、第1の自励発振部である自励発振部501aと、自励発振部501aに直流電流を供給する第1の電極部である、上部電極502aと下部電極503aとを有する。発振ユニット500bは、第2の自励発振部である自励発振部501bと、自励発振部501bに直流電流を供給する第2の電極部である、上部電極502bと下部電極503bとを有する。発振ユニット500cは、第3の自励発振部である自励発振部501cと、自励発振部501cに直流電流を供給する第1の電極部である、上部電極502cと下部電極503cとを有する。アンテナ508は矩形の形状を有する。
上部電極502aと上部電極502bと上部電極502cは、第1の結合部505と第2の結合部506と第3の結合部507において、アンテナ508とは直流的には絶縁されているが、交流的に接続されるように各結合部における上部電極とアンテナとの間隔が自励発振部の発振周波数の波長より近い距離になるように配置する。この配置によって、発振出力は上部電極502aまたは上部電極502bまたは上部電極502cから、アンテナ508へ伝播することができる。本実施形態において、各自励発振部は矩形形状の一辺に配置しているが、自励発振部の位置は特に限定されず、矩形形状の他の辺に配置することができる。
上部電極502aから直流電流Iaを自励発振部501aに供給すると、自励発振部501aを通過した直流電流Iaは、下部電極503aを流れる。発振ユニット500aは結合部505により発振ユニット500bと発振ユニット500cとは直流的に絶縁されているので、直流電流Iaは自励発振部501bと自励発振部501cには流入しない。つまり、直流電流Iaは自励発振部501aのみを発振させ、他の自励発振部501bと自励発振部501cを発振させない。同様に、上部電極502bから直流電流Ibを自励発振部501bに供給すると、自励発振部501bを通過した直流電流Ibは、下部電極503bを流れる。発振ユニット500bは結合部506により発振ユニット500aと発振ユニット500cとは直流的に絶縁されているので、直流電流Ibは自励発振部501aと自励発振部501cには流入しない。つまり、直流電流Ibは自励発振部501bのみを発振させ、他の自励発振部501aと自励発振部501cを発振させない。同様に、上部電極502cから直流電流Icを自励発振部501cに供給すると、自励発振部501cを通過した直流電流Icは、下部電極503cを流れる。発振ユニット500cは結合部507により発振ユニット500aと発振ユニット500bとは直流的に絶縁されているので、直流電流Icは自励発振部501aと自励発振部501bには流入しない。つまり、直流電流Icは自励発振部501cのみを発振させ、他の自励発振部501aと自励発振部501bを発振させない。
直流電流Iaにより自励発振部501aが発振すると、発振出力は振動的なので、発振出力は上部電極502aから結合部505を介してアンテナ508へ伝播する。つまり、自励発振部501aの発振出力を、アンテナ508により外部へ放出することができる。また、ここでアンテナとは、波長より十分大きい距離へ電磁波を伝送させるためのアンテナだけでなく、波長と同程度、または波長より小さい距離へ電磁信号や電磁エネルギーを伝送させるアンテナや共振器やコイルなどを意味する。同様に、直流電流Ibまたは直流電流Icにより自励発振部501bまたは自励発振部501cが発振した場合も、発振出力は上部電極502bまたは上部電極502cから結合部506または結合部507を介してアンテナ508へ伝播する。つまり、自励発振部501bと自励発振部501cの発振出力も、アンテナ508により外部へ放出することができる。こうして自励発振部501aと自励発振部501bと自励発振部501cは、アンテナ508を共有して電磁エネルギーを外部へ発振することができる。
本実施形態において、自励発振部501aと自励発振部501bと自励発振部501cとに、それぞれ同時に直流電流を供給してもよく、またはいずれか一つ、またはいずれか二つの自励発振部に直流電流を供給してもよい。また、自励発振部501aと自励発振部501bと自励発振部501cとは、それぞれ同じ周波数で発振してもよいし、異なる周波数で発振してもよい。
実施形態1から3の発振器において、環状の4角形状や矩形形状のアンテナを用いて発振器を構成する例を示したが、アンテナ形状はこれらに限定されない。たとえば、円形状や直線状のアンテナを用いることができる。
実施形態1から3の発振器において、チャンネル数が2つまたは3つの場合を説明したが、チャンネル数はこれに限定されるものではない。
実施形態1から3の発振器において、直流電流を上部電極から自励発振部に供給しているが、直流電流を下部電極から自励発振部に供給することもできる。
(実施形態4)
図9は、実施形態4に係る整流器600を示す図である。図9は、図1における自励発振部を整流部に置き換えた構成である。整流器600は、第1の整流ユニットである整流ユニット600aと第2の整流ユニットである整流ユニット600bとアンテナ608とを有する。
整流ユニット600aは、第1の整流部である整流部601aと、整流部601aと直流的に接続された第1の電極部である、上部電極602aと下部電極603aとを有する。上部電極602aは、整流部601aから直流電圧を取り出す信号線である。下部電極603aはグランド線である。
整流ユニット600bは、第2の整流部である整流部601bと、整流部601bと直流的に接続された第2の電極部である、上部電極602bと下部電極603bとを有する。上部電極602bは、整流部601bから直流電圧を取り出す信号線である。下部電極603bはグランド線である。
上部電極602aは、結合部606において、アンテナ608とは直流的には絶縁されているが、交流的に接続されるように結合部における上部電極とアンテナとの間隔が整流部が整流する整流周波数の波長より近い距離になるように配置する。この配置によって、アンテナ608が受信した電磁エネルギーは、上部電極602aを介して整流部601aへ伝播することができる。ここで、電磁エネルギーとは、波長に比較して大きい距離に位置する電磁波源から伝送されてきた電磁エネルギーの形態だけでなく、波長に比較して小さい距離に位置する電磁波源から伝送されてきた電磁エネルギーの形態も意味する。
上部電極602bは、アンテナ608と直流的に接続されるように配置する。この配置によって、アンテナ608が受信した電磁エネルギーは、上部電極602bを介して整流部601bへ伝播することができる。本実施形態において、各整流部は環状の4角形状の一辺に配置しているが、整流部の位置は特に限定されず、環状の4角形状の他の辺に配置することができる。
電磁エネルギーを整流器600に印加すると、アンテナ608は電力を受信する。電力はアンテナ608から、結合部606または上部電極602bから整流部に伝播し、電磁場の周波数と整流部が整流作用を示す周波数とが等しい場合、整流部は直流を出力する。発生した直流電流は、結合部906が直流を絶縁するため、他方の整流部には流入しない。つまり、各整流部は独立に出力することができる。
整流部601aと整流部601bがそれぞれ整流する2つの異なる周波数の電磁エネルギーを、同時に整流器600に印加してもよく、どちらか一方の周波数の電磁エネルギーだけを印加してもよい。
整流部601aと整流部601bが整流する周波数は異なっている場合を説明したが、整流による出力を2箇所から取り出したい場合は、整流する周波数が同じ整流部を使用してもよい。
従来技術では、2チャンネルの受信をする場合、整流部とアンテナで構成する整流器が2つ必要であった。あるいは、1つのアンテナと2つの整流部とを接続する場合は、切り替えスイッチが必要であり、切り替えのため同時に受信することはできなかった。一方で本実施形態では、各整流部は結合部606と上部電極602bとでアンテナ1つを共有し、2チャンネルの受信を1つのアンテナで実現する。さらに、整流した直流出力は、結合部により他の整流部から出力されない。したがって、本実施形態は2チャンネルの受信を、小型で省面積な構成で、独立かつ同時に実施できる。
整流部は、特に限定されないが、例えば磁気抵抗効果素子や、ジョセフソン素子を用いることができる。
整流器600に外部から電磁エネルギーを印加すると、整流部には振動電流が供給される。整流部がたとえば磁気抵抗効果素子の場合、磁気抵抗効果素子は交流電流を供給されると、後述するスピントルクFMR(Ferromagnetic Resonance)効果によって、交流電流を直流に変換する。
ここでスピントルクFMR効果について説明する。図4における磁気抵抗効果素子205に、各層の面直方向に交流電流を印加する場合を考える。交流の半周期で電子208がピン層206aからフリー層206bへ注入される場合は、フリー層206bとピン層206aの磁化が平行になるようにフリー層206bの磁化方向が回転し、磁気抵抗効果素子205の抵抗値が下がる。逆にフリー層206bからピン層206aへ電子208が注入される半周期では、フリー層206bとピン層206aの磁化方向は互いに反平行になるようにフリー層の磁化方向が回転し、抵抗値が上がる。交流電流により、この抵抗変化の現象が交互に起きて、振動電圧とともに直流電圧成分が発生する。すなわち交流を直流に変換する整流作用を示す。これをスピントルクFMR効果とよぶ。スピントルクFMR効果が発生する周波数、つまり整流周波数は印加磁場によるため、所望の周波数でスピントルクFMR効果を発生させるのに十分な磁場を印加する必要がある。
図10は実施形態3に係る整流ユニット600aを使用するための周辺回路の一例を示す図である。周辺回路950は、負荷951と、インダクタL2とからなる。整流器600が外部から電磁エネルギーを受信すると、整流ユニット600aは整流した直流を出力する。負荷951で直流出力を検出でき、インダクタL2で電磁エネルギーによる交流の負荷951への流入を防ぐことができる。以後の実施形態の説明において、周辺回路は省略する。
(実施形態5)
図11は、実施形態5に係る電子部品である整流器700を示す図である。図11は、図6における自励発振部を整流部に置き換えた構成である。整流器700は、第1の整流ユニットである整流ユニット700aと第2の整流ユニットである整流ユニット700bとアンテナ708とを有する。整流ユニット700aは、第1の整流部である整流部701aと、整流部701aと直流的に接続された第1の電極部である、上部電極702aと下部電極703aとを有する。上部電極702aは、整流部701aから直流電圧を取り出す信号線である。下部電極703aはグランド線である。
整流ユニット700bは、第2の整流部である整流部701bと、整流部701bと直流的に接続された第2の電極部である、上部電極702bと下部電極703bとを有する。上部電極702bは、整流部701bから直流電圧を取り出す信号線である。下部電極703bはグランド線である。
上部電極702aと上部電極702bとは、第1の結合部706と第2の結合部707において、アンテナ708とは直流的には絶縁されているが、交流的に接続されるように各結合部における上部電極とアンテナとの間隔が整流周波数の波長より近い距離になるように配置する。この配置によって、アンテナ708が受信した電磁エネルギーは、上部電極702aまたは上部電極702bへ伝播することができる。本実施形態において、各整流部は環状の4角形状の一辺に配置しているが、整流部の位置は特に限定されず、環状の4角形状の他の辺に配置することができる。
電磁エネルギーを整流器700に印加すると、アンテナ708は電力を受信する。電力はアンテナ708から、第1の結合部706または第2の結合部707から整流部に伝播し、電磁場の周波数と整流部が整流作用を示す周波数とが等しい場合、整流部は直流を出力する。発生した直流電流は、結合部706と結合部707を介して他方の整流部には流入しない。つまり、各整流部は独立に出力することができる。
整流部701aと整流部701bがそれぞれ整流する2つの異なる周波数の電磁エネルギーを、同時に整流器700に印加してもよく、どちらか一方の周波数の電磁エネルギーだけを印加してもよい。
整流部701aと整流部701bが整流する周波数は異なっている場合を説明したが、整流による出力を2箇所から取り出したい場合は、整流する周波数が同じ整流部を使用してもよい。
従来技術では、2チャンネルの受信をする場合、整流部とアンテナで構成する整流器が2つ必要であった。あるいは、1つのアンテナと2つの整流部とを接続する場合は、切り替えスイッチが必要であり、切り替えのため同時に受信することはできなかった。一方で本実施形態では、各整流部は結合部を介してアンテナ1つを共有し、2チャンネルの受信を1つのアンテナで実現する。さらに、整流した直流出力は、結合部により他の整流部から出力されない。したがって、本実施形態は2チャンネルの受信を、小型で省面積な構成で、独立かつ同時に実施できる。
(実施形態6)
実施形態6は、実施形態2と3において、自励発振部を磁気抵抗効果素子を用いた整流部と置き換えた、多チャンネルの整流器である。実施形態6の整流器も、実施形態5と同じ理由により、多チャンネルの整流を小型で省面積な構成で、独立かつ同時に実施できる。
(実施形態7)
実施形態7では、以上で説明した電子部品の一対を対向させて、電磁エネルギーを発振そして整流し、通信または電磁エネルギーの授受を実施する。
図12は、実施形態7に係る送受信装置2000を示す図である。送受信装置2000は、発振器100と整流器600とからなる。整流器600は、発振器100が発振した電磁エネルギーEMがおよぶ範囲に配置されている。電磁エネルギーEMは、波長に比較して大きい距離へ電磁波が伝送する電磁エネルギーの形態だけでなく、波長に比較して小さい距離へ電磁場が伝送する電磁エネルギーの形態も意味する。発振器100と整流器600との距離は、発振部が発振する周波数の波長に対して十分大きい距離でもよく、あるいは、波長に対して小さい距離でもよい。
発振器100は図1で示した発振器とする。発振器100の自励発振部101aと自励発振部101bの発振周波数をそれぞれFa、Fbとし、整流器600の整流部601aと整流部601bの整流周波数をそれぞれFa、Fbとする。
発振器100が自励発振部101aと自励発振部101bにより同時に発振周波数FaとFbとで発振した場合、電磁エネルギーEMにより整流器600は、整流部601aと整流部601bによりそれぞれFa、Fbの電磁エネルギーを整流する。
本実施形態において、図1における発振器100を用い、発振器100の自励発振部101aと自励発振部101bが同時に発振した場合を説明したが、どちらか一方だけを発振させてもよい。また、発振周波数FaとFbとは、それぞれ同じ周波数でもよいし、異なる周波数でもよい。
本実施形態においては、発振器100と整流器600を用いて送受信装置を構成する例を説明したが、他の実施形態による電子部品を用いて送受信装置を構成することもできる。
従来技術では、2チャンネルの送受信をする場合、発振部とアンテナで構成する発振器が2つと、整流部とアンテナで構成する整流器が2つ必要であり、合計4つのアンテナが必要であった。あるいは、1つのアンテナと2つの発振部または整流部とを接続する場合は、切り替えスイッチが必要であり、切り替えのため同時に送受信はできなかった。一方で本実施形態では、発振器において各自励発振部は結合部と上部電極とで結合したアンテナ1つを共有し、整流器においては各整流部は結合部と上部電極とで結合したアンテナ1つを共有することで、2チャンネルの送受信を合計2つだけのアンテナで実現できる。したがって、本実施形態は小型で省面積な構成で、2チャンネルの送受信を実現できる。本実施形態は、異なる電子機器間の送受信に用いることができるが、同一の電子機器内において小面積で近接通信をする場合に、より好ましい形態である。
送受信装置2000の通信動作について説明する。説明においては、通信符号化方式にNRZ(Non−Return−to−Zero)を用いる。NRZは信号が「1」の時に電圧はゼロでなく、信号が「0」の時に電圧をゼロとする符号化方式である。但し、本発明で用いることができる符号化方式はこれに限ったものではない。
信号値が「1」の時は、自励発振部に「1」の時間間隔だけ電流を流す。その電流により自励発振部は発振し、発振器100は電磁エネルギーEMを整流器600に伝送する。整流器600において受信された電磁エネルギーEMは、整流部において整流され、信号値「1」が伝達される。
信号値が「0」の時は、自励発振部に電流を流さないので、電磁エネルギーEMは整流器600に伝送されない。つまり、信号値「0」が伝送される。
また、信号値が「0」の時は自励発振部に電流が流れないため、通信に不要な電磁エネルギーが発生しない。つまり本実施形態は、省電力化、低ノイズ化の効果も期待できる。
また、本実施形態は無線給電に応用することが可能である。入力を常に信号値が「1」の状態とすれば、常に発振信号すなわちエネルギーが整流器600に供給されるので、無線電力供給が可能である。
(実施形態8)
図13は、実施形態8に係る電子部品である送受信器800を示す図である。図13は、図1における自励発振部の一つを整流部に置き換えた構成である。送受信器800は、発振ユニット800aと整流ユニット800bとアンテナ808とを有する。
発振ユニット800aは、自励発振部801aと、自励発振部801aに直流電流を供給する第1の電極部である、上部電極802aと下部電極803aとを有する。整流ユニット800bは、整流部801bと、整流部801bと直流的に接続された第2の電極部である、上部電極802bと下部電極803bとを有する。上部電極802bは、整流部801bから直流電圧を取り出す信号線である。下部電極803bはグランド線である。
アンテナ808は、一部が断絶された環状の4角形状を有している。本実施形態においては断絶は一部分であるが、断絶は一部分に限らず複数部分でもよく、あるいは断絶を設けずに連続状でも良い。さらにアンテナ808は、本実施形態においては、4角形状を有しているが、形状は環状の4角形状に限ったものではなく、例えば円形の平面状などを用いることができる。
上部電極802aは、結合部806において、アンテナ808とは直流的には絶縁されているが、交流的に接続されるように結合部における上部電極とアンテナとの間隔が自励発振部の発振周波数の波長より近い距離になるように配置する。この配置によって、自励発振部801aが発生した発振出力は、上部電極802aからアンテナ808へ伝播することができる。
上部電極802bはアンテナ808と直流的に接続されるように配置する。この配置によって、アンテナ808が受信した電磁エネルギーは、上部電極802bを介して整流部801bへ伝播することができる。
本実施形態において、各自励発振部は環状の4角形状の一辺に配置しているが、自励発振部の位置は特に限定されず、環状の4角形状の他の辺にも配置することができる。
上部電極802aから直流電流Iaを自励発振部801aに供給すると、自励発振部801aを通過した直流電流Iaは、下部電極803aを流れる。発振ユニット800aは結合部806により、整流ユニット800bとは直流的に絶縁されているので、直流電流Iaは整流部801bには流入しない。つまり、直流電流Iaは自励発振部801aのみを発振させ、整流部801bの直流出力と干渉しない。
直流電流Iaにより自励発振部801aが発振すると、発振出力は振動的なので、発振出力は上部電極802aから結合部806を介してアンテナ808へ伝播する。つまり、自励発振部801aの発振出力を、アンテナ808により外部へ放出することができる。ここでアンテナとは、波長より十分大きい距離へ電磁波を伝送させるためのアンテナだけでなく、波長と同程度、または波長より小さい距離へ電磁信号や電磁エネルギーを伝送させるアンテナや共振器やコイルなどを意味する。
一方で、電磁エネルギーを送受信器800に印加すると、アンテナ808は電力を受信する。電力はアンテナ808から、上部電極802bを介して整流部801bに伝播し、電磁場の周波数と整流部が整流作用を示す周波数とが等しい場合、整流部は直流を出力する。発生した直流電流は、結合部806により自励発振部には流入しない。つまり、自励発振部を発振させずに、整流部は独立に出力することができる。
本実施形態において、自励発振部801aに直流電流を供給しアンテナ808から電力を送信することと、電磁エネルギーを送受信器800に印加して整流部801bから出力を得て受信することは同時でも、あるいは別の時間帯でもよい。
本実施形態において、アンテナ808と直流的に絶縁して自励発振部801aを配置し、アンテナ808と直流的に接続して整流部801bを配置したが、これとは逆に、アンテナ808と直流的に絶縁して整流部801bを配置し、アンテナ808と直流的に接続して自励発振部801aを配置してもよい。
自励発振部801aの発振周波数と整流部801bが整流する整流周波数は、同じ周波数でもよく、あるいは異なる周波数でもよい。同じ周波数の形態では、送受信器800はアンテナ808により自励発振部801aが発振した発振出力を電磁エネルギーとして外部へ発振するとともに、それと同じ周波数の電磁エネルギーをアンテナ808で受信して整流部801bで整流することができる。互いに異なる周波数の形態では、送受信器800はアンテナ808により自励発振部801aが発振した発振出力を電磁エネルギーとして外部へ発振するとともに、それと異なる周波数の電磁エネルギーをアンテナ808で受信して整流部801bで整流することができる。従来技術で送信と受信を実施するには、発振部とアンテナで構成した発振器と、整流部とアンテナで構成した整流器が必要であり、アンテナを2つ用いる。本実施形態は共有アンテナ1つで送受信を実現するため、本実施形態は従来技術に比較して約1/2の面積で送信と受信を実現できる。
本実施形態では、801aを自励発振部とし、801bを整流部としたが、これとは逆に、801aを整流部とし、801bを自励発振部とすることもできる。その場合は、上部電極802aは結合部806において、アンテナ808とは直流的には絶縁されているが、交流的に接続されるように結合部における電極とアンテナとの間隔が整流周波数の波長より近い距離になるように配置する。
(実施形態9)
実施形態9は、実施形態2と3において、自励発振部を1つ以上残して他の自励発振部を整流部に置き換えた、多チャンネルの電子部品である送受信器である。本実施形態の送受信器も、実施形態8と同じ理由により、多チャンネルで送信または受信を小型で省面積な構成で実現できる。本実施形態では、自励発振部と整流部を合わせて最大3個となる構成例を示したが、自励発振部と整流部の個数はこれに限ったものではない。自励発振部と整流部のそれぞれの個数は、他の個数でも同様に小型化の効果が得られる。