JP6540019B2 - 高周波発信機 - Google Patents

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Description

本発明は、高周波電磁波を発信する高周波発信機に関するものである。
従来、高周波発信機として、例えば特許文献1に示される無線通信システムが提案されている。このような無線通信システムは、電気的エネルギーを高周波電力に変換する変換部と、変換された高周波電力を発信部へ送る高周波電力媒介手段と、送られた高周波電力を電磁波に変えて外部へ発信する発信部を備える。高周波電磁波は例えば10GHz以上の電磁波であり、高周波電力媒介手段は例えば導波管であり、発信部は例えばアンテナである。特許文献1に示された無線通信システムでは、送受信装置が変換部に、RF同軸ケーブルが高周波電力媒介手段に、アンテナが発信部に相当する。
このような構成により、電源から供給される電気的エネルギーを変換部により高周波電力に変換し、高周波電力を高周波電力媒介手段により発信部へ送り、発信部により電磁波に変えて外部へ発信することで、互いに離れた複数の装置の間で通信が可能となる。
特開2014−132263号公報
通常、変換部にはコンデンサ、コイル、水晶振動子、半導体素子等複数の部品が必要であるため、これら複数の部品は、回路基板上に実装されることで基板化されて設置される。変換部を基板化すると、変換部にはアンテナを設置する余地が少なくなるため、変換部とアンテナは離して設置されることが多い。そのため、離して設置された変換部とアンテナとの間での高周波電力媒介手段が必要となり、導波管等が用いられる。
しかしながら、上記した特許文献1に示される無線通信システムのように、RF同軸ケーブルや導波管等の高周波電力媒介手段によって高周波電力を媒介すると、高周波電力が大幅に減衰するため、システム全体で効率が低下するという問題があった。
本発明は上記点に鑑みて、高周波電力の媒介を回避し、システム全体で効率を向上させることができる高周波発信機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電気的エネルギーを高周波電力に変換する変換部(10〜18)と、変換部にて変換された高周波電力を電磁波に変えて変換部の外部の空間へ発信する発信部(1)とを備える高周波発信機であって、変換部は、電気的エネルギーに応じて高周波電力を変調する機能を有する磁性発振素子(2)を有し、磁性発振素子は、薄膜状の一対の電極(11、18)を含み、磁化方向が固定されたピン層(14)と、磁化方向が外部磁界に応じて変化するフリー層(16)と、ピン層とフリー層との間に配置された中間層(15)と、を一対の電極の間に備え、ピン層、中間層、フリー層で構成される素子の抵抗値は、ピン層の磁化方向とフリー層の磁化方向との間の角度によって変化し、発信部は、磁性発振素子と一体的に構成され、磁性発振素子には、一対の電極のうち一方を挟んだ外側において、スペーサー層(2b)と、磁性発振素子に外部磁界を印加するための外部磁界発生用磁性層(2c)とが順に積層されていることを特徴とする。
これによれば、磁性発振素子と発信部が一体的に構成されているため、導波管等の高周波電力媒介手段が不要となり、高周波電力の減衰が抑制されて、システム全体の効率が向上する。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
第1実施形態における高周波発信機を適用した発信システムの全体構成図である。 第1実施形態における高周波発信機の断面図である。 第1実施形態における高周波発信機の変形例の断面図である。 第2実施形態における高周波発信機の断面図である。 第2実施形態における高周波発信機の変形例の断面図である。 第3実施形態における高周波発信機の断面図である。 第4実施形態における高周波発信機の配置図である。 第5実施形態における高周波発信機の配置図である。 第5実施形態における高周波発信機の変形例の配置図である。 他の実施形態における発信システムの全体構成図である。 他の実施形態における磁性発振素子および外部磁界印加部の断面図である。 他の実施形態における外部磁界の位置依存性を示すグラフである。 他の実施形態における磁性発振素子および外部磁界印加部の断面図である。 他の実施形態における外部磁界の位置依存性を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。ここでは、本発明の第1実施形態が適用された高周波発信機を有する発信システムを例に挙げて説明する。本実施形態で説明する高周波発信機は、例えば自動車に搭載されて車車間通信や路車間通信に用いられるが、携帯電話等の情報通信機器等、自動車以外に高周波発信機を用いることもできる。また、ミリ波レーダーに高周波発信機を用いることもできる。ミリ波レーダーは、例えば、ACC(アダプティブクルーズコントロール)を行うために、自車と先行車の距離および相対速度を測定するものである。
以下、図1、図2を参照して、本実施形態にかかる高周波発信機について説明する。まず、図1を参照して、本実施形態にかかる発信システムの全体構成について説明する。
発信システムは、アンテナ1と磁性発振素子2を備えた高周波発信機と、電源3、外部磁界印加部4、制御部5を備える。なお、外部磁界印加部4は、後述するように、磁性発振素子2と一体的に構成される場合がある。
アンテナ1は、高周波電力が供給されることにより高周波電磁波を外部へ発信する部分であり、本発明の発信部に相当する。本実施形態では、アンテナ1は、高周波発信機を電源3に接続するための配線を兼ねている。
磁性発振素子2は、供給された直流電流・電圧を高周波電力に変換する部分であり、複数の膜が積層された構成とされている。磁性発振素子2の詳細については後述する。
電源3は、アンテナ1および磁性発振素子2に直流電流・電圧を供給する装置であり、この電源3より供給される直流電流・電圧の大きさに基づいて、磁性発振素子2より発生させられる高周波電力の周波数が変化する。例えば、電源3が定電圧源であれば、後述する磁性発振素子2の抵抗の変化により発生する高周波電流の周波数は、電源3が供給する電圧の大きさにより変化する。また、電源3が定電流源であれば、磁性発振素子2の抵抗の変化により発生する高周波電圧の周波数は、電源3が供給する電流の大きさにより変化する。
外部磁界印加部4は、磁性発振素子2に外部磁界を印加し、磁性発振素子2により発生する高周波電力の周波数を変化させる部分である。
外部磁界印加部4は、外部磁界発生装置21と、外部磁界制御電源22を有した構成とされている。外部磁界発生装置21は、ここでは、コイルであり、外部磁界制御電源22から電流が流されることにより、磁界を発生させ、磁性発振素子2に印加する部分である。
外部磁界発生装置21は、ここでは、磁性発振素子2を構成する複数の膜の膜面面内方向における一方向の両側に配置され、外部磁界を膜面垂直方向に印加する。具体的には、外部磁界発生装置21を構成する2つのコイルの軸が膜面垂直方向に向けられ、2つのコイルを構成する巻き線に、コイルの軸方向から見て互いに同じ向きに回るように、外部磁界制御電源22からの電流が流れる。これにより、各コイルにおいて、各コイルを同じ向きに通り、磁性発振素子2を膜面垂直方向に通る磁界が発生し、それらの磁界が合成されて、2つのコイルの間に置かれた磁性発振素子2を膜面垂直方向に通る磁界が発生する。
なお、磁性発振素子2の膜面面内方向に磁界を印加してもよい。この場合、例えば、上記のように配置したコイルの軸を膜面面内方向の一方向に向け、2つのコイルを構成する巻き線に、コイルの軸方向から見て互いに同じ向きに回るように、外部磁界制御電源22からの電流を流す。これにより、各コイルにおいて、各コイルを同じ向きに通る磁界が発生し、それらの磁界が合成されて、2つのコイルの間に置かれた磁性発振素子2を膜面面内方向の一方向に通る磁界が発生する。
また、コイルを磁性発振素子2の膜面垂直方向の一方または両方の外側に配置し、コイルの軸を膜面垂直方向に向け、外部磁界制御電源22からの電流を流すことで、磁性発振素子2の膜面垂直方向に磁界を印加してもよい。
制御部5は、状況に応じて電源3、外部磁界制御電源22を操作する部分であり、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。制御部5は、電源3、外部磁界制御電源22に接続されている。
つぎに、図2を参照して、磁性発振素子2の詳細について説明する。
磁性発振素子2は、基板10上に、下部電極11、下地層12、反強磁性層13、ピン層14、中間層15、フリー層16、キャップ層17、上部電極18が順に積層されて構成されている。これらのうち下部電極11と上部電極18は、本発明の一対の電極に相当する。なお、図2における上下の向きは、基板10から下向きに各層が並ぶ向きとされている。
本実施形態では、基板10は導電性基板であり、例えばCu、Au等で構成される。基板10の上には、図示しないTa層が形成されている。Ta層は、基板との濡れ性や、下部電極11以降の層の配向性のために基板10上に形成されるものである。下部電極11は、Ru、Cu、CuN、Au等の導電性材料で構成されており、図示しないTa層上に薄膜状に形成されている。
下地層12は、Ta、Ru等で構成されており、下部電極11上に薄膜状に形成されている。下地層12は、結晶性、配向性を向上させて反強磁性層13を成膜するための下地となるものである。
反強磁性層13は、IrMn、PtMn等で構成されており、下地層12上に薄膜状に形成されている。反強磁性層13は、交換結合により、ピン層14の磁化方向を固定するためのものである。
ピン層14は、Co、Fe、Ni等の強磁性材料で、または強磁性材料とBとで構成されており、反強磁性層13上に薄膜状に形成されている。反強磁性層13との交換結合により、ピン層14の磁化方向は、ここでは、膜面面内方向に固定されている。なお、上記の材料に加え、Pt、Pdを用いてピン層14を構成してもよい。また、GaMn、FePt(Pd)、CoPt(Pd、Ni)等の高磁気異方性材料を用いてピン層14を構成してもよい。
なお、図示しないが、下地層12と反強磁性層13との間には、NiFe等で構成される磁性層が形成されている。また、反強磁性層13とピン層14との間には、CoFe等で構成される磁性層と、Ru等で構成され、上下に形成された磁性層の磁化方向をRKKY相互作用により固定する層が形成されている。
つまり、反強磁性層13をIrMnで構成し、ピン層14をCoFeBで構成する場合、下地層12と中間層15に挟まれた層は、下地層12側から順に、NiFe/IrMn/CoFe/Ru/CoFeB等の積層構造とされている。
本実施形態の磁性発振素子2は、このように、Ru等のRKKY相互作用を用い、複数の磁性層により構成されたシンセティックフェリ磁性層を含んでいる。シンセティックフェリ磁性層を用いた構成では、Ruを挟んで上下に形成された2つの磁性層の磁化の向きを互いに逆にすることで、これら2つの磁性層からの漏れ磁界がフリー層16に与える影響を低減することができる。
中間層15は、MgO、Al−O、Cu、Ag等で構成され、ピン層14上に薄膜状に形成されている。ピン層14の磁化方向とフリー層16の磁化方向との間の角度によって、ピン層14、中間層15、フリー層16で構成される素子の抵抗値が変化する。中間層15をMgO、Al−O等の絶縁体で構成した場合、ピン層14、中間層15、フリー層16の積層によりTMR(Tunneling Magneto Resistance)素子が構成される。また、中間層15をCu、Ag等の導体で構成した場合、ピン層14、中間層15、フリー層16の積層によりGMR(Giant Magneto Resistance)素子が構成される。なお、ここでは中間層15を絶縁体や導体で構成する場合について説明したが、中間層15を半導体で構成することもできる。
フリー層16は、Co、Fe、Ni等の強磁性材料で、または強磁性材料とBとで構成されており、中間層15上に薄膜状に形成されている。フリー層16は、外部磁界印加部4が発生させる外部磁界によって磁化方向が変化する。なお、上記の材料に加え、Pt、Pdを用いてフリー層16を構成してもよい。また、GaMn、FePt(Pd)、CoPt(Pd、Ni)等の高磁気異方性材料を用いてフリー層16を構成してもよい。また、フリー層16を、CoFeB/GaMn、CoFeB/FePt等の積層構造としてもよい。また、フリー層16を、CoFeB/Ta/GaMn等の積層構造としてもよい。
キャップ層17は、Ta、Ru等で構成されており、フリー層16上に薄膜状に形成されている。キャップ層17は、加工の工程においてフリー層16を保護するためのものである。また、後述するようにフリー層16にCoFeB等を用いる場合は、CoFeB中のBを拡散させるための吸収層としての役割も担う。
上部電極18は、Au、Cu、CuN、Ru等の導電性材料で構成されており、キャップ層17上に薄膜状に形成されている。このような磁性発振素子2は、基板10上に各層を順に成膜していくことで製造できる。
ピン層14やフリー層16にCoFeBを用いる場合は、まずCoFeBをアモルファス状に成膜する。ただし、Bを入れているので、特に何もしなくてもアモルファスとなる。そのアモルファスCoFeB上にMgOを(001)配向して成膜する。その上にCoFeBをアモルファス状に成膜し、キャップ層17を成膜する。その後、300〜350℃で熱処理を行うことで、CoFeB中のBがMgO層やキャップ層17、または下地層12に拡散し、アモルファスからbcc(001)配向に結晶化する。このようにCoFeB/MgO/CoFeBが結晶化することで、高いMR比(磁気抵抗比)、すなわち高周波電磁波の高出力化につながる。
磁性発振素子2とアンテナ1を別々に製造する場合、製造工程において、下部電極11の下には基板10が必要である。一般的に基板の厚さは数百μmであるのに対し、上部電極18の厚さは数十〜数百nmであるので、発振部とアンテナ1との距離を短くするために、本実施形態では、上部電極18とアンテナ1が接合されている。なお、基板10は上部電極18に比べてアンテナ1と密着しやすいため、アンテナ1と磁性発振素子2との間に隙間が生じることを抑制するために、基板10とアンテナ1を接合してもよい。
図2に示すように、上部電極18をアンテナ1に接触させた状態で、磁性発振素子2を絶縁樹脂19で覆うことにより、磁性発振素子2とアンテナ1を接合させることができる。この場合、磁性発振素子2とアンテナ1の間に絶縁樹脂19が流れ込むと、高周波発信機の抵抗が増加するため、磁性発振素子2とアンテナ1の間に絶縁樹脂19が流れ込まないように接合することが望ましい。
なお、アンテナ1と上部電極18をInやはんだ等で接合してもよい。これにより、アンテナ1と磁性発振素子2との距離が大きくなるが、アンテナ1と上部電極18との間に隙間が生じることを抑制することができる。また、アンテナ1と上部電極18を圧着により接合してもよい。
基板10に配線を施す前に磁性発振素子2とアンテナ1を接合させた場合、絶縁樹脂19に導通用の穴をあけ、そこに配線を通すことで、図1に示すように、高周波発信機を電源3に接続することができる。
つぎに、図1、図2を参照して、本実施形態にかかる発信システムの動作について説明する。
まず、制御部5から電源3に信号が送られて、電源3によりアンテナ1と磁性発振素子2の両端に直流電圧が生じ、電源3からアンテナ1と磁性発振素子2に直流電流Iが流される。直流電流Iは、ここでは、フリー層16からピン層14の向きに流れる。このとき、電子はピン層14からフリー層16へ移動する。また、外部磁界印加部4により、磁性発振素子2に対して、フリー層16の磁化方向と平行、または数度ずれた方向に、外部磁界が印加される。ここでは、外部磁界は膜面垂直方向に印加されている。
すると、電子のスピントルクによりフリー層16の磁化が歳差運動する。ここで、外部磁界をフリー層16の磁化方向と平行方向、つまりスピン注入磁化反転しない方向に印加しているため、磁化は反転しない。
フリー層16の磁化が歳差運動することで、MR効果により磁性発振素子2の抵抗は常に変化し、磁性発振素子2の両端には高周波電流・電圧が生じており、これによる高周波電力が生じる。つまり、直流電流・電圧が高周波電力に変換される。この高周波電力がアンテナ1を介することにより、高周波電磁波が発信される。
このように、複数の部品を必要とする従来の変換部と異なり、磁性発振素子2は、それのみで変換部としての機能を備える。そのため、磁性発振素子2とアンテナ1との接合が容易であり、変換部と発信部の一体構成が可能となる。
磁性発振素子2で発生する高周波電力の周波数は、直流電流・電圧の大きさや、外部磁界の大きさや方向により変化するので、これらを変化させることにより、アンテナ1から発信される高周波電磁波の周波数を変化させることができる。
従来の高周波発信機では、変換部とアンテナを離して設置し、その間で導波管等の高周波電力媒介手段によって高周波電力を媒介するため、高周波電力が大幅に、例えば約半分に減衰するため、システム全体で効率が低下する。
これに対し、本実施形態では、アンテナ1を磁性発振素子2と一体化させているので、従来のように導波管等で高周波電力を媒介する必要がない。そのため、高周波電力の媒介による減衰を抑制し、システム全体の効率を向上させることができる。
なお、本実施形態では基板10を導電性材料で構成したが、基板10をSiO等の絶縁性材料で構成してもよい。
この場合、図3に示すように、基板10の上に磁性発振素子2を構成する各層を成膜した後、下地層12、反強磁性層13、ピン層14、中間層15、フリー層16、キャップ層17、上部電極18の膜面面内方向の周囲を囲むように、下部電極11の上に絶縁膜20を成膜する。そして、本実施形態と同様に絶縁樹脂19でアンテナ1と磁性発振素子2を接合した後、基板10を貫通し下部電極11に達するように導通用の穴をあけ、そこに配線を通す。このようにして、基板10をSiO等の絶縁性材料で構成した変形例においても、磁性発振素子2とアンテナ1の一体化が可能である。この変形例においても、上記と同様の効果が得られる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態にかかる高周波発信機について、図4を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、アンテナ1と磁性発振素子2の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるが、アンテナ1と磁性発振素子2が、図4に示す構成とされている。
つまり、基板10の上の下部電極11を形成する層がアンテナ1を兼ね、下部電極11によりアンテナ1が構成されている。また、下部電極11の上であって、下地層12、反強磁性層13、ピン層14、中間層15、フリー層16、キャップ層17、上部電極18の膜面面内方向の周囲を囲む位置に、絶縁膜20が形成されている。本実施形態では、このような構成により、磁性発振素子2とアンテナ1を一体化している。
また、本実施形態では、基板10が絶縁性材料により構成されており、アンテナ1、下部電極11、上部電極18が、高周波発信機を電源3に接続するための配線を兼ねている。このような高周波発信機は、アンテナ基板上に磁性発振素子2を構成する各層を成膜し、磁性発振素子2をパターニングすることで製造できる。
本実施形態の高周波発信機においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、下部電極11によりアンテナ1を構成することで、発振部とアンテナ1との間に隙間が生じることを抑制できるため、システム全体の効率をさらに向上させることができる。
本実施形態では基板10を絶縁性材料で構成したが、基板10を導電性材料で構成してもよい。
基板10を導電性材料で構成した変形例を図5に示す。この変形例では、基板10、下部電極11、アンテナ1が1つの層により構成されており、この層の上に形成された下地層12、反強磁性層13、ピン層14、中間層15、フリー層16、キャップ層17、上部電極18は、本実施形態と同様に、膜面面内方向の周囲を絶縁膜20により囲まれている。また、この変形例では、アンテナ1、基板10、下部電極11、上部電極18が、高周波発信機を電源3に接続するための配線を兼ねている。この変形例においても、上記と同様の効果が得られる。また、この変形例では、高周波電磁波発信方向に基板がないので、高周波電磁波の送信効率が高くなると考えられる。
第1実施形態では、反強磁性層13以降の層の配向性を向上させるために、基板10の上に図示しないTa層、下部電極11、下地層12を順に積層したが、この変形例のように、基板10を構成する層の上に下地層12を形成してもよい。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態にかかる高周波発信機について、図6を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、アンテナ1と磁性発振素子2の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるが、アンテナ1と磁性発振素子2が、図6に示す構成とされている。
つまり、基板10の上に下部電極11、下地層12、反強磁性層13、ピン層14、中間層15、フリー層16、キャップ層17が形成され、基板10の上であって、下部電極11からキャップ層17までの膜面面内方向の周囲を囲む位置に、絶縁膜20が形成されている。ただし、下部電極11の一部は絶縁膜20を貫通して外部に連結している。
また、キャップ層17と、キャップ層17を囲む絶縁膜20の上に、上部電極18が形成されている。上部電極18を形成する薄膜はアンテナ1を兼ね、上部電極18によりアンテナ1が構成されている。本実施形態では、このような構成により、磁性発振素子2とアンテナ1を一体化している。
また、本実施形態では、基板10が絶縁性材料により構成されており、アンテナ1、下部電極11、上部電極18が、高周波発信機を電源3に接続するための配線を兼ねている。このような高周波発信機は、基板10上に磁性発振素子2を構成する各層を成膜し、磁性発振素子2をパターニング後、上部電極18を成膜し、上部電極18をアンテナ形状にパターニングすることで製造できる。
本実施形態の高周波発信機においても、第1、第2実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、高周波電磁波発信方向に基板がないので、高周波電磁波の送信効率が高くなると考えられる。また、本実施形態では上部電極18によりアンテナ1を構成しているため、基板10をアンテナ形状に加工する場合よりも容易に高周波発信機を製造することができる。
本実施形態では基板10を絶縁性材料で構成したが、基板10を導電性材料で構成してもよい。この場合、アンテナ1、下部電極11、上部電極18に加え、基板10も高周波発信機を電源3に接続するための配線を兼ねる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態にかかる高周波発信機について、図7を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の高周波発信機を下記のように配置したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
一般的な高周波発信機に比べて、磁性発振素子は薄く、面積が小さい。例えば、厚さは数十nm〜数百nm、面積は数nm〜数μmである。そのため、車のバンパーやフロントガラス、パラボラアンテナ等の曲面に、第1実施形態の高周波発信機を配置することが可能である。
例えば、車のバンパーに配置する場合、一般的な高周波発信機は、その大きさからバンパーの内側に配置する必要があり、バンパー表面での電磁波の反射が問題となる。これに対し、磁性発振素子は薄く、面積が小さいので、図7(a)に示すように、第1実施形態の高周波発信機をバンパーの外側に配置することができ、バンパー表面での電磁波の反射を抑制することができる。
さらに、有機EL(エレクトロルミネッセンス)等の使用中に変形される部材に第1実施形態の高周波発信機を配置し、その部材が使用中に変形されても、磁性発振素子は薄く、面積が小さいので、故障のおそれが少ない。また、第1実施形態の高周波発信機を、製造工程において変形される部材にも配置することができるため、第1実施形態の高周波発信機を配置した後に部材を変形させる等の方法が可能であり、加工が容易になる。
また、図7(b)に示すように、第1実施形態の高周波発信機を、これらの部材の内部にも配置することが可能である。磁性発振素子は水晶を用いていないので耐衝撃性に優れるが、第1実施形態の高周波発信機を部材の内部に配置することにより、耐衝撃性をさらに向上させ、また、衝撃以外の環境的な外乱についての耐環境性を向上させることができる。このような実施形態は、例えば、車のバンパーのように、衝撃や天候等、外からの環境的な外乱がある場合に適している。
本実施形態では、第1実施形態の高周波発信機を上記のように配置したが、第2、第3実施形態の高周波発信機を上記のように配置してもよい。この場合においても、上記と同様の効果が得られる。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態にかかる高周波発信機について、図8を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の高周波発信機を下記のように配置したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
図8に示すように、第1実施形態の高周波発信機を曲面に複数配置することで、フェーズドアレイアンテナのように、任意の方向に電磁波を発信することができる。具体的には、複数のアンテナ1は互いに異なる向きに配置されているので、電磁波を発信する高周波発信機を図示しない回路により選択することで、任意の方向に電磁波を発信することができる。
また、電磁波を発信する高周波発信機を選択する回路を設けずに、すべての高周波発信機から電磁波を発信してもよい。
本実施形態では、第1実施形態の高周波発信機を曲面に複数配置したが、図9に示すように配置してもよい。以下、本実施形態の変形例について説明する。
図9(a)に示すように、第1実施形態の高周波発信機を断面が多角形状の部材の多角形状を構成する各辺にそれぞれ配置することで、同様に、任意の方向に電磁波を発信することができる。また、図9(b)、(c)のように、第1実施形態の高周波発信機をこれらの部材の内部に配置してもよい。
また、図9(d)に示す変形例では、第1実施形態の高周波発信機をパラボリックに、具体的には、放物線を対称軸まわりに回転させて形成される放物面上に複数配置している。これにより、パラボラアンテナとしての特性を得ることができる。
本実施形態では、第1実施形態の高周波発信機を上記のように配置したが、第2、第3実施形態の高周波発信機を上記のように配置してもよい。この場合においても、上記と同様の効果が得られる。
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記第4、第5実施形態では曲面状の部材の表面または内部に高周波発信機を配置したが、平板状やブロック状の部材の表面または内部に配置してもよい。
また、上記第1実施形態では制御部5は電源3を制御しているが、電源3とアンテナ1、磁性発振素子2との間に制御可能な抵抗やキャパシタ等を備える電圧制御器を接続し、制御部5を電圧制御器に接続して、アンテナ1等に流れる電流を制御してもよい。
また、下部電極11と上部電極18の間の各層を、上記第1〜第3実施形態とは逆の順に成膜してもよい。
また、反強磁性層13を用いずに、例えば、ピン層14の材料や加工方法により、ピン層14の磁化方向を固定してもよい。また、反強磁性層13の代わりに、硬磁性材料により構成された硬磁性層を用いて、ピン層14の磁化方向を固定してもよい。
また、下地層12と反強磁性層13との間に、NiFe等で構成される磁性層が形成されていなくてもよい。
また、磁性発振素子2がシンセティックフェリ磁性層を含んでいなくてもよい。
また、ピン層14、フリー層16の磁化方向を上記第1実施形態とは異なる方向にしてもよい。また、直流電流Iを流す向きを上記第1実施形態と逆向きにしてもよい。ただし、磁性発振素子2における高周波発振の要因となるスピントランスファートルクの大きさは、ピン層14とフリー層16の磁化方向の相対角θによって定まる。さらに正確には、スピントランスファートルクの大きさはsinθに比例し、θが90°のときに最大となる。そのため、上記第1実施形態のように、ピン層14の磁化方向とフリー層16の磁化方向とが互いに垂直であることが望ましい。
また、磁性発振素子2をサンブレロ−ナノコンタクト型の磁性発振素子としてもよい。
また、上記第1実施形態では外部磁界発生装置21としてコイルを用いたが、コイルの代わりに図10に示すような配線を用いてもよい。外部磁界発生装置21を構成する配線は、ここでは、磁性発振素子2の膜面に平行で、互いに垂直な方向に置かれている。
コイルを用いる方法は、磁性発振素子2と外部磁界発生装置21を別々に配置する場合に有用であるが、磁性発振素子2に印加する外部磁界の大きさや方向がコイルと磁性発振素子2との位置により変化する。また、コイルを磁性発振素子2の膜面垂直方向の一方または両方の外側に配置する場合、磁性発振素子2を複数備えるモジュールにおいては、磁性発振素子2とコイルからなる層の数が増加する。
これに対し、図10に示す構成では、磁性発振素子2の付近に互いに垂直な2つの配線を施し、これら2つの配線に外部磁界制御電源22からの電流を流す。すると、磁性発振素子2に印加される磁界は、2つの配線を流れる電流により発生する磁界を合成したものとなり、それぞれの配線を流れる電流の大きさや向きを調整することで、磁性発振素子2に印加される磁界の大きさや向きを調整することができる。また、配線の位置を調整することで、膜面面内方向、膜面垂直方向のどちらにも外部磁界を印加することができる。このように、図10に示す構成では、磁性発振素子2を複数備えるモジュールにおいても、任意の磁性発振素子2に任意の外部磁界を印加することができる。
また、図11に示すように、磁性発振素子2の膜面垂直方向の一端にスペーサー層2bと外部磁界発生用磁性層2cを積層してもよい。スペーサー層2bは、外部磁界発生用磁性層2cとピン層14、フリー層16との磁性的結合を切るための層であり、Ta、W、Ti、Ru等で構成される。また、スペーサー層2bが、外部磁界発生用磁性層2cの磁気異方性を利用し、ピン層14、フリー層16との磁性的結合を強める層として用いられる場合もある。
外部磁界発生用磁性層2cは、膜面垂直方向に外部磁界、正確には漏れ磁界を発生して磁性発振素子2へ印加するためのものである。また、ピン層14より生じる漏れ磁界や、外部磁界発生用磁性層2cの磁化方向を磁性発振素子2の膜面面内方向としたときの漏れ磁界を用いて、磁性発振素子2の膜面面内方向に外部磁界を印加してもよい。外部磁界発生用磁性層2cは、Co、Fe、Ni、Pt、Pd等で構成される垂直磁化膜層が望ましい。また、垂直磁化膜をGaMnや、CoFeB/MgOで構成してもよい。なお、外部磁界発生用磁性層2cは、上記第1実施形態において説明したアンテナ装置の動作において、MR効果を担うものではない。
外部磁界発生用磁性層2cを多層膜で構成すれば、その積層数や膜厚を変えることで、磁気異方性や、発生する漏れ磁界の大きさの制御が容易にできる。外部磁界発生用磁性層2cは、磁性発振素子2と別々に配置してもよいが、磁性発振素子2と同時に製造する方が加工が容易であり、また、大きな外部磁界を印加することができる。
外部磁界発生用磁性層2cをCo/Pt、Co/Pd等の多層膜で構成する場合、一般に成膜後300〜400℃程度の熱処理が必要となる。外部磁界発生用磁性層2cを、多層膜ではなく、L10−PtFe等の合金で構成する場合、成膜時に600℃程度での基板加熱が必要となる。
図12に示すように、外部磁界発生用磁性層2cから出る漏れ磁界には膜面内位置依存性がある。しかし、図13に示すように、磁性発振素子2の膜面面内方向の幅を外部磁界発生用磁性層2cおよびスペーサー層2bの幅よりも小さくすることで、図14に示すように、膜面内の位置依存性が抑制され、制御性が高くなる。
図10に示す構成で印加できる外部磁界は、最大でも数十mTと小さいが、図11、図13に示す構成では、大きな外部磁界を印加することができる。しかし、図11、図13に示す構成では、一方向にしか外部磁界を印加できないため、図10に示す構成と図11、図13に示す構成を合わせて用いるとよい。
また、外部磁界発生装置21として電界効果素子を用いてもよい。電界効果素子は、非磁性層/磁性層/絶縁膜の構造を持つ素子で、印加電圧、すなわち電界によって磁性層の磁気異方性を変調することが可能なものである。つまり、電界効果素子への印加電圧を変えることにより、電界効果素子が発生させる磁界を変調することができる。そのため、電界効果素子を外部磁界発生装置21として利用すれば、外部磁界制御電源22から外部磁界発生装置21に印加される電圧を変えることにより、微細な磁性発振素子2に任意の外部磁界を印加することができる。
電界効果素子を構成する非磁性層は、例えばAu、Pt、Pd、Ta、Ruの単体やこれらの化合物で構成される。また、非磁性層を、これらの単体や化合物を複数積層した膜で構成してもよい。
電界効果素子を構成する磁性層は、例えばFe、Co、Ni等の磁性体の単体や、これらにPt、Pd、B等の非磁性体を混ぜた化合物で構成される。
電界効果素子を構成する絶縁膜は、例えばMgO、HfO、Al−O、Zn−O、ポリイミド、炭酸プロピレン等で構成される。
一般に金属磁性体を用いた電界効果素子における磁気異方性は、金属磁性層と絶縁層の界面の磁気異方性が主である。この界面磁気異方性を電界によって変調することが可能である。
1 アンテナ
2 磁性発振素子
10 基板
11 下部電極
14 ピン層
15 中間層
16 フリー層
18 上部電極

Claims (5)

  1. 電気的エネルギーを高周波電力に変換する変換部(10〜18)と、前記変換部にて変換された高周波電力を電磁波に変えて前記変換部の外部の空間へ発信する発信部(1)とを備える高周波発信機であって、
    前記変換部は、前記電気的エネルギーに応じて前記高周波電力を変調する機能を有する磁性発振素子(2)を有し、
    前記磁性発振素子は、薄膜状の一対の電極(11、18)を含み、磁化方向が固定されたピン層(14)と、磁化方向が外部磁界に応じて変化するフリー層(16)と、前記ピン層と前記フリー層との間に配置された中間層(15)と、を前記一対の電極の間に備え、
    前記ピン層、前記中間層、前記フリー層で構成される素子の抵抗値は、前記ピン層の磁化方向と前記フリー層の磁化方向との間の角度によって変化し、
    前記発信部は、前記磁性発振素子と一体的に構成され、
    前記磁性発振素子には、前記一対の電極のうち一方を挟んだ外側において、スペーサー層(2b)と、前記磁性発振素子に外部磁界を印加するための外部磁界発生用磁性層(2c)とが順に積層されていることを特徴とする高周波発信機。
  2. 前記磁性発振素子の幅は、前記スペーサー層および前記外部磁界発生用磁性層の幅よりも小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の高周波発信機。
  3. 前記発信部は、前記磁性発振素子とは別部材で構成され、前記一対の電極を構成する2つの電極のいずれか一方が前記発信部と接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波発信機。
  4. 前記一対の電極を構成する2つの電極のいずれか一方により前記発信部が構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波発信機。
  5. 前記磁性発振素子は基板(10)上に形成され、前記一対の電極を構成する2つの電極のいずれか一方が前記基板により構成されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の高周波発信機。
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