JP6182433B2 - ダイナミックダンパ装置及びトルクコンバータのロックアップ装置 - Google Patents
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トルクコンバータ1は、エンジン側のクランクシャフト(図示せず)からトランスミッションの入力シャフトにトルクを伝達するための装置であり、入力側の部材に固定されるフロントカバー2と、3種の羽根車(インペラ3、タービン4、ステータ5)からなるトルクコンバータ本体6と、ロックアップ装置7と、から構成されている。
図2に、図1のロックアップ装置7を抽出して示している。ロックアップ装置7は、フロントカバー2とタービン4との間の空間に配置されている。ロックアップ装置7は、ピストン30と、ドライブプレート31と、外周側トーションスプリング32と、フロート部材33と、中間部材34と、内周側トーションスプリング35と、ドリブンプレート36と、ダイナミックダンパ装置37と、を有している。
ピストン30は、環状に形成され、フロントカバー2のトランスミッション側に配置されている。ピストン30の内周部には、トランスミッション側に延びる筒状部30aが形成されている。筒状部30aは、タービンハブ17の外周面に軸方向移動自在及び相対回転自在に支持されている。また、ピストン30の外周部において、フロントカバー2側の面には、環状の摩擦材38が固定されている。この摩擦材38がフロントカバー2に押し付けられることによって、フロントカバー2からピストン30にトルクが伝達される。
ドライブプレート31は、ピストン30の外周側において、トランスミッション側の側面に固定されている。具体的には、ドライブプレート31は、環状に形成されており、内周部31aがピストン30のトランスミッション側の面にリベット(図示せず)により固定されている。ドライブプレート31の外周部には複数の係合部31bが形成されている。係合部31bは、外周端部がトランスミッション側に折り曲げられ、外周側トーションスプリング32の円周方向の両端に係合している。
複数の外周側トーションスプリング32は、例えば、1組2個で合計6個のスプリングからなり、各組の2個の外周側トーションスプリング32が直列に作用するように、フロート部材33が設けられている。
図3は、図1の中間部材34及びダイナミックダンパ装置37を抽出して示したものである。図3に示すように、中間部材34は、第1プレート41と第2プレート42とから構成されており、ドライブプレート31及びドリブンプレート36に対して相対回転自在である。
複数の内周側トーションスプリング35のそれぞれは、図3及び図4に示すように、大コイルスプリング35aと、大コイルスプリング35aの内部に挿入され大コイルスプリング35aのスプリング長と同じ長さの小コイルスプリング35bと、の組合せからなる。各内周側トーションスプリング35は、中間部材34の両プレート41,42の窓部41b,42b内に配置されている。そして、各内周側トーションスプリング35は窓部41b,42bによって円周方向両端及び半径方向両側が支持されている。さらに、各内周側トーションスプリング35は窓部41b,42bの切り起こし部によって軸方向への飛び出しが規制されている。
ドリブンプレート36は、環状かつ円板状の部材であり、内周部がタービンシェル15とともにリベット18によってタービンハブ17のフランジ17aに固定されている。このドリブンプレート36は、第1プレート41と第2プレート42との間に、両プレート41,42に対して相対回転可能に配置されている。そして、ドリブンプレート36の外周部には、第1及び第2プレート41,42の窓部41b,42bに対応して、窓孔36aが形成されている。窓孔36aは軸方向に貫通する孔であり、この窓孔36aに内周側トーションスプリング35が配置されている。
ダイナミックダンパ装置37は、図3及び図4に示すように、中間部材34の第2プレート42の外周延長部であるダンパプレート部45と、1対のイナーシャリング46と、1対の蓋部材47と、ダンパ機構48と、ストップピン49と、ヒステリシストルク発生機構50と、を有している。なお、図4はダイナミックダンパ装置34をタービン4側から視た部分図である。
ダンパプレート部45は、前述のように、中間部材34を構成する第2プレート42の外周部をさらに径方向外方に延長して形成された部分である。図4に示すように、ダンパプレート部45は、2つの突出部42aの円周方向間に配置されており、突出部42aよりさらに外方に延びている。このダンパプレート部45にはスプリング収納部45a(第1開口)が形成されている。スプリング収納部45aは、円周方向に延びて形成されており、軸方向に貫通している。
1対のイナーシャリング46は、板金部材をプレス加工して形成されたものであり、ダンパプレート部45の軸方向両側に配置されている。2つのイナーシャリング46は同様の構成である。イナーシャリング46は、図5に示すように、円周方向に所定の間隔で複数のスプリング収納部46a(第2開口)を有している。このスプリング収納部46aはダンパプレート部45のスプリング収納部45aに対応する位置に形成されている。また、イナーシャリング46は複数の貫通孔46bを有している。複数の貫通孔46bは、ストップピン49が装着される孔であり、複数のダンパプレート部45の円周方向間に形成されている。さらに、イナーシャリング46の内周縁には、組み付け時に第2プレート42の各突出部42aとの干渉を避けるために、外周側に凹む切欠き46cが形成されている。
蓋部材47は、図4に示すように、環状に形成され、外径はイナーシャシリング46の外径と同寸法であり、内径は第2プレート42の突出部42aの外径よりも大きい寸法である。そして、蓋部材47には、イナーシャリング46の貫通孔46bに対応する位置に貫通孔47bが形成されている。
ダンパ機構48は、図4に示すように、複数のスプリング収納部45aのそれぞれに収納された大小のコイルスプリング48a,48bから構成されている。大コイルスプリング48aはスプリング収納部45aの円周方向長さとほぼ同じ長さを有している。したがって、大コイルスプリング48aの両端部はダンパプレート部45及びイナーシャリング46のスプリング収納部45a,46aの円周方向端部に当接している。また、小コイルスプリング48bは、大コイルスプリング48aの内周部に配置され、大コイルスプリング48aの長さにより短く設定されている。このため、小コイルスプリング48bは大コイルスプリング48aの作動より遅れて作動する。
ストップピン49はイナーシャリング46及び蓋部材47の貫通孔46b,47bに装着されている。すなわち、ストップピン49は複数のダンパプレート部45の円周方向間に配置されている。ストップピン49は、図6に示すように、軸方向の中央部に大径胴部49aを有し、その両側に小径胴部49bを有している。大径胴部49aは、イナーシャリング46の貫通孔46bより大径である。また、大径胴部49aの厚みは、ダンパプレート部45の厚みより若干厚く形成されている。
ダンパプレート部45とイナーシャリング46とが相対回転する際には、各摺動部に機械的摩擦が発生する。各摺動部の機械的摩擦はダンパプレート部45がイナーシャリング46に対して回転する際の抵抗となり、この抵抗が比較的小さい低ヒステリシストルクとなる。
まず、トルクコンバータ本体の動作について簡単に説明する。フロントカバー2及びインペラ3が回転している状態では、インペラ3からタービン4へ作動油が流れ、作動油を介してインペラ3からタービン4へトルクが伝達される。タービン4に伝達されたトルクはタービンハブ17を介してトランスミッションの入力シャフト(図示せず)に伝達される。
中間部材34に伝達されたトルクは、内周側トーションスプリング35を介してドリブンプレート36に伝達され、さらにタービンハブ17を介してトランスミッション側の部材に伝達される。このとき、中間部材34にはダイナミックダンパ装置37が設けられているので、エンジンの回転速度変動を効果的に抑制することができる。すなわち、ダンパプレート部45の回転とイナーシャリング46及び蓋部材47の回転とは、ダンパ機構48の作用によって位相にズレが生じる。具体的には、所定のエンジン回転数においてイナーシャリング46及び蓋部材47はダンパプレート部45の回転速度変動を打ち消す位相で変動する。この位相のズレによって、トランスミッションの回転速度変動を吸収することができる。
(1)急な加減速時等において、ダンパプレート部45に対するイナーシャリング46の振れが大きくなると、比較的大きな高ヒステリシストルクが発生するとともに、ダンパ機構48の2段目の高剛性捩じり特性によって振動が減衰される。このため、イナーシャリング46の振れが停止し、又は振れの速度が抑えられる。したがって、イナーシャリング46の振れ角の大きい領域では、イナーシャリング46がストップピン49に衝突するのを防止できる。また、イナーシャリング46がストップピン49に衝突しても、衝突時の異音が抑えられる。さらにイナーシャリング46及びストップピン49の摩耗が抑えられる。
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
2 フロントカバー
4 タービン
6 トルクコンバータ本体
7 ロックアップ装置
30 ピストン
31 ドライブプレート
32 外周側トーションスプリング
34 中間部材
35 内周側トーションスプリング
36 ドリブンプレート
37 ダイナミックダンパ装置
45 ダンパプレート部
46 イナーシャリング
47 蓋部材
48 ダンパ機構
50,60 ヒステリシストルク発生機構
51,61 摩擦プレート
Claims (8)
- トルクコンバータのクラッチ部からトランスミッションに連結される出力回転部材に至る動力伝達経路を構成する部材のいずれかに連結され、回転変動を減衰するダイナミックダンパ装置であって、
前記動力伝達経路のいずれかの部材に連結されて連結された部材と共に回転するダンパプレートと、
前記ダンパプレートと所定範囲の捩じり角度領域で相対回転自在に配置されたイナーシャ部材と、
前記ダンパプレートと前記イナーシャ部材とを回転方向に弾性的に連結するダンパ機構と、
前記イナーシャ部材と前記ダンパプレートとの軸方向間に設けられた摩擦部材と、前記摩擦部材が摺接する摺接部と、を有し、前記ダンパプレートと前記イナーシャ部材との低捩じり角度領域では低ヒステリシストルクを発生するとともに、前記低捩じり角度領域より大きい高捩じり角度領域では前記低ヒステリシストルクより大きい高ヒステリシストルクを発生するヒステリシストルク発生機構と、
を備えたダイナミックダンパ装置。 - 前記低ヒステリシストルク及び前記高ヒステリシストルクはそれぞれ一定の大きさである、請求項1に記載のダイナミックダンパ装置。
- 少なくとも前記高ヒステリシストルクは捩じり角度が増えるにつれて大きくなる、請求項1に記載のダイナミックダンパ装置。
- 前記イナーシャ部材は、それぞれが、前記ダンパプレートの軸方向両側に前記ダンパプレートと相対回転自在に配置された1対のプレート部材を有し、
前記ヒステリシストルク発生機構の摩擦部材は、前記1対のプレート部材の互いに対向する側面に設けられており、
前記ヒステリシストルク発生機構の摺接部は、前記ダンパプレートの外周部に径方向外方に突出して設けられ、前記高捩じり角度領域において前記1対の摩擦部材に摺接する、
請求項1から3のいずれかに記載のダイナミックダンパ装置。 - 前記ダンパ機構は、前記ダンパプレートと前記イナーシャ部材との低捩じり角度領域では低剛性捩じり特性を有するとともに、前記低捩じり角度領域より大きい高捩じり角度領域では前記低剛性捩じり特性より高剛性の高剛性捩じり特性を有する、請求項1から4のいずれかに記載のダイナミックダンパ装置。
- 前記ダンパ機構は、
前記ダンパプレートと前記イナーシャ部材とを回転方向に弾性的に連結する複数の第1
弾性部材と、
前記ダンパプレートと前記イナーシャ部材とが相対回転した際に、前記複数の第1弾性
部材より遅れて作動し、前記ダンパプレートと前記イナーシャ部材とを回転方向に弾性的
に連結する複数の第2弾性部材と、
を有する、請求項5に記載のダイナミックダンパ装置。 - エンジン側の部材に連結されるフロントカバーとトルクコンバータ本体との間に配置さ
れ、前記フロントカバーからのトルクを前記トルクコンバータ本体のタービンに直接伝達
するためのロックアップ装置であって、
前記フロントカバーからのトルクを出力側に伝達するクラッチ部と、
前記クラッチ部と相対回転自在であり、前記タービンに連結された出力回転部材と、
前記クラッチ部と前記出力回転部材とを回転方向に弾性的に連結するための複数のロッ
クアップ用弾性部材と、
前記クラッチ部から前記出力回転部材に至る動力伝達経路を構成する部材のいずれかに
連結された請求項1から6のいずれかに記載のダイナミックダンパ装置と、
を備えたトルクコンバータのロックアップ装置。 - 動力伝達経路に設けられた回転変動を減衰するダイナミックダンパ装置であって、
前記動力伝達経路のいずれかの部材に連結されて連結された部材と共に回転するダンパプレートと、
前記ダンパプレートと所定範囲の捩じり角度領域で相対回転自在に配置されたイナーシャ部材と、
前記ダンパプレートと前記イナーシャ部材とを回転方向に弾性的に連結するダンパ機構と、
前記イナーシャ部材と前記ダンパプレートとの軸方向間に設けられた摩擦部材と、前記摩擦部材が摺接する摺接部と、を有し、前記ダンパプレートと前記イナーシャ部材との低捩じり角度領域では低ヒステリシストルクを発生するとともに、前記低捩じり角度領域より大きい高捩じり角度領域では前記低ヒステリシストルクより大きい高ヒステリシストルクを発生するヒステリシストルク発生機構と、
を備えたダイナミックダンパ装置。
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